関西の秋を彩る、ひらかたパーク(大阪府枚方市)の「ひらかた大菊人形」が、今年を最後に閉幕する。
菊人形を作る「菊師」の後継者不足が、主な理由だ。菊人形展の中止は全国で相次いでおり、伝統文化の
存続を危ぶむ声も出ている。
■菊師の高齢化
閉幕の背景を知るため、ひらかたパークを訪ねた。園長の川元博敬さん(40)は「村瀬さんの死で、
菊師の高齢化という現実が見えた」と振り返る。菊師の頭領だった村瀬稔之さんが2000年5月、62歳で
死去した。「このまま菊師の高齢化が進めば、『大菊人形』を突然、開催できなくなる恐れさえある」。
「大菊人形」を手がける菊師3人のうち、2人が70歳代、1人は60歳代だ。川元さんは「看板行事の自然
消滅は許されない。きちんと区切りをつけたかった」と話す。
後継者の確保が難しいのは、菊師の生活が不安定なためだ。仕事は菊人形展のある秋に集中するため、
年収も限られる。関係者によると、菊師の大半は、愛知、岐阜の両県在住だが、一定の技術レベルに達して
いるのは、両県で十数人しかいないという。
それに加えて、入場者数の減少も深刻だ。動きがない菊人形は、若者の興味を引きにくい。「大菊人形」の
場合、74年の約85万人がピークで、昨年は半分以下の約35万人にまで落ち込んだ。
■入場者数減少
(中略)
山口県宇部市の常盤公園で開かれていた「宇部大菊人形」は、1996年で終了した。公園を管理する
市常盤遊園協会の総務課長、千村佳幸さん(55)は「西日本有数の規模だったが、入場者数の減少で、
最後は赤字続きだった」と説明する。いまも、協会には「今年の菊人形展はいつからか」との問い合わせが
あり、千村さんは「こういう人たちがずっと来てくれていたら、中止せずに済んだかもしれない」と残念がる。
広島県尾道市も入場者数低迷で、「尾道大菊人形展」を2000年を最後に中止した。01年からは、菊の
鉢植えなどを展示する「尾道大菊花大会」へと模様替えした。
(中略)
菊人形展の開催地について、武庫川女子大の非常勤講師で菊人形研究者の川井ゆうさん(41)は「興行と
して有料の菊人形展は、かつて20か所ぐらいあったが、いまは10か所程度でしょう」と将来の存続を心配する。
そのうえで、「イギリスなど海外の文献の記述から、菊人形が(庭を整備する)ガーデニングの発展に貢献
したことがわかっている。菊の栽培や展示する舞台芸術など、様々な技術の粋を集めた菊人形を、守り続け
てほしい」と訴えている。
(2005年11月13日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/marche/mr51112a.htm スレ立て依頼をいただきました、ありがとうございます