牛由来の成分が入ってる化粧品リスト その2

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噂の真相2002年2月号

<表紙>「狂牛病を巡る資生堂の絶対タブー」
なぜか触れられない大手メーカー化粧品の危険性。
しかも厚生省までがこのメーカーに配慮を……。

<本文>狂牛病対策で大ピンチを乗り切ったマスコミタブー・資生堂の“政治力”
レポーター・森沢博美

◎資生堂化粧品をめぐる不可解な措置

 坂口力厚生労働大臣と武部勤農林水産大臣による「安全宣言」にもかかわらず、狂牛病
(牛海綿状脳症=以下BSE)に対する消費者の不安心理は一向に払拭されていない。本
誌2001年12月号でも指摘したように、その理由の一端は食肉に代表される関連業界と
政界との腐れ縁にある。皮肉なことに、両大臣がテレビカメラの前で牛肉をパクつくパフ
ォーマンスを演じれば演じるほど、安全宣言に対する消費者の不信感がかえって増幅され
てきたことは周知の通り。
 しかし、狂牛病の恐怖はなにも食品に限った話ではない。実は、表立った報道こそ手控
えられてはいるが、牛に由来する化粧品や医薬品などにも同様の潜在的危険性が指摘され
ている。なかでも最大の“マスコミタブー”といわれているのが「化粧品」で、マスコミ
は大スポンサーにあたる化粧品メーカーにまったく頭が上がらない。
 そして、この化粧品業界において、大きな疑惑が隠蔽されようとしているというのだ。
「狂牛病に関連して、危険部位とされる『胎盤』を使用した製品については、各メーカー
とも早々に回収に着手し、ほぼ回収が終わっているようです。しかし、最も危険な部位と
される『脳』を使用した製品はまったくの手付かず状態なんです。しかも『脳』を使った
製品のほとんどは業界最大手の資生堂の製品なんです」(化粧品業界関係者)
 一体、どういうことなのか――。
 ここに驚くべきデータがある。「BSEに関するリスクのクラス分類表に基づく報告及
び回収の状況」と題されたこのデータは厚労省が報道発表資料としてホームページに掲載
しているもので、製品の回収や原料の切り替えが必要な医薬品、医療用具、医薬部外品お
よび化粧品の合計およそ4000品目について、1品目ごとの「リスクのクラス分類」
「製品名」「会社名」「(原料などの)使用部位」「(牛の)原産国」「回収状況」などが記
載されている。データは月単位で更新されているようだが、注目すべきは化粧品およそ2
900品目に関する「リスクのクラス分類」と「使用部位」だ。
 そこには牛のなかで最も危険とされる「脳」を使用した化粧製品がズラリと並んで
いるのだが、およそ1500品目にも及ぶ製品のほとんどが資生堂の製品なのである。
「資生堂はこれまでコストが膨大にかかるヒアルロン酸を牛の脳を培地とする方法で安価
に精製することに成功し、その方法で特許を取得しているんです。ですから、『脳』を使
用した商品は、ほとんどといっていいほど資生堂の製品なんです。しかも、指導対象とな
った資生堂製品の8割がこの特許を使ったヒアルロン酸=『脳』を使っている」(化粧品
のバイオ技術に詳しい関係者)
 ところが、である。驚くべきことにこの「脳」を使用した製品に対する厚労省の「リ
スクのクラス分類」はなぜか最も危険度の低いカテゴリーに分類されているのだ。
 ちなみに厚労省がリスクのクラス分類別に決定した指導内容は、最も危険度の高い
『イ』のカテゴリーが「ただちに製品を回収すること」、次に危険度の高い『ロ』が「す
みやかに製品を回収すること」、最も危険度の低い『ハ』が「できるだけ早く原材料を切
り替えること」である。
 そして「脳」を使用した製品は、危険度の最も低い『ハ』になっているのだ。
 例えば、化粧品に多く使用されている『胎盤』の分類は危険度の高い『ロ』だ。胎盤は脳
に比べて危険度の低い部位とされている。にもかかわらず、厚労省の分類においては、逆
に脳より危険ということになっているのだ。
 中堅化粧品メーカー関係者もこう指摘する。
「化粧品メーカーにとって、これはまさに死活問題です。イとロの場合はいずれもすべて
の製品の回収をしなければならないが、ハの場合は既存の製品については回収の必要がなく、
新規の製品についてのみ安全な原料に切り替えればいいとされているんです。回収に伴う
損害を考えると、イとロは地獄、ハは天国ですからね。厚労省が採用している欧州の基準で
も、脳は最も危険度の高いカテゴリーT、胎盤は次に危険度の高いカテゴリーUに分類され
ています。が、日本の厚労省が化粧品などについて試算すると、脳は甘いハの処分、胎盤
は厳しいロの処分になってしまうんです」
 つまり、この関係者は「厚労省が業界トップの資生堂を保護するため基準に手心を加え
て、意図的に胎盤より脳の危険度を低くした」といっているのだ。実際、厚労省が作成
した「BSEに関するリスクのクラス分類表」を見ると、最もリスクの高い状態を1と
した場合、イのカテゴリーのリスクは1万分の1から100万分の1、ロのリスクは1億
分の1、ハのリスクは100億分の1とされている。要するに、厚労省は最も危険度の高
い脳を使用した化粧品のリスクは脳の次に危険度の高い胎盤を使用した化粧品のリスクに
比較して100倍も安全であり、したがって今後の原料だけを切り替えるハの処分でかま
わないと判断しているわけだ。
 その根拠として挙げられるのは、化粧品に牛の部位を使用する場合、脳と胎盤ではその
使用方法に大きな違いがあるというものだ。
 胎盤の場合は「プラセンタ」という化学物質を胎盤そのものから抽出し、化粧品に使用
している。
 一方の脳の場合、保湿硬化を持つ「ヒアルロン酸」という化学物質を、牛の脳を培地に
して、ある菌を増殖させ精製している。ヒアルロン酸は鶏のとさかから抽出することもで
きるが、コストがかかり過ぎるという難点があった。資生堂はこの難点を牛の脳を培地に
することでコストを15分の1にすることに成功した。これが特許を取得した製法だ。
 このような製法の違いから、プラセンタが「牛の胎盤を原料」あるいは「胎盤抽出エキ
ス」などとダイレクトに表現されているのに対し、ヒアルロン酸は「牛の脳に由来」など
と婉曲的に表現されているのだ。
◎科学的根拠を欠く処分決定プロセス

