「ゼルダ」の大人リンクせくしーだ

　今日はリンクとデートの日。
　クリスマス仕様のモスバーガーで改札口を睨んでいると
「顔が怖くなってる」
　後ろから目を覆われた。
　リンク、と抗議の声を上げると
「スパイクローク。結構かっこいいだろ。借りものだけど」
　金の髪緑の服。いつものリンクが鮮やかに空中から現れた。
　可愛い悪戯に思わずにやけてしまう。俺もたいがいしょうがない。

　東京は人が多すぎるのかリンクがあの有名な格好のまま歩いていても意外と目立たない。
調布で警察官に呼び止められたときは、ついに職務質問かとおもったが
「あの……リンクさんですよね。ディスクシステムのときからファンなんです！」
ときたものだ。
　リンクは照れくさそうに笑ってサインしていた。
　こういうファンのためにマジカルソードや、かいがらを持ち歩くリンクが好きだ。
「フェアリーやリフレクト使って！　なんていわれると困んだよなあ」
　そういいつつ、今でもしっかり唱えられることを俺は知っている。

　ハリーポッターを見に行くつもりが立ち見だったのでやめにして、近所のゲーセンへ。エアーホッケーのリベンジを挑んだ俺が馬鹿だった。あの反射神経にかなうわけがない。
　ボーリングでは対等の勝負を楽しめた。
「手先の器用さがいるのは苦手だ」
　リンクが手こずる様子をみるのは、ちょっと気分がいい。
　バーチャ４ではやっぱりボロ負け。１から使い込んだリンクのサラは早すぎる。本人にワザの手ほどきをうけたときいたときは、ついつい「寝技？」とからかったものだ。

　冬物をちょっと買い込む。
　あいつは服のセンスがイマイチで、値札に騙されて安物買いする傾向がある。
　今日も安くてダサいダッフルコートにつられていたので、メンズコーナーに引っ張っていく。いくつか選んで試着室にはいったら抱きつかれた。
　だからそういうことされると興奮するって。
　ちょっとお触りしてしまった……。

　帰り道。６時前だというのにもう真っ暗。
　俺から腕を絡めて歩いた。
　コンビニの前を通るときは少し緊張をする。
「俺がスパイクロークつければ堂々と歩けるな」
　リンクのこういう気の回しかたを感じていると、不安になる。こいつはどこまでも独りで、どこまでも旅人なんじゃないかと。長い人生のなかで、俺はほんのひとときの、気まぐれでひろった恋人なんじゃないかと。
　腕を引いて、肩に甘える。
「なんだよ。したいのか？」
　クスクスと撫でてくれる。
　女々しく独占してしまいたい思いに囚われながら、同時に、俺はほんの止まり木でいいと感じる。リンクは誰のものでもなく、自由にハイラルを駆けるヒーローなのだから。

　コンビニに寄って、おでんと使い捨てカメラを買った。
　レジの女性が大のゼル伝ファンで、さっそく使うことになった。
　ファインダーのなかのリンクは、惚れ直すほどリンクだった。
　悔しかったので、帰ったら俺との写真をたくさん撮ってやろう。
　えっちな写真も撮ってやろうと、心に決めた。