中高年女性の健康を維持する物質として、女性ホルモンと似たはたらきをする
植物由来のイソフラボンが注目されている。イソフラボンを含む植物では大豆
がよく知られているが、クズにも多く含まれ、更年期女性の諸症状を緩和して
くれることがわかってきた。
通信販売で「プエラリア」とか「ガウクルア」と呼ばれるサプリメントが販売
されている。そのうたい文句には「大豆の数十倍のイソフラボン」「豊胸作用がある」
「回春剤」などが並べられている。
プエラリアというのはクズの分類学上の名前で、このサプリメントはタイ産のクズの根
を粉末にしたものだが、通信販売では「タイ産のイモの粉末」としているところもある。
生薬(しょうやく)に詳しい帝京大学薬学部創薬資源学の木下武司助教授は「クズの根
は葛根(かっこん)といい、中国の後漢時代から生薬として使われてきました。イソフ
ラボンの働きによる効能もたくさんあります。しかし、通販で売られているサプリメント
の使用は注意が必要」と、「プエラリア」商品の安易な使用に警鐘を鳴らす。
「プエラリア」商品には実際、大豆の数十倍のイソフラボンが含まれている。しかし、
イソフラボンを取りすぎると、ホルモン関連の異常が起こる可能性が指摘されている。
米食品医薬品局は、イソフラボンの一日摂取量を六十ミリグラム、植物に含まれる
イソフラボンに似た物質なら百ミリグラムとしている。食品なら豆腐は百五十グラム、
納豆は六十グラムくらいまでだ。
それだけに、サプリメント商品の「プエラリア」はイソフラボンを取りすぎる可能性
が高い。しかも、木下助教授によると、卵胞ホルモンと同等の強い女性ホルモン作用
のあるミロエステロールも含まれているので、ホルモン関連異常の出る危険性も高く
なるという。
しかし、クズに含まれるイソフラボン全般にこのような危険性があるわけではない。
日本産のクズにも大豆の数倍から十数倍のイソフラボンが含まれ、女性の更年期症状
を緩和することが、近畿大学大学院農学研究科応用生命科学の河村幸雄教授の研究
から明らかになってきた。
クズの葉や茎、根に含まれる成分を調べたところ、ダイゼイン、プエラリンやゲニス
テインなどのイソフラボン類がたくさん含まれていた。河村教授は骨粗鬆症(こつそ
しょうしょう)になりやすくしたマウスに、乾燥させたクズの根からエタノールで
抽出した物質を経口投与した。
その結果、骨粗鬆症を予防する効果のあることが確認された。老齢マウスに対しても
同様の実験をしたところ、やはり同じ結果だった。河村教授はこれからクズのイソフ
ラボン効果を臨床的に検証する考えで、「クズは繁殖力が旺盛で邪魔者扱いされてき
ましたが、中高年女性の強い味方になるかもしれません」と話している。
クズにイソフラボンが含まれるといっても、精製された葛(くず)粉にイソフラボン
はほとんど含まれていない。日本では昔からクズの茎や葉を料理して食べていた。
クズ料理で女性が健康になれるかもしれない。(医療ジャーナリスト渡辺勉)
依頼です。ソースは
http://www.sankei.co.jp/news/evening/26bus003.htm