1 :
参加するカモさん:
2 :
参加するカモさん:2008/07/07(月) 13:38:59 ID:8rptZI1A
参加資格作品
【るろうに剣心】【ローゼンメイデン】【ワンピース】【GANTZ】
【銀魂】【遊☆戯☆王】【To LOVEる】【ジョジョの奇妙な冒険】
【魁!!男塾】【DEATH NOTE】【地獄先生ぬ〜べ〜】
【封神演義】【TOUGH】【ドラゴンボール】【狂四郎2030】
【冒険王ビィト】【北斗の拳】【魔人探偵脳噛ネウロ】
【D.Gray-man】【HUNTER×HUNTER】【LIAR GAME】
【NARUTO】【アイシールド21】【ジャングルの王者ターちゃん】
【テニスの王子様】【家庭教師ヒットマンREBOEN!】【天上天下】
【シティーハンター】【シャーマンキング】【銃夢】
ロワ会場地図
ttp://www.youlost.mine.nu/html999/img/4628.png
3 :
参加するカモさん:2008/07/07(月) 13:39:38 ID:8rptZI1A
参加者
5/5【To LOVEる】結城梨斗/ララ・サタリン・デビルーク/西連寺春菜/天条院沙姫/レン(ルン)・エルシ・ジュエリア
5/5【ONE PIECE】モンキー・D・ルフィ/ロロノア・ゾロ/サンジ/ブルック/アーロン
4/4【るろうに剣心】緋村剣心/相楽左之助/志々雄真実/瀬田宗次郎
4/4【銀魂】坂田銀時/沖田総悟/土方十四郎/猿飛あやめ
4/4【地獄先生ぬ〜べ〜】鵺野鳴介/ゆきめ/玉藻京介/立野広
4/4【GANTZ】玄野計/和泉紫音/加藤勝/小島多恵
3/3【遊戯王】武藤遊戯/海馬瀬人/獏良了
3/3【封神演義】太公望/蘇妲己/聞仲
3/3【魁!男塾】剣桃太郎/雷電/江田島平八
2/2【ジョジョの奇妙な冒険】空条承太郎/吉良吉影
2/2【DEATH NOTE】夜神月/L
2/2【家庭教師ヒットマンREBORN!】山本武/三浦ハル
2/2【シャーマンキング】麻倉葉/麻倉ハオ
1/1【HUNTER×HUNTER】クロロ・ルシルフル
1/1【ドラゴンボール】亀仙人
1/1【天上天下】棗真夜
1/1【魔人探偵脳噛ネウロ】桂木弥子
1/1【シティーハンター】伊集院隼人
1/1【LIAR GAME】神埼直
1/1【NARUTO】うずまきナルト
50/50(後に増える可能性有り)
「これからどうする?」
ひとつの民家に腰を落ち着けたバクラとクロロはこれからの方針について話し合っていた。
周りの地形から判断して、現在地はA‐5、6付近だと二人は当たりをつけた。随分と端の方に飛ばされたものである。
盗賊という職業柄、周りの状況に敏感なのはごく当然のことだ。地図を広げながら二人は目的地を定めようと目を凝らす。
南に行こうとは決めたが、どこに何があるのかは把握しておく必要がある。
地図を眺めながら、バクラはふと思い出したように呟いた。首の違和感は始まってからずっと消えることはない。
「情報収集も大事だがこいつのことも考えなきゃなんねえ」
「……首輪か」
周りに人の気配がないのを確認した後、口調を崩したバクラは己の首に手をあてる。
主催者に命を握られたも同然の首輪。これがあるせいで出すぎた行動は命取りになる恐れがある。
何かを強制されるのが嫌いな二人であるので、早いところこの首輪を外してしまいたかった。
誰かに命を握られているという状況。上から見下されているようで不快だ。
「ま、俺様は死ぬことはないが……」
「死ぬことがない?」
クロロの疑問にバクラは軽く答えてやることにした。
バクラは千年リングに宿る魂である。三千年もの間、その中で生き続けてきた。
たまにリングの適合者を見つけ寄生し、壊れたら新たな適合者を待つ日々。
この肉体もそうやって使い潰していくものだと思っていた矢先――予定が狂った。
千年パズル。古代の王(ファラオ)が眠る千年アイテムのひとつ。
あのパズルは適合者を選ぶのかこの三千年の間、現代に蘇ることはなかった。
バクラの目的は王に復讐をすることである。長い間、力を蓄えながらその魂が蘇ることを待ち続けていた。
それがやっと叶った。
千年パズルに宿る魂は武藤遊戯に宿り、現世への帰還を果たした。
待ち望み訪れた復讐の機会。バクラはそれを逃すわけにはいかない。
千年パズルよりは容易とはいえ、千年リングの適合者を見つけるのだって楽ではないのだ。
生半可な人間に取り付けば、そいつはたちまち死んでしまう。
次の機会を悠長に待つことなんてバクラには出来ない。
「だから、この体を失うわけにはいかねぇ。遊戯にもしばらくは生き永らえてもらわないと困る」
「なるほど。大体分かった。その千年リングも興味深いな」
話を聞きながらクロロはバクラの持つ千年リングに視線を向けた。
クロロの盗賊としての興味が千年リングに注がれるが、あれを手に入れるということはバクラもセットということになる。
そう考えると、欲しいと思っていた気持ちが急速に沈んでいった。
手に入れたとしても一通り眺めてから、売却だ。素材は金のようだから良い値で売れるだろう。
元より、クロロは盗んだ美術品をそう長くは手元に置かない性質なのだ。
そんなどうでもいいことを思いつつクロロは首輪について考える。
6 :
参加するカモさん:2008/07/08(火) 01:08:06 ID:dP4DlwOc
「この首輪は念能力じゃないか?似たような能力者を知ってる」
「本当か」
「ああ。おそらく首輪を具現化して、術者の意思によって自由に爆破できるような能力を付加したんじゃないか。これなら俺が気がつかなかったのもある程度説明がつく」
例えば、クラピカは鎖を具現化させ強制的に絶の状態にするという能力を付加した。
この首輪も誰かが具現化させ、爆破というオプションをつけたのではないか。
