海陽町の旧家に眠っていた約150年前の地震と津波の体験記が、家族の
協力でよみがえり、自費出版された。体験記は田井家の古文書「震潮記(しんちょうき)」。
同家に嫁いだ田井晴代さん(73)が現代語訳し、孫娘の東海大3年の亜弥さん(21)が
パソコンで清書した。晴代さんは「先人の経験を、南海・東南海地震の防災対策に活用して
ほしい」と話す。
田井家は、江戸時代に阿波国宍喰浦の組頭庄屋を代々務めた。晴代さんは、夫と義父が
相次いで亡くなった89年ごろ、古い書類を整理していて田井家10代目当主の久左衛門宜辰
(よしたつ)氏(1802〜1874)が書き残した震潮記を発見した。
古文書に詳しい実父に見せたところ、1854年12月に、四国沿岸を津波が襲った
「安政南海地震」の体験などが書かれた貴重な資料とわかり、春代さんは「今の人にも
知らせるのが私の使命」と現代語訳を決意した。
県立文書館の講座に通い、古文書の解読法を猛勉強。現代語訳に取りかかったころ、
95年1月の阪神大震災が発生。「やり遂げなければ」とさらに熱が入り、和紙に現代語訳を
墨書する写本を3年がかりで完成させた。これを元に、地域や学校で語り継ぐ活動を続けたが、
写本1冊では限界があり、亜弥さんの協力も得て昨年、自費出版にこぎ着けた。
古文書は、宜辰氏が体験した安政南海地震の震災被害を克明に記録。
流失家屋を藍色(あい・いろ)、浸水家屋を黄色に色分けし、浸水高もわかる集落全体の
図面を掲載。地震前日にみられた貝が浮かび上がる前兆現象などを記している。
宜辰氏は、この記録をまとめながら、「津波は一度でなく数度襲ってくる」「心が迷い、
逃げのくことの遅い者は死亡」などの教訓も伝えている。
また、同地震以前の永正(1512)、慶長(1605)、宝永(1707)の大地震や津波の
古記録の書き写しも残され、災害別に4部仕立てとなっている。現代語訳判は2千部の
作製で、A5判113ページ。徳島市の「小山助学館」などで販売中。一冊千円。
村上仁士・徳島大大学院教授(防災工学)の話 学術的に価値が高い古文書の警告を
忠実に伝えている。「過去の教訓に学んで被害を小さく」という先人の熱い思いを受け継ぎ、
南海地震の防災対策に役立てなければならない。
(※一部省略して引用しました。)
asahi.com - マイタウン徳島 07/03/18
http://mytown.asahi.com/tokushima/news.php?k_id=37000000703180001 ▽画像リンク
津波の被災状況を程度に応じ色分けし、集落の浸水高を記録した、
現在の震災マップの原型とも言える「安政南海地震の宍喰浦荒図面」の一部
http://mytown.asahi.com/tokushima/k_img_render.php?k_id=37000000703180001&o_id=1079&type=kiji