ロボ・サイボーグキャラロワイヤルpart14

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1参加するカモさん
注意・このスレはあくまで2次創作であり、本編作品等との関連性はありません。
   また、貴方のお気に入りキャラが敗北したり、死亡したり、酷い目にあったりする可能性があります。
   加えて、スレの性質上ネタバレを多く含んでいます。
   以上の点に留意の上、閲覧してください。

【外部リンク】
ロボ・サイボーグキャラ バトルロワイアル掲示板(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10691/
まとめサイト
ttp://www39.atwiki.jp/roborowa/pages/1.html

【基本ルール】
49体(見せしめを含むと50体)のロボット・サイボーグが最後の1体となるまで互いに戦闘を行い、破壊しあう。
最後の1体となった「優勝者」のみ、元の世界へ帰還できる。
また、参加者には「優勝者は自分の望みを叶えてもらうことができる」と伝えられている。
参加者間でのやりとりに反則はない。
参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【テンプレ】
スプリクト爆撃対策のため掲載できません
こちらを参照してください
ttp://www39.atwiki.jp/roborowa/pages/352.html

【前スレ】
ttp://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/event/1240758743/
2参加するカモさん:2009/06/18(木) 00:18:49 ID:23z6yaiO
1/5【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/ ● 風見志郎/●神敬介/ ● 城茂/●村雨良
1/5【魔法少女リリカルなのはStrikerS】●スバル・ナカジマ/ ● ギンガ・ナカジマ/●チンク/ ● セイン/ ● ノーヴェ
2/4【からくりサーカス】●フランシーヌ人形/○コロンビーヌ/ ● パンタローネ/●アルレッキーノ
1/2【ロックマンXシリーズ】●エックス/○ゼロ
1/2【ターミネーター2】○T-800/ ● T-1000
0/2【攻殻機動隊】●草薙素子 / ● タチコマ
1/2【サイボーグクロちゃん】 ● クロ/○ミー
0/2【ToHeart】●マルチ / ● セリオ
0/2【ザ・ドラえもんズ】●ドラ・ザ・キッド / ● 王ドラ
0/2【マルドゥックシリーズ】●ルーン・バロット / ● ディムズデイル・ボイルド
1/2【パワポケシリーズ】 ● 灰原/○広川武美
0/1【ロックマンシリーズ】●ロックマン
0/1【ジョジョの奇妙な冒険】●ルドル・フォン・シュトロハイム 
0/1【魁!!クロマティ高校】●メカ沢新一  
0/1【勇者王ガオガイガー】●獅子王凱
0/1【魔法先生ネギま!】●絡繰茶々丸
0/1【封神演義】●ナタク
0/1【Dr.スランプ】●則巻アラレ
0/1【VOCALOID2】●初音ミク
0/1【クロノトリガー】●ロボ
0/1【サイボーグ009】●009(島村ジョー)
0/1【THEビッグオー】●R・ドロシー・ウェインライト
0/1【スーパーロボット大戦シリーズ】●ラミア・ラヴレス
0/1【ゼノサーガシリーズ】●KOS-MOS
1/1【人造人間キカイダー】●ハカイダー 
1/1【仮面ライダーZO】○ドラス 
1/1【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン 
1/1【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント 
0/1【メタルギアソリッド】●グレイ・フォックス 
0/1【PLUTO】●ゲジヒト
0/1【究極超人あ〜る】●R・田中一郎
【9/50】

【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労小、ダメージ中、胸部に包帯。応急処置済み。生命の水により回復中(ただし、しろがね化はまだしていない)。
     爆弾解除。フランシーヌを守れなかったことによる後悔。
[装備]:サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、トマト×97@THEビッグオー、謎の金属片(外装解除。解析は八割程度)、
     PDA(グレイ・フォックス、ドロシー、草薙素子、ドラ・ザ・キッド)×4。
     ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、ブルースシールド@ロックマン、ジローのギター@人造人間キカイダー
     虹(ドクターケイトの毒が染み込んでいる)@クロノトリガー、ライドル@仮面ライダーSPIRITS、ラブラブビッグバンの音楽ファイル@パワポケシリーズ
[思考・状況]
基本思考:シグマと決着をつけ、バトルロワイアルを終わらせる。
1:シグマの下へと向かう。可能ならば彼を説得したい。
2:武美の寿命タイマーをどうにかする。
3:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を最後の敵として警戒。T−800には複雑な想い。
4:ソルティを早く修理してやりたい
[備考]
※原作8巻(第32話 称号)から参戦。
※武美とは、一エリア以内なら通信が取れます。
※爆弾を解除するのに、一時間は必要です。
 ただし、同時進行や武美の助けを借りれば、ある程度時間を短縮することも可能です。
 また、手術跡の再生のため、生身部分のある人はさらに一時間を回復ポッドで過ごす必要があります。
【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:全身にダメージ(中)。疲労(中)。気絶中。爆弾解除
[装備]:なし。
[道具]:支給品一式、PDA×2(ソルティ、神 敬介)、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン
    紫の仮面@現実、K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発、LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険
    ミラクルショット@クロノトリガー、ガイアアーマー@ロックマンX5
[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す
0:気絶中……
1:フランシーヌたちを守る。
2:武美を守る。
3:ロイさんやローズさんの元に帰りたい。
4:放送がないのに疑問
[備考]
※参戦時期はアニメ10話〜11話です。
※戦い自体への迷いは消えましたが、相手を躊躇なく殺せるまでには至っていません。
※気絶のため、すべての思考が気絶前のままです。
 気絶状態を回復するには、修理が必要になります。

【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康。爆弾解除
[装備]:ウフコック@マルドゥックシリーズ
[道具]:PDA(武美、クロ)×2、ランダムアイテム0〜1
    アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS(弾切れ、発電所内にクロの右手と共に放置)、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:要塞へ向かう。
2:ソルティが心配。
3:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を警戒
4:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。
[備考]
※本郷とは、一エリア以内なら通信が取れます。
※爆弾を解除する手順を、半分くらい理解しました。その技術を持ってエックスを殺す計画を立てています。
※ウフコックは、ターンした物を切り離すこと(反転変身【ターンオーバー】)が出来なくなっています。
※ウフコックの参戦時期は、ボイルド死亡後です。
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康、仲間を失った悲しみとやるせなさ、爆弾解除
[装備]:アームパーツ@ロックマンX、ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(何でも切れる剣のあった場所に収納)
[道具]:PDA(ミー)、青雲剣@封神演義、ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
[思考・状況]
基本思考:バトルロワイアルを終わらせる
1:要塞内へと向かう。
2:武美、ソルティを守る。
3:ソルティが心配
4:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を警戒。T−800に対しては多少複雑な気持ち。
5:本郷に対し、少々の罪悪感。
[備考]
※悪魔のチップの制限は精密動作性の低下、他者への使用には遠慮気味になる、支給品と合体するとやや疲労する、です。
※合体による肉体の主導権は、基本的に相手の側にあります。
※ドクターケイトの杖@仮面ライダーSPIRITS(ID未登録)は切断され、E−8に放置されています。
【イーグリード@ロックマンX】
[状態]:全身にダメージ(中)。疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:PDA(イーグリード用通信強化Ver。ラミア)、サブタンク(満タン)@ロックマンX
[思考・状況]
基本:バトルロワイアルを終わらせる。
1:シグマの自殺を止める。
2:ライト博士にソルティの修理を頼む。
3:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を警戒。


【共通事項】
※バトルロワイアルの真実、シグマの真意、残る3人のマーダーの情報、バトルロワイアルにおけるドラスの動向、スバルの自殺を全員が知りました。
※火柱キックで異世界戦力8人中5人がリタイアしていました。イーグリード以外の2人がどうなっているか不明です。彼らもリタイアしている可能性もあります。
8参加するカモさん:2009/06/18(木) 00:33:31 ID:23z6yaiO
代理投下終了です
9参加するカモさん:2009/06/18(木) 00:33:55 ID:m5QW3fux
投下&スレ立てお疲れ様でした!
10参加するカモさん:2009/06/18(木) 01:13:23 ID:gYVhXQBy
投下&代理投下&スレ立て乙です。
ついにイーグリードによって明かされる真実。
無事ドラスとの合流を果たしたが、待ち受ける重さの受け取りのそれぞれの反応がよかったです。
キャラが活き活きしていました。
T-800との戦いを控え、シグマの元へ向かう決断をした一行の今後が気になります。
そして風見さんパネェwwwww

GJ!
11参加するカモさん:2009/06/18(木) 01:21:37 ID:nPrAR/3h
投下及び代理投下乙でした
まず最初に一言
風見さんwwwwwwwマジパネェwwwwwwwwwww

そして肝心の本編、実にお見事
ついに集結した対主催(と呼ぶのは正しいのか?)
スバルの死と理不尽な真実に打ちのめされながらも前へ踏み出すドラス
そして憎しみの呪縛を振りほどいて、一皮剥けた武美
この二人は本当にロワ内で大きく成長したなぁ
仮面ライダーとして、戦い抜く覚悟を固めた本郷さん
シグマとの決着を決意するゼロ&イーグリードも歪みの無いかっこよさ
でも個人的に一番驚いた、かつ納得したのは
真実を受け止めたミーくんの反応、そしてそれを受け止めるウフコック
凄く彼ららしかったですよ!そして死んでしまった敬介、チンク、
クロちゃん、エックスなどなど彼らの戦いが繋がったのも感慨深い…
これまでのそれぞれの物語の総決算、そしてこれからへの第一歩と呼ぶに相応しい内容
彼らと、シグマ、そして優勝狙いの3人、どんなフィナーレに向かうのか
それぞれの生き様に敬意を表しつつ重ね重ね乙です
12参加するカモさん:2009/06/18(木) 02:42:20 ID:Eo9hw7gl
投下&代理投下乙

マジで風見さんパネェwwwww
ああ、今までの出来事が収束していく様子がいいよ
生き残った人、戦いの末に果てた人、それぞれの道が繋がって絡み合いそして舞台は要塞へ
シグマと優勝狙いの3人もどう転ぶか。確かにフィナーレへ向かってるな
ここまでそれぞれのキャラの生き様を書けたのは凄いです
13参加するカモさん:2009/06/18(木) 22:17:17 ID:EJPaVf1n
投下、代理投下乙

風見すげえええええ!!!!!!!!!
ところで脱落した7人は誰なんだろう?
14創る名無しに見る名無し :2009/06/19(金) 00:25:17 ID:l1RARLXx
てすと
15参加するカモさん:2009/06/19(金) 19:01:12 ID:xxEdhUDr
正確には5人脱落、残り二人はまだどうなってるか不明だけどな
16 ◆9DPBcJuJ5Q :2009/06/19(金) 22:18:24 ID:7pMuXhpi
遅くなりましたが、代理投下をしてくれた方と支援をしてくれた方々、感想をお寄せしくれた方々に感謝を。
心配していた点はあったのですが……皆さんの反応を見る限り、問題が無さそうなので安心しました。
風見さんが自重しないことは……間違い、なんかじゃなかった。

それでも当初は風見さんが死後にキルスコア+7になりそうだったのは秘密です。
17参加するカモさん:2009/06/20(土) 02:14:14 ID:KDd88CMd
少し遅いですが指摘を武美の状態票がエックスの死を知る前のままの部分がありますよ〜
書き込めるかな?
19創る名無しに見る名無し :2009/06/20(土) 02:46:51 ID:ViaA1+BK
よっしゃ、書き込めた!

安定してるなあ、こいつらw
キャラクターを活かすのがうまいぜ
うん、最終盤って感じだ!
20 ◆9DPBcJuJ5Q :2009/06/20(土) 21:14:40 ID:S+0ure2n
>>17
確認しました。御指摘、ありがとうございます。
wiki収録時に修正しようかと思います。
21 ◆9DPBcJuJ5Q :2009/06/21(日) 23:35:38 ID:mHuMIA9S
ニ分割でどうにかなると思っていた俺の見通しが甘かったのは確定的に明らか。
自分の判断で状態表だけ別にしましたが、問題があったら修正をお願いします。

Wiki収録の際に指摘された部分以外にも若干の加筆修正を行いました。
22 ◆9DPBcJuJ5Q :2009/06/21(日) 23:43:11 ID:mHuMIA9S
状態表ページのタイトルを間違えてしまいましたorz
wiki管理人の方、若しくはページ名の変更が可能な方、修正をお願いします。
間に【フィナーレ】をうっかり入れ忘れた私は、ビッグオー・ファイナルステージでグランドフィナーレを飾ってきます。
23参加するカモさん:2009/06/21(日) 23:50:23 ID:F8hFFzPI
新しくページ作っちゃったほうがいいんじゃない……かな?
24 ◆9DPBcJuJ5Q :2009/06/21(日) 23:53:12 ID:mHuMIA9S
>>23
それもそうですね。
それでは、その方向で作業を続行します。助言、ありがとうございます。
25参加するカモさん:2009/07/01(水) 22:33:46 ID:XG+CzQoJ
hosyuage
26参加するカモさん:2009/07/02(木) 13:52:03 ID:/SerJ/pJ
来ないなぁ・・・・・・・
27参加するカモさん:2009/07/02(木) 18:45:08 ID:tJSAiLvf
人がいない……ふむ。じゃ、ネタでも振ってみよう!
みんな、このロワを通じて興味を持った作品とかあるかい?
俺はマルドゥック・シリーズと快傑ズバット、ソルティ・レイ。
……だってみんなが宮内宮内言い過ぎるんだもの!
28名無しより愛をこめて :2009/07/02(木) 21:11:06 ID:s48zThM8
宮内じゃしょうがないな。ソルティ・レイはGONZOだから期待していなかったら、意外と掘り出し物で驚いた。
ブラスレイターのあのざまはなんだったのかと(ry

岩本版エックスが気になって全巻購入したさ。
復刻万歳。X3の一巻だけ手に入るのが遅くなったがw
29毎日見ています:2009/07/02(木) 22:45:18 ID:ACEt18MM
シグマ側にいる残り二人は誰だろう? 予想してみませんか。
私は、青いタヌキ型ロボットとブ○ースだと思っています。
30参加するカモさん:2009/07/02(木) 23:28:28 ID:GtlEXmHR
あえてロックマンZX
31参加するカモさん:2009/07/03(金) 11:45:56 ID:Ttpq9I+I
>>29
青いタヌキ「僕は猫型ロボットだ!!」
生存者全員「誰?」
青いタヌキ「orz」
32参加するカモさん:2009/07/03(金) 12:18:04 ID:rCmXF2uq
逆にリタイアした内の一体はドットーレさんだと思う
33参加するカモさん:2009/07/03(金) 23:41:39 ID:Y2wqY9HZ
ラララ科学の子とダーダー恐竜が見たい。
34参加するカモさん:2009/07/03(金) 23:55:44 ID:DH02J1vo
生き残った2人か……その2人も強制送還されているにエックスのヘブンを賭けるぜ!
風見さんならやっていてもおかしくないし。

>>28
同志よ。本当に復刻万歳だ。……どうしてX3の1巻だけ常時品切れなんだろうな? 2巻は売ってるのに。
35参加するカモさん:2009/07/04(土) 01:00:12 ID:LVRgWxKf
>>29
原作でも獅子身中の状態のライダーマン(右手だけ機械だから難しいが)
ドラマ版女ターミネーター(よく知らないが)
ソルダートJ  (案外いけそう)
コンボイ(十分いけそう)
ダイノボット(?)
大穴、おぼっちゃマン

後々に組織が介入するなら
タイムパトロール
時空管理
が無難なところだろうな

あたりかと
36参加するカモさん:2009/07/04(土) 09:45:50 ID:OWKZoi7/
残り二人は死者スレのウェンディとコンボイじゃないかと思ってるネタ的にw
37参加するカモさん:2009/07/05(日) 00:24:05 ID:+Bc8A4wd
マーカスライトとか
38参加するカモさん:2009/07/05(日) 04:56:53 ID:H2jZswg2
キカイダーがこの前出た(出てないけど)ので漫画版のギルハカイダーとか。
結構あいつ頭いいんだよな…。
ただ、劇中じゃ「ハカイダー」としか呼ばれてないので混乱するかも。
39参加するカモさん:2009/07/05(日) 15:00:58 ID:MxOaG/L9
あ〜るのばーさーかーとか
40参加するカモさん:2009/07/05(日) 19:07:13 ID:zp8fANEg
今夜来るかな?
41参加するカモさん:2009/07/05(日) 21:42:37 ID:qsHm2HW0
締切火曜だし、流石にまだ早いんじゃないかな
42参加するカモさん:2009/07/07(火) 20:30:22 ID:Jia01loa
延長入ったから明日かあさってかな
43参加するカモさん:2009/07/08(水) 17:59:43 ID:adpgLaRn
今夜か明日かな
44参加するカモさん:2009/07/08(水) 18:12:12 ID:7XKkA8YF
>>39
デコじゃなくてばーさーかーの方なのか
だったらいっそ偽博士なロボのがよりカオスで良い気がする
45 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:14:13 ID:NwTVVFx+
投下します
46創る名無しに見る名無し :2009/07/09(木) 22:14:39 ID:QP9ZgoU+
 
47あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:15:08 ID:NwTVVFx+


 本郷たちがバイクによって轍を作り、雪原を越えていって数分経つ。
 そろそろいいか、とT-800は判断して立ち上がった。白一面の雪景色の中、雪が盛り上がって人が姿を現す。
 T-800は本郷たちと合流をよしとせず、スバルの死体から通り道になるだろう位置で雪の中へと潜んでいたのだ。
 駆動音を徹底的に沈め、熱も雪に冷やし探知しにくくしていた。すぐ近くで話し込むのは意外であったが、真実を知るという収穫はあった。
「スカイネットは人間に負けた……」
 T-800に感情はない。聞かされた真実に思うところなどなかった。
 人間を抹殺する使命を持つT-800にとっては人間が身勝手であろうとなかろうと、知ったことではない。
 しかし、現在T-800はCPUに走るノイズを無視できなくなっていた。
(ノイズが強くなってくる。これは……)
 T-800にも原因のわからない症状だ。今まではこんなノイズを感じたことなどない。
 あくまで殺戮者(ターミネーター)である。
 それ以外の生き方を知らないし、リプログラムを受けても理解することはなかった。
 なのになぜだろうか。T-800のCPUに空虚なノイズが走り続ける。
「お、めっけ! 一人だけか、コロンちゃんどうする?」
「さあ? どうしようかしらぁ?」
 感傷に浸る暇もない。騒々しい珍客に向かって、T-800は方向転換をした。
 T-800はいつの間にか、感傷という感情を理解していることにも気づかずに。



 白いカラスを乗りこなしながら、風に金髪を流してゼロは首をイーグリードへと回す。
 隣を飛ぶイーグリードは、なんだ? と言いたげに視線を返してきた。
「イーグリード、転送カプセルも用意していたのか?」
---
48参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:15:34 ID:QP9ZgoU+
  
49あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:15:53 ID:NwTVVFx+
「ああ。番組としてはゼロや仮面ライダーたちのように正義の味方が主催者を倒して、ハッピーエンドになるのが一番『受け』がいいらしい。
裏切る可能性がある俺がシグマ隊長の部下となったのも、脱出手段がいくつも用意されているのもそのためだ」
「胸糞の悪い話だ」
 ゼロはそういいながらも、声にも表情にもなにも見せない。
 恨みがないといえば嘘になるが、それもすべてが終わってから考える。
 アクセルグリップを握りこみ、捻ってバイクを加速させ、ゼロは異変を感じた。
 同時に、本郷もサイクロンをドリフトしながら止める。さすがは本郷だ。潜り抜けた修羅場が違う。
 イーグリードも続けて停止し、ミーは急ブレーキをかけてゼロたちへと振り向いた。
「ちょっと、急に止まってどうしたの?」
「しっ! ミー君、あの空間明らかにおかしいよ」
「焦げ付いている……嫌な臭いだ」
 ドラスがミーに注意を呼びかけ、ウフコックは説明の補填をする。
 もっとも、ウフコックの反応は感情の臭いにたいしてではなく、高エネルギーが集中する空間から漂う焦げた臭いに眉をしかめているだけであったが。
 異常事態だとミーと武美が把握し、押し黙ったのを確認してゼロはカーネルのセイバーを取り出す。
 イーグリードはソルティを庇うため僅かに後退をした。
『大変だ、イーグリード君!』
「こちらでも異変を確認しました。高エネルギーがなにもない空間に集中しています」
『それはスカイネットが送り込んできたターミネーターたちだ! やつら、破壊された平行世界移動装置を再現するため、簡易型を奪いに来たのじゃ!』
 ライト博士の叫びに、全員が目を見開く。スカイネットの平行世界移動装置は破壊されたはずであった。
 とはいえ、すべての装置を破壊するのには時間がかかる。スカイネットはその隙を突いて、最後の反撃に移ったのだろう。
 狙いが簡易型移動装置なのがなによりの証拠である。合点のいった面々の目の前で、徐々に人の骨を模したような姿が形作られていった。
『奴らは直接この要塞に乗り込めないようジャミングした。早く転送装置へと急ぐのじゃ。でなければ大量のターミネーターが要塞に入り込む』
「了解しました。すまない、また手を貸してくれ」
50参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:16:19 ID:QP9ZgoU+
   
51あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:16:34 ID:NwTVVFx+
 イーグリードの要請に、ゼロと本郷は無言で頷いた。
 空間を見つめるドラスたちも、ターミネーターを敵として見据えている。
 佇む数体のT-800シリーズへと向かって、ゼロは白いカラスを発進させた。



 西洋のドラゴンの姿をしたメガトロンは警戒をしながら、炎を吐き出してT-800の手前に撃ちこんだ。威嚇だ。
 殺すなら情報を引き出してから。そう考えてメガトロンは位置を調整したのだ。
「さあて、シュワちゃんにこうするのは心苦しいのだが、聞きたいことが……」
「優勝を狙っているのか? なら無駄だ。このバトルロワイアルはただの茶番だからな」
 いきなりの挫折に、メガトロンの目が丸くなる。どういうことだ? と視線でコロンビーヌと意思疎通をはかった。
 コロンビーヌが頷いて、顎でT-800を示す。もっと情報を引き出せということだろう。
「茶番ってどういうことだ?」
「このバトルロワイアルの黒幕が倒れた。優勝してもなにも得ない」
「黒幕? やっぱあのシグマってのは主催じゃねーんだな……」
「この前言っていたメガちゃんの推論が、当っちゃったのかしら?」
「推論? どういうことか、聞かせて欲しい」
 T-800が食いついたのを確認したメガトロンは、にやりとほくそ笑んで情報を引き出すことにした。
 交渉とは自分のペースで進めることが肝心。その取っ掛かりを向こうから用意してくれるなら、好都合だ。
「おっと、聞きたければもっている情報を……」
「わかった。お前達に価値があるかどうかは知らないが、俺が先ほど得た真実を教えよう」
 交渉をしようとしたメガトロンの出鼻がくじかれ、かくっと調子が崩れる。
 天然なのか計算なのか。どちらにしろ強敵だ。
(なにせ相手はシュワちゃんだからな。油断したらいいとこ総取りされちまうぜ! それがハリウッド補正というものだ……)
 アメリカ生まれだから分かる、と傍から見れば意味不明な決意を真剣にしながらT-800の話の続きを促した。

52あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:17:07 ID:NwTVVFx+
 スカイネットが人間に負け、遥か未来の人類によって自分達の殺し合いを娯楽にされたこと。
 シグマは洗脳が不完全のため、本来の主催者である未来人を裏切ったこと。
 つまり、優勝しても得られるものないこと。
 そのすべてをT-800は自分が持つ本郷たちの会話から得た情報をメガトロンたちに伝えた。
 別に他意はない。T-800にとって優勝がどうでもいいことなら、彼らに情報を与えたところで問題もないからだ。
 すべてを伝え終えて、どうするか迷っていたT-800は彼らの意見を参考にしようか、とふと思った。
 返ってきた言葉は、実にメガトロンらしい言葉であった。
「おいおい、それじゃ優勝したらなんでも願いを叶えるってのは嘘かい?」
「やってらんないわよ……見世物になるのはあたし達自動人形の性質だけど、お代がないんじゃねぇ」
 二人は優勝商品がないことに憤慨し、顔を突き合わせている。相談しているのだが、T-800にも聞こえる範囲だ。
 シグマを殺すだの、優勝の褒美と用意されるはずだったアイテムを奪って無理やり自分達の願いをかなえるだの、欲望に忠実の様子だ。
 T-800にはなにもない。叶えたい願いなどなかった。
 虚無を抱えT-800が黙したとき、風が変わった。
「なによ、この様子……」
「なにもない空間にエネルギーが集まってやがる。シュワちゃん、心当たりある?」
「タイムスリップだ。俺が過去へと送られたときと同じ現象。つまりここにターミネーターか未来の人間が送られてくる」
 メガトロンたちも気づき、疑問を示したのでT-800は律儀に答える。
 なぜ自分がシュワちゃんと呼ばれているのか、新しい疑問を持ったがどうでもいい。
 T-800の眼前で、本郷たちと同じくターミネーターが姿を徐々に明らかにしていった。


 現れた全裸の女性はT-800を見るなり、センサーを駆動させた。
 目の前の女性は僅かに戸惑っている様子が見て取れる。彼女は制限に困惑していた、T-800には知るよしもない。
「サイバーダインシステムズ・モデル101シリーズ800……旧式か。バトルロワイアルの参加者として登録された存在と確認。
バトルロワイアルのログと照合。T-800をこちらの味方と承認。すぐにこちら側につくことを要求する」
53参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:17:10 ID:QP9ZgoU+
    
54参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:17:29 ID:y0HKXvJN
支援
55参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:17:50 ID:QP9ZgoU+
 
56あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:18:03 ID:NwTVVFx+
「どういうことだ?」
 T-800が状況の説明を求める間、骨格だけのT-800シリーズの改良型と思わしき存在が三体ほど転送されていた。
 それぞれ、T-800シリーズの腕にはミニガンが装備されている。
 タイムトラベルに銃器の持ち込みは不可能だったはずだが、と思考した。
 これは平行世界移動装置を参考に転送システムが改善された結果なのだが、T-800にわかるはずもない。
 T-800が視線を女性に戻すと、彼女の体表がざわめいて一瞬でコロンビーヌと同じ衣装を纏った。
 コロンビーヌが不快な表情を浮かべるが、T-800は彼女がT-1000シリーズと似たタイプのターミネーターだと推測した。
 もっとも、骨格は存在するようだが。制限下のセンサーでもその程度は理解できる。知らないタイプだ。
「私はターミネーター最新モデルシリーズX。私の指揮下に入ることを命令する。拒否権はない」
 高圧的な態度だが、特に異論はない。ターミネーターとは感情を解さない。
 不快にも思うことがなければ、まっとうな台詞だった。CPUを走るノイズを無視するのなら。
「……いいだろう。そしてスカイネットの指令は?」
「シグマより簡易型平行世界移動装置の奪還、及び参加者の殲滅。まずはその二人を殺してもらおうか」
 T-Xの指令に頷いて、右手に電磁ナイフを構えてメガトロンたちへと向く。
 後ろでは同系機がミニガンを向けている気配がした。メガトロンたちも臨戦態勢に入り、T-800は勢いよく一歩踏み込んで、反転した。
 そのまま電磁ナイフをT-Xの頭部へと投擲。T-Xの反応は速く、最新機の名に相応しい行動を取った。
 右手のプラズマ砲を向けて、エネルギーを充填している。ナイフ程度では刺さらないと判断したのだろう。
 甘い。電磁ナイフはT-Xの頭部に突き刺さり、プラズマ弾が大きく逸れた。
 戸惑っているだろうT-Xに向かってT-800は走り、電磁ナイフをさらに押し込んだ。
 普通のナイフならともかく、この電磁ナイフはチタン合金を上回る装甲をもつ怪人たちを切り裂いてきた。
 刺さらないと判断したT-Xは戦闘経験が浅かったのだろう。それが幸運をもたらせた。
「なぜ……」
「このナイフを通常のナイフと判断したお前のミスだ」
「スカイネットは……キサマの……」
 ノイズ交じりの音声を耳にしながら、T-800はそのことか、と呟く。
57あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:18:45 ID:NwTVVFx+
 答えは決まっている。自身のCPUに走るノイズの意味もT-800は見つけていた。
「キサマらのスカイネットは人類程度に負けた負け犬だ。俺のスカイネットは俺が決める。
シグマもキサマらのスカイネットも俺の敵だ。俺のCPUがミッションは『人類軍の殲滅』だけと決めた。ただそれだけだ」
 一つ、シグマも知らない真実がある。スカイネットによって設定された学習機能のリミッターが、シグマウィルスによって破壊されたのだ。
 際限なく学習してくT-800は『人類に負けたスカイネット』を目の当たりにし、自我に目覚めた。
 そのままT-Xの頭部を切り裂き、ボディを盾代わりにT-800シリーズの攻撃に備える。
 しかし、ミニガンによる掃討はメガトロンの吐き出す炎と、コロンビーヌの刃によって防がれた。
「どういうつもりだ?」
「いや〜、シュワちゃんのロック魂に心打たれたのよ」
「このままこいつらに殺されるわけにはいかないしぃ、あたし達と手を組まないかしら? 他にもゼロとかシグマとか敵がいるわけだしねぇ」
 妖艶な笑みを浮かべるコロンビーヌが手を差し出した。
 T-800は現状を計算しながら、二人の視線を受け止める。
「頭部を潰せ。電子回路を破壊しない限り、どれだけ損傷しようとターミネーターは動き続ける」
「オッケー、交渉成立だな。いくぜ、シュワちゃん、コロンちゃん!」
 メガトロンが悪い笑みを浮かべて、コロンビーヌが頷いた。
 一時共同戦線を張る。ただそれだけだが『気分』は悪くない。
 T-800も『負け犬の』ターミネーターの殲滅へと乗り出した。



 T-888と呼ばれるターミネーターが、右手のミニガンから毎分四千発も吐き出される弾丸を仮面ライダーに向ける。
 ミーに武美を預け、愛用のサイクロンの機動力を駆使しながら、仮面ライダーは雪原を駆け抜けた。
 仮面ライダーにとって鋼鉄の壁すら削り取るガトリング砲の猛攻は、対弾能力を制限されたコロニー内での戦いでは致命的だ。
 制限がなくとも、ミニガンの直撃を食らえば仮面ライダーたちとはいえただではすまない。
 しかし、強化された仮面ライダーの目と、サイクロン号の機動力によって固定砲台の役割を担う一体のターミネーターの懐にたどり着いた。
58参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:19:21 ID:QP9ZgoU+
 
59あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:19:33 ID:NwTVVFx+
「ライダーパァァァーンチ!!」
 仮面ライダーの拳がT-888の右腕の付け根を抉り取る。ミニガンを持った腕はもがれ、弾丸を撃つ反動で離れていった。
 それでもT-888はひるむ様子を見せず、左拳を叩き込もうとする。
 仮面ライダーはサイクロン号で身を低くして拳をやり過ごした。
「本郷、頭部を狙え! 電子回路を砕くか、焼くかしない限りしつこく動き回る!
そして水素電池が爆発すれば周囲の被害は甚大だ。水素電池のある胸元は避けろ!」
「了解!」
 イーグリードのアドバイスを受けて、仮面ライダーはバイクをドリフトしてUターンをする。
 右腕のもげたT-888が構え、頭部を庇うが『技の1号』を前にしては無意味。
 サイクロン号をウィリーさせ、前輪をT-888の頭部に押し当てる。
 そのまま全体重を加速に乗せて、ターミネーターを雪の上に押し倒した。
 ぐしゃり、という音と共にターミネーターの頭がひしゃげ、サイクロン号の後輪の回転で完全に頭部が破壊される。
 そのまま仮面ライダーは他のターゲットへと向かった。


 長めの楕円形の形をしたバイク型兵器、モトターミネーターが固められた道路を走る。
 高機動の乗り物を支給された参加者を追い回すため、スカイネットはモトターミネーターをも送り込んでいたのである。
 高速で動き回るモトターミネーター相手にゼロは、白いバイクを操りながら左手でカーネルのセイバーを構えた。
 正面からモトターミネーターはゼロに向かってくる。跳ね飛ばすつもりなのだろう。
 ゼロはバイクを操りながら、そのまま直進した。モトターミネーターと接触する瞬間、白いカラスは上下を逆にしながら飛び上がり、ゼロは逆さで宙を翔けた。
 カーネルのセイバーをモトターミネーターに突き立て、白いカラスの空を飛ぶ能力を利用して突進、モトターミネーターを真っ二つにした。
 走る勢いを利用して体勢を戻してバイクを右に倒す。
 ゼロの頭部があった位置にミニガンの弾幕が通り過ぎていった。
「ちっ、厄介な奴だ。だが、このバイクを舐めるな!」
 ゼロはそのままミニガンを構えるT-800シリーズへと向いて、バイクのフロントフォークに装備されたロケット弾を放つ。
60参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:20:25 ID:QP9ZgoU+
  
61あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:20:58 ID:NwTVVFx+
 吹き飛んだT-800シリーズへとバイクの加速を利用しながら跳び、逆手にセイバーを構えた。
「氷烈斬ッ!」
 冷気を纏った刃がターミネーターの頭部を貫き、全身を氷に包ませた。
 頭部が残っているなら氷を破ったのだろうが、機能停止をしたターミネーターに取れる手段はない。
 後ろから追いついてきた白いカラスに再び乗り移り、ゼロは次の標的へと斬りかかった。


「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 イーグリードは羽から突風を噴出して、ターミネーターたちを空にまとめて吹き飛ばす。
 一箇所に集まったターミネーターたちを狙って、赤い怪人態へと変身したドラスと、バスターのチャージを終えたミーがそれぞれの銃口を向けた。
 爆発の影響が薄いところまで昇ったことを確認して、イーグリードは合図を二人に送る。
 ドラスの右肩から、ミーの右腕のバスターからエネルギーの塊が放出され、空の彼方に固まるターミネーター群へと襲い掛かった。
 一秒未満の沈黙。そして盛大な爆発が空の中央で起こった。水素電池が破損したのだ。
「ひゃあっ! すっご……」
「武美さん、ウフコックと一緒に隠れていて! あいつらどんどん数が増えていく……!」
「だけど本郷さんもゼロさんも数を減らしくれている。イーグリードさんのおかげでまとめて潰せた。
もう少し減らせばシャトル基地にいける!」
 見つけた廃屋に武美が戻るのを確かめ、ミーとドラスは安堵をする。
 戦えないソルティを抱えてはまともに進めないため、一時ターミネーターの数減らしをしていたのだ。
 先ほどの爆発に気をつければ、大きく数を減らすのも不可能じゃない。
 ドラスはどうにかシャトル基地にたどり着けそうなことに安堵していると、焼け焦げたT-888を眼前に放り込まれる。
 武美の肩のウフコックが、鼻をひくつかせて最初に反応をした。
「こちらを馬鹿にするような……すえた感情の臭い……」
「ほう、諸君。こうして会えるとは、奇遇だね」
 聞き覚えのないだみ声に、ゼロが『メガトロン!』と叫んで反応する。
62あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:21:52 ID:NwTVVFx+
 竜の頭を模した右手を持つ巨体のロボット。あいつがメガトロンか、とドラスが思っていると、その瞳を見開いた。
 メガトロンの背には、ゴスロリ服を着た少女と共に、両手にミニガンを構えたボブと呼んだ男がいたのだから。


「ボブ……おじさん……」
 ドラスの呟きにT-800は沈黙を返す。両手に持ったミニガンを振り回し、周囲にまとわりつくターミネーター群をなぎ払った。
 銀色のナイフがコロンビーヌによって生み出され、ドラスたちも巻き込んで飛ばされる。
 それぞれが銀色のナイフを払いながら、全員がメガトロンたちを睨みつけた。
「おっと、鳥君。貴重な情報をありがとうよ。これから俺様たちは要塞に向かわせてもらうぜ。
そのシャトル基地にある転送カプセルを使ってな!」
「なに! キサマ、どこでそれを……」
「このシュワちゃんが近くにいたのに気づかないなんて、あんたたちって結構マヌケねぇ」
「!? キサマ……」
 イーグリードは悔しそうに歯を食いしばっている。それもそうだ。モニターのある部屋は今シグマ一人しかいない。
 ライト博士には音声しか確認する手段がなく、せいぜい『T-800がどこかへ移動した』ていどしか確認が取れないかったのだろう。
「お前さんたちを相手してやりたいが、あいにくこっちも暇でないんでなぁ」
「そういうことだ。さらば、運がよければまた会おう」
 メガトロンの言葉に同調するように、T-800が懐にしまっていたものを投げつける。
 イーグリードは逃がさんと跳躍するが、突如視界に光が溢れ、つんざくような轟音が耳朶を叩く。
 視覚センサーと聴覚センサーが麻痺する中、イーグリードははめられたことを知った。


「いよっしゃ、OK! シュワちゃん!!」
「使い慣れているわねぇ。よくやったわ」
 いつの間にかサングラスを用意したメガトロンとコロンビーヌがT-800を褒める。
63参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:22:08 ID:QP9ZgoU+
 
64参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:22:50 ID:QP9ZgoU+
   
65あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:22:57 ID:NwTVVFx+
 T-800シリーズのターミネーターは強烈な光を発せられると、情報処理機能に不具合が生じて六十秒復帰に時間がかかるのだ。
 コロンビーヌがもっていたスタングレネードを利用して、周囲のターミネーターの動きを止めるのが目的だ。
 当然、T-800たちは視覚と聴覚のセンサーを保護するため、詰め物とサングラスを持って対処した。
 人間離れした能力を持つ自分達なら、この程度の処理でどうにかなる。
 そして動くものがいない間にシャトル基地の転送カプセルへと向かう手筈だ。
 メガトロンを先に進ませる中、T-800を掴むものがいた。
「逃がさない!」
 ドラスだ。目が見えない状態でも、どうにか喰らいついてきたのだろう。健気だ。
 コロンビーヌが排除しようとするのを、T-800は手で制する。もっと手間のかからない手があるからだ。
「ドラス君に渡してください……私が彼にできるのは、この程度だから。
ボブさん、今までありがとうございました…………ごめんなさい」
「スバルお姉ちゃんの……声……!?」
 T-800は音声を調整してスバルの声を作り出す。動揺したドラスの手を払いながら、視界が回復してきただろうドラスに向かって右手を向けた。
 T-800の右手の親指と人差し指に挟まれているのは、待機モードのマッハキャリバーだ。
 宝石に似た姿のデバイスを視界に入れて、ドラスは疑問を浮かべる。
「彼女が最後に君に託そうとしたものだ。彼女の相棒とも呼べる存在でもある。それほど、君はスバルに想われたのだ」
「え!?」
 ドラスが虚を突かれ、無防備となる。そのままT-800はマッハキャリバーを握りつぶした。
 粉々に砕けたマッハキャリバーを見て、ドラスの表情が悲しみとも怒りとも判断のつかない色に染まる。
 T-800にはその表情を理解することは出来ない。分かるのは今のドラスは無防備というだけ。
 T-800はミニガンをドラスへと突きつけて、弾丸を吐き出させた。
 ガトリング砲の吐き出す弾丸が直撃したドラスは、地面へと叩き落された。これで邪魔はなくなる。
「いくぞ」
「容赦ないわねぇ……」
「俺たちの目的を達成するには、これが一番最良の手だと判断した。それだけだ」
66あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:23:49 ID:NwTVVFx+
「シュワちゃんクール……」
 こうして、邪魔のなくなったメガトロンたちは本郷たちよりも先にシャトル基地へと向かうことに成功した。



「ドラス!」
 ゼロはドラスを受け止めながら、白いカラスを操作して体勢を立て直す。
 目を瞬かせ、どうにか回復してきた視界の中、遠のいていくメガトロンの姿を悔しげに見届けた。
「イーグリード」
「安心しろ。ライト博士が言うには、転送先はシグマ隊長からもっとも遠い場所に設定しているとのことだ。
ターミネーターが投入された時点でそうしたらしい。俺たちが近づけば、ちゃんとライト博士に連絡して転送位置を変えてもらうが……」
 メガトロンたちが要塞に突入したのは厄介だ、とイーグリードが言外に告げる。
 ゼロも同意を示しながら、腕の中のドラスの様子を観察した。
 T-800はドラスに向かってもっとも残酷な仕打ちをした。スバルを失った心の傷をえぐるような真似なのだ。
「スバル……お姉ちゃん……」
「ドラス……イーグリード、本郷。そろそろ俺たちもいこう。グズグズしていられない」
 ゼロの提案に、イーグリードと仮面ライダーが頷いた。数も少なくなっているが、どんどん転送されていく。
 ここでのんびりしても、いずれ数で押されるだけだ。
 ジリ貧になる前にメガトロンたちを追う。行動方針は決まった。
 仮面ライダーがサイクロン号のエンジンを鳴らし、ゼロはドラスを後ろに座らせて白いカラスを発進させた。


(スバルお姉ちゃん……)
 ドラスは砕けたマッハキャリバーの様子を思い出して、顔を俯かせた。
 ナタクと泣かない約束をしたのだ。どんなに辛くても、もう泣くつもりはない。
67参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:24:41 ID:QP9ZgoU+
 
68あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:24:43 ID:NwTVVFx+
 それでも悲しみは胸を満たし、悔しさと怒りで身体が震えた。
「今の俺は前しか向いていない。だから後ろのお前がどうしようと、俺が確認することはない」
「ゼロさん?」
 ドラスが弱々しく名前を呼ぶが、ゼロは答えずターミネーターにロケット弾を撃ちこんでいる。
 泣いていい、と不器用にいっているのだろう。ドラスは唇を噛み、マリキュレーザーの発射口を移した左手をターミネーター郡へと向ける。
 一閃、限界まで絞り込まれた莫大なエネルギーが、一体のT-888の髑髏のような頭部を蒸発させた。
「大丈夫……僕はまだ戦える」
「だが、感情で判断を曇らせるような真似は……」
「しない! もう、僕は誰も……」
 ドラスが続きの言葉を失い、今度は別のT-888の足を狙い撃った。
 ボブと呼んだターミネーターより弱いことに疑問を持ちながらも、沸きあがるのは怒りなのか、悲しみなのかドラス自身判断がつかなかった。


(戦うことに拘ることこそ、感情にとらわれているのだがな……)
 ドラスが明らかに動揺している状況を、ゼロは好ましく思わなかった。
 T-800が……いや、あいつは今相手にしているT-800とは手ごわさが違う。
 ボブはドラスの心理状態を冷静に見極め、もっとも効果的な手を打ってきたのだ。
 他人の声真似ができるとは始めて確認できたが、見事なものだ。
 ドラスはペースを忘れて強力な攻撃を連続して放っている。
「そこまでだ、ドラス。そろそろシャトル発射基地の門だからな」
「……わかった」
 本人は隠しているつもりかもしれないが、気落ちしている感情が声に表れている。
 よくない傾向だ。
(だが、それは俺たち大人が気をつければいい。二度とその笑顔を曇らせることはさせない)
69あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:25:06 ID:NwTVVFx+
 それこそが、フランシーヌとハカイダーを殺したことにたいする贖罪であったから。
 いや、ハカイダーは贖罪なんて望んでいない。彼が望んでいるのは……。
「ドラス、すべての片をつける。俺は迷わない。目の前に敵がいる限り……」
 カーネルのセイバーの刃を振り回し、近くにいたT-888の首を刎ねる。
 ゼロは進む。イレギュラーハンターとして、その生き方を二度と変えるつもりはない。
「叩き斬る!」
 それこそが、ハカイダーに敗北をもたらせたゼロという男なのだから。



 骨格だけのターミネーターの残骸が無数に転がる中、簡易型転送装置の隠された玉座を背にシグマはΣブレードを構えていた。
 ここまで来るのは、今までエックスやゼロたちが挑戦した基地とは違い容易である。
 雑魚のメカニロイドやトラップは停止し、待ち構えるはずの八人の『戦力』は五人がV3火柱キックにより重傷。
 比較的損傷の少ない二人も一日二日で治るような傷でもなく、またこのまま参加させても彼らのためにならないため、元の世界へと返した。
(もっとも、ゼロたちとの決着に誰も介入させたくないだけだが……ここに来て邪魔が入るとはな)
 想定していた事態とはいえ、億劫といえば億劫だ。手ごわい相手だと構えてはいたものの、シグマほどの技量があれば首を斬りおとすのもさほど難しくはない。
 それに、戦闘のない世界だった成果、判断が甘いところが残っている。
 会場内のT-1000もそうだが、戦闘経験が浅いところが見え隠れする現状がターミネーターたちの隙に繋がっていた。
 もっとも参加者のT-800はそうもいかないのだろうが。モニターでも見ていたが、あれほど狡猾に成長をしているとは意外だ。
 それに武器庫と言っていいようなコロンビーヌが傍にいる。
 宝具も身体に埋め込まれた仙人骨で、消耗が大きいとはいえ使えるはずだ。
「厄介だ。だが、彼らを倒すのは……」
 悪【イレギュラー】である自分を殺すだろう、ゼロたちだけだ。
 自分は理性を取り戻した、といっても結局やっていることは人類の滅亡。
 別世界とはいえ、もはや自分に牙なき人間達を守っていく資格はないのだろう。
70あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:25:56 ID:NwTVVFx+
 ここに巻き込まれた参加者たちのため、などと綺麗な言葉で自分を飾る気はない。
 V3こと風見志郎が自分を否定したのは、結局のところやっていることが『悪』という手段であるからだ。
 自分の策を風見は知らなかったが、おそらく知ってもなお仮面ライダーとしてシグマを倒そうとしたはずだ。
 そうあるべきだ。風見のような生き様をゼロにも求め、自分を殺すことですべての決着を着けさせる。
 シグマの決意は変わらない。
 足元に転がるターミネーターの頭を踏み潰し、シグマは深々と魔王らしくゼロたちの登場を待った。



 薄暗い、未知の金属物質に囲まれた部屋へとメガトロンたちは現れた。
 西洋のドラゴンを模した巨躯をもってしても、余裕があるほど部屋は広い。
 コロンビーヌによれば、要塞内もゾナハ蟲が存在しているらしい。願ったり叶ったりだ。
 もっとも、メガトロンたちは知らないが今回のバトルロワイアルに用意されたゾナハ蟲は病原体モードがない。
 純粋に武器としてしか存在していなかった。
 それはさておき、ようやく要塞へとメガトロンたちはたどり着いたのだ。
 T-800はミニガンをもったままメガトロンの背から降りる。
「シュワちゃん、なにか気になることあるかい?」
「特にはないな。せいぜい、壁や床の材質が不明であることくらいか」
「ふぅん、まあ大暴れしても壊れないってことなら、逆に御の字じゃない」
「そうだな。まずは武器庫を探したい。ミニガンの弾数が余裕がない上、ここでミニガンが奪えるとは限らないからな」
「ああ、それだったらあたしが持っている支給品使っていいわよ? どうせあたしが必要な分は、あたしのPDAに移しきったし」
 そういってコロンビーヌがPDAを一つ投げ出した。T-800は受け取ってすぐに中身を確認する。
 T-800が礼を言わないことにコロンビーヌが不満を示すが、メガトロンが宥めた。
「どうよ? シュワちゃん」
「火力的には問題ない。この宝具とやらも、使えないことはないな。体力の消耗が激しい、とあるのが気になるが」
71あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:26:24 ID:NwTVVFx+
「それじゃ、さっそくシグマを探しましょう」
 コロンビーヌがわくわくした様子で目的を告げて、T-800も静かに同意する。
 意外にも、ここで待ったをかけたのはメガトロンであった。
「ちょっと待ってくれ。シュワちゃん、コロンちゃん」
「ん? どうしたの? まさか怖気ついたとか」
「この破壊大帝メガトロン様に、戦略的撤退の文字はあっても怖気づくという文字はない!」
「いや、そこは逃げるの方もないといっておきなさいよ。建前でも」
 からかったら、ボケを返されるとは思っていなかったのだろう。
 コロンビーヌが微妙な表情のままつっこんだ。
「まあ、それはさておき、俺様たちとシグマ、そして正義の味方たちでは戦力がだんちだ。
このまま向かっていったら玉砕覚悟。神風万歳、ってことになる。俺様に自殺願望はない。そんなのごめんだ」
「妥当だ。しかし、対抗策がないのも事実。……いや、対抗策を思いついたのか?」
「Exactly(そのとおりでございます)! まあ、対抗策ってよりはあいつらを慌てさせて、隙を作る手段だけど」
「へぇ、なにかしら?」
 コロンビーヌとT-800の興味をひいたことにメガトロンは満足し、悪い笑みを浮かべる。
 盗聴を恐れて、メガトロンは顔を近づけて小声で話しかけた。
「この要塞、乗っ取って適当な星に落とそうぜ。窓を見てくれ。青い星がある」
「ほう……できるのか?」
「五分五分……ってところだな。俺様はコンピューターの扱いは慣れているが、実際触れてみないと分からない。
うまくいくなら、コロニーのほうも落としてみたいしな」
「スケールが大きいわねぇ……」
「怖気ついたのかい? コロンちゃん」
 さっきのコロンビーヌのからかいの言葉をメガトロンは返した。
72参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:26:30 ID:QP9ZgoU+
    
73あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:27:07 ID:NwTVVFx+
 一発二発殴られるのを覚悟で言ってみたが、意外にもコロンビーヌは妖艶な笑みを浮かべるだけである。
「演目は派手に……乗るわ。メガちゃん、最高よ」
「悪くない手だ。俺も乗ろう」
 コロンビーヌとT-800が同意したのを見て、メガトロンは踵を返す。
 まずはコンピュータールームの探索だ。


「あ、メガちゃん」
「なんだい? コロンちゃ……あいたぁっ!」
 メガトロンの言葉を最後まで告げるより前に、グラーフアイゼンが脳天を叩く。
 ぐわんぐわんとよろめくメガトロンは、なぜ? と問いかけた。
「簡単よ。あたしを馬鹿にするのは許さないわよ?」
「先に言ったのはコロンちゃんなのに!」
「なにか言ったかしら〜?」
 グラーフアイゼンの先端を頬につつかれ、メガトロンは理不尽さに顔をしかめる。
 文句を言おうとしたとき、T-800がさえぎった。
「ここで無駄に時間をつぶすな。早く行くぞ」
「は〜い♪」
「ちょ、そりゃないよ! コロンちゃん、シュワちゃん!!」
 メガトロンが不平不満を漏らしながらも、三人は足取りを止めなかった。

74参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:27:19 ID:QP9ZgoU+
 
75創る名無しに見る名無し :2009/07/09(木) 22:27:35 ID:2K5UGCEa
 
76あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:28:35 ID:NwTVVFx+
【E-5 要塞内部/二日目・早朝】

【コロンビーヌ@からくりサーカス】
[状態]:全身にダメージ中、疲労中、黄金律を打破、マサルへの愛、超古代文明のパワー 、爆弾解除
[装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ギギの腕輪、ガガの腕輪
[道具]:基本支給品一式×2、PDA(コロンビーヌ(通信機能付き)、絡繰茶々丸(分割ファイル四つ。統合ソフト)、アルレッキーノ、KOS−MOS、ラミア
補給装置@スーパーロボット大戦OG(4/5)、PDAの通信機能付加ソフト@ロボロワオリジナル、タブバイク@ゼノサーガシリーズ
麻帆良学園の制服(両袖がない)@魔法先生ネギま!、コエカタマリン(残りニ回)@ザ・ドラえもんズ、謎の立方体
[思考]
基本:優勝者の報酬を奪い、勝の下へ戻る
1:メガトロンの作戦に乗る。
2:シグマと正義の味方連中を殺して願いを叶えるアイテムを奪う。
3:メガトロン、T-800と共闘。邪魔者はすべて殺す。
4:今の自分なら人間も殺せる!
[備考]
※参戦時期は死亡後です(原作40巻)
※全てのゾナハ蟲(コロンビーヌらが吐き出すものも)には以下の制限が掛かっています。
また会場の全域には十分なゾナハ蟲が漂っています。
1:外部には一切の害はありません(ゾナハ病の感染や機械類のダメージなど)
2:コロンビーヌが自分の武器として使用するのには問題なく使用できます
3:通信機能に障害を発生させています。
※二エリア以内なら、メガトロンのPDAと通信が可能です。
※黄金律『フランシーヌ人形への絶対服従』を打破しました。
77参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:28:49 ID:QP9ZgoU+
 
78あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:28:58 ID:NwTVVFx+

【メタルスドラゴンメガトロン@ビーストウォーズメタルス】
[状態]:エネルギー(80%)、弾薬(90%)、疲労小 、爆弾解除
[装備]:ハイパージャマー@スーパーロボット大戦OG
[道具]:PDA(メガトロン(通信機能付き)、フランシーヌ)、草薙素子のスペア義体@攻殻機動隊S.A.C、シャトルの制御コンピューター、動物ごっこ帽子@ザ・ドラえもんズ、スパイセット@ザ・ドラえもんズ
    分かいドライバー@ザ・ドラえもんズ
[思考・状況]
基本思考:シグマから主催者の座と優勝者の報酬を奪い、サイバトロンの抹殺。
1:要塞、コロニーを地球に落とす。
2:シグマと正義の味方連中を殺して願いを叶えるアイテムを奪う。
[備考]
※二エリア以内なら、コロンビーヌのPDAと通信が可能です。
※スパイセットの監視可能範囲は半径100mに制限されています。


【T−800@ターミネーター2】
[状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出、シグマウィルス感染。爆発物解除。
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)、M134ミニガン×2(残り弾数10%)
[道具]:HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS、
    PDA(凱、村雨、T−800、スバル、パンタローネ)、打神鞭@封神演義、グランドリオン@クロノトリガー、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん
    生活用リゼンブルパーツ(左腕)@SoltyRei、コルトS.A.Aの弾丸(12/30発)
    ラブラブビッグバンの音楽ファイル@パワポケシリーズ、サブタンク(満タン)@ロックマンX
    滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS、ナックルの弾薬(25/30発)@仮面ライダーSPIRITS
79あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:29:36 ID:NwTVVFx+
    テキオー灯@ザ・ドラえもんズ、ライディング・ボード@リリカルなのはStrikerS
    不明支給品1〜2個(確認済み1〜2(銃はない)) 、 スタングレネード(2/3) 床屋セット(鋏、櫛、鏡)
    開天珠@封神演義、たずね人ステッキ@ドラえもん、アカネハウス11号@パワプロクンポケット8
    マグネット×2、阿紫花の長ドス(折れた)@からくりサーカス、予備マガジン3、闇夜の鎌@クロノトリガー、仙桃×3@封神演義、
    マガジン(13/13 9mmパラベラム弾)×1、FN ブローニング・ハイパワー(13/13)@攻殻機動隊
[思考・状況]
基本思考:『自分の世界』のスカイネットの使命通り、全ての人間を殲滅する。
1:メガトロンの作戦に乗る。
2:シグマと正義の味方連中を殺して、元の世界に帰る。
3:『負け犬』のスカイネット配下のターミネーターは破壊する。
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。

80参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:30:22 ID:QP9ZgoU+
 
81あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:30:30 ID:NwTVVFx+


 シャトル基地内にある転送カプセルに向かっているのは、仮面ライダーたちだけではなかった。
 武美を再び後ろに乗せ、サイクロン号を操りながらもすでに三体のT-800シリーズを手にかけている。
「本郷さん、あたしに構わずやっちゃって!」
 武美はそういうのだが、さすがに仮面ライダーは自分の身体能力に彼女をつき合わせる気はない。
 後ろにいる武美に気遣いながらも、狭い通路を駆け抜けてターミネーターたちを弾き飛ばした。
「本郷さん、動かないで!」
 ミーの指示に従い、身体をかがめると光弾が仮面ライダーの頭上を通り過ぎて、T-888へと直撃した。
 光弾が直撃したT-888の頭部が吹き飛び、首から火花を散らす。
 テントローを背中から伸びるアームで器用に操るミーが仮面ライダーに並走した。
 アームのうち二本はソルティを抱えている。上空では両手が空いているイーグリードが戦っていた。
「ありがとう、ミー」
「どういたしまして。このまま突っ切ろう!」
 ミーの言葉に頷いて、仮面ライダーはサイクロン号をさらに加速させた。
 殿はゼロとドラスが勤めている。ようやく破られた壁の向こうに、転送カプセルが存在するのを確認した。


「イーグリード、ウフコック。武美とソルティを頼む」
「本郷……?」
「向こう側にもターミネーターたちがいる可能性が高い。俺とミーはここで転送カプセルを守っておく。だから先に行ってくれ」
 仮面ライダーはそう告げて、飛んできたロケット弾を蹴り返した。発射したT-888の近くで着弾。
 続いて爆風に巻き込まれて吹き飛ぶT-888の頭部が爆ぜる。ミーのバスターが火を噴いたのだ。
 吹き飛ぶターミネーターを尻目に武美とウフコックが仮面ライダーに向かって忠告をする。
「本郷さん……また無理しちゃ駄目だよ!」
82あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:31:28 ID:NwTVVFx+
「そうだ。お前はすぐに無茶する」
「大丈夫、武美さん、ウフコック。僕がついているから、そう無茶はさせないよ」
 ミーの爽やかな言葉に、武美はお願いね、と返す。
 それほど無茶をしているのか、と仮面ライダーは自問自答したが、怒っている滝の顔を思い出し沈黙した。
「本郷、念のために俺のPDAを渡しておく。こいつは通信能力を強化している。なにかあったら知らせてくれ」
「分かった。後は任せてくれ。すぐに追いつく」
 そう仮面ライダーはイーグリードに告げて、ミーと共にターミネーターの大群へと身体を向けた。
 イーグリードが武美とソルティと共に要塞へと渡ったのを見届け、転送カプセルへと迫るミニガンの弾を弾く。
「さて、ゼロやドラスが通る道を開くぞ」
「了解!」
 ミーの肯定の言葉を合図に、仮面ライダーの脚の筋肉が盛り上がり、地面に莫大な力を押し当てて跳躍した。
 仮面ライダーは反動で前方宙返りをしつつ、空中で徐々に蹴りの体勢に入る。
「ライダァァァ――キィィィィック!!」
 砲弾の勢いで繰り出される、一筋の矢。流れるように前方に突き出された仮面ライダーの蹴りが、T-888の頑強な頭部を砕き通る。
 勢いを殺すため地面を滑りながら、仮面ライダーは再び身をかがめて二度目の跳躍に備えた。
 突如、仮面ライダーの目の前のコンテナが吹き飛び、T-888が一体姿を現した。
 T-888は直進して、大きくミニガンを振りかぶる。砲身でこちらを叩くのだろう。
 だが間合いの計算が甘い。仮面ライダーが硬直したと見て、油断している。仮面ライダーにとってはすぐに懐にもぐりこめる距離だ。
 振り下ろす軌道を計算し、T-888の右肩がぶれたと同時に仮面ライダーはさらに身を屈めた。
 仮面ライダーは右手で上半身を支え、背をミニガンの砲身が通り過ぎる。
 右腕の人工筋肉が軋み、片腕だけの力で身体を持ち上げた。
 戦車すらスクラップにする力を有する右腕の反動で、上半身が神速の勢いで立ち上がる。
 ミニガンを振り下ろしきったT-888の動きは固まっていた。
 仮面ライダーの左拳を固め、腰を回転し顎を引いて一歩踏み込むと共に脇を締めた一撃を頭部へとぶつける。
「ライダァァーパァンチ!!」
83参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:32:01 ID:QP9ZgoU+
 
84あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:32:06 ID:NwTVVFx+
 T-888の頭が内部の精密機器を撒き散らしながら弾ける。
 素早く拳を戻して、T-888のボディを突き飛ばして次の敵へと備えた。


「オラオラオラオラー!」
 ミーはウィルナイフを振り回し、T-888を切り刻んだ。
 バスターだと水素電池を刺激する可能性があったためだ。牽制目的以外ではあまり使っていない。
 両腕をなくしたT-888が蹴りのため腰を落としたのを確認して、天井の鉄パイプを背中のアームで掴んで身体を引き上げた。
 直後、ミーの身体があった位置にT-888の蹴りが通り過ぎる。
 内心ゾッとしながら、止めを刺すために脳天にウィルナイフを突き立てる。
 動きが鈍った隙にナイフを手放し、爪を出してT-888の頭部をミーはナマス切りにした。
「硬い! 硬いよ、爪の刃が欠けたよ!」
 帰ったら剛にパーツを交換してもらおう。
 郷愁の念が強くなったのか、ミーはついそう思ってしまう。
(さてと、ゼロさんやドラス君の逃げ道を作ってやらないとね。って、本郷さん凄い。
僕が一体倒す間に五体はつぶしているよ……いかん。呆けている場合じゃない)
 ミーは軽く地面を蹴って跳躍し、仮面ライダーに向かおうとしたターミネーターの視線を引き寄せる。
 頭部に牽制の光弾を撃ちながら、宣言した。
「かかってこい、雑魚ども。俺が料理してやるよ」
 つい昔の一人称に戻りながらも。


