富山三尺は、県の農業関連施設が戦後、中国伝来の品種から優良なものを選び、独自に
育成した品種。昭和20年代、主に砺波地方で生産が始まり、流通した。
特徴は、名前の通り、90センチ(3尺)にまで育つその長さ。農業・食品産業技術総合研究
機構野菜茶業研究所(津市)の坂田・上席研究員によると、長くなる品種は国内では
珍しく、ほかには奈良県の「大和三尺」くらいしかない。
だが、長いために育てにくく、味の良好な別品種の改良が進んで、「昭和40年代以降、
全国的に地域固有のキュウリが減っていく」(坂田さん)。富山三尺も栽培農家がいなくなり、
市場から消えていった。
県は2004年、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)に種が保存されていること知り、
種を譲り受けて05年、育成に成功。今年は、富山市内の農家など3か所に委託し、計約60
株を栽培してきた。
4日は、同市日方江の農家の女性9人でつくるグループ「すみれ会」が、会員の畑で育てた
富山三尺24株から約40本を収穫した。中には、長さ65センチ、300グラム超の大物もあり、
地元農協の直売所で1本50〜100円で販売された。坂井朝子会長は「お年寄りが懐かしんで
買ってくれた」とニッコリ。
味は、現在、出回っている品種よりあっさりして、皮も軟らかく、「コウジ入りの漬物などに
適している」と、坂井さんは話す。
取り組みの先頭に立ってきた、県富山農業普及指導センター(富山市諏訪川原)の
宮元さんによれば、県内には約20の伝統野菜があるが、今回の成功を機に、現在生産
されていない野菜も復活させ、メニューに追加させたい考え。同市草島地区で大正時代に
作られていたという「草島ねぎ」や、同市内で栽培されていた「富山かぶ」「天正寺なす」など
6つが、次の候補という。
県は、富山ブランドの確立に向けた協議を進めており、県内産の食材を用いた「越中料理
」の創設なども検討している最中。宮元さんは、「京や加賀に負けない『越中野菜』も必要。
この動きが、地産地消や野菜消費拡大、食の伝承につながれば」と、期待を込めていた。
(2006年7月5日 読売新聞)
富山 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/toyama/news001.htm