刑務所からの出所者の自立を支援する「更生保護施設」のうち、男性を
対象とする全国94の施設の過半数にあたる53施設が、性犯罪前歴者の
入所を拒否していることが4日、読売新聞の全国調査で分かった。
「現在、受け入れている」と答えたのは3施設だけで、残る大半は「ケース
・バイ・ケース」などと慎重だった。受け入れを拒否している理由は、
「矯正が難しい」「住民の理解が得られない」などで、性犯罪前歴者については、
出所後、社会復帰するまでの受け皿が十分に整備されていないという実態が浮か
び上がった。
全国の更生保護施設は女性専用の7施設も含め101施設。年間の総入所者は
約1万人で、仮出所者が6割を占め、満期出所者が1割強、執行猶予者が1割弱など。
特に仮出所者や執行猶予者などは、居住地を保護観察所に届ける必要があるため、
身寄りがない場合は入所が義務付けられる。入所の可否は、保護観察官や施設職員
が身上書を見るなどして決めている。
今回の調査は、このうち男性を受け入れている全94施設を対象に行い、88施設
の責任者または管轄する保護観察所から回答があった。性犯罪前歴者を「受け入れ
ていない」としたのは53施設で、回答した施設の6割を占めた。
一方、性犯罪前歴者を受け入れている3施設も、調査時点での入所者はそれぞれ1人
にとどまった。残りの32施設は「ケース・バイ・ケース」としたが、「ほかの罪種
より慎重に判断し、ハードルを高くしている」(東北地方の施設)などと、受け入れ
には消極的だった。
入所拒否の理由について、「更生の難しい性犯罪と、一般刑法犯の前歴者を同一には
扱えない」などと答える施設が多く、神奈川県内の施設は「性犯罪は犯罪そのものが
目的で、刑務所での矯正は困難。入所中に事件を起こされたら地域から非難され、
施設の存続が危うくなる」と回答した。
性犯罪の場合、全国74の刑務所・拘置所のうち、専門の矯正プログラムを実施して
いるのは13施設だけで、矯正の効果が不明のまま出所する前歴者が少なくないとされる。
さらに、身寄りのない前歴者は、更生保護施設からも受け入れを拒否されると、居住地
も定まらないまま社会に出ざるを得ないのが現状だ。
警察庁の調査で「女児対象強姦(ごうかん)事件」の容疑者の2割が出所後、再び強姦
や強制わいせつを犯していることが判明したが、専門家の多くは「再犯率が高いのは、
更生に向けた支援があまりに不十分だからだ」と指摘している。
これについて、法務省保護局は「国が直接運営していないので、更生保護施設が性犯罪
前歴者を拒んでも仕方ないと考えてきた。しかし、今後は受け入れが進むようカウンセラー
などの専門家が常駐できる態勢作りを検討したい」とコメントしている。
ソースは
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050305it01.htm