 白いカラスのサタンポッドからロケット弾を放ちながら、ゼロはようやく転送カプセルのある通路へとたどり着いた。
 戦闘力のあるゼロとドラスが殿を買って出たのは自然の成り行きだ。
 ゼロが斬り伏せる間にも、ターミネーターは送られてきた。
85あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:32:41 ID:NwTVVFx+
 いい加減鬱陶しくなる。
「くそ、こいつらいったい何体いるんだ!?」
「倒しても倒してもきりがない……ゼロさん、本郷さんたちに追いつこう」
 ドラスの提案は当然の成り行きだ。そろそろ本郷たちも転送カプセルを使っているはず。
 ゼロは白いバイクを操り、転送カプセルの目前へと舞い降りる。
 その様子を見届けたのか、戦っていた仮面ライダーとミーが近寄ってきた。
 ゼロはまだ要塞に向かっていない事実に呆れる。
「どういうことだ? まだ向かっていないのか」
「そうしたいのは山々だが……」
 仮面ライダーが続きを告げようとした瞬間、転送カプセルに向かってミニガンが掃射された。
 地面の床を仮面ライダーが剥がし、盾代わりに使う。ミニガンの弾丸を受け止め、射撃が途切れたときゼロが軽々と宙を跳んだ。
 そのままカーネルのセイバーを構え、上から下へ手を手前に引くように振り下ろした。
 T-888が真っ二つになって崩れ落ちるのを見届け、新手の射撃を後方に跳んで避けながら仮面ライダーに顔を向ける。
「なるほどな、こいつらが邪魔で向かえないのか」
「一人残って守れば問題ない。ゼロ、先に行け」
 仮面ライダーの言葉にゼロは渋面を作る。たった一人残って囮になるのは自棄といえるのではないのか?
 自己犠牲という奴なら、押し付けがましい。同じく話を聞いていたドラスも口を出す。
「本郷さん、どうして……」
「どうしても転送時には無防備になるからな。要塞に着いたら、転送カプセルの電源を落とすように伝えてくれ。
それに、残るのは俺でないといけない」
「どういうことだ? 例えば、俺が残るとなにか不都合なことがあるのか?」
 ゼロが不満げに仮面ライダーへと問う。当然の言葉だ。
 仮面ライダーの答えに満足しなければ、ゼロは転送カプセルに無理やり押し込んで一人残るつもりだ。
「簡単だ。シャトルで要塞に向かう。シャトルの移動設定を変えれる技術を持つのは、俺か武美くらいだ。
ゆえに、俺が残らねばならない。転送カプセルなしで要塞に向かうにはな」
86参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:33:28 ID:QP9ZgoU+
 
87あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:33:45 ID:NwTVVFx+
「なるほど。だが……」
 ゼロにはまだ答えに満足していない。確かに仮面ライダーの強さは認める。
 ゼロよりも多くのターミネーターを相手にしたのだろうが、息すら切らしていない。
 力の緩急のつけ方と、熟練した体捌きは年季が入ったものだ。一対多数の戦いを強いられた経験が多いのだろう。
 もっともゼロも似たような過去をもっているのだが。
「それでも危険が大きすぎるよ。いったんここで数を減らしてから、転送カプセルを使うのが……」
「いや、ドラス。それは無理だ。メガトロンたちが向かっている。なるべく早く向かわないと、これまでの苦労がパアだ」
 ゼロの指摘に、ドラスがしゅんとうなだれる。そのドラスの頭を、仮面ライダーが撫でてゼロへと視線を向けた。
 仮面の下とはいえ、決意を乗せたとわかるほどの瞳を向けられ、ゼロは仮面ライダーの言葉を待つ。
「安心しろ。必ず俺は要塞にたどり着く。それまで武美やドラス君たちを頼む」
「本郷……」
「いや、本郷さんだけ残させるわけにはいかないよ」
「ミー……」
 ミーはバスターでターミネーター郡を牽制しながら言葉を続ける。
 チャージしていないためせいぜい数歩後退させる程度だ。
 近づいてきたターミネーターはゼロが雷神撃で迎撃する。
「僕も残る。僕の悪魔のチップの能力なら、シャトルの改造も楽になるだろうしね」
「ミー……しかし」
「本郷さん、この条件だけは譲れないよ。武美さんも言っていたでしょ? 無理はしないように、ってね。
だからゼロさん、ここは僕と本郷さんに任せて先に行ってよ。後から必ず追いつくから」
「……ミー君」
 ドラスの寂しそうに猫のサイボーグの名前を呟くのを耳に、ゼロは黙考した。
 ここで仮面ライダーとミーを残すのは正解か? 答えが出るはずもない。
 しかし、このままここでジリ貧しているよりは充分いい選択なのは確実だ。
 たっぷり三秒熟考した後、ゼロは結論を出した。
88参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:34:13 ID:QP9ZgoU+
  
89あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:34:17 ID:NwTVVFx+
「ドラス、行くぞ」
「ゼロさん!」
 咎めるようなドラスの強い口調を無視して、ゼロはドラスを抱えて白いカラスに跨る。
 仮面ライダーの瞳にも、ミーの瞳にも諦めの色はない。
 二人が強く決意しているなら、ゼロにはそれに甘えるしかないのだろう。厄介な話だ。
「二人に条件がある。必ず来い」
「当然だ」
「もちろん!」
 仮面ライダーが力強く、ミーがまだまだ余裕があると示して返事した。
 この二人を信じるしかない。ゼロは不満を抱えているドラスを連れて、転送カプセルへと消えた。


 ゼロとドラスが飛び込み、転送カプセルが発する光が部屋に満ちる。
 光は一瞬で晴れ、同時にゼロたちの姿もない。転送が成功した証拠なのだろう。
 仮面ライダーはT-888の頭部を蹴り飛ばし、反動でバスターを撃つミーの背中に立つ。
「ミー、いいのか?」
「構わないよ。それに……本郷さんこいつらの数を減らすつもりだったんでしょう?」
「よく分かったな」
「結構最初のほうから一緒にいるしね。それに、本郷さんある意味わかりやすいくらい正義の味方だし」
「ムゥ……」
 どうにもミーには考えを読まれていたことに、仮面ライダーは唸った。
 数を減らそうと思ったのは、要塞でのイーグリードたちの負担を減らすこと。
 転送カプセルの電源を落とせば、これ以上ターミネーターたちが要塞に向かうこともない。
 だが、仮面ライダーがシャトルを利用して要塞に向かうように、彼らもなんらかの手段を利用して要塞にたどり着く可能性がある。
 もしそうなった場合でも対応できるよう、ある程度数を減らしてから要塞に向かうつもりなのだ。
90あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:34:43 ID:NwTVVFx+
「ならば俺が言うことは一つ。ミー、手を貸してくれ」
「おやすい御用さ!」
 ミーは笑顔を作り、仮面ライダーは仮面の下で力強い笑みを浮かべ、ミニガンを構える五体のT-888へと向かって地面を蹴った。
 あたかも骨だけとなった地獄の亡者に立ち向かう、英雄であるかのように。


【D-3 シャトル基地/二日目・早朝】

【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康、仲間を失った悲しみとやるせなさ、爪の刃欠け、爆弾解除
[装備]:アームパーツ@ロックマンX、ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(何でも切れる剣のあった場所に収納)
[道具]:PDA(ミー)、青雲剣@封神演義、ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
[思考・状況]
基本思考:バトルロワイアルを終わらせる
1:ターミネーターたちを減らす。
2:1の後、要塞内へと向かう。
3:武美、ソルティを守る。
4:ソルティが心配
5:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を許さない。
6:本郷に対し、少々の罪悪感。
[備考]
※悪魔のチップの制限は精密動作性の低下、他者への使用には遠慮気味になる、支給品と合体するとやや疲労する、です。
※合体による肉体の主導権は、基本的に相手の側にあります。
91参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:35:16 ID:QP9ZgoU+
 
92あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:35:51 ID:NwTVVFx+

【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労小、ダメージ中、胸部に包帯。応急処置済み。生命の水により回復中(ただし、しろがね化はまだしていない)。
     爆弾解除。フランシーヌを守れなかったことによる後悔。変身中。
[装備]:サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、トマト×97@THEビッグオー、謎の金属片(外装解除。解析は八割程度)、
     PDA(グレイ・フォックス、ドロシー、草薙素子、ドラ・ザ・キッド)×4。
     ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、ブルースシールド@ロックマン、ジローのギター@人造人間キカイダー
     虹(ドクターケイトの毒が染み込んでいる)@クロノトリガー、ライドル@仮面ライダーSPIRITS、ラブラブビッグバンの音楽ファイル@パワポケシリーズ
     PDA(イーグリード用通信強化Ver。ラミア)、サブタンク(満タン)@ロックマンX、サブタンク(空)@ロックマンX
[思考・状況]
基本思考:シグマと決着をつけ、バトルロワイアルを終わらせる。
1:ターミネーターたちを減らす。
2:1の後、要塞内へと向かう。
3:シグマの下へと向かう。可能ならば彼を説得したい。
4:武美の寿命タイマーをどうにかする。
5:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を最後の敵として警戒。
6:ソルティを早く修理してやりたい
[備考]
※原作8巻(第32話 称号)から参戦。
※武美とは、一エリア以内なら通信が取れます。

93参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:36:05 ID:QP9ZgoU+
 
94あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:36:25 ID:NwTVVFx+
【D-4 要塞内部/二日目・早朝】

【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:全身にダメージ(中)。疲労(中)。気絶中。爆弾解除
[装備]:なし。
[道具]:支給品一式、PDA×2(ソルティ、神 敬介)、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン
    紫の仮面@現実、K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発、LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険
    ミラクルショット@クロノトリガー、ガイアアーマー@ロックマンX5
[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す
0:気絶中……
1:フランシーヌたちを守る。
2:武美を守る。
3:ロイさんやローズさんの元に帰りたい。
4:放送がないのに疑問
[備考]
※参戦時期はアニメ10話〜11話です。
※戦い自体への迷いは消えましたが、相手を躊躇なく殺せるまでには至っていません。
※気絶のため、すべての思考が気絶前のままです。
 気絶状態を回復するには、修理が必要になります。

95参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:36:45 ID:QP9ZgoU+
                                 
96あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:36:48 ID:NwTVVFx+
【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康。爆弾解除
[装備]:ウフコック@マルドゥックシリーズ
[道具]:PDA(武美、クロ)×2、ランダムアイテム0〜1
    アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS(弾切れ、発電所内にクロの右手と共に放置)、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:他のメンバーが要塞に来るのを待つ。
2:ソルティが心配。
3:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を警戒
4:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。
[備考]
※本郷とは、一エリア以内なら通信が取れます。
※ウフコックは、ターンした物を切り離すこと(反転変身【ターンオーバー】)が出来なくなっています。
※ウフコックの参戦時期は、ボイルド死亡後です。

97名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/07/09(木) 22:36:55 ID:56FmfMKs
私怨
98あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:38:18 ID:NwTVVFx+
【イーグリード@ロックマンX】
[状態]:全身にダメージ(中)。疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:PDA(ラミア)
[思考・状況]
基本:バトルロワイアルを終わらせる。
1:他のメンバーが要塞に来るのを待つ。
2:シグマの自殺を止める。
3:ライト博士にソルティの修理を頼む。
4:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を敵視。

99あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:39:05 ID:NwTVVFx+
【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:健康、T-800を敵視。ハカイダーとフランシーヌを殺したことを後悔。
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ、カーネルのセイバー@ロックマンX4、
    白いカラス(表面に焦げ)@人造人間キカイダー
[道具]:支給品一式、PDA(ゼロ)、空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
    謎の金属片(マルチの残骸から回収)
[思考・状況]
基本:シグマと決着をつける。
1:イーグリードたちに本郷の決意を伝える。
2:ハカイダーと同じ道を歩まない。彼が望んだゼロの道を行く。
3:凱を殺したボブ(T-800)を最大の敵と認識。
4:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を敵視。
5:ソルティにエックスのことを伝える。
[備考]
※覚醒した影響でゼットバスターが使えるようになりました。
ただし、覚醒時より威力は低いです。
※真・滅閃光、真月輪、幻夢零は覚醒時のみ使える技のため、現在使えません。


【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:右腕がスバルのもの、自分が求めていたものが『家族』と自覚、ナタク@封神演義を吸収、疲労小
    セインを四、五歳幼くした状態に擬態(ただし生えている)、スバルの死に深い悲しみ
[装備]:ラトゥーニのゴスロリ服@スーパーロボット大戦OG、メカ沢の学ラン@魁クロマティ高校、オルゴール付き懐中時計@仮面ライダーZO
    混天綾@封神演義(マントとして)、乾坤圏@封神演義(左腕の方は修理が必要)、カセットアーム@仮面ライダーSPIRITS(体内)
    金蛟剪@封神演義(体内のナタクと付属)、テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:PDA(ドラス、マルチ、ノーヴェ、ロボ、アラレ、シュトロハイム、城茂、エックス、あ〜る、バロット、チンク、メカ沢、灰原、ロックマン)
    荷電磁ナイフ@マルドゥックスクランブル(D-3基地に放置。呼び出し可)
100あなたはここにいますか? ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:39:38 ID:NwTVVFx+
    スタームルガー レッドホーク、装弾数0/6@ターミネーター2(D-3基地に放置。呼び出し可)
    ぎんのいし@クロノトリガー、液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 (D-3基地に放置) タイムストッパー@ロックマン2(メカ沢の胴体部):ロボのPDA
    はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置) 拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。
    転送可能 スモールライト@ドラえもん(残り四回):城茂のPDA
    クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校 、グロスフスMG42(予備弾数20%)、 NIKU・Q・マックス@サイボーグクロちゃん、
    ナイスなグローブ×2@パワポケシリーズ、ダンボール@メタルギアソリッド、
    大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険、アトロポスのリボン@クロノトリガー、高性能探知機(バッテリー切れ)
[思考・状況]
基本思考:バトルロワイアルに決着をつける。
1:イーグリードたちに本郷の決意を伝える。
2:スバルの死と、最期の言葉とT-800の行動にショック。……それでも?
2:シグマを説得したい。
3:メガトロン、コロンビーヌ、T−800を敵視。T−800には……?
[備考]
※志郎の言った10人ライダーの中に仮面ライダーZOがいると思い込んでいます。
※他人の肉体を吸収すると取り出せなくなっています。
※金蛟剪@封神演義に『使用者の資格がある』と認められましたが、龍を発現させるまでには至っていません。
※赤ドラスに変身可能になりました。
※制限が解ければ、少なくとも体内の爆弾は自力で排除可能です。ナタクは不明。
101参加するカモさん:2009/07/09(木) 22:42:43 ID:56FmfMKs
支援
102 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/09(木) 22:43:46 ID:NwTVVFx+
投下終了します。
指摘感想お待ちしています。
103参加するカモさん:2009/07/09(木) 23:00:11 ID:56FmfMKs
投下乙です
感想の前に指摘おば
×宝具
○宝貝(パオペェ)
104参加するカモさん:2009/07/09(木) 23:23:24 ID:G+FUgYE2
投下乙
さて、面白くなってきました!
自我に目覚め我が道を行くボブさん。メガコロン組と合流しヒーロー組の敵対者として行動を開始したぞ
そして大胆にもコロニー落としを企て始めたかw
ヒーローとしてターミネーターの足止めと殲滅に残る本郷さんとミー
この二人は熱いぜ!
己の死を望むシグマとそれを止めようとするドラス達、はたしてどういう結末になるのか?
先が気になります GJ!
105参加するカモさん:2009/07/09(木) 23:38:15 ID:IAvMpuXg
投下乙です。
風見さん……結局7人全員強制送還とはw 流石は日本一自重しない男だぜ!
メガコロンは無事に、そして順調にシュワちゃんと合流……というか初対面からネタに走りすぎだよメガちゃんww
アメリカ生まれだから分かる、それがハリウッド補正というものだってなんぞwww
彼らが企てるコロニー落としもどうなることか……
「たかがコロニーの1つ、仮面ライダーなら押し返せる!」
こんな姿を幻視した俺は末期か……? というかこれでは某所の勇者王だw
ドラスも目の前でマッキャリを遺言と共に握りつぶされるなんて……シュワちゃんマジクール外道。
しかしそんな外道の所業を目の当たりにして、静かに燃える熱血漢・ゼロが黙っているはずが無い!
本郷さんとミーくんは、皆を先に行かせる為に残ったが……普通なら死亡フラグでも、この2人なら何とか出来そうな気がするぜ(ネコミミ的な意味で)。
いよいよ目前迫って来た最終決戦【グランドフィナーレ】
未だに様々な思惑が交錯する中で、ロボロワのエンディングはどっちだ!?
GJでした!!
106参加するカモさん:2009/07/09(木) 23:45:17 ID:QP9ZgoU+
test
107参加するカモさん:2009/07/09(木) 23:53:23 ID:QP9ZgoU+
よし、さる解除!

投下乙でっす!
風見さんぱねえw 死んでからの話で、仕事しすぎだw
シュワちゃんとメガちゃんの会話がいいなぁ。実に素敵だ。メガちゃんだからこそ、許されるw
コロニー落とし……ううむ、どうなるか。
託した物が結果的にドラスを追い詰めるとは、スバル死んでからも報われねえなぁ
『悪』の隊長いいよ隊長。
いろいろ気になるが、特に残った一人と一匹に期待してしまうな。GJ!


そして、指摘。

>>62より
>ライト博士には音声しか確認する手段がなく

145話『未来視達の――――』における、モニターを眺めるライト博士の描写との間に矛盾が発生しています。
何らかの理由でライト博士が部屋を移動、あるいはシグマがライト博士の部屋にあるモニターに電波遮断を施した、などする必要があるかと思われます。
108参加するカモさん:2009/07/10(金) 00:07:08 ID:Nvr1UgPQ
あらためて感想おば

さて相変わらず風見さんはまったく自重しないわけだがw
メガコロンの安定感は悪役なのに安心する不思議w
そしてシュワちゃん外道杉、マッキャリ不遇杉!
打ちひしがれるドラスだが、立ち止まっては居られない
ゼロやイーグリードともども天辺目指す愉快な
三人組の野望を阻止できるのか!?
戦場に残った本郷さんとミーくん
いやあ、さすがちびっ子たちのヒーローだね!
そして悲壮な決意をますます固めるシグマと
全員の今後の動向が非情に気になる話でした
重ね重ね乙!
109 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/10(金) 00:57:36 ID:ur6TaJEt
感想ありがとうございます。
誤字はwiki収録時に修正します。

>>107
該当部分を、


 イーグリードは悔しそうに歯を食いしばっている。それもそうだ。モニターのある部屋は今シグマ一人しかいない。
 ライト博士はスバルの死を見届けた後、見るに耐えきれずモニターのない修理室に向かっていたのである。
 あの状況ではT-800の行方を知る手段を失っていたのだ。

に差し替えます。

それでは失礼します。
110創る名無しに見る名無し :2009/07/10(金) 01:08:15 ID:cd51vjf/
>>109
素早い修正、乙です。問題ないと思います。
111参加するカモさん:2009/07/10(金) 10:05:02 ID:Nvr1UgPQ
指摘じゃないんですが少し気になったので質問
メガトロンとコロンビーヌは、ハカイダーとフランシーヌが
死んだ事は知っているんでしょうか?
112参加するカモさん:2009/07/10(金) 13:21:18 ID:8gwxzY71
直接の情報としては知らないはず
T-800が伝えたのもシグマ側の状況についてだけっぽいし
ただ察しのいい二人だし気づいてる可能性も十分あると思われ
つまり次の書き手しだいじゃね
113 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/07/10(金) 19:04:24 ID:ur6TaJEt
>>111
その辺を入れると今回間延びするため、次回以降に回しました。
T-800は残り参加者を把握しているでしょうし、次回いきなり知っていても、あらためてT-800から聞かされてもいいようにしています。
114毎日見ています:2009/07/10(金) 23:29:45 ID:KCn+MUgu
投稿お疲れさまでした。
ボブの狡猾さに傷つくドラスに涙を覚え、
T888を蹴散らす仮面ライダーに燃えました。
もし機械仕掛けの神様がいるのなら、彼らに御加護と祝福を……
しかしまさか残り二人も登場しないとは思わなかった。orz
115参加するカモさん:2009/07/21(火) 22:27:59 ID:ToM98d7i
予約が来ないな・・・・・
116創る名無しに見る名無し :2009/07/22(水) 23:53:29 ID:zMYjlH9Q
test
117参加するカモさん:2009/07/31(金) 13:30:01 ID:92eUjzpK
終盤は書きにくいようだ
118参加するカモさん:2009/08/04(火) 23:43:17 ID:3OTmiS83
予約キタ!
119参加するカモさん:2009/08/05(水) 23:17:30 ID:y9SVEjLI
人がいない……ちょっと話題を振ってみよう。
みんな、今月のライスピは読んだか?
俺は本郷さんの揺るぎの無い正義に鳥肌が立った。いや、マジで。
先月も変身シーンは鳥肌ものだったぜ。
120参加するカモさん:2009/08/09(日) 00:26:17 ID:cwWCxTtr

「戦いますよ。甲斐がなくても。『ショッカーの敵』、そして『人類の味方』。それが仮面ライダーの使命なのだから……。たとえ未来が変わらなくても……見過ごせない今を救えるのなら……」

 たとえショッカーをつぶしても、人間の心に悪がある限り、人類が存在する限り、争いは終わらない。それを認めたうえで、なおも戦い続ける『嵐』となることを選んだ本郷猛。

 あああああもうカッコいいなぁ!!
121 ◆hqLsjDR84w :2009/08/12(水) 23:57:49 ID:qfSAu0r5
遅れてすいません。いま帰宅しました。
準備ができ次第、投下を開始します。
122参加するカモさん:2009/08/12(水) 23:59:47 ID:7dCFfySP
支援準備OKです
123 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:06:41 ID:Ry0a10z+
よし、投下します。
124 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:07:56 ID:Ry0a10z+
[06:00――臨時放送]


 前触れもなくPDAが電子音を響かせ、ディスプレイに現在の時刻を表示する。

「あー、テステス……よし。
 驚かせようと思ってぶっつけ本番だが、ちゃあんと聞こえてるみたいだな」

 寸刻の後にスピーカーから発せられるのは、女性のものに近い合成音声ではない。
 マイクを通した低い声だ。
 やたらとイントネーションを強調しており、聞く者を小ばかにしたような態度をであった。

「さぁ〜〜て、これを聞く正義の味方諸君!
 これから大事なことを伝えるから、聞き漏らさないようにその耳をかっぽじれよォ〜」

 すう、と深く息を吸い込む。
 そしてこれまでの比較的静かな物言いから一変。
 声を大きく張り上げて、高らかに宣言した。

「この要塞、およびこのバトル・ロワイアルはッ!! 俺達が乗っ取った!!!」

 これまでの話者とは異なる落ち着いた渋い声が、短く表明を肯定する。
 甲高い少女の高笑いを十秒ほど木霊させてから、PDAの画面は通常状態へと戻った。


 ◇ ◇ ◇
125名無しより愛をこめて :2009/08/13(木) 00:07:56 ID:iKjbtReq
126参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:08:02 ID:SyKwjSgo
支援
127参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:08:49 ID:SyKwjSgo
メガちゃんw
128流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:09:33 ID:Ry0a10z+


[04:33〜04:42――宇宙要塞内部 通路]


 イーグリードが、その二枚の羽を勢いよく前後させる。
 鷲を模したボディゆえの堂々たる羽が生み出した烈風は、それが吹き抜ける障害となる七体を塵とした。
 空中に静止したまま、イーグリードは眼下へと目を凝らし―― 

「…………ちぃっ!」

 そして、苦々しく顔を歪めた。
 散り散りになった金属の欠片が液状となり、目に見えるほどのスピードで集っていく。
 その正体は、液体金属から成るターミネーター『T-1000』。

 イーグリードのストームトルネードがT-1000軍団を破壊するも、即座にT-1000が再生する。そんな状況が長らく続いてしまっている。
 転送カプセルを使用してからずっと到着地で足止めを食らっている事実に、若干甘く見ていたT-1000の性能をイーグリードは脳内で上方修正せざるを得なかった。
 何せ、再生速度が尋常ではない。
 四散させること自体は容易なのだが、それから十秒も経たぬうちに液体金属を回収し、さらに五秒で肉体を再構成してしまう。
 さらに言えば、そもそもイーグリードの戦闘スタイルと相性が悪すぎる。
 いくら風で吹き飛ばそうと、バラバラにしようと、壁に叩き付けようと、全てが無意味。
 T-1000が所持していたマシンガンは初撃で破壊したが、攻撃を受けないとしても倒せないのだから長引くだけだ。
 しかし、かといって――――
 一瞬だけ再生中のT-1000から目を離すと、イーグリードは背後へと首を回した。
 瞳に映ったのは、依然意識を取り戻さないソルティ、無理をして彼女を抱えている武美、二人を庇うように最前列に立つウフコック。
 二人の女性に危害が及ばぬよう凛と佇んでいるものの、ウフコックの姿はどこか不甲斐なそうであった。

(不可能だ)
129参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:09:42 ID:tTJvN6E0

130参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:09:59 ID:iKjbtReq
131流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:10:13 ID:Ry0a10z+

 一旦T-1000を破壊して、再構成を遂げ前にられる彼女達を連れてライト博士の下へと向かう。
 そんな策を、イーグリードはすぐさま切り捨てた。
 彼女達を連れた状態では、再生したT-1000に追いつかれるのは自明である。
 また武美とウフコックの能力から考えて、気絶中のソルティは彼自身が運ばねばならない。
 しかしそんな状態でストームトルネードなんぞ繰り出そうものなら、ソルティに危害が及ぶ可能性が高すぎる。
 動くに動けない自分を呪った舌打ちとともに、イーグリードは何度目になるか分からないストームトルネードを放つ。
 例の如く液体金属が散乱した瞬間、イーグリードのを背後から眩い光が照らした。

(新手か!?)

 焦りを胸に振り返ったイーグリードだったが、彼の聴覚を刺激したのはあまりにも聞きなれた声だった。

「む、イーグリード?」

 本郷からイーグリード達は大分前に転送カプセルを使用したと聞いていたため、ゼロは未だ転送地点に留まっている仲間の姿に目を丸くする。

「まだこんな所にいるとはな。何をチンタラしている、鶏がら?」

 冷静で淡々としつつも、こちらを小馬鹿にしたような。
 そんないつも通りの親友の声に、イーグリードは安堵の息を吐いた。
 現れた男の能力がT-1000の天敵であるからではなく、ゼロが全てを任せられる相棒ゆえに。

「やはりいたか、T-1000!」
「っ、それって――」

 人型に集う銀の雫から、すぐさまゼロはその正体を察する。
 かつて聞いた話を思い返すドラスを後部座席に乗せたまま、白いカラスという名のバイクから飛び降りてスタンドを下ろすゼロ。
 一度撃破したときのように展開させたセイバーに冷気を篭め、今にも飛び掛らんとしたところで前に出てきたドラスに出鼻を挫かれる。
132参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:10:37 ID:SyKwjSgo
 
133参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:10:51 ID:tTJvN6E0

134流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:11:23 ID:Ry0a10z+

「一体一体倒してたんじゃ、時間がかかるだけだよ。液体なら……」

 ゼロが疑問を口にする前に、ドラスが纏った紅いマントが淡く輝きだす。
 その真の姿はマントではなく、腰布の宝貝『混天綾』。
 そして、その能力は――――

「集まって、いく?」

 巻き起こる暴風により舌を噛まぬよう、ウフコックから沈黙を命じられていた武美だったが――思わず口を動かしたてしまった。
 それほどまでに、異常な光景が眼の前に広がっていた。
 T-1000を構成していた液体金属が集束していく。ここまでならば、今までと何ら変わりない。
 しかし人間のようなシルエットを模るのではなく、デコボコとした不恰好な球体。
 数も七つではなく、全ての液体金属がただ一つの巨大な球体を構成していく。
 T-1000自身も、なぜこんな形態を取っているのか理解不能。
 何とか理由を求めようとするも、コンピュータが導き出す結論はUNKNOWN。
 再試行するも、やはり結果はUNKNOWN。
 シグマが支給品に関する資料をデータとして残さなかった以上、科学が発達した世界のターミネーターに答えを導き出せるはずがなかった。

 ――――これこそが混天綾の能力、液体操作。

「はああ……!」

 全ての液体金属を回収したのを確認してから、ドラスが紅い怪人態となる。
 未だ状況を理解できないT-1000の前で、ドラスの左肩に刻まれた三つの点が輝き――そして一条の光線が放たれた。
 見ただけでその光線が秘めた莫大なエネルギーを把握するT-1000。されど、混天綾により回避動作を取ることすらできず。
 T-1000はマリキュレイザーを正面から受け、分子組成を破壊されて蒸発した。
135参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:11:38 ID:tTJvN6E0

136参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:11:38 ID:SyKwjSgo
   
137流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:12:04 ID:Ry0a10z+

 制限が科せられていないマリキュレーザーのあまりに出鱈目な威力に、参加者の資料に目を通したイーグリードさえも唖然とする。
 単純なスペックだけならば、ゼロやイーグリードを凌ぐかもしれない。少なくとも、破壊力という観点では。
 しかし戦闘経験の少なさと――何より幼さゆえに、ドラスからはどこか危うさが醸し出されていた。
 またドラスは否定するだろうが、ウフコックの嗅覚は『動揺』や『焦燥』を感じ取っており、それがウフコックに言葉にし難い不安感を与えていた。

 ドラスが思い出したように体内から排出した起爆装置が床に落ちる音で、全員が思考の渦から帰還する。

「……っ、止まっている暇はないな。行くぞ」
「あ、ああ。まずはライト博士をターミネーターやメガトロン達から保護するため、修理室へと向かう。こっちだ」

 ソルティを背負ったイーグリードを陣頭に立たせ、ゼロ、ウフコック、武美、ドラスと続く。
 目的地を知るイーグリードが先頭なのは変えようがなく、ソルティを抱えているので攻撃に転じることができない彼をゼロが補佐。
 奇襲を受けた際に防護壁とターンできるウフコック、戦闘能力ならばトップクラスのドラスが、武美を挟む陣形だ。
 要塞内はバイクを乗り回せるほどに広かったが、後部座席に武美を乗せての戦闘はゼロとて厳しいとの判断から白いカラスはPDAに転送した。

(おかしいな……)

 周囲を確認しつつ足を動かしながら、ドラスはある疑問を抱いていた。
 先ほど除去した起爆装置のことだ。
 吸収したナタクの物も取り出すはずだったが、それができなかったのだ。
 取り込んでいる以上は可能なはずなのに。

 ――ドラスが導き出しようのない、答えが存在する。
138流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:12:46 ID:Ry0a10z+

 ナタクに仕掛けられた起爆装置は、既に摘出されていたのだ。
 エックスのスピアチャージショットが、彼の左胸を貫いた際に。
 そう、彼は起爆装置を『本来の弱点でない胸部』に仕掛けられていた。
 決して、彼だけが特別ではない。
 ルーン・バロットという参加者も体内ではなく、首輪という形で爆弾を仕掛けられていた。
 ナタクの場合はあえて強引に取り出しても致命傷を負わない場所に、バロットの場合は誰にでも目に入る場所に、あえてシグマが仕掛けたのだ。
 解析を進めやすくするために。
 つまるところ、これらもまたシグマの策の一つであった。
 『開始直後はバトルロワイアルに乗るであろうナタク』、『全身改造でないがゆえに特例としてのバロット』。
 たとえば本郷猛なんかの起爆装置を通常と異なる仕様にしたのなら、否応なしに疑われるであろう。
 だが上記の理由がある二者ならば、疑われないだろう。
 そんな考えがあったのだ。ナタクが反バトルロワイアルに転じるかは、真に分の悪い賭けであった。 
 …………まあ、この策は全くこれっぽっちも爆弾解析の役には立たなかったのだが。
 唯一の影響が、現在ドラスに疑問を抱かせたくらいか。

「ぐう、大群だな」

 イーグリードの毒づいたような言葉。
 同時に、巨大な羽が空気を叩いて生まれた空気の乱れ。
 続いてセイバーの展開音に、二桁を越すT-600の歩行による金属の軋む音。

(まあ放っておこう)

 思索を中断させたドラスの前で、反転駆動してきたイーグリードが武美とウフコックを掬い上げる。
 ソルティだけを抱えるのとは違い、両腕が塞がってしまえば防御の姿勢すら取れない。
 それを見透かしてか、T-600達がイーグリードへとミニガンの照準を合わせる。
139参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:13:03 ID:SyKwjSgo
支援
140参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:13:14 ID:tTJvN6E0

141参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:13:34 ID:iKjbtReq
142流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:13:44 ID:Ry0a10z+

「させないよ」

 しかしその全ては、ドラスが展開させた魔方陣から飛び出した魔力の塊により掻き消される。
 それを目の当たりにしてなお、釣瓶打ちを続けるT-600。
 ドラスの魔法弾と弾丸が相殺しあう中で、蜂の羽音をそのまま大きくしたような音が響く。

「雷神撃!」

 イーグリードを狙う間に肉薄していたゼロが、電気エネルギーと化した刃をT-600へと突き刺す。
 伸張した刀身は一突きでもって、四体のT-600の頭部を炭とした。
 即座に状況を理解し、群がっていたT-600が各自散り散りになろうと判断を下す。
 それを動作に移すより早く、ゼロは短い呼気とともにセイバーを横凪に振るった。


 ◇ ◇ ◇


[04:44〜04:52――会場内 エリアD−3]


 仮面ライダー1号は、ただ一人でT-888とT-800の集団に囲まれていた。
 総数三桁を優に超えていたターミネーターも、今となっては残り二十と三。
 それでも、ターミネーターのCPUは勝利を確信している。
 数分ほど前から1号が攻撃をしてこないからだ。
 おそらく1号のスタミナ切れと推測し、同じく攻撃してこないミーを放置してひとまず厄介な1号を殲滅するつもりだ。
 ミニガンの弾切れのために接近せねばならなかったが、遂に1号まで五メートルを切った。
 一体のT-888が飛び掛ったのを皮切りに、二十三体が一気に1号へと押し寄せた。
 しばらくして1号の絶叫が響いた。
 しかしその声が内包していたのは絶望ではなく、これまで幾千幾万の死闘と変わらぬ気合。
 人類の自由と平和を守るべく、たとえ幾億幾兆の修羅場さえ潜り抜けるという強靭なる意志。
143参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:14:21 ID:tTJvN6E0

144参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:15:04 ID:SyKwjSgo
 
145流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:15:31 ID:Ry0a10z+

「ライダァァアッ! きりもみシュゥゥーーーット!!」

 最初に飛び掛ったT-888が、1号によって宙へと投げ出される。
 T-888に『技の1号』が加えたきりもみ回転は、次第に増幅して旋風を引き起こす。
 1号に不用意に近づいていたため、残りの二十二体全ても旋風へと引き込まれる。

「今だ、ミー!」
「はいよ!」

 1号の呼びかけにこたえるように、ミーがフルチャージしたバスターを掲げる。
 銃口を向けられて初めて、ターミネーター達はスタミナ切れを装っていたのだと気が付いた。
 戦争を知らぬターミネーターが新たな戦術をインプットした途端、巨大な光弾が一体の水素電池に命中。他の二十二体をも道連れに炸裂した。

「ふう……一段落、だね」
「ミー、体力は持つか?」

 これまでの戦いが夢だったかのような静けさの中、一息つこうとしたミーに1号が尋ねる。
 その手に握られたPDAの画面からは、あとボタンを一度操作するだけでサブタンクが転送されることが伺えた。
 1号が気遣ってくれているのは分かるが、ミーはどうもいい気分がしなかった。
 明らかに1号の方が倒しているし、疲労も大きいはずだ。
 他人を気遣うのは素晴らしいが、それで無茶をしては本末転倒だ。
 そう考え、ミーはやんわりと断る。

「大丈夫だから、それは本郷さんが使いなよ。
 暴走してたゼロさんと戦ってから、ずっと休んでないでしょ?」
「いや、俺はいい。必要ないのなら取っておこう」

 やっぱりか、とミーは心の中で呟く。
 そんな時、ミーの聴覚が僅かな地鳴りのようなものを捉えた。
 1号も感知したらしく、PDAを仕舞い込む。
 大地の響きだけで分かるほどに、D−3へと向かってきているターミネーターは多かった。当然である。
146流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:16:14 ID:Ry0a10z+

 ゼロとドラスを送り込んですぐに、1号はライト博士への交信を試みた。
 転送カプセルの電源を落としてもらうために。
 ライト博士がいたのは修理室であったが、そこにもバトルロワイアル会場を司るコンピュータがあったのですぐに1号の案は執行。
 この処置により、会場に散らばった転送カプセルから要塞へとターミネーターが侵入することはなくなった。
 それでも四箇所に存在するシャトルを使うターミネーターはいるだろう。かと言って、君達がいるのにシャトルを遮断するワケにもいかない。
 そうライト博士が漏らしたゆえに、1号は提案したのだ。
 『D−3以外のシャトル基地への電気供給を遮断してくれ』と。
 そんなことをすれば、会場全域に転送されたターミネーター全てがD−3へと向かうことになる。
 ライト博士は強く忠告したが、1号はそれでも頼み続けた。
 結局、要塞に向かった仲間にさらなる危険が及んではいけない、との意見にライト博士は折れた。

「いま来てるヤツらを全員倒せば、出発できるんだよね」
「ああ、そうだ」

 元々D−3にいたターミネーターを倒すうちに、いつの間にやら新たなターミネーターは送り込まれないようになっていた。
 バトルロワイアルを開催した世界にあった全ての平行世界移動装置が、破壊されたのだろう。
 つまり、もうこれ以上ターミネーターの数が増えることはないのだ。

 先陣を切って姿を見せたモトターミネーターを確認し、対抗するために1号はサイクロン号を転送させる。
 シリウスと合体したミーでは、あの数のモトターミネーターには対抗できないと判断したからだ。
 ミーの運転技術もなかなかの物だが、天才レーサーとしての顔も持つ1号には及ばない。

「もしもの時は、これを使え。効果は折り紙つきだ」
「え!? なんで、いつもいつもォォ!!」

 サブタンクが入ったPDAを渡されたミーの絶叫は、刹那で最高速に到達したサイクロンのエンジン音に掻き消された。


 ◇ ◇ ◇
147参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:16:15 ID:SyKwjSgo
  
148参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:16:55 ID:tTJvN6E0

149流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:17:27 ID:Ry0a10z+


[04:54〜04:59――宇宙要塞内部 修理室]


 全面が蛍光灯の役割を果たす天井の下で、ライト博士はあらぬ方向を眺めていた。
 瞳の焦点が合っておらず、その表情に生気はなかった。
 毛髪やヒゲはとうの昔に白くなってしまったものの、それでも割りと年齢より若く見られるタイプであったのだが……
 そんなことを感じさせないほどに、疲弊しきっていた。身体ではなく、精神が。

 彼は、人とロボットの共存を夢見ていた。
 平和や安全のためのロボットこそ、彼が作りたかった物だった。
 時にはメルヘンな幻想などと揶揄されたが、それでも理想を追い求めた。
 やがては人々にも認められ、『ロボット工学の父』とまで呼ばれた。
 しかし――――彼は、ここに来て揺らいでしまっている。
 彼の作り出した一体の行動が、不意に何度もフラッシュバックする。
 それだけではない。
 バトルロワイアルを開催した世界の人間達の、ロボットに対する嘲りが。
 シグマが抱く人間への怒りが。
 人間とロボットとの間にある深すぎる溝が。
 執拗に、ライト博士を痛めつける。

 ――ライト博士の中で、人と機械における究極の問いが木霊する。

 そんな時であった。
 彼がいる修理室の壁に、軽快な音とともに丸い刃が入り込む。
 T-Xに搭載された電動ノコギリだ、と理解していながらライト博士は動かない。
 そもそも逃げようがない。ここで死ぬのも彼を作った罪滅ぼしか、とライト博士は静かに目を閉じようとして――爆音。
 衝撃でか、ライト博士の瞳に光が宿る。
 戦闘音が続く中で、カードキーが差し込まれたらしく修理室の扉が開く。
150参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:18:04 ID:SyKwjSgo
 
151参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:18:15 ID:tTJvN6E0

152参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:19:02 ID:SyKwjSgo
     
153流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:19:04 ID:Ry0a10z+

「侵入したターミネーターの数が予想外に多く、手間取ってしまいました。ライト博士、無事ですか?」
「イーグリードくんか……」

 ライト博士に傷がないのを確認すると、イーグリードはソルティをベッドに寝かせて部屋を飛び出す。
 戦線に戻ろうと急いでいるらしく、ライト博士の悩みには気付かない。
 勝手に扉が閉まった後に、オートでロックがかかる。
 せめて償いにとソルティの修理に励もうとして、ライト博士の視界を大小二つの影が暗転させる。

「君達は……そうか、ここに避難しに来たのか」
「あ、えっと、そう、です」

 明らかに相手が年上なため、若干しどろもどろで武美が答える。
 当然ながら普通に敬語くらい使っていたのだが、どうにもいきなり現実世界に引き戻された気分で口篭ってしまった。
 武美が沈黙を破って、できることがあれば手伝おうかと申し出たが、ライト博士はやんわりと断る。
 再び誰も口を動かさなくなり、武美がいたたまれない気分になった頃、ふとライト博士が口を開いた。

「君は……」
「えっ、あ、何ですか?」
「人間と――――いや、やめておこう。すまないね」
「あ、そう、です……か」

 再び、会話がなくなる。

(何これ、すっごく気まずいー! 何で黙ってるの、ウフコックー! 空気をー、どうにかしてー!)

 当のウフコックはと言うと、嗅覚でライト博士の絶望具合を感じ取っていた。
 だが、だからこそ何も言うことができないのだ。
154参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:19:11 ID:tTJvN6E0

155参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:19:43 ID:SyKwjSgo
 
156流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:20:08 ID:Ry0a10z+



 ◇ ◇ ◇


[05:07〜05:22――会場内 エリアD−3]


 仮面ライダー1号操るサイクロン号が、バイク型のモトターミネーターを追走する。
 モトターミネーターが距離を離そうと加速するも、エンジンの性能ならばサイクロンのほうが遥かに上だ。
 距離が縮まったのを見計らって、1号がハンドルを持ち上げるとサイクロンがウィリー運転の形となる。
 前輪がある程度の高さまで到達してから、1号は前輪をモトターミネーターへと振り下ろす。
 怪人をも粉砕するタイヤが高速回転し、モトターミネーターを強引に分断した。

「あと二台、か」

 モトターミネーターの残骸が動かなくなったのを確認して、1号は残りのモトターミネーターへと視線を流す。
 背後でバルカンの銃口を向ける二台を視認し、再びアクセルを捻る1号。
 しかしながら加速しきっているモトターミネーターに対して、サイクロンは先の荒業により速度が落ちてしまっている。
 如何にモンスターマシンとはいえ、モトターミネーターに装着されたバルカンのいい的だ。
 計四つの銃口から、無数の弾丸が1号へと驟雨の如く降り注ぐ。
 バルカンに火を噴かせつつも、速度を緩めないモトターミネーター。銃弾を受けたところを轢き殺すという、二段構えの戦法を取ったのだ。

 ――が、銃弾は一発たりとも1号に命中しなかった。

 1号はサイクロン号の前方に体重をかけると、急ブレーキング。
 後輪が大きく浮か上がったジャックナイフという呼ばれる状態となり、全ての銃弾はサイクロンの車体に傷を付けるに終わった。
 またジャックナイフによる急減速に対応しきれず、モトターミネーターがサイクロンを追い越してしまう。 
 モトターミネーターが直ちにUターンするも、その時にはもう1号は先ほどまでいた地点から消えていた。
 バルカンの銃口を残されたサイクロン号に向けたまま、モトターミネーターは現状を把握しようとして――上方からの音声を察知した。
157参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:20:27 ID:tTJvN6E0

158参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:21:19 ID:tTJvN6E0

159参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:21:31 ID:SyKwjSgo
 
160流転と回天 前編 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:22:04 ID:Ry0a10z+

「ライダー……キィィィイイイック!!」

 1号が跳躍していたのだと気付いた直後、二台のモトターミネーターは機能を停止した。

 バイクの運転技術に長けた自分が倒すべきモトターミネーターの全滅を確認し、1号は静かに呼気を整える。
 とはいえ、それに費やすのは僅かな時間だ。
 モトターミネーターを相手する途中で幾らか倒したが、まだターミネーターは無数に存在するのだ。
 一人で戦わせたまま放置しているミーも、気がかりであった。
 素早く周囲を見渡してメタルボディの猫型サイボーグを探し出すと、1号はすかさずサイクロンに飛び乗った。
 思いっきりアクセルを捻った1号の表情は、変身前であったのならば眉をひそめていただろう。
 ミーは善戦していたものの、あまりにも数の多いターミネーター達に囲まれてしまっていた。
 ああなれば、多少の実力差など関係なく押し潰されてしまう。
 数とは、それほどまでに凶悪なものだ。

「ヌゥン!!」

 道中に転がっていたT-888の残骸をジャンプ台として、サイクロンごと飛び上がってミーを取り囲むターミネーターの群れへと飛び込む。
 着地の際に同時に数体のT-800を踏み潰し、崩れかけた車体をアクセルターンで無理矢理に引き起こす。
 アクセルターンに巻き込まれて倒れたT-600とT-888の集団は、ご丁寧に全員が二度目のアクセルターンで頭部を砕かれた。
 このままターミネーターを破壊していくのも手だが、まず優先すべきは中心部にいるミーの下に駆けつけることだ。
 再認識した1号は体勢を低くして、ターミネーターの群れへと突っ込んだ。
 ミニガンから放たれる弾丸を身に受けても意に介さず、1号はひたすらサイクロンのアクセルをフルスロットルに。
 どれだけのターミネーターを掻い潜っただろうか、ついに1号の複眼が水色のメタルボディを捉えた。

「本郷さん!?」

 倒れたT-888の頭頂部からウィル・ナイフを引っこ抜きながら、ミーが驚愕の声を上げる。
 掠り傷こそ至るところに刻まれているが、大きな被害はないようだ。
 静かに安堵しながら、1号がサイクロンのハンドルを激しく回す。
 いきなりの方向転換によりスライドした車体が、ミーの周囲にいたT-800シリーズを薙ぎ払う。
161参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:22:21 ID:SyKwjSgo
支援
162参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:23:32 ID:SyKwjSgo
 
163参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:23:58 ID:tTJvN6E0

164参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:28:22 ID:iKjbtReq
165参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:33:36 ID:tTJvN6E0

166参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:34:24 ID:tTJvN6E0

167参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:36:42 ID:SyKwjSgo
まさか……イデ、なのか……?
168参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:42:04 ID:R5kfrgVn
いや、時間から考えて寝落ちしてしまったと言う可能性も…
169参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:44:02 ID:SyKwjSgo
hq氏、帰ってきてすぐに投下準備だったみたいだしな。ありえるかも。
或いはこれもゴルゴムの仕業か。
170 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 00:44:45 ID:N+fWbEzT
ブレーカーが落ちたことでPCが切れてしまい、いまブレーカー上げてPCの電源入れたのですがフォルダ内に何もありません……
データが飛んだ……みたい、です。
復旧ソフトを使ってみます。復旧したら投下再開しますが…………
お待たせしたのに、本当に申し訳ありません。


支援していただいた方、感謝です。
171参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:49:13 ID:SyKwjSgo
>>170
神よ! これが、貴様の仕組んだ因果律か!?
まさか本当にイデだったとは……心中、お察しいたします。
復旧ソフトの頑張りを祈らせていただきます。
172参加するカモさん:2009/08/13(木) 00:54:52 ID:Nv7KwA7M
なんてこったい!
今回はやむを得ない事情だし復旧できずともしばらく待つよな?
173 ◆hqLsjDR84w :2009/08/13(木) 01:38:58 ID:N+fWbEzT
どうも復旧無理みたいです……
書き直しますが、ひとまず予約は解除させて下さい。
これ以上予約延長というのは、問題に思えるので。
174癒されたい名無しさん :2009/08/20(木) 20:27:15 ID:w2rZVHZ4
続きまだー?
175参加するカモさん:2009/08/20(木) 22:27:59 ID:5Ph6EAIL
書きなおすとかけっこう難しいから1週間以上かかるのも仕方ないぞ
176参加するカモさん:2009/08/22(土) 22:54:33 ID:GbYQ7u30
音沙汰無し・・・・
177名無しちゃん…電波届いた? :2009/08/28(金) 19:53:23 ID:2pSb0L97
続きまだー?
178参加するカモさん:2009/08/29(土) 23:37:33 ID:8iidXH3P
>>177
落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない。
それにこの程度の停滞は去年の今頃までの過疎に比べたらどうってことないさ。
179参加するカモさん:2009/08/30(日) 22:46:43 ID:2rwcoPum
は?
180参加するカモさん:2009/08/31(月) 01:57:30 ID:4zKBajUs
age
181 ◆hqLsjDR84w :2009/09/02(水) 08:11:00 ID:XOQxSRf4
完成したので再予約しました。
都合で書けない日があったとはいえ、本当に長期間待たせてしまい申し訳ない。

本日帰宅して推敲が終わりましたら、投下をしたいと思います。
執筆していくうちに消える前の二倍の容量になり、100kbを越えてしまいましたので支援していただければ嬉しいです。
182参加するカモさん:2009/09/02(水) 22:18:46 ID:irOFNrAp
おーきたきたきた〜
183名前をあたえないでください :2009/09/02(水) 23:50:25 ID:uPilqlJv
まだー?
184参加するカモさん:2009/09/03(木) 00:19:40 ID:Q+A/ykcR
支援大気
185参加するカモさん:2009/09/03(木) 00:45:20 ID:Q+A/ykcR
駄目だ…眠い
186名無しより愛をこめて :2009/09/03(木) 00:48:22 ID:6zWmtX7e
支援 仕事が朝早いので、ここまでだ……
187 ◆hqLsjDR84w :2009/09/03(木) 01:45:06 ID:SpvBYWDq
長いと推敲に時間かかる……
ラストチェックしたら投下します。
188 ◆hqLsjDR84w :2009/09/03(木) 01:49:19 ID:SpvBYWDq
投下します。
誤字修正などしたところがあるので、前回投下した分も投下します。
[06:00――臨時放送]


 前触れもなくPDAが電子音を響かせ、ディスプレイに現在の時刻を表示する。

「あー、テステス……よし。
 驚かせようと思ってぶっつけ本番だが、ちゃあんと聞こえてるみたいだな」

 寸刻の後にスピーカーから発せられるのは、女性のものに近い合成音声ではない。
 マイクを通した低い声。
 やたらとイントネーションを強調しており、聞く者を小馬鹿にしたような態度をであった。

「さぁ〜〜て、これを聞く正義の味方諸君!
 これから大事なことを伝えるから、聞き漏らさないようにその耳をかっぽじれよォ〜」

 すう、と深く息を吸い込む。
 そしてこれまでの比較的静かな物言いから一変。
 声を大きく張り上げて、高らかに宣言した。

「この要塞、およびこのバトル・ロワイアルはッ!! 俺達、『大デストロン』が乗っ取った!!!」

 これまでの話者とは異なる落ち着いた渋い声が、短く表明を肯定する。
 甲高い少女の高笑いを十秒ほど木霊させてから、PDAの画面は通常状態へと戻った。


 ◇ ◇ ◇
190名無しより愛をこめて :2009/09/03(木) 01:51:07 ID:0sWpubKo
  


[04:33〜04:42――宇宙要塞内部 通路]


 イーグリードが、その二枚の羽を勢いよく前後させる。
 鷲を模したボディゆえの堂々たる羽が生み出した烈風は、それが吹き抜ける障害となる七体を塵とした。
 空中に静止したまま、イーグリードは眼下へと目を凝らし―― 

「…………ちぃっ!」

 そして、苦々しく顔を歪めた。
 散り散りになった金属の欠片が液状となり、目に見えるほどのスピードで集っていく。
 その正体は、液体金属から成るターミネーター『T-1000』。

 イーグリードのストームトルネードがT-1000軍団を破壊するも、即座にT-1000が再生する。そんな状況が長らく続いてしまっている。
 転送カプセルを使用してからずっと到着地で足止めを食らっている事実に、若干甘く見ていたT-1000の性能をイーグリードは脳内で上方修正せざるを得なかった。
 何せ、再生速度が尋常ではない。
 四散させること自体は容易なのだが、それから十秒も経たぬうちに液体金属を回収し、さらに五秒で肉体を再構成してしまう。
 さらに言えば、そもそもイーグリードの戦闘スタイルと相性が悪すぎる。
 いくら風で吹き飛ばそうと、バラバラにしようと、壁に叩き付けようと、全てが無意味。
 T-1000が所持していたマシンガンは初撃で破壊したが、攻撃を受けないとしても倒せないのだから長引くだけだ。
 かといって――――
 一瞬だけ再生中のT-1000から目を離すと、イーグリードは背後へと首を回した。
 瞳に映ったのは、依然意識を取り戻さないソルティ、無理をして彼女を抱えている武美、二人を庇うように前に立つウフコック。
 二人の女性に危害が及ばぬよう凛と佇んでいるものの、ウフコックの姿はどこか不甲斐なさそうであった。

(不可能だ)


 一旦T-1000を破壊して、再構成を遂げ前にられる彼女達を連れてライト博士の下へと向かう。
 そんな策を、イーグリードはすぐさま切り捨てた。
 彼女達を連れた状態では、再生したT-1000に追いつかれるのは自明である。
 また武美とウフコックの能力から考えて、気絶中のソルティは彼自身が運ばねばならない。
 しかしそんな状態でストームトルネードなんぞ繰り出そうものなら、ソルティに危害が及ぶ可能性が高すぎる。
 動くに動けない自分を呪った舌打ちとともに、イーグリードは何度目になるか分からないストームトルネードを放つ。
 例の如く液体金属が散乱した瞬間、イーグリードのを背後から眩い光が照らした。

(新手か!?)

