夫婦で2人乗り自転車に乗り、好きな場所を巡る。
世界一周をめざす港区の青木史也さん(32)と直美さん(33)が来春、南米から欧州、
アフリカを回る約2年4カ月の旅に出発する。
結婚して半年すぎた00年暮れ、史也さんが「自転車で世界一周したい」と切り出した。
商社に勤め4年。「普通の人生を歩んでいきそうな自分を崩したくなった」。学生の時、
自転車で東日本を一周し、金と時間さえあれば1人でどこまでもこいでいけると思った。
そのことが思い出された。
「2人乗りだったらいいよ」。直美さんから予想外の答えがかえってきた。2人乗り自転車で
世界旅行をしている日本人夫婦をインターネットで知り、会って話を聞いた。
アウトドア向きではないと思っていた自分の妻でも旅は可能だと自信を持てた。
01年の正月、世界地図を広げながら2人で行きたい所を線で結んでコースをつくり、
資金の貯蓄目標を立てた。
3月に史也さんは会社を辞めてシステムエンジニアとして独立した。
直美さんは派遣社員として生活を支えた。
3年ほどかかり、04年7月、最初の旅に出発。05年1月までで、カナダから米国西海岸を
縦断し、タヒチ、ニュージーランド、オーストラリア東海岸など太平洋沿岸を回った。
走行距離は約4500キロに達した。
特注の自転車にテントや水、コンロの燃料など約60キロの荷物を積んで走る。
前は「エンジン役」の夫が乗り、後ろの妻は「励まし役」も兼ねた。
午前8時すぎにはペダルをこぎ出す。日が暮れるまでに宿泊場所を見つけ、自炊、洗濯、
情報整理が日課に。「1日50キロ」と「5日走って1日休む」を基本にした。
自然相手の旅。出だしのカナディアンロッキーでは2千メートル級の山越え。
逆風のなか一日中坂を上ったかと思えば、翌日は100キロ近くも下りが続いた。
オーストラリアではハエが鼻や耳の穴に入り込み閉口した。メキシコでは野犬に
飛びかかられ、トラックにひかれそうになった。パンクもあり、転倒してけがもした。
初めて自転車の旅を経験し、直美さんは忍耐強くなったという。夫とはいえ24時間ほぼ毎日
一緒にいるのは初めて。「けんかしていては前に進めない。協力しないと」。虫にも慣れた。
飛行機や車の旅とは違い、自分の足の力で前に進む。
「一つの風景を思い出すと、そこからの先の道がずっとよみがえってくる」と史也さん。
次の旅は2万2千キロを超える。ボリビアでは4千メートルの高原を越える。600キロの沿道に
家が数軒しかない「風の国」南米・パタゴニア地域など難所もある。タンザニアでは野生動物が
歩く一般道を通る楽しみもある。今度帰国するのは09年7月の予定だ。
「それからのことは旅の間に考えたこと、受けた感覚、経験を基に組み立てていきたい」。
2人はそう思っている。
asahi.com - マイタウン東京 06/12/20
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