ネコの男の子が主人公の絵本「ノンタン」シリーズ(偕成社)が今夏、30年を迎えた。
これまでに34巻、総計2700万部に達し、児童書としては類を見ないベストセラーとなっている。
読者の中心は3歳だとか。30年間、子供たちの心を魅了し続けている。
ノンタンは、76年8月に『ノンタンぶらんこのせて』でデビューした。
ここではぶらんこを独り占め。『あかんべノンタン』(同年10月)でも「あっかんべえ」と
みんなを驚かせて喜ぶ。おひさまから「あっかんべえ」と仕返しされても最後は
「でもやっぱりやめられない」で終わる。
教訓もなければ、道徳も説かない。こんな姿に、児童書業界では当初、
「わがままで反省がない」「子供のいたずら心を増長する」と批判の声があった。
作者のキヨノサチコさんは「30年前の絵本に登場するのは良い子が多くて、芸術的な美しさが
優先されていた。そういうことにとらわれず、とにかく楽しい絵本を描きたいという情熱だけで
描いていた。描き続けることがとても幸せだったから」と振り返る。
わんぱくでいたずらっ子。92年ごろのテレビアニメでノンタンの声を担当したタレントの千秋さんは、
「良い子じゃないところが好き」と言い切る。
「そこが自分と似ているから。わがままで意地悪なところもあって、でも憎めないの」
心理学者の富田たかしさんは「ノンタンは共感を得るポイントを押さえている」と指摘する。
「すごい人がすごいことをやっても共感できない。人間はネガティブな感情を共有して初めて、
同じ立場に立つことができる。失敗したり、だめなところがあったりするノンタンは、身近な存在です」
子供たちの共感を広く集めるノンタンは、病院の待合室で活躍する。
重病の子供たちを励ましたいという要望から作られた『ノンタンがんばるもん』(98年)は、
けがをしたノンタンが病院で治療を受ける物語。
これを読んで子供たちは注射を我慢できるようになった、という声が偕成社に届く。
フランスや台湾で翻訳され、3DアニメのDVDが作られても、ノンタン自身の変化は、
01年に妹ができたことと、「ちょっと目が大きくなったかな」と編集者が気付く程度だ。
なみなみの輪郭線に、いつも三角の口で笑っているノンタン。各地のキャラクターに詳しい
イラストレーターのみうらじゅんさんは「ノンタンにはいろいろと説明が付いていないし、
使命感も責任感もない。だから、いろんな人の思いが入る余地があるのでしょう。
ノンタンはものすごく普通。普通すぎて良い」と分析する。
いつの時代も、子供たちはノンタンに自分を投影してきたのだろう。身近に感じるのと同時に、
普通すぎる「非凡さ」ゆえ、ノンタンの淡々とした日常が理想的な世界にも見えてくる。
asahi.com 06/09/06
http://book.asahi.com/news/TKY200609060211.html 関連スレッド
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