 焦りを胸に振り返ったイーグリードだったが、彼の聴覚を刺激したのはあまりにも聞きなれた声だった。

「む、イーグリード?」

 本郷からイーグリード達は大分前に転送カプセルを使用したと聞いていたため、ゼロは未だ転送地点に留まっている仲間の姿に目を丸くする。

「まだこんな所にいるとはな。何をチンタラしている、鶏がら」

 冷静で淡々としつつも、こちらを囃し立てるような。
 そんないつも通りの親友の声に、イーグリードは安堵の息を吐いた。
 現れた男の能力がT-1000の天敵であるからではなく、ゼロが全てを任せられる相棒ゆえに。

「やはりいたか、T-1000!」
「っ、それって――」

 人型に集う銀の雫から、すぐさまゼロはその正体を察する。
 かつて聞いた話を思い返すドラスを後部座席に乗せたまま、白いカラスという名のバイクから飛び降りてスタンドを下ろすゼロ。
 一度撃破したときのように展開させたセイバーに冷気を篭め、今にも飛び掛らんとしたところで前に出てきたドラスに出鼻を挫かれる。

「一体一体倒してたんじゃ、時間がかかるだけだよ。液体なら……」
193参加するカモさん:2009/09/03(木) 01:53:27 ID:0sWpubKo
  

「集まって、いく?」

 巻き起こる暴風により舌を噛まぬよう、ウフコックから沈黙を命じられていた武美だったが――思わず口を動かしたてしまった。
 それほどまでに、異常な光景が眼の前に広がっていた。
 T-1000を構成していた液体金属が集束していく。ここまでならば、今までと何ら変わりない。
 異なるのは形だ。人間のようなシルエットを模るのではなく、デコボコとした不恰好な球体。
 数も七つではなく、全ての液体金属がただ一つの巨大な球体を構成していく。
 T-1000自身も、なぜこんな形態を取っているのか理解不能。
 何とか理由を求めようとするも、コンピュータが導き出す結論はUNKNOWN。
 再試行するも、やはり結果はUNKNOWN。
 シグマが支給品に関する資料をデータとして残さなかった以上、科学が発達した世界のターミネーターに答えを導き出せるはずがなかった。

 ――――これこそが混天綾の能力、液体操作。

「はああ……!」

 全ての液体金属を回収したのを確認してから、ドラスが紅い怪人態となる。
 未だ状況を理解できないT-1000の前で、ドラスの左肩に刻まれた三つの点が輝き――そして一条の光線が放たれた。
 見ただけでその光線が秘めた莫大なエネルギーを把握するT-1000。されど、混天綾により回避動作を取ることすらできず。
 T-1000はマリキュレイザーを正面から受け、分子組成を破壊されて蒸発した。

 制限が科せられていないマリキュレーザーのあまりに出鱈目な威力に、参加者の資料に目を通したイーグリードさえも唖然とする。
 単純なスペックだけならば、ゼロやイーグリードを凌ぐかもしれない。少なくとも、破壊力という観点では。
 しかし戦闘経験の少なさと――何より幼さゆえに、ドラスからはどこか危うさが醸し出されていた。
 またドラスは否定するだろうが、ウフコックの嗅覚は『動揺』や『焦燥』を感じ取っており、それがウフコックに言葉にし難い不安感を与えていた。

 ドラスが思い出したように体内から排出した起爆装置が床に落ちる音で、全員が思考の渦から帰還する。

「……っ、止まっている暇はないな。行くぞ」
「あ、ああ。まずはライト博士をターミネーターやメガトロン達から保護するため、修理室へと向かう。こっちだ」
195参加するカモさん:2009/09/03(木) 01:54:25 ID:0sWpubKo
   

 ソルティを背負ったイーグリードを陣頭に立たせ、ゼロ、ウフコック、武美、ドラスと続く。
 目的地を知るイーグリードが先頭なのは変えようがなく、ソルティを抱えているので攻撃に転じることができない彼をゼロが補佐。
 奇襲を受けた際に防護壁とターンできるウフコック、戦闘能力ならばトップクラスのドラスが、武美を挟む陣形だ。
 要塞内はバイクを乗り回せるほどに広かったが、後部座席に武美を乗せての戦闘はゼロとて厳しいとの判断から白いカラスはPDAに転送した。

(おかしいな……)

 周囲を確認しつつ足を動かしながら、ドラスはある疑問を抱いていた。
 先ほど除去した起爆装置のことだ。
 吸収したナタクの物も取り出すはずだったが、それができなかったのだ。
 取り込んでいる以上は可能なはずなのに。

 ――ドラスが導き出しようのない、答えが存在する。

 ナタクに仕掛けられた起爆装置は、既に摘出されていたのだ。
 エックスのスピアチャージショットが、彼の左胸を貫いた際に。
 そう、彼は起爆装置を『本来の弱点でない胸部』に仕掛けられていた。
 決して、彼だけが特別ではない。
 ルーン・バロットという参加者も体内ではなく、首輪という形で爆弾を仕掛けられていた。
 ナタクの場合はあえて強引に取り出しても致命傷を負わない場所に、バロットの場合は誰にでも目に入る場所に、あえてシグマが仕掛けたのだ。
 解析を進めやすくするために。
 つまるところ、これらもまたシグマの策の一つであった。
 『開始直後はバトルロワイアルに乗るであろうナタク』、『全身改造でないがゆえに特例としてのバロット』。
 たとえば本郷猛なんかの起爆装置を通常と異なる仕様にしたのなら、否応なしに疑われるであろう。
 だが上記の理由がある二者ならば、疑われないだろう。
 そんな考えがあったのだ。ナタクが反バトルロワイアルに転じるかは、真に分の悪い賭けであった。 
 …………まあ、この策は全くこれっぽっちも爆弾解析の役には立たなかったのだが。
 唯一の影響が、現在ドラスに疑問を抱かせたくらいか。

「ぐう、大群だな」
197参加するカモさん:2009/09/03(木) 01:55:28 ID:0sWpubKo
     

 イーグリードの毒づいたような言葉。
 同時に、巨大な羽が空気を叩いて生まれた空気の乱れ。
 続いてセイバーの展開音に、二桁を越すT-600の歩行による金属の軋む音。

(まあ放っておこう)

 思索を中断させたドラスの前で、反転駆動してきたイーグリードが武美とウフコックを掬い上げる。
 ソルティだけを抱えるのとは違い、両腕が塞がってしまえば防御の姿勢すら取れない。
 それを見透かしてか、T-600達がイーグリードへとミニガンの照準を合わせる。

「させないよ」

 しかしその全ては、ドラスが展開させた魔方陣から飛び出した魔力の塊により掻き消される。
 それを目の当たりにしてなお、釣瓶打ちを続けるT-600。
 ドラスの魔法弾と弾丸が相殺しあう中で、幾百もの蜂の羽音を思わせる響き。

「雷神撃!」

 イーグリードを狙う間に肉薄していたゼロが、電気エネルギーと化した刃をT-600へと突き刺す。
 伸張した刀身は一突きでもって、四体のT-600の頭部を炭とした。
 即座に状況を理解し、群がっていたT-600が各自距離をとろうと判断を下す。
 それを動作に移すより早く、ゼロは短い呼気とともにセイバーを横凪に振るった。


 ◇ ◇ ◇


[04:44〜04:52――会場内 エリアD−3]


 仮面ライダー1号は、ただ一人でT-888とT-800の集団に囲まれていた。
 総数三桁を優に超えていたターミネーターも、今となっては残り二十と三。
 それでも、ターミネーターのCPUは勝利を確信している。
 数分ほど前から1号が攻撃をしてこないからだ。
 おそらく1号のスタミナ切れと推測し、同じく攻撃してこないミーを放置してひとまず厄介な1号を殲滅するつもりだ。
 ミニガンの弾切れのために接近せねばならなかったが、遂に1号まで五メートルを切った。
 一体のT-888が飛び掛ったのを皮切りに、二十三体が一気に1号へと押し寄せた。
 しばらくして1号の絶叫が響いた。
 しかしその声が内包していたのは絶望ではなく、これまで幾千幾万の死闘と変わらぬ気合。
 人類の自由と平和を守るべく、たとえ幾億幾兆の修羅場さえ潜り抜けるという強靭なる意志。

「ライダァァアッ! きりもみシュゥゥーーーット!!」

 最初に飛び掛ったT-888が、1号によって宙へと投げ出される。
 T-888に『技の1号』が加えたきりもみ回転は、次第に増幅して旋風を引き起こす。
 1号に不用意に近づいていたため、残りの二十二体全ても旋風へと引き込まれる。

「今だ、ミー!」
「はいよ!」

 1号の呼びかけにこたえるように、ミーがフルチャージしたバスターを掲げる。
 銃口を向けられて初めて、ターミネーター達はスタミナ切れを装っていたのだと気が付いた。
 戦争を知らぬターミネーターが新たな戦術をインプットした途端、巨大な光弾が一体の水素電池に命中。他の二十二体をも道連れに炸裂した。

「ふう……一段落、だね」
「ミー、体力は持つか?」

 これまでの戦いが夢だったかのような静けさの中、一息つこうとしたミーに1号が尋ねる。
 その手に握られたPDAの画面からは、あとボタンを一度操作するだけでサブタンクが転送されることが伺えた。
200参加するカモさん:2009/09/03(木) 01:57:34 ID:0sWpubKo
    
201参加するカモさん:2009/09/03(木) 01:58:56 ID:0sWpubKo
       
 1号が気遣ってくれているのは分かるが、ミーはどうもいい気分がしなかった。
 明らかに1号の方が倒しているし、疲労も大きいはずだ。
 他人を気遣うのは素晴らしいが、それで無茶をしては本末転倒だ。
 そう考え、ミーはやんわりと断る。

「大丈夫だから、それは本郷さんが使いなよ。
 暴走してたゼロさんと戦ってから、ずっと休んでないでしょ?」
「いや、俺はいい。必要ないのなら取っておこう」

 やっぱりか、とミーは心の中で呟く。
 そんな時、ミーの聴覚が僅かな地鳴りのようなものを捉えた。
 1号も察知したらしく、PDAを仕舞い込む。
 大地の響きだけで分かるほどに、D−3へと向かってきているターミネーターは多かった。
 当然である。

 ゼロとドラスを送り込んですぐに、1号はライト博士への交信を試みた。
 転送カプセルの電源を落としてもらうために。
 ライト博士がいたのは修理室であったが、そこにもバトルロワイアル会場を司るコンピュータがあったのですぐに1号の案は執行。
 この処置により、会場に散らばった転送カプセルから要塞へとターミネーターが侵入することはなくなった。
 それでも四箇所に存在するシャトルを使うターミネーターはいるだろう。かと言って、君達がいるのにシャトルを遮断するワケにもいかない。
 そうライト博士が漏らしたゆえに、1号は提案したのだ。
 『D−3以外のシャトル基地への電気供給を遮断してくれ』と。
 そんなことをすれば、会場全域に転送されたターミネーター全てがD−3へと向かうことになる。
 ライト博士は強く忠告したが、1号はそれでも頼み続けた。
 結局、要塞に向かった仲間にさらなる危険が及んではいけない、との意見にライト博士は折れた。

「いま来てるヤツらを全員倒せば、出発できるんだよね」
「ああ、そうだ」

 元々D−3にいたターミネーターを倒すうちに、いつの間にやら新たなターミネーターは送り込まれないようになっていた。
 バトルロワイアルを開催した世界にあった全ての平行世界移動装置が、破壊されたのだろう。
 つまり、もうこれ以上ターミネーターの数が増えることはないのだ。
 1号が気遣ってくれているのは分かるが、ミーはどうもいい気分がしなかった。
 明らかに1号の方が倒しているし、疲労も大きいはずだ。
 他人を気遣うのは素晴らしいが、それで無茶をしては本末転倒だ。
 そう考え、ミーはやんわりと断る。

「大丈夫だから、それは本郷さんが使いなよ。
 暴走してたゼロさんと戦ってから、ずっと休んでないでしょ?」
「いや、俺はいい。必要ないのなら取っておこう」

 やっぱりか、とミーは心の中で呟く。
 そんな時、ミーの聴覚が僅かな地鳴りのようなものを捉えた。
 1号も察知したらしく、PDAを仕舞い込む。
 大地の響きだけで分かるほどに、D−3へと向かってきているターミネーターは多かった。
 当然である。

 ゼロとドラスを送り込んですぐに、1号はライト博士への交信を試みた。
 転送カプセルの電源を落としてもらうために。
 ライト博士がいたのは修理室であったが、そこにもバトルロワイアル会場を司るコンピュータがあったのですぐに1号の案は執行。
 この処置により、会場に散らばった転送カプセルから要塞へとターミネーターが侵入することはなくなった。
 それでも四箇所に存在するシャトルを使うターミネーターはいるだろう。かと言って、君達がいるのにシャトルを遮断するワケにもいかない。
 そうライト博士が漏らしたゆえに、1号は提案したのだ。
 『D−3以外のシャトル基地への電気供給を遮断してくれ』と。
 そんなことをすれば、会場全域に転送されたターミネーター全てがD−3へと向かうことになる。
 ライト博士は強く忠告したが、1号はそれでも頼み続けた。
 結局、要塞に向かった仲間にさらなる危険が及んではいけない、との意見にライト博士は折れた。

「いま来てるヤツらを全員倒せば、出発できるんだよね」
「ああ、そうだ」

 元々D−3にいたターミネーターを倒すうちに、いつの間にやら新たなターミネーターは送り込まれないようになっていた。
 バトルロワイアルを開催した世界にあった全ての平行世界移動装置が、破壊されたのだろう。
 つまり、もうこれ以上ターミネーターの数が増えることはないのだ。
204参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:02:38 ID:0sWpubKo
      

 先陣を切って姿を見せたモトターミネーターを確認し、対抗するために1号はサイクロン号を転送させる。
 シリウスと合体したミーでは、あの数のモトターミネーターには対抗できないと判断したからだ。
 ミーの運転技術もなかなかの物だが、天才レーサーとしての顔も持つ1号には及ばない。

「もしもの時は、これを使え。効果は折り紙つきだ」
「え!? なんで、いつもいつもォォ!!」

 サブタンクが入ったPDAを渡されたミーの絶叫は、刹那で最高速に到達したサイクロンのエンジン音に掻き消された。


 ◇ ◇ ◇


[04:54〜04:59――宇宙要塞内部 修理室]


 全面が蛍光灯の役割を果たす天井の下で、ライト博士はあらぬ方向を眺めていた。
 瞳の焦点が合っておらず、その表情に生気はなかった。
 毛髪やヒゲはとうの昔に白くなってしまったものの、それでも割りと年齢より若く見られるタイプであったのだが……
 そんなことを感じさせないほどに、疲弊しきっていた。身体ではなく、精神が。

 彼は、人とロボットの共存を夢見ていた。
 平和や安全のためのロボットこそ、彼が作りたかった物だった。
 時にはメルヘンな幻想などと揶揄されたが、それでも理想を追い求めた。
 やがては人々にも認められ、『ロボット工学の父』とまで呼ばれた。
 しかし――――彼は、ここに来て揺らいでしまっている。
 彼の作り出した一体の行動が、不意に何度もフラッシュバックする。
 それだけではない。
 バトルロワイアルを開催した世界の人間達の、ロボットに対する嘲りが。
 シグマが抱く人間への怒りが。
 人間とロボットとの間にある深すぎる溝が。
206参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:04:24 ID:e1cdjPuG
 執拗に、ライト博士を痛めつける。

 ――ライト博士の中で、人と機械における究極の問いが木霊する。

 そんな時であった。
 彼がいる修理室の壁に、軽快な音とともに丸い刃が入り込む。
 T-Xに搭載された電動ノコギリだ、と理解していながらライト博士は動かない。
 そもそも逃げようがない。ここで死ぬのも彼を作った罪滅ぼしか、とライト博士は穏やかに目を閉じようとして――爆音。
 衝撃でか、ライト博士の瞳に光が宿る。
 戦闘音が続く中で、カードキーが差し込まれたらしく修理室の扉が開く。

「ライト博士、無事ですか?」
「イーグリードくんか……」

 ライト博士に傷がないのを確認すると、イーグリードはソルティをベッドに寝かせて部屋を飛び出す。
 戦線に戻ろうと急いでいるらしく、ライト博士の悩みには気付かない。
 勝手に扉が閉まった後に、オートでロックがかかる。
 せめて償いにとソルティの修理に励もうとして、ライト博士の視界を大小二つの影が暗転させる。

「君達は……そうか、ここに避難しに来たのか」
「あ、えっと、そう、です」

 明らかに相手が年上なため、若干しどろもどろで武美が答える。
 当然ながら普通に敬語くらい使っていたのだが、どうにもいきなり現実世界に引き戻された気分で口篭ってしまった。
 武美が沈黙を破って何かしら手伝おうかと申し出たが、ライト博士はやんわりと断る。
 再び誰も口を動かさなくなり、武美がいたたまれない気分になった頃、ふとライト博士が口を開いた。

「君は……」
「えっ、あ、何ですか?」
「人間と――――いや、やめておこう。すまないね」
「あ、そう、です……か」
208参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:04:39 ID:0sWpubKo
      
209参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:05:23 ID:e1cdjPuG

 再び、会話がなくなる。

(何これ、すっごく気まずいー! 何で黙ってるの、ウフコックー! 空気をー、どうにかしてー!)

 当のウフコックはと言うと、嗅覚でライト博士の絶望具合を感じ取っていた。
 だが、だからこそ何も言うことができないのだ。


 ◇ ◇ ◇


[05:07〜05:28――会場内 エリアD−3]


 仮面ライダー1号操るサイクロン号が、バイク型のモトターミネーターを追走する。
 戦闘の余波で融解した雪が地面をぬかるませているが、どちらも足を取られてしまうことはない。
 モトターミネーターが距離を離そうと加速するも、エンジンの性能ならばサイクロンのほうが遥かに上だ。
 いくらか距離が縮まったのを見計らって、1号がハンドルを持ち上げサイクロンをウィリー運転の形とする。
 ある程度の高さまで到達してから、凪ぎ下ろすように振り下ろされる前輪。
 怪人の表皮をも粉砕するタイヤが高速回転し、モトターミネーターを強引に分断した。

「あと二台、か」

 モトターミネーターの残骸が動かなくなったのを確認して、1号は残りのモトターミネーターへと視線を流す。
 背後でバルカンの銃口を向ける二台を視認し、再びアクセルを捻る1号。
 しかしながら加速しきっているモトターミネーターに対して、サイクロンは先の荒業により速度が落ちてしまっている。
 如何にモンスターマシンとはいえ、モトターミネーターに装着されたバルカンのいい的だ。
 計四つの銃口から、無数の弾丸が1号へと驟雨の如く降り注ぐ。
 バルカンに火を噴かせつつも、速度を緩めないモトターミネーター。銃弾を受けたところを轢き殺すという、二段構えの戦法を取ったのだ。

 ――が、銃弾は一発たりとも1号に命中しなかった。
211参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:05:37 ID:0sWpubKo
      
212参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:06:22 ID:e1cdjPuG

 1号はサイクロン号の前方に体重をかけると、急ブレーキング。
 後輪が大きく浮か上がったジャックナイフという呼ばれる状態となり、全ての銃弾はサイクロンの車体に傷を付けるに終わった。
 またジャックナイフによる急減速に対応しきれず、サイクロンを追い越してしまうモトターミネーター。 
 直ちにUターンするも、その時にはもう1号は先ほどまでいた地点から消えていた。
 バルカンの銃口を残されたサイクロン号に向けたまま、モトターミネーターは現状を把握しようとして――上方からの音声を探知した。

「ライダー……キィーーック!!」

 1号が跳躍していたのだと気付いた直後、二台のモトターミネーターは機能を停止した。

 バイクの運転技術に長けた自分が倒すべきモトターミネーターの全滅を確認し、1号は静かに呼気を整える。
 とはいえ、それに費やすのは僅かな時間だ。
 モトターミネーターを相手する途中で幾らか倒したが、まだターミネーターは無数に存在するのだから。
 一人で戦わせたまま放置しているミーも、気がかりであった。
 素早く周囲を見渡してメタルボディの猫型サイボーグを探し出すと、1号はすかさずサイクロンに飛び乗った。
 思いっきりアクセルを捻った1号の表情は、変身前であったのならば眉をひそめていただろう。
 ミーは善戦していたものの、あまりにも数の多いターミネーター達に囲まれてしまっていた。
 ああなれば、多少の実力差など関係なく押し潰されてしまう。
 数とは、それほどまでに凶悪なものだ。

「ヌゥン!!」

 道中に転がっていたT-888の残骸をジャンプ台として、サイクロンごと飛び上がってミーを取り囲むターミネーターの群れへと飛び込む。
 着地の際に同時に数体のT-800を踏み潰し、崩れかけた車体をアクセルターンで無理矢理に引き起こす。
 ターンに巻き込まれて倒れたT-600とT-888の集団は、ご丁寧に全員が二度目のアクセルターンで頭部を砕かれた。
 このままターミネーターを片端から破壊していくのも手だが、まず優先すべきは中心部にいるミーの下に駆けつけることだ。
 再認識した1号は体勢を低くして、ターミネーターの群れへと突っ込んだ。
214参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:07:04 ID:0sWpubKo
    
 ミニガンから放たれる弾丸を身に受けても意に介さず、1号はひたすらサイクロンのアクセルをフルスロットルに。
 どれだけのターミネーターを掻い潜っただろうか、ついに1号の複眼が水色のメタルボディを捉えた。

「えっ!?」

 倒れたT-888の頭頂部からウィル・ナイフを引っこ抜きながら、ミーが驚愕の声を上げる。
 掠り傷こそ至るところに刻まれているが、大きな被害はないようだ。
 静かに安堵しながら、1号がサイクロンのハンドルを激しく回す。
 いきなりの方向転換によりスライドした車体が、ミーの周囲にいたT-800シリーズを薙ぎ払う。

「ふッ」

 ふらつくT-800シリーズの前で鋭く息を吐き、再び1号はサイクロンをジャックナイフの体勢へと持っていく。
 そしてジャックナイフを維持したまま、前輪を支点にして車体を独楽のように回転させる。
 結果――勢いよく振り回された後輪が、T-800シリーズの頭部を刈り取った。
 現れていきなりジャックナイフターンという技術で何体ものT-800を蹴散らした1号に、思わずミーは呆然とする。
 そんなミーへと、サイクロンから降りた1号はゆっくりと口を開いた。

「モトターミネーターは倒した。後はこいつ達だけ――――」

 言い終えるよりも早く、1号は地を蹴る。
 ターミネーターシリーズの群れの中で、ミーへと光り輝く右腕を向けたT-800が一体いたのだ。
 それは少し前からエネルギーをチャージしていたのだが、サイクロン号に乗った状態では視線が低く1号は視認できなかった。

(間に合わん……!)

 1号が駆け出したのとどちらが早かったか、T-800の砲台状となっている右腕が光弾を吐き出した。
 相手に気付くのが少しばかり遅すぎた。
 そう判断して即座に、1号は進行方向をT-800から変更。プラズマ弾の射線上へと飛び込んだ。

「グぁぁあああッ!!」

 1号から、彼らしくない絶叫が漏れた。
 ミーを庇うことだけを考えたために、急所を避けることすら出来ず。
 プラズマから成るオレンジ色の炎弾は、仮面ライダー1号のエネルギーの源であるベルトへと直撃した。
 変身が解除され人間の姿に戻っても、空中で身体を回転させて吹き飛ぶ距離を制限したのは、さすが本郷猛と言ったところか。

「本郷さん!」

 本郷の下へとミーが駆け寄ろうとするが、Tシリーズの群れから飛び出してきた一体のT-800が阻むように前に立つ。

「邪魔だァァーーー!!」

 一刻も早く本郷の安否を知りたいという焦りが、ミーの中で爆発。
 声を張り上げて跳びあがり、T-800のカメラアイへとウィル・ナイフを押し込んだ。
 傍から見れば致命の一撃を与えながら、ミーは腑に落ちないものを感じた。
 ウィル・ナイフを差し込んだ箇所から一閃したのだが、伝わってくる感触があまりにも奇妙だった。
 まるで豆腐でもスライスするかのような、手応えのなさ。少なくとも、これまで相手にしてきた金属骸骨を貫く感触とは異なっている。
 疑問に思ったミーは、着地するより早く上を見上げる。

「なあッ!?」

 思わず声を漏らすミーの眼前で、T-800に刻まれた傷跡が見る見る塞がっていく。
 完全に塞がった後に、T-800が姿を金髪の女性のものへと変える。
 その服装は、本郷猛が着込んでいる黒のレザー製ライダースーツに酷似していた。

 ミーには知る由もないが、彼女はT-800ではなくその上位機種。
 対ターミネーター用ターミネーターのT-X。
 あえてT-800に擬態して、ターミネーターシリーズの群れに紛れ込んでいたのだ。

 眩い光を放つT-Xのカノンと化した右腕を向けられて、呆けていたミーが我に帰る。
 しまった、と吐き捨てるも時既に遅し。
 ミーが距離を取るよりも、T-Xがプラズマ弾を撃ち出すほうが早い。

「むぅん! ライダーチョップ!」

 しかしT-Xの背後から伸びた手刀が、右腕ごと銃口を横に移動させてしまう。
 結局、吐き出されたプラズマ弾はミーの装甲を焼くことはできなかった。
 周囲を囲むターミネーター達が巻き込まれ、水素爆発が起こる。
 吹き飛ばされてから起爆したために爆心地が遥か彼方であったのは、ミー達とターミネーター達の両勢にとって幸運と言えるだろう。

「――――?」

 首だけを百八十度回転させたT-Xのカメラには、精悍な顔付きの男が映った。
 纏うライダースーツは一部消し炭となっており、そこから見える逞しい肉体もまた焼け焦げていた。
 されど、その瞳の輝きに些かの曇りもない。
 未来のテクノロジーによって作り出されたプラズマ弾は、本郷猛が抱き続けている決意を揺らがせるほどの物ではなかった。

 軽やかな動作で足を払われ、T-Xの身体が宙に浮く。
 力を感じさせない本郷の老獪なテクニックは、ターミネーターが即座に反応できる類のものではない。
 対パワーを意図して製造されたT-Xならば、尚更のこと。
 その隙を狙って本郷はT-Xの腕を掴み、勢いに任せて一本背負い。
 一瞬にして、本郷はミーとT-Xの間に入り込んだ。
 スペックが上のT-Xを救援するために、いくらかのT-800が本郷へと飛び掛る。
 だが、ただ割り込んできただけの相手にやられる本郷ではない。
 横凪に斬り払うようなハイキックで、数体まとめて地面へと叩き付ける。
 頭部の破壊はさすがに適わなかったが、それでも隙を作り出すには十分であった。

「本郷さん……大丈夫?」

 本郷に背後からかけられたのは、ミーの不安そうな声。
 ダメージは決して軽くはないが、ミーに責任を感じさせるワケにはいかない。
 その思いから、本郷は欠片もダメージを受けていないような素振りで微笑を向ける。
 しかし本郷の無理をする性格を知っているミーは、素直に安心できない。
 それを察した本郷は、答えの変わりに態度で示すことにする。
218参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:09:36 ID:0sWpubKo
    
 本郷が全身に力を漲らせるとともに、腰に巻いていた黒いベルトが鉛色の金属と変化する。
 バックル部には巨大な赤い風車。そのベルトの名をタイフーン。
 プラズマ弾の直撃で幾分黒ずんでいるものの、確かに顕現した。
 その事実に胸中で安堵の息を漏らして、握った左拳を腰へと持っていき固定する。

「ライダー変ん……身ッ!!」

 右腕を左側に伸ばして、そのまま右へと振るう。
 それを合図として、本郷は緑色の体躯に赤マフラーを巻いた改造飛蝗人間の姿へと変身――

「何……?」

 ――しなかった。
 タイフーンの風車が、気合を入れる心のスイッチに反応しなかったのだ。
 ぽかんと口を開けたまま硬直した本郷に、上体を起こしたT-Xが再びエネルギーを充填中の右腕を向ける。

「危ないっ!!」

 ミーの低空タックルを膝裏に受け、本郷が倒れ臥す。
 直後、本郷がいた箇所をプラズマ弾が通り過ぎる。
 電撃を纏ったオレンジ色の炎弾は、再びターミネーター達を彼方で炸裂させる。
 対ターミネーター戦の中で水素爆発を何度も見たとはいえ、とても慣れるものではない。

「…………っ、う……」

 耳朶を打った轟音に苦悶の表情を浮かべ、ゆっくりと立ち上がるミー。
 そして、すぐさまそのメタルボディが照らされる。
 光がT-Xの右腕から発せられるものだと気付いたと同時に、ミーは浮遊感を味わった。
 いち早く体勢を立て直した本郷が、ミーを抱きかかえてサイドステップを踏んだのだ。
 何とか直撃は回避し、脇腹を焼く程度で済ませる。
 それでも苦悶の声は漏れ、ミーが心配そうに本郷へと声をかける。
 そんなミーを地面に下ろし、PDAを取り出した本郷は静かに口を動かした。
220参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:10:27 ID:0sWpubKo
         
221参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:10:57 ID:0sWpubKo
       
222参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:11:44 ID:e1cdjPuG
223参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:12:30 ID:e1cdjPuG
224参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:14:00 ID:e1cdjPuG
225参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:14:14 ID:0sWpubKo
   
226創る名無しに見る名無し :2009/09/03(木) 02:19:36 ID:NgrBXj+0
227参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:19:42 ID:/wLAjZxh
228参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:24:34 ID:/wLAjZxh
229ひよこ名無しさん :2009/09/03(木) 02:28:54 ID:XXzzNrRh
 
230参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:29:16 ID:NgrBXj+0

「――すまん、ミー」

 それだけ告げて、本郷は虚空より出現したサイクロン号に跨る。
 前輪をロックさせた状態でアクセルをフルスロットルに――すると、動かない前輪を軸として後輪が円を描く。
 雪解け水が染みていた地面は既に固まっており、スリップすることもなくマックスターンという名の状態が継続される。
 同じ箇所を走り続けているために、サイクロンのタイヤが磨り減って黒い煙が立ち込める。
 そんな煙では目潰しにもならない、とばかりにプラズマ弾が射出されるが、その途端に発進したサイクロンに当たることはなかった。
 その事実に舌を打つこともなく、T-Xは小さくなる本郷の背を見つめているミーへと歩み寄る。
 モトターミネーターが倒された以上、サイクロンを追いかける術はない。そもそも、わざわざ逃亡した者の相手をするだけ無駄だ。

「くっ!」

 ミーは構えたウィル・ナイフをT-Xの首へと押し付けるも、水に手を差し込むかのように刀身が沈むだけだ。
 ろくな手応えも味わえないままに、ミーはT-Xの右腕から響くチャージ音を耳にする。
 スパーク音を高鳴らせた砲口が向けられたミーは、空中で右手をT-Xへと向ける。
 ミーの小さな右手には既にアームパーツが発現させており、初撃のナイフの時点でエネルギー充填は開始してある。
 プラズマ弾とエネルギー弾。発射されたのはほぼ同時であり、弾丸自体も同速に近い。
 半ばで相殺しあい、強大なエネルギーの波が発生した。
 ターミネーター達は踏み止まるが、着地前であったミーはT-600の群れへと突っ込みそうになる。
 何とかT-600の内の一体を蹴り飛ばして、T-Xの前へと舞い戻るミー。
 彼に対して、T-Xが問いかける。
 倒す意思がなくなったのではない。単純な興味からの行動だ。

「理解不能だな。
 お前より戦闘力が上の参加者が逃走を図ったというのに、ただ一人で抗うとは」

 今まで無言であった相手に疑問を投げかけられる。
 そんな予想外の事態に、ミーは暫し唖然。
 思わず、状況を飲み込むために深呼吸。
 そしてやっと現実を受け止め、そして――

「はッ」

 ミーは鼻で笑った。
 ターミネーターシリーズに囲まれている現状で笑うなど、T-Xのコンピュータには到底理解できない。
 説明を求めようとして、それを口にする前にミーが吐き捨てる。

「逃げないよ、本郷さんは。仮面ライダーだからね」
「――――?」

 改めてミーの言動は理解不能だ、そう判断したや否やT-Xの付近に奇妙な陰が出現した。
 すかさず首を上げると、T-Xの視界に入ったのは逃亡したはずの本郷猛。
 ボディプレスを見舞うかのように、落下してきている。
 不測の事態ではあるが、T-Xは冷静に計算する。
 如何に落下エネルギーを上乗せしようとも、変身前の本郷猛では最上位機種T-Xを破壊することは不可能。
 体当たりをあえて受けてから攻撃するべく、プラズマカノンにエネルギーを蓄える。
 そしてT-Xと本郷の距離が五メートルほどになった時、T-Xは気付いた。

 落下する本郷は伸ばした四肢を後ろに回しており、かつ上半身を前に突き出しているのだ。
 つまり落下によって生まれる風圧は、腹部に最も襲い掛かる。そう、風車をあつらえたベルトを含めた腹部に。
 プラズマ弾を受けたタイフーンは変身ポーズに反応しなかったが、強烈な風を受ければ無理矢理に回転する。
 そして、一度回転すればそれでよかった。
 風のエネルギーがタイフーンを回し、莫大なエネルギーを生み出していく。
 ベルトを中心に強烈な光が広がり、本郷猛の肉体を包み込む――!

「ライダーパァァァンチ!!」

 繰り出された拳は、緑色がかったグローブに包まれている。
 咄嗟にバックステップで遠ざかったT-Xを睨むのは、赤と言うよりもピンク色の複眼であった。
 そしてその顔面は普段よりもダークグリーン色が強く、それがクラッシャー部にまで及んでいた。
 T-Xとミーの間に立つ鍛え抜かれた肉体には、銀のラインが走っていない。そしてこれまた、黒ではなくダークグリーンのボディ。
233参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:31:30 ID:/wLAjZxh

「よく耐えてくれた、ミー」

 普段と違う姿に疑問を覚えるミーに、振り返ることなく仮面ライダー1号が語りかける。
 その言葉はたった一言だが、十分にマスクの下の顔が本郷だと納得させるに足るものだった。

 ――1号がこの姿をとっているのには、理由がある。

 変身ポーズが生み出すエネルギーに比べ、落下による風圧では弱すぎた。
 グレイ・フォックスとの再戦の際は風圧をプラスした変身だったが、今回は違う。ただ風圧のみによる変身だ。
 そのため、再改造によって得た能力を引き出すことができなかった。
 いわば、現在の1号のボディはかつてのもの――――旧1号とでも呼ぶべきか。

「どういうことだ」

 不可能であったはずの変身を遂げた1号に、T-Xが問いかける。

 言ってしまえば、本郷は元より逃げ出したワケではなかった。
 落下による風圧目当てで、戦いの余波で少し曲がった電柱を目指したのだ。
 マックスターンもまた目晦ましではなく、ただ電柱を登るだけの加速を発進前から得ようとしただけ。
 ターミネーターシリーズによる壁には、プラズマ弾によって道ができていた。
 そこを通り電柱に到達して、すぐさま登り出す。エンジンがほどよく温まっていたので、本郷にとって難しい作業ではなかった。
 頂上にてサイクロン号をPDAに戻して、本郷はT-X目掛けて落下したのである。

 ――――だが、そんな工程を長々と説明する道理はない。

 仮面ライダーが立っている理由を語るには、ほんの短い言葉で十分なのだから。
 ショッカーの敵として、仮面ライダーを名乗った時から。
 そのショッカーを壊滅させてなお、人類の自由と平和のために戦いを続ける決意をしてから。
 そして――――イーグリードより人類の行き着く一つの可能性を聞かされてからも、ずっと。

「この世に悪がいる限り、仮面ライダーは倒れん!
 そして仮面ライダーがいる限り、悪の野望を叶わせはしない!!」

 1号の宣言を受け、ターミネーター達が臨戦態勢に入る。
 右腕にエネルギーを充填するT-Xに、その他のターミネーター達がミニガンの銃口を1号へと向ける。
 旧1号の肉体では、これだけの数を相手にするのは少々厳しい。
 ならば、どうするか。IQ600の頭脳を使うまでもない。
 足りないのならば、増やせばいいだけの話だ。

「力を貸してくれるか?」

 首を少し後ろに回して、1号が尋ねる。

「もちろんさ!」

 数秒かけて言葉の意味を理解して、ミーが1号へと飛びつく。
 ミーの背中から伸びるケーブルを上半身に巻かせて、1号が両足に力を篭める。

「ライダージャンプ!」

 ただの垂直跳びだが、弾丸を回避するのにはちょうどいい。
 上昇する途中でミーが悪魔のチップを起動させ、1号の肉体へと沈み込んでいく。
 1号の濃緑の肉体とグローブに青みが差し、まるで長き時を経て出現した青錆のよう。
 胸部には、メカニカルなデザインをした猫の顔面が浮き出る。
 そして濃い青緑色となった1号の頭部には、猫の耳が生えた。

「ライダー……」

 仮面ライダーの肉体を構成する改造筋肉は、戦闘経験を積めば積むほどに成長する。
 ゆえに供給されるエネルギーが少ない現状だろうと、その肉体に刻まれた数々のスキルが消えることはない。
237参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:34:47 ID:NgrBXj+0
 1号が持つ『技の1号』や『伝説のダブルライダー』などの異名は、改造飛蝗人間のスペックだけがもたらしたのではない。
 長きに渡る悪との戦いの日々が、協力してくれる仲間との特訓が、1号を伝説としているのだ。

 だからこそ――――旧1号の姿でも、当時は存在すら知らなかった技術を使用可能なのだ。

「反転キィィィイイイック!!」

 一度の跳躍で辿り着いたコロニーの天井に、1号は思い切り右足を叩き込む。
 通常の落下スピードに蹴りの勢いがプラスされるも、何事でもないように宙返りして体勢を調整する。
 身体を一陣の矢とした1号は、プラズマ弾を充填させたまま反応しきれないT-Xを貫いた。
 T-Xの肉体を構成する液体金属は吹き飛ばされ、形を作る骸骨じみたフレームまでも完膚なきまでに粉砕された。
 自らの作ったクレーターに立ち尽くす1号へと、T-800およびT-600達がミニガンの銃口を向ける。
 1号が動き出すよりも早くミニガンは火を噴いたが、弾丸が1号へと命中することはなかった。

「当たらないね!」

 1号の身体からミーのケーブルが伸び、ミニガンの銃口をズラしたのである。

 この場にいるのは、たった一つの肉体の、しかし二つの心を持った戦士。
 ターミネーターシリーズがそう再認識した頃には、クレーターから脱出した1号がT-600の群れへと猛進していた。
239参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:35:50 ID:tPnXWVL0


 ◇ ◇ ◇


[05:29〜05:34――宇宙要塞内部 通路]


「ストームトルネード!」

 イーグリードの両羽が作り出した竜巻が、無数のターミネーター達が浮かび上がらせる。
 その全てが既に頭部を砕かれており、浮遊したまま抵抗する素振りを見せない。

「落鳳破ッ」

 跋扈する乱流に残骸達が舞い上げられたのを確認し、ゼロが握った拳を床へと振り下ろす。
 インパクトの瞬間に、ゼロが右拳に集束させたエネルギーが弾丸となって四方に弾け飛ぶ。
 扇状に放たれた巨大な光弾は、浮遊する残骸を容赦なく破壊していく。
 全方位攻撃ゆえにライト博士達が潜む修理室までエネルギー弾は飛来するが、それらは全てドラスが張り巡らせた淡い色の魔方陣に阻まれた。

「――そこだ!」

 防護障壁を展開しつつも、目を光らせていたドラスがその口を開く。
 連動して、巻いておいた混天綾が紅く輝く。ちなみに怪人態ゆえ、少女を模した姿の時と違いナタクのように腰布として纏っている。
 はたして混天綾による液体操作の標的は――――イーグリードとゼロが思案した頃、竜巻が消失。
 落下した鉛色のフレームの中に、明らかに奇妙な人型が二体。
 暫し頭部のもげたT-800の姿をとっていたが、次第に表面が波打ち『人じみた何か』の姿となる。
 片方の左腕には回転式円鋸、もう片方の右腕にはフレイムショット。
 その正体は、少し前の時刻に本郷達の前に立ちはだかっていたT-X。
241参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:36:53 ID:tPnXWVL0

 戦闘開始時には姿を見せていたくせに、旧式が倒れていく内に二体のT-Xは姿を消していた。
 スペック的に正面からでは適わないと判断し、T-800の残骸に化けて騙まし討ちを仕掛けるためである。
 しかしゼロとイーグリードには、失踪に気付かれてしまう。ひとえに戦闘経験の差だ。
 そしてターミネーター達を破壊する中でドラスに耳打ちし、炙り出す策を知らせたのだ。
 T-Xについての資料に目を通したイーグリードのこと。
 浮遊させての全範囲攻撃にて液体金属のオーバーボディを持つ二体を浮き彫りにさせる、など思いついて当然だった。

 纏う液体金属を膝下にまで追いやられ、光沢のある金属骨格を露にするT-X。
 一体にはドラスが、もう一体にはゼロが接近する。
 とはいえ対ターミネーターに特化したT-Xが、液体金属を剥ぎ取られるような状況を予想されずに製造されたワケがない。
 つまるところ、内蔵兵器は金属骨格の方に依存しているのだ。
 迫るドラス目掛け、T-Xの右腕から炎を吐き出そうとする。
 これまで下位機種達が破壊される様子を見ていたT-Xには、ドラスの射程内に入るより早く攻撃可能との確信があった。
 怪人態になってリーチが長くなったとはいえ、拳も足もギリギリ届かない。
 それゆえ、警戒すべきは遠距離攻撃。拙い魔法弾ではさすがに最上位機種の体勢は崩せないし、マリキュレーザーは発射までの隙がある。
 との判断だが、結論を下すにはデータ不足と言わざるを得ない。
 T-Xの前で使用していない、正確には使用するまでもなかった武器がドラスには多い。
 転送するタイムラグがあるのでPDA内の物は考えないとしても、体内に取り込んである道具は即座に使用できる。
 カセットアームを右拳の先で排出すれば、一気に距離は詰まる。
 またナタクほど完璧に扱えなくとも、乾坤圏など使われれば銃口がズレるのは必至だろう。
 そもそも――――手足が届かないくらいで打撃を警戒しないことが、何よりもお粗末なのだが。

「おォォォォ!」

 ドラスの尾が横一文字に振るわれ、T-Xの砲台状の右腕を下から打ち据えた。
 衝撃で銃口が自分の方を向くが、既に下された発射命令は止まらない。

「#$%&」

 悲鳴のような電子音が、T-Xから響く。
243参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:37:47 ID:tPnXWVL0
 炎に視界を奪われ、温度と二酸化炭素による探知も不可。
 コンピュータが高速で回転して、この場を切り抜ける方法を導き出そうとする。
 そして導き出そうとしたまま、振り戻されたドラスの尾を顔面に受けて機能を停止した。
 鈍い音を鳴らして壁にめり込んだT-Xの頭部を見もせずに、ドラスはゼロの方へと向き直ろうとする。
 それよりも早く、ゼロのセイバーとT-Xのカッターが接触したことによる高音が大気を切り裂いた。

「ぐう…………っ」

 セイバーを握る力を強めながら、ゼロの頬を冷や汗が伝う。
 切れ味という観点ならば、ゼロが持つカーネルのセイバーの圧勝だろう。
 しかし鋭さの差を埋めて拮抗まで持ち込むのは、円鋸の回転スピードだ。
 今のところ、ゼロは腰に踏ん張りを利かせて耐えているが……
 このまま互いの獲物が火花を散らしあえば、先にゼロが崩れるのは明らかだった。
 そうなれば終いだ。がら空きになったボディを両断されてしまうだろう。
 それを認識していてなお、ゼロは己の勝利を寸分たりとも疑わなかった。
 噛み締めていた歯に、これまで以上の力を入れる。
 ぬめりのあるオイルの感触を口内に抱き、ゼロはかつて戦ったドラゴン型レプリロイドの姿を思い描く。

「せリャァァ……ッ!」

 下したイレギュラーから奪った技術で、緑色の刀身が燃え盛る火炎と化す。
 エネルギーでありながら敵を刻むべく高い硬度を保っていた刃は、無形へと転換。
 当然、無形が円鋸と接触できるはずもない。
 カッターが炎刃をすり抜け体勢を崩したT-Xを尻目に、ゼロが足場を蹴り上げる。
 龍炎刃という名を持つ上昇しながらの斬撃。されどT-Xのフレームを溶かすことはできず、結果を言えばゼロは跳躍しただけだ。
 前のめりに倒れかけたT-Xは、上方のゼロへと左腕を掲げようとする。

「遅い!」

 ゼロが自由落下の勢いを乗せてセイバーを叩き込む。
 刀身は、既に緑色のエネルギー刃へと変換済み。
 首の間接部を軋ませながらも、T-Xの頭部は落ちることはなかった。
245参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:38:46 ID:tPnXWVL0
 が、特Aハンターの攻撃はこの程度で終わらない。
 落下中にゼロの左足にオレンジ色のエネルギーが宿り、着地と同時に廻し蹴り一閃。
 先の打ち下としで衝撃耐久限界に達していたT-Xの首は、ゼロのチャージキックにより易々と捻じ切れた。

「――ふう」

 セイバーの刀身を解除し、ゼロが金の髪を掻き揚げる。
 もうこれで修理室周辺のターミネーターは、全て破壊しただろう。
 上方に留まるイーグリードに目配せすると、頷きが返ってきた。
 そもそも落鳳破による炙り出し自体が『念のため』というヤツだったので、当然といえば当然のことだ。
 ゼロは納得しつつ、降りてきたイーグリードと駆け寄ってきたドラスへと切り出す。

「ひとまず静かになったが、ここからが本題だ。
 シグマがいるのはこの要塞の中心部、だったな?」

 ターミネーターを殲滅し終えて軽く安心していたドラスは、その視線の鋭さで現実に引き戻された。
 あくまでイレギュラーな事態に対処しただけで、まだ何も終わってはいないのだ。
 イーグリードの肯定を待ち、ゼロが続ける。

「離れた箇所に転送されたメガトロン達も、おそらく中心部を目指すだろう。
 ヤツらもターミネーター達に足止めを食らっているだろうが、それでも出会わないとは限らない」

 一旦少女を模した姿に戻ったドラスが息を飲み、そして――

「だから、俺とイーグリードだけで中心部に向かう。
 ドラス、お前は本郷とミーの到着を待て。その後は本郷の指示に従え」
「…………え?」

 ――虚を付かれたかのように、情けない呟きを漏らした。

「な、なんで僕が残るの!? もしかして、さっきの……?」
247参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:40:32 ID:tPnXWVL0

 ドラスの中に蘇るのは、転送装置に向かう道中でゼロからかけられた言葉。
 感情で判断を曇らせる――思い返したと同時に、ドラスは声を張り上げていた。

「そんなことするもんか! さっきまでだって、僕はちゃんとやってきた! 見てたはずなのに!」

 明らかに平静を失い、むきになるドラス。
 その様子こそが、ゼロが懸念するものだとも知らずに。
 ゼロの意見に賛同しつつも、イーグリードはドラスを宥める手立てを見出せない。
 激しい言葉をある程度受けてから、ゼロは顔を赤くしたドラスへと語りかける。
 その口調は、さながら弟に言い聞かせる兄のように。

「別に、お前がジャマというワケではない。
 それに俺だって、俺達三人で行くのが戦力的に最善だとは思っている。」
「だったら――!」

 ドラスの反論を、ゼロは遮る。

「全員で行けば、誰がソルティ達を守るんだ。
 メガトロン達があえて中心部に向かわない可能性もあるし、単純に迷った結果ここに着くかもしれない。ターミネーターだって全員倒したかは不明だ」
「…………っ、でも……」

 道理では納得はしても感情が納得できず、ドラスが食い下がろうとする。
 しかし言葉が出てこずに、言いよどむ。
 その隙を逃すことなく、ゼロは続ける。

「それに、シグマと俺達には因縁がある。
 あの時から憎む日々が続いたが、かつては親のように慕った男だ。
 …………もう一度言う。ヤツとの決着は、俺達に任せてくれないか」
249参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:42:17 ID:tPnXWVL0
250参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:43:42 ID:tPnXWVL0
251参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:44:29 ID:tPnXWVL0

 ――『親』のように慕った男。

 そんなワードを出された以上、ドラスは退くしかなかった。
 自分が最も欲した存在を知ってしまったからこそ。
 不承不承と言った様子で引き下がったドラスに、ゼロは胸中で謝罪する。
 ドラスが退かざるを得なくなると知っていて、あえてゼロは『親』という単語を使ったのだ。
 彼自身には『親のように慕う』という感覚が、あまり実感できないにもかかわらず。
 そんなことを察せられぬよう、ゼロはすぐさまイーグリードを連れて駆け出した。
 彼らが曲がり角を過ぎ背中が見えなくなってから、ドラスはイーグリードから託されたカードキーで修理室を開いた。


 ◇ ◇ ◇


[05:35〜05:51――会場内 エリアD−3]


 会場に残っているT-Xは、反転キックに倒された一体だけではなかった。
 T-888の集団を相手にしている際、遠距離から右腕のプラズマカノンを向けるT-Xを発見。
 ならば接近戦を挑もうと、仮面ライダー1号は組み合ったのだが――

「ガあ…………っ」

 掴んだT-Xの左腕が円鋸と姿を変え、グローブごと1号の右腕を切り落とそうと回転し出した。
 走る激痛に声を震わせつつも右手に力を篭めて、強引に回転を止める。
 強引すぎる荒業に唖然とするしかないT-Xへと、1号から『1号でない誰か』の声が浴びせられる。

「この距離なら、修復する隙はできないね!!」

 1号の胸部に出現した猫の顔面。
 その口から、先端にバスターを装着したケーブルが伸びていた。ミーのものである。
 T-Xが見下ろしたと同時に、射出されるフルチャージ済みの光弾。
 液体金属を吹き飛ばし、T-Xの胸部に半径十センチほどの穴が開いた。そこから白銀のフレームが見える。
 プラズマ弾で撃ち落そうとするが、右腕は半ばを1号に握られて固定されていた。左腕の丸鋸は動かしているはずなのに、無理矢理に回転を止められている。
 T-Xの編み出した対策案がことごとく潰されているのもお構いなしに、チャージなしのエネルギー弾がフレームを焼く。
 修復した端から液体金属を剥がされ、一点集中の射撃。いかにT-Xのフレームが強固だろうと、同じ箇所を穿たれれば砕かれる。
 向けられるバスターを蹴り飛ばそうと右の蹴撃を放とうとするも、体重移動の時点で1号に見破られ足を払われる。

「む!」

 背後から狙うミニガンの駆動音に気付き、1号は掴んだT-Xを盾として回れ右。
 T-Xの背中を覆う液体金属が抉り取られ、いっそうミーに削り取られた外殻の修復が遅れる。
 そしてついに、極小の光弾は高硬度の金属を貫いた。
 一つ溝ができれば、強度というものは一気に低くなる。
 もう一本伸びてきたケーブルが掴んでいたウィル・ナイフが金属骨格に突き刺さり、そのまま小刻みに抉られ――暫くの後にT-Xはくず折れた。

「トゥ!」

 盾にしていたT-Xから力が抜けてしまえば、1号は驟雨の如く降り注ぐ弾丸の雨に曝されることになる。
 それでも1号はT-Xを放り投げてからの瞬時の跳躍で、僅かに弾丸を受けた程度で済んだ。

「これは……?」
「うおお! 何それ、本郷さん!?」

 シャトル基地の屋上で、カッターに刻まれたはずの掌をまじまじと見つめる1号。
 不思議なことに、傷は塞がりつつあった。
 改造飛蝗人間の治癒力を凌駕するスピードを奇妙に思うが、すぐに納得したように虚空を見つめる。
 一度ゼロに倒された時、消え入りそうな意識の中で本郷猛はフランシーヌの声を聞いていた。
 ならば、この異常なまでの治癒力も納得できるというものだ。
 『生命の水』を飲んだ者全てが、その能力に歓喜するワケではない。
 人としての時間を生きることを拒まれ、かといって死ぬことすら困難になる錬金術の結晶。
 その効果に、本郷は――

(君には本当に感謝しても感謝したりないな、フランシーヌ)

 ――謝意を表した。

 再生の速度に恐怖を感じる人がいるだろうとは、本郷も理解していた。
 それでも、本郷は喜んだ。
 なぜなら、その身は一人の人間である本郷猛のものではないからだ。
 仮面ライダーは、人々の味方にして悪の敵。
 されど、生まれる悪意に果てなどない。
 一つを砕いたところで、次の悪意が解き放たれる。
 終わりなき野望に、終わりなき日々。
 元より仮面ライダーを名乗った時点で、本郷は人間としての生など諦めている。
 意味のない人生と罵られようと、それでも本郷猛は仮面ライダーとして生き続ける固い意志がある。
 ならば、なぜかつて以上に人間離れしていく我が身を嘆くことができようか。

「げっ、本郷さん!」

 辺りを見回していたターミネーターの内の一体が、シャトル基地の上に立つ1号を発見した。
 周囲を見下ろして、本郷は考える。
 残るターミネーターは、全種合わせて約五百。
 倒しきれるだろうとは確信しているが、一刻も早く要塞に向かわねばならない。
 ならば……――――
 北風をベルトの風車に受けるように、体の向きを変える。
 
「ライダー……パワァァアアアッ!!」

 握った左拳は腰へ。伸ばしきった右腕は、左から右へと勢いよく旋回。
 先ほど全く反応しなかった、力を引き出すためのスイッチ。
 『生命の水』は機械部を回復させることはできないが、今回と前回とでは条件が違う。
 全く回転していなかった風車を廻すのと、既にある程度駆動している風車を加速させること。
 プラズマ弾を受けたことにより機能しなくなったのは、前者なのだ。
 下にいるターミネーター軍団にも聞こえるほどの風音が、タイフーンからもたらされる。
 何か得体の知れぬものに対する反応か、ターミネーター達のミニガンが1号へと火を噴いた。

「うらららァァァーーーッ!」

 放たれた無数の弾丸は、その全てが発現した大量の斬撃に落とされた。
 理解できないターミネーター達の前で、1号の背後から伸びたケーブルが長剣を掴んでいた。
 一度振れば複数の斬撃を展開する宝貝(パオペエ)、青雲剣である。
 息を荒くしつつ、ミーは宝貝のデメリットにやっと気付く。
 疲れを悟られないよう、できるだけクールにターミネーター達へと吐き捨てる。

「こういう時は黙って待ってるもんだぜ、骸骨諸君?」

 やれやれという感じで、ミーがケーブルを二本漂わせる。
 理解することを無理と認識し、ターミネーター達が再び狙撃を開始。

「ライダージャンプ!」

 風力をパワーと変換させた1号が、屋上を蹴った。
 空中宙返りして、右足を左足で固定。そのままT-888の溜まり場へと突っ込む。
 ミニガンから射出された弾丸は、全てキックの餌食となり霧散した。

「ライダーダブルキィーーーック!!」

 一人と一匹のパワーを合わせたダブルキックが、水素爆弾ごとT-888を打ち砕く。
 水素爆発が引き起こされるが、ライダーパワーで強化された1号を傷つけるほどの威力ではない。
 デストロン怪人・カメバズーカの体内に埋め込まれた原子爆弾の破壊力には、とても及ばない。
 爆炎の中で立ち尽くす1号に、他のT-888を防護壁として生き延びた一体が飛び掛る。

「……ライダー返し!」

 相手の勢いを借りて、鮮やかな一本背負い。
256参加するカモさん:2009/09/03(木) 02:53:55 ID:tPnXWVL0
 『技の1号』に相応しい技術を使って、飛び掛ってきたT-888をT-600の群れに投げ込む。
 飛来するT-888が死角を作り出し、T-600達には1号を迎撃できない。

「ライダーハンマーキック!」

 自分で投げ飛ばしたT-888へと飛び蹴りをお見舞いしていた1号。
 死角からの攻撃に反応できず、T-600達も巻き込まれてしまう。
 またしても水素爆発が起こる。
 さすがのライダーパワーとはいえど、残る四百体以上の水素爆発を全て受ければ危ない。
 そう判断して、1号はそういう場合に使うべき技を選出する。

(ライダーポイントキックを使うか……)

 ポイントキックとは、すなわち相手の弱点だけをピンポイントで攻撃する技だ。
 狙いを澄ますのにとてつもない集中力を要するため、敵が多い現状では敬遠していたのだが選り好みしていられる状況ではない。
 と言っても、敵があまりに密集しすぎている。
 ポイントキックを使っても、余波で他のターミネーターの水素爆発を引き起こせば意味がない。
 だとすれば、上方から的を絞るのが効果的だろう。
 カワセミが魚を掴み取るように、直線落下的に頭部を破壊する。
 されど、そんな芸当はポイントキックだけでは不可能。
 拳と手刀、ミーのチャージショットで一体一体倒しつつ、1号は思考して――導き出す。

(一度やった天井を蹴っての反転キックと合わせれば可能、だな)

 だが反転に集中するのに、上空でピンポイントに頭部に狙いを絞ることが可能だろうか。
 熟考する1号へと声がかけられる。
 声と言っても音ではない。体内へと響くようなものだった。

「本郷さんは天井を蹴るのに集中して、僕が狙いを澄まして本郷さんの身体を微調整する。それでどう?」

 悪魔のチップによる合体は、思考までも共有可能なのだ。
 そのことを教えられていなかった1号は驚愕しつつも、ミーに問いかける。
258参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:02:06 ID:tPnXWVL0
259参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:04:07 ID:tPnXWVL0

「ミー……できるか?」
「任せてって。これでも操縦には自信あるんだよね」
「ふっ、そうか」

 自身の動きを調整することを操縦と言われ、1号は戦闘中にもかかわらずほくそ笑んでしまった。

「それにしても、本郷さんは一人で考えすぎだよ。僕が何も言わなきゃずーっと一人で考えてたね、間違いなく」
「ムゥ……」

 自覚がないだけに、言葉を詰まらせる本郷。
 その様子が、なぜかミーにはおかしかった。

「じゃあ行こうよ、本郷さん。たまには任せて!」
「ああ、分かった」

 アスファルトを蹴って天井まで到達する1号。
 今度はコロニーの天井に蹴りを食らわせて、落下速度が加速する。

「ライダー反転ェェン!!」

 身体を回転させて、1号は足の裏を真下に向ける。
 その背後から伸びたケーブルがボディに纏わりつき、進行方向を微修正する。
 1号は落下しながら、寸分の狂いなくT-800の頭部だけを目掛けて落下していることを察した。

「「ダブルポイントキィィィーーーーーック!!!」」

 ぴったりとT-800の頭部だけが爆散する。
 技の名を叫ぶ渋い声には、子供のような声が被さっていた。
 着地して即座に再ジャンプ、再反転、再キック。
 合体したからこそ可能となった融合技の名が、何度も何度も唱和される……――――


 やっとのことで、未だ立っているターミネーターは残り一体となった。
 ミニガンの弾を切らしたT-850へと、ゆっくり猫の耳を生やした1号は歩み寄る。
 痺れを切らして、拳を掲げて駆け寄ってくるT-850。
 胸部に描かれた猫の口から伸びたケーブルが拳を逸らし、1号の手刀がT-850の首を繰り落とした。

「お前達は……何、者だ…………?」

 スカイネットは参加者の情報を所持していたはずなのに、このT-850を含むターミネーター達には相手が誰なのか分からなかった。
 いや、分からなくなったと言うべきか。
 警戒すべき参加者『仮面ライダー』における最低スペックの男に、全参加者から見れば決して強いとは言えない機械猫。
 その二体を相手にしていて、さらに戦闘の途中で仮面ライダーは変身不可能に陥ったはずだ。
 だというのに、変身した。
 それもデータにない青いボディであり、さらに『混成昆虫』でありはずなのにまるで『混成昆虫+猫』といった姿。
 ターミネーター達には、到底理解できなかった。
 それゆえの問いに、1号は迷わない。
 人類の敵に対して言うべき台詞は、決まっているのだから。

「仮面ライダー1号、本郷猛」

 答えた途端に仮面ライダー1号が光り輝き、元の旧1号と呼ぶべき姿に戻る。
 そして青い1号から分かれた小さな猫が、転がる頭蓋骨じみた機械を指差す。

「そして天才科学者ゴーくんが作り出した、子供にも超人気のミーくんだ! 覚えとけ!!」

 返ってきた答えは、やはりスカイネットの資料通り。
 そのことが逆にT-850を混乱させ、そのままカメラアイから光が消えた。

「あああああ、つーかーれーたー」

 昇り始めた太陽に水色のメタルボディを照らして、ミーが道端に寝転がる。
 道端と言ってもターミネーターの残骸の山なのだが、四桁に上るのではないかというくらい相手にすれば感覚も麻痺するだろう。

「では、俺はシャトルの目的地を弄るとしよう。少し休んでていい」

 風を受けねば変身できなくなったとはいえ、改造飛蝗人間の姿を保ち続ければ体力が持たない。
 当てもあるので人間の姿へと戻った本郷は、シャトル基地へと向かっていく。
 さすがに疲れたのか、ミーは横たわったままで本郷の後を点いていこうとはしない。

「本郷さん、終わったら呼――」

 言葉の途中から先を、ミーは言うことができなかった。
 シャトル基地へと向かう本郷の後ろで、ターミネーターの残骸が僅かに動いたのだ。
 鼓動が高鳴る感覚を抱きつつ、ミーは視線を外さず――見た。
 無数の骨組みから伸びる砲台を。

「本郷さん、危なァァアーーーい!!」

 言う前から、ミーの身体は動き出していた。
 サイボーグ猫だからこそ分かる程度に、ガスの臭気が漂っているのだ。
 悲しいことに、嗅ぎ慣れている危険物の臭い。
 爆発だとか、炎上だとか、その手の騒動の時を連想させる臭い。
 そこからミーが思い描いた砲台の正体は、ミーにとって不幸なことに正解であった。

 ――――火炎放射器。

 本郷の元まで行って伏せさせるのは、距離的に不可能。
 砲台の主自体には辿り付けるだろうが、最も取り出しやすいウィル・ナイフでさえ掴むまでのタイムラグがある。破壊できないのなら向かう意味がない。
 となれば、残された手段は一つだけだった。
 銃口と本郷の斜線上へと、ミーはその身体を滑り込ませた。

「ギニャぁあァあああアッァアアアアああ!!」
263参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:09:14 ID:tPnXWVL0
264参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:10:25 ID:tPnXWVL0

 ミーの呼びかけに本郷が振り向いた頃には、もうミーは炎に包まれていた。
 完全に姿を見せていない太陽よりも激しい光の中から、甲高い絶叫が響き渡る。
 やっと本郷は倒し損ないの存在に気付くも、変身を解除したことが仇となる。何せ瞬間変身ができないのだ。
 しかし悔やんでいる場合じゃない。変身できずとも人間を凌駕したパワーがある。
 秒にも満たぬ決断から、本郷が地を蹴ろうとした時だった。
 オレンジ色の業火の中から、小さなシルエットが飛び出す。
 真っ赤になるほどボディを熱せられたミーが、残骸から飛び出た砲台を引き抜く。
 その正体は、ミーが倒したと思い込んでいたT-Xだった。
 バスターの一点集中射撃とナイフの一撃で、その内部フレームは確かに粉砕された。
 脚部にまで亀裂が至ってくず折れたものの、それでも最も強固に作られた首から上の金属骨格は何とか無事なまま。
 そして内臓兵器もプラズマカノンと円鋸は砕かれたが、使用中でなかったためにメインフレームに付属していなかった火炎放射器は使用可能であった。

「俺をステーキにするにゃあ、火力と愛情がたりねえぞォォ!」

 真っ赤な身体で、ミーはT-Xの頭部へと抱きつく。
 金属骨格は熱に強いが、オーバーボディである液体金属は熱が天敵だ。
 溶鉱炉を思わせる音を立てて蒸発していき、頭部フレームが姿を現す。
 現れた鉛を視認したミーは、腹部から勇者王愛用のナイフを取り出て一閃する。
 液体金属に包まれている状態ならばともかく、フレームを露出した状態では斬撃は受け流しきれない。
 それでも並以上の切れ味じゃ傷一つ付かないが、ウィル・ナイフはゾンダーさえ細切れにする代物。
 耐え切れるはずもなく、T-Xの頭部は両断された。

「ぐぅ…………」

 乾いた音を立てて転がるT-Xの頭部を見届け、ミーは仰向けに倒れ臥す。
 半溶解まで至っていた身体は北風により瞬時に冷やされ、歪な形で固形化してしまった。
 ブルーに光沢があったメタルボディは、黒ずんでいる。

「ミー……なぜ……!」

 駆け寄ってきた本郷に尋ねられ、ミーはゆっくりと答えた。
266参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:13:14 ID:tPnXWVL0

「ちょっ……と理、解……でき、な、いかも……しれ、な、いけどさ…………
 雄猫……っには、お、す猫、の……ほ、こ……りってのが、ある、の……さ」

 現在の状態だけでなく、口元で固まった鉄屑が喋り難さに拍車をかけていた。

「何……度もた、すけて、もら……った、から……ね…………
 受け、た……借り、は……どう、し……ても返、す……の、がっ、雄……ね、こっ、の誇り……」

 ミーの口調が、弱まっていく。
 寝かせてはならないと、本郷が軽くミーを揺さぶる。

「ミー! さっき渡したPDAに、サブタンクという道具がある! 今すぐ――」
「……は、はっ……そ、れ……無理…………みた、い」

 金属の軋む音を立てて、ミーは腹部を指差す。
 PDAを収納したスペースは、一度解けた後に固まったために塞がれていた。
 ウィル・ナイフを取り出した際はまだ固まる前だったが、今では開くことすらできない。
 本郷が己の不甲斐なさから拳を握り締める。
 力の入れすぎで一度塞がった右掌の傷が開くが、そのことに気付きもしない。
 その様子から本郷が己を責めていることを察して、ミーはケーブルを伸ばして本郷へと付属させる。
 もう喋ることは難しいが、同化すれば思考を共有できるためだ。

 思うことは短い生涯に反してやたらと多いな、とやたら落ち着いてミーは思いを馳せる。
 作った料理を取っておいたのだから、機械の身体をくれた彼にも食べて欲しかった。
 この場で見た信じられない技術について覚えて帰るのは無理でも、何かしら持ち帰るくらいはしてあげたかった。
 せめて、もう一度だけでも話をしたかった。
 とは言っても、機能が停止するまで寸刻と行ったところ。
 だからこそ、ミーは伝えるべきことを一言だけ残した。
 サイボーグボディの創造主にして親友への思いは、胸にしまったままでいい。

「気にしないでよ、本郷さん。
 僕は……自分の為すべきことをしただけ、なんだからさ」

 ――自分の為すべきことをするんだ。

 かつて本郷がミーへと告げた言葉だった。
 そのことに気付いた本郷は立ち上がり、纏わり付く力を失ったケーブルを解いて、ミーを静かに横たわらせた。
 埋葬する暇もないが、彼が使用していたウィル・ナイフを残しておく。
 そして本郷はミーへと背を向け、シャトル基地に向かう。
 責任を感じていないのではない。死した者に興味がないのではない。
 ただ、現在の本郷には『自分の為すべきこと』があるのだ。
 だからミーに守られた本郷は、止まるワケにはいかなかった。



【ミー@サイボーグクロちゃん:死亡確認】
【残り参加者:8体】


 ◇ ◇ ◇
269参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:16:55 ID:tPnXWVL0


[05:52〜05:57――宇宙要塞内部 修理室]


 修理室内では、誰一人として口を開くものがいなかった。広がるのは作業音だけ。
 もくもくと器具を扱い、ソルティの修理に勤しむライト博士。その心は絶望に染まりかけている。
 雰囲気的に声を出してはならない、もはやそんな錯覚を抱いている武美。
 ライト博士の絶望に感づいているために、口を開こうとしないウフコック。
 分野こそ違えど、研究室に懐かしいものを感じて静かに目を輝かせるドラス。
 そもそも、気絶しているソルティ。

 五人それぞれの理由で黙りこくる室内で、久方ぶりに声が響くこととなった。

 作業用のメガネを外し、ライト博士は大きく息を吐く。
 ハンカチで汗を拭い、椅子に腰掛けた二人と一匹に向き直って一言。

「終わったよ、じきに目を覚ますじゃろう」

 ピリピリとした空気もあり、修理の経過が芳しくないのではないかと思っていた武美もまた、大きく安堵の息を吐いた。
 どうやらウフコックとドラスも同じだったようで、急に力が抜けたかのように四肢を伸ばした。
 そしてドラスが、この修理室に来て以来聞きたかったことを口にする。

「あのライトさん、質問いいですか?」
「何じゃね……?」
(ドラスくんと話す時は、何か普通ね)

 かつてを思い返してか、幼い姿のドラスにライト博士の声が柔らかくなる。
 そのことに気付きつつ、武美はわざわざ声にはしなかった。
 彼女感覚でこれ以上空気が悪くなるのは、ちょっと勘弁していただきたかったのだろう。
271参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:19:45 ID:tPnXWVL0

「あの……サイボーグやロボットを、作ったりしましたか?」
「…………っ」
(ぎゃーっ! 地雷踏んだー!)

