写真家の石内都(いしうちみやこ)さんは今年、活躍が期待される美術作家の
一人。6月開幕の国際美術展「第51回ベネチア・ビエンナーレ」の日本館代表
として、4年前に84歳で亡くなった母の遺品を撮影した「Mother’s」
を出品する。
撮影した母の「遺品」とは、下着や使いかけの口紅、入れ歯など。「遺品という
には粗末なもの。捨てるのは簡単なはずだけど、たんすの中に母の『皮膚』が存在
しているように感じたのです。捨てられない、困った、とりあえず撮ろう、と」
身なりを整えるそれらの品々は、職業婦人らしく身なりを正した芯(しん)の強さ
を感じさせる。ところが「常に年下の夫を立てる性格が私の理想の母親像ではなく、
うまくコミュニケーションが取れない親子関係でした」と振り返る。
撮影によって「喪失感を自覚すると同時に、写真が私から離れて自立していった」
という。逆光で撮影されたガードルやスリップは、光がレースを透過して立体感を増し、
新たな命が吹き込まれたようにも見える。
「母」を追う個人的な視線から「女性」を見つめる客観的な視線へ。目に見える事象と
別の形で表れる「何か」をとらえようとする作品群は、遊郭だった建物や、同い年
(1947年生まれ)の女性の手や足、男性の傷跡などを撮った過去の作品とも共通する。
「写真を『どう撮るか』より、自分が『どう生きるか』をずっと考えてきました。今、
写真と自分がうまく調和しているように感じています」
15日から2月19日まで大阪市西区のサードギャラリーAya(06・6445・3557)
で開かれる個展で、ベネチアに先駆けて同シリーズの写真の一部と初公開の映像作品を発表する。
ソースは
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/women/news/20050114ddf014070031000c.html