「神戸たこ焼き」を知っていますか? 大阪のたこ焼きのソースと、明石焼きの
だし汁の両方を使って食べるたこ焼きだ。神戸市長田区や兵庫区に伝わるこの
食べ物が、情報誌やインターネットのブログなどで珍しいB級グルメとして取り
上げられ、今では地元の小さな店に関東や九州からも客がやって来る。「そばめし」
に続け! 地域おこしの目玉にと期待する声も出ている。
神戸市長田区の海岸近くの民家1階にあるたこ焼き店「おふくろさん」。L字のカウ
ンターだけで席は七つ。注文を受けると、店主の城野さん(70)がハケでソースを
塗ったどんぶりにたこ焼き15個を入れ、温かいだし汁をなみなみ注ぐ。刻みネギと
さらにソースをかけて出来上がり。かつおだしの薄味スープと酸味のあるソースが
混ざりあう汁に、たこ焼きがぷくぷく浮いている。たこ焼きをはしですくい、スープ
を飲み干すのが食べ方だ。
店を始めて30年近く。城野さんは「5歳ごろから近所の駄菓子屋で当たり前に食べ
ていた味」と話し、「小麦粉も、卵も、高くなって大変。でも、常連さんを思うと
値上げしたくない」と話す。遠方から客が来るようになったのは数年前。今では地図
を片手にやってくる客や、実物を写真に撮る客の姿が見られるようになった。
長田区、兵庫区、中央区にはソースとだし汁で食べる店が少なくとも十数軒ある。
どんぶりにたこ焼きだけを入れ、客がだしとソースを自由にかける店もあり、最初は
ソース味で、次はだし汁で、締めは両方使って楽しむ客もいる。吸い物のように、
たっぷりの汁の上から天かすや三つ葉をかける店もある。
日本コナモン協会(大阪市浪速区)などによると、大阪のたこ焼きは昭和初期に生まれた
「ラジオ焼き」というおやつから発展。だし汁を付けて食べる明石焼きはすでに明治時代
にはあり、タマゴが多くふわふわで「玉子焼き」とも呼ばれてきた。神戸たこ焼きは、
生地はしっかりめで具はタコだけ。
「『何だその食べ方は』と言われたのが悔しかった」。兵庫区出身の会社員佃さん(40)は、
他の地域の出身の友達からこうバカにされた経験から、2年前に「神戸たこ焼き」と名付
けたブログを開設して店の紹介を始めた。「当たり前だと思っていたたこ焼きの食べ方を知人
に話したら通じなかった」「県外の友達から気持ち悪いと言われた」。ブログにはこんな反応
が寄せられ、アクセス数は日に300件を超える。
佃さんは「懐かしくてホッと落ち着く味。新しいご当地グルメとして全国に発信したい」。
2月に在阪民放の番組で紹介され、3月にはグルメ雑誌「あまから手帖(てちょう)」や生活
情報紙でも取り上げられた。 日本コナモン協会長の熊谷さん(46)は「最初は邪道かと思っ
たが、食べたら意外と相性が良かった。ご飯と焼きそばをミックスさせたそばめしを思わせる」
と分析し、「神戸のイメージに合わせて皿やトッピングに上品さを加味すれば、たこ焼きに
新旋風を巻き起こしてくれそうな気がする」と期待をよせる。
朝日新聞 2008年04月20日18時51分
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