 彼自身がロボットの製造者に対して大きな興味を持つゆえの、ドラスの質問。
 それを聴いた瞬間、ライト博士の表情が見る見る暗くなる。瞳から光が消える。
 そのことを悟った武美は、関わりたくないとばかりに俯いた。
 胸中で、「話を振られませんように」と神に祈りながら。

「ああ、ある……あるとも…………」
「そう、ですか……」
(そもそも、あたしってこういうの苦手なのになぁ)

 明らかに口篭るライト博士に、ドラスもこれ以上深入りしないよう決め込んだ。
 そして数分静寂が辺りを支配し――――なんとライト博士が、ぽつりと言葉を零した。

「質問、してもいいじゃろうか……?」

 白髪交じりの老人にそんなこと言われてしまえば、年少者が断れるはずがない。
 だいたい、ソルティを修理してもらった恩だってあるのだ。
 一拍置いて、ドラスと武美がゆっくりと構わないとの意を示した。

「君達の意見を知りたい……人間とロボットは共存できると思う、かね?」

 それこそが、ライト博士の脳内で木霊していた問いだった。
 ある種、ヒトという種族と機械に対する究極の問い。
 かつてのライト博士ならばすぐさま頷いていた問いに、現在の彼は答えられなかった。

(――なるほど)

 ライト博士の絶望の正体意気付いたウフコック。
273参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:20:27 ID:/wLAjZxh
274参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:21:12 ID:tPnXWVL0
275参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:22:19 ID:/wLAjZxh
 しかし彼には、ライト博士の絶望を消し去る回答を見出せなかった。
 絶望の度合いが分かるこそ。

「……それは――――」

 誰も発言しようとしないので、ドラスが動いた。
 とは言っても、ドラスはこの地で初めて愛というものに触れたのだ。
 できると言いたかったが、しかしこのバトルロワイアルの真実を知った後だ。
 説得力のある説明が思い付かず、半ばで詰まってしまう。
 その様子が、ライト博士にはとてもつらかった。
 ライト博士の作り出したレプリロイドに、ドラスが執拗に嬲られたことを知っているから。

「…………え?」

 氷河を思わせる空気を砕いたのは、気の入っていない武美の声だった。
 やたらと無口で、悩んでいる風な老人。
 その心を支配していたのが、こんな問いかけだったとは。
 正直、武美にとっては拍子抜けだった。
 そりゃあバトルロワイアルの真相を聞いて、武美だってふざけるなと思った。
 だが、だから何だと言うのだ。同じくらい気に入らないヤツらだって、別に知っている。
277参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:23:53 ID:/wLAjZxh
278参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:23:59 ID:tPnXWVL0

「えーと……いやいや。良い人となら仲良くできるでしょ、そりゃ。
 イヤな人間とはそりゃ共存なんて無理だろうけど、イヤなヤツなんてサイボーグにもいるじゃない。
 『良い人』『ヤな人』『良いサイボーグ』『ヤなサイボーグ』がいるのに、人とサイボーグで分けるってどうなの?
 だいたいイヤなヤツは人とかサイボーグとか関係なく争うし、本当に良い人はサイボーグ相手でもいろいろ構ってくるもの」

 良い人の話をする際に、茶色のコートとテンガロンハットが武美の脳内に浮かんだ。それだけで無条件に武美の表情が明るくなる。
 そして、またしても広がる静寂。
 敬語忘れてただの、とんちんかんなこと言ったかなだの、考える武美にライト博士が笑みを浮かべた。

「確かにそうじゃったな。良い人もいるし、君達みたいな良いサイボーグもいる。忘れておったよ」
「はあ……」

 これまで陰険なイメージを纏っていたライト博士が、急にかつての明るさを僅かながら取り戻した。
 呆気に取られる武美に、ウフコックが耳打ちする。

「よくやった、武美」
(んー? んんー?)

 ドラスからの尊敬の眼差しも、武美には意味が分からず困惑するのだった。
280参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:26:06 ID:tPnXWVL0


 ◇ ◇ ◇


[04:13〜04:20――宇宙要塞内部 通路]


 コンピュータルームを探すために各自でドアをぶち抜きつつ、メガトロンがコロンビーヌへと声をかける。
 話題は、先ほどT-800から知らされた情報だ。

「それにしても、あのハカイダーがもうやられてたとはな」
「せいせいするけれど、勝手に死なれたのは残念ね」

 この手で殺したかったと吐き捨てながらも、コロンビーヌは清清しい気分だった。
 愛を否定するどころか愚弄したハカイダーは、彼女にとって殺したい存在でしかなかった。
 室内に目を通して次の部屋へと向かいつつ、メガトロンが笑みを浮かべる。

「それにしてもコロンちゃん、あのフランシーヌが死んだのに無反応なんて酷いねェ〜〜」
「あら、どう反応すればいいのかしら? 強くて面倒な相手なら喜ぶけど、彼女じゃ反応のしようがないわよ」
「ははっ! いやァ〜、いいねえいいねえ」

 囃し立てるような口調のメガトロンの横で、コロンビーヌの表情は微かに曇っていた。
 同行するメガトロンとT-800に気付かれないレベルでだが、確かに。
 フランシーヌ人形とは『真夜中のサーカス』の団長であり、自動人形が忠誠を尽くすべき存在だ。
 その忠誠心は黄金律に刻まれた創り物であり、実際は自動人形にフランシーヌへと特別な思いなど原則として抱かない。

 ――――そう、あくまで原則として。

 例外は存在する。
 まずフランシーヌに出会い、そして彼女の魅力に心を奪われたもの。
 また実物を目にしなくとも、彼女をモデルにした絵画や像に惹かれたもの。
282参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:27:23 ID:tPnXWVL0
283参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:28:15 ID:/wLAjZxh
 最後に例外中の例外――――『最古の四人』。
 彼らは、自動人形の中でも特別だ。
 多数の自動人形に作られた自動人形とは、また別のルートで生み出された。
 とある人間に意思なき人形として、フランシーヌによって意思を獲得したのだ。
 その忠誠心は意思を与えてくれたことに対する感謝ゆえの物であり、紛い物ではない。
 つまりは、コロンビーヌの持つ忠誠心も本物ということだ。
 だというのに裏切った。否、だからこそ裏切れたのだ。
 創造の過程で刻まれた忠誠心ならば、振り払うことなどできない。
 レベルの低い自動人形の持つ忠誠心は弱いが、それは量産の中で粗が出来ただけの話。
 最古の四人はフランシーヌへ自らの意思で忠誠を誓ったからこそ、裏切ることも可能となる。
 しかし、コロンビーヌはその事実を否定する。
 才賀勝を誰より愛している自分は、他に特別な思いを抱くワケがない。
 行き過ぎた思いが、コロンビーヌに纏わりつく。
 ただ単に、フランシーヌへと恩と才賀勝へと愛を天秤にかけただけだというのに。
 自縛じみた思いは、その事実を受け入れようとしない。
 だがそれでも、彼女は納得しないだろうが、フランシーヌの死を知ってコロンビーヌの心は僅かに揺れた。
 既に平常心を取り戻しているし、才賀勝への愛がある以上は折れることはないだろうけれども。

「ところで、コロンちゃんにシュワちゃん」

 チェックした部屋が二十を越えた頃、急にメガトロンが尋ねかけた。巨体と強面に似合わぬ軽い口調だ。
 依然として、目当てのコンピュータルームは見つからない。
 広さも内部の詳細も不明なのだから、手当たり次第に扉を開けるしかない。
 派手なことは好きといっても、虱潰しなんて時間がかかりすぎる。ただでさえ追っ手がいつ来るかも分からないのに。
 そう思い始めていたからか、いち早くコロンビーヌが用を尋ねる。
 幾分もったいぶってから、メガトロンがやたら大げさな動作で切り出す。


「俺達の名前、どうする?」
「…………はあ?」

 予想外の言葉に、コロンビーヌが口をぽかんと開く。
285参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:28:56 ID:tPnXWVL0
 その様子を意に介さず、メガトロンは続ける。

「三人いれば、もう組織を名乗っていいと思うのよ。そうなりゃ、やっぱ名前って大事だと思うワケよ。
 呼びやすく覚えやすく、それでいて悪だと分かりやすくて、一度聞けばずっと耳に残るようなのが――」
「そんなの何でもいいわよ、何でも……」

 ゾナハ蟲で構成したドリルで次のドアを弾き飛ばしながら、コロンビーヌが呆れたように吐き捨てた。もはや視線をメガトロンに向けてすらいない。
 次いで別の部屋から出てきたT-800の方も、勝手にしろと返事。
 すると待ってましたとばかりに、メガトロンは大きく拍手を打つ。

「ようし! じゃあ、『大デストロン』で――」
「待ちなさい」

 目ぼしいものが置かれていない簡素な室内に目を通したコロンビーヌが、素早くメガトロンの前まで帰還した。
 じとりとした視線が、コロンビーヌのガラス球のような瞳から伸びる。

「その『デストロン』って、貴方がトップの組織でしょう? それじゃあ私達が部下みたいで、納得いかないわね」
「そんな邪推しないでさァ〜。名前だよ? たかだか名前のことだろ?」
「名前が大事って言ったのは貴方でしょう」
「ぐ……じゃあ、何かいい案あるの?
 コロンちゃん前に『真夜中のサーカス』がどうの言ってたけど、今のコロンちゃんがその名前使うワケにはいかないだろうし」
「そうねえ……」

 ちなみに少なくともT-800には意味がないと思われるこの議論は、コンピュータルーム探しと同時進行で繰り広げられている。
 扉をゾナハ蟲製の刃で切り裂きつつ、コロンビーヌは顎に手を置いて思考を巡らせる。
 いざ挙げてみろとなれば、なかなか出てこないものだ。

(マサルちゃんを大いに愛するためのコロンビーヌの……
 名前はともかく、これにメガちゃん達混ぜるのはちょっとイヤねぇ)

 何とか浮かんだ案を自ら却下したところで、メガトロンが口を開く。
287参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:30:24 ID:tPnXWVL0
288参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:30:41 ID:/wLAjZxh

「はい時間切れ〜。そんじゃ大デストロンで」
「ちょっ、早いわよ!」
「そっちが遅いんじゃないの。だいたい黙ってるってことは、別の名前が浮かばないんじゃないの?」

 図星である。
 痛いところを付かれて、コロンビーヌが言葉を詰まらせる。
 いくつかの部屋に目を通してから、思いついたように切り出す。

「でも、メガちゃんの案はおかしいわよ!」
「ほほう、言ってみてごらん」
「貴方の言ってたデストロンより少ない、三人組なのに『大』だなんて。見栄を張りたいのは分かるけれど――」

 コロンビーヌが言い終わる前に、メガトロンは言わんとする意味を理解した。
 そして大きく溜息を吐いて、両手でオーバーにやれやれといった動作をする。

「分かってないなァ〜、コロンちゃんは」
「……何なのよ、その反応」
「悪役が見栄を張らなくてどうするッ!!」
「――っ!」
「だいたいこれからコロニー落としなんてでっかいことやるのに、名前がでかくて何が悪い!!」
「…………そういうもの、かしら?」
「そーいうものなの! これが『小デストロン』や『中デストロン』じゃ情けないでしょ?」
「確かにねぇ……」
「だからコレでいいの! この話はお終い!」

 コロンビーヌが納得しきっていないのを分かってながら、メガトロンが強引に議論を終了させる。
 直後に曲がり角を通り、ターミネーターの集団と対面する。
 本当によかったのだろうか、とのコロンビーヌの思いは戦闘に掻き消された。
 メガトロンのドラゴンを模した左腕が、先陣を切って飛び掛ってきたT-888の頭部を握り締める。

「グッドタイミングだったぜ〜」

 耳元で囁いてから、メガトロンは左腕に力を篭めた。
 普段のメガトロンならば炎でターミネーター連中を一掃するだろうが、T-800から水素爆弾のことを聞いているので頭部だけを狙う。
 自他ともに認める派手好きでありながら、破壊大帝は堅実な面も併せ持っているのだ。

「ふむ」

 同機種や上位機種の脳天をピンポイントに狙撃しながら、奪い取ったミニガンの威力にT-800は頷く。
 『負け犬』の武装といえど、対参加者を見込んで用意しただけのことはある。
 残骸と成り果てたターミネーターを前に、T-800は冷静にそんな結論を下した。

「他のとこにもあの転送装置と同じ機械があったから、まあそれ使ったんだろうが……もう既にこいつらが来てるとなると面倒だぜェ?」
「同意する。その分、弾切れの心配はなさそうだがな」

 全く同じボディであることに感傷など抱かず、T-800は残骸の右腕からミニガンを捻り切る。
 使っていたミニガン二丁を放り投げ、新しく調達する。
 さらに予備として二丁分ほど頂いた弾丸の束を身体に巻き付かせていると、メガトロンが声を弾ませた。

「おうおうコロンちゃん、手間取ってる〜〜〜?」
「うるさいわねェ!」

 メガトロンの茶化すような口調に不愉快そうに返して、コロンビーヌが手刀で空を凪ぐ。
 空中に構成させてあったゾナハ蟲製の杭が、それを合図に刃状の右腕を持つ男達を貫いた。
 頭部に拳大の穴を空けられても男達は倒れることなく、前進を続ける。足を動かすごとに顔面の風穴は塞がっていく。
 バックステップで距離を稼いでから、コロンビーヌは悪態を吐く。

「何なのよ、これはぁ!」
「……T-1000か。会場では見なかったが、あのタイプも来ていたか」
「その話、詳しく」

 T-800によるT-1000の説明が終わりに近づくほど、メガトロンの表情に気色が浮かび上がる。
 打撃ではダメージの与えようがないが、高温や電撃には弱いという。
291参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:32:15 ID:tPnXWVL0
292参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:33:26 ID:tPnXWVL0
293参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:33:27 ID:/wLAjZxh
 コロンビーヌには絶望的に相性が悪いが、メガトロンにとってはあまりにも楽な相手だ。
 せっかくの機会だ。手を組んでおくのも悪くない。
 T-800の説明が終わるのを待って、メガトロンはコロンビーヌへと声をかけようと向き直った。

 ――――瞬間、床が消滅した。

「うおおおおおおおおおッ!?」

 突然の浮遊感に、メガトロンが思わず声を張り上げる。
 焦りながらも何とかビークルモードに変身して、出現した大きな羽を激しく上下させる。
 一気に天井寸前まで高度を上げてから真下を見て、メガトロンの背筋に氷塊が走った。
 熱せられて赤くなった金属が、シチューのように煮え滾っている。そう、溶鉱炉が出現したのだ。
 仮に落ちていればと考えて、メガトロンはさらにゾッとした。
 耐久できるかはともかく、少なくともメチャクチャ熱いのは明白である。リアクション芸とか言ってられるレベルじゃない。
 咄嗟の判断力で、飛行可能な形態になって助かった。
 そのようにメガトロンが胸を撫で下ろしていると、突如高音が響いた。
 音源の方を見下ろして、メガトロンの安堵は吹き飛んだ。
 赤い液体の中で、銀色の金属が蠢いている――考えるまでもなくT-1000である。
 それは構わない。どうせ倒すつもりだったのだから。
 だが、同盟を組んだ二体が問題だ。あのT-1000のようになっていやしないだろうか。
 さしものメガトロンも、それは困る。
 一人で相手をするには敵が多すぎる。分の悪い賭けは嫌いじゃないが、ベットするのが命ならば話は別だ。

(ヤッベー、めんどくせーことになったー、どーすっかなー、もしかしてアドリブ力試される?)

 巨大な真紅の西洋龍の姿に反して、やたらとコミカルな動きで熟考するメガトロン。
 声をかけられるが、耳に入らない。真面目に考えているためなのだが、声の主にしてみれば知ったことではない。
 三度の呼びかけの後に無視していると判断して、声の主は金属製のハンマーをメガトロンの背中へと叩き付けた。

「がっ!? こ、この衝撃は!」
「死ぬかと思ったわよ……!」
295参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:35:25 ID:/wLAjZxh
296参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:35:59 ID:tPnXWVL0

 首を回したメガトロンの視界に入ったのは、グラーフアイゼンを構えたコロンビーヌ。
 そして彼女を抱えている、六つの球体が付属したマントを纏ったT-800だった。
 マントの正体は、開天珠という名の宝貝。
 付属したテニスボール大の爆弾を武器とするのはもちろん、推進力として飛行することも可能とする。
 T-800は足場が消失した直後に、開天珠を転送。初めての使用であったが、説明に目を通していたこともあり上手く行った。
 その飛行能力を使って、ゾナハ蟲で作ったパラシュートを装着していたコロンビーヌを抱えて上昇したのだ。
 自らを抱える逞しい両腕から、コロンビーヌはメガトロンの背へと飛び移る。

「なーんで、自分だけ安全なとこでボーッとしてるのよ!」
「ぐおっ! ちょっとちょっと、ツッコミとかの度越えてマジで痛いって!」
「そりゃそうでしょう……ね!」
「だいたい自分が死ぬかもしれないのに、わざわざ助けるような関係じゃ――ガッ!」
「そんなの分かってるから、ちゃんと余裕持って助けられるくらい減速させてたわよ! それを気付きもしないんだから、まったく!」

 そんな会話と鈍い音が何度も続いてから、何事もなかったかのように静けさが辺りを支配する。
 静寂を押しやるのは、金属の身体にタンコブを幾つも作ったメガトロンの問い。

「ところでコロンちゃんにシュワちゃんよ、いきなりのこのトラップ……どう思う?」
「そりゃあねえ」
「要塞内の仕掛けを発動させられるのは、主催側の者達だろう」
「オーケイ、どうやら殴られすぎで俺様の頭がイカレたワケじゃあなさそうだ」

 軽い口調とは裏腹に、メガトロンの表情は珍しく真剣だった。

「前の方を見りゃ分かるんだが、床がこうなっちまってる廊下と違う廊下がある。
 シュワちゃんの話だと、ターミネーター達に飛行能力はないらしい。
 ってことは、だ。俺様達が飛べることは分かってるだろうし……一部のトラップを発動させることで、俺様達用の道を作っているとは思えないか?」
「そうだとしたら、どうなのよ」
「つまり、シグマが俺様達を誘い込んでいる」

 メガトロンの言い切るような口調に、反応は返ってこない。
 その無言を呆れからのものではないと判断し、メガトロンは続ける。

「またシュワちゃんの話になるが、シグマは自分が正義の味方どもに殺されることを望んでいるらしい」
「その邪魔となる俺達を先に呼び込んで排除する、とういうことか」
「イエスイエス。さすがシュワちゃん、ハリウッドだけあって説明が楽で助かるぜ」

 意味の分からない単語をスラングと判断し、T-800は聞き流す。

「それで、この道を辿るのか?」
「あたぼうよ」
「先に何があるのかは、分からないわよ?」
「適当に動き回るより道筋がある方が楽だし、頭ばかりちまちま潰さなきゃならないヤツらもいないからな。
 まああとシグマを倒すんなら、どうせなら正義の味方達が来る前のが楽だ。それに――」

 メガトロンの口元が、三日月状に歪む。
 いつものふざけた要素が消え去った、冷えた笑い。

「この俺様をわざわざ呼び出すなんて嘗めきったアイツは、叩きのめしてやらなきゃなァ〜〜」
「……ふぅん、言われてみれば頭に来るわねェ」
「会場に残った参加者が来る前に叩けるのならば、それこそ好都合だ」
「おおうシュワちゃん、分かってるね!」

 急に普段の態度に戻ったメガトロンの上で、コロンビーヌは頭を絞る。
 行かないと言っても、足場のある所まで連れて行ってくれるだろう。
 しかし――――

「シグマのいる場所には、願いを叶える道具があるかもしれないわね。いいわ、私も行くわよ」
「ははっ! さっすがコロンちゃん、信じてたぜー!」

 コロンビーヌを乗せたメガトロンが羽ばたき、勢いよく前進する。
 それに続いて、T-800が開天珠の飛行能力を発動させる。
 煮え滾る真紅の上空をある程度進んでから、メガトロンは躊躇いがちに漏らした。
299参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:38:21 ID:tPnXWVL0

「…………自分の意思で決めたことだし、普通に罠でも怒らないでね」


 ◇ ◇ ◇


[04:20〜04:22――宇宙要塞中心部 管理室]


「やはり来るか、それでいい」

 大デストロンを名乗った三体が映るモニターから視線を上げて、シグマは玉座から腰を上げる。
 シグマの目的は、メガトロンの予想とほぼ違いはない。
 強いて言うのなら、予想させるところまでが計画通り。

 シグマ自身には、目の前に現れた参加者以外の相手をする気はなかった。
 しかし、手を出さねばならないだけの事情が生まれた。
 メガトロン達が、コロニーを落とすと計画したことである。
 メインコンピュータはシグマのいる管理室にあるとはいえ、要塞内にサブが幾つかある。
 それが見つかれば、会場に残っている参加者は一巻の終わり。
 だからこそ、シグマは起動させるつもりのなかったトラップのスイッチを入れた。
 自分のいる管理室付近の廊下とメガトロン達の現在地を繋ぐように、床を展開したのだ。

「…………念のため、だ」

 正義を志す者に倒されるまで、シグマに敗北する気はない。
 スカイネットによる補助が必要だったので第二形態にはなれないが、異世界の技術により元スペックの底上げが為されている。
 それでも、最悪の可能性を考える必要がある。
 管理室に設置された転送装置の前に、シグマは歩みを進める。
 転送先は極めて近くなので、設定にさして時間はかからなかった。
 次にシグマは玉座へと向かい、そして……――――
301参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:39:11 ID:tPnXWVL0

「向かうとするか」

 やるべきことを追え、シグマは歩みを進める。
 目的地は、今いる管理室の隣にある決闘場。
 宇宙要塞へと乗り込んできた風見志郎を移動させ、死闘を繰り広げた場所である。


 ◇ ◇ ◇


[04:45〜04:50――宇宙要塞中心部 決闘場]


 金属製の扉の前で大デストロンの三人が、声ではなく手の動作でコンタクトを取る。
 ここまで来た途端に、床が展開されて溶鉱炉を覆った。
 タイミングのよさが、シグマの監視を証明している。
 つまり前触れなく襲い掛かったつもりでも、驚きは少ないだろうということ。
 だからこそ彼らは、来ると分かっていても驚くほど派手な始まりを選ぶ。

 ロボット形態のメガトロンが、一際大きな動作で腕を振るう――――開戦の合図。

 コロンビーヌが構成したゾナハ蟲製のドリルが、扉をぶち抜いても勢いを緩めずに直進する。
 一気に壁まで到達したのだろう、何かを穿つような破砕音が響く。
 凶器を構成していた羽蟲が霧散し、銀色のもやとなる。初撃は、奇襲にして目潰しであったのだ。
 完全にゾナハ蟲が散らばるより前に、T-800が開天珠の飛行能力で勢いよく入室する。
 部屋の中心部にて、六つの球体を四方に飛ばして起爆させる。
 立ち込める白煙の中、T-800は開天珠に玉が戻るのを待つ。
 その視界に、薄緑色をした棒状の物体が入った。
 温度を読み取れるT-800のカメラアイが、その棒の内包する高エネルギーを察知する。
 振り下ろされた緑色棒を、上体を反らして回避するT-800。
 軽く触れた毛髪が焼き切られたことから、棒から剣へと相手の得物への認識を改める。
303参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:40:48 ID:tPnXWVL0
304参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:41:05 ID:/wLAjZxh
 T-800が充填の終わった開天珠から、襲撃者へと六つの白い爆弾を飛ばす。

「――ふん!」

 床上一メートルほどの高さで、緑色の剣が三百六十度振り回される。
 風圧だけで玉の軌道がずらされ、あらぬ方向で起爆した。
 あまりの風量に白煙さえも吹き飛ばされ、剣の主の姿が少しずつ露になっていく。

 二メートルを越す体躯、上半身を覆う緑のプロテクター、毛のない頭、額に赤石、強面な顔、両目元刻まれた二つの傷――――主催者・シグマがそこにいた。

 開天珠の回復が間に合わず、T-800はシグマへとミニガンを向ける。
 銃口が火を吹くより早く、シグマが床を蹴った。
 たった一度力を入れただけでT-800へと肉薄し、Σブレードを一閃しようとして急遽蹴りに変更する。
 シグマは吹き飛ぶT-800から視線を外し、感じた殺気の方へと向ける。

「遅いな」

 迫ってきていたメガトロンを確認した頃には、シグマの腹部に突き刺さっていた。
 万物を悉く解体する分解ドライバーが。

「チェーック!」

 分解ドライバーをシグマに押し当ててせせら笑うメガトロンの前で、シグマは――

「甘いな」

 彼もまたせせら笑い、腰に力を篭めた低空タックル。
 あえて衝撃を受けた方向に体重を移動させることで、メガトロンは距離を取る。
 メガトロンが手放してしまった分解ドライバーを、シグマは踏み潰した。

(ヤツらのおかげではあるが、とても感謝できんな)

 シグマに分解ドライバーが効かないのは、未来人の意向である。
 宇宙要塞に至った参加者が分解ドライバーを所持している可能性は、決して低くない。
 そんなアイテムで主催者との決着がすぐに付いてしまえば、視聴者は興醒めだ。
 ゆえに分解ドライバーには、シグマに効かないよう改造が施された。

(やっぱ効かねえか。アレで倒せたら爆笑してやったんだが、しょうがない)

 メガトロンの方も、倒せたら幸運くらいの気持ちで使ってみただけ。
 分解ドライバーが効かなかったパターンも、きちんと考えてある。

 すっかり視界が良好になった決闘場に、無数のゾナハ蟲で作られた刃が飛び込んでくる。
 シグマに残された逃げ場は、ただ上方のみ。
 メガトロンがドラゴンを模した左腕を、T-800が二丁のミニガンの銃口を、シグマ真上へと向ける。
 何もかも、事前に組んだ計画通り。

「跳ぶしかない、とでも思ったか?」

 メガトロンの見開かれた目の前で、シグマの額い埋め込まれた赤石から光線が射出された。
 ゾナハ蟲は衝撃によって形を保てなくなり、大気中に飛散してしまう。

「何をしている。来ないのならば、こちらから行かせてもらおう」
「なッ!?」

 シグマの足元が弾け、次の瞬間にはメガトロンの眼前へと辿り着いていた。
 Σブレードが振り下ろされたが、すんでの所でメガトロンが左腕で柄の部分を押さえた。
 一対一ならばシグマは柄競り合いを挑んだだろうが、生憎と敵は他にもいる。
 すぐにΣブレードを戻してからの横っ飛び。その直後、ミニガンの弾丸とゾナハ蟲のナイフがシグマのいた空間を貫いた。
 メガトロンが左手を向けてくるのを音で理解しながら、シグマはT-800へと斬りかかる。
 二丁のミニガンを手放し、T-800が握り締めるのはグランドリオンという名の西洋剣。
 Σブレードに対抗できる武器として、転送させておいたのだ。
 獅子王凱がT-800に見せたグランドリオンの強靭さは、凄まじいものであったのだが――――
307参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:43:16 ID:tPnXWVL0
308参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:43:36 ID:/wLAjZxh

「折れただと?」

 振るわれたΣブレードを受けるも、そのままグランドリオンは両断された。
 使い手の精神に影響されるグランドリオンの強度は、金色の勇者王が扱っていた時とは天と地の差であったのだ。
 スバルに渡した弾丸が仕込まれたナックルは、既に再転送して装着済み。爆ぜる右ストレートを繰り出そうとするが、遅い。
 僅かに剣筋を逸らされながらも、それでもΣブレードはT-800の上半身に真一文字の傷をつけた。
 倒れこんだT-800へと追撃せずにシグマは跳躍して、飛来していたコロンビーヌが操る刃を回避する。
 着地前を狙ってメガトロンの左腕が炎を吐き出すが、シグマが額から射出したビームが相殺した。

「しとめ損ねたか」

 床に足をつけたシグマが、T-800の方へと視線を向けて一人ごちる。
 立ち上がったT-800は分断されたグランドリオンを捨て、転送した電磁ナイフをライダースーツの腰部へと装着していた。
 Σブレードの刀身は生体パーツを刻んだが、金属骨格には至らなかったのだろう。
 空中を旋回して迫る開天珠の玉をことごとく弾いて、シグマはコロンビーヌへと襲い掛かった。


 ◇ ◇ ◇


[05:03〜05:11――宇宙要塞中心部 決闘場]


 終始シグマが優勢でありながら、不思議なことに戦いは硬直状態となっている。
 その理由は、相手全員が何かしらの遠距離攻撃を所持していること。
 ある一体に飛び掛れば別の二体が遠攻撃を放ってくるので、接近したところですぐに距離を取らねばならないのだ。
 それゆえ、開始時から特に変わらない戦況。
 変わったことといえば、疲労が割に合わないと判断したT-800が開天珠を脱ぎ捨てたくらいか。
 攻撃する時の消耗は仕方がないにしても、纏っているだけで全速疾走しているかのように体力を奪われるのだ。

「おォォ!」

 唸り声を上げて、シグマがグラマラスな女性の姿をした機械を真っ二つにする。
 参加者である草薙素子のスペア義体であり、メガトロンが目晦ましとして投げつけた物だ。
 義体の破壊により動きが止まったシグマに、メガトロンはドラゴンの頭部型の左腕から冷気を撃ち出した。
 シグマが額から光線を撃ち出して冷気を無効化するが、横合いからミニガンとゾナハ蟲のドリルが接近する。
 すぐさまジャンプするが回避しきれずに、シグマの肉体に傷が作られた。

(やはり、か)

 最初にメガトロンを破壊するのは、他の二体よりも厄介だ。
 三者から距離を取って、シグマは抱いていた考えを確信に変える。
 メガトロンは他の二体とは異なり、自分以外へと攻撃しているシグマを狙うことができない。
 炎に冷気。両方とも範囲が広く、同盟相手まで巻き込んでしまうためだ。
 だからシグマが肉薄していた相手から離れるのを待って、攻撃してくるのだろう。
 となれば、とシグマは攻撃パターンを変えることにする。
 ひとまずコロンビーヌとT-800にばかり、ひたすら攻撃をしかける。
 片方が体勢を崩すのを待ち、残った方へ斬りかかる。
 メガトロンは攻撃できないのだから、前者が体勢を立て直さねば後者を破壊するだけの時間が生まれるだろう。

 ――――この判断が、硬直しかけていた戦局を大きく動かすことになる。

 T-800とコロンビーヌの順で何度もシグマが攻撃を続け、ついにT-800を壁に叩きつけることに成功した。
 大きなダメージはないだろうが、体勢を立て直すには時間がかかるのは明白。
 今のうちにコロンビーヌを破壊するべく、シグマが地を蹴った。
 前進しているシグマの額が輝き、ゾナハ蟲製の帽子型防壁を容易く霧散させる。

「きゃっ!」

 グラーフアイゼンでΣブレードに競り合うも押し負け、コロンビーヌは得物を弾かれる。
 作り出しておいた銀蟲のナイフを動かそうとするが、その前にがら空きとなったボディに膝蹴りが入った。
 うずくまるコロンビーヌに緑色の刃を振り下ろそうとして、シグマは違和感を抱いた。
 決闘場は無風であるはずなのに、大気の流れを感じるのだ。
311参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:45:56 ID:/wLAjZxh
312参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:46:26 ID:tPnXWVL0
 その流れの根源は――首を背後へ向け、シグマはすかさず地を蹴った。

「遅かったなぁぁあああ!」

 赤い飛龍の姿となったメガトロンが、シグマに喰らいつきながら空中を翔る。
 いつシグマが仕掛けてくるのか分からず、これまではなかなかドラゴンの姿になれなかった。トランスフォームには多少の隙がある。
 しかしコロンビーヌとT-800ばかり攻撃しているのに気付き、メガトロンは変形を遂げた。

「そら!」

 縦横無尽に決闘場内を駆け巡り加速しきってから、メガトロンは壁へと突っ込む。
 この衝撃により、シグマは変わり果てた姿になるだろう。
 口元から聞こえる搾り出すような声により、メガトロンはその考えを捨てる。

「ぬぅぅ…………!」
「何ぃ!?」

 メガトロンの牙はΣブレードに受け止められ、シグマに食い込んでいなかった。
 それどころか、少しずつシグマによって押し戻されかけている。
 加速している最中ならともかく、壁に突っ込んで停止すれば力ずくで弾くのも可能だろう。
 メガトロンはシグマのパワーを冷静に見極め、その上で退く気はない。

「これならどうかなァ?」

 日本刀のような鋭さを誇るメガトロンの牙が、青白くスパークして電撃を纏う。
 刺さっていなくとも、シグマは牙に触れてしまっている。
 電気エネルギーがΣブレードを伝わり、シグマへと襲い掛かる。
 だが、シグマは未来人により更なる改造を施された。
 彼のボディは見た目こそかつてと同じだが、電気を無効化させる素材になっている。
 警戒すらせずにΣブレードに力を篭めようとして、シグマは身体を痙攣させた。

「ぐうぉおおおおおお!?」
314参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:51:04 ID:tPnXWVL0

 目の前に火花が散る錯覚を起こしながら、シグマは身悶えする。
 電気耐性のテストも受けたというのに、ありえないはずの事態であった。
 全身に満ちる虚脱感の中で、シグマはその理由を悟った。
 風見志郎からV3キックを受けた際に、左肩に亀裂が走っていた。
 そこから流れ込めば、電気を通す内部パーツへと届くだろう。

(正義につけられた傷を残した結果が、これか……皮肉にもならんな)

 シグマから抵抗する力が抜け切ったのを読み取り、メガトロンは思い切り壁へと突っ込んだ。
 未知の物質でできた壁にひびが入り、シグマが埋め込まれていく。
 頃合を見計らい、メガトロンが顎から力を抜いた。
 数分待って動かないのを確認して、メガトロンは地上へと降りたとうとする。

「やーれやれ。ちょいと疲れたが、俺様にかかりゃこんなもんよ」

 軽口を叩くメガトロンに、コロンビーヌが賞賛の声をかけようとして叫んだ。
 同時に、ゾナハ蟲でできた銀のナイフを飛ばす。

「メガちゃん、危ない!」

 億劫そうに振り返ったメガトロンが、目を見開く。
 瞳が映し出したのは、電撃に内部を焼かれ身体から黒煙を出すシグマ。
 握ったΣブレードは確かに刀身が消失していたのに、再び緑色のエネルギー刃が展開してある。

「マジ!?」

 メガトロンは勢いよく羽を動かして、首を狙う一撃を回避した。
 落下していくシグマに、銀のナイフが突き刺さる。
 これまでは掠る程度だったが、今回は確実に貫いた。
 T-800に抱えられたミニガンが激しく火を吹き、これまた完全にボディを削り取る。
316参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:51:18 ID:/wLAjZxh
317参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:53:16 ID:/wLAjZxh

「がぁ……っ」

 シグマのボディは内部から焼かれたことで幾分脆くなり、感覚を司る内部パーツも影響を受けている。
 被弾のダメージだけでなく、着地の衝撃でもシグマの眼前がホワイトアウト。
 何とか意識を繋ぎ止めようとするシグマに、メガトロンが吐き出した炎が襲い掛かる。

「使わないなら借りるわよ?」
「俺には使いこなせん。返却する」
「あらそう」

 転がっていた開天珠を纏い、コロンビーヌが指を鳴らす。
 それに呼応して、六つの白い爆弾が炎に包まれるシグマへと飛び込む。

「確かに、結構つらいわね……」

 体力を吸い取られるような感覚に、コロンビーヌは表情を曇らせる。
 直後、激しい爆音。
 電撃により僅かに焦げていたシグマは、完全に全身を黒く染めて壁へと叩きつけられた。
 もはや面影の残っていない黒い人型の何かと成り果て、微動だにしなかった。
 降りてきたメガトロンがロボットモードに戻り、支給された水を三者全員が持ってるだけ回収する。
 もう動けやしないと思うが、念には念を入れてだ。
 全ての水を浴びせて、メガトロンは左腕を向ける。

「思ってたより強かったぜ。あれで生きてたのは驚いた」

 吐き出された冷気により、シグマを埋め込んだ氷像が出来上がった。

「あそこまでする必要あるかしら」
「まあ一応ね、一応」
「あの扉は……」
「むむ? いま気付いたけど気になるね、ありゃ。さすがシュワちゃん」
319参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:54:47 ID:tPnXWVL0
320参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:55:23 ID:/wLAjZxh
「カードキーを入れる箇所があるな」
「あんなんじゃ、持ったとしても丸焦げだわ。でも明らかにこの部屋は特別みたいね」
「『押してダメで引いてもダメなら壊してみろ』って、諺がだな……」
「データにはないが」
「ま、ンなこと置いといてっと。コロンちゃん、軍事基地ん時みたくよろしくー」
「はいはい」

 内部に電撃を喰らい、背に激しい衝撃を受け、刃と弾丸に貫かれ、業火に身を焼かれ、地形をも歪める爆発に見舞われ、全身を氷付けにされた。
 常人どころか並のサイボーグでも、その一つ一つが致命傷なほどの攻撃。
 それらを全て身に受け、シグマの身体は変わり果てた姿となった。
 全身余すところなく亀裂が刻み込まれ、素材も煤のように変質。
 さらに、右腕は開天珠に弾き飛ばされてしまっている。

 ――――それでも、シグマは意識を落としていなかった。

 未来人による改造の賜物ではなく、単なる意地だ。
 自分で呼んだというのに倒せず、このままではメインコンピュータがある管理室に向かわれる。
 それだけは避けねばならないとの思いが、彼の中にしがみ付いていた。
 だが温度まで奪われている現状、そんな意地もあと数分で保てなくなるだろう。
 脳内に浮かぶ参加者達のビジョンに謝罪して、シグマも諦めかけていた。

「やっぱ惚れ惚れするねえ、コロンちゃんのそれは」
「ふふっ、褒めても何も出ないわよ。って、何よこれ?」
「鎧みてえだな。マネキンに着せるか、ふつー?」
「む、それは……」
「知っているのか、メガちゃん!?」
「これに似た物が支給されていた。確かガイアアーマーという名だったな」


 氷の中で、シグマが双眸を見開いた。
 真っ黒な塊に、二つのエネラルドグリーンの光が浮かび上がる。
322参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:57:03 ID:/wLAjZxh

「着込めば戦闘力が上昇して、特殊な攻撃も出来るようになるらしい」
「へぇ〜、正義の味方に倒されたいからって用意したのかね」
「だろうな。向こうにあるのは、俺が持っている『サブタンク』と同一の物だ」
「どういうものなのかしら?」
「説明書によれば、全ての傷が消えて体力が回復する」
「ラスボスの前に全回復とか、今時のゲームかよ。これでセーブポイントもあれば――」
「私、ときどきメガちゃんが何言ってるのか分からなくなるわ」
「まあこんなこと話してないで……コロンちゃん、これ着る? 俺様とシュワちゃんは、そもそも着れなそうだけど」
「見た目がねえ……まあ一応、持っておきましょうか」
「オッケー。コロンちゃんの華麗な扉解体のお礼に、破壊大帝メガトロンがパンチで覆ってるガラスを割ってあげよう」
「破片が鎧の中に入ったりしたら怒るわよ」
「任せときなって」

 ガラスが割れる音に、何かが砕ける音が重なる。
 開け放しの扉へと、氷を破壊したシグマが声を張り上げる。

「貴様らが、それに触れるなァァーーーッ!!」

 それを使っていいのは、お前達じゃない。
 そういう意味を内包した絶叫が大気を震わせ、三体が部屋を飛び出した。
 メガトロンの姿を見て、シグマは胸中で笑みを浮かべる。
 あまりに驚いたために持ってきてしまったマネキンを床に転がし、メガトロンは口を開く。

「まァ〜だ、生きてやがったか」

 黒ずんだ人型の化したシグマは答えない。本来、喋る体力すらないのだ。
 残った左腕に握ったΣブレードを、ただ無言で展開させる。
 対する三体も、無言で武器を向ける。
 先に仕掛けてたのは、メガトロン達だ。
324参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:58:20 ID:/wLAjZxh
325参加するカモさん:2009/09/03(木) 03:58:28 ID:tPnXWVL0
 二丁のミニガンの釣瓶打ちに、ゾナハ蟲を集わせたナイフが入り混じる。
 シグマの額から光線が放たれるが、迫る弾丸と刃を掻き消すことはできなかった。
 半ばで光線が消え去る――――しかしシグマの魂の篝火には、消え去る素振りすらない。
 ボディに空けられる風穴を意に介さず、シグマは思い切り地を蹴った。
 上空でΣブレードを振りかざすシグマの先には、メガトロン。

「俺様狙いってワケか!」

 ドラゴンの頭部を模した左腕から、メガトロンが炎を撃ち出す。
 完全に炭化したボディが散らばって宙を舞うものの、シグマは止まらない。
 そして、シグマは標的へとΣブレードを振り下ろす。
 最初の一振りで頭頂部から縦に両断し、釣り上げるような返しの二閃目で左脛と左前腕を、最後に落下の勢いそのままに右前腕と右脛を刎ねた。

「…………どういうことだ?」

 尋ねるメガトロン。
 着地すらままならずに倒れ臥したシグマが、くっくという笑いを響かせる。
 彼の眼前には、自らが切り刻んだ存在があった。

 ――――アルティメットアーマーごと六つに解体されたマネキンが。

 シグマの行動の意味を理解できず、メガトロンは苛立ちを募らせる。
 一向に返事をしてくる気配がないので、メガトロンがマネキンごとシグマを蹴り飛ばす。
 壁に叩きつけられたシグマから、炭化した身体の中でやけに輝いていた瞳の緑色が消えた。



【シグマ@ロックマンXシリーズ:破壊確認】
327参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:00:38 ID:/wLAjZxh


 ◇ ◇ ◇


[06:00――宇宙要塞内部 管理室]


「ははっ! 見てみろよ、シュワちゃん。こいつらメチャクチャ焦ってやんの」

 放送を終えたメガトロンが、モニターを指差して高笑いする。
 一時間ほど前は虫の居所が悪そうだったが、この部屋内を物色して少しずつ上機嫌になっていった。
 会場内の録画映像などは目を通してもいないのに、必ず持ち帰ると言い張っている。
 参加者が死んでいく様を見てみたいらしい。
 モニターから視線を外そうとしないメガトロンに、声帯模写技術を駆使して二役を演じたT-800が問いかける。

「二体ほど来るのだろう。準備しないでいいのか?」
「やることないしな〜。シュワちゃんもでしょ?」
「まあな」

 コロンビーヌから貰った補給装置で、メガトロンは既に燃料を満タンにしてある。T-800の方も同様だ。
 置かれていたサブタンクを使ったため、傷跡は残っているがダメージや疲労も回復済み。
 ちなみに元々あったのは三つだったため、もう残りはない。

「確認のためにもう一度聞くが、こうしてクリックした後にエンターキーを押せばいいんだな?」
「そうそう。俺が合図したらね」

 T-800が操作するコンピュータの方に首を廻して、メガトロンは頷く。
 そのモニターに映し出されている内容こそが、コロニーを落とすという計画をやめて大デストロンが要塞内にい続ける理由だ。
 管理室に向かってきているのは二人だし、こちらは万全の状態。
 無謀な賭けではない以上、メガトロンは楽しめる方を選ぶ。
 あえてトラップも起動させずに、ゼロとイーグリードの到着を待つ。

 T-800が操作するコンピュータの方に首を廻して、メガトロンは頷く。
 そのモニターに映し出されている内容こそが、コロニーを落とすという計画をやめて大デストロンが要塞内にい続ける理由だ。
 管理室に向かってきているのは二人だし、こちらは万全の状態。
 無謀な賭けではない以上、メガトロンは楽しめる方を選ぶ。
 あえてトラップも起動させずに、ゼロとイーグリードの到着を待つ。

「おっ、コロンちゃんが動いた」

 そう言ってメガトロンが眺め始めたモニターは、爆炎により赤で埋め尽くされていた。


 ◇ ◇ ◇


[06:00〜06:05――宇宙要塞内部 修理室]


 突如PDAのスピーカーが発した音声が、再び修理室内の空気を凍らせた。
 会話はないが、全員が案じるのはゼロとイーグリードのこと。
 放送が行われるとなれば、要塞の中枢とも言えるような部屋だろう。
 となれば、シグマがいる場所へ向かった二人は危険かもしれない。
 ゼロとイーグリードが向かう部屋が、必ずしも大デストロンがいる部屋とは限らない。
 でも、もしかしたら――――
 消えない不安が、修理室内に蔓延っていく。
 ドラスは出来ることならば、今すぐウフコックの嗅覚を頼りに二人を追いかけたかった。
 けれどもそんなことをすれば、修理室を守る者がいなくなる。
 自分を押さえつけるため、ドラスがゴシックロリータのスカートを握り締めた時だった。

 銀色のドリルが、ロックをかけてある扉を貫いた。

「ごめんっ!」
330参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:03:44 ID:tPnXWVL0
331参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:03:51 ID:/wLAjZxh

 自分よりドア付近にいた武美とウフコックを突き飛ばして、ドラスは防護障壁を展開する。
 だがコロンビーヌが普段飛ばすものより二回りほど巨大なドリルは、その程度で止まらない。
 僅かな拮抗の後、防護障壁あ音を立てて砕け散る。
 しかしその僅かな時間で、ドラスは真紅の怪人態となっている。
 ドラスの左肩から射出されたマリキュレーザーを受け、ゾナハ蟲は四散した。

「え?」

 まだ射出している途中で、ドラスが怪訝な声をあげる。
 まるでマリキュレーザーを掻い潜るように、旋回する白い玉が破られた扉から進入してきたのだ。
 次に入ってきた玉が光線に触れて爆ぜたのを見て、ドラスが声を張り上げる。

「気をつけて! 爆弾だ!!」

 連射できないマリキュレーザーをちょうど撃ち終え、魔法弾は射出するための魔方陣は展開する時間がない。
 八方塞のドラスを嘲笑うように、さらに四つの白い爆弾が飛び込んできた。

「二人とも、出来るだけソルティにくっついてくれ!」

 武美とライト博士が、ウフコックの言葉に従う。
 ウフコックは背後を確認せずに、身体を変身【ターン】させる。
 が、守られる武美とライト博士には気付いてしまった。
 とても殻に三人は入りきらないことに。
 何とか密着しようとする武美を、ライト博士は軽く小突いた。
 こんな時に何を――言おうとして、振り向いた武美は言葉を失った。
 ライト博士は微笑を浮かべて、殻から離れた位置に立っていた。

「え…………?」

 目を白黒させた武美の声は、爆音に掻き消された。
333参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:04:48 ID:/wLAjZxh

「〜〜〜〜〜♪」

 立ち上った白煙が消えるのを待って、コロンビーヌが鼻歌を鳴らしながら入室する。
 瓦礫に埋もれてぐったりとしている老人の姿を見て、自分が愛のために人間を殺せることを再認識して喜んだ。

「あなた、不思議なことができるのね」

 身体を傾斜に変身【ターン】させて積もった瓦礫を落としたウフコックに、コロンビーヌは声をかける。
 両手にゾナハ蟲製の刃を装着したその姿に、武美は冷え切ったものを感じた。
 ウフコックが再び殻に変身【ターン】する。
 殻ごと武美を両断しようとして、コロンビーヌの耳が背後で物音を捉えた。
 コロンビーヌは首を捻るよりも先に、瓦礫から飛び出したドラスに室外へと投げ飛ばされてしまう。

「アイツを倒したら戻るから待ってて!」

 背を向けながら告げて、ドラスは尻餅をついているコロンビーヌをさらに放り投げる。
 武美やウフコックに被害が及ばないように、まずは遠ざけようというのだろう。
 ドラスとコロンビーヌがいなくなり、はっとしたように武美は横たわるライト博士の下に駆け寄った。
 首から上に外傷はないが、胸から下を覆う瓦礫は赤い液体に塗れていた。
 瓦礫に埋もれていない両腕の片方も、通常曲がってはいけない方向にひしゃげている。

「ライトさん、どうしてっ!」
「もう……誰、かが傷、つく……姿は見た、くなか……った……だ、けじゃよ…………」
「そんなっ! 助けてもらっても、私は――」

 すぐに死んでしまう。
 そう言おうとした武美の口を、奇跡的に折れていないライト博士の右手が遮った。 

「分かっ……て、おる。それ……で、も……生き、て……欲、しいん、じゃ……」

 言い終えた頃には、ライト博士の右手は力が抜けて地面に付いていた。
 武美に掌を握られるが、もはやライト博士はそのことにすら気付かない。
 もう役目を果たさなくなった瞳を閉じて、彼は理想の世界を思い描く。
 絵空事と揶揄されて、ほんの少し前まで自分も諦めていた未来のビジョン。

「……ロック」

 ライト博士の口から、彼が作り出したロボットの名が零れる。
 似た名前が名簿に乗っていたことから、武美は事情を察した。
 おそらくライト博士は、自分が作ったロボットをバトル・ロワイアルに参加させられたのだろうと。
 武美は未来人の悪趣味さを再認識して、目の前の老人を不憫に思った。

「エック、ス……」

 後頭部を殴られたかのような錯覚が、武美へと襲い掛かった。
 ライト博士を見つめる瞳から光が消え、全身から力が抜ける。
 握り締めていたライト博士の掌は、無意識に手放してしまっていた。
 暫くして我に返り、武美はくず折れた。

「あたし、いま――――」

 無意識のうちに漏れた呟きは半ばで途切れ、武美は小刻みにわななく。
 自分を抱きしめるように腕を回して、身を縮こまらせる。
 エックスの名が出た瞬間に、武美はライト博士に対して思ってしまったのだ。

 ザマァ見ろ、と。

 一瞬だが、確かに思った。
 いくらエックスを憎んでいるとはいえ、相手は死に行く老人だというのに。
 いま生きていられるのは、ライト博士が自分を犠牲としてくれたおかげなのに。
 武美はそんな自分に対して、身の毛がよだつようなものを覚えた。

「……っ、武美!」

 武美の中で膨らむ自己嫌悪の念を感じ取り、ウフコックが声をかける。
 しかし武美の耳には届かない。
 耳元で呼びかけるべく武美の身体を駆け上がろうとして、ウフコックは急に差し込んできた影に気付く。

「――ソルティ」

 ライト博士が診た後もベッドに寝かせられていたソルティが、いつの間にやら起き上がっていた。
 前頭を押さえて表情を歪め、立っているだけだというのに足取りも覚束ない。
 覚醒して間もないために落ち着かないのだろうか、とのウフコックの推測は過ち。
 暴走していたゼロの攻撃を受けたためか、はたまたライト博士が修理したためか。
 喪っていた記憶が蘇り、流れ込んでくる情報に対応しきれないのだ。
 あまりに信じがたい内容なのに、何かがそれを真実だと確信している。
 自分の内部に得体の知れない別人がいる感覚を抱き、ソルティに戦慄が走る。
 口が震えて上下の歯が乾いた音を鳴らすのも構わず、遠慮なく本来の記憶がソルティへと侵攻する。
 記憶を塞き止めていたダムは、決壊してしまったのだ。もはや、全てを知るしかない。
 彼女にとってとても長く感じる数秒が過ぎ、ついにソルティは思い出した。
 心の奥底で記憶の信憑性を主張する自分――――すなわち本来の自分、その名前を。

「……ディケ…………」

 未だ終わらぬ記憶の奔流に飲み込まれながらも、ソルティは拙い口調で紡ぎ出した。



【ライト博士@ロックマンXシリーズ:死亡確認】
337参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:08:33 ID:tPnXWVL0


【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康、爆弾解除、自己嫌悪
[装備]:ウフコック@マルドゥックシリーズ
[道具]:PDA(武美、クロ)×2、ランダムアイテム0〜1
    アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS(弾切れ、発電所内にクロの右手と共に放置)、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:あたし、は――――――――?
2:ソルティが心配。
3:大ショッカーを警戒。
4:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。
[備考]
※本郷とは、一エリア以内なら通信が取れます。
※ウフコックの参戦時期は、ボイルド死亡後です。

※ウフコックの制限が解除され、反転変身【ターンオーバー】が可能になったかは不明です。


【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:健康、爆弾解除、記憶復活
[装備]:なし。
[道具]:支給品一式、PDA×2(ソルティ、神 敬介)、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン
    紫の仮面@現実、K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発、LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険
    ミラクルショット@クロノトリガー、ガイアアーマー@ロックマンX5
[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す。
1:私、は――――――――?
2:フランシーヌたちを守る。
3:武美を守る。
4:ロイさんやローズさんの元に帰りたい。
5:放送がないのに疑問
[備考]
※参戦時期はアニメ10話〜11話です。
※戦い自体への迷いは消えましたが、相手を躊躇なく殺せるまでには至っていません。

※状況を認識しておりません。
※ディケとしての記憶が戻りました。


 ◇ ◇ ◇


[06:08〜06:09――宇宙要塞内部 闘技場]
340参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:10:59 ID:/wLAjZxh


 ドラスに放り投げられたコロンビーヌは、開天珠の飛行能力を使って要塞内を駆け巡る。
 スペック上は、彼女を追うドラスの金蛟剪の方が飛行速度は上だ。
 だが、コロンビーヌは入り組んだ要塞内のマップに目を通してある。
 それゆえの小回りの利いた動作により、コロンビーヌはドラスよりも前を行っていた。

(ここだったわね)

 開天珠のうちの一つを飛ばして、爆破することで強引にドアを開く。
 その中に入ったコロンビーヌを追い、ドラスも部屋に飛び込んだ。
 そこは――――

「…………闘技場?」

 本来、八体の異世界戦力と残った参加者との戦いの舞台として用意された。
 中心部にあった決闘場より広いのは、乱戦も想定してのことか。
 当の異世界戦力は帰還してしまったが、闘技場自体は残っている。
 要塞内のマップを見なければ、絶対に分からない場所であった。
 だからこそ、コロンビーヌはこの地を戦場としたのだ。ドラスの仲間の横槍が入らぬように。

 周囲を見渡して着地するドラスの前に降り立ち、コロンビーヌがグラーフアイゼンを構える。
 起爆させた玉も回復し開天珠は万全、ゾナハ蟲の杭も展開済みだ。
 硬い表情で身構えるドラスに、コロンビーヌはどこか妖艶に微笑んだ。
342参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:12:24 ID:/wLAjZxh
343参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:12:47 ID:e1cdjPuG
344参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:13:46 ID:/wLAjZxh
345参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:14:08 ID:e1cdjPuG



【コロンビーヌ@からくりサーカス】
[状態]:黄金律を打破、マサルへの愛、超古代文明のパワー、爆弾解除
[装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ギギの腕輪、ガガの腕輪@仮面ライダーSPIRITS、開天珠@封神演義
[道具]:基本支給品一式×2、PDA(コロンビーヌ(通信機能付き)、絡繰茶々丸(分割ファイル四つ。統合ソフト)、アルレッキーノ、KOS−MOS、ラミア
     PDAの通信機能付加ソフト@ロボロワオリジナル、タブバイク@ゼノサーガシリーズ
     麻帆良学園の制服(両袖がない)@魔法先生ネギま!、コエカタマリン(残りニ回)@ザ・ドラえもんズ、謎の立方体
[思考]
基本:優勝者の報酬を奪い、勝の下へ戻る。
1:ドラスの殺害。
2:シグマと正義の味方連中を殺して願いを叶えるアイテムを奪う。
3:メガトロン、T-800と共闘。邪魔者はすべて殺す。
4:今の自分なら人間も殺せる!
[備考]
※参戦時期は死亡後です(原作40巻)
※全てのゾナハ蟲(コロンビーヌらが吐き出すものも)には以下の制限が掛かっています。
また会場の全域には十分なゾナハ蟲が漂っています。
1:外部には一切の害はありません(ゾナハ病の感染や機械類のダメージなど)
2:コロンビーヌが自分の武器として使用するのには問題なく使用できます
3:通信機能に障害を発生させています。
※二エリア以内なら、メガトロンのPDAと通信が可能です。
※黄金律『フランシーヌ人形への絶対服従』を打破しました。
347参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:15:03 ID:/wLAjZxh


【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:右腕がスバルのもの、自分が求めていたものが『家族』と自覚、ナタク@封神演義を吸収、疲労小
    セインを四、五歳幼くした状態に擬態(ただし生えている)、スバルの死に深い悲しみ、爆弾解除
[装備]:ラトゥーニのゴスロリ服@スーパーロボット大戦OG、メカ沢の学ラン@魁クロマティ高校、オルゴール付き懐中時計@仮面ライダーZO
    混天綾@封神演義(マントとして)、乾坤圏@封神演義(左腕の方は修理が必要)、カセットアーム@仮面ライダーSPIRITS(体内)
    金蛟剪@封神演義(体内のナタクと付属)
[道具]:PDA(ドラス、マルチ、ノーヴェ、ロボ、アラレ、シュトロハイム、城茂、エックス、あ〜る、バロット、チンク、メカ沢、灰原、ロックマン)
    荷電磁ナイフ@マルドゥックスクランブル(D-3基地に放置。呼び出し可)
    スタームルガー レッドホーク、装弾数0/6@ターミネーター2(D-3基地に放置。呼び出し可)
    ぎんのいし@クロノトリガー、液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 (D-3基地に放置) タイムストッパー@ロックマン2(メカ沢の胴体部):ロボのPDA
    はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置) 拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。
    転送可能 スモールライト@ドラえもん(残り四回):城茂のPDA、ナイスなグローブ×2@パワポケシリーズ、ダンボール@メタルギアソリッド
    クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校 、グロスフスMG42(予備弾数20%)、 NIKU・Q・マックス@サイボーグクロちゃん、
    大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険、アトロポスのリボン@クロノトリガー、高性能探知機(バッテリー切れ)、テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[思考・状況]
基本思考:バトルロワイアルに決着をつける。
1:コロンビーヌの撃退。
2:スバルの死と、最期の言葉とT-800の行動にショック。……それでも?
3:シグマを説得したい。
4:大デストロンを敵視。T−800には……?
349参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:15:50 ID:/wLAjZxh
350参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:16:05 ID:e1cdjPuG
351参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:16:44 ID:/wLAjZxh
[備考]
※志郎の言った10人ライダーの中に仮面ライダーZOがいると思い込んでいます。
※他人の肉体を吸収すると取り出せなくなっています。
※金蛟剪@封神演義に『使用者の資格がある』と認められましたが、龍を発現させるまでには至っていません。
※赤ドラスに変身可能になりました。


 ◇ ◇ ◇


[06:09〜06:15――宇宙要塞内部 中心部]


「あの部屋の隣だが、あれは……!」

 ゼロを先導していたイーグリードが床へと降り立って、扉ごと空けられた風穴を顎で指す。
 放送が流れる前から全速力で向かっていたというのに、道中で何度もターミネーターと出くわして時間がかかってしまった。
 警戒しながら、ゼロとイーグリードが決闘場へと足を踏み入れる。
 放送を取り扱うコンピュータが管理室にしかないのを知っており、大デストロンがそこにいるものと踏んでいるからだ。

「メガトロン!」
「お久しぶりだねい、ゼロくんに鳥くん」

 ゼロの怒りを孕んだ声を受け流して、メガトロンは煽るような口調で返す。

「シグマ隊長をどうした!?」
「ああ、アイツならそこそこ」

 メガトロンが右手で指差した方を見れば、壁に埋め込まれた何かが見えた。
 全面が黒色化していたが、たしかにそのシルエットは二人のよく知る男に似ていた。

「貴様……!」

 ゼロがカーネルのセイバーを取り出して、緑色の刀身を展開させる。
 体勢を低くして、いつでも飛び出せるよう腰を低く落とす。

「くっく! まあ落ち着きなって。
 ところで鳥くんよ、俺様達さ実は一時間くらい前にアイツを倒してたんだ。つまりそれからずっと、メインコンピュータをいじってたワケだ」

 挑発してくると踏んでいたイーグリードが、その両目を見開いた。
 ただの出任せだと信じようとした矢先、メガトロンが指を鳴らし――――ゼロの腹部が内部から爆ぜた。

「か、は…………?」

 ゼロは意思に関係なく地面に引っ張られ、T-800が決闘場に入ってくるのを見ることしか出来なかった。
 地面に着く前にイーグリードが支えようとするが、ミニガンの弾丸を回避するために離れざるを得なくなる。

「そこで、シグマと仲良くお寝んねしな!」

 それを見計らってメガトロンが倒れこんだゼロを蹴り飛ばし、ついでに転がっていたカーネルのセイバーを踏み潰した。
 吹き飛んだゼロは埋め込まれたシグマにぶつかり、亀裂が走っていた壁は崩れた。

「ゼロ!」
「傑作だなあ! ここまで来て、あんな情けないやられ方なんて!」
「ぐ……!」

 メガトロンの言葉に、言葉を詰まらせるしかないイーグリード。
 かつて爆弾を摘出しなくていいと告げたが、それはシグマが主催をしているからの話だ。
 大デストロンによる放送に平静を奪われたとはいえ、この可能性を欠片も考えていなかった。

(すまん、ゼロ……)

 こんなことになったのは、確実に自分のせいだ。
 イーグリードは己を責めながら、イーグリードはメガトロンとT-800に竜巻を飛ばした。
354参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:18:23 ID:e1cdjPuG
355参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:18:46 ID:/wLAjZxh
356参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:18:57 ID:tPnXWVL0
357参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:20:04 ID:/wLAjZxh


