たこ焼きやハンバーガー、カレーライスに見えるのに、食べると「甘い」。
そんなファストフードや軽食そっくりに作ったケーキなどのお菓子を見かけるようになった。
折しも東京・池袋では“そっくりスイーツ”を集めたイベントが開催中。
横浜のケーキの催しでも二種類が取り入れられている。不思議なお菓子が増える理由を探りに出かけた。
「あはははは」。父親(34)が笑い声を上げた。
豊島区東池袋のテーマパーク、ナムコ・ナンジャタウンで開かれている「そっくりスイーツミュージアム」。
“イクラ丼”をほおばった長女(3つ)が顔をしかめ、イクラに見立てたタピオカを口から出したのだ。
「イクラと思って食べたんでしょう」と母親(32)。
「イクラが大好きなんです」。父親がまた笑った。
同イベントで食べられる約七十種のスイーツのうち、およそ半分は新たにパティシエ(菓子職人)に
作ってもらったが、残りは既に市販もされているものだという。
平日の午後二時すぎに取材に訪れたが、ひっきりなしに若い女性やカップル、家族連れらが訪れる。
ずらりと並ぶ品々を見ては「何これ?」「すげー」と驚き、
食べてみては視覚とのギャップに笑いが起きていた。
ナムコのイベントプロデューサー松本学さん(40)は
「すべて把握してはいないが」とした上で、三年前に広島県福山市の老舗「虎屋本舗」が
発売したたこ焼きに見えるシュークリームを「そっくりスイーツのはしり」と位置づける。
タコは、食感が似たナタデココ。
ソースやかつお節は、溶かしたり薄く削ったりしたチョコレート、青のりは抹茶で表現している。
「新作お菓子がなかなかできず、工場長とたこ焼きを食べていて『シュークリームにできるな』
と思ったのがきっかけです」。虎屋本舗の高田信吾社長(43)は振り返る。
翌年、東京や大阪のイベントで「大ブレーク」(松本さん)したのに気をよくし、
虎屋本舗はこれまでに約十種のそっくりスイーツを生み出した。
年間の売り上げ五億円のうち二億円を占める主力商品に成長したという。
高田社長は「うちが正統派のシュークリームを作っても注目してもらえない。
差別化で作ったら、潜在的な需要を掘り起こした」と説明する。
東京でも、弁当に見えるお菓子「おかじゅう」を発売した洋菓子製造のシリアルマミー(杉並区)が、
昨年十月に渋谷駅前にハンバーガーそっくりのスイーツを売る「マミドバーガー」をオープンさせて、
こうしたスイーツが知られるようになった。
同社の篠直余代表(42)は、あめ細工やコンペイトーで弁当をかたどったお菓子を見たのをヒントに
「おかじゅう」を思いついたという。
マミドバーガーも、「普通のお菓子を作っても面白くない。渋谷では片手で食べられるものがはやると思い、
ハンバーガーがふっと浮かんだ」と話す。
全国のケーキを集めた「魅惑のケーキ博覧会」を開催中の横浜カレーミュージアム(横浜市中区)でも、
カレーライスのようなフルーツケーキやカレーパンのようなシュークリームが販売されている。
同ミュージアムのプロデューサー井上岳久さん(37)によると、
今年一月に始めた前回イベントの際、「普通のケーキだけでは面白くない」と、
地元の有名パティシエと組んで、カレーに見えるケーキを開発したのが最初。
今回の博覧会で追加したカレーパンに見えるシュークリームとともに好評といい、
井上さんは「これからも出していきます」と“宣言”する。
いずれも、「普通とは違うものを」という遊び心が共通するが、
そっくりスイーツが受け入れられる理由を、ナムコの松本さんは
「飽食の時代の一つの差別化だと思う。物があふれ、消費者は何か付加価値を求めている。
私が食べているのは特別だと思いたいのでは」と推測する。
カニ肉に似たカマボコなど、高価な本物をまねたコピー食品とは違うが、
凝りに凝ってそっくりに作り上げる情熱は、日本人ならではかもしれない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20060527/mng_____thatu___000.shtml カレーライスとカレーパンに見えるスイーツを手にする横浜カレーミュージアムの井上岳久さん
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20060527/060527-16.jpg ※依頼スレでご依頼いただきました。