体外受精卵の染色体異常や性別などを調べて選別する「着床前診断」を2002年から3例
実施していたことを、神戸市灘区の大谷産婦人科(大谷徹郎院長)が、3日明らかにした。
着床前診断は命の選別との批判があるため、日本産科婦人科学会は会告で、実施を
「重い遺伝病の診断」に限定しており、これまで申請を認めた例はない。同産婦人科では、
2例は男女産み分けを希望し、1例は染色体異常を心配し診断を望んだため実施したとしているが、
いずれも会告には該当しないとみられる。大谷院長は学会員だが申請しておらず、
生命倫理をめぐり波紋を広げそうだ。
大谷院長(48)によると、2002年末、女児を希望する女性を知人の医師から紹介された。
この女性は男児が2人おり、人工授精を計20回行って男児を妊娠したが出産には至らなかった。
このため翌年6月までに2回、性別が判定できる着床前診断を実施し、2回目で希望通り女児を妊娠。
近く出産するという。
2人目は男児を希望する女性で、昨年、着床前診断を経て妊娠したものの、自然流産した。
3人目の女性は高齢出産のため染色体異常を心配して、今年に入って着床前診断を実施した。
現在は受精卵の検査結果を待っている。いずれも学会の会告では認めないケースとされる。
検査は院内の技師が行い、費用は1回20万円。大谷院長は神戸大元助教授。「学会の指針には
なるべく従うが、職能団体にすぎず、100%拘束されるつもりはない」と話している。
同産婦人科のホームページには「体外受精や顕微授精で妊娠しても染色体異常が見つかることがあり、
とても悩むことになる。異常の有無を検査しておけば、悩みを未然に防げる」との説明を載せている。
着床前診断について日本産科婦人科学会は98年、治療法のない重い遺伝病に限り、個別審査を
条件に容認した。99年、鹿児島大が筋ジストロフィーの可能性を調べる申請を出したが、学会は
「診断法が適切ではない」と却下。同年、福岡県の開業医が申請した習慣性流産の診断も
「重い遺伝病とは言えない」と退けた。
現在、名古屋市立大と慶応大が申請した筋ジストロフィーの遺伝子検査による診断を審査している。
◆着床前診断=不妊治療の技術である体外受精を利用し、染色体や遺伝子の異常などを検査、
多数の受精卵から問題のないものだけを選んで着床させる。米、伊などでは規制はなく、
英、仏では条件付きで実施。1997年までに欧米35施設で377組が診断を受け、
96人が出生したという。米では男女産み分け目的でも使われている。
ソース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040204-00000001-yom-soci 着床前診断、生命の選別進む懸念も
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20040204ic04.htm 大谷産婦人科 不妊センター
http://www.otani.org/