農家や建設会社員、元銀行員ら業種の異なる6人が、横手市十文字町睦合の田んぼの
中に県産米で作るパンの専門店を開き、製造が追いつかないほどの人気を集めている。
店の名は「夢工房めぐみ」。大地の恵みに感謝し、高齢化や減反で疲弊した米所に
元気を取り戻す夢をかなえよう――。パン作りと無縁だった男たちの、そんな願いを
込めた挑戦は、始まったばかりだ。
店は近所の建設会社員谷さん(61)と友人で同市大森町袴形の農業高田さん(61)
が中心となり、元銀行員や元食堂経営者、パソコン指導員ら、米所の県南に住む仲間
が手掛けた。きっかけは、谷さんの友人が岩手県奥州市で始めた米パン専門店だった。
今年2月に高田さんと訪ねると、中山間地にもかかわらず、店の客足は絶えることが
なかった。モチモチとした食感と飽きのこない風味。「秋田でも消費が見込め、雇用
創出にもつながる」と決断、知人に協力を求めた。谷さん所有の工場を200平方
メートルほどの店舗に改装、業者と交渉して設備も安く手に入れ、消費者に「コメ」
を印象付けようと、愛称も「田んぼの中の米パン屋」にした。
6月に開店した工房では、県産ブレンド米を使い、主婦らのパート5人がミキサーや
手で生地をこねる。食パンや焼きそばを挟んだコッペパン、クロワッサンやメロンパン
など、メニューは14種類。連日約1500個のパンが売り切れる。総菜パンの野菜
や肉など、食材すべてを自前で調達するのが将来の目標だ。
コメの扱い方は高田さん、店の内外装は谷さんといった具合に、6人の専門知識を生か
した分業が一番の強み。谷さんは「新しく変わることを恐れる空気を打ち破りたい」と
意気込んでいる。
(2006年7月2日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news002.htm