鶴岡市の湯殿山神社で、ご神体(標高約1100メートル)の巨大な茶褐色の岩が
黒く変色する「異変」が起き、関係者を慌てさせている。付近のホテルでも、
温泉の水質や色が変化した。今のところ原因ははっきりしないが、付近の斜面で今夏、
林野庁が地滑り対策工事を行っており、ホテル関係者からの問い合わせを受けた同庁が
関連の有無について調査を始めている。
ご神体から直線距離で約3キロのところにある「湯殿山ホテル」(同約750メートル)の
遠藤力社長(64)は今月6日、ご神体から約1キロ離れた湯殿山参籠所(さんろうじょ)を
訪れた際、遠くに見えるご神体が黒いことに気づいた。
8日にご神体まで歩いて調べたところ、ご神体からわき出る温水が見慣れた茶褐色ではなく
真っ黒で、ご神体自体も黒っぽくなっていたという。
ご神体の茶褐色の色は、温水に含まれる水酸化鉄に由来する。
出羽三山の神々をまつる出羽三山神社の責任役員総代も務める遠藤社長は、
「ご神体のくっきりとした茶色が損なわれ、全体が黒っぽく覆われていた。
こんなことは初めて」と驚く。
また、遠藤社長によると、湯殿山ホテルでも今年8月ごろ、それまではご神体と似た
茶褐色だった温泉が透明に変わり、浴槽に真っ黒な金属がこびり付くようになった。
その後、温泉そのものが出なくなったという。
ホテルから約600メートル東側の山中(標高約830―900メートル)では、
林野庁東北森林管理局庄内森林管理署が今年7〜9月、長さ11・5〜37・5メートル、
直径約50センチの鋼管80本を地中に埋設、コンクリートなどを流し込んで土をかぶせ、
斜面を補強する工事を実施した。遠藤社長からの問い合わせを受けた同署などが
緊急調査を行い、工事の前と後で、ホテルの源泉の水素イオン指数(pH)や
金属イオンの成分が大きく変化したことがわかった。
この結果を踏まえ、中島和夫・山形大理学部教授(金属鉱床学)は「pHや温度の変化などで
茶褐色の水酸化鉄が生成されにくくなる一方、黒色の酸化マンガンが生成されたのでは」と、
ホテルの源泉の色の変化の理由を推定。「変化する前と後のご神体の温水の成分を
比較・分析できれば、同じような結果が出るかもしれない」とする。
中島教授は、「数キロ離れた地点を掘削することで、地下水やガスの流れが変化し、
源泉のpHや温度、金属イオンが変化することは十分あり得る。異変が起きた時期を考えると、
工事がホテルでの現象やご神体の変色と関連している可能性は否定できない」と話している。
庄内森林管理署は「調査中なので、因果関係についてはっきりしたことは言えない」としている。
YOMIURI ONLINE(読売新聞) 06/12/10
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamagata/news001.htm 画像:雪に包まれた湯殿山参籠所、この奥にご神体がある(6日撮影)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamagata/img/news001_3.jpg