 しかし、厚労省がいくらこう主張したところで、化粧品を買わされる消費者サイドには
依然として2つの不安と疑問が残る。
 すなわち、1つは、欧州基準で最も危険度の高い部位とされる脳を使用しているにもか
かわらず、今後の原料だけを切り替えるという甘い処分でかまわないとする厚労省の試算
に誤りはないのかという絶対矛盾の問題。そして、もう1つは、仮に厚労省の試算が科学的
に正しかったとして、脳を使用した場合の100億分の1のリスクと胎盤を使用した場合
の1億分の1のリスクを比較した際、そこに一方がハで一方がロという現実的な処分の違
いを決定づけるに足る科学的な有意差が存在しているのかという相対矛盾の問題である。
 実際、この厚生労働省の分類に関わったある専門家から驚くべき証言が飛び出した。こ
こではX教授とするが、厚労省の狂牛病対策委員会のメンバーにもなっている狂牛病の権
威である。そのX教授が本誌のインタビューにこう答えたのだ。
――厚労省の決定に絶対矛盾はないのか。
X教授 結論からいってしまえば、現在はまだ絶対矛盾があるのかないのかさえ科学的に
証明できていない段階にあります。牛の脳を培地にしているだけとはいっても、ヒアルロ
ン酸は脳を栄養源として精製されるわけですから、危険度はゼロとはいえません。事実、
国際基準では、こうしたケースでも危険と判断しています。一方の牛の胎盤から抽出され
るプラセンタについても同様で、危険か安全かの科学的立証は難しく、米国のように安全
と判断している国もあるくらいです。
――絶対的な基準はないということか。
X教授 もともと厚労省の基準は予防的見地から作成されたもので、少なくとも科学的絶
対性をもつものではありません。
――とすれば、ヒアルロン酸はハではなく、イやロの処分とすべきではないのか。
X教授 安全性を最優先させるという意味では、回収が最も適切な措置だということにな
ります。実は、専門家を集めた厚労省の狂牛病対策の委員会でも、以前は牛の脳に由来す
るヒアルロン酸は“回収”との意見が大勢を占めていたんですが、途中から厚労省サイド
の強い意向で“原料の切り替え”に変わったという経緯があります。厚労省の主張は『ヒ
アルロン酸は純粋なアミノ酸に近い段階まで精製されるため危険はない』というもので
したが、委員の多くはこの主張に政治的な意図を感じ取っていました。
――食品と化粧品で違いあるのか。
X教授 マウスの皮膚にプリオンを塗り込むという海外の実験では、マウスに狂牛病の感
染例はありませんでした。ただ、化粧品の場合も、食品と同じように口から摂取したり、
目の粘膜から摂取したりしたときには、感染の危険性があるとされています。

 以上の話を総合すると、狂牛病対策委員会において、多くの専門家が化粧製品の「脳」
の扱いについて懸念を示したにもかかわらず、厚労省が政治的圧力をかけ、危険リスク
ランキングを“不当に”落としたことが、はっきりとわかる。
 その上で厚労省は最も危険とされる牛の脳に由来する化粧品には「原料の切り替え」と
いう手ぬるい処分を下し、脳の次に危険とされる胎盤を原料とする化粧品の一部には「回
収」という手厳しい処分を下したことになる。厚労省の不透明な処分決定の裏には何が
あったのか。
◎資生堂が橋龍を使って厚労省に圧力!?