最近まで心臓に念の鎖が巻き付いていたクロロが連想したのはそれだった。
余りにも似ている。念を使えず不自由を強いられた昔と、首輪をつけられ殺し合いを強いられる今。
だが、参加者はおそらく五十人以上集められていた。
それだけの人数に念を使うのは大変だ。あの主催にそこまでの能力があるとは思えない。
普通、これだけのものを具現化するのには相当のイメージ修行が必要だ。
黒い球のこともある。何かしらクロロの知らない力が働いた可能性もあるのだ。
決め付けるのは早急かもしれない。
「結局は現物を調べてみない何も分からねぇってことか」
「そういうことだな」
考察は振り出しに戻ってしまう。不確定要素が多すぎるのだ。
バクラにしたって一見しただけで首輪の構造など分かるはずがない。
目が肥えている二人には首輪が相当にやっかいなものだということしか推測できない。
「調べるっていっても俺達のを外すわけにはいかねえだろ、どうする」
「簡単な事だ。誰かから奪えばいい」
クロロは断言した。彼らは盗賊なのだ。必要な物は奪うのが基本だ。
死体から奪えれば良いのだが、そう都合よく見つかるはずもないだろう。現実は非情だ。
「誰かをぶっ殺して頂くか」
「それが一番効率の良い方法だろうな」
今の時点で何人死んだのかは分からないが、生存者と出会う確立のほうが高いだろう。
目的地はとりあえず中央に決めた。首輪を手に入れるにしても情報を集めるにしても、他者との接触が必要になる。
民家を出るとき、二人は再び偽りの仮面を被る。
数秒後にそこに立っているのはいかにも人当たりの良さそうな青年と、穏やかそうな少年だ。
二人に殺人についての躊躇はない。彼らは闇の世界に染まりきっている。
人殺しに快楽など求めていない。ただ必要だから殺す。そして奪う。
彼らは――盗賊だから。
【B-5 北東・街 / 一日目 深夜】
【クロロ・ルシルフル@HUNTER×HUNTER】
【装備】:バタフライナイフ
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康
【思考・行動】
1:情報収集、首輪解除のため首輪を手に入れる(人を殺して奪うことも考慮)
2:支給品を集める
3:武藤遊戯を探す
4:黒い球を奪う
【獏良了@遊戯王】
【装備】:Xガン@GANTZ、千年リング@遊戯王
【所持品】:支給品一式、毒薬、解毒薬
【状態】:健康、闇バクラ
【思考・行動】
1:情報収集、首輪解除のため首輪を手に入れる(人を殺して奪うことも考慮)
2:生き残る
3:武藤遊戯を探す
4:邪魔者は消す
投下終了です。
ただの繋ぎです。考察したようでしてないw
乙ー
なんだかんだ言ってこいつら結構いいコンビだなw
千年アイテムは壊れたりはしないんだっけ?
乙
一気に危険派対主催にww
また猫被りするのかよw
次が楽しみです。
おお、団長と闇バクラを組ませるとこうなるか…
頭脳派外道マーダーコンビは脅威だなあ
GJ!
>>10 千年パズルが結構脆いから千年リングも壊れたりしそうだw
そしたら宿主涙目だな
アーロン、ゆきめ、和泉紫音投下します。
―――ぽたり、ぽたり。
少年は道路の上に赤い道を作っていった。
―――ぽたり、ぽたり。
少年は雫が溢れ出る場所を乱雑に拭う。
―――ぽたり、ぽたり。
少年はそれでも止まらない血に鬱陶しさより快感を覚えた。
―――ぽたり、ぽたり。
少年は小さく肩を震わせて笑う。
―――ぽたり、ぽたり。
少年は、和泉紫音は、この状況を盛大に楽しんでいた。
【E-4 南・道路 / 一日目 深夜】
【和泉紫音@GANTZ】
【装備】:首さすまた@地獄先生ぬ〜べ〜
【所持品】:支給品一式 未確認(0〜2)
【状態】: 左耳欠損(未治療)
【思考・行動】
1:今までに感じたことの無い快楽に嬉々。
2:アーロンの案に乗る。
3:ガンツからの指令に従う。
※ 参戦時期はゆびわ星人編前です。
二日目の深夜にD-4でアーロン・ゆきめと合流する約束をしました。
◇ ◇ ◇
支援
アーロンとゆきめを目の前にして和泉紫音の中では好奇心と何か≠ェ同居していた。
さて、その何か≠ノ何と名前をつけようか。
…いや、本当はわかっている。わかっているのだが。
認めてしまったら今までに無い程に感情が高ぶってしまう気がしてならなかった。
焦っているなど認めれば、この自分にそれを与えた対象に対し好奇心に打ち震えるこの身体を制御できるか自分でもわからなかったから。
「さぁ、答えを出せ。お前は俺の提案に乗るか、乗らないか?」
アーロンは答えを予想していた。
必ずこの男からの返事は自分を納得させるものであろう、と。
何故ならばこの男の目は普通の人間がするような目ではなかったから。
今まで見てきた人間とは違い酷い歪みが、その男の瞳には宿っていた、だから――――。
「答えはもちろん―――――――――」
「コイツ……!」
場を支配していた静寂を、漸く和泉の声が破る。
和泉はアーロンとゆきめをまるで品定めでもするかのように見比べた後、突如アーロンに向かって体勢低く駆け出した。
危険を察知したゆきめを置き去りに、不敵に微笑んだアーロンと視線を絡ませあった瞬間首さすまたを握った手の力を一層強め。
全ての力を右手に集め一気に振り上げた。
アーロンはそれを見届けた後でやっとアクションを取った。
すると和泉の動きがピタリと止まる。
その場に居たゆきめからすれば止まったのは和泉の身体ではなく延々と流れるはずの時間自体が動かなくなったようにも思えた。
◇ ◇ ◇
死ねん
ごめん間違えた死なないで支援
夜空で魅力を発揮する月や星たちが、物静かな森に光を与えていた。
そんな僅かな月明かりを頼りにするしかない森の中を男は、威圧感を放つように指を鳴らしながら歩を進める。
無論、そんなことはしなくとも一般人であれば充分迫力のみに圧し負けているだろう。
