若い世代に人気の小説が次々マンガ化されている。「マンガで読む文芸」を掲げた雑誌も登場、
オリジナル志向の強かったコミック界に新風を吹き込んでいる。
小学館の「週刊少年サンデー」で、伊坂幸太郎原作の『魔王 ジュブナイルリミックス』(大須賀めぐみ画、3巻まで)、
森絵都原作の『DIVE!!』(池野雅博画、2巻まで)が昨年6月から連載中だ。以前から
連載している英国のファンタジー『ダレン・シャン』を含め、一つのメジャー少年誌で3作もの
小説原作作品が並ぶのは珍しい。
『魔王』の原作は、カリスマ政治家の台頭に漠とした不安を感じる現代日本の青年が、他人の
言葉を操る超能力で対抗する物語。マンガ版では主人公を高校生に若返らせ、舞台を関東近郊の
市に限定するなど大胆に脚色。担当編集者の星野文彦さんは「政治的部分を直接入れないなど
少年誌向けのアレンジは必要だったが、自分を信じれば世界は変わるという原作のテーマは
少年誌に向いている」という。
一方、2006年創刊の「ピアニッシモ」(ポプラ社)は、小説原作を前面に打ち出した隔月刊誌。
判型をB5からA5に変えた最新号では、三浦しをんさんの直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』
を山田ユギさんの絵で新連載。そのほか、あさのあつこさん、石田衣良さんらの原作が並ぶ。
同誌の荻野民夫編集長は「20年ほど前から何度も同様の試みはされてきたが、小説とマンガ読者の
間に隔たりがあった。だが最近は、マンガの影響を受けて育った小説家が多くなり、読者と感覚を
共有できるようになった」と語る。
実際、『まほろ―』の三浦さんは以前から山田さんのファン。「画才があったら自分で描きたいぐらい
マンガは好き。マンガ家さんが私の小説を独自に表現してくれることで新たな発見や驚きがある」
と歓迎する。
このほか、「マガジンSPECIAL」(講談社)が佐藤多佳子さんの本屋大賞受賞作『一瞬の風になれ』(安田剛士画、1巻まで)、
「週刊ヤングジャンプ」(集英社)が三浦さんの『風が強く吹いている』(海野そら太画)と、ともに
女性作家の陸上競技小説を取り上げているのも面白い。
原作に選ばれる小説に共通するのは、森さん、佐藤さん、あさのさんら中高生を対象とした
ヤングアダルト小説出身の作家が好まれていること。また、30代の三浦さん、伊坂さんも若い世代に
人気が高い。青春小説の話題作が、映画などとのメディアミックスとも連動し、マンガ化される傾向は
強まっているようだ。
多くの編集者が指摘するように、活字では容易な心理描写を、せりふや絵の動きで表現する難しさは
依然としてある。しかし、「ピアニッシモ」の島田一志副編集長は「手塚治虫以来、日本のマンガは
オリジナル志向が強かったが、近年、小説をマンガにする文化や技術は成熟し進化してきている」
と強調している。
YOMIURI ONLINE(読売新聞) 08/02/27
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20080227bk08.htm ▽画像
小説原作作品を中心に掲載する「ピアニッシモ」
http://www.yomiuri.co.jp/book/photo/BK20080227161400894L0.jpg ▼関連スレッド
【趣味】自分へのご褒美? 子供のころ欲しかった漫画や文庫本を一気に…広がる「大人買い」
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/femnewsplus/1200975112/