今日もリンクたちと探索を続ける。
裏手の日陰の多い森で、カラスノエンドウのようなサヤを実らせる蔓性の植物を発見する。
リンクに剣で切らせるとサヤのなかからブーメランを発見した。宝箱にはいっていたものと、一寸違わない。
これでブーメランが5個増えた。23人のうち15人も使えるのだ。心強い。
また密林を進むと、パーツを発見した。今日も順調だ。
蔦に絡まって木にぶら下がっている。近づいてリンクのブーメランで切ってやろう。
そう思って近寄ると――
「ウワア!」
視界が暗くなる。リンクの悲鳴が聞こえた。
巨大な円筒状のナメコのような生き物が、リンクを足から呑み込んでいた。生ゴミのような悪臭を発しながらテラテラと光る肌色の肉襞が蠕動し、泣きそうになって手をばたつかせるリンクを引きずり込む。
私はパニックになりながら叫んだ。その声をきいたリンクたちがブーメランを構え、ナメコに投げつける。
だがブーメランは表面のぬめりに滑らされ、いっこうに傷を与えない。リンクたちはそれでも飽きずに投げ続ける。化け物の中腹が膨らんでいるのがわかる。
あのなかにリンクがいる。小さな悲鳴が聞こえるようだった。歯がゆさに全身の血が沸騰する。
装備をもたないリンクは剣を抜き、斬りかかっていた。傷つけられるたびに肉壁がわななき、ぴちゃぴちゃと汚水を垂れ流した。何度も傷を受けた怪物は全身を痙攣させ、ペッとリンクを吐き出した。
私の足下にリンクが転がる。薄く溶いた糊のような粘液が全身を濡らしている。いつもは薔薇色に輝く頬も汚れ、顎から首筋までドロドロになっていた。チェニックの裾がぴったりと足に張り付いて薄く透けている。
「ぅーむう?」
リンクは朝を迎えた幼子のように身体を起こす。手についたゲル質を気持ち悪そうに振り払い、汚物を唾とともに吐き捨てた。
私は強く笛を吹き、リンクを呼び寄せると、そこから撤退した。
水辺でしばらく休息をとる。呑み込まれたリンクを簡単に洗ってやった。
どうやら怪我はなく、卵白のような体液も消化液ではないらしい。変化があるとすればブーメランを盗られたということだった。あの化け物はブーメランを食べるのだろうか?
この惑星にも危険な生物がいるということがショックだった。
リンクたちが剣を結わえているのを考えれば、猛獣がいることは簡単に予測できたはずなのだが……。
パーツの下にはナメコ――ライクライクが蠢いている。(ブーメランを食うなんて蓼食う虫も好き好きだ、ということでそう名づけた)
ブーメランの射程圏内にはいれば、襲いかかってくるだろう。そして先ほどのようにブーメランを食べてしまうに違いない。
私たちは一度デクの樹に戻ることにした。そしてブーメランを宝箱に戻す。
ブーメランが効かないのならば、剣で仕留めてしまおう。
ライクライクのそばに戻る。先ほどはどこからか落ちてきたようだ。今はうねうねとパーツの下で獲物を探している。
先ほどは狂乱しまったが、冷静に考えればさほどやっかいな敵ではなさそうだ。動きは遅いし、リンクを傷つけるワケではない。長く呑み込まれるとどうなるか判らないが……。
私はライクライクにターゲットをあわせ、Aを長押しした。
リンクがときの声を向かっていく。敵はその円筒を曲げリンクを呑み込もうとするが、そのたびに斬りつけられ怯んだ。23人で囲い、剣を振るうとあっというまに倒せてしまった。
私はほっと肩の力を抜く。
彼らを褒めてやらねばなるまい。そう思って近づくと、彼らはライクライクの死体を持ち上げ、運び始めた。小さく掛け声を出し合いながらデクの樹のほうへと運んでいく。
リンクにはだいぶ慣れたつもりでいた私だったが、これには驚いてしまった。あんあ気持ち悪いものをどうして……。だが彼らは彼らなりの考えがあるのだろう。追うことにする。
死体はデクの樹に吸い込まれ、実が3つ生った。
私は少々の驚きを隠せなかった。彼らはハートの器以外も養分にするのだ。
リンクたちがブーメランを手に無邪気に笑いながら近寄ってくる。
もしかしたら私もあの化け物のように殺され、栄養になってしまうのだろうか。
私が樹に吸い込まれ、実が2つなる映像を浮かべてゾッとした。
「うーう?」
表情をかえる私をリンクが覗き込み、心配そうに小さく眉頭を寄せる。周りのリンクも気づき、全員から心配されてしまった。
そうだ、彼らがそんなことをするはずがない。
こんなにも私に尽くしてくれるではないか……。
ライクライクのそばのパーツを取り忘れていることを思い出し、リンクたちを引き連れて向かった。余計な怪物がいないことを確認すると、ブーメランで蔦を切っていく。無事に落ちたパーツを拾わせて、回収は成功した。
さらに奥へと探索を続ける。
