佐藤琢磨 Lap242

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471よみうり・1
[世界の舞台、トップへの強い憧れが、今の自分の原動力になっている]
――武さんも佐藤さんも、お互いのことはご存じですよね。
武:もちろんです(笑)。お会いするのは初めてだけど。
佐藤:僕もです(笑)。今、イギリスに住んでいるんですが、住まいがあるのは
ロンドン郊外のマーローというちいさな街で、アスコット競馬場にも近く、車で
20分程で行けます。
武:アスコット競馬場にはよく行くんです。会えるかもしれませんね。あ、でも
シーズン中は忙しいんですよね。お互いレースは週末だし。
佐藤:そうなんですよ。競馬もなかなか観に行く機会がなくて…。
武:僕も夏はヨーロッパの競馬に騎乗しに行くんですが、友人にベルギーGPに
行こうと誘われるんだけど、レースと重なって行けないんですよ。

――お二人とも世界を舞台に活躍されていますが、海外へ飛び出したきっかけは?
武:僕は以前から、海外の競馬に憧れがありました。日本の競馬は世界レベルから
見てもトップクラスですが、イギリスやアメリカとは歴史が違う。海外ではほとん
ど日本の競馬は伝えられないので、日本にいては海外からのオファーは来ない。だ
から外国へ出て、現地で実力をアピールしないといけないんです。例えばフランス
にいれば、ドイツのレースから声がかかったりする。
佐藤:モータースポーツの世界も同じです。どんなに日本のレベルが高くても、情
報が海外に伝わらない。例えばヨーロッパの専門誌で、日本のレースの扱いは5行、
イギリスF3は4ページです。関係者もヨーロッパで情報収集するわけだから、ア
ピール度が違います。
472よみうり・2:04/11/23 23:55:11 ID:RwqyfkBU
武:海外へ出ると、日本での実績は役に立たないので、最初はなかなかチャンスを
もらえませんが、世界の有名なジョッキーと勝負できるし、面白いですよ。日本よ
り賞金が安いけど、海外でしかできない経験を積むことができる。最初は短期で何
度か行って、自信と下地を作って海外をベースにできるまで10年かかりました。
佐藤さんは最初からF1を目指していたんですか?
佐藤:10歳の時に鈴鹿サーキットでF1日本GPを観て虜になったんです。それ
からずっとF1に夢中だったけど、身近にレースを始められる環境はなかったし、
この世界への入り方もわからなくて…。でも、夢は捨てきれず、「SRS−F」
(鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ)の存在を知って、入学規定
の年齢制限ギリギリの20歳で入学しました。挑戦する前に夢を諦めるのだけはど
うしても嫌だったんです。
武:僕の場合は、父(武邦彦)が騎手だったので、初めて馬に乗ったのも記憶にな
いくらい幼い頃。ジョッキーになろうと思ったのは小学校5年生の時。中学を出て
競馬学校に入り、そこを卒業してすぐデビューしました。環境は整っていましたね。
佐藤:レーサーも音楽で言う「絶対音感」のようなものがあると言われていて、ト
ップレーサーは大抵子供の頃から英才教育を受けています。僕は19歳までレース
経験がなかったけど、やる気だけは負けなかった。「SRS−F」卒業後にスカラ
シップを受けて渡英したのは、F1を目指すのに英語の習得は絶対条件だし、激し
いヨーロッパのレースに揉まれて経験も積みたかったから。とにかく飛び出すしか
なかった。
武:常にギリギリという感じですね。
佐藤:イギリスではカテゴリーランクが低いジュニアフォーミュラからF1への登
竜門といわれるF3まで、波乱万丈ではあったけれど、目標通りにステップアップ
することができました。02年に念願のデビューを果たせたときは本当にうれしか
ったです。
武:早いですね。それに今年はすごかったね。
佐藤:チームも大躍進しましたからね。初めてF1のトップグループで走って、攻
めて、勝負して。すごく楽しかった。
473よみうり・3:04/11/23 23:57:33 ID:RwqyfkBU
[海外での様々な経験を糧にして、いつかは頂点へ登りつめたい]
――海外へ出て苦労した点はどんなところですか?
