「福祉を売り物にしない」。そんな理念を掲げたパン屋を今年3月、
「立川福祉作業所」(東京都立川市柴崎町3丁目)が開いた。店の存続はパンの
出来にかかっている。あえて一般店と同じ土俵で勝負することで、社会へ自立する
厳しさ、働く責任の重さを感じてもらうのが狙いだ。
立川駅南口から歩いて約7分の場所に「ベーカリー&カフェ BAKU BAKU」はある。
約30種類のパンが並び、うち10種類は日替わりだ。パンを作る障害者にとっては
毎日が挑戦で、客には選ぶ楽しみが増える。
オープンテラスの店構えも、店舗周辺の立地調査の結果。ペットや子ども連れが
多いこと、立川高校が近いことから、ふらっと立ち寄って気軽にお茶が楽しめる
カフェスタイルを目指した。
障害者は今のところパン作りに専念し、接客・販売は健常者が担当する。
田中紀久子所長(65)は「社会に出れば、障害者だからという理由は通用しないのが
現実。接客態度などをしっかり身につけてからと考えています」と話す。
社会福祉の現場に長くいる田中所長が、このパン屋を立ち上げようと思った
きっかけは、各地の「福祉ショップ」にあるという。格安や無償で提供された
スペースで障害者が作った品物を売る。「関係者が買い支え、長続きしない」
といった現場を数多く見聞きしてきたという。
パン職人として働く同作業所主任の吉村治朗さん(42)は「福祉の現場には、
割り当てられた仕事を単にこなすだけという空気がある。これではせっかく
作った店も伸びず、障害者の自立に役立たない」と語る。
パンの品質にもこだわった。冷凍のパン生地を焼くだけの店も多いが、吉村さんの
指導であえて生地から作る。材料も無添加飼料で育った卵や、フランス産の
自然海塩を使う。働くことへの責任や、喜びを感じ取って欲しいからだという。
会田麻里子さん(20)は「パンが目の前で売れると仕事をしている気分がする。
苦情が出ないか心配しながらがんばっている。仕事は厳しいけど、楽しい」と話す。
4、5月の売り上げは月100万円を超え、予想を上回っており、好調な滑り出し
だという。
「BAKU BAKU」は午前8時から午後6時半(日曜祝日定休)。
問い合わせは立川福祉作業所(TELはソース参照)へ。
ソースは
http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000000706060001 “オープンテラスが売り。犬の散歩途中の人も訪れる”という画像は
http://mytown.asahi.com/tama/k_img_render.php?k_id=14000000706060001&o_id=921&type=kiji.jpg