◇えんぴつでなぞる「奥の細道」、なぜか若者に人気
随筆、俳句、短歌などの名文をなぞり書きする本がブームとなり、
書店では専門コーナーまで設けられている。
火付け役となったのは、今年1月に出版された、「奥の細道」(松尾芭蕉)を
なぞる本。習字の練習のように、薄く印刷された手本を鉛筆でなぞっていくという
新スタイルの“読書”だが、文書はキーボードで書くのが普通となった若者の間でも
「気分が落ち着く」「読むより頭によく入ってくる」と、ネット上などで評判を呼んでいる。
丸善丸の内本店の「なぞり書き本」特設コーナー。77万部のベストセラーとなった
「えんぴつで奥の細道」(ポプラ社)のほか、芭蕉の「野ざらし紀行」、「徒然草」など
15種類が並ぶ。特に百人一首は4社から出版されたものが置かれている。
同店の担当者は、「20〜30種類は出版されており、これでも絞って置いている。
まさかここまでの人気になるとは」と話す。
各社とも当初、ターゲットと考えていたのは団塊世代以上の人たち。実際、
「ぼけ防止になる」「学生時代の思い出がよみがえった」という声が読者から寄せられた。
だが予想外だったのは、20〜30歳代からの大きな反響だった。
ネット上にも、奥の細道のなぞり書きについて語り合う掲示板ができ、
「芭蕉ってすごいんじゃない?」など、学生を含む若者らの書き込みで
にぎわっている。
旅の17日目まで来たというさいたま市の主婦後藤さんは、「最近鉛筆で
文章を書くことがなかったので、非日常が味わえる気がする。ストレスが
たまった時には、書きたいだけ書いて気分を落ち着かせています」と話す。
元筑波大学長で日本語学者の北原保雄さんは、「読書よりテレビという時代に、
読むより手間がかかる書くことに関心が集まるのは驚き」としながらも、「書く方が
文章をゆっくり味わう分、頭に入る。また鉛筆は、筆や万年筆の反対で、
最も私的な筆記具。自分一人の時間を楽しむのに一役買っているのでは」と
分析している。
ソース(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060816i406.htm ▽新スタイルの“読書”、なぞり書きする本がブームに
http://www.yomiuri.co.jp/zoom/MM20060816150409152M0.htm