那覇市の中心部に、年間1万人が訪れる市営プラネタリウムがある。
人気の秘密は、今では珍しくなった「弁士」の説明つきの上映だ。
3代目の伊佐常正(じょうせい)さん(65)は軽妙な語り口が好評で、
夏休みには120席が毎回満員になるほど。
「星の王子さま」をもじって「星のおじいさま」と呼ばれたが、29日の上映会を最後に定年で引退する。
プラネタリウムは、那覇市の久茂地(くもじ)公民館にある。
公民館の前身である「少年会館」ができたのは米軍施政下の66年。
後に本土復帰後初代の知事となる故・屋良朝苗(ちょうびょう)氏が中心になって市民団体が募金を集め、
沖縄教職員会やPTA連合会などで作る「沖縄子どもを守る会」が運営を担った。
直径10メートルのドームに備え付けられた映写機は、当時の最新鋭装置。
「本土との教育環境の格差に悩んだ先輩たちが、何とかしたいと努力したのでしょう」と下地敏雄館長。
72年の復帰後、会館は公民館になり、市が管理するようになった。
伊佐さんは小学校で長く理科を教え、定年退職した01年に請われて3代目の操作技師に就いた。
上映は週3日。主に子どもが対象で1時間ほど。
全国のプラネタリウムでコンピューターによる自動投影が主流になる中、
昔ながらの手動式投影機で、説明にもテープを使わない。
星座に関するギリシャ神話を交えながら、星空を見る楽しさを説く。
「最近の子どもは知識が豊富だけど、空を見上げて星を見ることが少ない。
そんな子たちの興味をかき立てることができれば」
02年度から小中学校の週5日制が完全施行された。
「週末の子育ては家庭や地域で」と国が呼びかけるなか、小学生向けの土曜上映会を始めた。
「理科離れの原因は子どもにあるんじゃない。何もしてこなかった大人に責任がある」との思いからだ。
通いつめた子どもは多く、「教えてもらった星を見たよ」と笑顔で報告に来るのが、いつも楽しみだった。
■ソース
asahi.com[2006年09月28日01時10分]
http://www.asahi.com/life/update/0928/001.html