「楽しくなってきたぜ……」
アーロンは白と赤の斑模様に飾った鮫を連想させるようなギザギザの歯を剥き出しにして、ただただ笑いながら。
一人、目的地に向けて森の中を突き進んだ。
【C-4 北東・森 / 一日目 深夜】
【アーロン@ONE PIECE】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0〜3)
【状態】:健康 全身に軽いかすり傷
【思考・行動】
1:ゲームに乗る賢いやつらとは協力(利用)する。
2:甘ったるいことを考えている下等動物は殺す。
※ 参戦時期は九巻辺り。ルフィ戦前。
二日目の深夜にD-4で和泉・ゆきめと合流する約束をしました。
◇ ◇ ◇
「これで満足か、人間」
短くて長かった$テ止状態をアーロンの声が解かす。
一連の光景を目の当たりにしていたゆきめの背筋に電撃が走った。
おかしなことにいつの間にかアーロンは和泉と背中合わせになる位置に立っているのだから。
そう、和泉が前進を止めてしまったのはアーロンの驚異的な身体能力。
先程和泉が右手を掲げた時、目標が姿を消したと同時に、消えたはずの目標の顔が和泉の視界の許す限りを支配していた≠アとに動揺したのだ。
そして1テンポ遅く、左耳に痛みが走った。
緩慢とした動作で指を這わすと、肉片と血がこびりついた。
「ククク……あははははは!」
違う、ミッションの時とはまるで違う。
この男は、このゲームは、俺に限りない快感を与えてくれる。
「で、どうするんだ?」
「あぁ、勿論…呑ませてもらう」
「シャハハ……シャーッハッハッハッ!俺を試そうとしたくせに何ほざいてやがる、と言いたいところだが…。
お前はここで自分がすべきことを理解している!やはりお前のような賢い人間は今ここで殺すには勿体無い。俺の一味に加えてやりたいくらいだ!
それに……お前は貴重な人材だ。恐らくこの島にはさっきのような能無しどもがうじゃうじゃしてやがるんだろうぜ」
「………」
戦いに対する快楽。
それが無いゆきめにとっては今の遣り取りの意味がまったく以て理解できずに。
状況に置き去りにされたゆきめはただ漫然とアーロンが吐き出した和泉の左耳の欠片を見つめていた。
◇ ◇ ◇
前進する度に身体が浮き沈みを繰り返す。
ゆきめはアーロンたちと別れた後、自分の体質と相性の良いとっておきの場所を見つけていた。
肌に纏わりつく冷気が何とも心地良いここは、D-4 ドラム城。
入り口を潜れば外の鮮やかだった景色の気配も消え失せ白一色となっている。
非常に不思議な土地である。
そんな奇妙な城の片隅で、ゆきめは一人考え込んでいた。
「ルールに従う奴って、みんなアイツらみたいな奴らばかりなのかしら…」
アイツらは戦闘に歓楽を覚えている。
このゲームを楽しんだ上で自らが進行役となっている。
ただ単純に生き残るために、掟に従うために人間を殺すと決めたゆきめにとってそれはとてつもなく不気味だった。
特に和泉紫音とか言う人間。
彼はただの人間であるはずなのに、何故か怯えが感じられなかった。
「気持ち悪い。………ああいう奴らはあんまり相手にしたくないわね」
地面に敷き詰められた純白の雪を見つめて、ゆきめは表情を歪ませた。
【D-4 北西・ドラム城 一階 / 一日目 深夜】
【ゆきめ@地獄先生ぬ〜べ〜】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0〜3)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:アーロン・和泉に嫌悪感。
2:アーロンの案に乗る。
3:他の参加者を殺す
※ 参戦時期は110話以降、ゆきめ復活直後。
二日目の深夜にD-4で和泉・ゆきめと合流する約束をしました。
◇ ◇ ◇
「それじゃあそろそろ行動するか」
「ちょっと…待って。さっきの人間が言っていたように全員で行動するよりは皆別れてゲームに乗ってない奴から殺していったほうが効率が良いと思うの」
早速行動を開始しようと一歩を踏み出すアーロンと和泉の背中にゆきめがストップをかける。
本当はどちらでも良かったのだが、この二人と行動を共にするのは生理的に嫌だった。
二人がこちらを振り返って見てくることにすら嫌悪が湧く。
「そう言って、裏切るつもりじゃないのか?」
「馬鹿なこと言わないで。確かに三手に別れればその分リスクも負うことになる。だけど……地図を見ればわかるだろうけどここは広すぎる。
一緒に殺し回るだなんて時間の無駄。それにそうこうしているうちに私の妖力も尽きてしまうわ」
わざとらしく双眸を細める和泉をゆきめは睨みつける。
その横でアーロンがここで初めて地図を取り出し、ゆきめの意見と照らし合わせる。
「…確かに、お前の言う通りだ。固まって行動するにはこの島は何分広すぎる」
アーロンからの賛同を得たゆきめは和泉に皮肉めいた笑みを送って自身も地図を見る。
「だからここはエリアごとに分担しましょう?なるべく積極的な奴とは協力する。
そして24時間後、生きていたらここで一旦合流して情報交換。…どう?」
「よし、ではABを俺が。CDはゆきめ、EFは紫音。これで良いだろう」
適当に分担を決めてアーロンは地図をシャツのポケットへと突っ込んだ。
ゆきめと和泉はそれぞれの方向へ踵を返し、無言でアーロンへの返答をする。
丁度三人の背が中央を向いた時、揃って科白を吐いた。
―――――――「二十四時間後、生きていたらまたここで」
投下終了。
三人組は引き剥がしたほうが行動させやすいかな、と思ったのでとりあえずバラバラにすることを意識して書きました。
あと場面転換が激しいのでわかりにくいと思います、すみません。
それから、支援有難うございました。
投下GJ
三人組マーダーの問題点を解決おみごと!
