「羅生門」「鼻」などで知られる文豪、芥川龍之介(明治25〜昭和2年)の書いた
はがき4枚が新たに見つかった。芥川が20歳代の大正時代前半に、作家で友人だった
久米正雄にあてて書いたもの。久米の作品を「今月中の創作で一番いい」と
評すなど、芥川の率直さが伝わる。今年は芥川の没後80年。来月24日の河童忌を
前に芥川文学への注目が集まる中での新発見となった。
発見されたのは、大正3年から7年にかけての自筆はがきで、東京都葛飾区の
古書店主が約20年前に買い求め、保管していた文書類の中にあった。
芥川研究の第一人者である関口安義・都留文科大学名誉教授によると、このうち
大正5年の絵はがき1枚は、芥川全集に内容が書かれているが実物は見つかって
いなかったもの。他の3枚は研究者にも存在が知られていなかったという。
大正3年8月9日のはがきには、当時滞在していた千葉を離れる気持ちなどが
書かれている。「中央公論」を読んだ感想の一部を墨で消した跡も残る。
この時期の芥川は、文壇で知られるようになる前。「せめてもう二、三篇」と
書き、自著の出版に向けて「本屋へ交渉」したい旨を久米に告白している。
「久米は芥川より先に文壇で有名になった。彼の代表作となった『受験生の手記』
を芥川が高く評価している点が注目できる」。関口氏がこう指摘するのは、
大正7年3月13日のはがきだ。
「褒める方は省略する」とした上で「実感を露骨にどんどん出していけばいいのに」
などと批評。最後は「今月中の創作で一番いい」と結んでいる。友人でライバル
だった久米との親しい交流ぶりがうかがえる。
現在までに発見された芥川の書簡、はがきは約1800通。「筆まめな作家で
毎年のように発見があるが、没後80年に一度に4枚も見つかった意義は大きい。
芥川研究の上でとても貴重な発見です」と関口氏。4枚のはがきは、7月8日に
東京都千代田区で行われる古書オークションに出品され、6、7日の下見会で
一般公開される。
ソースは
http://www.sankei.co.jp/culture/bunka/070628/bnk070628002.htm 画像は
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