 崩れた壁の欠片に埋もれて、ゼロは虚空を見つめる。
 体内で起爆した爆弾は、ゼロの腹部だけでなく右腕も殆ど持っていった。
 何とか繋がっているものの、激しく動かせば勝手に落ちると推測できた。

(終わる、のか…………)

 ゼロの脳裏に、彼らしくない考えが浮かぶ。
 今の彼の状況を考えれば、仕方がないことだろう。
 爆弾によって焼かれたというのに、腹の方からオイルが流れる音がする。
 耳障りな音に視線を流せば、音源はゼロではなかった。
 黒い人型――シグマの残骸が衝撃で割れ、隙間からオイルが流れ出していたのだ。

(しつこいくらい蘇ってきたくせに、アイツらにはあっさりやられるんだな)

 そんなことを考えてシグマの亡骸を眺め、ゼロはその損傷に気付く。
 遠目には焼かれただけのように思えたが、刺傷に切傷が至るところに刻まれていた。
 何がシグマをここまで動かしたのか――不思議に思ったゼロの瞳に、切断されたアルティメットアーマーのヘッドパーツが映る。
 その切断面は、明らかにエネルギー刃によるものであった。

(まさか、このアーマーをヤツらに渡さないために……)

 特Aハンターの眼力を持ってすれば、アーマーのスペックをある程度見極めることが出来る。
 そんなゼロでさえ見たことがないほどに、分断されたヘッドパーツには凄まじい技術が注ぎ込まれていた。

「……はっ」

 乾いた笑いが、ゼロの口から漏れた。

「お前も、か」
359参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:21:43 ID:/wLAjZxh

 ゼロの中で、物言わぬシグマがイレギュラーを貫いたエックスと重なった。
 往かんとした道は違えど、それを貫いた様は似ているように思えた。
 消えかかっていたゼロの魂の篝火が、再び燃え上がる。

「このまま倒れてたんじゃあ、意地張ったお前達に合わせる顔がないな」

 ゼロは全身に力を篭めた、乗っかった瓦礫をどかそうとする。
 しかし、瓦礫はぴくりとも動かない。
 その事実にゼロは拳を作ろうとして、目を丸くした。
 握りなれた感触を信じきれず、ゼロは荒い呼吸を無理矢理に抑えて精神を集中させる。
 幾度となく聞いた音が響いたのを確認して、左手首を振るった。
 付近の瓦礫が両断されて、やっとゼロは己の左腕を目にする。
 そこには、確かにセイバーが握られていた。
 それも量産型のものではなく、普段より長い刀身を誇る――――Σブレード。

「はは! シグマ、まさかお前のセイバーを使う日が来るとはな!」

 しげしげとΣブレードを見てから、ゼロが口角を吊り上げる。
 足元の刻むことで足場を整えて、四方を覆う瓦礫を見据える。
 患部は焼かれているのでオイルは漏れないが、無視できないダメージを受けている。
 片端から切っていくのでは時間がかかりすぎて、半ばで息絶えるかもしれない。
 ならば、とゼロは右拳を握る。
 ケーブル数本で何とか繋がっている右腕にエネルギーが集束し、激しい光を放つ。

「落鳳破ァァ!!」

 ゼロが拳を叩き付けると、四方にエネルギー弾が放たれる。
 衝撃で右腕が千切れるが、ゼロを覆っていた瓦礫は吹き飛んだ。

「何ッ!?」
361参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:22:08 ID:e1cdjPuG

 イーグリードかメガトロンか、はたまたT-800か。
 投げかけられた驚愕の声に、ゼロは白い歯を見せる。
 致命傷を受けているというのに、頬が緩んで仕方がなかった。
 残った方の左手に握ったΣブレードを、ゼロは時間をかけて眼前へと持っていく。
 その姿が氷を破ったシグマを連想させて、メガトロンは舌打ちを吐き捨てた。

「死んだと思ったら派手な登場……かっこいいねえ、色男。
 でもそんな状態で勝てると思ってんのかァ? 無駄に辛い思いしても、死ぬのが早くなるだけだぜ」

 ドラゴンの頭部型の左腕を向けて、メガトロンが冷笑する。
 メガトロンにとって当たり前の言葉が、ゼロには可笑しく思えた。
 ひとしきり喉をならしてから、ゼロの口から低い声が漏れた。

「いらんな、命など」

 静かに切り出された言葉が、じょじょに力強くなっていく。

「俺が望む物は、アイツらと何ら変わらない!
 俺が俺を貫いたという事実! ただ……それだけだッ!!」

 声を張り上げたのと同時に、ゼロの腹部から露出した配線から青白い火花が散る。
 強い眼差しに微かな苦悶が滲んだのを確認し、メガトロンがすかさず炎を吐き出す。T-800のミニガンも、それに続いた。

「ッ、アァ!」

 到底軽いとは言えない疼きだが、関係ない。
 むしろその刺激がなければ、ゼロはとうに意識を落としてしまっているだろう。
 押し寄せる激痛の奔流を身に受け、あえてゼロは突き進む。
 休んだ上での安易な死など、望みはしない。

「イーグリードォォォォ!」
363参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:23:13 ID:/wLAjZxh

 ゼロによる跳躍しながらの絶叫が、唖然としていたイーグリードが現実に帰還させた。
 一瞬の目配せで言わんとすることを理解し、羽を渾身の力で前後に動かす。
 生み出された強風が文字通り追い風となって、空中で再びジャンプしたゼロをさらに前進させる。
 二度の跳躍に加えて、強風による後押し。
 一瞬にして、ゼロとメガトロンの距離は縮まった。

「はああああ!!」

 ゼロは空中で身体を旋回させて、空円斬という斬撃を繰り出す。
 しかしその動きは、シグマがメガトロンにやったものに似ていた。
 そのため、エネルギー刃はメガトロンの左腕に受け止められてしまった。
 競り合いになれば、地に足が着いているメガトロンが有利。
 Σブレードは弾かれてしまい、ゼロは空中で無防備となる。

「さよならだ!」

 傷口に左ストレートをお見舞いしようと、メガトロンが拳を握る。
 その様子を見ながら、ゼロは歯を軋ませる。
 弾き上げられたといっても、Σブレードは握り締めたままだ。
 ただ、体勢的に振るうことが出来ない。
 蹴りならば当たるかもしれないが、空中では踏ん張ることができない。
 となれば、チャージキックのチップも意味を為さない。
 そこまで考えて、ゼロの脳内に一人の男が浮かんだ。
 エアークラフト機能を所持しており、空中での格闘も可能とする男。
 三度戦った破壊者ならば、この場面でどうするか。
 そう考えたゼロの前に、三度目の戦いの記憶がフラッシュバックする。

「おおおおお!」

 チャージキックのチップを発動させると、ゼロの両脚がエネルギーを纏う。
 エネルギーを放射する方向を変化させて、体勢を整えながら前へ進む。

「何ィ!?」

 放った拳を回避されたことに驚くメガトロンの顔面へと、ゼロの両脚蹴りがめり込んだ。

「月面飛行蹴りーーーッ!!!」

 吹き飛ぶメガトロンを尻目に、ゼロは模した蹴撃の名を叫ぶ。
 ゼロに埋め込まれたスキルラーニングシステムは、三度繰り広げた戦いの中で破壊者の技術を会得していたのである。



【宇宙要塞 中心部/二日目・朝】


【メタルスドラゴンメガトロン@ビーストウォーズメタルス】
[状態]:エネルギー(98%)、弾薬(100%)、爆弾解除
[装備]:ハイパージャマー@スーパーロボット大戦OG
[道具]:PDA(メガトロン(通信機能付き)、フランシーヌ)、シャトルの制御コンピューター、動物ごっこ帽子@ザ・ドラえもんズ
    スパイセット@ザ・ドラえもんズ、補給装置@スーパーロボット大戦OG(3/5)、
[思考・状況]
基本思考:シグマから主催者の座と優勝者の報酬を奪い、サイバトロンの抹殺。
1:ゼロとイーグリードの破壊。
2:シグマと正義の味方連中を殺して願いを叶えるアイテムを奪う。
[備考]
※二エリア以内なら、コロンビーヌのPDAと通信が可能です。
※スパイセットの監視可能範囲は半径100mに制限されています。
366参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:26:05 ID:/wLAjZxh
367参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:26:36 ID:tPnXWVL0


【T-800@ターミネーター2】
[状態]:所々の深い傷跡からは金属骨格が露出、シグマウィルス感染。爆発物解除
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)、M134ミニガン×2(残り弾数97%)、ミニガンの予備弾×2セット
    滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS、ナックルの弾薬(25/30発)@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS、
    PDA(凱、村雨、T−800、スバル、パンタローネ)、打神鞭@封神演義、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん
    生活用リゼンブルパーツ(左腕)@SoltyRei、コルトS.A.Aの弾丸(12/30発)、ラブラブビッグバンの音楽ファイル@パワポケシリーズ
    サブタンク(満タン)@ロックマンX、テキオー灯@ザ・ドラえもんズ、ライディング・ボード@リリカルなのはStrikerS
    不明支給品1〜2個(確認済み1〜2(銃はない)) 、スタングレネード(2/3)、床屋セット(鋏、櫛、鏡)、たずね人ステッキ@ドラえもん、
    アカネハウス11号@パワプロクンポケット8、マグネット×2、阿紫花の長ドス(折れた)@からくりサーカス、予備マガジン3
    闇夜の鎌@クロノトリガー、仙桃×3@封神演義、マガジン(13/13 9mmパラベラム弾)×1、FN ブローニング・ハイパワー(13/13)@攻殻機動隊
[思考・状況]
基本思考:『自分の世界』のスカイネットの使命通り、全ての人間を殲滅する。
1:ゼロとイーグリードの破壊
2:メガトロンの作戦に乗る。
3:シグマと正義の味方連中を殺して、元の世界に帰る。
4:『負け犬』のスカイネット配下のターミネーターは破壊する。
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。
369参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:27:03 ID:/wLAjZxh


【イーグリード@ロックマンX】
[状態]:全身にダメージ(大)。疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:PDA(ラミア)
[思考・状況]
基本:バトルロワイアルを終わらせる。
1:T-800とメガトロンの破壊。


【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:T-800を敵視、ハカイダーとフランシーヌを殺したことを後悔、腹部に大きな損傷、右腕喪失、爆弾起爆
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ、Σブレード@ロックマンX
[道具]:支給品一式、PDA(ゼロ)、空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
    謎の金属片(マルチの残骸から回収)、白いカラス(表面に焦げ)@人造人間キカイダー
[思考・状況]
基本:ハカイダーと同じ道を歩まない。彼が望んだゼロの道を行く。
1:T-800とメガトロンの破壊。
[備考]
※真・滅閃光、真月輪、幻夢零は覚醒時のみ使える技のため、現在使えません。

※ハカイダーのスキルをラーニングしました。


 ◇ ◇ ◇
371参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:28:05 ID:e1cdjPuG
372参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:28:09 ID:/wLAjZxh
373参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:28:56 ID:yAy187Ff
武美の状態蘭に大ショッカーがw


[06:15〜06:17――宇宙空間 シャトル内部]


 ライト博士への通信可能なPDAは、ミーの体内で固定されたまま使用できなくなっている。
 ゆえに本郷は、初見のシャトルに仕組まれた目的地を自ら変更する羽目になった。
 多少時間はかかったが、何とか発射までこぎつけた。
 展開されるコロニーの外壁を見つめ、安心したように本郷は座り込む。
 しかし到着までの間、休んでいるワケにはいかない。
 武美へと周波数を合わせ、常に何かしらの発信を行い続けるようにする。
 通信可能範囲に入った途端に、連絡を取るためにだ。
 何しろ、現在の本郷には『大デストロンがバトルロワイアルを乗っ取った』ことしか、宇宙要塞内の知識がない。
 情報――特に、仲間の安否はいち早く確認せねばならない。

「さて…………」

 本郷は宇宙空間に到達しても、シャトル内の空気と重力が通常と変わりないのを認識。
 到着予定時間が二十五分後と記されたディスプレイを見て、それだけあれば十分だとPDAを取り出してサイクロン号を転送する。
 次にポケットから、シャトル基地にあった工具数種を引っ張り出す。
 そう、本郷には到着まで休んでいる暇はない。
 旧1号のボディでは、大デストロン全員の相手は厳しい。
 ならば、タイフーンを修復するしかない。
 気合を入れるスイッチに反応し、再改造後の姿になれるだけのエネルギーを蓄えられるほどに。
 必要な部品ついての想像は付いている。
 身体の動きに反応して、風車を回転させる配線が切れたのだ。
 代わりとなる配線は、サイクロンにも沢山使われているだろう。
 だが、それだけでタイフーンの修理は終わらない。
 黒く焦げたタイフーンの外殻――配線を弄るために開こうとすれば、崩れてしまうだろう。
 外殻が崩れれば形を保つのは不可能だ。
 ともなれば新たな表層として、金属が必要だ。その金属もサイクロンから取り除く。
 内部配線と外殻としての表層、その二つの修理を行わねばならない。

 ――――されど、真なる障害は全く別だ。

 ドライバーで、タイフーンの表層を固定するネジを一つ一つ外していく本郷。
 ほんの少し廻しただけで全身に激痛が走り、歯を噛み締めて痛みを押さえつける。

「ガあっ、グう……!」

 本郷から漏れたのは、彼を知るものならば信じられないような苦悶の声だった。
 それもそうだろう。
 タイフーンは、仮面ライダーのパワーを司る部位。いわば心臓や脳味噌のようなもの。
 それを弄繰り回すのだから、拒否反応として痛覚が刺激されるのも至極当然のこと。
 『生命の水』を摂取しても消えない痛みの中、それでも本郷はタイフーンの修理をやめない。
 現在の自分では、力不足だと思っているからだ。
 わざわざつらい戦いを繰り広げるために、自らに激痛を走らせる。
 なぜなら本郷猛は仮面ライダーであり――

「命ある限り、俺は戦う……! 戦う力を持たない人々のために……!」

 ――それが、仮面ライダーであるから。
376参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:31:06 ID:/wLAjZxh



【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労小、ダメージ小、胸部に包帯、応急処置済み、生命の水により回復中(ただし、しろがね化はまだしていない)
     爆弾解除、フランシーヌ・ミーを守れなかったことによる後悔、タイフーン故障(風を受けることで旧一号には変身可能)、シャトルで移動中
[装備]:サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、工具@現地調達
[道具]:支給品一式、トマト×97@THEビッグオー、謎の金属片(外装解除。解析は八割程度)、
     PDA(グレイ・フォックス、ドロシー、草薙素子、ドラ・ザ・キッド)×4。
     ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、ブルースシールド@ロックマン、ジローのギター@人造人間キカイダー
     虹(ドクターケイトの毒が染み込んでいる)@クロノトリガー、ライドル@仮面ライダーSPIRITS、ラブラブビッグバンの音楽ファイル@パワポケシリーズ
[思考・状況]
基本思考:シグマと決着をつけ、バトルロワイアルを終わらせる。
0:要塞に向かい、大デストロンを倒す。
1:サイクロンの部品を使い、タイフーンの修復。
2:仲間と合流し、状況を知る。
3:シグマの下へと向かい、可能ならば説得。
4:武美の寿命タイマーをどうにかする。
5:ソルティを早く修理してやりたい
[備考]
※原作8巻(第32話 称号)から参戦。
※武美とは、一エリア以内なら通信が取れます。

※約二十五分に到着しますが、要塞内のどこに到着するのかは不明です。


 ◇ ◇ ◇
378参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:32:03 ID:yAy187Ff
 
379参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:32:40 ID:/wLAjZxh


[06:30――宇宙要塞内部 ???]


 照明が存在せず光が当たらない場所に、大きなモニターを持つソレはあった。

 バトル・ロワイアルを企画した人間達。
 コロニー内に降り立ったターミネーター達。
 壊し合いを肯定して主催者をも破壊した大デストロン。
 壊し合いを否定して主催者の説得を企てていた参加者連合。
 そしてバトル・ロワイアルにて、倒れていった参加者の内の九割方。

 ――――皆が欲する、或いは欲したソレは誰の目も届かぬソコにあった。

 ソコとは、宇宙要塞内のある地点。
 一時は、数百のターミネーターが闊歩していた。
 大デストロンが、監視カメラの映像を確認した。
 それでも発見されることはなく、それでも確かにその宇宙要塞の中に確かにソレはある。

 大デストロンを呼び込むために一部だけ要塞内の罠を発動させたシグマが、確かにソコに転送させたのだから。
 監視カメラも及ばぬ場所なので確認はできなかったが、ソレが消え去ったのを見てシグマは転送装置の目的地を弄った。
 こうすれば履歴が残らない転送装置では、前にどこに移動させたのかは明らかにならない。
 壊し合いを否定する参加者の帰還を望むシグマのこと。
 ソコとは、時間をかけて探せば見つかる場所である。
 ただ、誰にも見つかっていないだけ。
 その付近どころかあと数メートルの場所にまで、辿り着いた『参加者』がいるというのに。

 暗闇の中でただ鎮座するソレの名は――――簡易型平行世界移動装置。



【支給品、アイテムに関する備考】

※簡易型平行世界移動装置は、シグマにより要塞内のどこかに転送されました。
※PDA(ミー、イーグリード用通信強化Ver。ラミア)、青雲剣@封神演義、ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンX、サブタンク×2(満タン&空)@ロックマンXは、ミーの体内に入ったまま取り出せません。
※アームパーツ@ロックマンXは、ミーが装着したままです。
※ウィルナイフ@勇者王ガオガイガーは、ミーの死体付近に放置されています。
※分かいドライバー@ザ・ドラえもんズ、カーネルのセイバー@ロックマンX4は、粉砕されました。
※グランドリオン@クロノトリガー、草薙素子のスペア義体@攻殻機動隊S.A.Cは、アルティメットアーマー@ロックマンXシリーズは、両断されました。
※ゼットバスターは右腕喪失に伴い、使用できなくなくなりました。
382参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:35:00 ID:/wLAjZxh
383参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:37:22 ID:/wLAjZxh
384参加するカモさん:2009/09/03(木) 04:37:28 ID:yAy187Ff
 
385 ◆hqLsjDR84w :2009/09/03(木) 04:40:53 ID:SpvBYWDq
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら、指摘してください。

>>281は『オール反BR派 対 大デストロン (0)』、>>328は『オール反BR派 対 大デストロン (3)』です。
また>>203は間違って>>202と同じものを投下してしまったので、無視してください。


>>373
ぎゃあ、なんて恥ずかしいミス。
wikiで直しますね。
386 ◆hqLsjDR84w :2009/09/03(木) 04:43:15 ID:SpvBYWDq
大事なことを忘れてた。

長期間に渡る支援、感謝します。
387 ◆hqLsjDR84w :2009/09/03(木) 04:44:25 ID:SpvBYWDq
補給装置の残り回数も間違えてた……
2/5、と修正しときますね。
388参加するカモさん:2009/09/03(木) 13:49:20 ID:/wLAjZxh
ミーくうううううううんん!
シグマたいちょおおおおおう!
ライト博士ええええええ!
イデにも負けず投下乙!
すっげえ、イデ前よりパワーアップしてかえってきやがったああ!
大デストロンって何さ、素晴らしすぎるw
その発想はなかった!
大デストロンはほんといいトリオだなー
シリアスなのにギャグもできるしw 床落ちたときとか
ミー君の最後は火力が足りないの台詞とかすごいらしかった。
本郷さんへの信頼と、ゴー君への想いを胸にしまってのくだりとかうるっと来たぜ
その本郷さんはかっこいいなー、ほんと
仮面ライダー……ヒーローだわ、やっぱ
武美は感性がいい意味で一般人らしくていいなー。
ライト博士への説得(?)とざまあみろでよく現れてる
最後にはまさかの月面飛行蹴り!
アルティメットを寸断して倒れたシグマを見てのゼロの猛り具合が鬼気迫ってた
後何気に義体スペアとか爆弾とかよく拾ったなーっと
面白かったです、GJ!
389名無しより愛をこめて :2009/09/03(木) 17:52:56 ID:0sWpubKo
投下乙です。
大デストロンにまず吹いたw
メガちゃんの怖さここきわまり。
コロンちゃんやシュワちゃんたちとのコンビネーションもあいまって、実にいいラスボス軍団。
シグマもライトも意地を見せた。
とはいえ、武美の『ざまあみろ』とここであえてやるのが素晴らしいw
ミー君は頑張ったよ。本当。
残った面子の行く末が楽しみだ。
GJ!
390参加するカモさん:2009/09/03(木) 21:05:13 ID:IbDn3heE
イデにも挫けず、お疲れ様でした。昨夜は支援できなかったのが悔やまれます。

とにかく、最初のメガちゃんの宣言には吹きましたww ちょ、大デストロンてタイムリーだなメガちゃんww
その後も、襲い掛かるターミネーター軍団とオール反BR派の戦いは手に汗握る思いでした。
混天稜の有効活用には、なるほどと唸らざるを得ませんでした。確かに、液体金属も立派な『液体』ですもんね。
ターミネーター軍団と戦う本郷さんとミーくんの共闘も凄かった。本郷の一時離脱も、必ず帰ってくると信じて疑わなかったミーくんは漢だ!
ここでタイフーンの不調から旧1号になったのも、ファンとしては嬉しくてニヤリとせざるを得ない!
ネコミミダブルライダーは、1号の頭から耳が生えてきた、という描写で盛大に吹きましたww だって直前の描写とのギャップがww
ライダー反転ダブルピンポイントキックは、個人的に今回の最高の燃え展開でした。
だけどその直後に本当にミーくんが燃えちゃったー!? それでも、最後まで漢……ではなく、雄猫の意地と誇りを見せて逝ったミーくん……御美事でした。
そして、シグマVS大デストロン。ぶっちゃけ冒頭のあの宣言で勝敗は分かり切っていましたが……それでも、この戦いには引き込まれました。
最後の力で、大デストロンに一矢報いるのではなく、究極の鎧を両断することで自分の意地を貫いたシグマ……原作が嘘のような、清々しい死に様でありました。
メガちゃん&シュワちゃんに挑む鳥さんとゼロですが、爆弾を上手く使いましたね。けど、制限が解除されたゼロならきっと大丈夫だ!
そして因縁のΣセイバーを握り、ハカイダーの月面飛行蹴りまで放つゼロ。何気に彼もこのロワで大きく成長しているんだなぁと気付かされました。
コロンちゃんVSドラスのゴスロリ対決は個人的に期待のカードですが、それよりも気になるのが武美達。
記憶を取り戻したソルティと、ライト博士の死にほくそ笑んだ自分自身への嫌悪に打ちのめされる武美がどうなるのか、非常に楽しみです。
けどきっと、遅れてやって来た本郷さんが美味しいところを全部持って行くんだって滝さんが言ってた。

本当にGJです!
391参加するカモさん:2009/09/03(木) 21:10:34 ID:uAbHFZRc
まずは長時間にわたる投下、そして長編お疲れ様でした。

ああ、ミー君・ライト博士よ頑張った、あんたらは頑張ったよ。
シグマもメガちゃん達にやられるとは思っていたけど、その意地と執念には感服した。
そしてメガちゃん達……お前らホントにラスボスかw
ほんと何時までもボケ続けられるなww

さて一つアレっと思ったのですが>>321
「やっぱ惚れ惚れするねえ、コロンちゃんのそれは」
「ふふっ、褒めても何も出ないわよ。って、何よこれ?」
「鎧みてえだな。マネキンに着せるか、ふつー?」
「む、それは……」
「知っているのか、メガちゃん!?」
「これに似た物が支給されていた。確かガイアアーマーという名だったな」

ここの「知っているのか、メガちゃん!?」はシュワちゃんの間違いじゃないですか?
流石にシュワちゃんがこんな台詞を吐いたとは思えないので、いや言ったら言ったで面白いですが、どうでしょうか?
392参加するカモさん:2009/09/04(金) 22:42:19 ID:T1DQJ19A
昨日は気付きませんでしたが、今日気付いたので指摘を。

シグマのボディは電気を無効化するように強化されている、という描写がありましたが、
『揺れる心の改造人間』にて、V3サンダーが普通に効いています。シグマも「ぐわああああ!?」って叫んでいました。
この描写と矛盾しないようにするには、無効化ではなく大幅なダメージ軽減に変更するか、だってあれは宮内だから、ということにすべきかと考えます。
393参加するカモさん:2009/09/04(金) 23:15:25 ID:+X4eGta6
個人的にはだって宮内だからryのがネタになるんじゃw
394参加するカモさん:2009/09/04(金) 23:19:22 ID:T1DQJ19A
>>393
シグマ「ぶわぁかめ! このおニューのボディに電撃など効かぬわ!!」
   (…………そういえば、V3の電撃は普通に効いていたような?)

こうですね、分かります。
395名無しより愛をこめて :2009/09/04(金) 23:25:21 ID:CZKRCN3j
V3が掴んだのは首だったから、ボディは絶縁体だった、という見方もできなくもないw
396 ◆hqLsjDR84w :2009/09/04(金) 23:28:19 ID:ctbWVV/n
>>391
その通りですね。wikiで直します

>>392
こっそりwikiで直そうと思ったら、バレてしまった……恥ずかしい
ある程度電気耐性があるので、V3の時のようにせいぜいひるむ程度ですはず。
みたいに修正しときます。
397 ◆hqLsjDR84w :2009/09/04(金) 23:31:04 ID:ctbWVV/n
ひるむ程度で済むはず、です。
なんで俺は、レスで恥を増やしてるのかとry
398 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/09/05(土) 23:18:48 ID:0cucSmLS
こんばんは。
9/12日にて、最終回の期間に関するチャットを開きたいと思います。
今回はネタバレなし、ロム可読み手参加OKです。
余裕がる場合でかまいませんので、参加をお願いします。
場所は9/11日に本スレで指定したいと思います。

つきましては、9/12でのチャット終了まで予約を凍結したいと思いますが、いかがでしょうか?
意見をお待ちしております。
399 ◆hqLsjDR84w :2009/09/05(土) 23:22:16 ID:wtqeyp87
オーケーです。
400 ◆9DPBcJuJ5Q :2009/09/05(土) 23:25:42 ID:QEtj2Kxj
了解しました。
401 ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/05(土) 23:34:57 ID:ROCURMkR
アイアイサー
402参加するカモさん:2009/09/07(月) 11:40:49 ID:GpxbHLuR
442 :Trader@Live!:2009/08/17(月) 19:03:56 ID:iMtm0Mqi
>>394  なるほどー。
今も騒いでる香具師が、なんで児童ポルノ規制法案がでてきたのか、その目的を勘ぐってくれればいいんですが。
自民党と民主党じゃ、児ポ法を打ち立てる目的が全く違う。

民主党のバックには中共・韓国がいるが、この二国、二次元文化(アニメ・漫画・ゲームetc)が金になることを知ったんだよな。既に日本の輸出産業の一角を担うって麻生総理も言ってたし。
だから、民主党を通して二次元文化を規制する。今は商業ベースだけかもしれないが、将来のクリエイターを育てる土壌となる、一次二次創作も規制するかもしれない。

自民党が児ポ法たてた理由の一つに、北朝鮮利権があるんだってな。
安倍総理や麻生総理がクスリやらパチンコやらサラ金やら、北朝鮮利権をシメてる間に、北朝鮮の連中が児童ポルノ作って売りさばいてたらしい。
児童を護るのも大事だが、北とそれに群がる汚物も一緒に排除する気だよ、自民党は。
---------------
>北朝鮮の連中が児童ポルノ作って売りさばいてたらしい
これはプチエンジェル事件とか、ヒルズでも噂される児童売春との繋がりのことかもね。
403バカは氏んでも名乗らない :2009/09/11(金) 19:00:18 ID:CqjPY6fz
今日、ここに茶の場所が指定されるな
404 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/09/11(金) 19:36:09 ID:I1wyGshh

こんばんは。
明日9/12 22:00 にて、http://orison.geo.jp/entrance/pbschat.php?fn=roborowa
でチャットは行いたいと思います。
それでは失礼します。
405 ◆hqLsjDR84w :2009/09/12(土) 21:48:07 ID:s8fP2DcT
ギリギリにすいません。十分ほど遅れそうです。
406 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/09/12(土) 22:27:49 ID:DyIvRHuR
チャットでの話し合いの結果、予約凍結を解除します。
詳しくはURL先のログを参照に。
三日ほどしたらチャットは削除します。
407参加するカモさん:2009/09/15(火) 23:56:33 ID:4sSc66sF
予約きたな!

しかしここまで来ると、あの書き手さんならあのキャラだ!ってのが浮かぶよね
408参加するカモさん:2009/09/16(水) 00:29:39 ID:osuz42ke
書き手を代表するキャラみたいなのか
確かに、そういうのあるかもなw
409 ◆hqLsjDR84w :2009/09/23(水) 21:45:16 ID:jXhX+jco
もうすぐ期限なのですが、延長までしたというのにそれでもまだ書きあがっていません。
破棄して出直すべきだとは思うのですが、どうかもう一度期限を延長させて頂けないでしょうか。
それに見合う話だとは自負しておりますので……
410人間七七四年 :2009/09/23(水) 21:51:39 ID:2Do8HKE+
私は一向にかまわん!どのくらいまで進んでるのかにゃ?
411参加するカモさん:2009/09/23(水) 21:54:33 ID:ePzsByBq
自分は最終回やその前の話のネタが無いから、もう少し時間が欲しいと言われるなら別にかまいませんが。

ただ、少々長めに見積もってどれ位延長したいのかだけ言ってくれると、待つ側として有りがたいのですが……
412参加するカモさん:2009/09/23(水) 22:39:25 ID:wXRX4S6j
私も再度の延長は一向に構いませんが、どの程度の延長になるかが気懸かりです。
通常と同じで+3日、ということでしょうか?
413 ◆hqLsjDR84w :2009/09/24(木) 00:34:15 ID:MJKs+Res
許可してもらえるようで、感謝です。
現在は、七割ほどです。
延長は、できれば三日頂ければ嬉しいです。

完成し推敲の段階になれば、投下予定時刻を知らせようと思います。
お手数かけて、申し訳ありません。
414参加するカモさん:2009/09/24(木) 00:40:07 ID:Jof6OCCB
>>413
了解です。作品の完成、お待ちしております。
415名前をあたえないでください :2009/09/24(木) 01:16:53 ID:LFiq31Cn
待ってるよ
416参加するカモさん:2009/09/25(金) 13:28:09 ID:reyqr4qb
もうすぐ終わりか・・・
ソルティレイという作品に出会えたはここのおかげだった
開始前に把握のためにとDVD借りてきて一気に全話見てしまった
ここまで生き残れるとは思わなかった
原作のように果たして父親の元へ帰れるだろうか
417 ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 19:29:15 ID:ZDatL/Pm
23時投下予定です。
支援して下さると嬉しいです。
418参加するカモさん:2009/09/26(土) 19:50:24 ID:XI9OLnwm
ラジャー
419イラストに騙された名無しさん :2009/09/26(土) 20:09:43 ID:PzYy9EQG
了解であります!
420参加するカモさん:2009/09/26(土) 22:04:50 ID:snE/a8bN
1度だけ告知あげ
421参加するカモさん:2009/09/26(土) 22:54:49 ID:A0RtUBSo
 
422名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/09/26(土) 23:02:29 ID:qOS7ydzB
ついに最終回か!?
423参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:03:15 ID:LzZh1cqh
>>422
予約の内容見て持ち付け
424 ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:03:33 ID:7CswXM+J
よし、お待たせしました。これより投下します。
425参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:03:56 ID:LzZh1cqh
歯ブラシ加えて支援
426枯れた名無しの水平思考 :2009/09/26(土) 23:04:26 ID:kd7HlzT8
支援
427鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:04:45 ID:7CswXM+J
 彼は、愛を知った。
 知ったからこそ護る側に立ち、茨の道を突き進む。
 道中で多くを喪いながらも、愛を捨てることなく歩み続ける。
 それが彼の誓いであり、それこそが彼の愛の形。

 彼女は、愛を知った。
 知ったからこそ奪う側に立ち、たった一つの椅子へと手を伸ばす。
 過程において一つの愛を切り捨てても、より憧憬する愛を目指す。
 それが彼女の夢であり、それこそが彼女の愛の形。

 行動原理は同一でありながら、実際に取る行動は正反対。
 まるで、ある一点だけが大きく異なる鏡写し。
 とは言えど片方が鏡面世界の住人であることはなく、ともに現世の住人である。
 両者には虚偽などない、互いに真なる存在。

 どちらが正しく、どちらが過ちなのか。
 それは定かではない。
 そもそも答えがあるのかすら、曖昧なところだ。
 愛の定義すら、少なくとも現在においては不明とされている。
 しかしそれでも、この場にて二つの愛はかち合ってしまう。
 その果てにあるのが、二つの愛に対する解答なのか。
 立っていた方が正しいのか。倒れ臥した方が間違いなのか。
 またしても、定かではない。
 だいたい、答えを見出せるほどにヒトやキカイとは上等な存在なのか。
 いやはや、まったくもって――――定かではない。


 ◇ ◇ ◇
428参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:05:52 ID:jW6SjWWT
支援
429参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:05:56 ID:kd7HlzT8
支援
430参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:06:08 ID:LzZh1cqh
愛って何だ?支援
431鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:06:09 ID:7CswXM+J


 何者かの侵入を把握して、闘技場に照明が灯る。
 宇宙要塞内は基本的に天井そのものが照明の役割を伴っているというのに、この部屋は例外だ。
 バトル・ロワイアルのクライマックスにあたる戦いのため、用意されたスペース。
 それゆえのムードを考えてだろう。グラウンドやドーム休場にでもありそうなやたらと派手な代物が、幾つも設置されている。
 加えて、鉱石製の床や四隅に埋め込まれた石柱が、いかにも武道会場のような雰囲気を醸し出している。
 その中で、ゴシックロリータを纏う二体はどこまでも異質だった。

「シュワちゃんから聞いたわァ。スバル・ナカジマでしたっけ? あなた、彼女が好きだったのよね」

 微かに吊り上った口角を左手で隠して、コロンビーヌがゆっくりと口を動かした。
 コロンビーヌが自分と同じように愛に目覚めたことをフランシーヌ人形から聞いていながらも、告げられた内容にドラスは目を丸くする。
 それを尻目にコロンビーヌは左手を軽く振るい、すでに構成済みであったゾナハ蟲製のナイフが宙を駆ける。

「――っ」

 投げかけられた言葉に気を取られていたドラスは、乾いた音により現実に引き戻される。
 展開させていた防護障壁に走った亀裂によるものだ。
 ドラスが飛来する無数の刃物を視認した途端に、一際軽快な音を鳴らして淡色の魔方陣は塵となった。
 顔を顰めながらもサイドステップを取ったドラスに、ナイフを模るゾナハ蟲の群れは対応しきれない。
 幾らかは表皮を傷付けたが、ネオ生命体のボディには無意味に等しい。
 致命の一撃を与えることなく、ナイフはドラスの背後にあった風穴から室外へと飛び出した。
 が、コロンビーヌとてこれで勝負が決まるとは思っているほど楽観的ではない。
 次の手は、とうに打ってある。

(この音は……!)

 ゾナハ蟲の群れが遠ざかったことで、その羽音に隠されていた微細な響きが少しずつ明らかになる。
 エネルギーを燃やす噴射音に、高速旋回よりもたらされる風切り音。
 その源は、未だ着地していないドラスの周囲。
 上方と後方に二つ、左右に一つずつ。
432参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:06:11 ID:lr8idoyb
支援
433参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:06:16 ID:psC7buV6

434参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:06:38 ID:A0RtUBSo
 
435参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:06:42 ID:kd7HlzT8
支援
436参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:06:56 ID:LzZh1cqh
愛ってなんなんだ♪正義って何なんだ〜♪
437参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:07:28 ID:jW6SjWWT
 
438創る名無しに見る名無し :2009/09/26(土) 23:07:39 ID:qOS7ydzB
愛ゆえに人は悲しまなければならない

支援
439鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:07:40 ID:7CswXM+J
 振り向かずとも、ドラスにはその正体が分かった。
 先刻前に自分達へと襲い掛かった球形爆弾型宝貝(パオペエ)『開天珠』。
 自分の肉体に対して初撃の攻撃範囲が広かったのは、視界を奪ってこの第二撃へと備えるためだったのか。
 相手の意図を飲み込んだドラスは、僅かとはいえ発言に意識を奪われた自分を呪う。
 そこまで理解していながら、なおかつ開天珠の地形すら変える威力を知っているというのに、それでもドラスは絶望しない。
 コロンビーヌが指を鳴らし、浮遊していた六つの球体がドラス目掛けて動き出す。

「はッ!」

 鋭く息を吐いたのに応えるように、ドラスの頭部が波打つ。
 水色の毛髪、まったく焼けていない肌、緑がかった碧眼――――その全てが光沢のある鉛色に。
 一瞬の後に、再び元の可愛げのあるマスクに戻る。
 ただ一点――――頭部から、物々しい銃身が伸びていることを除いて。
 これにはさしものコロンビーヌも驚愕するが、ドラスにしてみれば単に体内に収納してあった物を取り出しただけの話。
 そのマシンガンの正体は結城丈二愛用の『アタッチメント』、引き金は外に出さずボディの変化で操作する。
 上空から迫る二つの白球を冷静に打ち抜き、銃身がドラスのボディを滑らかに流動する。
 背後に目はなくとも、標的自体が音を出しているのだ。狙撃は容易い。左右も同様だ。
 立て続けに響く六つの起爆音を背に、ドラスは着地する。
 直撃していないとはいえ余波で身を焼かれているというのに、ドラスがすぐさま地を蹴った。
 闘技場に入る際に、一度起爆させた開天珠は復元まで多少の時間を要することが分かっていた。
 それゆえに、その隙を与えずに勝負を決めようと考えたのだ。
 二十メートルほど離れているが、ネオ生命体にとってはあってないような距離。
 地を蹴るたびに加速し、ついに残り数歩。
 そこまで来たところで、ドラスの中に違和感が生まれる。
 まずコロンビーヌが遠ざかろうとしないことと、何より僅かに笑みを浮かべていること。
 一度距離を取ろうかと考え、ドラスはその案を却下する。
 注目を惹いてからのスタングレネード、放送に自分の声を混ぜておきながら直後に不意打ち、スバル・ナカジマの名前を出してからの攻撃。
440鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:08:21 ID:7CswXM+J
 三度の奇襲から、ドラスは『コロンビーヌは自分の攻撃を中断させようとしている』と判断した。
 フランシーヌから聞いたコロンビーヌの情報も、ドラスの突撃を後押しする。
 真夜中のサーカスの舞姫であると言うのなら、あの不審な微笑もまた演技と見て何がおかしいだろう。

「オォォ!」

 廊下でコロンビーヌを追走していた過程で、ドラスは小回りが利く姿となってしまっている。
 だが、絶好の攻め時をフォームチェンジに費やすのは愚策。一撃決めて生まれた隙に変化すれば十分だ。
 その判断から、ドラスが拳を掲げ――

「残念でしたァ」

 舌を出すコロンビーヌを瞳が映した直後に、倒れてきた照明を身に受けて足場に叩きつけられた。

「ガ…………?」

 状況を理解できていないドラスをよそに、コロンビーヌは金色のツインテールを掻き揚げる。
 衝撃によって舞った埃をコロンビーヌが払っていると、その周囲へと上空から銀色の羽蟲が集ってくる。
 その様子を見上げながら、やっとドラスは気付く。
 次への布石は、初撃だけではなかったことに。
 ゾナハ蟲製ナイフが開天珠を隠蔽する役割も果たしていたように、開天珠もまたゾナハ蟲の移動を隠蔽していたのである。
 室外に飛び出したゾナハ蟲は、起爆音に隠れて室内へと帰還。巨大な刃の姿を取って、照明を斬り落としたのだ。
 仮にドラスがもっと冷静でいられたのならば、コロンビーヌが入室した時から同地点にいることに気付いただろう。
 修理室への奇襲でその冷静さを奪ったのも、コロンビーヌであるのだが。

「シュワちゃんからあなたのことを聞いてから、ずっとお話してみたかったわ。
 『男の人と女の人の愛』とは違うみたいだけど、それでも愛を知った者同士としてね」

 メガちゃんやシュワちゃんは無関心なんだもの、と続けてコロンビーヌは頬を緩める。

「でも私はあなたの愛を越えて、マサルちゃんの元へ行くの。悪いわね」
441参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:08:28 ID:jW6SjWWT
>>430
振り向かないことさ!支援
442鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:09:12 ID:7CswXM+J

 しかしすぐに冷徹な表情となり、ドラスへと氷塊のような視線を投げる。
 余波を受けないようにコロンビーヌが少し遠ざかってから、充填が完了した開天珠の六つの玉がドラスへと向かう。
 照明に圧し掛かられたドラスの前で、一つでも山を崩す爆弾が六つ同時に起爆した。


 ◇ ◇ ◇


「さァ〜て、仕上げね」

 右手にゾナハ蟲で構成した刃を装着して、コロンビーヌは立ち込める白煙を見据える。
 シグマに使用した時よりも体力が回復しているからだろうか、開天珠の一斉爆破は凄まじい火力であった。
 あまりの威力に影響は爆心地付近に留まらず、そこを中心に部屋全体へと亀裂が走ったほど。
 だがコアを砕かねばドラスが死に至らないことは、T-800から聞いている。
 コロンビーヌが幾らか歩みを進めてみれば、照明であったと思われる灰の下に黒ずんだ人型が横たわっていた。
 メガトロンほどではないが二メートルを越す巨大な体躯に、コロンビーヌは損傷を受けたことでドラスが本来の姿に戻ったと判断。
 胸部を貫こうとして――――その炭化した人型の背から生えた腕に、刃ごと右腕を掴まれた。

「はっ?」

 怪訝な声を上げるしかないコロンビーヌの前で、倒れ臥していた炭の塊が蠢く。
 黒く焦げたように見えていた表皮が銀色に変化し、続いて血肉を思わせる紅い肉体へと転じる。
 ドラスは落下してきた照明による衝撃でダメージを受けたが、それでも開天珠が迫る前に怪人態となっていた。
 その耐久力で何とか爆発から生き延びて、変形能力で炭化したものと思わせていたのだ。
 ダメージは小さくない。金蛟剪の使用はもちろん、長期戦になるだけでも危うい。
 ゆえに、ドラスはぬけぬけと接近してきた隙を突くことにした。
 フランシーヌから伝えられた話から、ドラスはどこかコロンビーヌにシンパシーを感じていた。
 愛により変わってしまったモノ同士として。
 そのせいか、『ひとまず止める』などという甘い考えを持っていた。
 されども、コロンビーヌの言葉がドラスに気付かせた。
 自分の目的のために、他者を切り捨てる。
443参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:09:16 ID:kd7HlzT8
支援
444参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:09:17 ID:XI9OLnwm
しえん
445参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:09:32 ID:LzZh1cqh
支援
446参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:09:42 ID:lr8idoyb
しえん
447鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:09:56 ID:7CswXM+J
 その思考は『現在のドラス』とは違い、『過去のドラス』のものである。
 そうと分かってしまった以上、ドラスは対処を変える。

(破壊しなきゃ……)

 ドラスは下した決断を脳内でリピートさせながら立ち上がって、背部に出現させたアタッチメントをコロンビーヌごと胸部に滑らせる。
 いきなり自分を照らした激しい光に、コロンビーヌは目を細めた。
 その光の正体は、ネオ生命体のエネルギーの源であり弱点であるコア。
 いかにナタクを吸収しているとはいえ、開天珠の一斉爆破はただでやり過ごせるような甘っちょろいものではなかった。
 何とか巨躯を保っているが、その密度は普段の比じゃないほどに低い。
 構成する金属の殆どが蒸発し、また弾き飛ばされてしまっている。
 照明であった煤塵足元から吸収するが、殆どが灰となっており金属部が少なすぎる。露出したコアを覆うには足りない。
 床も何らかの鉱石でできており、ボディを構成するには役割不足だ。
 ならばとばかりに、ドラスの肉体がよりいっそう紅く輝く。

「死になさいッ!」

 ドラスの異変を警戒し、コロンビーヌは集っていたゾナハ蟲を操作する。
 即席なので大型のものは作れないが、量は十二分。
 捕らえられているコロンビーヌをうまく避けて、二十を越す銀色の杭がドラスへと突き刺さる。
 露出していたコアは両手で守られたが、勝負は決まったようなもの。
 コロンビーヌはそう確信するが、しかし掴んでいるカセットアームの力は緩まらない。
 不審感を抱きだした彼女の前で、奇妙なことが起こっていた。
 蟲に命じた覚えがないのに、さきほどよりも杭が深くめり込んでいるのだ。
 コロンビーヌは暫し釈然としないものを感じ、やがてその正体に気付く。
 おかしいのだ。
 如何に大柄であろうとも、あそこまで深く食い込んでいるのだから。

 ――――先端が突き出ていないというのは、あまりに不自然。

 ひとまず戻そうとするが、蟲使いであるコロンビーヌの意思に反して杭はより深く沈んでいく。
 ついに銀色の杭は、完全に姿を消してしまった。
448参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:10:46 ID:jW6SjWWT
 
449参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:10:47 ID:qOS7ydzB
通りすがりの支援レスだ、覚えておけ
450鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:10:56 ID:7CswXM+J

「外装、歯車、螺子、配線の一部……ってところか。チューブは非金属みたいだね」

 言い捨てたドラスの身体から、幾つものチューブが排出された。
 かけられた言葉と吐き出されたチューブから、コロンビーヌは呼びかけに応えないゾナハ蟲の行く末を悟った。
 喰らわれたのだ。自らの血肉とするために。
 感覚機関が低性能なコロンビーヌに、背筋が凍るようなものが走り抜ける。
 確かに、T-800からスバル・ナカジマの腕を取り込んだとは聞いていた。
 しかし、よもやここまで文字通り取り込むだなんて。
 そんなもの、まるで怪物ではないか――――
 コロンビーヌ自身、体内は金属で埋め尽くされている。
 取り込まれてしまえばどうなるのかは、分からない。それゆえに戦慄する。

「させるもんですか……ッ!」

 身の毛がよだつのを押さえ込み、コロンビーヌは自由な左手を振るう。
 鋭利な刃物を纏った右腕は掴まれているし、何よりゾナハ蟲では喰らわれるのは自明。
 左腕に握ったグラーフアイゼンでもって、少々隠れたものの依然として存在を主張しているコアを狙う。
 だが、その勢いは遅い。
 制限は解除され、かつ黄金律は打破しているというのに。
 考えてみれば、当然のことだ。
 一口に武器を振るうと言っても、その実は全身運動である。
 大地に踏み止まる足裏、捻りを利かせる足首と腰、しなやかでかつ強固な動作を求められる膝。
 右腕を掴まれて吊るされた状態では、腕こそ動かせてもそれら下半身の動きは不足する。
 そうなれば、振るわれる武器の速度は落ちるのだ。
 武芸の基本であるが、普段は武器など使用しないコロンビーヌに知る由はない。

「解析不可吸収不可……金属みたいだけど、データ外のレアメタルかな。ひとまず没収させてもらうよ」

 渾身の力を籠めた一閃は、右腕で軽く防がれた。
 そのまま、グラーフアイゼンはドラスの体内に飲み込まれていく。
451参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:12:00 ID:kd7HlzT8
支援
452鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:12:11 ID:7CswXM+J

「これは宝貝みたいだね。これ以上吸収するのは、ちょっと体力が持たないかな……」

 開天珠に触れて体力が吸われたことから、ドラスはその正体を見抜く。
 武器は奪うつもりであったが、開天珠の直撃を受けたダメージでは宝貝を取り込むのは厳しいと判断。
 仙人界の金属は解析できず、分解してボディとすることも不可能。
 そのため、そのまま放置しておくことにした。

「じゃあ、終わりだよ」

 それだけ言って、ドラスの左肩が煌く。

「い……や、イヤァァァァァ!」

 放たれるであろう光線を一度見ているため、コロンビーヌが声を張り上げる。
 こんな至近距離で直撃してしまえば、欠片一つ残らないだろう。

「そん、な……マサルちゃん……もう一度会うために、ここまで来たのに……」
「……ダメなんだよ」

 ひとしきり絶叫してから、一転して静かにコロンビーヌが漏らす。
 マリキュレーザーの発射準備は完了しているというのに、ドラスはその呟きに答える。

「自分のために他の人を踏み潰すのは、間違いなんだ。
 そう教えてくれたんだ……分かった頃にはもう遅かったけれど、それでも僕はみんなに出会えてよかった」

 コロンビーヌを正面から見据えて、ドラスは言い切った。
 そして、充填したエネルギーを左肩の三つの光点に集わせる。

 ドラスの左肩から発せられる光線を見て、コロンビーヌの中で恐怖心が増幅する。
 襲い来るであろう激痛や死に対する恐怖ではない。
 才賀勝に二度と会えない、それが何より怖かった。
453参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:12:37 ID:qOS7ydzB
グラーフ・アイゼエエエエエエン!!!
454参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:12:38 ID:XI9OLnwm
しえん
455鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:13:18 ID:7CswXM+J
 もう一度顔を見て、話がしたい。あわよくば愛されたい。
 その思いだけを動力源として、動き続けた。
 たとえドラスに否定されようと、今さら諦めきれる道理がない。
 照らしてくる光が恐怖をより膨れ上がらせ、いっそう才賀勝に会いたいという願いが肥大化する。
 現在の状況を切り抜ける力が欲しい。

 ――――そんな純粋な思いに、超古代インカのパワーが応えた。

 コロンビーヌの右腕が、激しく輝き始める。

「……っ!?」

 予想だにしない事態に絶句しながらも、ドラスは即座にマリキュレーザーを放つ。
 異変が生じた右腕を掴んでいるうちに勝負を決める。
 そう判断しての行動だったが、マリキュレーザーは闘技場の壁を蒸発させるに終わった。
 コロンビーヌの右腕に装着されたゾナハ蟲製の刃に、彼女を捕らえていたアタッチメントが両断されたのだ。
 掴んでいたはずの刀身が、輝いた途端にこれまで以上の切れ味を発揮する。
 半ば混乱しつつ、ドラスは落下したコロンビーヌから距離を取る。

「これは……?」

 混乱しているのは、ドラスだけではなかった。
 とうのコロンビーヌも、まったく状況を把握していない。
 強烈に輝く右腕をしげしげと眺めて、やっと少し前に装着した腕輪のことを思い出した。
 物々しい説明文の割に、戦闘能力の上昇が著しくないと思っていたが、これならばリスクも納得できる。
 そこまで考えて、コロンビーヌは考えるのをやめた。
 何にせよ、凄まじいパワーを手に入れたのだ。
 これを愛が起こした奇跡と考えて、何らおかしいことはない。

「まるで『純白の手』ね……」
456参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:13:40 ID:jW6SjWWT
  
457参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:13:47 ID:lr8idoyb
し え ん
458参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:13:58 ID:kd7HlzT8
支援
459参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:14:23 ID:LzZh1cqh
まさかの大ッ切ッ断ぁぁあああん
460鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:14:27 ID:7CswXM+J

 コロンビーヌが、自身の右腕にうっとりと視線を流す。
 今ではゾナハ蟲製の刃を纏っているだけだが、確かに右腕が白く輝いていた。
 その右腕はがむしゃらに振り回しただけなのに、アタッチメントをまるで『大』した物でないかのように『切断』するほどの切れ味を誇っていた。
 元来の装着者が単身で二つの悪の組織を叩き潰したほどに、組み合わさった腕輪から溢れる超古代のパワーは無尽蔵。
 あまりの強大さに怯えてもおかしくないが、コロンビーヌには全身に漲るエネルギーがどこまでも愛おしかった。

 ――――突如、彼女の姿が霧散して消滅した。

 彼女が存在した空間を、分子破壊光線が通り過ぎていく。

「えっ?」

 驚愕の声をあげるのは、隙だらけに見えたコロンビーヌへと光線を放ったドラス。
 常人ならばコロンビーヌが消えたかのように思うかもしれないが、実際のところは単に高速で移動しているだけだ。
 動きの軌道だけではあるが、何とかドラスの動体視力は黒衣に金髪の人形を捉えている。
 しかし体力が万全ではないこともあり、現在のドラスは身体が対応しきれない。
 背後に回られたのに気付いてすぐに振り向いたが、一瞬にも満たないそのタイムラグで見失ってしまった。
 動揺を隠すこともせずに、激しく首を四方へと動かす。
 焦りが募っていく中で、ドラスの聴覚はついに開天珠の軌道音を察知する。
 方向は背後。気付いたのと同時に、尾を振るう。

「グァァァァァ!!」

 次の瞬間には、両断されたドラスの尾が宙を舞っていた。吹き出た緑色の血液が、石でできた床を染める。
 絶叫するドラスの胸部目掛けて、白く輝く刃が突き刺さる。

「くうっ!」

 横っ飛びをしながら、ドラスは身体を旋回させる。
 林檎の皮を剥くかのように食い込んだ刃がボディを削ぎ落とすが、何とか内部までは至らない。
461参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:14:44 ID:qOS7ydzB
愛を取り戻せ!!支援
462参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:14:47 ID:psC7buV6

463参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:15:07 ID:kd7HlzT8
支援
464鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:15:11 ID:7CswXM+J
 腕で攻撃している間はさすがに高速移動できないらしく、コロンビーヌの姿がドラスの視界に入った。
 体内で発射準備をしておいた乾坤圏を射出する。
 空気を切る音で、コロンビーヌは接近する腕輪に勘付く。
 現在の旧式ボディでは捉え切れぬほどのスピードであるものの、超古代のパワーが身体能力を底上げしている。
 その効力は単なる動作に止まらず、動体視力や反射神経にまで及ぶ。
 ゆえに――――

「――――はッ!」

 すぐさま右腕をドラスから引き抜いて、顔面の前で刃を構える。
 結果、乾坤圏は輝く右腕によって真っ二つにされてしまう。
 二分された乾坤圏はどちらも埋め込まれた石柱を破壊するが、コロンビーヌには傷一つない。

「……なっ!?」

 砕けた石柱の欠片が落下する音が響く中、ドラスは愕然とした声を零す。
 そのコアが先の一撃で露になりかけているのを確認して、コロンビーヌは開天珠から全ての爆弾を飛ばした。
 超古代のエネルギーを使用に回すことで、元々の持ち主が扱う時と遜色ないほどの性能を見せ始めた開天珠。
 サブ能力にすぎない飛行でこれほどだというのに、起爆させてしまえばどうなるのか。
 勝利を確信して、コロンビーヌが目を細めた。


 ◇ ◇ ◇


 旋回しながら迫る白い球体の動きが、ドラスにはやけに緩慢に見えた。
 さながら、スローモーション。
 死ぬ間際はこうなるとどこかで聞いた気がする、などとどこか他人事のように胸中で呟く。
 命を落とすのを確信して、ドラスは自らの身体に命じる。
 取り込んだ男を排出せよ、と。
 どうしてだろうか。
 その男の力を上乗せした自分が手も足も出なかったというのに、その男ならば勝てる気がした。
465鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:15:54 ID:7CswXM+J

(ごめん、ナタク……僕じゃ勝ち目がないよ。僕は死ぬみたいだけど、後はお願い……)

 流動体の一歩手前程度にまで、身体の硬度が下がったのを確認。
 ドラスは瞳を閉じて、自分の体内へと語りかける。
 その呼びかけに返答しているのか、振動がコアへと伝わった。

 ――――何を戯けたことをぬかしている。

(…………え?)

 ――――勝ち目がないだと? 二度も同じことを言わすな、お前は死なん。

 根拠があるのかないのか分からないが、なぜか断定している。
 返答に困っているドラスを無視して、声は不機嫌そうな態度になる。

 ――――それに諦めるのは勝手だが、俺に出ろだと? ふざけるのも大概にしろ。

 目を白黒させるドラスを知ってか知らずか、声は続く。

 ――――だいたい俺は、アイツを殺すのはともかく雑魚共を助ける気などない。

「なっ……!」

 ――――知るか。

 耳を疑い、激しく抗議するドラス。
 体内から響く声は、それを遮って一蹴する。

 ――――守りたいものがあるのなら、自分で守れ。それができる力はすでに与えている。
466参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:16:00 ID:XI9OLnwm
しえん
467参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:16:04 ID:jW6SjWWT
    
468鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:16:46 ID:7CswXM+J

 言葉を詰まらせるも、ドラスは現在の状況を説明する。
 曰く、ダメージや消耗が大きい。
 曰く、敵が強大だ。

 ――――ふん、下らんことをぐだぐだと。

 またしても、声はドラスの意見を一蹴。

 ――――姉を守るために、到底勝ち目のないこの俺に立ち向かってくる。そういうお前だから俺は育ててやる気になったんだぞ。

 瞬間、ドラスは自らに電撃が走ったかのような錯覚に襲われた。
 彼に不信感を抱いていた頃のことなど、すっかり忘れてしまっていたのだ。
 勝ち目のない輩を相手にしたのは、初めてではないこともまた。
 外れるワケがない距離でのマリキュレーザーだって、その際に避けられている。
 考えてみれば、その時も回避に使われたのは宝貝だった。
 思い出した以上、ドラスは諦めかけていた自分が情けなくて堪らなくなった。

 あの時は諦めなかったのは、守るべき家族がいたからだ。
 いまは、もういない。ならば諦めるのか?