動かしやすくなりましたね
次に会うときは誰が生き残っているのやら…GJ
投下乙です!
アーロンを試そうとして圧倒的な力を見せられて、尚更うれしそうな和泉
自分を試そうとした和泉を許し利用するアーロンが最高ですね!
二人に嫌悪感を感じるゆきめもこれから揺れて面白くなりそうです。
和泉は対アーロン級の為の支給品集めもしていくんでしょうね。
本当にどうでも良いことで申し訳ないのですが、
>>22のゆきめの状態表の最後は、「和泉・ゆきめと合流する」ではなく
「アーロン・和泉」と合流するということで良いでしょうか。
(あいうえお順かと思ったのでアーロンを先にしました、違ってたらすいません。)
乙ー
最初の紫音パート読んだ時、一瞬紫音死んだものかとw
バクラクロロとは違ってこっちは妙にギスギスした空気だなあ……
>>4-9 感想遅れてすいません、投下乙です!
別に馴れ合っているわけでは無いと思うのですが、同じ盗賊という性質からか
特に揉めることもなくスラスラ方針が決まる良いコンビに見えてしまいますね。
千年リングに興味を持ったクロロが、バクラもセットでついてくると気付いた途端に欲しくなくなるというところで思わず吹きそうになりましたw
シリアスに考察しているのに何故かここだけギャグ調で再生されましたw
それにしても、こいつらは善人の振りが出来るのが怖いですよね。
二人組みなので一人で居るよりは警戒心が薄れるのがまたいやらしい。
前スレ950〜958の「月下咆哮」は破棄とさせて頂きます。
大変ご迷惑をお掛けしました。
企画の成功をお祈りしています。
投下乙です
マーダー3人組はバラけたか
これからの活躍が楽しみです
>>31 そうですか…
今回は残念ながら破棄ということになってしまいましたが、展開自体は面白かったと思います
よかったら今後も書き続けてくださいね
皆さん、感想どうも有難うございました。
>>28 おお、本当だ。ご指摘有難うございます。
では
>>22の状態表を以下のように訂正致します。
【ゆきめ@地獄先生ぬ〜べ〜】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0〜3)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:アーロン・和泉に嫌悪感。
2:アーロンの案に乗る。
3:他の参加者を殺す
※ 参戦時期は110話以降、ゆきめ復活直後。
二日目の深夜にD-4で和泉・ゆきめと合流する約束をしました。
>>31 そうですか…うーん、残念ですね。
それから、文章も状況が把握しやすく綺麗に纏められていましたし展開も面白かったので、
UJ氏が決めることであって私が口出しすることではありませんが気が向いたら書き手として戻ってきてほしいです。
ぎゃあああああああああ
>>33の訂正文は、
【ゆきめ@地獄先生ぬ〜べ〜】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0〜3)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:アーロン・和泉に嫌悪感。
2:アーロンの案に乗る。
3:他の参加者を殺す
※ 参戦時期は110話以降、ゆきめ復活直後。
二日目の深夜にD-4でアーロン・和泉と合流する約束をしました。
でした。
ごめんなさいorz
投下します。
ヤッベー、ありえねェって、何で幽r……あいや違う、あれはプラズマだから。
霊なんて銀さん見てないよ、動く骸骨? あァ……あれトリック。
だぁおーー、やっぱあれか? 糖尿の祟りか?
日々の不摂生が祟って幻覚が見えるようになったってか。
大体、ありえねェだろ。毎週のパフェにそんな成分含まれてたら、怖くて誰もくわ……って、また出たァーーー!!
「いや、おいらたち何もしねぇって……」
「男はみんなそう言うんだ、何もしねェとかいって結局無理矢理ナニかやるんだろ」
「ヨホホホ、まぁ落ち着いてください」
「骸骨が喋ってるのに落ち着けるか! 素直に棺桶入っとけ」
「いやだから、ブルックは…… 「あぁ聞こえない、何にも聞こえない」
銀時は走り出した。
幻覚から逃れるためでなく、糖を消費するために。
そう走れば糖分は消費され、作られた幻覚は糖鎖の藻屑となり尿と共に消えゆく定め。
ちゅーか、神様これ何の試練ですか。
メタボにあえぐ中年予備軍に警鐘を鳴らしてるんですか?
だったら、マジ勘弁してください。
もう二度とパフェ食いませんから許してよ、ね? アンタ神だろ、そのぐらいの度量がなくてどうするよ。
ひた走る銀時の背中を見つめながら、葉とブルックは月の下に佇む。
「あァ……何も逃げなくても……」
「気にすんなよブルック、ガイコツでもいいことあるって」
「ヨホホホッ、わかってますよ。つい最近私もすてきな仲間に巡り会ったばかりですから」
「アイツも悪い奴には見えなかったんだけどな」
「すてきな仲間になれると思ったんですけど……」
人間、どんな奴も逃げ足は早い。ましてそれが侍なら、なおのことだ。
動きにくい和服も高い身体能力で補って銀時は二人の視界から一瞬のうちに消え去ってしまった。
〜・〜・〜
幽霊に襲い掛かられた場所から逃げ走り、鳥居を抜け、川を渡り辿り着いたのは駅。
周囲を一瞥し、霊が来てないことを確認すると、銀時はやっと一息つくことが出来た。
「あっぶねェ、危うくとり憑かれるところだった……、大体神様もあれだよ。試練が反則すぎるじゃん。
すでに死んでる奴出しといて殺し合えも何もねェだろ、ガイコツをどう殺せってのよ?
