◇ミニ姫路城 来年春完成 井村さん夫妻
世界文化遺産で「白鷺(しらさぎ)城」の名で知られる国宝姫路城(兵庫県姫路市)。
この名城を愛するあまり、自宅の庭約165平方メートルの土地に400年前の正確な形を
23分の1の模型でよみがえらせようと挑む男性がいる。伊勢市の裕保さん。保険会社員
だった89年から取り組み、18年目にして9割まで復元した。来年春には完成させ、
城の前で薪能や踊りを交えた記念行事を開こうと、「築城」の追い込みに励んでいる。
◆土台づくり13年/費用千数百万円◆
裕保さんが姫路城と出会ったのは中学2年生の時。少年雑誌のカラーグラビアの美しさに、
はっと息をのんだ。付録の模型を組み立てて心が躍った。
「築城」のきっかけは47歳の時の誕生日プレゼントだった。「姫路城が好きなんだ」と
前々から聞いていた妻郁子さんが、姫路城の専門書を井村さんに贈った。図面を
食い入るように眺めた井村さん。「おれでも造れる」と考えた。
まず、土地探しから始めた。城の背景に電柱や電線、家が入らず、できれば山が
控える土地。幸い宮川の近くに土地を見つけ、作業小屋を建てた。
仕事の合間に、同市勢田町にあった当時の自宅から通った。最初の難関は
石垣造りだった。徳島・鳴門産の青石とベルギーのれんが計2万5千枚を
組み合わせ、張り付けた。
石垣の隅をそろえるのが難しい。図案に書きようがない立体的にうねった
ジグザグの石段にも難儀した。土台だけで13年かかった。
天守閣や櫓(やぐら)などの建物は強化プラスチックを使った。現存する姫路城には
残っていない本丸の回廊などは、史実に即して復元。壁の鉄砲穴の形や順列まで
こだわって精密に再現した。4年前に姫路市の学芸員が訪れ、お墨付きの印にと、
姫路城の世界文化遺産登録を記念する図版の復刻版の贈呈を受けた。
これまでかかった材料費だけで千数百万円。妻の理解がなければ、到底たどりつけなかった。
「最初は規模もわからず戸惑った」という郁子さんも、玉城町の陶芸教室に通い、城の中に
並べる馬や侍の人形をつくって協力した。夫に頼まれて焼いた陶器製のしゃちほこは
100個以上になった。
暇さえあれば黙々と作業小屋で手を動かす夫を見守る郁子さん。「人間が好きなことに
熱中できるのは限られた時間。生き生きと楽しそうな夫の顔を見ていると、私の心も
洗われる」と笑う。
今は城の前に建てた自宅でお茶を飲みながら、2人で天守閣を眺めるのが至福の時だ。
ソース(朝日新聞)
http://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000000602180004 ▽姫路城の曲線美まで再現した模型と夫妻
http://mytown.asahi.com/mie/k_img_render.php?k_id=25000000602180004&o_id=436&type=kiji