【2007】クソゲーオブザイヤー part7【総合】
空気読まずにGT5Pの選評を投下してみる。長いよ。
ハイレベルなクソゲーがキラ星のごとく輩出された2007年に於いて、年末に一年遅れで
ひっそりとやってきた、周回遅れのクソゲーがあった。
グランツーリスモ5プロローグ(以下GT5P)、そう、かの名作レースゲームシリーズ、
グランツーリスモの最新作である。
「リアルカーライフシミュレーター」「オンラインカーライフシミュレーター」を標榜し、
苦戦が続くPS3の、反転攻勢の切り札であるはずだった。
GT5Pの歴史はまさに延期の歴史であった。
直系の先祖にあたるGTHDの頃から製作サイドが迷走を続け、当初2006年末発売(+オンライン
アップデート)の予定であったものが、2007年7月、10月、12月と遅延し、その間にGT5とGT5P
は、データを引継げるものの別の作品として扱われることになった。ついには、マーケティン
グ的な最終期限であったトーキョーモーターショー2007に製品版を間に合わせることすら出来
ず、最終的には12月13日の発売となった。
過去のクソゲーの経験則では、延期を繰り返すということは製作管理上の問題を抱えていると
いうことであり、非常に期待できる状況であったといえる。
そして2007年12月11日、GT5P発売日の2日前、製作サイドから驚くべき事実が公表された。
なんと、GT5Pのオンラインサービスは12月25日から開始となる、というのである。
ここで言うオンラインサービスは、映像配信のGT-TV、マッチングサービス、オンラインランキングである。
GT5P発売当初は収録車種は37種しかなく、チューニングも未実装、オフラインでの二人対戦で
すら未実装であり、13日に購入しても25日までほとんどやることが無いのだ。
このようなていたらくであるから、当然ユーザーは様子見に走り、発売初日には小売関係者の
「おかしい、なにかがおかしい……」との悲鳴が報道される有様であった。
悲鳴を上げたのは小売関係者だけではなかった。
次世代のリアルレースシミュレーターという触れ込みに期待していた発売日購入組も、もれなく
絶望の淵へとたたきこまれた。
レースシミュレーターとしての出来があまりに粗末であったのである。
GTシリーズのプロデューサーにして製作会社ポリフォニーデジタル代表取締役、山内一典は、
発売前、GT5Pを次世代レースゲーの代名詞とすべく、様々な新規要素の導入を謳っていた。
曰く、1080p60fps・ダメージ・天候変化・高度な挙動・高度なAI・SNSサービス(mixiみたい
なもの)等、実現すれば間違いなく、現存するレースゲーの最高峰となると思われた。
しかし、現実は冷酷である。
ユーザーが直面したのは、解像度と車のモデリング以外まるで見る所の無い、
「自称リアルカーレースシミュレーター」だったのである。以下に主な不備を列挙する。
・前作からの課題であった、「壁走り(壁に車体を擦り付けながら走ったほうが真っ直ぐ走るよ
り速い)」に代表される挙動はほとんど改善されていない。
・敵車AIはまったく個性が無くスクリプト並の知性も無い。
・挙動や敵車とのバトルの前提となる、コースの出来についても、全体に平滑すぎる上にタイヤ痕が
付かない仕様となっており、レースゲームで重要となる路面情報を、ゲーム画面から読み取ること
はきわめて困難である。
・ゲームを盛り上げる効果音については、スキール音、給排気音、クラッシュ音、どれをとっても
いいかげんであり、後日配信されたGT-TVによって、実車との違いがより一層強調される皮肉な
結果となった。
・ダメージ表現と天候変化は大胆にカットされており、その片鱗すらない。
・1080p60fpsと大見得を切ったレンダリング解像度・リフレッシュレートについても、実際には
スケーリングと可変fpsによる対応となった。
・また、GT5P自体はハンドルコントローラーによる操作に対応しているのだが、G25等の高級
ハンドルコントローラーの挙動に対して、ゲーム内のドライバーの動作が対応しておらず
ハイエンドゲーマーの要求にこたえられていない。
さらに、ショートカット・接触等に対するペナルティの実装も到底次世代と言えるものではなかった。
上述の「壁走り」については「壁走りペナルティ(ゲーム内の公式用語)」なるものが設定され、
壁に接触するとエンジン回転数が抑えられ、数秒間加速が出来なくなる。
そんなもん実装する前に壁との摩擦で自然に減速するよう車両物理を実装するべきだろ。
アホか。
……失礼、取り乱してしまった。
ショートカット等についても同様で、芝生や砂の上を走るから、もしくは先行車両にぶつかっ
た反動で減速するのではなく、それぞれ決められた時間加速できなくなる、という到底リアル