俺は恐山のババァじゃねェんだぞ」
危機が去りホームから空を見上げれば、まん丸お月様が一つ。その下に広がるのは静寂のみ。
「とりあえず、もういねェみたいだな。はぁ……こりゃ、今日はパフェ300杯食わねェとやってけねェや。
あ、神様ごめん。今日で最後にするから見逃し……
一瞬のことだった。
空に赤い筋が見えたかと思った瞬間、銀時の座っていた地面に剣撃が打ち込まれた。
「だぉばぁぁああ!! スマン、神様。今日からパフェはやめる!!!」
「神? お前には祈るモノがあるのか……」
「って、まだガキじゃねェか、突然盛ってんじゃねェぞ。初めては優しくって言うだろが」
「すまないが、俺には優しくすることなど出来ない……
だが、生まれて初めて市井の人を斬るのも事実。せめて祈りが終わるまでは待ってやろう」
突然現れた赤黒の襲撃は、身の丈小さく声変わりもしてないような少年。
身長や顔つきから12、13前後の年齢に思えるが、落ち着きや雰囲気からもっと上に思えなくもない。
後ろ手に結わえられた血の色の長髪と、湿り気を帯びた十字傷が彼独特の雰囲気を醸し出している。
片手に持っているのは刀か、見慣れた日本刀のように思えるが少年が脇に構えているために全体像がつかめない。
祈りが終わるまで待つと言いながら、脇構えで主武器の性能を隠すあたり少年の油断なさが現れている。
「ふざけんなっての!! 祈りが終わったら斬られるってのに一体誰に祈れって言うんだ」
>>4-7 リレーありがとうございます。こういう企画は初めてですが、リレーされると嬉しいものですね。
バクラの描写が薄いと思っていたところへ、補完SSを書いてくださってありがとうございます。殺人動機の強化もありがたいです。近くのキャラの死亡率が上がってちょっと怖いですが。
>>15 時間軸と視点をずらして織り交ぜていますね。これはなかなか良い効果が出ていると思います。最後で話が締まっています。
三人ともかけねなしのマーダーですね。後続のSSも書きやすいですし続きが楽しみです。
当たり前だ。殺し合いだかゲームだか知らないが銀時に殺される理由はない。
そんな非常時に冗談交じりの糖類神になど祈りたくない。
死ぬための祈りなら、さっちゃんあたりのストーカーにでもやってもらえばいい。
アイツならきっと、亀甲縛りの中喜んで祈ると思う。
まぁ、流石に喜んで死んだりはしないと思うし、本当に死なれても困る。
「大体、何なのお前。いきなり斬りかかっといて謝りもしないわけ?
お父さんお母さん悲しむよ? りんごでも食って落ち着けや」
そういって差し出したりんごを少年は無表情なまま見つめる。
心なしか、殺気が和らいだように思えた。
「俺の両親は既に死んだ……原因はコロリだ」
「へぇ……」
そりゃすまなかった。と安易に言えないのが、この状況。
どう見ても新八よりも年下。それどころか神楽より年下かもしれない少年。
普通に考えれば、両親の下で明るく過ごしていたかっただろうに……
彼が人殺しに走ろうとしているのは、それが原因なのだろうか。
「ところで、お前は……、その果物が何なのか知っているか?」
「知ってるよ、りんごだろ?」
「その通りだ。寒冷地で栽培される果物で、西欧では神話にも出てくる」
「よく知ってるじゃねェか」
「また、ある国ではりんご一つで医者要らずとも言われているようだ……」
「そうなん?」
少年にとって、りんごはそれほど思い入れの深い物品なのだろうか。
それとも、両親の死を思い出して悲しんでいるとでも言うのだろうか。
銀時には、少年の想いなど何一つ理解できない。
しかし、理解できなくとも一般論として、両親を失った子供が悲しみ、拠り所を無くす事ぐらいは分かっている。
「もしもあの時、その実が一つあれば、あるいは……俺の両親はまだ生きていたかも知れんな……」
「んなおおげさなもんかねェ……」
銀時にとっては実感の湧かない話だ。
大体、コロリなどと言われても、今は実質的に絶滅した病。
それがリンゴ一つで、どーこー言われても、あまり何ともいえない話なのだ。
だが、銀時は知らない話ではあるが、実際問題食料による栄養は馬鹿にならない。
人口学によれば、人口の増加、すなわち出生数が死亡数を上回る事は、医療ではなく食料が主要因だとされている。
たかが食料、りんごやパフェ一つとっても、それが苦もなく食べられるという事は、すなわち死から一歩遠ざかっている。
「んで、お前はこれが欲しいんか?」
「……いや、俺が欲しいものは別にある……そう……」
刹那、少年の姿が消える。
一瞬で銀時の横に回りこみ、漆黒の刃で斬り付ける。
全身のばねを生かした、神速の回転斬り。
何とかかわすも、続けざまに2斬り、3斬り……
(こ、こいつ……)
くるくると回りながら、銀時に斬りかかる少年。
戦闘中、いかに勢いをつけるためとは言え、敵に背後を見せる行為は褒められたものではない。
振りが大きくなれば、通常は避けやすくなり、かえって損になる。
まして、一旦背中を見せてからの剣撃では、通常の振りより、剣先の通る距離が2倍近くにもなる。
さらに、体ごと回転して剣を振るうことにより、体全体の動きから、剣の動きを読むことが出来る。
通常の剣術でも、剣を見ないで体の動きから太刀筋を見切るものだが、
それ以上に激しく動く少年の体からは、より容易く太刀筋を見切ることが出来る。
そう。
セオリー通りで言えば、その通りなのだ。しかし……
(どこが読めるんだ!! ボケ!!!)
常識を超えた少年の動きは、そんなセオリーを無視し銀時に襲い掛かってくる。
一瞬でも気を抜けば、少年の動きはそれを見ることすら叶わないものになる。
暗い月夜の下で、若干目が慣れないせいもあるかもしれない。
しかし、それを差し引いても少年の動きは異常だ。
それに心なしか……
(段々速くなってきてねェかコイツ?)
少年が放つ剣林は激しさを増し、次第に銀時の余裕も消えていく。
(いやいや、最初から余裕なんてねェよ!!)