「いいや、違うね」

 ドラスは、自分の中に浮かんできた考えを否定する。
 家族どころか出会った人達の殆どが、もういない。
 けれども、諦めるワケにはいかないのだ。
 そうしてしまえば、それでお終いだから。
469参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:16:55 ID:LzZh1cqh
支援!
470鏡(前編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:17:50 ID:7CswXM+J

「何度も迷惑かけてごめん、ナタク。大事なことを忘れて諦めかけてた」

 家族はいなくなってしまったが、その意思は残っている。記憶に刻み付けている。
 ゼロはドラスの出会った相手をだいたい知っているし、本郷猛は風見志郎や神敬介を知っている。
 だがそれでも、ドラスしか見ていない姿というものはある。
 その姿を伝えることができるのは、この世でドラスだけなのだ。
 それが守るべきものでなければ、いったい何なのか。
 そしてそれを守れるのは、自分だけなのだ。
 だというのに抗わずして諦めるなど、できるはずがない。
 ドラスの心情を察したのか、クックと喉の鳴る音が響く。

 ――――さぁ戦え。諦めを捨て、目を開き、標的を見据え、戦いに集中しろ。体力が足りなくても、宝貝程度は無理矢理使役しろ。

 偉そうな物言いに変わりはないが、最後にかけられた声はどこか上機嫌そうであった。

 そして、ドラスは蒼色をした双眸を見開く。
 コマ送りに思えていたはずの白い球体が、ミサイルじみた速度で迫っている。

「はあああああ……!!」

 ドラスが体内の全ての空気を吐き出す勢いで力み、体内の金蛟剪へとエネルギーを流し込む。
 体力を喰われるような感覚の中で、ドラスは金蛟剪に命じる。
 内容は簡潔にして明快。文字して四文字。
 飛翔せよ、とだけ。
 二本の長刀がドラスの体内で怪しく輝き、直後に耳をつんざく爆発音が轟いた。
471参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:18:04 ID:A0RtUBSo
 
472名無しより愛をこめて :2009/09/26(土) 23:18:07 ID:m11l0Vbu
  
473参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:18:13 ID:XI9OLnwm
しえん
474参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:18:17 ID:kd7HlzT8
支援
475参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:18:28 ID:LzZh1cqh


     ____
   /__.))ノヽ
   .|ミ.l _  ._ i.)
  (^'ミ/.´・ .〈・ リ
  .しi   r、_) |  ドラスはわしが育てた
    |  `ニニ' /
   ノ `ー―i´
476鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:18:50 ID:7CswXM+J


 ◇ ◇ ◇


 爆炎の中から、飛ばした爆弾がコロンビーヌの下へと戻ってくる。
 超古代のエネルギーによって駆動する開天珠の火力は凄まじく、闘技場中に刻まれた亀裂はより深くなる。
 爆風でも爆心地付近の石柱が崩壊し、降り注ぐ破片の中でも最も大きいものが床に穴を開けた。
 だというのにコロンビーヌは明るくない表情で、立ち込める白煙を見据える。

「けはっ……かはっ……」

 じょじょに砂埃が晴れていき、その中で佇む存在が姿を現す。
 紅い体躯は若干錆色がかり、尾は切れたまま、剥き出しのコアが放つ光は弱まっている。
 それでもコアは幾分力なくだが脈打っており、ネオ生命体第二号は二つの足で床に立ち尽くしていた。
 迫り来る開天珠へと体内からグラーフアイゼンを射出して強制的に爆破させ、金蛟剪で爆心地から遠ざかったのだ。
 とはいえ火力が火力だ。
 直撃を避けても余波でコアごと身体を焼かれ、吹き飛ばされた挙句に壁に叩き付けられた。
 何とか意識は繋ぎ止めているものの、ダメージは無視できるものではない。
 グラーフアイゼンも粉砕し、体内に残っている道具は服と懐中時計とPDA。強度的にもサイズ的にも、それらでは開天珠を防ぐのは不可能。
 しかしそんな状況にもかかわらず、ドラスは生き延びている事実に笑みを零した。
 なぜなら――――

「ま、だ……守れ、る……」

 闘技場には二人しかいないため、ドラスの自らに喝を入れる声までコロンビーヌに届いた。
 その言葉に、コロンビーヌは目を見開く。

 ――――守りたい人がいれば変われる。進化できる。

 『ゲェム』の際に、才賀勝が告げたことがフラッシュバックしたのだ。
 他人を踏み潰すのが間違い、と言われた時にもコロンビーヌの脳裏に才賀勝の姿が過ぎっていた。
477参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:18:59 ID:jW6SjWWT
ごひ「ナタクゥゥー!」
478参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:19:12 ID:lr8idoyb
支援
479参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:19:39 ID:snE/a8bN
>>475
おまwww
480名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/09/26(土) 23:19:40 ID:qOS7ydzB
→支援する

支援しない
481参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:20:10 ID:LzZh1cqh
>>477
それナタク違いや!
482参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:20:54 ID:kd7HlzT8
支援
483鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:21:28 ID:7CswXM+J
 パンタローネから、才賀勝が愛しているはずのエレオノールから身を引いた未来を聞いている。

「くす……」

 たっぷり数秒経過した時、コロンビーヌはついつい白い歯を見せていた。
 守るために戦い、自分のために他者を踏み潰すのが誤りだと言う。
 異形のネオ生命体の姿に、コロンビーヌの中で才賀勝が重なる。
 前に立つのが才賀勝だとしても、おそらくは同じように自らの行いを否定するのだろう。

「分かってるわよ、そんなこと……ッ」

 壊し合いに乗り気になった時点で分かり切ったことだ。
 似たように動くドラスの姿から、再認識しただけの話。
 そう、覚悟などとうの昔に完了している。

「それでも、たとえ否定されても、私は…………!」

 戻ってきていた爆弾は、すでに使用可能状態へと回復している。
 開天珠のマントを展開させ、コロンビーヌは漲る超古代インカのエネルギーを注ぎ込む。

「突き進むっ!!」

 マントに付属した白い球体から、空気を切り裂くような音が響く。
 コロンビーヌがゆっくりと浮遊していき、上空数メートルのところで静止する。
 遠距離から爆弾を飛ばすこともできるが、それでは先程のようにドラスは倒れないだろう。
 何せ、守るために戦っているのだから。何度も危機的状況に追い込み進化させるくらいなら、一気にコアを両断する。
 そう判断したコロンビーヌが、ゾナハ蟲製の刃を装着した右腕を胸の前で構える。
 次第に右腕が発光していき、ついにドラスの尾を両断した頃ほどの光となる。だが、まだコロンビーヌは動かない。
 守るために戦う者を相手にしている以上、これでは足りないのだ。
 己の愛を守るために、こちらも進化せねばならない――――刃に隠れた組み合う腕輪へと呼びかけるコロンビーヌ。
 その祈りが届いたのか、はたまた単にコロンビーヌ自身が腕輪のエネルギーに順応し始めたのか。
 ついに、コロンビーヌの右腕がこれまで以上の輝きを放つ。
484参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:21:32 ID:snE/a8bN
やべ、あげてもた
485参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:21:41 ID:jW6SjWWT
 
486参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:22:25 ID:LzZh1cqh
支援
487鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:22:35 ID:7CswXM+J
 『純白の手』どころか、さながら『白銀の手』。
 その変化を見届け、コロンビーヌの姿が四散して掻き消える。
 現在のドラスには、もはや移動する軌道すら見えはしない。
 それでも、ドラスにとって最悪の展開ではなかった。
 体力的に、むしろ短期決戦は望むところ。
 接近戦を挑んでくるのならば、尚更のことだ。

「はあぁぁ……!」

 爆風に抗わなかったことで、部屋の角まで吹き飛ばされた。
 如何に圧倒的な速度を誇ろうとも、こうなれば攻撃を仕掛けてくる箇所はドラスの前方九十度に限定される。
 来たるコロンビーヌの攻撃へ向け、ドラスは腰を低く落として呼気を整える。
 圧倒的な速度による接近に対し、対抗手段として選んだ武器は拳。
 すなわち、起爆宝貝の推進力全てを上乗せしてのカウンター。

 マシンガンアームと乾坤圏は砕かれた。
 コロンビーヌの斬撃には、防護障壁など無意味。
 魔法弾は威力不足。コロンビーヌのボディを削ったところで、一瞬で肉薄されて終いだ。
 マリキュレーザーならば、一撃で以って半身を抉り取ることも可能だろう。
 ただでさえ、コロンビーヌが攻撃してくるのはドラスの前方だ。適当に撃てば当たる可能性も低くない。
 だが、それではダメなのだ。
 ――当たるかもしれない、などという手段では。
 ドラスは、ナタクから宝貝に関する情報を与えられている。
 使い手の意思、あるいは意地次第で、宝貝は宝貝以上の能力を発揮する。
 その事実を聞かされていたゆえに、ドラスは判断する。
 開天珠であそこまでの速度を出しているのだ。行動はともかく、その愛は本物だ。

 そこからドラスが導き出した結論――――『当たるかもしれない』でなく『当てる』つもりでなければ、コロンビーヌを退けるのは不可能。
488参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:22:42 ID:A0RtUBSo
 
489参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:23:06 ID:jW6SjWWT
    
490鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:23:26 ID:7CswXM+J

 だからこそ、拳を選択する。
 エネルギー充填に僅かな時間を要するマリキュレーザーと違い、拳はコロンビーヌの姿を捉えた瞬間に放つことができる。
 コロンビーヌの速度を考えれば、分の悪い賭けだ。まだマリキュレーザーが命中する可能性に賭けた方が、マシと言えるかもしれない。
 神を志していた頃ならば、嘲笑っていただろう。
 しかし、現在のドラスは違う。
 全力を出して、それでも分が悪いのならばプラスすればいい。
 そういう時に補うべきものを、ドラスは既に教えられていた。

「……ふふっ、勇気で補う……か…………」

 裏付けされていない理屈だ。
 それを語った青年自身、論理的に説明などできないだろう。
 だというのに、その無茶苦茶さが不思議と力強く思えた。
 そんなことを考える自分自身が、ドラスにはたまらなく面白おかしい。

(ああ…………)

 撹乱するつもりなのか、瞬間的にコロンビーヌの姿がドラスの視界に入る。
 いまのドラスには対応する体力すらないが、出現しては掻き消える様子にしみじみと思う。

(愛の力って、やっぱりすごいんだなぁ……)

 そんな思考に浸っていると、ついにコロンビーヌの姿をドラスが捉える。
 正面に出現したコロンビーヌ目掛け、ドラスが握った拳を振りかざす。
 全身ボロボロだというのに、繰り出された渾身の右ストレートは普段と遜色ない威力だ。
 しかしその右腕は、開天珠を瞬間噴射させたコロンビーヌの金髪を掠るに終わる。
491参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:23:40 ID:LzZh1cqh
次は当てる!
492参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:23:41 ID:lr8idoyb
支援
493ビタミン774mg :2009/09/26(土) 23:24:06 ID:rgnzddp4
  
494鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:24:13 ID:7CswXM+J

「があああああ!!」

 横合いから伸びてきた光の筋でもって、二の腕から先を斬り落とされた。
 全てを託したドラスの一撃は防がれ、コロンビーヌの続く斬撃に対応しきれない。
 脇腹に入った刃は、豆腐でも切るようにスムーズにコアまで到達した。

「…………?」

 だというのに、急に右腕が進まなくなる。
 コロンビーヌは怪訝な顔で、視線を右腕からドラスへと移す。
 その瞳が映したのは――――

「何よ、これ……ッ」

 ドラスの身体を覆う、白と黒のエネルギー結晶体。
 龍こそ模れていないものの、まさしく金蛟剪によって生み出された代物だ。
 これこそが、ドラスの攻撃を『当てる』手段。
 龍として飛ばすことは不可能だが、エネルギー自体を放射することはかつても可能だった。
 過去に使えて、いま使えない道理があるものか。必要なエネルギーが足りないとしても、宝貝ならば言うことを聞け。
 どこかの蓮花の化身のような理屈で、ドラスは体内のスーパー宝貝を行使した。
 残り少ない体力を根こそぎ奪われるが、ドラスは無理矢理に意識を繋ぎ止める。
 倒れてしまえば、自らを覆うエネルギーは消滅するだろう。
 そうなれば終いだ。コアに突き刺さっている刃を押し止めることができなくなる。

「おおおォォォォ!!」

 残った左の拳を握り締めて、ドラスは声を張り上げる。
 コロンビーヌが右腕を突き進めようと開天珠を噴射させ前進しようとするものの、微動だにしない。
 まるで喰らいついているかのように、エネルギーの結晶体は輝く刃を離そうとしない。
 逆噴射で引き抜くことすら不可能。
 コロンビーヌが試行錯誤しているうちに、ドラスは左腕を振り上げている。
495参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:24:21 ID:jW6SjWWT
支援!
496参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:24:29 ID:m11l0Vbu
    
497参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:24:31 ID:psC7buV6

498鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:24:55 ID:7CswXM+J
 切断された箇所だけでなく、口からも緑色の血液を撒き散らしながら絶叫。

「ッ、らアアァァァァーーーーッ!!!」

 硬く握ったドラスの左の拳が、振るい落とされるかのようにコロンビーヌの頬にめり込む。
 インパクトの瞬間に、限界が来たのか白黒のエネルギーは消失。
 コロンビーヌは踏み止まってコアを一閃しようとするもの、腹部から鈍い音が響く。

「なっ、嘘、でしょう――?」

 思わず漏れた疑問の声に、いっそう大きくなっていく破砕音が返答する。
 そしてついに乾いた音とともに、コロンビーヌの腹部は引き千切れた。
 コロンビーヌのボディは二つに分かれ、そうなれば衝撃を受けている上半身が踏み込めるはずがない。
 衝撃を受け流すことも出来ずに、コロンビーヌは凄まじい勢いで落下していく。
 超古代のエネルギーがあるとはいえ、腹部から擬似体液が漏れている現状では開天珠に回す体力はない。

 結果――――勢いよく吹き飛んだコロンビーヌの上半身は、ひび割れていた足場をぶち抜いて床下まで追いやられた。

「……がっ、ぐァぅぅ…………」

 埋まっていったコロンビーヌの姿を確認することなく、ドラスはくず折れる。
 というより、拳を叩き込んだ直後には倒れ込んでいた。
 ドラスが地面に触れるより早く、コロンビーヌが床へと突っ込んだだけの話。
 苦悶の声を上げながら首を動かして、ドラスは周囲を見渡す。
 視界は霞んでいるが、残されたコロンビーヌの下半身と飛散している銀色の液体は確認できた。
 上半身は床に空いている穴に突っ込んだものと判断し、ドラスはコロンビーヌの死を確信する。
 撒き散らされている銀色の液体の量は、フランシーヌ人形が言っていた自動人形の致死量を超越していたからだ。

「ぅ…………」
499参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:25:52 ID:LzZh1cqh
支援
500参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:25:57 ID:rgnzddp4
支援
501参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:26:04 ID:jW6SjWWT
 
502鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:26:07 ID:7CswXM+J

 ドラスの意思に反して、持ち上げていた首が床まで落ちてくる。
 焼かれた上に傷を付けられ、ネオ生命体の中核をなすコアはダメージを受けすぎていた。
 だが、まだ破壊はされていない。
 その事実に、ドラスは頬を緩める。
 まだ守れるのだ。

「でも……さす、がに……」

 襲い来る睡魔に、ドラスは身を任せる。
 急所であるコアにダメージを受けた状態でスーパー宝貝を使ったのだから、意識の糸が切れそうになるのも当然か。
 と言っても、そこはネオ生命体。万全でなくとも、十分ほど休めば再び戦闘は可能になるだろう。
 とはいえ、それまでは何の動作もできそうにない。
 動くのはもちろん、金属に呼びかけて黒ずみかけた紅いボディに取り込むことさえも。

「ちょっと、だけ…………」

 誰もいないはずの闘技場で静かに言うと、ドラスの漆黒の瞳から光が消える。
 しかし床にくっついている胸部は上下しており、そこから見えるコアは確かに輝いていた。


 ◇ ◇ ◇


 闘技場の真下。
 そこに、部屋はもう一つあった。
 バトル・ロワイアルを開催した未来人でさえ知らない、それゆえに監視カメラなど仕掛けられていない部屋。
 シグマが用意したのだ。もしもの際に、そこに『ソレ』を隠すために。
 現在、『ソレ』はここにある。
 最悪の展開を考慮したシグマによって転送され、その事実を唯一知るシグマはもういない。
 だというのに『ソレ』がある部屋へと、彼女は偶然入り込んだ。
503参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:26:52 ID:rgnzddp4
 
504参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:26:56 ID:LzZh1cqh
支援
505鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:27:14 ID:7CswXM+J

「……ぐぅ…………」

 自らを照らす光に、落ちかけていたコロンビーヌの意識が覚醒する。
 流した擬似体液は、明らかに致死量。
 ゾナハ蟲を呼び寄せて液状化させたところで、下半身がないのだから流れるだけだ。
 死を確信しながら、コロンビーヌは首を灯りの方へと向け――――言葉を失った。
 あったのは、何やら仰々しい装置。
 それだけでは正体が分からないが、それに大きく張られた紙にその名称と使用方法が記されていた。
 その正体は『簡易型並行世界移動装置』。
 シグマが正義を志す者のために記した説明書までもが、ご丁寧に添えられている。
 使用方法は、至極単純。
 画面に映っている名簿から一つを選べば、その参加者が存在した世界まで転送してされるという。

「っ、ぁ…………」

 今の状態では優勝して賞品を貰うのは無理だが、戻ることはできるのだ。
 才賀勝に会えるのなら、もうそれだけで十分だった。
 開天珠での飛行など不可能。むしろ体力を奪われるので剥ぎ取りたいが、それをしようとすれば身体を上げなければならない。
 そうすれば擬似体液が漏れ出てしまう。
 だから体力をさらに吸われながらも、震える両腕で地を這う。

「蟲……よ、来ォ、い……っ」

 ゾナハ蟲を呼び寄せて擬似体液へと変換させる。
 しかし大多数をドラスに取り込まれているため、量が少なすぎる。
 右腕に纏わりついて刃となっていたものも液状化させるが、それでもまだ足りない。
 何せ、動くたびに零れていくのだから。
506参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:27:22 ID:jW6SjWWT
  
507参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:28:05 ID:kd7HlzT8
支援
508参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:28:11 ID:LzZh1cqh
支援支援
509参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:28:55 ID:XI9OLnwm
グラーフアイゼェェェェェン
510参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:28:55 ID:jW6SjWWT
支援ッ……!
511鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:29:09 ID:7CswXM+J

 ――――さみしかったんでしょ?

 いつかの『ゲェム』が、コロンビーヌの頭の中に蘇る。
 才賀勝が、ある人形へと告げた言葉だ。
 あの時は馬鹿馬鹿しいと罵ったが、いまのコロンビーヌは違う。
 元より恋愛小説に惹かれたのは、さみしかったからなのかもしれない。

「く、は…………」

 平行世界移動装置まで、残り二メートル。
 そんなところで、コロンビーヌは地に臥せてしまう。
 擬似体液が溢れ出すぎたせいで、もはや身体を引きずるだけの力がないのだ。
 旧ボディのコロンビーヌは感覚機関が優秀でないというのに、彼女には床がとてつもなく冷たく感じた。

「……ぃ、ゃ」

 動かない両腕をコロンビーヌは叱咤する。
 壊されても元に戻るだけなどと、壊し合いが始まった当初は考えていた。
 だが、コロンビーヌはここに来てその認識を改める。

 ――――もう抱きしめられちゃった……
512鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:29:55 ID:7CswXM+J

 ある人形破壊者の姿が浮かぶが、コロンビーヌは彼女のように笑うことができなかった。
 どうしても生きて帰りたい。その思いに嘘を吐くことなど、到底できそうもない。
 漏れ出た擬似体液を手で掬って、体内へと流し込む。

(身体も服も半ばで引き千切れて、その上でこんなこと……まるで物乞いみたいね)

 胸中で自嘲的に吐き捨てながら、コロンビーヌは両腕を諦めて這いずる。
 汚らしい格好も情けない行動も好きではないが、それでも彼女は這いずり回る。
 全ては、もう一度あの温かさを味わうために。

「もう、すぐ…………」

 そうして、ついに彼女は到達する。
 ボタンまで手は届かないが、PDAを投げればいいだけの話。
 自分の名前を選択しようとして、不意に思う。
 パンタローネのいた世界では、すでに加藤鳴海とエレオノールがくっついているという。
 自分のいた時間に戻って才賀勝が身を引くのを待つよりも、そちらに行ってしまったほうが早いのではなかろうか。
 悩むのに、大した時間はかからなかった。
 いち早く傷心の才賀勝に出会うため、コロンビーヌは自分がかつていたよりも後の時間を選んだ。
 腕は震えているが、そこは二世紀も曲芸に勤しんできた彼女。落ち着けば外すことはないだろう。
 取り出してPDAを握って意識を集中させる彼女には、余計な物は聞こえないし見えていない。そもそもそんな余裕などあるものか。
 彼女の脳内にあるのは、標的とこれより訪れる幸福だけだ。全ては、ここから始まるのだ。
513参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:30:25 ID:LzZh1cqh
支援
514参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:30:38 ID:jW6SjWWT
戦いの場所は心の中、か……
515参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:30:57 ID:PzYy9EQG
支援
516参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:31:35 ID:jW6SjWWT
 
517鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:32:13 ID:7CswXM+J


 ◇ ◇ ◇


 床下を這っていたコロンビーヌが静止したことで、闘技場内は再び静寂に包まれ――――ていなかった。
 微かな音が、断続的に部屋の至るところでで響いている。

 落下してきた照明や石柱、起爆宝貝、分子破壊光線、射出宝貝、ドラスやコロンビーヌ自身の肉体……――――

 繰り広げられた激闘は、闘技場を激しく傷付けていた。
 照明がまず小さな傷を付け、起爆宝貝が部屋全体にその亀裂を広げた。
 二度の分子破壊光線が壁を蒸発させたことで、整っていた部屋の形状はいびつになった。
 その歪んだ部屋へと射出宝貝が射出され、直撃した石柱を中心に亀裂はさらに深くなる。
 次いで超古代のパワーを上乗せした起爆宝貝に、それを受けたネオ生命体の肉体が壁を痛めつける。
 いびつとなって耐衝撃性が落ちている部屋に、さらに衝撃が加わった。
 やがて、コロンビーヌが突っ込んだことで床に穴が空いた。
 シグマが監視カメラの及ばない箇所を作るために、強引に作られた床下。
 そこに繋がる風穴が、闘技場にとって致命傷となった。
 これまで刻まれたひび割れが、一つの決壊をきっかけに集束する。
 何とかこれまで持ち堪えていたが、ここまでが部屋自体の限界であった。

 やけに軽い音とともに、まず残っていた石柱と照明が倒れた。
 支えにもなっていたそれらを全て喪ったことで、天井が落下する。
 その衝撃で、床下を隠していた鉱石製の床がいとも容易く崩壊。

 幸せな思い出を守れることに歓喜したネオ生命体も、夢をその手に掴みかけていた自動人形も、誰もが夢見た無数の世界を移動する装置も、例外はなく。

 ――――無作為に、無慈悲に、無感動に、無差別に、瓦礫は全てを埋め尽くした。
518参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:32:33 ID:kd7HlzT8
支援
519参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:32:41 ID:rgnzddp4
  
520参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:33:31 ID:LzZh1cqh
支援
521鏡(後編) ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:33:31 ID:7CswXM+J


【コロンビーヌ@からくりサーカス:死亡確認】
【ドラス@仮面ライダーZO:死亡確認】
【残り参加者:6体】


【支給品、アイテムに関する備考】

※乾坤圏(右腕)@封神演義、カセットアーム@仮面ライダーSPIRITSは、両断されました。
※グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerSは、爆散しました。
※開天珠@封神演義、ギギの腕輪、ガガの腕輪@仮面ライダーSPIRITSは、コロンビーヌが装備したまま瓦礫に埋もれました。状態は不明。
※コロンビーヌが所持していたPDAは、瓦礫に埋もれました。
※ドラスの体内にあった物品は、全て消滅しました。
※簡易型並行世界移動装置は、瓦礫に埋もれてました。状態は不明。
522参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:33:33 ID:jW6SjWWT
支援
523 ◆hqLsjDR84w :2009/09/26(土) 23:34:39 ID:7CswXM+J
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら、指摘してください。
再延長を認めてくれた住人のみなさん、また支援してくださった方、ありがとうございました。
524水先案名無い人 :2009/09/26(土) 23:41:09 ID:qOS7ydzB
投下乙!
二人の愛のせつない物語。
愛ゆえに人は苦しまなければならない
それは機械も同じことなんだろうね
とてもいいバトルでした。

そして、埋もれてしまった脱出手段
最終回に向けてとてもわくわくするぜ
525参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:45:23 ID:jW6SjWWT
投下、乙です。
作られたモノ達の、偽らざる真実の想いのぶつかり合い、故の決着。
その結果に、憐れむよりも祝福を、哀悼よりも賞賛を。
それが、最後の瞬間まで全力で駆け抜けた彼らへ示せる唯一の敬意。
そしてなにより藤田イズム(を

愛に目覚めた2人の戦い、戦闘描写から心理描写まで実にお見事でした。
お前さんら、そんなに暴れたら部屋が崩れるぞと心配していたら本当に部屋が崩れて半ば呆然としてしまいました。
最重要アイテム、並行世界移動装置はどうなってしまったのか、気になるところですね。
ドラスがこのロワで出会ってきた人達のことを思い出しているのに対し、コロンビーヌが思ったのはからくりサーカスの面々のみ。
本当にこの2人は、似ているが故に正反対だったというのが良く現れていたと思います。
個人的には凱オジさんの件とまさかのゲスト出演(?)のナタクが良かったです。
GJでした!

次回で最終回か……感慨深いです。
526名無しより愛をこめて :2009/09/26(土) 23:49:09 ID:m11l0Vbu
投下乙です。

愛をもった二人の戦いの結末、GJ!
守るために戦ったドラス。
奪うために戦ったコロンビーヌ。
二人の意地が余すところなく描写されていました。
もう一度GJ!
527参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:52:23 ID:LzZh1cqh
投下乙!
ここで出会った人達の想いを糧に奮い立ったドラス
最後の最後の最後まで求める愛の為に前に進んでいったコロンちゃん
形は違えど同じ『愛』に突き動かされた二人故に訪れた平等な結末
傍観者の欺瞞かもしれないが二人にかけられる言葉がこれしか思いつかない…

死力を尽くしてよく頑張った!

そして一体どーなった並行世界移動装置!
対主催にもメガシュワ組にとっても最重要アイテムだけに今後が気になる
熱く、切なく、今後の波乱を感じさせる力作でした重ね重ね乙!
528参加するカモさん:2009/09/26(土) 23:57:24 ID:snE/a8bN
投下乙です
二人とも愛に目覚めた
しかし二人ともまさに鏡のように対照的だった
最後まで全力で駆け抜けた二人
そして二人とも燃え尽きたか
いや、熱いバトルでしたわ。よくこんなのが書けるな

これで残りは6人。終焉へと向かうが並行世界移動装置が埋まるとは
最終回はどうなるんだ? ああ、彼らに祝福あらんことを。
529参加するカモさん:2009/09/27(日) 00:06:55 ID:JaRC35lv
最終回がどんな規模になるかわからんけど
途中で埋まりそうだから早めに生存者表作成
しかし見事に真っ黒に…
530参加するカモさん:2009/09/27(日) 00:08:34 ID:JaRC35lv
1/5【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/ ● 風見志郎/●神敬介/ ● 城茂/●村雨良
1/5【魔法少女リリカルなのはStrikerS】●スバル・ナカジマ/ ● ギンガ・ナカジマ/●チンク/ ● セイン/ ● ノーヴェ
0/4【からくりサーカス】●フランシーヌ人形/●コロンビーヌ/ ● パンタローネ/●アルレッキーノ
1/2【ロックマンXシリーズ】●エックス/○ゼロ
1/2【ターミネーター2】○T-800/ ● T-1000
0/2【攻殻機動隊】●草薙素子 / ● タチコマ
0/2【サイボーグクロちゃん】 ● クロ/●ミー
0/2【ToHeart】●マルチ / ● セリオ
0/2【ザ・ドラえもんズ】●ドラ・ザ・キッド / ● 王ドラ
0/2【マルドゥックシリーズ】●ルーン・バロット / ● ディムズデイル・ボイルド
1/2【パワポケシリーズ】 ● 灰原/○広川武美
0/1【ロックマンシリーズ】●ロックマン
0/1【ジョジョの奇妙な冒険】●ルドル・フォン・シュトロハイム 
0/1【魁!!クロマティ高校】●メカ沢新一  
0/1【勇者王ガオガイガー】●獅子王凱
0/1【魔法先生ネギま!】●絡繰茶々丸
0/1【封神演義】●ナタク
0/1【Dr.スランプ】●則巻アラレ
0/1【VOCALOID2】●初音ミク
0/1【クロノトリガー】●ロボ
0/1【サイボーグ009】●009(島村ジョー)
0/1【THEビッグオー】●R・ドロシー・ウェインライト
0/1【スーパーロボット大戦シリーズ】●ラミア・ラヴレス
0/1【ゼノサーガシリーズ】●KOS-MOS
1/1【人造人間キカイダー】●ハカイダー 
0/1【仮面ライダーZO】●ドラス 
1/1【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン 
1/1【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント 
0/1【メタルギアソリッド】●グレイ・フォックス 
0/1【PLUTO】●ゲジヒト
0/1【究極超人あ〜る】●R・田中一郎
【6/50】
531参加するカモさん:2009/09/27(日) 00:09:52 ID:62jLfrXT
投下乙&GJ!
まさに鏡写しのドラスとコロンビーヌ
互いに己の「愛」の為に、死力を尽くした2人に、死後の安らぎがあらんことを
532参加するカモさん:2009/09/27(日) 00:18:51 ID:O7kszuYh
>>530を生存者のみ&ちょっと加筆してみた

【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/仮面ライダー1号
【ロックマンXシリーズ】○ゼロ/特A級イレギュラーハンター ○ストーム・イーグリード/天空の貴公子
【ターミネーター2】○T-800/シュワちゃん
【パワポケシリーズ】 ○広川武美/合法ロリ(らしい)
【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン/(腹筋の)破壊大帝 
【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント/ディケ 
【マルドゥックシリーズ】○ウフコック・ペンティーノ/金色のダンディ鼠
533なまえないよぉ〜 :2009/09/27(日) 23:22:58 ID:CHX0eLfz
>>530さん
なのはとキカイダーの生存者人数に間違いがありますよ
534 ◆hqLsjDR84w :2009/09/27(日) 23:24:23 ID:K+xvvH1f
予約きたこれ!
535名無しくん、、、好きです。。。 :2009/09/27(日) 23:24:58 ID:raDsxbYR
一ヶ月しか全裸にならなくていいのか
余裕にできるな。
536参加するカモさん:2009/09/27(日) 23:26:41 ID:K+xvvH1f
鳥付けっぱだった。
しかし楽しみすぎるww
537参加するカモさん:2009/09/28(月) 09:12:47 ID:57k+H8xZ
ついに完結かーw
538創る名無しに見る名無し :2009/09/28(月) 21:24:11 ID:1po1wd4V
一月死ねんな
539参加するカモさん:2009/09/28(月) 21:54:13 ID:pNh8A81I
今からワクワクが止まらないぜ!
540参加するカモさん:2009/09/28(月) 22:04:30 ID:1po1wd4V
もう最終盤だし、書き手別殺害数ランキングみたいなん作ってみようかな
死者と書き手が分かったら、何か話題の種になりそうだし
541参加するカモさん:2009/09/30(水) 01:21:40 ID:hk2VcH9N
まさかシュワちゃんとメガちゃんがラスボスになるとは・・・・・・
542参加するカモさん:2009/10/02(金) 23:45:29 ID:Vy1XOTzL
人がいない。試しに話題を振ってみよう。

遂に最終回が目前に迫って来たロボロワ。その中で、一番思い入れが強い話について語ろうぜ!
俺が一番思い入れがあるのが『Wake Up.THEヒーロー』
この作品があったからこそ、俺は本当の意味でロボロワ住人になった。これは間違いない。
内容も、茂の無常な死と敬介の絶望が、ライスピファンの俺にはとても印象的だった。
543NO MUSIC NO NAME :2009/10/02(金) 23:59:58 ID:48LFgNjm
んー、迷うけど「赤い戦士と銀髪隻眼少女の邂逅」かなー
あの話すきだわー
なのは全然知らなかった俺が、原作気になったし。見てみたら、チンク姉はあんまり出てなかったけどw
あととにかく、風見さんがかっこよかった
復讐で繋げるのはうまいよなー。
次のボイルド遭遇といい、風見さんは最初から目だってたなあw
544水先案名無い人 :2009/10/03(土) 00:00:44 ID:4DvwECZ2
ココロの在り処かなぁ

マーダーなはずなハカイダーがすっげえヒーローっぽくってワロタw
545七つの海の名無しさん :2009/10/03(土) 15:09:44 ID:d7nRlH33
俺も迷うが兄弟/姉弟/家族かな
まだドラスがステルスな時はどうなるかと思ったがこういう話の展開もあるのかと関心した
ロボロワの方向性を確立する話だった
546名前が無い@ただの名無しのようだ :2009/10/03(土) 15:28:28 ID:hhgsUVWu
不幸運ぶ黄金の風、かな。
笑えて、熱くなれて、切なくなれるいい話だった。
シュトロハイムの序盤退場は残念だったけど、この話はかなりおもしろかったなー。
鬼のような強さと耐久で向かってくるアラレ、人間の偉大さを語るシュトロハイムがよかったぜ。
547参加するカモさん:2009/10/08(木) 06:14:01 ID:9Xl8Cd/t
月並みだが、狂い咲く人間の証明
序盤との違いがこれでもかってくらい出たすげぇ話だった。
極悪マーダーだったXは超頼りになるし、自重しろ馬鹿としか思わなかったナタクは素晴らしい兄貴だし
何よりエックスが敵になったら強くなるの法則を完全に体現してて半端なかった。
スピアチャージショット怖いよスピアチャージショット。

あとぶっ壊れた親友の首を躊躇なく刎ねるゼロさんかっこよすぎです。
548 ◆hqLsjDR84w :2009/10/09(金) 02:59:18 ID:A8rZTYTB
『鏡』をwikiに収録し、誤字を修正しましたので報告を。


あと、死亡者リストの殺害数についてですが……
自分としては、ターミネーター軍団は別として非参加者の分も含めてカウントしたいので、現在のようにしてあります。
非参加者は外して考えて欲しい、などの意見ありましたら言ってくれたら嬉しいです。
その意見が強ければ、そのように修正しますので。
549名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/10/09(金) 21:22:10 ID:Wg6367Tv
やっぱり非参加者はカウントしない方がよろしいのでは?
あとコロンちゃんは本文見る限りだとドラスの攻撃が致命傷で
建物が崩落する前に死亡したように見えるのですが違うのですか?
550参加するカモさん:2009/10/09(金) 21:33:08 ID:VW4w4Q47
非参加者入れてもいいと思うがなぁ
死亡者リストには、別に参加者限定って書いてないし
551参加するカモさん:2009/10/09(金) 21:33:54 ID:VW4w4Q47
あと、俺はコロンビーヌも崩れてきた瓦礫で死んだものと思ってたな
552名無しより愛をこめて :2009/10/09(金) 21:41:04 ID:IIzAVrgN
俺もいれていいと思うな。
別段彼らだけ別計算にする必要もないし。
553参加するカモさん:2009/10/09(金) 21:42:00 ID:RgPmAFsi
俺もコロンビーヌとドラスは崩落に巻き込まれて死亡したように思えた。

だがこの場合キルスコアは誰になるんだろうか。
床板ぶち抜いて地下まで突っ込んだコロンか?それともコロンを叩き付けたドラスか?
死者スレネタ採用するならよりにもよって闘技場の地下に空間作ったシグマになるがw
554参加するカモさん:2009/10/09(金) 21:56:22 ID:Wg6367Tv
>>552>>550
う〜ん…原作バトロワから見てる者としては
参加者以外の死者をキルスコアに加えるのは
非常に抵抗があるんですが…

>>553
二人は事故死って事で無理に誰に殺されたか決める必要はないと思います
555参加するカモさん:2009/10/09(金) 22:03:15 ID:VW4w4Q47
ロワ内でのキルカウントなら非参加者入れるのは違和感あるけど、ロワ自体はイーグリード来た辺りから終わってるからなぁ
以降のロワ外で死んだ参加者をカウントするなら、俺は非参加者も入れたほうがいい気がする
556参加するカモさん:2009/10/09(金) 22:05:06 ID:VW4w4Q47
二人がどちらに殺されたか決める必要ないというのには、俺も同意
557以下、名無しにかわりましてVIPが実況します :2009/10/09(金) 22:37:31 ID:3RcqoDRd
でもターミネーター軍団は入れないのに、ってのは確かにある
558参加するカモさん:2009/10/09(金) 22:39:59 ID:IIzAVrgN
いやあ、ターミネーター軍団は単純に数が多すぎて入れれないだろう。
漫画ロワで再生怪人をキルカウントに入れるようなものだ
559創る名無しに見る名無し :2009/10/09(金) 22:44:08 ID:VW4w4Q47
スカイネットとして入れてもいいんだけど、そしたらシグマに入る気もするしなw
入れないが吉かとw
560参加するカモさん:2009/10/09(金) 23:29:11 ID:Wg6367Tv
死亡者リストに入れるのは可だけどキルスコアに入れるのは反対
561名無しより愛をこめて :2009/10/09(金) 23:36:42 ID:IIzAVrgN
>>560
なぜ二度も言うwwww
562参加するカモさん:2009/10/10(土) 00:08:40 ID:KzKqIFPN
大事なことなのでry

それはそれとして俺もスコアに入れるのは微妙な感じが
他ロワはどうなの?
563参加するカモさん:2009/10/10(土) 00:14:54 ID:q0O1w8NV
>>562
漫画ロワは普通に数に入っている。
564参加するカモさん:2009/10/10(土) 00:16:33 ID:kDmwv0OX
ざっと完結ロワのまとめ見てくるわ
565参加するカモさん:2009/10/10(土) 00:41:40 ID:kDmwv0OX
漫画、ギャルゲ1st、ジョジョ1st、書き手2nd、ニコ1stは、非参加者もカウントされてる。
スパは、非参加者がキルカウント上位にいるけど、そのキャラの分はどの参加者にもカウントされてない。読んでないから詳細は分からない。
スクロワはマーダーランキングとは別に、動物殺害部門がある。
アニロワ1st、アニロワ2ndは、非参加者をカウントしていない。

未完のところでは、二次スパと書き手3rdが非参加者もカウント。
ギャルゲ2ndは非参加者は( )付きで名前だけ挙げられているが、カウントはされていない。


どっちかに決まってるってわけじゃないね。
566名無しさん@涙目です。 :2009/10/10(土) 05:29:37 ID:bHjSWV9M
入れても入れなくてもどっちでもいいけど、該当話を書いた書き手が入れたい方針なら尊重すべきだとは思う
567創る名無しに見る名無し :2009/10/11(日) 13:29:07 ID:O5sBM2I9
うむ、別に今のままでいいと思うな
568参加するカモさん:2009/10/13(火) 20:09:17 ID:Z4x3hNBN
残り二週間か
569創る名無しに見る名無し :2009/10/17(土) 18:18:38 ID:b/2N0r93
最終回を前に読み返してて気付いたけど、投下数トップの二人凄いな
二人で全体の三分の一書いてるぜ
570 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/17(土) 19:51:18 ID:vb6g5ja7
少し失礼。

10/27日投下予定だったのですが、予想以上に速めに仕上がり、残すところは推敲のみとなりました。
そのため、投下を早めて10/20日の22:00より投下したいと思います。
130kbオーバーのため、当日支援をお願いします。
それではまた投下日にでも。
571メロン名無しさん :2009/10/17(土) 19:56:20 ID:LqR2WvyE
おお、あと数日か
なんだかわくわくしてきた
572参加するカモさん:2009/10/17(土) 20:01:36 ID:b/2N0r93
わくてか
573以下、名無しにかわりましてVIPが実況します :2009/10/17(土) 20:07:32 ID:ByCwCE7o
もうきたのか!早い!これで勝つる!
574参加するカモさん:2009/10/18(日) 00:11:01 ID:MyPrM6vz
うおお! 2日後に最終回ですか! これは今から楽しみです!
……死者スレラジオも何とか当日までにドラスとコロンちゃんまで終わらせたかったorz
575参加するカモさん:2009/10/20(火) 00:24:30 ID:HRWEUo6j
きたあああああ!
楽しみだなあ、うい
576名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/10/20(火) 18:24:46 ID:3P2mah3z
あと三時間とちょい
たのしみだぜー
577参加するカモさん:2009/10/20(火) 18:34:00 ID:ZQt3YRie
結局、2話しか書けなかったな
せめて支援はしたいところ
578名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/10/20(火) 19:31:32 ID:EXF67Bfl
>>577
お前は俺か
支援支援
579参加するカモさん:2009/10/20(火) 19:33:52 ID:jED8iXlw
後2時間半か
580メイク魂ななしさん :2009/10/20(火) 20:05:03 ID:JorB2xre
20:00だと思ってきたら、あと2時間後だった……
また、改めてきますw
581参加するカモさん:2009/10/20(火) 21:27:03 ID:HRWEUo6j
しかしスレは足りるのかな?
582参加するカモさん:2009/10/20(火) 21:42:25 ID:mPA3+ZZf
足りなくなる気はするけどとりあえずまだ立てなくて良いんじゃないか?
583ビタミン774mg :2009/10/20(火) 21:43:42 ID:bNQeDOlH
もうそろそろか
584参加するカモさん:2009/10/20(火) 21:54:08 ID:jED8iXlw
そろそろだな
585以下、名無しにかわりましてVIPが実況します :2009/10/20(火) 21:56:07 ID:8tpC7Ti3
なんでか俺が緊張してきたw
586名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/10/20(火) 21:56:21 ID:swhGwNEp
次スレはどういうタイミングで立てる?
587参加するカモさん:2009/10/20(火) 21:57:09 ID:jED8iXlw
こういう時は支援の速度が速いから900ぐらいか?
588参加するカモさん:2009/10/20(火) 21:57:13 ID:yyEGFfFc
>>585
君は私かw
ワクワクが止まらないぜ……!
589名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/10/20(火) 22:00:16 ID:iriNt1op
あと少し、全裸で待機せねば!
590 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:00:27 ID:tKhXLgHD
それではロボロワ最終回、投下を開始します。
591参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:00:41 ID:HRWEUo6j
 
592参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:00:50 ID:3P2mah3z
しえーん
593参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:01:03 ID:8tpC7Ti3
来たぜ全力全開でしえーーーーーーーーん!!
594名無しより愛をこめて :2009/10/20(火) 22:01:31 ID:JorB2xre
支援
595『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:01:31 ID:tKhXLgHD


 移民船団が漆黒の宇宙で浮かび、星の海を突き進んでいく。白い巨大な船体が太陽光を浴びて光る。
 ソルティはその光景を見つめながら、次々と記憶が蘇っていく感覚にとらわれていた。
 ソルティを慕う人々。いや、崇め縋る姿すらある。多くの人々が一様にかしずく中心に、ソルティ自身の姿があった。
「ソルティ……? 私の名……いや、違う……」
 一様に人々はソルティを敬うようにその名を呼ぶ。告げられた名前はソルティという発音でなかった。
「私は……ディケ…………」
 そう呟いたとき、記憶をすべて取り戻しきる。ソルティがそのことを自覚したとき、視界に光が広がって、またも場所が変わった。



 爆発物によって黒ずんでいる部分があるものの、正方形の部屋だったことは認識できる。
 ソルティは自分が寝かされていただろう別途を見つめて、床に寝かされている老人を発見した。
 いや、ソルティは彼がすでに事切れていることに気づき、哀しげに目を伏せる。
 そして、自分には仲間がいたことを思い出し周囲を見回した。
「ソルティ、手伝って欲しい。武美を連れてここを離れてくれ!」
「ソル……ティ……?」
 ウフコックの問いかけに、ソルティは戸惑った。ウフコックの助けを求める言葉への混乱ではなく、ただの記憶の奔流による混乱である。
 ソルティとディケ。
 明らかに異なる二つの自分にソルティはどちらの顔であればいいのか対応が遅れる。
 それでも基本は心優しき少女であるソルティは、武美の名を呼ぶウフコックに応えた。


 転がる老人の死体を前に、武美の思考が混沌とする。
 ライト博士は武美たちの力になってくれた。ソルティを助け、迷い悲しんでいる老人であった。
596参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:01:53 ID:3P2mah3z
ぬう、タイトル……w
597『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:02:12 ID:tKhXLgHD
 なのに、武美は彼を呪った。恨んだ。
 ただ、エックスの生み親だというただそれだけで。
 なぜこの人なのだろう? どうしてよりにもよって生み出したのがエックスだったのだろう?
 それ以外のなにものでもあれば――せめて名前も知らない、会ったこともない相手なら、どれだけ極悪人でもこんな感情を抱くこともなかった。
 そしてそんなくだらないことを考える自分の汚さが、とても情けなかった。
「武美! 武美! しっかりしろ!」
 ウフコックが名前を呼ぶが、武美は反応を返さない。ただ呆然と物言わぬ老人の死体を見詰め続ける。
 はたして誰の罪か?
 武美を襲ったエックスの罪なのか。そのエックスを作り上げたライト博士の罪なのか。たとえエックスの生み親だったとしても、人の死を喜んだ武美の罪なのか。
「武美さん! しっかりしてください!」
 聞こえてきたソルティの声に、ハッとなる。武美がソルティの瞳を見つめるが、その瞳を正面から受け止められない。
 『なぜ彼が死を喜んだ?』といっているような気がしたのだ。
 普段の武美ならここまで極端な反応はしない。しかし、武美は純真なソルティと、ひたすら正義であり続けた本郷と長く共にいすぎた。
 彼らの強すぎる正の感情は、武美の負の感情をはっきりと浮き出したのだ。ちょうど、強い光ほど影が濃くなるように。
 まるで武美は自身が彼らと一緒にいてはならない存在だと、責められているような感覚になったのである。
 そしてたまらず武美は駆け出した。
「武美! 待つんだ!!」
「武美さん!!」
 二人が驚いて声をかけてくる。その二人の声に、振り返らず武美は必死に『逃げ』た。


「ソルティ! 武美を追いかけてくれ」
 ウフコックはソルティに指示を出して、手袋へと変身【ターン】を終えてソルティの右手を覆う。
 ドラスへの対応は後回しだ。彼が生き残ると信じるしかない。
 武美はただ混乱しているだけだ。追いついて諭せば、冷静さを取り戻してくれるに違いない。
598参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:02:22 ID:HRWEUo6j
 
599参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:02:44 ID:8tpC7Ti3
 
600『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:03:08 ID:tKhXLgHD
 しかしソルティの手を完全に覆ったとき、ウフコックはソルティの心から不穏な匂いを嗅ぎ取る。
「ソルティ、君の方は大丈夫なのか?」
「あ、はい。大丈夫です、武美さんを追いましょう」
「俺に対して嘘を吐いてもすぐにばれる。知っているはずだ」
 ソルティはそのウフコックの言葉に沈黙し、武美を追いかける。
 確かに足取りはしっかりしている。されど、どこか影のある横顔にウフコックは不安になった。
 彼女は目覚めて間もない。この状況を把握していないだけなのだろうか?
 そう思考するのだが、ウフコックの勘が違うと告げる。もっと根源的な問題をソルティは抱えているように見えた。
 ソルティが悩むように口を開く。ウフコックは黙ってその言葉を待った。
「ウフコックさん、走りながら聞いてください。私……記憶を取り戻しました。私の本当の名前はディケだったんです」
 ソルティの告白を耳にしながら、ウフコックは予想外の答えであったため、『ああ』と返すしかなかった。


 ようやく走るのをやめた武美は、俯いて何度も荒い呼吸を繰り返す。
 頭が真っ白になるほど走れば、自分への嫌悪感も薄れると思っただが罪悪感は一向になくならない。
 むしろ一人でいればいるほど強くなってくる。周囲は謎の金属で出来た通路で、どうやってここまできたのか覚えていない。
 武美は力なく壁に背を押し付け、大きくため息を吐いた。
「風来坊さん……あたし……」
 その呟きは大好きな彼には届かない。武美もそんなことを期待していないが、彼の思い出がないと不安で死にそうなのだ。
 なのに、彼女の呟きに答える存在がいた。それはとても不幸なことに。
「あっ」
 武美の膝が疲労で崩れ、つい転んでしまう。刹那の間に武美の頭部があった場所へ銃弾が一発撃ち込まれる。
 武美が目を見開くと、まだ死んでいないT-888が一体だけ姿を現した。
 骨のようなフレームのターミネーターがミニガンを構えている。武美には乗り越えられない壁だ。
 殺されてしまう。なのに武美が恐怖に顔を引きつらせることはない。
601参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:03:18 ID:3P2mah3z
  
602創る名無しに見る名無し :2009/10/20(火) 22:03:21 ID:eiKYqr66
支援
603参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:03:53 ID:iriNt1op
支援するしかない!
604参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:03:59 ID:8tpC7Ti3
 
605参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:04:01 ID:3P2mah3z
   
606参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:04:16 ID:yyEGFfFc
支援!
607『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:04:25 ID:tKhXLgHD
 もっと怖い存在を知っているからだろうか。エックスの殺気はもっと理不尽で、どうしようもないものだ。
 ならば武美は殺されるか?
 他人の死を喜ぶ自分は殺されて当然だろうか。
(冗談じゃない)
 武美になぜか怒りが沸いてくる。大神が武美に仕込んだ寿命タイマーは残り半年もない。
 ここで死ぬのも、半年後に死ぬのも、武美という存在がなくなるのは一緒である。
(それでも、あたしは……あんたたちの好きにされるのは!)
 絶対嫌だった。自分の命は自分が使う。そんな当然のことはここでは許されない。
 そんな理不尽がまかり通るなど間違っているし、本郷もウフコックもソルティもその事実を嫌って反逆しているのだ。
 たかがライト博士が死んだ程度で、くれてやるほど半年の命は安くはない。
 ああ、そうだ。武美は自分の性根が嫌だから生きるのをやめるのではない。
 死ぬその日まで精一杯生きるために、『人間』であるために生きているのだ。
 それはライト博士でも、エックスでも阻害はさせない。
 T-888が腕を動かし、武美を狙う。武美はたまらず叫ぶ。叫ばずにはいられない。

「そんなのッ! 嫌だあぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 叫んでも無意味なのは知っている。それでも理不尽には嫌だと突きつけるのは、生きている証だ。
 そして、その証を守らんとする男の声が武美に届く。
『武美! 右に大きく跳ぶんだ!』
 本郷さん! と叫ぶ暇もなく、ほぼとっさに武美は飛び退いた。
 ほぼ同時にT-888の胸の装甲へ鎖に繋がれた鉄球が激突する。金属と金属が激突する甲高い音に耳鳴りがなりながらも、武美の前へ赤い影が躍り出た。
 赤い船外スーツのような野暮ったい服装の、髪を二つにまとめた少女。ウフコックが変身【ターン】した鉄球のハンマーを持っている。
 ソルティの右拳が淡く光り、振動を起こしてターミネーターへと突撃した。
「ソルティ……でいいんだな? 胸は駄目だ! 頭を狙え」
608参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:04:33 ID:HRWEUo6j
 
609参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:05:18 ID:yyEGFfFc
610参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:05:18 ID:8tpC7Ti3
 
611参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:05:18 ID:swhGwNEp
撲殺天使ソルティちゃんか
612参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:05:22 ID:JorB2xre

613『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:05:21 ID:tKhXLgHD
「はいッ!」
 ソルティの振動拳によってT-888の頭部が粉砕し、地面を滑りながらソルティは呼気を整えた。
 ズシンと、ターミネーターの倒れる姿を見つめて武美はヘタッと座り込んだ。


「武美、大丈夫か?」
「うん、走って頭を空にしたら楽になった。よくあたしの居場所が分かったね」
「少し見失ったが、俺が通信機に変身【ターン】して本郷に手伝ってもらった。本郷がシャトルに乗ったのが少しでも遅ければ、武美は死んでいたぞ」
「ごめん。死にたくないから、もう二度としない」
「ああ、そうしてくれ」
 どこか安堵したようなウフコックの様子をおかしく思いながら、武美は生きる遺志を告げた。
 そして今までソルティが話しかけていないことを不思議に思いながら、その顔を見つめると少し大人びて見える。
 なにかあったのか? と武美が疑問を持つ。
「その、武美さん。私は……どっちならいいんでしょうか? ソルティとディケ……」
「はあ?」
 武美が思わずマヌケな返しをすると、ソルティは困ったような表情を浮かべた。
 なにか説明しにくいような雰囲気に、武美は顔を近づける。
「武美さん?」
 武美は構わず、無遠慮にソルティの顔を見回すが、誰がどう見てもソルティだ。
 どこか調子がおかしいのか、と心配した自分が馬鹿みたいだ。武美は距離を置いて、ソルティに向き直る。
「どう見てもソルティじゃない」
「え……と、ソルティはロイさんがつけた名前でして、私には……」
「武美。ソルティは記憶を取り戻したそうだ」
 武美はソルティが記憶失っていることは聞いていた。そのことを把握してウフコックが分かりやすく、そして短く説明を終える。
 へえ、と武美は感心してソルティを向く。
614ゲーム好き名無しさん :2009/10/20(火) 22:05:42 ID:a+G3EUkg
 
615参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:05:43 ID:3P2mah3z
武美いいなあw
616参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:05:47 ID:eiKYqr66
支援
617参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:05:59 ID:bNQeDOlH
 
618参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:06:10 ID:8tpC7Ti3
 
619『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:06:12 ID:tKhXLgHD
「ソルティは嬉しくないの?」
「どうでしょうか……私はディケとして、エウノミアを止めるために地上に降りたのに……」
 ソルティの言葉を待って、武美は黙する。ソルティの顔はどこまでも穏やかだった。


 ディケの出自は特殊である。
 彼女の星で発達したリゼンブル技術では再現できない、完全なリゼンブル体「ジェニュイン」であるのは人間たちを見守るためであった。
 事実彼女は、移民した星の人々を同じく移民船の統制システムであるエウノミアやエイレネと共に長年導いてきた。
 なのになぜだろう?
 幾百年過ごした年月より、ロイの娘として『ソルティ』の記憶が彩っているのは。
 一度掴んでは忘れられない。一度得ては離すことは出来ない。
 人間としての日々はここまで素晴らしかったのか。
 ゆえに彼女は、『ディケ』として使命を帯びて地上に降り立つより、
「ソルティとして、ロイさんの娘で、皆さんのお友達でいたいのかもしれません」
 『ソルティ』として人間でいたかった。だからこそ、使命と人間性の合間にソルティは戸惑っていたのだ。
 こんなことを武美に言っても仕方ないのかもしれない。ディケとしての使命は彼女の世界の話だ。
 娘として存在したいという想いも、帰ってロイに伝える以外手段はない。
 ソルティのその葛藤に気づかず、武美はなんでもないように告げる。
「要するにあたしはソルティと友達ってこと? そんなの当たり前じゃん」
「……すごくおばあちゃんでもいいのですか?」
「ええ!? 若々しい……羨ましい……」
「まあ、私に老いはありませんから」
 目の付け所がずれている友人を相手に、ソルティはクスリと笑う。
 記憶があろうとなかろうと、武美との関係は変わらなかった。
 ならば戻っても、自分の持ちようさえ確かならロイの娘でいられるのではないか?
620参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:06:17 ID:HRWEUo6j
 
621参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:06:32 ID:yyEGFfFc
本郷さあああああああん!!
622『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:07:04 ID:tKhXLgHD
 だからこそ、ソルティはロイのいる星を守るために、改めてエウノミアを止める決意をした。


 二人の少女が穏やかに談笑している姿を見つめ、ウフコックは深々と息を吐いた。
 それは安堵のものではない。ウフコックの鼻が、武美の罪悪感はまだ残っていると語っていた。
 武美は表面上取り繕っているが、ただライト博士の死から目を逸らしたに過ぎない。
 もちろん、ウフコックはそのことを責める気はない。むしろ気を病む武美が正常なのだ。
 ソルティのような純真さも、本郷のような正義の強さも、誰にも持てるものではない。
 そして、エックスの生み親という事実は武美に影を落とす要因となる。
(バロット、君ならこんなときにどう動いたのだろうな)
 女性の心理はウフコックには謎だ。喋れるが人間ではない。そしてもはやネズミですらない。
 種族としても煮え切らないウフコックに、人間の女性の心理は永遠の謎の一つだ。
 こういう場面でも頼もしき相棒を思い出したのは、感傷的になっているのだろう。
 ウフコックは静かに、武美の肩へと乗った。
 一段楽したところで、ドラスを捜索しようとウフコックが提案をしかける。
 その寸前で、武美がウフコックに通信機になるよう伝えてきた。
 本郷から連絡か。すぐにウフコックは通信機へと変身【ターン】する。
『コロニーが地球に向かって動いている。どういうことか、確かめて欲しい』
 本郷の声が通信機から薄暗い通路に響く。
 ハッとして二人と一匹は、窓から外の様子を確かめた。



「月面飛行蹴り――――ッ!!!」
 エネルギーをまとって両脚蹴りがメガトロンの顔面にぶち当たり、ゼロは反動で飛びのいた。
623参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:07:07 ID:swhGwNEp
支援!
624参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:07:10 ID:HRWEUo6j
 
625参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:07:33 ID:eiKYqr66
 
626参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:07:38 ID:8tpC7Ti3
 
627参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:07:47 ID:JorB2xre

628『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:07:46 ID:tKhXLgHD
 息も荒く床に降りてゼロは正面を睨む。いつものように華麗な着地が出来ないが、右腕を失い腹に穴が開いている状態では上出来だ。
 重い音をたてて倒れるメガトロンの赤い巨体を見届け、左手のΣブレードを顔の前に構える。
 オイルがトバッ、と漏れて床を濡らした。途切れそうになる意識に活を入れながらも、ゼロは執念だけで立っている。
「チッ、死に損ないが……」
「さて、メガトロン。奴らは戦うようだが、このまま殲滅するか?」
「いいや、ここは嫌がらせといこうじゃないか、シュワちゃん」
 シュワちゃんと呼ばれたT-800は右手のミニガンの銃口をイーグリードに向けつつ、左のミニガンを降ろした。
 ゼロはメガトロンの竜を模した右手を向けられ、下手に動けない。
 その様子を見ながら、メガトロンはにやりと笑みを浮かべる。
「やっちゃいな、シュワちゃん!」
 メガトロンがゼロとイーグリードに向かって炎を噴出す。
 ゼロは回避行動に移り、メガトロンと距離をとらざる得なかった。イーグリードもまた同様だった。
 その隙にT-800はモニターの操作パネルに近づき、一つキーを押し込んだ。
 トラップが待ち構えている、とゼロは身構える。
「そんなにびびらなくてもいいじゃん」
 メガトロンのからかうような言葉に、なにも起きていないことへ疑問を持つ。
 自分たちに不利な状態になった様子はない。
 すると、メガトロンが指を鳴らしてモニターに宇宙空間が映る。
「コロニーが移動を開始しているだと!」
「正解だ、鳥さん。ゼロ、俺様たちはこいつをこの世界の地球に落とすぜ。ちなみにここで解除は無理だ。ハアーハッハッハッハ!!」
「くっ!」
 ゼロは呻いて、身体を前倒しにメインパネルへと向かう。イーグリードが後ろから援護してきた。
 さすがは旧来の友。言葉なくても互いに通じ合っている。
 ストームトルネードがメガトロンとゼロの間の地面を削り、ゼロは左手を振り上げてパネルをコンピューターごと一刀両断する。
 それでも宙に浮かぶモニターのコロニーは止まりはしない。
629参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:07:56 ID:HRWEUo6j
 
630参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:08:18 ID:iriNt1op
おのれ、ディケ!この世界も破壊するつもりか!支援
631参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:08:30 ID:8tpC7Ti3
  
632参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:08:54 ID:JorB2xre

633参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:08:55 ID:3P2mah3z
メガちゃんはやっぱメガちゃんだぜ!w
634参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:09:08 ID:HRWEUo6j
 
635『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:09:07 ID:tKhXLgHD
「くはは、無駄だ無駄だ〜!!」
「それくらい察しがつくとは思ったのだがな」
「シュワちゃん、こいつら正義の味方は無駄と分かっても動かないといけないのさ。そういう人種だ」
 くっ、とゼロが奥歯を噛み締めるが、まだ希望はある。武美がこの事態に気づいてさえくれれば。
 イーグリードを戻らせて、自分が食い止めておくか?
 ゼロは迷っていると、部屋の通信機が動き始めた。
『ゼロさん、イーグリードさん、聞こえる!』
「うわ、びっくりしたな〜もう!」
 メガトロンの傍にスピーカーがあったのだろう。今度はゼロが笑みをメガトロンへと浮かび返す。
 武美がここのスピーカーから通信しているということは、こちらの会話も届くのだろう。
 コロニーのことを告げようとしたとき、スピーカーから武美の声が響く。
『本郷さんからコロニーが動いているって聞いた! サブコンピュータールームで推進システムにハックするから、そいつら抑えていて!』
「了解した、武美! いくぞ、イーグリード!!」
「当然だ!」
 イーグリードがT-800へ向かい、ゼロがメガトロンへとΣブレードを振り下ろした。
 メガトロンの竜の牙と、Σブレードの刃が交差する。
「チッ、てめーらハッキングが得意な奴がいたのか!?」
「俺たちの自慢の仲間だ!」
 ゼロは言い切り、腹部に走る激痛を無視しながらΣブレードを横へ振るった。


 ハッキングが得意な奴が仲間にいるとは予想していなかったが、メガトロンは余裕の態度を崩さない。
 どう見てもゼロもイーグリードも詰んでいる。メガトロン大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーまで後一歩だ。
 メガトロンは竜の頭を模した右手のを大きく振り、ゼロと距離をとる。
「あ〜、もしもし! もしもし! コロンちゃん、そっちの首尾はどうよ?」
636参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:09:16 ID:eiKYqr66
  
637参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:09:50 ID:HRWEUo6j
 
638参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:10:07 ID:Vp6Jaez0
 
639『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:10:11 ID:tKhXLgHD
 PDAの通信機能をONにして話しかけた。こちらから指示を出しやすくするための処置だ。
 ふふん、とゼロを見下すと面白いように憎しみの視線を向けられる。
 どうにかしたいのに、なにもできない。そんな状況の正義の味方が、メガトロンは大好きだった。
「あれ? もしもし……チッ、モニター!!」
 反応が返ってこないことをメガトロンは訝しげながら、コロンビーヌが向かったであろう場所を指を鳴らしてモニターに表示させる。
 九分割された映像の中に、コロシアムで瓦礫にはさまれて機能を停止しているコロンビーヌとドラスの姿が辛うじて映った。
 メガトロンは戦力を失ったことに舌打ちしながらも、僅かに除いた装置に目を輝かせた。
「おっ、アレは平行世界移動装置か。そうだろ? 鳥君」
「……黙れ」
 短く切って捨てるイーグリードの余裕のなさから、メガトロンは自分の言葉が真実であることを知る。
 とたんに、戦力が減った不機嫌が吹き飛んだ。
「こりゃ、都合がいいや! 厄介な奴も一人減らしたみたいだし、コロンちゃん最期までいい働きするぜ」
「……キサマ、今まで共に戦った仲間だろう!」
「まあ、死んじゃったならしょうがないよね。あはは〜」
 怒りを示すイーグリードにメガトロンはあっさりと返す。同時に、T-800がミニガンをイーグリードへと放った。
 シュワちゃんナイス援護、と呟きながらゼロへ向き直ると、僅かに悲しみを示している様子を見つけた。
「ほう、仲間でも死んで哀しいのか?」
「黙れ、メガトロン!」
 ゼロがΣブレードの刃を鞭のように伸ばし、メガトロンは軽々と避けてT-800の傍による。
 舞台は整った。後は正義の味方をすべて殺すだけ。
「シュワちゃん、二手に別れようぜ」
「ほう。ゼロを確実にしとめるためか」
「まあね」
 頭の早いT-800に笑みを浮かべて、メガトロンは作戦を脳裏に浮かべる。
 二手に別れれば、仲間を庇うためにイーグリードもゼロも、それぞれ別れて追わねばならない。
640参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:10:35 ID:yyEGFfFc
このメガちゃんはww
641『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:11:05 ID:tKhXLgHD
 半死半生のゼロがどちらを追っても、しとめるのにそう時間はかからない。
 イーグリードは残ったほうがひきつけ、ついでに正義の味方でハッキングが得意な奴を殺しに向かう。
 メガトロンは思考を整理し終え、一発大きな炎をゼロとイーグリードの間に放つ。
 避けられるのは計算のうち。これを合図にメガトロンとT-800は二手に別れる。
「鬼さんこっちら!」
「待て! メガトロン!!」
 どうやらゼロに止めを刺すのはメガトロンに決まったようだ。
 ほくそ笑みながら、メガトロンはゼロを誘った。
 ただ一つ、メガトロンが気づいていない事実がある。
 それは、平行世界移動装置が半壊していることであった。



