それぞれの場所でくみ上げる地下水がどのようにして出来たのか。
それを解明する「水の探偵」だ。
勤務先は、大阪府島本町にあるサントリーの水科学研究所だが、この2年半は、
鳥取県江府町の大山のふもとを歩き回っていた。
同社はこの地にミネラルウオーターの最新工場を近く稼働させる。この場所の地下水が
おいしいと判断したからだが、なぜおいしいのか、水は地下をどう流れ、構造はどうなって
いるのか? 分からないことは多い。
そこで「探偵」の仕事が始まった。長靴で、工場の周辺に広がる森の中の小さな沢の
一つひとつに入る。地図と、位置を確認する携帯用の全地球測位システム(GPS)端末を
頼りに道なき道を行く。ナタでやぶを切り開き、木にしばったロープでがけの下の沢に
下りる。沢では成分調査のための水を採取し、流れる水の速さや水量を調べる。
「沢一つひとつの水の成分や水量など、小さな手がかりを組み合わせて、全体像を説明して
いく過程がおもしろい」。事実の断片から事件の全体像を描き出すシャーロック・ホームズの
ように、水のナゾを解いていく。
調査の結果、大山の天然水はマグマが固まって出来た火成岩を主とする地層に浸透し、
長い時間をかけて磨かれてきたことが明らかになった。
環境問題にもともと関心があったが、高校の部活動で実家近くにある湖の水の流れを調査
したことがきっかけで水に関心を持つようになった。大学時代は、森林の水の循環を学ぶ
「森林水文学」を専攻し、水への関心を深めた。大学院博士課程まで進み、サントリーに
2005年入社した。
地下水がどのようにできたかを突き止める現在の研究は、消費者に対して、その地で採れた
ミネラルウオーターのおいしさを説明するだけではない。天然水を生み出す森林をみつけだし、
保全する活動に生かすことも出来る。
「今は、自然から水を採っているが、今後、研究の成果が、自然の水を守る活動にも
生かせればいい」
水の探偵は、水の大切さを知っている。
<こぼれ話>
水科学研究所では、水そのものの分析・調査だけでなく、全国各地の水の利用方法など
文化的な側面からの研究も行っている。例えば、水と料理の関係。
「和食に合う水はどんな水か」などを研究しているという。
ソースは
http://job.yomiuri.co.jp/career/zukan/ca_zu_08030401.cfm 川崎さん
http://job.yomiuri.co.jp/photo/ca_zu_08030401.jpg 依頼を受けてたてました。