既に少年が放つ剣閃はおろか、手足の動きさえ霞んで見えるほどだ。
「っぁぐあ……」
ついに少年の剣が、銀時の右手を捉えた。
舞い上がる手首と血潮。夜空に舞い上がる鮮やかな紅が美しくて、一瞬銀時が見とれてしまうほどだ。
一方の少年はと言えば、血飛沫を一瞥し、落ち着きながらそれをかわす。
「普段なら返り血など気にしないが、今宵は斬る相手が多い……
それと、結局祈る時間を与えてやれなくて済まなかったな」
(ヤロウ……)
誤算だった。
少年の年齢から考えて戦闘能力も殺しに対する意識も、自分の方が上だとどこかで思っていた。
だが、全て違っていた。
身体能力だけなら、銀時の方が上かも知れないが、ハサミとりんごとスノボーではハンディがありすぎる。
「……んで、欲しいモノって何よ?」
逃げ回っても、相手の方が速い、すぐに追いつかれる。
殺される気も戦う武器もないなら、知恵を振り絞るほかない。
「……」
「初めてなんだろ? 年上の質問ぐらい答えとけって……ゴルァ!!」
銀時の言葉を無視し、少年の剣が襲いかかる。
「ちょっ……」
スノーボードで受ける。
「お前、欲しいモノは何だって……っ聞いてんじゃボケェ!!」
受け止めたスノーボードは若干剣先を逸らすも、まっぷたつになっている。
「……、誰もが笑って暮らせる新時代。俺が欲しいモノはそれだ。
そのためなら俺は、咎の炎にこの身を焼き尽くされようと構わん」
剣を止めた少年が口にしたのはかつてよく聞いた類の言葉。
今になって気づく。少年の瞳は、銀時のよく知る彼らに似ているのだ。
「まるで攘夷志士の言い草じゃねェか」
「まるでではない、俺は尊皇攘夷派の維新志士、志士名は抜刀斎」
「攘夷運動ってのは暗闇に紛れて刀を振り回すことか?」
「何とでも言え、あの子たちが、そして亡き妻が、笑って暮らせる世を作るためなら、俺は何でもやってやるさ」
「斬り刻んで屍の城でも建てる気か? んなとこで子供が笑えるとは思えねェけどな」
「屍の城でも、幕府のよりはマシだ」
少年の目は本気だった。
大儀のためには多少の犠牲にも目を瞑るという典型的志士的思考。
過激だった頃のあの男と同じ思想。
「なァ坊主、そいつはヅラの指示かい?」
「ヅラじゃない桂だ」
「同じだろ、アイツはお前みたいなクソガキに人斬り働きさせてるのか」
「……、二度目だ。訂正しろ。桂先生とな」
「ヅラが先生なんてガラかねェ……、ぁっぐぉ……」
言い終わらない内に少年が再び斬りつけてくる。
今度は先ほどの傷口を直接狙った一撃。命よりも痛みを狙った攻撃だ。
「あの人は、我ら全ての先生だ。乱を起こし、国に害をなしているという見方もあるかも知れんがな」
「……ち、巷じゃ……狂乱の貴公子って言われてるぜ」
「初耳だが、その言葉こそ先を見ずに上辺だけを捉えている証拠。
先生が目指すのは、戦乱なき誰もが笑える世界」
「お前は、その世界で笑えるのかよ?」
「……」
「……俺にはとても…………お前が笑えるような奴になんて見えねーけどな」
銀時から見れば、目の前の少年は未来を生きる子供だ。
結び上げられた髪の毛が、元服を意味している事は分かる。けれど、やはり子供だ。
その子供が笑える世界でなくて、一体誰が笑うというのか。
一部の肥えきった権利者だけがせせら笑う世界など、今と変わらないではないか。
「俺の笑顔など、亡き妻に比べれば軽いもの…………」
「嫁さんは、夫も笑えない世界で笑顔になれる女だったのかよ?」
「……」
「てめーがどんだけ手ェ汚そうと、死んでった嫁さんは喜ばねーし、時代も変わらねェ」
「…………時代は変わるさ、俺が剣を持っている限りな」
再び動く少年の剣。
まっすぐに、銀時の首めがけて飛んでくる。
「いい加減にっ!!」
その太刀筋を肘で受け、
「しやがれ!!」
交差法気味の鉄拳制裁。
一撃、拳をなくした腕でぶん殴る。
同時に少年との間をつめ、殴り合いの間合いをつかんだ。
「てめーは剣さえ持てば何でも出来る超人か?」
「あぁ、その通りだ」
神速の足をもって距離をとる少年を、銀時は片手で掴んで押さえ込む。
そして血も乾かない右手で殴る。
殴る。
また殴る。
「坊主!! てめーはクソガキなんだよ!!
いくら気張っても、時代は変わらねーーっつってんだ!!!」
神速では劣っても、腕力なら勝る。
左手で持ち上げそのまま叩き落とす。
馬乗りになり、露出した骨もろとも少年に手首を叩きつけていく。
「前の戦争じゃぁよ、志士仲間がたくさん死んでった。
だからって、てめーやヅラが足掻いてもアイツらは笑わねェ!!」
「志士たちは皆、己が笑顔を捨てて新時代に賭けたんだ!!」
「テメーらのための新時代だろうが!! 主役が笑えねーで何が新時代だ!!」
「俺の笑顔は、俺の勝手だろ!!!」
「じゃぁ、てめーは自分の勝手で死んでった仲間の遺志を無にしてるのか?」
「何を言って……」
「死んでった奴らはよ、てめーみてーなクソガキに笑って貰いたかったんじゃぁああ、分かれチンカス!!」
上に乗った銀時が全体重を込めて人骨による一撃を食らわせる。
常人が顔面に食らえば、失明さえしかねないその一撃。
しかし、悲鳴を上げたのは少年ではなく銀時だった。
少年は器用にも、下敷きにされた状態から黒刀を銀時に突き刺したのだ。
そして銀時が痛みを訴えたその瞬間に、馬乗りから離脱したのである。
「確かに俺は、お前の言う通り新時代で笑うべき童かもしれんな……
だが、飛天の力を手にしたその時から、俺はただの子供ではなくなった」
「ク……ソガ…………笑え……よ」
〜・〜・〜
戦闘音を聞いた阿弥陀丸たちが駆けつけた時、銀色の体は赤黒い閃光により切り裂かれていた。
(あの御仁は……)
先ほど、自分たちと共に行く事に反対した青年が一人。そして、今は一人ではなく二つ。
紅に斬られたその体は、二つに叩き切られ、力なく重力に負け落ちていく。
(拙者と葉殿がいれば……あのような目には……)
「葉殿、いくでござるよ!!」
「あぁ……行くぞ憑依合体」
媒介のない今、オーバーソウルは出来ない。
だがそれでも、自分は600年前の最強侍。あのような童子に負ける理由は……
いや、ある!!
