僕はアヒルの「ピーちゃん」。福岡市中央区鳥飼2丁目の八百屋「井関フルーツ」で
毎日、店番をしとるんよ。ときどき売り物を食べてしまうこともあるけれど、お客さんに
かわいがられて、「看板アヒル」として人気者ばい!
午前11時、お父さんの井関隆一郎さんが品物を棚に並べ終わったころ、僕はお母さん
の勝子(かつね)さんの車に乗って、博多区の自宅から出勤すると。店の前に座ると、
さっそく水浴び。プラスチックの箱の中で朝夕2回。クリームがかった白い羽毛、
ツヤツヤやろ。僕が井関家に来たのは6年前の春。僕のお兄ちゃん、大智(だいち)君が
家の前の公園で、知らない男の子から「預かって」って、籐(とう)製のかごを渡されたと。
中に真っ黄色のヒナ。それが僕やった。
「アヒルやん!」。お母さんは、僕の水かきと平べったいくちばしを見てびっくりしとった。
あわてて獣医さんや動物園に飼い方を聞いたみたい。自宅は5階建てビルの一室やけん、
僕の居場所はベランダ。ヒヨコのエサや野菜を毎日食べて、手のひらに乗るくらい小さ
かった体も今は重さが6キロ以上。名前の由来の「ピーピー」っていう鳴き声も
「グヮーグヮー」に変わって、すっかり大人たい。
店番デビューは飼われてすぐ。そのころは店が福岡市南区にあったとよ。店が今の場所
に移ったのは3年前。住宅街の中にあるお店で、最初は通りかかる人がものすごく
驚いてた。今じゃ街のアイドルたい。僕のファンが、大好きなイチゴやトマトを店で買って
は食べさせてくれるとよ。この前、棚のキャベツをこっそり食べたら、お母さんに見つかって
「こらっ」って怒られたけど……。
あっ、近所の奥さんの松本さんだ。おうちでは「アヒルさんの店に行ってくるね」って
言っとるんて。「ピーちゃんがいるから雰囲気が和む」ってほめてくれて、うれしいな。
午後3時すぎたら、店の前はとてもにぎやか。すぐそばの南当仁小学校の通学路やけん、
下校中の子どもたちが僕をかわいがってくれると。3年生の結奈ちゃんは「名前を呼ぶと
振り向いてくれる。お尻をフリフリして歩くところもかわいいっ」。慣れた人には、体や頭を
スリスリするよ。
さて、もう午後4時。僕の勤務時間も終わりやね。アヒルの寿命は15〜20年。
今のうちから健康に気をつけて、店番、頑張るばい!
ソース
http://www.asahi.com/life/update/0130/SEB200801300006.html http://www.asahi.com/photonews/images/SEB200801300008.jpg