【発売から】かまいたちの夜2 第60章【1ヶ月】

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886幽霊
>>629

そういえばそうだった。
俺は、独自の調査によって、香山氏の姪で香山夏美という名前の人物が
実在するということをつきとめている。
俺は隠しても仕方がないと判断し、透くんに告げた。

「ああ。そういう名前の人間は確かに存在する。だが、事件と
 関係あるかどうかは、わからない……」
「そうですか……」

透くんは、そう言うと電話の向こうで黙り込んだ。
何を考えているのだろうか?
俺は、透くんの考えがまとまる前に次の話をうながした。

「なあ、透くん、OLの娘たちはどうだって?」
「あ、はい……そうでした。すみません、ちょっと考え事を
 してしまって……」
「いや、いいよ。続けてくれ」
「はい。実はOLのコたちなんですけど……」

どうも歯切れが悪い。

「連絡取れなかったのか?」
「あ、いえ、真理に協力してもらって、連絡はついたんです。ですが……」
「どうしたんだ?」

透くんが何を言いたいのか、実は察しがついていたが、
俺はそのまま彼の話に耳を傾けることにした。

「渡瀬……可奈子ちゃんと、北野啓子ちゃんには連絡がついたんです。
 二人とも気味悪がって、招待状は捨ててしまったそうです」
「うん。で?」
「はい。もう一人の亜希ちゃん、河村亜希ちゃんなんですけど……」
「どうしたんだ?」
「ああ、いえ、亜希ちゃんは、今年の春に職場を辞めてしまっていて、
 連絡がつきませんでした」
「ほかの二人に聞いてもわからないのか?」
「ああ、はい。何の相談もされず急に退職してしまったらしくて、
 二人は彼女の連絡先を知りませんでした」

俺も事件後の追跡調査で、河村亜希の行方がわからなくなっていることを
知っていた。いまだにその行方はつかめていないし、河村亜希の失踪が
事件に関与しているのかどうかもわからない。
>>885
GBA版はスーファミのかまいたちと同じですか?
888幽霊:02/08/23 15:53
>>886

とにかく、連絡がついた連中は、例の奇妙な招待に応じるつもりがない
ということがわかって俺は安心した。
やはり、俺たちの調査(復讐?)の邪魔をされたくないし、
それに危険がともなう可能性のある場所に
多少でも縁のある人間を送りたくないという心情もあったからだ。
これで心置きなく現地に乗り込むことができる。

「……そうか。わかった、ありがとう」
「…………」
「……? どうしたんだ? 透くん」

最後に透くんは「真理にだけは俊夫さんのこと、言おうと思います」と言うと
こちらの返事を待たずに電話を切った。
俺は、コールバックしなかった。
彼の気持ちが痛いほどよくわかったからだ。

それから、透くんにコールバックする代わりに、
俺は招待状の別紙に添えられていた宿泊施設に電話をかけ、
偽名で予約を取った。
急な予約だったはずなのだが、何でも団体客のキャンセルが出た
ばかりだということで、簡単に予約を入れることができた。
「団体客のキャンセル」というのは、やはり『かまいたちの夜』の
出演者たちのことなのだろうか?
となると、招待者・正岡慎太郎は、やはり本気で彼らを
招待するつもりだったのということになる。
……一体何故?
俺は深く考え込んだ。

「そんなに怖い顔しないで。行けばわかるよ。ね?」

俺の様子を察したのか、みどりが優しく声をかけてくれた。
こんな時、みどりの身体を抱きしめられないのが、
とてつもなく切なかった。

そして、招待状の別紙に指定されていた8月15日、
俺たちは、現場へ直行することになる。
この時はまだ、俺もみどりも、あんな惨劇に巻き込まれることになるなんて
予想だにしていなかっ…………いや、本当は予想していた。
理由は特にない。ただ、そんな予感があったのだ。
実のところ、俺は望んでいたのかもしれない。あの、忌々しい夜の再来を……。

〜幽霊探偵みどり篇プロローグ〜 完