一瞬、葉と一体化した阿弥陀丸は感じた。あの少年から、溢れ出る剣気を。
草々がざわつき、近くの川が波立つ。
少年が剣を構える。
構えるといっても、右手で剣を横薙ぎに払って血を落しただけ。
それ以外は何もしていない自然体である。
だが、一目で分かった。あれが彼の構えなのだと。
(うかつに攻め込めんな……)
だが、そう思うのはお互い様。
相手は一人。こちらはブルックと2人だ。
互いに攻め手に悩む中、最初に動いたのはこの男だった。
「……なぜ、殺したのですか?」
「…………守りたいモノのところへ急ぐためだ」
「そんな理由で、あの青年を殺したというのですか!!」
「悪いが、問答している時間はない」
少年がそうつぶやいた瞬間。あたりに爆音と、閃光が煌いた。
霊体になって以来、一度も味わったことない目のくらむ感覚。
隣で、ブルックが「目がくらむ、って私、目ないんですけど!」などと言っているが、冗談ではない事ぐらい分かる。
異常な光と音が、収まったとき、そこに少年の姿はなかった。
「あの野郎……」
拙者と葉殿とブルック。
そして、残されたもう一人は。
斬り裂かれた名も知れぬ男。
【坂田銀時@銀魂 死亡確認】
【F−2 駅から少し離れた所 /一日目 深夜】
【緋村剣心@るろうに剣心】
【装備】:黒刀・秋水@ONE PIECE、スタングレネード
【所持品】:支給品一式 不明支給品1個(本人確認済み)
【状態】:精神疲労大、肉体疲労小
【思考・行動】
1:全参加者を殺して日本に戻り、幕府と薩長の戦争を終わらせる。
2:さっきの男のような使い手に注意する。
3:(誰も殺したくない?)
【備考】
巴を殺した少し後の人斬り抜刀斎だった時代から来ています。
【ブルック@ONE PIEC】
【状態】:健康
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品x1〜3
【思考・行動】
1:少年(剣心)を追う?
2:青年を死なせてごめんじゃないでしょうに!
3:麦わら海賊団のメンバーを探す
4:ワポルを倒して殺し合いから脱出する
※スリラーバーグ出航後からの参戦です。
【麻倉葉@シャーマンキング】
【状態】:健康
【装備】:阿弥陀丸
【所持品】:支給品一式、不明支給品x1〜3
【思考・行動】
1:少年(剣心)を追う?
2:人と接触する時は自分が先に接触してブルックを紹介する。
3:ワポルを倒して殺し合いから脱出する。
※阿弥陀丸とセットで参戦しているよです。
終わりです。
乙ーてか銀さん死亡かよ!
最初がギャグ調だっただけに驚いた。
途中の桂を巡った争いには笑っていいものかどうか少し迷ったw
剣心が銀さんの言うように笑える時は果たして来るのか……人殺しちゃったしなあ
GJ!面白かった!
微妙に噛み合ってるようで噛み合ってない会話が絶妙w
ヅラ違いに吹いたw
こういう時代の類似を使った演出が上手いなぁ!
銀さん頑張ったよ…子供に説教は銀さんの専売特許だな
そして剣心つえぇ。相手が殺す気なかったとはいえつえぇ
葉とガイコツの剣士コンビはもっと頑張れ!w
しかしこの2人は地味に相性良さそうだ
ハオもちょうど霊能力者と組んでるしw
乙〜
これは、あやめ……。 って記憶喪失中だったか。
リトとあやめはいきなり二人とも想い人を失ったことになるわけか。
記憶を取り戻した後、どうなるか不安だなぁ。
SMプレイと思って何とか耐えて欲しいものだ。
57 :
参加するカモさん:2008/07/09(水) 17:13:41 ID:1fL3Eo52
乙! ヅラ違い、GJw
銀さんかっこいいなあ…叫びが切ない
この後剣心がどうなっていくのか凄く気になる
笑えるといいな
お待たせしました。
投下開始しますが、描写のいくつかに私の推測が入る点、あるキャラの描写にやや不安なところがある点
から、したらばの投下避難スレに仮投下させていただきます
では、したらばの方に、江田島平八、玉藻京介、XI仮投下を始めます
テステス
>>58 乙です。
ちゃんと文章の見直しをしたほうがいい気がします。
文末に句読点が無いところが数箇所みられました。
それからサイが春菜に姿を変えているようですがサイは定期的に死亡者の発表が行われることを覚えていないのでしょうか?
ワポルの説明に死亡者の放送に関してはありませんでした
定期放送で禁止エリアを発表する、しか言っていません
乙〜
投下乙です
塾長www
こいつなら何やっても驚かないwww
マーダーの二人にも期待できるところですね。
私の予約した、うちはサスケですが
軽い超展開に自分でも不安になったので、仮投下に落としてきました。
いや、マジであれは不安なんですよ……
投下GJ!
特に問題ないと思います。湖は俺も湖だと思ってたので直すかどうかは他の人の反応次第かな?