 実は、千葉県で狂牛病の牛第1号が発見された約1ヵ月後の昨年10月、複数の人物から
本誌編集部に対して匿名の内部告発があった。告発の内容は「騒動の直後、資生堂幹部
がなにかと関係の深い自民党厚生族のドン・橋本龍太郎に泣きつき、ヒアルロン酸を使っ
た資生堂化粧品を回収の対象にしないよう、厚労省に圧力をかけた」というものだ。
 事実、その後、厚労省は牛の脳に由来するヒアルロン酸を使った資生堂化粧品の処分に
ついて不自然ともいえる動きを見せた。
 一昨年12月、厚労省は牛の原産国がどこであろうと、狂牛病感染リスクの高い部位を
化粧品や医薬品などに使用することを禁止した。使用禁止とされた部位は脳、脊髄、眼、
胎盤、リンパ節、回腸、硬膜、肝臓、肺、膵臓だが、厚労省は既存の製品の回収までは指
示しなかった。ところが、千葉県での狂牛病の牛第1号の発見を受け、昨年10月2日、厚
労省はすでに市場に出回っている製品についてもメーカーに回収するように指導した。それ
が同月29日になって、厚労省は「狂牛病が発生していない国の牛を使用した化粧品は回収
の必要なし」との決定を下したのである。
 事情通の厚労省関係者が指摘する。
「狂牛病が発生していない国とは米国やオーストラリア、ニュージーランド、インドなど
ですが、資生堂が使用しているのは免責対象とされたインドの牛脳なんです。二転三転し
た厚労省のこの決定によって、資生堂はヒアルロン酸を使った既存の化粧品を市場から回
収しなくてもいいことになりました。一説には昨年10月2日から29日までの間に資生堂サ
イドから厚労省サイドになんらかの働きかけがあったともいわれており、それが不可解な
方針変更につながったのではないかとの見方も出ています」
 しかも、先にX教授がいみじくも指摘したように、この時期は厚労省の強い意向によっ
てヒアルロン酸を使った資生堂化粧品が「回収」から「原料の切り替え」に処分変更され
た時期ともちょうど重なっている。状況証拠はまさに真っ黒状態なのである。
「自民党の政治資金団体である国民政治協会には毎年100万円の政治献金が資生堂から
なされているんですが、なかでも橋龍こと橋本龍太郎は厚生族として化粧品業界とは関係
が深いですからね。橋龍と資生堂の福原義春名誉会長は慶応大学出身者で構成される卒業
生評議員にも名前を列ねていますし、橋龍は資生堂主催、協賛のイベントにも顔を出して
います。橋龍があのテカテカ頭を整えているのも実は資生堂のヘアクリーム『アウスレー
ゼ』ですしね(笑)」(自民党関係者)
 93年2月、ドラッグストアをはじめとする安売り店での化粧品や医薬品などの廉売問題
が持ち上がったとき、全国医薬品小売商業組合連合会から陳情を受け、公正取引委員会に
不当な圧力をかけたのも橋本だといわれている。橋本はたびたび公取委に電話をかけ、つ
いには事務局長を怒鳴りつけたともいわれているが、この問題をめぐっては「正当な価格
競争で不当廉売ではない」「橋本の圧力こそ不当だ」との批判も巻き起こった。
 続く同年9月、不当廉売を理由に資生堂が安売り店への出荷を停止した際、公正取引委
員会は資生堂系列の販売会社に立ち入り検査を実施した。このとき公取委は資生堂本社に
も立ち入り検査を実施する予定だったが、検査の数日前になって、突然、公取委の審査部
長が資生堂本社への立ち入り検査の中止を指示した。このとき審査部長は「天の声だ」と
呟いたといわれている。結局、これから2ヵ月後、資生堂本社への立ち入り検査自体は実
施されたが、いったんストップをかけた天の声の主は橋本だったとも囁かれているのだ。
 まさに赫々たる"前科"といっていい。
 ところで、今回の“特別措置”によって、資生堂はどのくらいの損失を帳消しにするこ
とができたのか。その金額いかんによっては、たんなる“口利き疑惑”では済まされな
い可能性も出てくるはずだ。
◎300億円を帳消しにした資生堂

