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私には、何が何だかわかりませんでした。
しかし、彼が会社の近くまで来たことをあんなに嫌がったのも
貴子さんに私の姿を見られたくないことが原因だったの
かもしれない。
そう思うと、私は何も言い返せませんでした。
「彼と話がしたいんですけど・・・」
私の口をやっとついて出た言葉はそれでした。
「最後になってもいいから、彼と話がしたいんです。
彼にそう伝えてくれませんか?」
もし貴子さんの話していることが事実だとしたら、彼は私を
騙していたことになる。
それでも、私は彼と話がしたかったのです。
もしそれが事実だとしても、彼を好きだったのです。