とは言えない実装となっている。この点に限れば、マリオカートにすら劣ると言われるほどである。
あまりの出来に絶句しつつも、ユーザーたちは12月25日のアップデートを待ち続けた。
多くのGTファンが、GT5PのためにPS3を購入していた。
あるものは過去の栄光にすがり、「ポリフォニーの、ソニーの技術はこんなもんであるはずがない」
と言い、アップデートで全てが解決されると主張した。
またあるものは、「ウン万円出してPS3とハンコンまで買い揃えたのに、クソゲーであるはずがない」
とコンコルド錯誤に似た自己暗示を信じ込もうとした。
KOTYスレの慣例から言っても、アップデートによって年内に改善が図られれば、クソゲーの定義から
脱するはずであった。ところが……
ポリフォニーデジタルの技術力は、ユーザーたちの期待をあざ笑うかのように、アップデート及び
オンラインサービス開始によって、まったく新しい「オンラインカーライフシミュレーター」の
地平を切り開いてしまったのである。
12月25日、オンラインサービスの開始とともに、ユーザーたちは、自分たちが
「オンラインカーライフシミュレーター」とは違うジャンルのゲームを買ってしまったことに気が付いた。
待望のオンラインサービスは、サーバー側で決められたルールとコースと車種の組み合わせしか無く、
ランダムマッチのみでフレンドマッチは無く、ボイスチャット・テキストチャットも未実装で、
ユーザー同士のコミュニケーションすら無いという無い無いづくしの仕様だったのである。
「オンラインなのに会話も無く、ただ黙々と同じコースを周り続ける」
どこかで見たような景色ではないだろうか。私ははっきりと覚えている。
2006年の9月に到来した恐怖の大王、PSU(笑)と酷似しているのである。
PSUは、同じコースを反射的に周回するゲームスタイルを指して、
オンラインハムスターゲームなどと揶揄されたものであるが、まさにGP5Pのオンラインも
ハムスターだったのである。冒頭で述べた「一年遅れ」「周回遅れ」の意味がご理解いただけただろうか?
こんなことを言ってはマリオカートに失礼だが、ポリフォニーは本当にマリオカートを作ろうと
していたのかもしれない。
なんとも、悲惨の一言に尽きる。開発の難度が高いと噂されるPS3とはいえ、ロンチの
「リッジレーサー7」を始めとする先行レースゲームは穏当なオンライン対戦を実装しているのに、
ファーストの製作子会社の手によるGT5Pがこの出来では論外であろう。
当然のことながら、ユーザーからも不満の声があがっている。
公式サイトでは、今後の機能実装についてのロードマップはもちろん、オンラインの同期対策及び
アップデートの予定すら示されず、「ラグのあるユーザーはもっといい回線を使ってみては」という
ユーザー丸投げの対応策が示されているばかりである。
また、体当たり減速等のノーマナー行為を助長する前時代的なゲーム性についても、何も対応が
なされていない。
それを受けて公式BBSでは、ユーザー同士による叩き合いが日夜続けられている。
公式BBS設置すること自体、過去のオンラインゲームの歴史を振り返れば、争いの原因にしか
ならないというのに、全く何も学んでいない。
山内一典は、2006年9月にファミ通のインタビューに答えてこんなことを述べている。
>「『グランツーリスモ HD』の登場で、ユーザーに対して『グランツーリスモ』というものが開かれる。
> ユーザーの意見や声が僕らに届き、ユーザー自身がゲームを築き上げることとなり、シリーズの未来を、
> ユーザーが半分担うのです。これで僕ひとりだけが"つぎの『グランツーリスモ』はどうなるんですか?"と
> 聞かれなくて済みますね(笑)」
ttp://www.famitsu.com/game/event/2006/09/22/264,1158905147,60470,0,0.html 山内の言う「ユーザー自身がゲームを築き上げる」というのは、金を払ったユーザーにデバッグさせることだったのだろうか?
過去のネットゲームの失敗から学ばず、過去のレースゲームの実装から学ばず、
独自実装による糞コードのテストに、金を支払っているユーザーをつき合わせるべきではない。
繰り返しになるが、オンラインの不具合は、PS3で先行するレースゲームがADSL等でも問題の
無い実装をしていることから、独自実装によるネットコードの不味さが原因であることは間違いない。
これこそまさしく「車輪の再発明」(レースゲーだけに)であり、これ以上無駄なものは無い。
GT5Pは、PSUやCuldceptSAGA等と同じく、ネットワークと客を舐めた製作姿勢が生んだクソゲーであり、
レースゲーとしても、ネットゲーとしても、クソゲーとしてですら、時代遅れの遺物である。
以上