すると猪のような顔を持った怪物が昼寝をしているのを発見した。私の2倍ほどの身長で、槍を手に細い通路をふさいでいる。ブリンブリンという、唇を窄めて吹いた時のようなイビキをたてて肩を揺らすその奥にはパーツが転がってた。
リンクが私の足に隠れ、その怪物――モリブリンを伺っている。
私は一計を案じることにした。このままリンクを突撃されたら通路が邪魔をして、一度に、2,3人でしか攻撃することができないだろう。そうしたらあの槍に突かれてしまう。
ブーメランを投げてあえて起こすのだ。そして通路のこちらがわでヤツがやってくるのを待とう。囲んで攻撃してしまえば、傷つかずに回収できそうだ。
ターゲットをあわせてAでリンクに命令をする。
リンクのブーメランが風を切り裂く。見守るリンクたちの目がそれを追うと、ブーメランは鼻チョウチンを割って戻ってきた。
寝ぼけたモリブリンが顔を振る。そして私たちをみつけると――槍をみつけて突進してきた。
奴が通路から出たところで攻撃を命じる。
剣を手に踊りかかり、四方八方から木の刃がぶつかる。モリブリンは猛攻撃にひるみ、哀れなダンスをした。
このままとどめをさすかとおもえた矢先、最後の力で槍を突きだしてきた。
「――っ!」
リンクが悲鳴をあげる。それに重るように、モリブリンが断末魔を上げた。
私はあわてて駆け寄る。槍を喰らった3人のリンクは、膝に手をついて肩で荒い呼吸を繰り返している。近寄ると、なんでもないかのように背を伸ばし、命令をまついつもの表情で私を見る。
痛々しさに見ていられない。ハートが一つ減っているようだった。死に至るほどの怪我ではないものの、早く回復してやらなくては……。
パーツのそばにとっくり状の奇妙な植物があった。上部で茂るシダのような葉はよく見るものなのだが、その幹が白を地に黒い斑点をちらした――要するに牛柄であった。
地面近くには肌色のこぶのようなものがあり、親指を膨らませたような突起が飛び出している。先端は濡れていた。
リンクがそれをどこか期待した目で見ていた。獲物やハートの器をみつけたときと同じ表情だ。私は調査を命じる。
リンクは近寄ると首を回して木を観察した。膝をつくとこぶや突起に触れる。弾力のある素材のようだ。くんくんと匂いを嗅ぐと、突起をもち、パクリと咥えてしまった。
顎を地面に付けるようにして尻を突きだし犬のような恰好で、可愛い唇をしめらせながら、ングングと喉を鳴らす。
突起から液体が出ているらしい。
突起の根元を手で扱き、腹を満たすように懸命に唇を動かす。その行為そのものが楽しいようで、首を上下に揺らしながら突起を絞り上げる。
溢れたものを口の端からトロリと垂れた。
「ぷはー」
飲み終わるとリンクは頬を紅潮させて私を見た。
甘いミルクの匂いがする。
リンクの顎についた液体を指でとり成分検査をすると、たんぱく質を特に多く含んだ完全栄養食であると出た。ゼラチンたっぷりの牛乳ゼリーにそっくりの栄養価だ。
私はリンクたちに呑ませることにした。
突起は肌色のこぶから数本出ており、リンクが母犬の乳に群がる小犬のようだった。ハート回復の効果があるようで、リンクの怪我が消えた。
全員に呑ませ終えるころには突起がしおしおと萎え、こぶもしぼんでしまった。
モリブリンの死体とパーツを運び、夕暮れまでに時間があったので怪物をさがして狩りをすることにした。
リンクは一人でも優秀な戦士だが、きちんと統率をとることでさらに力を得ることがわかった。3匹目のモリブリンを狩るころには、奴に槍を扱わせる隙を作ることなく息の根をとめることができるようになっていた。
リンクは今44人いる。
この惑星の生物は凶悪だが、私の総統とリンクの力があれば、大したことはあるまい。
パーツも順調にあつまっている。このままうまく見つけることができれば、星から脱出できるだろう。さていざ脱出できることになったらリンクはどうしようか? 2人までは宇宙船にのせることができるが、それ以上は……。
私に手を振りながらデクの樹の口に帰っていくリンクをみながら考える。リンクは私の星でもいきていけるだろうか? デクの樹ごともっていく必要があるだろうか。
宇宙船に帰ってからもそのシミュレーションは続いた。
911 :
【取り扱い説明書】:01/12/14 12:08
■リンクの状態
リンクが怪我をするとハートが減っていきます。0になると死んでしまいま
す。
ハートの状態はリンクを観察することや、情報画面で確認できます。
ハート3つ 健康状態です
ハート2つ 止まると肩で息をします
ハート1つ 足を引きずり、歩行スピードがダウンしてしまいます
回復には?
デクの樹に戻します
牛乳を飲みます
トライフォースマークのところにいきます