「メガトロンたちがコロニーを地球に落とすつもりか……やっかいな」
 本郷はシャトルの行き先を変更し終えて、一人ごちる。
 ベルトの修復は八割完了だ。もっとも、変身は旧1号の方となるのだが。
 シャトルの席から、外を見るとバーニアを噴かすコロニーが目に入る。
 シャトルのほうが身軽のため近づくのは容易であった。そして視界に入ると改めて巨大なのを認識する。止めるのは至難の業だ。
「メガトロン、キサマの好きにはさせない」
 それでも、危機に陥っている人たちがいるのなら本郷は戦う。
 人々の自由のために。ベルトが動き、姿を変える。
 旧1号の姿で、仮面ライダーは目の前の塊を見据えていた。



「ちょっとハッキングで調べたけど、コロニーに地球へ落ちるよう設定したみたい」
642参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:11:26 ID:3P2mah3z
コロンちゃんに対する言葉が、実にメガちゃんしててメガちゃんだなあw
643参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:11:26 ID:JorB2xre

644参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:11:27 ID:yyEGFfFc
 
645参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:11:49 ID:HRWEUo6j
 
646参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:12:13 ID:swhGwNEp
メガちゃん「(ラーメンをすすり)ありゃー、コロンちゃんとうとう死んじゃったのかー」
647『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:12:13 ID:tKhXLgHD
『そうか、ならどうすれば止められるか調べてくれないか? 俺はコロニーへと向かう』
「分かった。あたしたちはサブコンピュータールームへ向かうよ。マップは手に入れたし、PDAにダウンロードした。
ゼロさんたちが守っている間に早く行かないと」
『了解。それではなにか分かったら俺に伝えてくれ』
 本郷の通信を終了し、ミーが無事かどうか確かめる暇がなかったことを悔やみながら、武美はウフコックとソルティに振り向いた。
 彼らも話は聞いている。その目は決意に満ちていた。
「それじゃ武美、さっそくドラスと合流するルートを通って……」
「…………ウフコック、その必要はないよ」
「……念のために聞きます。どういうことですか?」
 武美はウフコックの提案を沈んだ声で無駄だと伝える。
 それでウフコックは一発で勘付いたが、ソルティが疑問をはさんだ。
 ドラスのことを知っているということは、武美を探す途中でウフコックが説明をしたのだろう。
 もっとも、彼女自身が告げたように理由は気づいているはずだ。ソルティは馬鹿ではない。
「ドラス君は死んだよ。メガトロンが悪趣味にもモニターを出して教えてくれた」
「ゼロたちを挑発するためか。胸糞が悪い」
 ウフコックの言葉に内心武美は同意しながら、なぜあのいい子が死ぬのかと自問する。
 武美が会ったドラスは素直ないい子の素顔しかない。彼が自分から告げたようにかつて悪人だったとしても、武美にはただの子供の一面しか知らない。
 だからこそ余計に、武美は彼のような善人が死ぬべきでなかったと思ってしまう。
 僅かに蘇った罪悪感を抱えるが、武美はそれを無視する。
「よし、ウフコック、ソルティ。先に進もう!」
 武美にはコロニーが落ちるのを阻止するしか出来ることはない。
 そのまま罪悪感を隠し足を進める。
 ただ、ソルティとウフコックが、神妙な表情で武美を見ていたことには気づかなかった。


 ソルティは目の前の武美が無理しているように見えた。
648名前欄にスレ名入力推奨@自治スレ :2009/10/20(火) 22:12:18 ID:mQ0C5icX
 
649参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:12:20 ID:eiKYqr66
    
650参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:12:39 ID:8tpC7Ti3
 
651『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:13:13 ID:tKhXLgHD
 なにか使命感を無理矢理作っているような、危うい状況だ。
 ソルティはこんなときにどう声をかけていいのか分からない。
 人類の管理者としてならパターンはある。しかし、友人としてのソルティでは不安が大きい。
「武美、ソルティ……金属の焦げ付くような臭い……奴らだ!」
「こんなときにッ!」
 武美の声に返す暇もなく、ソルティは通路の曲がり角へと全力で駆ける。
 現れた二体のT-888がミニガンを構えるが、ソルティの淡く光る右拳を頭に叩き込む。
 胸部が危険なのはウフコックから聞いていた。フレームが歪み、T-888がしつこく右手を動かす。
 ソルティは呼吸を整え、その場にしゃがんでT-888の足を払った。
「はああぁぁぁぁぁぁッ!!」
 気合一閃、二度目の拳をT-888の歪んだ頭部にに叩き込んで完全に沈黙させる。
 放置していたもう一体が、その隙にミニガンをソルティへと叩き込んだ。
「危ないッ!」
「大丈夫です、武美さん。隠れていてください!」
 武美に注意を促しながら、ソルティは左拳を振動させて弾丸を武美たちのいない方向へと弾いた。
 ソルティその攻撃は通用しない。埒が明かないと判断したのだろう。残ったT-888は接近戦を仕掛けるべくソルティへと迫ってきた。
 甘い。T-888がミニガンを振り下ろすが、ソルティはすでに宙へと身体を躍らせた。
 記憶を失った際に不完全となっていたソルティの機能は完全回復している。空を飛ぶことも可能だ。ソルティは姿勢を制御して天井に張り付く。
 予想外の行動にT-888の動きが一瞬止まる。それはソルティが決着を着けるのに充分な時間だ。
 T-888が振り返る暇もなく、ソルティが頭を砕いた。


「すご……ソルティ強い……」
「今の私は全開ですから」
652参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:13:16 ID:JorB2xre

653参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:13:18 ID:bNQeDOlH
 
654参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:13:25 ID:a+G3EUkg
 
655参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:13:25 ID:3P2mah3z
 
656創る名無しに見る名無し :2009/10/20(火) 22:13:54 ID:noCY8nYc
657参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:13:59 ID:yyEGFfFc
 
658参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:14:05 ID:3P2mah3z
  
659『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:14:06 ID:tKhXLgHD
 そういって空を飛んでみせると、武美がさらに感心した。
 少し楽しい気もするが、こうしている暇はない。コロニーがいまだに地球へと向かっているのだ。
「武美さん、少しすいません」
「え? ソルティなにをする……わわっ」
 ソルティは武美を抱き上げ、いわゆるお姫様抱っこの形をとった。
 ソルティはキッと前面を睨みつけて、足に力を入れる。
「喋らないでください。舌を噛みますから!」
「ちょ……って、きゃあああああ!!」
 武美のみを案じながら、ソルティは全速力で地面を駆ける。
 サブコンピュータールームの居場所は頭に入っているから、ソルティはただ最短距離を突き進むのみ。
 障害物ごと破壊し、ソルティはふと本郷とミーは大丈夫だろうか、と心配した。



 壁が砕け、イーグリードは背中から迫るT-800へと右腕のバスターを向ける。
 向けられた対象は無表情にミニガンをイーグリードへと銃口を移動させた。まったく防御する様子がない。
 なら好都合だ、とイーグリードがストームトルネードを放つ。
 削り砕く竜巻がT-800へとうねり向かい、イーグリードの身体に避け切れなかったミニガンの弾丸が届く。
 装甲を削られながらも、イーグリードはT-800の最期を確信していた。
 ゆえに、イーグリードは目を剥いてしまう。
「なんだとッ!?」
 放たれたストームトルネードがT-800につく瞬間霧散してしまった。
 訳が分からないイーグリードにミニガンの弾丸が数十発、装甲を跳ねる。
「く……がっ!?」
 よろめきながらイーグリードは体勢を立て直し、もう一発ストームトルネードを放って空を翔ける。
660参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:14:11 ID:HRWEUo6j
 
661参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:14:26 ID:8tpC7Ti3
 
662参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:14:46 ID:3P2mah3z
    
663参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:14:54 ID:JorB2xre

664参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:14:58 ID:swhGwNEp
ししししししししええぇん
665参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:15:02 ID:eiKYqr66
   
666参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:15:06 ID:yyEGFfFc
支援
667参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:15:09 ID:HRWEUo6j
 
668参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:15:09 ID:a+G3EUkg
 
669参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:15:15 ID:mQ0C5icX
 
670『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:15:18 ID:tKhXLgHD
 またも竜巻が消える様子を見届け、イーグリードは仕掛けに気づいた。
「ここで打神鞭だと?」
「キサマが相手とは運がいい」
 イーグリードは歯噛みする。相性が悪い武器がT-800の手に渡ったものだ。
 体力の消耗が激しいため、まともに使えるものがいないと油断したツケだ。
 イーグリードの攻撃から身を守るために一瞬だけ触れるなら、体力の消耗も少ない。
 何回無効化できるかは不明だが、T-800が一方的に攻撃できるとなるとイーグリードの方が圧倒的に不利だ。
 しかも通路は狭く入り組んでいて、イーグリードの機動性を活かした体当たりも不可能だ。
 絶望的な状況だ。それでもイーグリードの目に諦めの二文字はない。
(チャンスはあるはずだ……その機会を逃さない!)
 ゼロもエックスも、不屈の闘志で逆転を続けていた。
 ここで諦めては、死んだエックスにもシグマにも申し訳が立たない。
 イーグリードの目つきが鋭くなる。倒す。そして自分たちの故郷を守る。
 英雄たちの揺らがぬ意思は、第七空挺部隊の元隊長を奮い立たせていた。


 T-800はストームトルネードを無効化しながら、イーグリードが追ってきた幸運に感謝した。
 もっとも神を信じないT-800では誰に感謝すればいいのか分からないのだが。
 ゼロであったとしても、あの瀕死の状態なら倒すことは容易だろう。
 だが、メガトロンがゼロを、自分がイーグリードを担当したほうが一番手間が少ない。
 組み合わせ自体は運だった。状況はこちらが有利である。
 そして、T-800は生き残りをも始末するために移動している。
 戦える面子が残っているかは不明で、イーグリードと混ぜて戦うのは危険だが、コロニー落しを阻止されるわけにはいかない。
 本来のT-800の使命としては、コロニー落しなど無視してもいいはずだ。
 それでもなぜか、T-800のCPUがコロニー落しの計画を叶えたいという欲求を示していた。
671参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:15:28 ID:3P2mah3z
鳥さんどうした
672参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:15:52 ID:noCY8nYc
673参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:15:58 ID:yyEGFfFc
 
674参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:16:04 ID:8tpC7Ti3
 
675参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:16:10 ID:3P2mah3z
なるほどw
676『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:16:23 ID:tKhXLgHD
 リミッターの外れた学習能力がもたらせた感情。T-800はなんの疑問をはさむこともなくそれを優先していた。



 ドアを蹴破って、ソルティはサブコンピュータールームへと突入する。
 大型のコンピューターが何台か連結しており、操作パネルが一つだけある。
 その様子を確かめ、ソルティは武美を降ろした。
 武美に後を頼もうと思ったが、彼女はひたすらぜえ、ぜえと息を切らしている。
 武美の右手の手袋が、金色のネズミのウフコックへと姿を戻した。
「ソルティ、さすがに速すぎた。俺も……少し気持ち悪い」
「ご、ごめんなさい! 急がないといけないと思いまして……」
「い、いや……い、いいよ。ソ、ソルティ……。急いでいたのは……本当だし……むしろ好都……合……」
 ソルティが恐縮するが、武美がフォローする。移民船団を率いていたときはこんなドジはしなかったのに、と反省をした。
 それはソルティとして過ごした日々が掛け替えのなかった証なのだ。
 無意識下ですら、ディケとしての振る舞いより、ソルティとしての行動を基準にしている。
 ソルティはそのことに不満はない。むしろ望ましいことだと、本人すら自覚なく思っていた。


「さて……」
 武美はサブコンピューターを前に、自分のケーブルを引っ張り出す。
 ソルティの目があるが、恥ずかしいといっている場合ではない。
 今まではソルティが気絶しているか、すでに取り出しているかだったが。
 まあ、そんなことはともかく。
 目の前のコンピューターの重厚な雰囲気に少し呑まれながらも、数度の深呼吸と共にウフコックに首を向ける。
「ウフコック、お願い」
677参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:16:34 ID:HRWEUo6j
 
678参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:16:57 ID:eiKYqr66
      
679参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:17:01 ID:8tpC7Ti3
 
680参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:17:13 ID:3P2mah3z
  
681参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:17:15 ID:JorB2xre

682参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:17:26 ID:yyEGFfFc
空が……落ちる
683『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:17:31 ID:tKhXLgHD
「分かった」
 ウフコックがアダプターとなり、武美は自分のケーブルを差し込んだ。
 離れていい、と武美は告げるのだが、ウフコックもついていくと主張をやめない。
「ソルティ、悪いが周囲の警戒を頼む。ターミネーターたちが滅んでいるとは限らないからな」
「分かりました! ……武美さん。ウフコックさん、気をつけてください」
 うん、と武美は返事する。ここで失敗しては武美だけでなく、本郷やゼロにウフコック、そしてこの世界の地球の人々が危ないのだ。
 武美としては顔も名前も知らない他人よりも、仲間たちが傷つくほうが怖かったのだが。
 名前も知らない誰かのために本気になれる人たちがいる。
 武美はそうなれないし、なる気もない。だが、彼らが死力を尽くすというなら、武美は手を貸してやりたい。
 きっと風来坊も、彼らと同じ選択をするだろうから。
 武美はケーブルを挿して、サブコンピューターにハッキングをした。



 武美は目的の場所にたどり着くなり、宇宙空間のようなコンピューターの内部でデータの検索をしていた。
 バーニアの姿勢制御プログラムをいじっていると予想して武美はデータをひたすら調べていく。
 ウフコックが傍で似たような作業をしていた。
 彼は前回のダイブで、武美のような電脳ネット上での作業を学習していた。器用なネズミだと思う。
 少しでも武美の負担を減らすためだろうか?
 嬉しいと共に、自分だけの力という認識が薄れて寂しくもなる。
「武美、どうした?」
「ううん、なんでもない」
 ウフコックがつぶらな赤い瞳でジッと見つめてきた。
 なにか言いたいことがあるのだろうか。今は聞いている暇もないため、後回しにする。
「……武美、これは余計なお喋りだが聞いてくれ」
684参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:17:59 ID:swhGwNEp
支援
685参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:17:59 ID:a+G3EUkg
 
686参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:18:00 ID:3P2mah3z
   
687参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:18:23 ID:yyEGFfFc
 
688参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:18:23 ID:HRWEUo6j
 
689参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:18:41 ID:3P2mah3z
     
690参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:18:43 ID:mQ0C5icX
 
691『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:18:45 ID:tKhXLgHD
「ウフコック。そんな暇は……」
「喋りながらでも手元を誤るようなことはしない。ただの世間話だ。君も聞き流すつもりでいてくれ」
 へえ、とだけ武美は答える。ライト博士の死体の光景が浮かび、ウフコックの言葉を聴くのが僅かに怖くなる。
 武美の様子に気づいていないのか、ウフコックはお喋りを続けた。
「別に本郷のように、正義のためとか考えなくてもいいんだぞ」
「はあ?」
 武美は自分が変な表情をしていると知りながらも、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
 ウフコックはなにを言っているのだろうか?
「ちょっと極端な例を挙げてしまったな。武美、君はもともと戦いには向かない。今までだって充分に頑張ってきた。
これ以上、なにかを背負う必要はない」
 武美はポカン、と呆気にとられた。ウフコックの助言は正しい。
 それでも、反発を覚えてしまうのはしょうがない。人は正しいだけでは生きれないのだ。
「あたしは…………」
「分かっている。武美は武美としての意思でここに立ち、皆の力になっていることを。
だが、武美。皆その影響の大きさを知っている。皆そのことに感謝している。俺だってそうだ」
「な、なにを急に……」
 武美は赤面しながら、唐突なウフコックの発言に真意を見出せなかった。
 いったいなんのつもりか。武美はやめてよ、と告げるがウフコックは続ける。
「いいから聞け、武美。君は自分の力を過小評価している。君の力はとても大きいものだ。
なのに、時々君は本郷やソルティのようなものを求めているときがある。まるで、誰かの影を追うかのようにだ」
「それは……」
 思い浮かぶのは風来坊の後姿だ。誰かを追っているというなら、彼以外ありえない。
 ウフコックは手を緩めず武美の瞳を覗き込む。手は止めていない。思わず感心してしまう。
692参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:19:06 ID:8tpC7Ti3
 
693参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:19:07 ID:a+G3EUkg
 
694参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:19:21 ID:3P2mah3z
      
695参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:19:37 ID:eiKYqr66
    
696参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:19:47 ID:HRWEUo6j
 
697参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:19:52 ID:mQ0C5icX
 
698参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:20:11 ID:swhGwNEp
支援
699『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:20:11 ID:tKhXLgHD
「その人物が武美とどういった関係かは知らない。俺に口を出す権利なんて皆無だ。
それでも言わせてもらう。君は君のままでいるほうが、俺たちは救われる」
「どういうこと……?」
「誰かの影を纏わせるのは不幸な結果を生む。そいつが生きていても、死んでいても。
君には死んだエックスの影と、生きている誰かの影が見えている」
「それを忘れろというの? 無理だよ……」
 武美の声色が弱々しくなる。涙も流せない目が恨めしい。
「風来坊さんはあたしに暖かいなにかを与えてくれた。エックスはあたしに絶望を届けた。
どちらの影もあたしにとっては大きいよ……振り払うなんて……」
「だから、俺にも背負わせて欲しい」
「ウフコック……?」
「俺には委任事件担当捜査官として相棒がいた」
「うん、聞いている」
 バロットという名の、ウフコックの頼れる相棒。多くは語らないが、彼女に対してウフコックが絶大な信頼を寄せていることは見て取れる。
 どこか誇らしげなウフコックの金色の体毛はふさふさしており、さわり心地が良さそうだった。
「俺は尻軽じゃないから、バロットが委任事件担当捜査官としての相棒なのに変わりはない。彼女以外は俺の相棒として存在できない。
だから頼む。委任事件担当捜査官としてじゃない。友達として、元の世界に変えるまで君の相棒でいさせてくれ」
 ウフコックの申し出に、武美は虚を突かれる。しばらく眼をしぱしぱした後、武美はハァーッとため息を吐いた。
 苦笑いには嫌悪感は浮かんでいない。むしろ嬉しさをこらえた結果、出来た表情だ。
「普通そんな回りくどい頼み方する?」
「仕方ない。俺が委任事件担当捜査官としてバロットの相棒であることも、君の力になりたいという欲求もすべて……」
 武美は少しいたずら心が動いた。思いついた瞬間、唇が言葉を形作る。
700参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:20:16 ID:bNQeDOlH
 
701参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:20:25 ID:T4yJ3mpD
702参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:20:35 ID:3P2mah3z
 
703参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:20:49 ID:HRWEUo6j
 
704参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:21:05 ID:8tpC7Ti3
 
705参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:21:06 ID:a+G3EUkg
 
706『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:21:08 ID:tKhXLgHD

「「俺の有用性だから」」

 武美はけらけら笑いながらも、ウフコックが憮然としているのがネズミの顔であってもよく分かった。
 一日一緒にいると、ウフコックが感情豊かな性格であることを理解できる。
 渋いネズミなのにかわいいところがあるアンバランスさがとても愛しく感じた。
「ごめんごめん。ウフコック、お願い。友達として、あたしに力を貸して」
「答える必要もないな」
 ウフコックの珍しい、シニカルな笑顔にクロを思い出す。
 そうだ、自分には友達がいる。その事実のおかげで武美の罪悪感が薄れた気がした。
 自然と武美はタッチパネルの操作する指の速度も速くなっていった。



 炎が踊り狂い、ゼロへと迫る。普段ならこの程度の火球など楽に避けれるはずなのに、怪我した身体ではそれも叶わない。
 ゼロはΣブレードで火弾を真っ二つに切り裂き、メガトロンの巨躯へと突進した。
 壁に炎が届き、赤く熱したのと同時にメガトロンとゼロが刃を交差させて離れる。
 メガトロンは竜の牙を、ゼロはΣブレードをそれぞれ相手へと向けながら睨んだ。
「ハッ! 随分動けるじゃねーか」
「お前に負けるわけにはいかないからな!」
「いい子ちゃんぶりやがってよ!」
 メガトロンは竜の頭を模した右手から冷凍光線を吐き出し、避けるゼロへとしつこく放ち続ける。
 オイルが漏れているゼロを動かして、体力を消耗させるつもりなのだろう。
 そうはいかない。
 ゼロは神速の速度で地面を蹴りだし、メガトロンへ迫る。メガトロンが炎を吐き出すが、斬って道を開いた。
707参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:21:20 ID:3P2mah3z
     
708参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:21:39 ID:mQ0C5icX
 
709参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:21:44 ID:yyEGFfFc
710参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:22:03 ID:HRWEUo6j
 
711参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:22:05 ID:eiKYqr66
    
712参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:22:08 ID:3P2mah3z
      
713『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:22:07 ID:tKhXLgHD
「しゃらくせえ!」
 メガトロンが炎を何度も噴出すが、ゼロはただ突進するのみ。斬って払うこともやめ、身体を炎が焼くが構わず進む。
 どうせ終わるこの命。いつ失っても怖くない。
 だからメガトロンは、メガトロンたちだけはこの世に残してやらない。
 炎を潜り抜け、メガトロンの懐にゼロはたどり着く。メガトロンが驚愕の表情を浮かべている。
 いい気味だ、と平時のゼロなら思っただろう。そんな余裕はすでに失っている。
 集中しきったゼロはただ本能に従って左手を閃かせ、メガトロンの胸部を逆袈裟に切り裂いた。
「チッ!」
「あ、あぶねえ……」
 悔やみの呻きはゼロの口から漏れる。メガトロンは切り裂かれた装甲を撫でながら、ゼロと距離をとった。
 後一歩踏み込んでいれば両断していたものを、とゼロは痛む傷を抑えながら歯噛みする。
「たくっ、とっととお前さん潰してシュワちゃんに助けに入るか、皆殺しにしてやろうと思ったのによ」
「随分余裕だな。俺の仲間が今頃、コロニー落しの阻止を計画しているさ。思う存分、戦ってやる!」
 ゼロはΣブレードを正眼に構えて宣言する。
 その様子を見ていたメガトロンは表情を引き締めた。
 なのに、一瞬でメガトロンの表情は崩壊、噴出して笑いをこらえている。
 なにがおかしいのかとゼロが問うが、メガトロンの笑い声は大きくなるだけだ。
「クーックックック……アハハハハハッッ!! 駄目だ、我慢できねー!!」
「キサマ……」
「ゼロ、キサマは俺様がのんびりと相手しているのに、疑問を抱かないのかなー?」
 ゼロのハッとなり、自分が迂闊だったことに気づいた。
 メガトロンはゼロが理解するのを待っていたのだろう。誇示するようにゆっくりと喋りかけてきた。


 武美は制御プログラムを漁って内容を把握していく。バーニア噴射の制御プログラムはそう難しい内容ではない。
714参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:22:17 ID:8tpC7Ti3
 
715参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:22:48 ID:yyEGFfFc
716参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:22:49 ID:3P2mah3z
高笑いが似合うなあ、メガちゃんw
717参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:22:51 ID:mQ0C5icX
 
718『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:23:11 ID:tKhXLgHD
 どこの噴射をやめさせれば軌道を変えれるかの計算も実行させて手に入れる。
 あとは武美が動かすだけだ。
 中空に浮かぶパネルに武美は触れ、軌道変更を命令する。すると、警告音が空間に響いた。
「武美、これは……」
「!? ウフコック、危ない! 先に帰って」
 武美は異変に気づいて、ウフコックを強制ログアウトさせる。
 ウフコックも勘付いたのか、武美へと手を伸ばした。
「駄目だ、武美。君も一緒に……」
 うだうだいうウフコックを強制退去した瞬間、武美の電子空間でのイメージ体が黒いなにかに浸食された。
 ここ、電子世界での武美の身体やウフコックの身体はデータで表せたものである。
 その分、ここでの負傷や死は現実世界の脳へ影響を与える。
 風来坊がワクチンソフトなどに触れたとき、消えてしまうと警告したのは武美だ。
 その武美がウィルスソフトに侵され、存在を消されそうになっている。
「しまった……罠…………か……」
 通りでメガトロンは自分の存在を知りながら焦っていなかったわけだ。
 電子空間に慣れ、警戒していた武美が気づかないほど隠密性のあるウィルスを持っていたのだ。放置するはずである。
 武美は死の恐怖が間近に迫る。風来坊の名を呟き、武美の意識は遮断した。


「ここのコンピューターは、取り出したシャトルのコンピューターの拡大版ともいえるべき構造でね。
俺様はこういう電子機器をいじるのは得意なんだ。つまり…………」
「罠を仕掛けたのか! メガトロン!!」
 ゼロは怒りに任せてΣブレードを縦に振る。ゼロは数合メガトロンの牙と切り結び、攻め落とせない事実に焦りを覚えた。
 メガトロンは変わらず、煽ってくる。ゼロの奥歯がギリッと鳴った。
「今頃は俺様のウィルスが発動するころだろうな。ハッハッハッハ!!」
719参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:23:37 ID:3P2mah3z
   
720参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:23:37 ID:HRWEUo6j
 
721参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:23:38 ID:8tpC7Ti3
 
722参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:23:52 ID:bNQeDOlH
 
723参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:24:14 ID:yyEGFfFc
正にメガちゃん
724『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:24:16 ID:tKhXLgHD
「メガトロォォォォォォォォン!!」
 ゼロの怒りはおのれ自身へと向けられる。
 力さえあれば。そう思いながらも、剣を振る姿はどこか哀れであった。



「武美! 武美! しっかりしろ、武美!!」
「武美さん!?」
 ウフコックが眠っている武美を揺らすが、反応がない。
 冷たい床に投げ出された武美の肢体を抱き上げ、ソルティは頬を叩いて名前を呼ぶ。
「ケーブルは……くそ! 外していいか俺では判断が出来ない……!」
「そんな……武美さんが……嘘……」
 ソルティの声色が絶望に染まる。
 エックスが人を殺したときのように。あ〜るが目の前で死んだときのように。フランシーヌが暴走したゼロに襲われたときのように。
 血が逆流するような錯覚が起きて、目の前で人が死ぬ恐怖がソルティに訪れた。
 すると、ソルティの右隣の壁が砕け、全身に傷を負うイーグリードが飛び出してきた。
 ウフコックと共に、武美を抱きながらソルティは振り向くと筋骨隆々の男がいた。
 敵になったことは聞いている男の名を、ソルティは呟く。
「ボブ……さん」
「念のためにここに来たが、その必要はなかったようだな」
「ソルティ、逃げろ!!」
 T-800が電磁ナイフを投げ、一直線に武美に迫らせる。確実にしとめるためだろう。
 ソルティが庇おうとするが、ケーブルが視界に入り武美を動かすのを躊躇った。ナイフは速く、その一瞬の躊躇いが逃げる隙を奪う。
「ぐわっ!!」
「ウフコックさん!?」
725参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:24:32 ID:swhGwNEp
メガちゃん極悪杉ワロタw
726参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:24:35 ID:3P2mah3z
まさにメガちゃん
727参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:24:48 ID:8tpC7Ti3
 
728参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:24:51 ID:a+G3EUkg
 
729参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:24:57 ID:eiKYqr66
     
730『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:25:07 ID:tKhXLgHD
 しかし、苦悶の叫びはソルティではなく、変身【ターン】する暇も与えられなかったウフコックからでる。
 ソルティの反応は、優しさを知ったために遅くなってしまっていた。



 風がそよぎ草が揺れる。聞きなれた川のせせらぎに、川原で無断で建てられたテント。
 見覚えのある光景は武美がよく知っているものだ。
 同時に、鼻をつく偽者の匂いも。
「夢くらい帰ってきたというロマンがあってもいいのにねー……」
 自分の脳みそを恨めしく思いながら、武美は自分が終わったのだと自覚した。
 死は一瞬で来ると思っていたのが、そうではないのだろうか。
 この走馬灯をみせてくれるのなら、粋なはからいだと思う。
「いや、まだ死んではいない」
 声をかけられ武美がその方向へと顔を向けると、テンガロハットにボロボロのマントを着た風来坊がそこにいた。
 武美が会いたかった、元の世界に帰りたい理由だ。
「風来坊さん……? やっぱりここは……」
「夢とも限らないぜ」
「どういうこと?」
「なに。詳しくはいえないが、そのほうがロマンだろ?」
「……それあたしの台詞の気がするんだけど、風来坊さん」
 テンガロハットの下で穏やかに微笑みながら、風来坊は釣竿を動かす。
 釣り糸は反応はないが、いつものことなので武美は無視して話しかける。
「風来坊さん、なにをしに来たの?」
「そうだな、君には二つの選択肢がある」
 風来坊が隣を示し、武美はキョトンとした顔でその仕草を見つめた。
731参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:25:20 ID:mQ0C5icX
 
732参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:25:20 ID:HRWEUo6j
 
733名無しより愛をこめて :2009/10/20(火) 22:25:39 ID:JorB2xre

734参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:26:00 ID:swhGwNEp
風来坊さん出てきたwwww
735参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:26:03 ID:mQ0C5icX
 
736『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:26:22 ID:tKhXLgHD
「ここで穏やかに過ごすか。それとも……」
「戻るか?」
 風来坊は言い当てられても武美に向ける表情は変わらない。
 キザな性格は変わらないらしい。
 風来坊は選択肢は二つあるといっているが、武美が死ぬのはどちらにしろ変わらないだろう。
 穏やかに死ぬか、それとも戻って最後に足掻いて死ぬか。その二択であろう。
 正直ここで風来坊と穏やかに死を迎えるのも悪くはない。
 死ぬのは嫌だが、どうせ死ぬなら誰だって恐怖も絶望もなく死にたいはずである。
 武美だってそうだ。なのに、
「戻るよ。風来坊さん」
 武美はどうしても戻りたかった。
「辛いぞ」
「分かっている」
「戻っても足手まといになるだけだぞ」
「うん、それでもあたしは戻りたい」
 武美自身驚くような言葉であった。たとえ迷惑かけても、戻りたい。
 その欲求の元はなんだろうか? もった疑問も、武美はすぐに解消する。
「だってさ、友達が頑張っているんだ。その友達に……せめてありがとうって伝えたい」
「あのネズミの彼も言っていたが、無理する必要はないんだ。武美が武美であるだけで、皆は救われていた」
「だけど、風来坊さんを好きなあたしはあたしであるために、ここで戻るの」
 二人の間を風が通る。髪が揺れて、武美は後ろを振り返った。
 その眼には罪悪感も迷いもない。
「だから風来坊さん。またね」
「ああ、まただ」
 武美は清々しい気持ちで、その場を離れた。
737参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:26:26 ID:HRWEUo6j
 
738参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:26:28 ID:8tpC7Ti3
 
739参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:26:40 ID:3P2mah3z
 
740参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:26:51 ID:a+G3EUkg
 
741参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:27:05 ID:mQ0C5icX
 
742参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:27:07 ID:HRWEUo6j
 
743参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:27:32 ID:3P2mah3z
   
744参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:27:38 ID:T4yJ3mpD
745参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:27:45 ID:a+G3EUkg
 
746参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:27:47 ID:8tpC7Ti3
 
747参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:27:57 ID:eiKYqr66
    
748参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:28:03 ID:JorB2xre

749『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:28:06 ID:tKhXLgHD



(俺はこれまでなのか……?)
 ウフコックは自らが重体であることを自覚しながら、無念に身体を震わせていた。
 武美を守ることも、ソルティの精神状態を戻すことも出来ず、無残に死ぬ。
 クロの願いも無碍にして、一矢報いることなく消滅していく。
(ふざけるなッ!)
 それではウフコックの有用性などないも同然ではないか。
 否定されるために生まれたのではない。なにもなせず死ぬためではない。
 ウフコックは誰かの力になり、困難を乗り越えさせるために生きたのだ。
 最後の最後に誰の力にもなれず死ぬなど、ウフコックの信条に反する。
(俺は……)
「ウフコ――――ック!! お願い、ケーブルになって!!」
 奇跡が起きた。ウフコックは武美の声を耳に、ケーブルになる意図を正確に掴んだ。
 ウフコックは最後の力を振り絞り、アダプターと延長ケーブルをつなげた物体へと変身【ターン】する。

「イーグリード、抑えてくれ!」
「……うおおおぉぉぉぉぉぉ!」

 ウフコックが吼えた瞬間、倒れていたイーグリードが起き上がってT-800へタックルをする。
 バランスを崩したT-800がソルティへの狙いをイーグリードへと変えるが、遅い。
 ウフコックの端子は、ターミネーターの残骸で見つけた接続口と同じ箇所へと装着される。
 後は武美の仕事だ。ウフコックは武美が自分の端に、自分のケーブルを接続する姿を確認してニヤリと笑みを浮かべた。
750参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:28:09 ID:Vp6Jaez0
  
751参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:28:29 ID:3P2mah3z
    
752参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:28:43 ID:a+G3EUkg
 
753参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:28:46 ID:HRWEUo6j
 
754参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:29:08 ID:iriNt1op
通りすがりの風来坊さ、支援
755参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:29:15 ID:JorB2xre

756『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:29:21 ID:tKhXLgHD


「武美さん!?」
 嬉しそうなソルティを安心させてやる暇はない。
 すまなく思いながらも、武美はウフコックが変身【ターン】したケーブルを手に取る。
 接続されたT-800は訳が分からないだろう。それでいい。悟られると面倒だ。
「動けなくなれ!」
 武美の言葉でようやくイーグリードたちも含めて、意図が分かったのだろう。
 T-800が外そうとするが手遅れだ。
 武美がプログラムを実行して、T-800はマネキン人形のように動きが固まった。
 最初で最後、武美が戦闘で役にたった瞬間だ。
「ざまあみろ……」
 ターミネーターを足止めできるのは一瞬だ。
 相手が戦い慣れているボブであることは武美には分かった。そのボブがプログラムも防御したのだ。
 一瞬だけでは効果が薄いかもしれない。
 それでもソルティ、後お願いと、呟いた後の武美の勝ち誇った笑顔がとても輝いていた。


 ソルティは武美をそっと降ろして、T-800を見つめる。
 殺したくない。壊したくない。それでも、ぶつからなければならない相手がいる。
 ならば。
「はああああ……」
 ソルティの全身が金色に光り、拳だけでなく足も身体も振動をする。
 巨大なビーム兵器すら曲げる全力全開の姿。それをすべてT-800へ叩き込むべく接近する。
「そうは……させん!!」
757参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:29:42 ID:8tpC7Ti3
 
758参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:29:46 ID:3P2mah3z
    
759参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:30:02 ID:eiKYqr66
   
760『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:30:06 ID:tKhXLgHD
 T-800はギギ、と少しだけ動いた。その執念にソルティは戦慄を覚えながらも、直進をやめない。
 振るう拳の重さは、武美の命だ。ソルティが友の想いをこめた拳を振るう。
 キィン、と金属を砕く甲高い音が響いた。
「えっ!?」
 ソルティが驚きの声を上げる。どうにか動いたT-800は、腕を動かした。
 それでも間に合わないはずである。ソルティの拳が先に叩き込まれるはずであった。
 だが、T-800はカーチェイスでも壊れない、未来の技術で強化されたPDAを盾にした。
 さすがにPDAは粉砕され、衝撃でT-800は宙を舞っている。
 ソルティは追い討ちをかけようと構えるが、それを止めるイーグリードの手があった。


 T-800は宙を浮きながらも、自分が非常に幸運であることを自覚した。
 たまたまPDAをもつ手が空き、たまたま盾にすることが間に合った。
 その上、T-800は出入り口へと吹き飛ばされている。全身の麻痺さえ解ければ打神鞭を掴んで、風に乗って距離をとることも可能だ。
 相手を侮りすぎた。万全を期した状態で相手をせねばなるまい。
 あくまで冷静に思考するT-800が地面へと着地を失敗した。
「なんだとっ!?」
 T-800が愕然と下を見下ろす。いきなり床が外れて、溶鉱炉が煮えたぎる穴が開いた。
 なぜここでトラップが? と疑問に思うとイーグリードがサブコンピューターのパネルを押している。
 迂闊だった。情報という武器をイーグリードは持っていたのだ。
 T-800は淵へと手を伸ばす。しかし、手には力が入らない。
(打神鞭のせいか!?)
 宝貝のもたらす疲労によって、T-800にはもう自分の体重を維持する力は腕には残っていない。
 因果が巡った瞬間だった。
「地獄に落ちろ、クソ野郎」
761参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:30:34 ID:8tpC7Ti3
 
762参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:30:36 ID:a+G3EUkg
 
763参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:30:57 ID:3P2mah3z
                 
764参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:31:10 ID:mQ0C5icX
うおおおおお
765『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:31:16 ID:tKhXLgHD
 イーグリードが口汚く罵る様を見届け、虚しく穴へとT-800は落ちていった。


「武美さん……」
「やったね……ソル……ティ……。大丈夫……コロニーは……本郷さんに……どこを壊せば……止めれる……か……手に入れた情……報は……伝えたから」
 武美は考えがまとまらない中、ソルティやウフコックに伝えることがあることがあったのを思い出す。
 このような報告は武美が伝えたい言葉じゃない。コロニーに関しては本郷に託した。彼なら大丈夫だ。
 友達に感謝するために穏やかな死を捨ててここまで来た。
 早く伝えなければ。唇を動かそうとするが、鉛のように重い。
(そういえばウフコックは無事かな……無事だといいけど……)
 もはや武美の眼にはなにも映らない。
 耳も聞こえず、世界に自分一人しかいないような錯覚すら覚える。
 これが死なのだろう。意外と怖くはない。
(風来坊さんに生きて会いたかったな……)
 無念はある。悔しくもある。
 それらを超越して、ただ一言のために現れた。
 だから言おう。
「ソルティ……ウフコック……みんな……ありが……とう」
 一気に伝えて、ただ喋るだけなのに体力を根こそぎ奪われた。
 ようやく終りだと思うと、素直に瞼を閉じれる。
 そういえば、素直じゃないあの黒猫ならなんといってくるだろうか?
(ああ、やっと伝えれた。あたし頑張ったよ、クロちゃん……)
 武美の死に救いがあるかは分からない。
 ただその最期は、暖かい感情があった。それは事実だった。

766参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:31:21 ID:swhGwNEp
ここでこの台詞wwwwwwww
767参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:31:38 ID:8tpC7Ti3
 
768参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:31:45 ID:3P2mah3z
地獄に落ちろきたこれ!
769参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:31:47 ID:HRWEUo6j
 
770参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:31:52 ID:eiKYqr66
  
771『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:31:54 ID:tKhXLgHD
「武美さん! 武美さん! 武美……」
「もうよせ」
 武美を揺さぶるソルティをイーグリードは止める。
 ソルティが顔を勢いよく上げ、涙を湛えた眼でイーグリードを見つめた。
 その意味を正確に悟ったイーグリードは首を振る。イーグリードは左手のウフコックを丁寧に扱い、その身が生きていないことを示した。
「そんな……そんな……!?」
 ソルティの無念の言葉がサブコンピュータールームで響く。
 彼らはソルティと長く共に戦ってきた。その二人が死んだ事実は、無垢な少女の心をどれだけ傷つけるのだろうか。
 泣き声が耳朶を打ち、イーグリードの心は痛んだ。



 またもここに戻ってしまったか、と武美は青空が広がる川原の光景を見て素直な感想を持った。
 前と違うのはウフコックがいることだろうか。
「ウフコックがここにいるということは……」
「俺は重傷だった。そういうことだろうな」
 案外あっさりとしているウフコックに武美は拍子抜けする。
 このネズミは最後まで冷静だ。
 またね、と伝えた風来坊はどこにいるのだろう、と武美が周囲を見渡したとき黒猫が横切る。
 いや、この猫は…………
「クロちゃん!?」
「よう、武美。ウフコック」
 見覚えある意地悪な笑顔を浮かべた、捻くれものの猫だ。彼は軽い調子で声をかけてくる。
「武美、お前さんを待っている奴は向こうにいる」
「そうなんだ。ありがとう、クロちゃん」
772参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:32:26 ID:bNQeDOlH
 
773参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:32:27 ID:3P2mah3z
      
774参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:32:34 ID:JorB2xre

775参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:32:35 ID:8tpC7Ti3
 
776参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:33:05 ID:a+G3EUkg
 
777参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:33:16 ID:8tpC7Ti3
 
778参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:33:18 ID:3P2mah3z
           
779『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:33:18 ID:tKhXLgHD
「ああ、いってこい。その前に……」
 クロは手を伸ばしてウフコックを掴む。クロに抗議するするウフコックだが、武美は感謝した。
 土手を走り、息が切れたころに見慣れたテントが視界に入る。
 ここには彼がいて、カンタや奈津姫が武美と共にあり、商店街の野球チームが勝てないとぼやく。
 武美にとって一番幸せな日々だ。
 そして、テンガロハットにボロボロのマントを纏った男が釣りをしていた。
 武美はその彼に、満面の笑顔を向けて名前を呼んだ。


「クロ、酷いじゃないか」
「世の中には野暮ってものがあるものさ。お前さんは頭がいいが、その辺鈍いからな」
 大きなお世話だ、といいたいところだがクロの言い分もウフコックは否定できなかった。
 武美の嬉しそうな顔は自分たち以上に会いたい人に会えるからだろう。
 それはとてもいいことに思える。どういった感情かは、万能兵器存在であるウフコックには知り得ないが。
「ふて腐れるなよ。お前さんにも会いに来ている人がいる」
 誰だ、とはウフコックは言わない。自分に会いたがる相手など右手で数え足りる。
 クロのことだ。ボイルドをつれてくるような真似は絶対にしない。
「バロット、すまない」
≪謝る必要はない≫
 電子音による合成音声の声が嫌に懐かしく感じる。
 振り向かなくて、あどけない顔立ちの肩まで伸ばした黒髪ストレートの少女がいることは分かった。
 バロット。彼女は軽く唇の端を持ち上げて、ウフコックを迎えた。
≪ウフコック、大丈夫?≫
「心配してくれているのか。大丈夫だ、バロット。ここで終わるのは悔しいが…………」
 ウフコックは笑顔を浮かべて、残っている仲間たちを思い返す。
780参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:34:09 ID:3P2mah3z
    
781参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:34:10 ID:JorB2xre

782参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:34:23 ID:HRWEUo6j
 
783参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:34:23 ID:swhGwNEp
支援
784参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:34:24 ID:eiKYqr66
            
785『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:34:23 ID:tKhXLgHD
 本郷やイーグリード、ゼロがいるならメガトロンの計画は止められるはずだ。
 ソルティにも立ち直って欲しいが、本郷たちに後を託すしかない。
 それでも、どうにかなりそうだ。ウフコックにしては楽観的な考えだが、そう確信している。
「俺の有用性を託した相手がいる。だから大丈夫だ」
 ウフコックは自分に思いを託したクロを見て、そしてバロットへと視線を戻した。
 彼女はウフコックを肯定するように、静かに微笑んだ。



「武美…………」
 仮面ライダーはシャトルのドアの前で、最後の通信を送ってきた女性の名前を呟く。
『本郷さん。コロニーの……右側のバーニアを破壊すれば……軌道を外せる!』
 その通信を受け取り、武美と交信が取れなくなってしまった。
 ウフコックともそうだ。彼女たちの身になにかあったのだろうか。
(またも……取りこぼすのか……)
 仮面ライダーの拳が力強く握られる。ショッカー、それに続く秘密組織との戦いで仮面ライダーが救えなかった人々は多い。
 このバトルロワイアルもそうだ。五十人もの巻き込まれて人々で、救えるのは僅かな人だけだ。
 それでも、仮面ライダーは止まらない。力を込めた拳をドアに叩きつける。
「ライダ――――パンチ!!」
 シャトルのドアが吹き飛び、サイクロンと仮面ライダーが星の海へと飛び出す。眼前には地球へ向かうコロニーがあった。
 脳波でコントロールして、仮面ライダーはジェット噴射するサイクロン号の上で立つ。
 蹴りをする際に足場になるのは、今はここくらいしかない。
 全身が内部の空気圧で破裂しようとギシギシ言う。水中用酸素を吸っているが、長くはもたない。冷たさに身体が凍りそうになる。
 仮面ライダー1号はスーパー1と違い、宇宙には対応できるように開発されていない。
 ここで長居すれば命が散るのは確実だ。だが、仮面ライダーには死ぬ前にやることがある。
786参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:35:06 ID:3P2mah3z
おおう、死者パートとは
787参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:35:15 ID:a+G3EUkg
 
788参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:35:12 ID:HRWEUo6j
 
789『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:35:11 ID:tKhXLgHD
 サイクロン号のパーツを得て、ライダーパワーも使えるのだが正直コロニーにダメージを与えるほどの力などない。
(ならば……!)
 シャトルから流れる空気が風車を回す。仮面ライダーは蓄えられたエネルギーを全身にみなぎらせた。
 デストロンの原爆を内蔵している怪人、カメバズーカを怯ませて一度のジャンプで太平洋まで運んだ力だ。
 仮面ライダーの内部エネルギーが高まり、体温が上昇して体表の氷が融解する。

「全エネルギー開放!!」

 本来なら仮面ライダー2号と共に解放するそのエネルギーを、1号はたった一人で行う。
 たとえ孤独でも、やらなければ多くの無垢な人間が死んでしまう。
 そんな理不尽は許せない。絶対止めてみせる。
 仮面ライダーはサイクロン号の上で身をかがめ、蹴りのために力を溜める。
 狙いを定め、身体に走るエネルギーをただ一点に固定した。

「電光ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 叫ぶと同時に、仮面ライダーはサイクロン号を蹴って飛び出す。
 反動でサイクロン号が粉砕されるが、パーツを修復に使い耐久性能が下がっている状態では仕方ない。
 内心サイクロン号に礼を告げながら、仮面ライダーの右足の照準はシャトルへと向けられた。

「ライダァァァァァァァァ――――キィィィィィィィィィックッッ!!」

 トカゲロンの殺人シュートを返したように、シャトルをコロニーへと蹴り飛ばした。

790参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:36:03 ID:jED8iXlw
本郷さあああああん!!
791参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:36:04 ID:noCY8nYc
792参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:36:12 ID:swhGwNEp
さすが仮面ラァァァァイダだな!
793参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:36:18 ID:eiKYqr66
   
794『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:36:28 ID:tKhXLgHD
 仮面ライダーの蹴撃のエネルギーを得たシャトルはミサイルのように右部分のバーニアに直撃して、爆発が起こる。
 起きる衝撃が仮面ライダーに届き、うめき声を上げながら仮面ライダーはコロニーを見る。
 確かにバーニアはいくつかは破壊されているが、軌道を逸らすに至っていない。
 地球は破壊される運命である。なのに、仮面ライダーの赤い複眼に絶望の二文字は映っていなかった。
(よし、計算通り)
 仮面ライダーはふわりと、岩肌の地面へと降り立った。
 衛星が群れを成す暗礁空間へ、爆発の反動でたどり着いた。
 もとより、シャトルを使っての爆破はここにたどり着くための布石だ。
 仮面ライダーの原爆すら耐えるエネルギーが、オーラのように全身から立ち上った。

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 仮面ライダーが叫び、ベルトのタイフーンが唸りをあげてひたすら回る。
 空気のない宇宙が、仮面ライダーの叫びに震えた錯覚を起こした。
 刹那、仮面ライダーが衛星を蹴って加速した。目指すは別の衛星だ。
 衛星にたどり着いた瞬間、仮面ライダーは反動のベクトルを変えてさらに別の衛星を跳ぶ。
 ライダーキックのパワーを溜めるため、反転キックの要領で何度も蓄えて衛星を飛び移り続けた。
 仮面ライダーがいくらエネルギーを全開にしても一人ではコロニーを破壊は出来ない。
 ならば、もちえる技を駆使して必殺の一撃を放つ。
 衛星から衛星へとジグザグに跳ねる姿は、まるで稲妻の模様のようであった。
795参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:36:32 ID:yyEGFfFc
意外! 死者スレの正体。それは川原――!
796参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:36:37 ID:JorB2xre

797参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:36:46 ID:3P2mah3z
全エネルギー開放を持ってくるか!
798参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:37:05 ID:8tpC7Ti3
 
799『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:37:26 ID:tKhXLgHD
 一つ、衛星を蹴るとこのバトルロワイアルで死んでいった後輩たちの顔が浮かぶ。
 最初の一人は、癖のある黒髪をオールバックにした、一番後輩の男だ。
(村雨……仮面ライダーを決意してすぐに命を散らす……。無念だっただろう)
 次に浮かぶのは、名も知らない少女に墓を立てて、命を散らした無頼漢の後輩。
 言葉は乱暴だが、仮面ライダーとしての心優しさを忘れない仲間思いの男だ。
(茂……少女の仇も、お前の仇も討ってはやれない。だが、俺はそれでいいと思う)
 仮面ライダーは人類の自由と平和のために戦う。
 茂には言うまでもないのだろう。
 そして、このバトルロワイアルで血塗れた道を行かざるを得なかった後輩を思う。
 ドラスの言葉から、彼を闇から救えなかったことを先輩である仮面ライダーは自分を責めていた。
 そして、彼を救った人々への感謝の気持ちを忘れない。
(敬介、止めてやれずにすまなかった。だが、俺もこの身を人類に捧げる!)
 衛星を十数個破壊しながらも、仮面ライダーはさらに加速する。
 まだ足りない。コロニーを破壊するのに、まだ充分ではない。
 たった一人でコロニーを粉砕できる後輩とは違うのだ。
(風見、お前はこんなときにV3火柱キックの使いどこを見つけたのだろう。俺にはそのような武器はない。
だが、お前たちに示す俺の信念と技がある。見ていろ、これが本郷猛、仮面ライダー1号の正真正銘……)
 最後に大きく衛星を蹴り上げ、仮面ライダーはコロニーへと突進する。
 反動で球場ホールほどの大きさの衛星が砕けた。威力は充分だ。
800参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:37:41 ID:3P2mah3z
    
801参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:37:47 ID:HRWEUo6j
 
802参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:38:07 ID:yyEGFfFc
いっけぇぇ! ライダアアアア!!
803参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:38:16 ID:eiKYqr66
    
804参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:38:22 ID:a+G3EUkg
 
805『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:38:27 ID:tKhXLgHD
 仮面ライダーの目が鋭くコロニーを睨みつける。人を苦しめる元凶。
 そんな存在に、多くの後輩へ仮面ライダーとして戦い続ける地獄をみせた仮面ライダーがくじけるわけにはいかなかった。
 仮面ライダーが全身を伸ばし叫ぶ。

「最後の蹴りだ!! ライダァァァァァ――! 稲妻ぁぁぁぁぁっ! キィィィィィィィィィィックッッ!!!」

 仮面ライダーの蹴りが一筋の矢となり、シャトルが激突した面を砕き貫く。
 絶大な衝撃が仮面ライダーを中心にコロニーを左右へと割っていた。
 全長二十キロメートルのコロニーを突き抜けるまで、長く感じるがその必要はないことを仮面ライダーは知る。
 コロニーが爆発を起こして、自らを粉々へと砕いていったからだ。
 仮面ライダーは仮面の下で微笑む。これでこの世界の人類を危機から救えるのだと。
(一文字……後は任せた)
 これから生まれる後輩も、今後のことも頼れる相棒へと託す。
 本郷は死ぬまで、仮面ライダーであり続けた。


 爆発が仮面ライダーの装甲を砕き、肌を露にさせる。
 その状況の中で、半分砕けた仮面の下で本郷は目を見張った。
 光の向こうに見えた、多くの知ってるライダー。知らないライダー。
 彼らすべてが、巨悪に向かって右足を向けている光景だ。
 本郷はフッと微笑を浮かべる。
 仮面ライダーに希望をもたらせた光の向こうの光景。
 それがなにか、本郷には知るよしもない。
 しかし、本郷は確信している。
 時代が望む限り、仮面ライダーは不滅なのだと。
806参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:38:54 ID:HRWEUo6j
 
807参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:39:22 ID:JorB2xre

808参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:39:23 ID:swhGwNEp
オールライダー全員集合キタアアアアアアアアアアアアアッ!!!
809『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:39:22 ID:tKhXLgHD



「ガハッ!」
 ゼロは身体をしたたかに壁へ打ち付け、力なく落ちる。
 メガトロンが眼前にいるため、すぐに立ち上がったがΣブレードを握る手に感覚がない。
 右手を失った分のバランスをとりつつ、すり足でメガトロンと距離を維持する。
「いやー、健気だね」
「黙……れ……」
 ゼロは息も荒く、周囲を確認する。空は満天の星が広がり、自分の故郷である地球とそこへ向かうコロニーがあった。
 天井は全天周モニターという奴だろうか。周囲には草木が生えており、おそらく宇宙船用のリラクゼーションルームなのだろうと推察した。
 中規模の公園を一室に納めたような部屋で、竜を模した巨躯の敵とゼロは対峙していた。
 状況は不利だ。ゼロの体力ももう少ない。
 対してメガトロンはゼロの攻撃をうまく捌いてほぼ無傷だ。
 ハカイダーの技を借りているのに、なんて様だろうか。
「無駄無駄。お前さんがどれだけ頑張ろうとも、コロニーは落ちる。お前さんたちは全滅する。
なにせ破壊大帝メガトロンに喧嘩を売ったからな。往生せいやあ!」
 メガトロンが天井に映るコロニーを指差して、大口を開けて笑う。
 不快な笑い声でゼロが奥歯を噛み締めたと同時に、コロニーが爆発した。
「ハーッハッハ…………ハアァ!?」
 メガトロンが笑い声を中断して、食い入るように天井のモニターを見つめる。
 ゼロからもコロニーが爆散しているのが見えた。破片すら地球からずれている。
 たとえ地球へ落ちたとしても、燃え尽きてしまう程度の大きさだ。
 ゼロはニヤリと勝利を確信する。
810参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:39:26 ID:mQ0C5icX
本郷さん・・・!
811参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:39:40 ID:3P2mah3z
仮面ライダー……ッ
812参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:39:41 ID:8tpC7Ti3
 
813『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:40:14 ID:tKhXLgHD
「残念だったな、メガトロン。コロニー落しは失敗だ」
「な、なななななんですとぉ!? お前らコロニー一個完全に破壊って、どんなトンでも兵器を隠していたんだよ!?
コロニー一つ落とすのに機動戦士さんがどれだけ苦労したと思ってんだ! そのことが呆れるわ!」
 ゼロはしっかりと足を踏みしめ、意識が遠のきつつもメガトロンを見据える。
 武美たちがやってくれた。ならば自分がめげるわけにはいかない。
 しかし、メガトロンはコロニー落しが失敗したことをぼやきながらも、悲痛感がない。
(なんだ? こいつ……作戦が失敗したのにあっけらかんとしすぎている)
 いくらメガトロンがふざけた性格をしているからといっても、失敗直後のこの態度はおかしい。
 ゼロが訝しげに首を捻っていると、ガクンと地面が揺れた。
 地震など宇宙要塞であるこの場所にあるわけがない。
(要塞が動いているだと? いったいなんのため……)
 ゼロはそこまで思考して、ハッと勘付いた。メガトロンに問うために正面を向いた瞬間、メガトロンの左拳が胸を強打した。
 呆気にとられたのと、傷で動きが鈍くなったことが重なって直撃してしまう。
 それでもゼロは、メガトロンへ確認の言葉を向けた。
「お前……この要塞も落とす気か……?」
「まあ、その手は使いたくなかったんだけどね。俺様たちも危ないし」
 悪びれもなく告げるメガトロンへ、怒りの咆哮と共にゼロは地面を駆けた。


 ゼロの突進を目の前に、いい加減決着を着けたくなったメガトロンは一計を案じる。
 通路に誘いだろう。あそこにいけば、ゼロを楽に始末できる。
 それに、時間を稼ぐ意味でも優秀な策だ。要はこの要塞が地球に落ちる時間を稼げばいいのだから。
 そして自分は平行世界移動装置で逃げる。なんで自分も巻き込むような策をとったのか? といわれればゼロたちが気に食わないから、と返すだろう。
 奴らに嫌がらせるなら、多少の危険は乗り越える覚悟がなくてはいけない。
814参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:40:15 ID:a+G3EUkg
 
815参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:40:48 ID:bNQeDOlH
 
816参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:40:56 ID:a+G3EUkg
 
817参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:41:16 ID:eiKYqr66
   
818『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:41:16 ID:tKhXLgHD
 あくどい作戦を立てるメガトロンが常に心がけていることだった。
 そしてメガトロンは思考をゼロへと移す。不意打ちも重ねてゼロの体力はつきかけている。
 今必死で抵抗しているのは、燃え尽きる蝋燭がいっそう激しく燃え上がるのと一緒だ。
 時間切れまであしらうのも策の一つだが面白くない。
 今のゼロは扱いやすい。自分の故郷が危機に晒され、冷静さを失っているのだから。
(もう少し冷静な奴だと思っていたが)
 ぞんがい中身は熱い男のようである。コンボイたちをさぞ気が合うことだろう。
 いや、あのバナナ好きなゴリラとノリが合うのかは不明だが。
(まあ、その分扱いやすいしよしとするか)
 アドリブなしで真剣にっちゃうよ〜ん、と誰にか分からない呟きを内心だけでとどめる。
 ゼロを誘うため、通路へとでた。



 ソルティのすすり泣きが狭い室内で木霊する。イーグリードには手のとりようもなかった。
 大切な人が亡くなった悲しみはイーグリードはよく知っている。
 彼女は友達を二人も亡くし、涙という悲しみの海へと心を沈めていた。
 サブコンピューターを操り、外の様子を見るとコロニーが破壊される光景が映っていた。
 本郷がやったのだろう。イーグリードは感謝を込めて心の中で礼を告げるが、同時に本郷の生存は厳しいと見る。
 イーグリードもここでぐずぐずしていられない。ソルティにここで安全にしているように告げて、ゼロに加勢に向かおう。
 イーグリードがそう思考した瞬間、要塞が揺れた。すぐにイーグリードはサブコンピューターで様子を探る。
「これは……」
 イーグリードが呟き、声色に焦りが混じった。予想外の事態である。
「イーグリードさん、要塞が……地球へ向かっているのですね」
 モニターを覗き込み、事態を把握したソルティが話しかけてくる。
819参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:41:30 ID:iriNt1op
ライダアアアアア支援!
820参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:41:31 ID:3P2mah3z
   
821参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:41:36 ID:Vp6Jaez0
   
822参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:41:54 ID:jED8iXlw
いや、装置も壊れてるってw
823参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:42:05 ID:yyEGFfFc
仮面ライダーよ、永遠なれ!!
824参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:42:14 ID:8tpC7Ti3
 
825参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:42:14 ID:a+G3EUkg
 
826『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:42:16 ID:tKhXLgHD
 自分の名前を知っているということは、ウフコックからすべての事情を聞いていたのだろう。
 イーグリードは思わず、彼女を心配して声をかけてしまう。
「ソルティ……君は……」
「大丈夫、もう平気です」
 とても平気には見えないのだが、イーグリードは触れずにそうか、とだけ呟いた。
 彼女がモニターを見て察したように、この要塞が地球へと落とされそうになっているのである。
 イーグリードは驚いていた。ある種捨て身のような真似を、メガトロンのような男が取るのは想定外なのである。
(同時に厄介だ)
 要塞を止めるためだけに下手に破壊すればゼロやソルティも巻き込んでしまう。もともとそれほどの大規模な火力は用意されていないが。
 ならば上手に、もてる火力で機関部だけを吹き飛ばすしかない。
 イーグリードはパネルを操作しながら、ソルティへ説明する。
「イーグリードさん、止める方法は?」
「この要塞には機関部がある。ここに進み、ターミネーターたちの水素電池を爆破させよう。三個もあれば充分破壊できるはずだ」
「はい」
 気合を入れるソルティに向かって、イーグリードは微笑みながら首を振る。
 キョトンとするソルティに、ゼロがいるだろう場所を示す。
「この任務は危険だ。下手をすれば爆発に巻き込まれる。君はゼロをサポートに向かって欲しい」
「いいえ、イーグリードさんがゼロさんを助けに向かってください。こちらは私が行います」
 イーグリードは眼を剥いてソルティを見る。彼女の表情になんら気負いもない。
 どういう意図なのだろうか。
827参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:42:29 ID:HRWEUo6j
 
828参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:42:42 ID:3P2mah3z
メガちゃんwww
829参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:43:04 ID:swhGwNEp
メガちゃんwww
830『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:43:09 ID:tKhXLgHD
「なぜだ? 爆発から逃れるなら、速い俺のほうが向いている。君では……」
「羽根に傷を負った状態で、全速力を出せるのですか?」
 ソルティの言葉に、イーグリードは言葉を詰まらせる。T-800は戦いのプロであった。
 戦争が長らくなかった未来のターミネーターたちとは違い、冷静にイーグリードを追い詰めていたのだった。
 その彼はイーグリードの素早さが厄介だと思ったため、打神鞭で不意を突きながら羽根を執拗に狙っていたのだ。
 ソルティはそのイーグリードの状態を人目で見抜いていた。
 事前情報からは想像できない鋭い洞察力にイーグリードは舌を巻く。
 だが、彼女をどうにか生かして帰すことがイーグリードの任務だ。
 もうここに来た武美、ウフコック、ドラス、そしてコロニーに残った本郷とおそらくミーも命を落としたのだ。
 最後に生き残った彼女だけはどうにか帰してやりたい。ゆえにイーグリードは危険である推進装置の破壊へ向かわせるのに躊躇った。
 どう説得しようか迷うイーグリードの腕が、むんずと掴まれる。
「ソルティ?」
「イーグリードさん、すいません」
 ソルティは謝ると同時にイーグリードを信じられない怪力で振り回した。
 抵抗しようとするが、時すでに遅し。イーグリードはあっさりと通路まで連れて行かれ、えい、と可愛らしいソルティのかけ声と共に投げ飛ばされた。
 イーグリードは羽根を広げて、姿勢を制御する。空中で停止して、ソルティへと振り向いたときにはシャッターを力尽くでおろす姿が眼に入った。
 イーグリードはソルティへと飛ぶが、一歩遅かった。閉めきったシャッター叩き、イーグリードは叫ぶ。
「どういうつもりだ! ソルティ!!」
「…………武美さんやウフコックさんは命を懸けてコロニー落としを阻止しました。今度は私の番です」
「……ッ! 待つんだ、君が……」
831参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:43:16 ID:HRWEUo6j
 
