この季節、果物の定番はミカンだが、実と皮とどっちがより体に効くかと言えば、皮らしい。
熊本県工業技術センターと独立行政法人九州沖縄農業研究センターが「皮の有効性」について共同
研究を行った。「その結果、ビタミンCとP、食物繊維、カリウム、クエン酸などがおおむね数十倍、実より
皮に多く含まれていることが確かめられました。昔のミカンを皮ごと食べる習慣は的確だったわけです」
とは、技術センター研究主幹の松田茂樹さん。
熊本県はミカンのほかスイカ、ナス、ピーマン、レンコン、菜の花などの産地だ。これら70を超す地物の
青果と比べても、「ミカンの皮は話題のポリフェノールが圧倒的に多く、生活習慣病を抑制する働きがある
抗酸化活性値がトマトの5倍もあります」。そう言えば陳皮(ちんぴ)、枳実(きじつ)など漢方の生薬は
ミカン系の皮を乾燥させたもの。漬物の香り付けや砂糖菓子として皮を口にする機会もある。
とは言え、では今日からミカンは皮ごと、と思い切れない。農薬やワックスが付いていないか? 水で
洗ったぐらいで大丈夫か? 第一、皮の苦みが混ざっておいしいとは……。
で、案の定なのか、同県内のベンチャー企業がミカンの皮を加工したサプリメントを新商品として開発した。
「甘夏ミカンの皮の乾燥粉末にシークヮーサーや温州ミカンなどを加えて粒状にしています。5粒(1グラム)
で1日に必要なビタミンCの3倍近くをカバーできます」と担当者。
たった5粒で必要量を軽くクリア、そのお手軽感覚こそサプリメントの真骨頂だろう。でも頼り過ぎると
食べ物への欲求が薄れるようで、やっぱり怖い。サプリメント=付録。本来の意味はよく覚えておこう。
(宇佐美伸)
快食ライフ : フード&スイーツ : グルメ : YOMIURI ONLINE(2005年11月28日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/food/kaisyoku/20051128gr01.htm?from=yoltop