佐藤:僕は明確な目標があったので、慣れない土地での不自由な生活も、逆に目標
に集中できてよかった。
武:2000年に騎乗の拠点をカリフォルニアに移したことがあって、その時は言
葉の壁に悩みました。01年には拠点をフランスに移したですが、まだマシでした。
フランス人は外国人がフランス語を話せるわけがないと思っているので、お互い片
言の英語で会話して…。言葉の面ではイギリスが一番きつい。
佐藤:イギリス人は、世界中の人が英語を話せると思ってますから(笑)。
武:そうそう、えっ、話せないの!?という感じで(笑)。レース面では、海外で
は注目されていないので気楽でした。その分、周囲の対応が悪かった。なめられな
いよう、きつい乗り方をしていたら対応が変わりました。
佐藤:きつい乗り方って?
武:譲らない、引かない、押されたら押し返す、強気で制す。佐藤さんの走りも強
気だよね。ヨーロッパGPでフェラーリのバリチェロとやりあってたし。
佐藤:挑戦して攻めていかなければチャンスはつかめない。それで接触しても、正
しいと思ったことならひるむことはないですよね。
474よみうり・4:04/11/23 23:59:39 ID:RwqyfkBU
――体調管理はどうされていますか?海外を巡っていると時差もあるし。
佐藤:それが一番大変かな。毎週飛行機で世界中を移動しているので、時差対策は
特に慎重にしています。
武:僕は移動することは、レースがあるということなのでうれしいです。フランス
で騎乗して、すぐにイギリスに行くためにジョッキルームで着替えていると、他の
騎手から「オファーがあったんだ、いいなー」と思われるから気分がいい(笑)。
佐藤:レーサーは体力作りも重要です。F1はドライバーにかかる負荷がきつくて、
高速コーナーで4G(重力加速度)、ピーク時に5Gかかる。今体重が60kg位
ですが、体重の5倍、300kg位の圧力がかかることになるんです。レース後に
は最低でも1kgほどは軽くなるし。競馬も体重管理は厳しいんじゃないですか?
武:そうですね。競馬は騎手の体重が重要で、減量に悩む騎手も多いですよ。僕は
今51kgだけど、太らない体質なので減量に苦労することはないかな。体重調整
のために、レース当日は食べなかったりしますけど。
475よみうり・5:04/11/24 00:02:09 ID:IEt6PDyH
――印象深いレース、ぜひ勝ちたいレースはありますか?
武:フランスの凱旋門賞に勝ちたいですね。凱旋門賞は別格です。あとはアメリカ
のケンタッキーダービーかな。アメリカって言えば、アメリカGPで3位入賞で表
彰台でしたね。
佐藤:今年で言えば、それが一番印象深いレースでした。初めての表彰台でしたか
らね。決して忘れることはないと思います。
武:ファンの期待も高いよね。日本GPもすごかったでしょ。レースでも目立ちま
すよね。
佐藤:応援されるのはいつでもうれしいことですよね。今年は環境が整い、トップ
グループと競い合えるようになって、注目されるようになったんでしょうね。
武:チャンピオンのフェラーリ、シューマッハーと競り合うんだからすごいよね。
佐藤:レースは科学なので、勝つためにはいいチーム、いい道具、いい人間が必要。
それがすべて揃っているトップチームは毎レース勝ちます。僕たちは今持てる力を
出し切って、少ないチャンスをものにしていくのが大きな成果につながるんです。
武:競馬もそう。馬の実力がトップ以下なら、全力を尽くしてチャンスを伺う。そ
こから勝機も見えてくる。できれば毎レース強い馬に乗りたいけどね。馬は、いい
ラップを刻むと最後までよく走ってくれます。馬にもペースがあるから、「最初か
らとばしていけばいいのに」と言う人がいるけど、それではダメなんですよ。
佐藤:車の場合は抜くのが大変だから、できればすぐにでもトップに立ちたい。ス
トレートだと前の車が風をさえぎってくれるのでスピードは伸びますが、コーナー
では乱気流の影響でマシーンが不安定になるんです。
武:仕掛け時も重要ですよね。よし行こうと決断して動くとき、勇気がいるけど、
決断が当たって、自分の思うように乗って勝ったときは本当にうれしい。