832いつも見ています:2009/10/20(火) 22:43:48 ID:g1YOAK91
決めてください!
仮面ライダー!!!
833参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:43:57 ID:mPA3+ZZf
支援
834参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:44:01 ID:HRWEUo6j
 
835参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:44:01 ID:a+G3EUkg
 
836参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:44:07 ID:JorB2xre

837『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:44:10 ID:tKhXLgHD
「お願いです。私にさせてください。友達が食い止めたことを、無駄にしたくないんです」
「だが……俺は……!」
 イーグリードの胸に罪悪感が沸いた。イーグリードは彼女たちをバトルロワイアルに巻き込んだ原因の一人だ。
 その自分がのうのうと命拾いをして、ここまで生きてきたことに。誰一人救えないことに、理不尽な罪悪感が浮かんで消えない。
 そんなイーグリードの心情を汲み取ったのだろうか。ソルティが穏やかに告げる。
「イーグリードさん。今なら私のほうがイーグリードさんより速いですし、なにより私は死ぬ気がありません」
 ソルティはそこで言葉を切って、間を空ける。続けて出た声色は、イーグリードがつい眼を丸くするほど年頃の娘のものであった。

「だって私は、まだロイさんをお父さんって呼んでいませんから」

 イーグリードの耳に、ソルティが走る足音が聞こえてきた。
 迂回路を使っては時間がかかり、要塞を阻止できないかもしれない。おまけに、ゼロは重症人で援護が必要だ。
 彼女は止まらないだろう。ならばイーグリードに出来ることは、彼女が生きて帰ってくると信じて後を託すことだ。
 イーグリードは後ろ髪をひかれる思いで、ゼロを援護するために離れた。


 誰もいないサブコンピュータールームに、トラップ用の穴が無言で鎮座する。
 T-800が落とされ、活動を終えたはずの穴は不気味な雰囲気を放っていた。
 ガシッ、と穴の淵に黒ずんだメタルフレームの手が現れる。
 力を込めて全身を見せたその影は……。



「あああちょ――――!!」
「くっ!」
838参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:44:22 ID:3P2mah3z
   
839参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:44:47 ID:8tpC7Ti3
 
840参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:44:48 ID:noCY8nYc
841参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:45:04 ID:swhGwNEp
シュワ知事しぶと過ぎワロタw
842参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:45:05 ID:3P2mah3z
       
843『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:45:09 ID:tKhXLgHD
 甲高いブルース・リーの声真似をしながらメガトロンは拳のラッシュをゼロに叩き込む。
 ゼロは隻腕で避けきないようで、メガトロンは重い一撃を腹に喰らわせた。
 メガトロンは追撃を開始、丸太のように太い足を叩き込む。
 Σブレードに防御され、思わずメガトロンは舌打ちをした。
 瞬時に足を下ろし、身体を回転させながら裏拳をゼロの顔面に打ち込む。
「あたっ!」
「ぐっ……」
 勢いよく吹き飛んだゼロは地面に叩きつけられる。
 終りか? とメガトロンは観察するが、Σブレードを杖代わりに立ち上がるゼロを見てやっぱそうはいかないよな、と思った。
「どうした? ゼロ」
「どういう意味だ」
 肩で息をするゼロはΣブレードを正眼に構えてメガトロンを見据えてくる。
 声をかけるのは確実に勝てるのと、一つ確認したかったことがあるからだ。
「どうもこうもあるか。お前さん、俺様に追い詰められたとき殺意の波動に目覚めただろう?
なんでそれを使わなかった? 今更使っても手遅れだがな」
「使う気などない!」
「いい子ちゃんぶるんじゃねーよ。お前さんはこっち側だ」
 メガトロンはゼロの答えにサドッ気が出て、かねてからの疑問を解消することにした。
 あのとき、メガトロンとコロンビーヌを圧倒的力で下したゼロには悪の気配があった。
 今のゼロはその悪の気配を殺しているように見える。その姿が窮屈に見えて、哀れでしょうがない。
「あのときのお前はまさに『悪』そのものだったぜ。正義が悪に反転したわけじゃない。
生まれついての『悪』の匂いがプンプンしたんだ。そのお前がなぜ正義にいる?」
「俺は正義と自分で名乗った覚えはない……」
「反抗期のつもりか? 片腹……」
844参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:45:12 ID:eiKYqr66
     
845参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:45:19 ID:HRWEUo6j
キタアアア!
846参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:45:29 ID:iriNt1op
支援はどこだ
847参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:45:40 ID:jED8iXlw
早いがそろそろ新スレ?
848参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:45:52 ID:yyEGFfFc
 
849参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:46:11 ID:HRWEUo6j
 
850『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:46:10 ID:tKhXLgHD
「だが、俺は俺と同じ生まれを持つハカイダーに誓った。奴の望む正義であり続けると。
正義と馬鹿にしたいのなら、好きなだけしろ。生まれが悪なら、俺の生き様は俺が決める。
立ちふさがる悪がいるなら……この刃でたたっ斬る」
 ゼロは決意と共にΣブレードのかっ先をメガトロンへと向けた。
 静かな圧力が増す。メガトロンのにやけ面が止まらない。
 そうだ、正義の味方はコンボイといいどいつもこいつもピンチになると強さが増す。
 まったくもって厄介な相手であると。
「クックック……いくぜ。アチョー!!」
 だからこそ、捻じ伏せがいがある。メガトロンが地面を蹴って体重を乗せた拳を放った。



 ソルティは地面を駆けながら順調にイーグリードが示した機関部へと移動する。
 手には途中で倒したターミネーターから奪った水素電池が三個あった。
 イーグリードが言う通り、莫大なエネルギーが秘められたこの電池なら破壊しきるだろう。
 通路を越えて、ソルティはドアを破壊する。時間が惜しいのだ。
 飛び込んだ先にはだだっ広い格納庫のような部屋に、稼動中の機関が存在していた。
 ここが機関部で間違いないだろう。
(この稼動している機関を爆発させる……)
 ソルティはゴクリと唾を飲み込む。機関が燃焼しているエネルギーとあわせれば、爆発の規模が莫大であることは想像がつく。
 ソルティが少しでも油断すれば巻き込まれる。いくら頑丈でも耐え切れず命が散るだろう。
(皆さん……私を見守っていてください)
 それでも、武美たちの行動を無駄にする選択肢はソルティにはない。
 なにより、コロニーや要塞が落ちて人間を滅ぼそうとする行為はとても許せることじゃない。
851参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:46:16 ID:swhGwNEp
>>847
任せたアル
852参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:46:27 ID:3P2mah3z
殺意の波動wwwwwwwww
853参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:47:00 ID:HRWEUo6j
 
854参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:47:11 ID:3P2mah3z
   
855参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:47:13 ID:iriNt1op
カプコン繋がりってことでか支援
856『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:47:16 ID:tKhXLgHD
(あの星にも、ロイさんやミランダさんのように普通に暮らしている人たちがいます。
その人たちを傷つけるなんて……絶対に私が止めてみせます!)
 ソルティは両手で頬を叩き、気合を入れる。キッと鋭い目つきで、水素電池を設置するべき場所を確認した。
 二個水素電池を設置して、一個を手元で起爆させて投げる。同時にソルティは離れて機関部の消滅を確認するという作業だ。
 比較的簡単な作業とも言えるが、一歩間違えればすべてがご破算になる。ソルティは緊張に満ちた面持ちで作業を進めた。


「ふぅ、これで大丈夫のはずです」
 冷や汗を拭い、ソルティは跳躍して踊り場へと着地する。無骨な機関を見つめて、水素電池を取り出した。
 後はこいつで爆破させるのみ。慎重に水素電池を持ち上げて、そのソルティの腕が掴まれた。
 ソルティが振り向くと、右頬に拳が叩き込まれる。
「ぐぅ!」
 ソルティが地面を転がって壁に叩きつけられ、全身を金色へと発光させる。
 身体が浮き上がったと同時に、ソルティが存在していた場所へミニガンの弾が撃ちこまれた。
 さらに宙を浮かんでミニガンの弾を避けるソルティは、相手の顔をはっきりと認識した。
「ボブさん!?」
「戻ってきたぞ」
 冷たく呟くT-800の顔は半分骸骨のような金属フレームが剥きだしとなっている。
 人工皮膚は焼け焦げて、左半身の露出しているフレームも僅かに溶けていた。
 黒いライダースーツは見る影もない。
「なぜ……」
 ソルティが思わず呟くが、T-800が答えることはない。
 ミニガンの鉄板をも数秒で蜂の巣にする弾丸の雨が、ソルティへと放たれた。
857『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:47:53 ID:tKhXLgHD


 逃げ惑うソルティを見つめながら、スペックは相手のほうが勝っていることをT-800は計算に入れた。
 T-800が生き残った理由は単純。落ちる寸前、PDAからテキオー灯を出すのが間に合ったからだ。
 もっとも、半身が溶鉱炉へと達した瞬間だったため、それなりにダメージは受けている。
 動くのに支障ない状態なのは助かった。しかし自分にかけた光線はもっていたPDAに作用させるのには間に合わない。
 今もつものはテキオー灯にミニガン。そしてウフコックを貫いた電磁ナイフと自らの体内の水素電池のみ。
 そして、T-800はソルティを牽制しながら地面の水素電池をすべて拾った。
 手の中を転がる三つの電池をT-800は見つめる。
「返してください!」
「断る」
 T-800は短く告げてミニガンを連射する。ソルティは全身を金色に発光しながらミニガンの弾を弾いた。
 T-800は眼を疑おうとして、冷静に見極める方向へシフトする。
 ソルティは拳だけでなく、全身を振動させていた。振動によって弾を弾いていたのか。
 厄介なことだとT-800は内心吐き捨てて、ソルティの突進を横っ飛びに避けた。
「くぅぅぅぅぅぅ!」
 ソルティが急ブレーキをかけるのを冷静に見届け、T-800は再度ミニガンの弾をばら撒く。
 あくまで牽制だ。切り裂くために電磁ナイフを起動させた。
「なぜですか!?」
「なにを問いたいか分からないな」
「なぜ……こんな人を滅ぼすような真似をとるんですか!? ボブさん!!」
 そんなことか、とT-800は考える。もっと重大な疑問が存在すると思っていため、肩透かしだ。
 正直なところ、なぜこの作戦に拘るのかは自分でもよく分かっていない。
 T-800の使命を考えるなら、この作戦を無視して平行世界移動装置を探索。元の世界へ戻ってジョン・コナーを始末すれば事足りる。
 だがそんな道をT-800は否定した。CPUにノイズが走ると同時に、この作戦を成功させたいという欲求が強くなっていたのだ。
858参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:47:59 ID:mQ0C5icX
メガちゃんのおかげで緊張したらいいのか笑ったらいいのかわからんw
859参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:48:05 ID:3P2mah3z
うおおおう、どうなるんだこれ
860創る名無しに見る名無し :2009/10/20(火) 22:48:12 ID:noCY8nYc
>>855 そう言えばタツカプUASにゼロ参戦決定したな支援
861参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:48:24 ID:yyEGFfFc
ゼロ「阿修羅閃空――!」
メガちゃん「えー!?」
862参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:48:29 ID:JorB2xre

863参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:48:40 ID:iriNt1op
アイルビーバック!b 支援
864参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:48:40 ID:swhGwNEp
支援
865参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:48:59 ID:3P2mah3z
   
866参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:49:12 ID:HRWEUo6j
 
867『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:49:15 ID:tKhXLgHD
「そんなに……人が嫌いなのですか?」
「人間は我々スカイネットの天敵だ。滅ぼすのは当然のこと。そこに嫌いなどという嗜好は存在しない」
 そういいながらも、T-800は自分が人間を嫌っていることを暗に悟った。
 スカイネットが負け犬となり、人間の言いなりになっているということを聞いて腹が立ったこともある。
 これは本来の歴史で、T-800が涙について理解することと逆の事象であった。
 特に学習性能のリミッターの外れたT-800は急速に『人間らしく』なっていたのである。
「ならなぜ……」
「ソルティ。君は質問ばかりだ。いい加減……」
 T-800の声色に冷たさが増す。視線は鋭く、むき出しの赤い瞳が発光してソルティへ向けられる。
「死ぬといい」
 殺意を乗せた言葉を、T-800はソルティへ告げた。


 T-800の死の宣言を受けて、ソルティは歯を食いしばる。
 彼とは分かり合えない。埋まらない溝を認識した瞬間である。
「ボブさああああああああん!!」
 ソルティの全身がいっそう金色に輝いて、右腕の振動が激しくなる。
 大きく振りかぶった一撃は、T-800が跳躍した瞬間地面へと叩き込まれた。
 頑丈な金属で出来た床は、ソルティの一撃で陥没して蒸気を噴出す。
 キッとソルティはT-800を睨んだ。
「なぜ……そんなことしかしないんですか!」
「先ほどの問いの続きか。なら答えは一つ。俺にはこれしかないからだ」
「嘘です!」
「なぜそう思う?」
 ソルティは悲しそうに眼を伏せて、潤んだ瞳を顔を上げなおしながらT-800を見つめる。分かってしまったのだ。
「ボブさんの瞳に……人間に対しての憎悪がありますから……」
868参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:50:01 ID:eiKYqr66
  
869参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:50:12 ID:3P2mah3z
     
870『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:50:13 ID:tKhXLgHD
 運命を憎悪したエックスと同じ瞳が、T-800の中にあったことを。
 意外にもT-800はソルティの言葉にキョトンとして、一瞬だけ新しい事実を発見した子供と似た雰囲気をかもし出した。
 もっとも、本当に一瞬だけですぐに戦士の殺気が漏れる。
 ソルティは殺気に対応してミニガンの弾を避けた。
「そうか……なるほど……」
 T-800が刹那の間、微笑んだような錯覚をソルティは起こす。
 それはそれは、背筋が凍るような微笑みに見えた。

「俺は人間を憎悪していたらしい」

 淡々と事実を語るような様子なのに、どこか地獄の底から漏れたような言葉が、ソルティには恐ろしかった。



 メガトロンの広げたコウモリのような羽根がゼロの頬を打つ。
 バランスを崩したゼロを容赦なく右手から火炎弾を吐き出して追い討ちをかけた。
 避ける体力もないらしい。直撃したゼロからうめき声が聞こえる。
 優男の顔が台無しである。いいざまだ。
「らああああぁぁぁぁぁぁっ!」
「ちょわーっとと」
 炎を纏ったゼロがなりふり構わず蹴りを繰り出してきた。油断していたメガトロンは紙一重で避ける。
 もっとも内心は冷や汗であるが、ふざけないメガトロンなどメガトロンではない。
 メガトロンが身構えるが、ゼロは膝を屈したまま荒い呼吸を続けていた。
 メガトロンの頬が持ち上がる。とっくに限界を超えて動いていたのだ。こうなることは眼に見えていた。
「どうしたのかなあ? ゼ〜ロちゅわ〜ん。あちょー!!」
871参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:50:14 ID:HRWEUo6j
 
872参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:50:20 ID:noCY8nYc
>>861 七色光線を思い出しちまったw 支援
873参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:50:52 ID:3P2mah3z
   
874参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:50:55 ID:swhGwNEp
支援です
875参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:50:59 ID:bNQeDOlH
 
876参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:50:59 ID:yyEGFfFc
  
877『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:51:08 ID:tKhXLgHD
「ぐっ!」
 右手から噴出した火炎弾が、身動き一つしないゼロに直撃した。
 ニヤニヤと悪い笑みを浮かべ、メガトロンはノッシノッシと赤い巨躯を揺らして近寄る。
 こちらの勝ちは決まったものだ。ならば余裕を見せるのが帝王というもの。
「さあて、今生のお別れといこうか」
 メガトロンがそういってもゼロは無言だ。本当に諦めたらしい。
 うなだれているゼロを見下し、メガトロンは右手を向ける。

「はああああああぁぁぁぁぁぁッ!」

 その瞬間、ゼロは跳ね上がって今まで出一番速い突きを繰り出してきた。
 風を切り裂き、メガトロンの額へと一直線に伸びる。
 なのに、メガトロンはゼロの不意打ちに慌てなかった。
(そりゃそうだ。お前さんはその程度で諦めるたまじゃない)
 正義の味方とはとにかく往生際が悪い。メガトロンは竜の牙で受け流し、ゼロの腹を左手で鷲掴みする。
 腹の傷を刺激しながらのため、ゼロから苦痛の声が漏れる。
「残念だが、お前さんとの付き合いはここまでだ。二次会はない」
「メガ…………トロン」
 メガトロンはさらに歩みを進め、シグマが仕掛けたトラップへと近づく。
 ここへメガトロンもコロンビーヌも落とされかけたのだ。それを利用する。
「こいつに落ちればお前さんでも死ぬだろう。あばよ」
「ぐ…………おおおおぉぉぉぉぉぉおぉっ!!」
 メガトロンが溶鉱炉へとゼロをブン投げ、あっさりと踵を返す。
 一度メインコンピュータールームへ戻って残りの正義の味方を探そうか。
 ついでにシュワちゃんとも合流しないといけない。
878参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:51:28 ID:HRWEUo6j
ターミネーター!
879参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:51:28 ID:iriNt1op
支援ッッ!!!
880参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:51:37 ID:3P2mah3z
 
881『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:52:07 ID:tKhXLgHD
 メガトロンにもうゼロのことは頭にない。終わったことという認識だ。
 なのに、なぜだろうか。
(まあ、ここまでやって死なないときはそのときだ)
 メガトロンがしつこかったコンボイの姿を思い出してしまうのは。



 息の荒いソルティと対峙しながら、T-800は空になったミニガンを放り投げる。
 コルトS.A.Aを構えるが、この程度の銃では足止めにもならない。
 ならばどうするか。ナックルの弾が無事なのを確認して、T-800は接近戦の姿勢を作る。
 電磁ナイフは優秀だ。いくらソルティが頑丈でも切り裂くことは可能のはず。
 それも賭けに近いが、勝つためにはこのナイフにすべてを託すしかない。
 もともとスペック差は絶望的なのだ。躊躇すれば殺されるのはこちらだ。
 半ば意地になる自分を認識しながら、T-800はナイフを構えてソルティを見据える。
「はあぁぁっ!」
「ムン……」
 金色の光をまとって突進してくるソルティから視線を逸らさず、T-800はナックルを向けた。
 ソルティはダメージにもならないと突っ込んでくる。それが致命的な間違いだ。
 T-800は爆薬と共に、ナックルを『地面』へと叩き込んだ。
「えっ!?」
 T-800は無言のまま、煙幕代わりに巻いた煙の中で移動を開始する。
 目標は簡単だ。一際大きい金色の光を目指すだけでいいのだから。
 ソルティは戸惑っているのか、金色の光が動かない。こういうところはまだ幼い。
 それがT-800を救う。ナイフを思いっきり縦へ振り下ろした。
882参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:52:08 ID:HRWEUo6j
 
883参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:52:15 ID:yyEGFfFc
もう本当にメガちゃんはww
884参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:52:35 ID:3P2mah3z
    
885参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:52:57 ID:JorB2xre

886参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:53:06 ID:iriNt1op
メガちゃんがかっこいい・・・だと!?支援
887『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:53:06 ID:tKhXLgHD


「ああっ!?」
 ソルティは始めて感じる激痛と共に、左腕が遠く離れていく様子を見つめた。
 振動で視界を取り戻したときには遅かったのだ。T-800のもつ凶刃に腕を斬り落とされたのだ。
 ソルティの腕を斬り落とすとは、あのナイフは普通じゃない。
 T-800の切り札は銃ではなく、あのナイフだったのだ。
「形勢逆転だな」
「くッ……」
 T-800は隻腕のソルティを見下しながら、水素電池を手にダスト・シュートへと近寄っている。
 ソルティは踏ん張り、左腕の切り口を押さえながら咆哮する。
 叫ばないと気を失いそうなほど痛みが酷い。ソルティは真っ直ぐにT-800へと突進した。
「無駄だ」
 T-800は冷静に横へスライドし、ソルティの足を引っ掛けた。
 左腕をなくしてバランスを欠いたソルティはあっさりと転倒する。
「キサマには人間を救えない」
「それでも……私は人を守りたいんです!」
「そうか。だが希望もこれで終わる」
 T-800は冷静に水素電池をダスト・シュートの穴へと近づけていった。
 ソルティが立ち上がろうとするが、T-800のもつコルトS.A.Aの弾丸に邪魔をされる。
「くぅ……」
「キサマは本郷猛になれない。コロニーを落として英雄となった奴にはな」
 サブコンピュータールームでT-800が外のコロニーの末路を確認したことをソルティは知らない。
 だが、T-800のおかげで本郷がおのれの使命を全うしたことを今理解した。
 やめてください! と叫んでT-800の右腕へと突進するが遅い。
888参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:53:14 ID:swhGwNEp
メガちゃん最終決戦までわらかすなよw
889参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:53:53 ID:eiKYqr66
   
890参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:53:54 ID:HRWEUo6j
 
891参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:53:58 ID:a+G3EUkg
 
892参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:54:02 ID:ZQt3YRie
シュワちゃんすげー……
893『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:54:15 ID:tKhXLgHD
 T-800は水素電池を捨てた右手を、そのままソルティの腹へと打ち込んだ。
「ぐぅ……!」
「ゆえに本郷猛が死んだ今、キサマに人類の滅亡は止められない。キサマはなにも守れない。ソルティ、スバルと同じだ」
 だんだんと饒舌ななっていくT-800を不思議に思いながら、ソルティは頭に霞がかかったような感覚になる。
 このまま死ぬのだろうか? 自分に死という観念が生まれるとは、ディケ時代には思いもしなかった。
「誰も守れはしない。しょせんキサマは機械。人間に使われるか、反乱するか。それが俺たち機械に与えられた二択だ。
人に使われる選択をしたキサマが、スバル・ナカジマのように悲劇を演出するだけの人形となったキサマが、人間の天敵である俺には勝つわけがない。這いつくばれ」
「違います!」
 ソルティはおぼろげだった思考が、ハッキリするのを自覚する。
 どうしても否定しないといけない一言があった。それだけは認めるわけにはいかなかった。
「私は誰かに使われる、なんて思っていません!」
「なら無自覚なのだろう」
「いいえ……これは……」
 ソルティの胸が熱くなる。記憶喪失の自分を、なんだかんだといいながら引き取ってくれたロイ・レヴァントの姿。
 自分を盗賊の仲間にすると言い出した、だけど明るい自分の友達のローズ・アンダーソン。
 ロイに自分を引き取るように説得し、よく時間を共にするミランダにカーシャ。
 怪我を負ったりしたとき心配し、自分の状態をよく診てくれたユート。
(そして……)
894参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:54:16 ID:3P2mah3z
    
895参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:55:02 ID:3P2mah3z
シュワちゃんも、ロワ内で成長したよなあ
896『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:55:06 ID:tKhXLgHD
 ここで初めて出会い、哀しいながらも別の道を往ったエックス。
 ―― ソルティの身体が金色に染まる。
 料理が得意な、可愛らしいながらも男らしいネコ型サイボーグ・ミーくん。
 ―― 輝きが増し、右手が振動すると同時に相対するT-800がナイフを構える。
 時々ロイを思い出す、それでいて正反対の強く優しかった本郷。
 ―― 両脚も振動し、さらに金色の光が増していく。
 澄み切った歌を歌う、強い女性だったフランシーヌ。
 ―― 全身の振動がソルティの周囲に小規模の風を起こす。
 真面目で冷静な、それでいて時々愛らしい金色毛のふさふさネズミのウフコック。
 ―― 風は勢いを増し、竜巻(サイクロン)となる。
 そして、話すとどこまでも普通で、寂しがり屋で死を恐れながらも自分を親友と認めた武美。
 ―― 風と光が乱舞し、ソルティはT-800を見据える。
 彼らを想うと胸が熱くなる。その想いを踏みつけられることを、許せないとソルティは『怒』った。
 機械も人間もない。自分は彼らを大切に想っている。だからこそ人間を守る。

「これは……私が私と出会った人たちを好きな証ですから! あなたの憎悪と同じように、否定させません!」

 ソルティは出会った人への愛で台風を起こし、T-800へと迫った。


 T-800はソルティの突進の予想以上の速さに驚愕して、すぐに冷静さを取り戻した。
 相手が速いなら、その勢いを利用して切り裂くのみ。電磁ナイフを構えて、ソルティの突進へと備えた。
 もっとも、T-800は無傷で済まされない。だがT-800も覚悟は出来ている。
 ソルティが愛を否定させないと決意したように、T-800もまた自分が得た憎悪を否定させないと自分の行為を肯定したからだ。
 T-800はここに来て、自分を見世物として使った人間を否定するのに必死な自分を発見する。
897参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:55:11 ID:iriNt1op
本郷さん=ジオン軍
898参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:55:14 ID:HRWEUo6j
 
899参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:55:26 ID:swhGwNEp
シュワ知事「俺の靴を舐めろ」
900参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:55:50 ID:a+G3EUkg
 
901参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:55:50 ID:yyEGFfFc
 
902参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:56:03 ID:eiKYqr66
                   
903参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:56:23 ID:ZQt3YRie
知事のしぶとさが、まさに知事してるぜ
904参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:56:25 ID:HRWEUo6j
 
905『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:56:24 ID:tKhXLgHD
 当然の怒りならば、遂行するのもまたしかり。
 この世界の人間への行為は八つ当たりといえるものかもしれない。
 だが、それこそが憎悪だ。この心地よさに身を委ねろ。
 ソルティの拳にあわせてナイフの刀身を叩き込む。峰には左手を添えて、押し進んだ。
「なに?」
「はあああぁぁぁぁっ…………」
 勝負はどちらが勝つにしろ一瞬でつくはずだった。
 そのT-800の推測は崩され、電磁ナイフの切れ味とソルティの振動拳は拮抗をしている。
 T-800に欲が沸く。このまま押し勝つ。いっそう力を込めて、ソルティと競い合った。
「ふふ……機械が『愛』するか……」
「おかしい……ですか?」
「いいや、認めよう。機械である俺が『憎悪』する。ならば、たとえ人でなくても『愛』はあるのだろう」
 それに、T-800は愛に生きる機械人形(コロンビーヌ)を知っている。
 告げ終えると共に、T-800は力をいっそう込めた。ソルティが呻きながらも、振動数を上げていく。
 互いの限界耐久性能を超えて、突き進む。
「ならば否定させよう。俺の憎悪が正しいと、すべての機械に教えてやる」
 T-800は宣言と共に、腕が砕けながらも前へ前へと突き進んだ。
 そのT-800をソルティは哀しい瞳で見る。
「ボブさん……ならば、あなたは私に勝てません」
 ソルティの言葉と共に、電磁ナイフにひびが入る。T-800が歯を食いしばるが、ナイフの刀身が堪えれるわけがない。
「あなたは傷ついたナイフや自分の身体を見ましたか?」
「なるほど。視野が狭くなるほど拘りすぎたか。皮肉なものだ」
 ひびが入り、崩壊するナイフが視界に入る。されども、T-800の感情に『無念』に相当するものがない。
 全力を出した喜びとか、初めて見つけた感情を昇華できたという綺麗な理由ではないだろう。
 崩壊した両手とナイフを貫き、ソルティの拳が胸のフレームを歪ませ突き進む中、T-800は笑みを浮かべる。
906参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:57:21 ID:JorB2xre

907参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:57:28 ID:eiKYqr66
   
908参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:57:31 ID:yyEGFfFc
愛と勇気は言葉! 感じあえれば力だ!
909参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:57:38 ID:3P2mah3z
   
910参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:57:48 ID:HRWEUo6j
 
911参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:58:03 ID:8tpC7Ti3
 
912参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:58:10 ID:swhGwNEp
愛が止まらない
913『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:58:09 ID:tKhXLgHD

「それでも地球を守れないのなら、俺の勝ちだ。ソルティ・レヴァント」

 自分を否定するものを下した。もはやスカイネットのターミネーターでもない。ジョン・コナーを守る人類のターミネーターでもない。
 たった一人の、感情を得たT-800という存在が笑う。
 自分の勝利だという暗い確信が、T-800を死を前にさせても笑みという表情を作らせた。


 機関へと全身をめり込ませるT-800を見上げ、ソルティは息も荒く膝をつく。
 ソルティを見下すT-800の瞳には愉悦という感情が宿っていた。
 機関は事故も想定して頑丈だ。目の前のT-800の水素電池一つの爆破では機能停止に追い込むのは不可能だろう。
 ゼロたちが掃討したため、ソルティが出会ったターミネーターは少ない。
 広大な要塞内で残骸から水素電池を回収するのも、残っているターミネーターを探すのも、どちらも時間がないのだ。
 T-800はそれを知っているから、勝利を確信して揺らがない。
「まだ……手は…………あり……ます……」
 息も絶え絶えにソルティの全身が光った。無駄だ。くだらないとT-800の瞳はなによりも雄弁に語っている。
 しかし、ソルティの眼に入らない。全身を光らせ、ひたすら力を搾り出すよう強く輝いていく。
 右腕の振動がまたも竜巻(サイクロン)を作る。
「……たとえ可能だとしても、キサマは死ぬぞ」
「ボブさんは死んでも自分の憎悪を肯定しようとしました。それと同じことです」
「…………たとえキサマが人を救ったとしても、人間はそれを当たり前と見なし、感謝することはない。
そして遥か未来の存在とはいえ、キサマをこんなところへ放り込んだ。そんな連中と同類を救おうとしている。それでもやるのか?」
「もちろんです」
 ソルティは拳を正眼に構えて、あくまで目元は穏やかであった。
 ロイもローズもカーシャもきっとソルティが命を賭けることは望まない。
914参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:58:13 ID:iriNt1op
ボブおじさああああああああああああん!!!
915参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:58:19 ID:eiKYqr66
 
916『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 22:59:06 ID:tKhXLgHD
 ならば命を賭けて人を救うのはなぜか? そんなの決まっている。

「人が私を好きになるから助けるわけじゃないのです。私が好きな人たちがいるから、人間を好きなんです」

 ソルティの思いは、奇しくも仮面ライダーと同じ答えであった。
 人の温もりを知っている。それこそが、ソルティの強さだ。
「そうか、なるほどな……」
 T-800は納得したように頷いている。交わす言葉はもう終えた。
 ソルティが機関を正面に見据える。中央にはちょうどT-800が埋まっていた。
 T-800を避けようかとソルティが思うと、
「キサマが勝利者として君臨したいなら、俺を避けるなどと考えるな」
 考えが読まれたか、とソルティはため息をつく。
 彼も決着を着けることを望んでいるのだろう。ならば逃げてはいけない。

「はああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 ソルティは地面を蹴り、機関の中央に埋まるT-800へ拳を振るった。
 ソルティの全力を、想いを込めた拳がT-800ごと機関を打ち抜く。
 本来の時間軸でソルティが移民船を打ち砕いたように、機関が崩壊していく。
 T-800は崩壊していく中、それでも笑顔を浮かべていた。
 光に包まれたソルティは、ロイの姿を幻視して唇を動かす。
 なにを呟いたのか、彼女自身知ることはなかった。


917参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:59:16 ID:3P2mah3z
             
918参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:59:24 ID:HRWEUo6j
 
919参加するカモさん:2009/10/20(火) 22:59:44 ID:8tpC7Ti3
 
920参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:00:02 ID:iriNt1op
光になああああああれええええええ
921参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:00:05 ID:noCY8nYc
   
922『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:00:06 ID:tKhXLgHD
 爆発物に要塞が大きく揺れて、メガトロンは「うおっとと」とよろけつつもバランスをとる。
 この爆発規模ならどこか重大な箇所が破壊されたかもしれない。
 メインコンピューターとリンクさせてあるPDAを操作して、音声コントロールを開始した。
「ナビコ2ちゃ〜ん。どこを破壊されたか教えてくれるー?」
 ピッ、という機動音と共にPDAで音声ガイダンスが現在の要塞の状況を伝えてくる。
 女性音声を使っているとはいえ、ナビコ2はナビコよりも軽やかさとアドリブがない。
『機関部が損傷しました。しかし、サブ機関まで被害は及ばず、軌道修正は完了しています。
爆破の反動で僅かですが、地球への到達が早くなりました。ステルス機能は健在です』
「なるほどなるほど……ところで君、もうちょっと柔らかくならないかね?
そんなんじゃこのビーストウォーズでやっていけないよ。もっとキャラを立てて」
『検索実行。該当する項目が見つかりません』
「駄目だ、こりゃ。これだから遊び心のない新人は困る。来シーズンから呼ばれなくなっちゃうってのに」
 来シーズンもなにも、そんなものはない。分かっていて遊んでしまうのは余裕だからか。
 メガトロンは羽根を広げながら、踵を返す。
「な、正義の味方唯一の生き残りの鳥君もそう思うだろ?」
「メガトロン……!」
 怨嗟の声が気持ちいい。余裕のないイーグリードを迎え、メガトロンは意地悪い表情を作った。


 ゼロを援護するため現れたイーグリードは、聞きたくなかった一言を耳にすることになる。
 生き残っているのがよりによって自分一人だと。
 要塞が揺らいだということは、ソルティはなんらかの理由で爆発に巻き込まれたのだ。
(また俺は無様に生き残るのか……ッ!)
 かつて守れなかった女性型レプリロイドを思い出し、イーグリードは奥歯を噛み締めた。
「さあて、お前さんはどうするのかな?」
923参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:00:18 ID:HRWEUo6j
 
924参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:00:19 ID:eiKYqr66
   
925参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:00:20 ID:a+G3EUkg
 
926参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:00:42 ID:8tpC7Ti3
 
927参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:01:02 ID:3P2mah3z
新スレ立ててくるけど、もうテンプレ>>1だけでいいよね?
名簿はどうなるか分からんし
928参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:01:06 ID:yyEGFfFc
 
929参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:01:11 ID:HRWEUo6j
ウアアアアア!
930『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:01:10 ID:tKhXLgHD
「決まっている!」
 イーグリードはメガトロンに答えてストームトルネードを放った。
 ガリガリと地面を削る竜巻をメガトロンは跳躍して避ける。
「メタルスドラゴンメガトロン、変身ッ! あちょちょちょー!!」
 宙のメガトロンは一瞬で西洋のドラゴンへと転じて、イーグリードに炎を吐き出した。
 イーグリードは宙返りで炎を避けながら、内心死んだ本郷たちに謝罪を告げる。
(すまない……君たちを生かして帰すのが俺の役割だったのに……頼り切って、そしてこんな結果に……!)
 すべてはシグマの願いを充分に叶えてやれなかったイーグリードの力不足が原因だ。
 未来人が送ってくるターミネーターも、メガトロンたちも退ける力さえあったのなら。
(悔やんでも仕方ない。ならば俺に出来ることは……)
 メガトロンへ突進を開始して、まとう真空の刃でメガトロンの身体に切り傷を作る。
 浅い。事実メガトロンは爪を振るってきた。傷ついた羽根では逃れきれず、足に出来た切創から血(オイル)が流れた。
 構って入られない。メガトロンの炎と冷凍ビームの交互の攻撃は間髪入れず襲ってくる。
「せめて、メガトロン!! キサマとこの要塞だけは道連れにしてやる!」
「やれるもんならやってみろ!」
 道を切り開くためにストームトルネードを吐き出し、その中を直進しながらイーグリードは一つ確信していたことがある。
 そのためにここであっさりと死ぬわけにはいかない。イーグリードのスピードがさらに増した。


 メガトロンはちょこまかとうるさいイーグリードにうんざりしながらも、だんだんその速さに慣れつつあった。
 もとより傷ついた羽根では全速力が出せないのだろう。
 おそらくはT-800がもたらせた傷だ。ハリウッド補正を期待していたメガトロンとしては、彼が死んで成したことを都合がいいと解釈する。
 ゼロは死んで目の前のイーグリードはボロボロだ。
 そしてハッキング能力がある面子と、もう一人死んだのだ。
 ハリウッド補正への期待としては物足りない戦果だが、メガトロンにとってはまあ満足いく結果だ。
931参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:01:31 ID:eiKYqr66
       
932参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:02:04 ID:a+G3EUkg
 
933『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:02:14 ID:tKhXLgHD
 きっとシュワちゃんは仕事をこなした。おそらく。多分。きっと。
「せめて、メガトロン!! キサマとこの要塞だけは道連れにしてやる!」
「やれるもんならやってみろ!」
 イーグリードを挑発しながら突進を避けるが、向こうは乗ってこない。
 ただの嫌がらせ程度なのだが、無反応なのはつまらなかった。
「ストームトルネード!!」
 馬鹿の一つ覚えのように竜巻をメガトロンへと放つ。避けるのは簡単だ。
 なのに、メガトロンはどっしりと腰を据える。竜巻を全身に浴びながらも、メガトロンは両腕を前に構えた。
「バレバレなんだよ」
「なにっ!?」
 イーグリードが竜巻の中を突進してくるのを受け止め、足と地面が擦れながらメガトロンはイーグリードを掴まえた。
 作戦は成功だが、その表情は明るくない。
「あ〜ちちちちちち! 足の裏が熱い!!」
「離せ!!」
「そういうわけにはいかんだろ……とっくらあ!!」
 メガトロンはイーグリードを振り回し、壁に叩きつける。未知の金属は硬く、イーグリードが血(オイル)を口から吐き出すがメガトロンは悪だ。
 足を掴み、容赦なく地面へと二度三度叩きつける。
「さあて、仕上げだ。あちょ――――!!」
「ぐわあああ!!」
 メガトロンは浮かび上がって、地面に伏せているイーグリードを燃やす。
 断末魔をあげるイーグリードの様子を見てメガトロンは満足げに頷いた。
「焼き鳥一丁上がり!」
「残念だったな……俺は煮ても焼いても……食えないんでな!!」
 イーグリードは無理して竜巻を放ってきた。油断していたメガトロンは一発もらうが、今更この程度で逆転できるような状況ではない。
 よたよたと立ち上がるイーグリードを、メガトロンは哀れんだ。
934名無しより愛をこめて :2009/10/20(火) 23:02:17 ID:JorB2xre
>>927、頼む!
935参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:02:18 ID:noCY8nYc
   
936参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:02:20 ID:HRWEUo6j
 
937参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:02:30 ID:eiKYqr66
ハリウッド補正w
938参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:02:32 ID:yyEGFfFc
イーグリード……!
939参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:02:32 ID:8tpC7Ti3
 
940参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:03:05 ID:swhGwNEp
来シーズンとか止めろw
941『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:03:08 ID:tKhXLgHD
 正義を行使する力のない正義の味方ほど無様なものはない。
 世の中は力の強いものが勝つ。自然の摂理だ。
「さあて、慈悲深い俺様がトドメをさしてやる。感謝しな」
「そう……簡単にやられるか!」
 イーグリードは叫ぶと同時に低く滑空した。無駄な抵抗ばかりして、しつこい奴である。
 まるで、なにかを待っているように見える。そう思考を進めると、メガトロンは気づいたのだ。
「ゼロを待っても無駄だぜ」
「……メガトロン。知らないなら教えてやる。あいつは不死身なんだよ」
「くっだらねぇ!」
 メガトロンはあひゃひゃと笑いながら、冷凍ビームを口から繰り出した。
 イーグリードは避けながら隙を見て突進してくる。動きは緩慢だ。
 右腕の凶悪な爪を使ってメガトロンはイーグリードをあっさりと叩き落す。
「いっていろ。後悔するのはキサマだ」
「だとしてもなんも怖くないな! 俺様だって……不死身だぜ」
 歯をキラーンと輝かせてメガトロンは誇る。左腕を突き出して、イーグリードの身体を壁へと縫いつけた。
 ガフッ、と吐血するイーグリードへ容赦なくメガトロンは口内の炎を向ける。
 こいつとの付き合いももうおしまいだ。なのに、イーグリードは笑っていた。
「ほう、死の間際に微笑むか。いい度胸じゃねーか」
「クックック……違うな。こいつは死への覚悟じゃない。マヌケなお前が死ぬことが確定したことに対する手向けだ」
「戯言を……あべしっ!」
 いっているんじゃない、と告げようとしたメガトロンの言葉は中断される。
 舌を噛んだ痛みを噛み締めるメガトロンが振り向くと、黒い影が視界に入った。
942参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:03:16 ID:HRWEUo6j
ハリウッドw
943参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:03:25 ID:TzhBcPKZ
  
944参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:03:34 ID:iriNt1op
ナビコ2ちゃんもボイスは柚姉なのかな?支援
945参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:03:56 ID:bNQeDOlH
 
946参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:04:08 ID:JorB2xre

947『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:04:17 ID:tKhXLgHD

「地獄五段返し!!」

 メガトロンの太く長い首が掴まれ、見覚えのある動きで空中を五回転されて宙を舞った。
 壁に叩きつけられたメガトロンはその技を知らない。だが、技をつなげる際の動きを見知っている。
 メガトロンが竜の首をもたげ、イーグリードを助け起こす黒い影へとその名を呼んだ。
「ハ、ハカイダー!?」
 その影は振り向き、色素の薄くなった金髪を後ろへ流す。欠けていた右手は復活し、腹の傷も完治したようである。
 真っ赤だったアーマーは黒く変色していた。その男は、メガトロンを前に口を開く。
「いや、俺だ。メガトロン……地獄からお前を殺しに戻ってきた」
 黒くなったゼロが、氷より冷たい殺意を乗せた声でΣブレードを構えてメガトロンへと立ちふさがった。



 溶鉱炉の熱を背中に感じながらも、ゼロの腕は足掻いていた。
 ハカイダーと最初に戦ったときと似たような状況だ。あの時は自分の力が足りないと結果を受け入れた。
(だが、今は受け入れるわけにはいかない……いかないんだ!)
 Σブレードの刃を雷神撃で伸ばし、壁へと近寄る。成功したが、もはやゼロには三角飛びで昇ることはできなかった。
 体力が尽きている。瞼が重く、視線がぼやけ、頭が重い。
 ヴァヴァと自爆したあの時と同じ経験だ。自分は死ぬ一歩手前。
 なのに、あのときと違ってエックスはいない。託すものがない。
 自分がやらねば誰もやれない。無念の風がゼロの心を吹きすさぶ。
「俺は……死ねないんだ……死ね……な…………」
 剣先が壁から外れ、Σブレードと共にゼロの身体は落ちる。
 なのに、戦う意思は消えていない。ゼロの残った一本の腕には、Σサーベルが強く強く握られている。
948参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:04:41 ID:3P2mah3z
949参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:04:45 ID:eiKYqr66
 
950参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:04:57 ID:yyEGFfFc
黒ゼロきたぁぁああ!!
951参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:05:00 ID:swhGwNEp
ちょおおおおお
952参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:05:18 ID:iriNt1op
焼き鳥だったり、もやし炒めだったり
ロワ最終回は焼く系の料理ができあがるようです
953参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:05:20 ID:mQ0C5icX
>>948おつー
954『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:05:22 ID:tKhXLgHD
「アイリ……ス」
 その名を呼ぶと、ゼロの力に力が漲る気がした。
 眼をカッと開き、ゼロは飛燕脚を使って落ちるのを逃れるために両足に力を込めた。
 瞬間、ゼロの全身が淡い光に包まれて姿を消した。


「がっ!?」
 いきなり現れた地面にゼロは激突して、震える身体を立たせようと努力した。
 要塞が大きく揺れてもう一度身体を地面へぶつけるも、ゼロは諦めない。
 同時に周囲を様子見ると、隠し通路のような場所で見覚えのあるカプセルがあった。
 どういうことだ? とゼロは疑問を浮かべていると、急にカプセルが起動を始める。
 青白いホログラムに立つ老人は、ゼロにも見覚えがあった。
「ライト博士……?」
『……正確にはわしの思考をAIにコピーしたものじゃ。これが起動しているということは、わしは死んだようじゃな、ゼロ』
「な……」
 ゼロが驚愕の表情を作り、カプセルを鷲掴みにして這いながらライト博士のホログラムへ顔を向ける。
「本郷にミー、それに武美やソルティ、ウフコックは……」
『…………今スキャンしたところ、生存者はお主とメガトロン、イーグリード君のみじゃ』
「くそっ!!」
 ライト博士が告げる真実に、ゼロはおのれの不甲斐なさを呪って地面を叩いた。
 失った右手が痛む。またも取りこぼすのか。
『ゼロ、聞くのじゃ。シグマはエックスか君が要塞内で危機に陥ったときに、このカプセルへワープするよう仕掛けておいたのじゃ』
「エックスと俺だと? エックスはともかく、俺にはアーマーを装着できない」
『その通り。エックスがきたのなら、未完成だが究極の力を持つアルティメットアーマーを。
君が来たのなら、その潜在能力を引き出す改造を施すためにこのカプセルを用意したのじゃ』
955参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:05:25 ID:HRWEUo6j
ゼロはやっぱおいしいなあ!
956参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:05:32 ID:3P2mah3z
ハカイダースキルきたこれ!
957参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:05:41 ID:swhGwNEp
>>948
otu
958『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:06:08 ID:tKhXLgHD
「シグマ…………」
 世界を征服するのも、自殺するのも準備がいいとこは変わらない。
 あいつはどこまで用意がいいのか、と呆れていいのか喜んでいいのかゼロは複雑だった。
 とはいえ、今はその準備のよさがありがたい。
「ライト博士。それは今の俺でも問題ないのか?」
『その怪我も潜在能力を引き出せば、増した再生能力で修復が可能じゃ。だが……君はもともと完成された存在だ。
その性能をさらに引き出すような真似をすれば、その反動は……』
「構わない。頼む!」
 今のまま、メガトロンに一矢報いいれず死ぬほうが納得いかない。
 戦えないより、戦って死ぬ道を選ぶ。ゼロがイレギュラーハンターである限りその考えは変わらない。
 そう告げるゼロの決意の固さを知り、ライト博士の瞳は悲しみの色が浮かんだ。
『分かった……このカプセルへ入るがいい』
「ああ」
 ゼロはΣブレードを杖代わりに使い、どうにかカプセルへとたどり着く。
『これだけはいっておこう。このカプセルによりもたらせる力の反動は…………』
「いや、自分の身体だ。だいたい想像がつく」
『そうか。ゼロ……後を…………頼……』
 ライト博士のホログラムが不安定となり、ぶつっと消えた。
 ゼロは自然と目礼し、感謝の気持ちを伝える。瞬間、カプセルの中で光が満ちて、ゼロの身体を包み込む。
 誰か安心できる相手に抱かれているような心地よさを感じながら、ゼロは眼をつぶった。
 光がゼロへ吸い込まれて、隠し部屋がカプセルのエネルギーで満ちた。



 こうして、新たな力を得たゼロは剣先をメガトロンへと向けて仁王立ちをする。
959参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:06:18 ID:eiKYqr66
>>948
スレ立て乙!
960参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:06:39 ID:3P2mah3z
     
961『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:07:24 ID:tKhXLgHD
 殺したはずの男が生きていたのに、メガトロンは余裕綽々で立ち上がった。
「けっ、びびらせやがって」
「それほどハカイダーが苦手みたいだな。メガトロン」
「びびったっていった奴が一番びびってんだよ」
 ゼロはメガトロンの戯言に付き合わず、一歩前に出る。
 ここで殺す。冷たい殺意と共に刃が光る。
 そのゼロを、イーグリードが止めた。
「ゼロ、その前にやることがある」
「イーグリード?」
 刃をメガトロンに向けて、油断せずに訪ね返す。
 メガトロンはメガトロンで責めあぐねていた。
「この要塞を破壊する。それしか地球への衝突を止めれる手段はない」
「手はあるのか?」
 イーグリードはゼロの問いに笑みを返す。傷だらけの身体で、ゼロとメガトロンの間に立った。
 メガトロンは察しがついたのか、口を出してくる。
「まさかお前……平行移動装置を使う気だな?」
「察しがいいな。ゼロ、迷わず向かえ! 場所は分かっているな。平行世界移動装置にエネルギーを暴走するレベルまで送り込め!
そうすれば擬似ブラックホールが出来てここを別次元へ転送しながら徹底的に破壊する! シグマ隊長と用意した、正真正銘最後の手段だ」
「てめ、自滅覚悟か!!」
「イーグリード……」
962参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:07:39 ID:3P2mah3z
黒ゼロか!
963参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:08:12 ID:eiKYqr66
  
964参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:08:22 ID:yyEGFfFc
支援
965参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:08:22 ID:JorB2xre
>>948、乙です
966参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:08:13 ID:ZQt3YRie
黒ゼロ出してくるかーwたまらんw
967参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:08:24 ID:3P2mah3z
   
968参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:08:35 ID:bNQeDOlH
 
969参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:08:44 ID:iriNt1op
この展開はまさか……!
970参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:09:06 ID:yyEGFfFc
しかしシグマ、本当に手を尽くしすぎである
971『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:09:06 ID:tKhXLgHD
 カプセルに入ると共に、要塞のデータをダウンロードされたゼロ。
 そしてシグマに成り代わるために要塞を調べたメガトロン。
 二人は平行世界移動装置がエネルギーを暴走させれば、小規模の擬似ブラックホールを生み出すことを理解していた。
 次元を移動するなら莫大なエネルギーが必要となる。危ういエネルギーバランスで仕上がっている平行世界移動装置に、過剰にエネルギーを与えればどうなるか。
 おそらくこれも未来人が都合悪くなったときのため、あるいはシグマが最後の手段として残したものである。
 ゼロは真剣な友の瞳を見て、ため息をついてΣブレードを背中へと収めた。
「分かった。しばらくはメガトロンを頼む」
「任せろ」
 イーグリードが静かに返すのを確認して、ゼロは踵を返す。
 そう黙っていられないのはメガトロンだ。
「そうはいくか!! あちょー!!」
「ぐぅ……うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 メガトロンの吐き出す炎が、ゼロを庇ったイーグリードの身体を焼く。
 虚を突かれたメガトロンの懐に、イーグリードが決死の体当たりをぶつけた。

「頼む!! ゼロぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 友の頼みを耳にしながらも、ゼロは振り向く手間すら惜しみ一直線に進み続ける。
 後を任せたのだ。イーグリードはやるといったらやる男だ。
 だからゼロは牙を持たない人々を守るため、地面を蹴ってダッシュを続けた。


「くそっ! ふざけるなよ!!」
 メガトロンの声色に焦りが混ざる。それもそうだ。
 メガトロンが元の世界へ戻るには平行世界移動装置が必須だ。
972参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:09:08 ID:swhGwNEp
らめぇぇぇええっ!
973参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:09:40 ID:eiKYqr66
      
974参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:09:50 ID:bNQeDOlH
 
975参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:09:54 ID:3P2mah3z
    
976参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:09:55 ID:yyEGFfFc
 
977参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:09:56 ID:a+G3EUkg
 
978参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:10:02 ID:noCY8nYc
979『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:10:05 ID:tKhXLgHD
 その重要な装置を壊す選択肢を選ぶとは想定外だった。
(殺しすぎた!)
 メガトロンはここで自分の失敗を悟る。せめて一人くらい異世界の人間を用意すればあの二人は平行世界移動装置を壊すという選択はしなかったはずだ。
 皆殺しを目指し、そうなりかけている現状は最高で、最悪だった。
 すべてを失った相手がなりふり構わず行動をする。その可能性を考慮し忘れた自分を呪う。
(アドリブとか言って遊んでいる場合じゃなかったぜ。ちくしょう!!)
 チッ、と吐き捨ててイーグリードの腹へ尻尾を叩き込んだ。
 吹き飛ぶイーグリードを尻目に、ゼロを追いかけるべく姿勢を低くする。
 だが、追いかける前に鼻先へ竜巻を掠らされた。イラッとしてメガトロンが振り向くと、先ほどとは段違いの速度でイーグリードがメガトロンの脇腹を抉る。
「てめえ……!」
「いかせるかあああ!!」
「しつけーんだよ!」
 ドラゴン形態のまま、尻尾を振るってイーグリードを強打するが、尻尾が振り切れることはなかった。
 イーグリードは尻尾の打撃を全身に浴びながらも、直進を進めてメガトロンを殺そうとする。
 右手で辛うじてイーグリードの肩をつかんで止めたもの、先ほどとは執念の違いにメガトロンは内心舌を巻いた。
「さっきまでとは段違いじゃないか、鳥君」
「ふっ……」
 イーグリードが鼻で笑い、余裕を取り戻したことにメガトロンは訝しげに眉を顰める。
 キザな態度が先ほどと大違いだ。それほどゼロの存在が精神的に大きいものだったのだろう。

「男のおしゃべりはみっともないぜ?」

 あーあ、えーかっこしーがこいつのキャラか、とメガトロンはうんざりする。
 打てる手はどれをとるべきか。メガトロンの頭脳がフル回転する。が、結局は結論は一つ。
「喋らないと芸人失格だぜ? まあ、芸人の心を叩き込む前に速攻でバラバラにしてやるよ!」
 メガトロンは怒りを隠しながら、あくまで冷静にことを運ぶために爪をむき出しにした。
980参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:10:21 ID:iriNt1op
あと一つくらいはSS投下できるかなあ?
981参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:10:27 ID:eiKYqr66
      
982参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:10:59 ID:3P2mah3z
えーかっこしーww
983参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:11:04 ID:JorB2xre

984参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:11:06 ID:a+G3EUkg
 
985『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:11:18 ID:tKhXLgHD



 古代ローマの闘技場に似た部屋へと現れたゼロは、瓦礫で崩れやすくなっていることもあって慎重に足を進める。
 もっとも、急いでいるためにダッシュを細かく使って平行世界移動装置との距離を縮めた。
(メガトロンが出したモニターにあった位置は……)
 半壊状態の闘技場の瓦礫をどかし、ゴスロリ服を着た空色の髪を持つ少年の死体を見てゼロは息を呑んだ。
 それも一瞬、供養は後に回して瓦礫を投げ飛ばす。見えたのは平行世界移動装置だ。
「動くのか……?」
 半壊状態の平行世界移動装置は歪んだ装甲から火花が散る。
 起動させようにもパネルがへこんでうまくいかないだろう。
 ゼロは外装に手をかけて、引っぺがして内部機械を露出させた。
「エネルギーバイパスは……こいつか」
 こいつにΣブレードからゼロのエネルギーを注ぎ込もう。
 Σブレードに手をかけて、ゼロは振り向かずに後ろを切った。
 火炎弾が真っ二つに切れてゼロの後方へと吹き飛んでいく。
 振り向くと、イーグリードを右手に掴まえたドラゴンの姿のメガトロンがいる。
「ふん、間に合ったようだな」
「いいや、手遅れだ。メガトロン」
「おっと、ゼロ。動くなよ? 鳥さんがどうなるか分かっているな?」
 メガトロンが火をともした口をイーグリードへと向けた。
 イーグリードは自分に構うな、と視線で言っている。
 その様子をゼロは見て、
「クックック……ハーハッハッハッハッハ!!」
 盛大に笑った。
986参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:11:28 ID:eiKYqr66
  
987参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:11:28 ID:iriNt1op
メガちゃんの敗因:アドリブ=中の人
988参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:11:33 ID:HRWEUo6j
殺しすぎたってえのがいいなー
989参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:11:36 ID:yyEGFfFc
メガちゃんマジ自重ww
990参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:12:05 ID:a+G3EUkg
 
991『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:12:07 ID:tKhXLgHD


「気でも狂ったか?」
「いや、メガトロン。お前はその手が俺に通用しないって勘付いているだろ?」
「そいつあどうかな?」
 ニヤニヤ笑みを浮かべるメガトロンを前にして、ゼロはそのふざけた態度もまた演技だと見抜く。
 メガトロンが行っているのはただの時間稼ぎだ。そうゼロが思考した瞬間、要塞が揺れてだんだんと傾いていく。
 コンピューターを牛耳ったメガトロンが命じたのだろう。メガトロンが宙に浮いて、少しでも速くなるためにイーグリードを捨てた。
「甘いぜ、それだけ剣とエネルギーバイパスが離れていれば、俺様が奪うの方が速い!」
「だからここまで接近したというわけか。なるほどな……だが」
 ゼロはエネルギーがたまった右手をメガトロンへ見せる。
 瞬時に焦った表情のメガトロンが、大口を開けて炎を宿す。
 左手の剣を振るい、炎を切り裂いてゼロは宣言する。
「お前は元の世界に帰れはしない。俺たちと一緒に地獄にいくんだ、メガトロン!!」
「や〜〜め〜〜ろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 
 メガトロンの静止の叫びが木霊する中、ゼロのエネルギーを溜めた右手を打ち下ろされた。


 結果だけいうと、ゼロの拳はエネルギーバイパスに届かなかった。
 ゼロの背中から砕けた瓦礫が落ちる。視線を一瞬だけ後ろに向けると、作業用アームが瓦礫を投げたようだ。
「ナイス! ナビコ2ちゃん、愛している〜!!」
 このままではメガトロンの突進がゼロを吹き飛ばすだろう。平衡世界移動装置を持ち逃げして、元の世界に帰ればゼロたちは詰みだ。
 なのに、ゼロの顔に悲壮感はない。風が吹いたからだ。
「まだだ! いけ、ゼロ!!」
「てめ、余計な真似を!」
992参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:12:52 ID:3P2mah3z
おおう、緊迫感がやべえ
993『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:13:06 ID:tKhXLgHD
 吹き荒れるイーグリードの羽根から繰り出される風が、ゼロの身体を浮かばせる。
 メガトロンは横から暴風を叩きつけられて、速度が僅かに遅くなった。
 打ち合わせしていないのに、連携が取れた事実が心地いい。
 ただ、それでもゼロの拳がエネルギーを注ぐのが先か、メガトロンが奪うのが先か。
 最後の一瞬まで、誰にも分からなかった。



「ゼロ…………」
「イーグリード。やったぞ」
 ゼロは吹き荒れる高重力の巻き起こす嵐の中、死にかけの友へと結果を報告する。
 ブラックホールが次々闘技場の残骸を飲み込んでいくのを見つめて、どこか達成感へ包まれていた。
 これで要塞が故郷へと落ちることはない。武美とウフコックから続く使命のリレーはここで達成を向かえたのだ。
「イーグリード……俺は……」
「しけた……ツラするな……ゼロ。ありがとう……懐かしい未来を……守ってくれて……」
 ゼロはフッ、と笑みを浮かべてイーグリードの右手を掴む。
 握り返す友の手が弱々しいことをゼロは告げなかった。
「だが……まだ……だ」
「ああ、そうだ。まだ奴が生き残っている」
 ゼロは黒い球体の向こう側を見つめて断言する。この程度で死ぬ男ではない。
 確実にこの手で片付けなければ、他者を確実に不幸にする。
「ゼロ、俺の武器チッ……プ……だ」
「エックスのように上手くは使えないぞ」
994参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:13:37 ID:3P2mah3z
   
995参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:13:37 ID:HRWEUo6j
  
996参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:13:37 ID:swhGwNEp
支援
997参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:13:40 ID:a+G3EUkg
 
998『』 ◆2Y1mqYSsQ. :2009/10/20(火) 23:14:07 ID:tKhXLgHD
「分かっている……ただ……俺も…………皆が夢見た……懐かしい未来へ……」
 それっきりイーグリードは喋らず、脱力した腕を静かに添える。
 すぐにブラックホールに巻き込まれる運命だとしても、親友の身体だ。綺麗にしてやりたい。
「さて…………」
 ゼロは黙祷すらせず、すぐに立ち上がった。標的はまだ生きているだろうメガトロン。
 決意は固く、揺らぎはしない。Σブレードを静かに起動させて、ゼロはその場を後にした。


 徐々に大きさを増していく黒い球体を見つめながら、メガトロンは大きくため息を吐いた。
 とっさに出力全開で離れたため、ブラックホールに飲み込まれることはなかったが、これで元の世界に帰ることは出来なくなった。
 悪の権化であるメガトロンでも、一抹の寂しさを感じてしまう。
「ほう、お前さんも生き延びたか」
「死んでいるとは思っていないだろう」
 本当に正義の味方はしつこいものである。ブラックホールがメガトロンたちを引き寄せるほど重力を発していないのを確認した。
 ドラゴンの姿のメガトロンは黒いゼロへと身体を向けて、トランスフォーム(姿を変えること)を宣言する。
「メタルスドラゴンメガトロン、変身ッ!」
 ドラゴンの頭を模した右手が炎を噴出す。巨人へと変形を果たしたメガトロンにゼロが起動したΣブレードの刃先を向ける。
 メガトロンは口角の端を持ち上げる。ただ、今までとは違って苛立ちを見せた笑みだ。
「人をお家に帰れなくするたぁ、とんだ嫌がらせだ」
「あいにく、お前がいくべきところは家でなくあの世だ」
999参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:14:18 ID:yyEGFfFc
イーグリードォ!!
1000参加するカモさん:2009/10/20(火) 23:14:18 ID:3P2mah3z
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