★フランソワーズ・モレシャンさんと愛猫 信頼関係を築き 意思尊重し共生
・ルル、シャルロット(チンチラ、オスとメス 8歳)
事務所も兼ねるモレシャンさんの住まいには、いろんな人が訪ねてくる。チンチラのシャルロットは
社交的で、お客さまに近づきゴロゴロのどを鳴らし甘える。もう一匹のルルはといえば、そ知らぬそぶり。
「ルルは近寄っていかないけれど、とてもオープンな性格。シャルロットは社交的すぎて浮気ばっかり
してます。体を、こうやって、こうやって、人に近づいていくの」とモレシャンさん。シャルロットをまねて、
モデルが歩くように上半身を左右にくねらせた。
ルルとシャルロットを迎えたのは、前の猫・アナイスがこの世を去って一年半後のこと。モレシャンさんの
つらい気持ちが、いつしか「あー、この家には猫がいないのねー」と、猫を求める気持ちに変わっていった。
「知り合いのペットショップの方が、子猫の“二人”を家に連れてきたんです。死んだアナイスのことを
考えると『まだダメだわ』と思ったんだけど、実は一目ぼれしてしまったの、ルルに」と、シャルロットに
聞こえないように、小声で“告白”する。
結局、“二人”を飼うことになったが、その方が猫のためにはいいようだ。お互い遊び相手にもなるし、
相手がいるから自分が猫であることを認識できるからだ。
「動物としての野性的なところを守ってあげたいから、いわゆるペットとして人間に都合のいいように
扱うことはしたくないですね。でも主人は、たまに猫を抱いて『たかい、たかーい』とかやるんです。
『やめなさーい。ほっとけば自分の意思で来ますから』と言ってもダメ」と笑う。
若いころ、モレシャンさんも猫との接し方に失敗したとか。「かわいいかわいい」と言ってかまうと、
猫が逃げて、お母さんのほうへばかり行ってしまう。
お母さんに聞くと、「あたりまえでしょ。おまえが無理やり抱こうとしたり、遊ぼうとするから逃げるのよ。
そっとしてあげたらいい」との返事。
「母は画家だったんですけど、人間に対してはもちろん、動物や自然に対してもその尊厳を大事にしていた
人でした。私たちがやってほしくないことを、動物にやらなければいいんですね」
動物が大好きなモレシャンさん。今考えると、やりたかったことがあったという。
「クマやライオンやキリンたちに少しずつ近づいて『私は危険な人間じゃないですよ。あなたたちを
殺さないですよ』っていう気持ちをわかってもらって、信頼関係を築く。そんなふうにして、野生動物と
友達になりたかったですね」
ルルとシャルロットの向こうに、ゾウやクマの姿が見えた気がした。
(文・星川きよみ、写真・梅津忠之)
※ファッションエッセイスト。パリ生まれ。世界の医療団名誉委員会委員長、仏政府対外貿易顧問、2004年、
仏政府よりレジオン・ドヌール勲章受章。近著に「アプレカランタンいくつになっても失敗しないおしゃれ」(主婦と生活社)。
ソース:中日新聞(2008年2月20日)
http://www.chunichi.co.jp/article/living/pet/CK2008022002089066.html 画像:「ルル(右)とシャルロットは、いつも私の足の上で寝ています」とモレシャンさん=東京都港区で
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