「ゾウのはなこさん」といえば、昔から動物園のゾウさんの代名詞ですが、“初代”は
1935年(昭和10年)にタイ国から上野動物園に来たアジアゾウの「花子」です。
タイでの名前を「ワンジー」といったこの個体は、太平洋戦争の際、猛獣処分で命を落としました。
戦後、1949年(昭和24年)9月、同じくタイから「ガチャ」という名の仔ゾウが平和の使者として
日本にやってきました。当時推定2歳でかわいらしいこの仔ゾウは、戦争中に亡くなった
「花子」の名前を譲り受け、「はな子」と名づけられました。そう、戦後初めて日本にやってきた
このゾウが、今も井の頭自然文化園で元気にくらしている「ゾウのはな子さん」なのです。
今年、はな子さんは還暦を迎えます。正確な誕生日がわからないため、当園では
新年を迎えるときに年齢を加える「数え年」を使っており、その計算にもとづき、はな子さんは
このお正月でめでたく60歳になったわけです。
国内動物園で飼育しているゾウのうち、現時点の最高齢は、神戸市立王子動物園の諏訪子(推定64歳)。
2番目は小田原動物園のウメコ(推定61歳)、ついで札幌市円山動物園の花子(推定60歳)、
そして4番目が井の頭のはな子さんですが、日本でくらしている期間は、はな子さんが
日本一です。もちろん当園の動物たちの中でも最長老で、お客さんの中には家族3代で
はな子さんに会いにいらっしゃる方々も少なくありません。ゾウ舎のそばでは、「はな子」ではなく、
親しみをこめて「はな子さん」と声をかけていただいているのが聞こえます。
はな子さんは、井の頭に来てからずっと一頭でくらしてきました。
若いころは人身事故を起こし、その結果、人間不信におちいるなどのつらい時期もありました。
また、歯が不自由になって体調をくずしたりもしましたが、歴代の飼育係の努力と愛情の
おかげで、現在は心身ともに元気です。
ただ、はな子さんは寒い日には胸をぴくぴくさせて震えているような動きを見せるように
なります。この行動を私たちは「しゃっくり」と呼んでいますが、はな子さんはもうおばあちゃん
ですから、気温の変化、とくに冷たい北風はきらいです。そんな季節になると、はな子は
壁ぎわの日なたでひなたぼっこをすることが多くなります。ですから、寒くなってきたら、
早めに部屋に入れてあげるようにしています。また、冬のあいだは冷たい風を防ぐため、
夕方4時30分にゾウ舎のシャッターを閉めますので、はな子さんに会うときは、どうぞお早めに。
今年9月の敬老の日には、はな子さんのお祝いを盛大におこなう予定です。
それまでにも、はな子さんがみなさんの楽しい思い出に残るよう、いろいろな催し物を
計画しています。今年は、はな子さんから目が離せませんよ!
TokyoZooNet 07/01/05
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