茨城町や旭村などに囲まれた汽水湖・涸(ひ)沼で、漁師鴨志田さん
(茨城町下石崎)が、先端に鉄かごを付けた竿(さお)に全体重をかけて水底をかいた。
引き上げると、かご一杯のシジミが柔らかな日差しの中できらきらと黒く光っていた。
涸沼と鹿島灘に通じる涸沼川は、島根・宍道湖や青森・十三湖とならぶ全国有数の
シジミの産地だ。涸沼のシジミは、中国の淡水産などに比べるとうま味成分や
栄養分は多い物で10倍になるといい、鴨志田さんは「一度、涸沼のシジミを
食べたら、輸入物は食えないよ」と、日に焼けた顔で誇らし気に笑った。
町内の貝塚から貝殻が出土し、徳川光圀もその味を楽しむなど、古くから地元の
名産として愛されてきた。
しかし、最盛期の1975年ごろには年間約6千トンあった漁獲量は護岸工事や
水質の悪化などで、2001年には約1700トンにまで激減した。
そこで、大涸沼漁協(茨城町)は県内水面水産試験場(玉造町)と協力して、
01年夏から稚貝の放流を開始。今年も約700万個をまく予定で、桜井組合長
(水戸市)は「大事な自然の恵みだから、絶やさぬように育てながら漁を続けたい」と話す。
稚貝の放流に合わせて、漁のルールも厳正化してきた。漁協に所属する240人だけ
が漁の権利を持ち、時間(夏季は7〜11時、冬季8時〜正午)、量(1日100キロ)、
大きさ(12ミリ以上)を厳守しながら、機械ではなく昔ながらの手がきで漁を行っている。
そんな努力も実って、03年には漁獲量は約2600トンにまで回復したが、最近では
密漁が大きな問題になってきている。04年には、水戸署などが約30件を摘発したが、
氷山の一角と見る漁協では、組合員の持ち回りで湖畔のパトロールを続けている。
湖畔沿いの食堂に入り、同じく名産のウナギの丼を注文すると、シジミ汁がついてきた。
汁は貝から出たうま味成分で白く濁り、一口すすると五臓(ごぞう)六腑(ろっぷ)に
濃厚な味が染み渡り、ぷりぷりとした大粒の身が口の中ではじけた。
ソースは
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ibaraki/news007.htm (和む写真アリ)