英国の動物園に飼われている世界最大のトカゲ、コモドオオトカゲの2匹の雌
が、雄と交尾することなく産卵する「単為(たんい)生殖」をしていたことが
わかった。聖霊によってマリアがキリストを身ごもったという聖書の記述にち
なむクリスマスの話題として、英科学誌ネイチャーの最新号が論文を掲載した。
英中部チェスターの動物園では、雄と隔離された状態で飼われていた雌フロー
ラが産んだ正常な卵11個のうち、壊れた3個の遺伝子をリバプール大のフィ
リップ・ワッツさんらが調べたところ、単為生殖によるものとわかった。残っ
た8個が順調に育っており、07年1月に孵化(ふか)する見通しだ。
ロンドンの動物園でも、2年半の間、雄と接触がなかった雌(死亡)が産卵し、
4匹の雄の子が育っている。雌の体内に雄の精子が残っていた可能性もあった
が、遺伝子を調べると、やはり単為生殖だったという。
多くの生物では、受精によって卵子の細胞分裂(卵割)が始まり、卵子が育っ
ていく(有性生殖)。ところが、受精以外の原因で卵割が始まる場合があり、
単為生殖と呼ばれる。昆虫などでみられるが、脊椎(せきつい)動物では珍し
く、ヘビなど約70種で報告されているだけ。哺乳(ほにゅう)類では自然に
は起きないと考えられている。
コモドオオトカゲも、通常は交尾によって子をつくるが、フローラなどは、パー
トナーが見つからないため、やむを得ず単為生殖を行ったと考えられている。
単為生殖の子には母方の遺伝子しか伝わらない。種全体として見ると、遺伝子
の多様性が増えず、環境変化に対応して生き残る余裕がなくなることを意味する。
今回の発見は、絶滅が心配されているコモドオオトカゲで単為生殖がそれほど
珍しくはないことを示しており、ワッツさんらは「雄と雌をつがいで飼う態勢
にすべきだ」としている。
http://www.asahi.com/science/news/TKY200612240168.html