 昨年11月、資生堂は2001年9月中間連結決算を発表し、通期で見た場合、狂牛病対
策として牛の危険部位を使っている可能性のある商品の回収費用に40億円、全成分表示を
していない化粧品の在庫の自主処分と合わせて合計315億円の特別損失を計上する見込
みになったとの特別報告を行った。
「実は、牛の危険部位を使った資生堂化粧品のうち、厚労省から回収指示があった品目は
200品目とちょっと。大半は胎盤から抽出したプラセンタを使った化粧品で、厚労省か
らリスクのクラス分類でロにカテゴライズされた品目です。これに対して、脳に由来する
ヒアルロン酸を使った化粧品は実に1500品目前後にも及びます。もしこれらが回収の
指示を受けていたとしたら、200品目で40億円ですから、単純計算でも1500品目と
してその7.5倍、すなわち300億円の特別損失を新たに計上しなければならないハメ
になったわけです」(資生堂幹部)
 ちなみに、全成分表示をしていない商品の自主処分費用として計上された275億円は
一連の狂牛病騒動とは一線を画する薬事法改正に伴う特別損失であり、一部には「これを
資生堂が狂牛病対策に自主的に取り組んでいるための出費のように見せかけているあたり
がいかにもセコい」(同・資生堂幹部)との声もある。とはいえ、仮に厚労省が件の15
00品目をリスクのクラス分類でロにカテゴライズしたとしたら、資生堂は2001年通
期決算で40億円プラス275億円プラス300億円の「合計615億円」もの莫大な特別
損失を計上しなければならなかった計算になる。これのうちの300億円分が年間100
万円程度の政治献金で帳消しになるなら、資生堂にとっても悪い話ではない。
 資生堂が厚労省に圧力をかけたとされる一件を含む一連の疑惑を問い質すべく東京・銀
座にある資生堂本社の広報部を直撃すると、いささか困惑ぎみの担当者から次のような回
答が返ってきた。
「そうなんですか、そんな話が出ているんですか。(苦笑しつつ)勉強にはなりますが、
圧力をかけた事実などありませんよ。牛の脳は培地に使っているだけで、ヒアルロン酸は
脳から抽出された物質ではありません。しかも、当社が使用している牛は生後6ヵ月以内
のインド産の仔牛で、危険性にまったく問題はありません。たしかにすでに市場に出回っ
ている商品については売り切ってしまうことになってはいますが、それ以後の商品につい
ては培地を牛の脳から大豆に変えて対応しています。それにしても、圧力をかけたなんて
いう見方をされているとは驚きですよ」
 オトボケなのか自信があるのか、暖簾に腕押し、糠に釘の対応なのである。
 一方の厚労省はどうか。実は、資生堂への直撃取材の後、何度も担当課に問い合わせの
電話を入れたが、すべて「担当者は席をはずしています」との答えが返ってくるばかりだ
った。資生堂から厚労省に連絡が入っているのではないかと疑いたくもなる対応だ。
 資生堂、厚労省とも“圧力”の存在については否定するだろうし、“政治的圧力”は現
時点では断定できない。しかし、少なくとも「牛脳」という一般的にいっても最も危険な
部位が使用された資生堂製品がいまだ回収もされず出回っていること、そして、厚労省が
化粧品に使用される「脳」の危険度をなぜか、不当に低くランキングしているのは事実
なのだ。
 現時点では科学的立証がなされていないとはいえ、万が一、何年も先、発症例が出た場
合、厚労省そして資生堂はどう責任をとるつもりなのだろうか。
 これでは大量の感染者そして大量の逮捕者まで出した薬害エイズ問題とまったく同じ罪
を犯そうとしているのも同然ではないか。
 いや、厚労省だけではない。資生堂といえば、女性誌を始め、大手新聞社にも大量の広告
を出稿しているため、一種“マスコミタブー”となっている巨大企業。そのためか、同様の
告発が本誌以外のいくつかのメディアにもなされた形跡があったにもかかわらず、現在ま
でこの問題を報じたメディアは皆無なのだ。
 それを裏付けるように、昨年11月以降、資生堂は日経新聞夕刊を始めとして派手な安全
PRキャンペーンを展開している。
 巨額の広告費に目がくらみ、重要な問題を隠蔽するマスコミ、そして大企業と政治家や
官僚との不透明な関係はいつまで続くのだろうか。(敬称略)