北海道知床で流氷に挟まれ死亡したシャチの死がいから高濃度のポリ塩化
ビフェニール(PCB)や水銀などが検出されたことが第一薬科大(福岡市)
と北海道医療大(北海道当別町)の共同研究で分かった。シャチは生態系の
頂点に立つ野生動物だけに、食物連鎖を通して有害物質が蓄積する「生物濃縮」
のすさまじさを示すデータとして注目される。
シャチは9頭が解剖された。脂身を分析した第一薬科大の原口浩一教授(健康化学)
が8頭(成獣6頭、子2頭)から得たデータによると、PCBの平均は51.7ppm
(ppmは100万分の1)で、北半球のミンククジラの脂身(平均0.63ppm)
の約82倍。厚生労働省が定めている、人間が食べた場合の魚介類の暫定規制値
0.5ppmの約103倍にあたる。比較的濃度が高いといわれる沿岸の小型鯨類の
平均(4.5ppm)と比べても11倍強で、群を抜いて高かった。
8頭の中には脂身のPCBが他の3分の1〜2分の1(22.16〜26.91ppm)
と低い雌2頭(いずれも4.7トン)がいた。北海道医療大の遠藤哲也講師(中毒代謝学)
は「雌は子を産むと子にPCBを移動させる。子を産んで体外にPCBを排出した後
だったのかもしれない。群れのDNA鑑定の結果が出れば、胎児へ移行するPCB汚染
の実態を示す貴重なデータになるだろう」と話す。
遠藤講師は9頭の肝臓と腎臓、脂身、筋肉などを分析、成獣の肝臓から総水銀を平均
で57.7ppm検出した。厚労省の同様の暫定規制値0.4ppmの約144倍になる。
最高値は雌(体重4.7トン)で、約245倍の97.8ppmだった。腎臓からも
平均7.58ppmを検出し、これも生物濃縮の一端を物語っている。
ただ、筋肉の総水銀量は1.36ppmと比較的低かった。これは沿岸で捕獲されるイシイルカ
やツチクジラとほぼ同水準。シャチは72年まで25年間で約1500頭が主に鯨油利用
を目的に捕獲されたが、肉などはほとんど利用されず、人間への影響はなかったとみられる。
生態系の頂点にあるシャチは寿命が30〜50歳。餌とする海獣類が取り込んだ重金属や
有機塩素系の物質は体外に排出されにくく、脂肪にPCBなどの有機塩素系化合物、内臓に
水銀が蓄積しやすい。アザラシなどの海獣類を長年食べてきた結果とみられる。
ソースは
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050306k0000m040135000c.html