サイや他二人について知らない人でも分かり易い良い登場話だと思います。
ってか上手い。参考にしますw
狐はなんかうさんくさいと思ったらやっぱりかー
塾長は吹いたw
変装能力は脅威ですね。リトが近いし楽しみだw
サスケの人も投下GJ!……なんですがこれはまた凄い変化球がキタw
内容は面白かったし、ジョジョファンの自分は全然問題ないんですけどこの企画に合ってるかといったらどうだろう……
サスケである必然性が薄く修正を提案したいんですが、そうするとほぼ内容が変わってしまうからどうしたものか…
発想は面白いんですが、後続が続き辛いと思うので…
とりあえず1意見として
>>64 2つ質問がある
貴方はサスケアンチなの?
この企画にちゃんと取り組むつもりがあるの?
貴方はリレー企画に向いてないと思うよ
リレー企画ってのは後に続く人があってこそなんだよ
奇をてらうのは結構、変わった切り口を持って来るのも歓迎だが、次の人が書き安いようにしなくちゃダメだよ
今回のこれを次の人にどうして欲しいのかととても疑問
ひねくれた見方をすればサスケを出したくないからサスケを使って色々問題を起こしてるようにも取れる
文章力はあるみたいだから一人でブログとかで書いていくのをお薦めするよ
これ以上ここで書かれても困るので
>サイの人
仮投下乙
全裸www
問題はなかったと思います。
>サスケの人
仮投下乙
私も上の方と同じように修正か破棄が妥当だと思います。
読んでいて楽しめたのですがリレーには向かないかと。
記憶があると実質二人分の描写が必要になってしまいますし。
例を言うとアニロワ2のかがみみたいに扱いが難しくなるのではないかと予想されます。
文体や発送は面白いと思ったので、私としては修正でまた氏に作品を書いてほしいです。
サイの人は湖を川に修正して岸に上がるところを苦労してよじ登った風にでもすればいいかと。
んでサスケの人は……読んだけど別にみんなが言うような問題は感じなかったがなあ。
ウェザーの記憶はサスケにとってただのきっかけに過ぎないだろうし、
ラッドみんみたく乗っ取られるといったことも原作見る限りないだろうし。
修正要求するにしても、もう少し言い方ってもんがあると思うけど
何で最初からそんなに喧嘩腰なの?
>>67 1つ質問がある
貴方はこの企画にちゃんと取り組むつもりがあるの?
貴方はリレー企画に向いてないと思うよ
リレー企画ってのは書く人があってこそなんだよ
ひねくれた見方をすれば内容が自分の趣味に合わないから難癖つけて喧嘩腰で色々問題を起こしてるようにも取れる
捻れた根性はあるみたいだからどっか別の場所にいくのをお薦めするよ
これ以上ここで荒らされても困るので
>>67 アホなんですか?
次の人にどうして欲しいか?明らかにマーダーとして活躍して欲しいに決まってるだろう
次の人がどう書きにくいんだ?
記憶ディスクはあくまでサスケマーダーの理由を強化するため
しかも、何でわざわざひねくれた見方をする必要がある?
はっきりいってお前が一番迷惑
理論がこじつけすぎる
これじゃどんな内容でも通らない
>>71 意見は良いがそのやり方はどうかと
連投スマン
色んな意見を聞いてこのまま通しでも良い気がしてきたw
予想外の話だったから動揺してたのかもしれんw
書き手の裁量に任せます。
すっかりサイの人になってるw
サイの方は気になった点はほぼ挙げられているので良いと思います。
本投下待ってます。
サスケの人も問題はないと思います。
修正要請してるひとは出てるようにアニロワ2のようになるのを危惧してだと思いますが、ディスクに精神をのっとる効果はないはず。
サスケの状況表にでも精神をのっとられるようなことはない、と添えれば十分だと思います。
あと、こだわりがあるのなら構わないのですがサスケの参戦時期が気になりました。
一部終了直後とは決定しないほうが良いと思います。
まあお前ら、そういうことはしたらばにな。
そうだ、読んだだけで感想を忘れてた。
>笑えよ
銀さああああああああん!
台詞がいいなあ。銀さんの大人としての台詞と剣心の壮絶な決意と。
間違いなく剣心の心のどこかに銀さんの言葉は残ったよ、たぶん……
台詞にセンスがあって好きだ。GJ
仮投下から半日が経過したので、修正について書き込みさせていただきます
・文末の句読点の追加
・湖→川に変更、それに伴う描写の変更
あとは電子ドラッグについても上がっていましたが、対主催からマーダーへの
切り替えに繋がる要素であり、扇動マーダーの武器として取り入れましたが…
『洗脳』と似た物があり、やや不安だったのですがそれほど取り上げられなかった
のですが話には上がっているので、どうしようかと。
案としては、そのままか、使用に制限をしく(使用後に極度の疲労もしくは
1回使用後、6時間使用不能が検討案)、もしくは電子ドラッグ能力の排除、があります。
朝早くで申し訳ありませんが、ご意見お願いします
修正しながらお待ちしています
修正乙です。
電子ドラッグですか。
私としてはサイは変装能力だけでも十分な煽動マーダーになれると思ったので、使えないか威力弱めが良いと思います。
でもサイの持ち味でもあるしなぁ……
案としては完全に洗脳できる威力ではなく「きっかけ」程度のものとするとか
犯罪行為に戸惑いを感じなくさせる程度?
威力低下や疲労増加などの制限をすれば、排除する必要はないと思います
投下します
深夜の森の中は予想していた以上に怖かった。
直は暗いところは人並み程度には苦手だし、たった一人でまったく知らない場所に行くのも嫌いなほうだ。もちろん、肝試しなんてもってのほかだ。
だがこの状況は、今まで普段生活していた時に感じていたそれらとは比べ物にならないほどの恐怖だった。
孤独であることそれ自体は慣れているから大丈夫だと最初は自分に言い聞かせていたものの、これは普段のただ人と触れ合わないだけのものと違い、圧倒的な実感をもって直の心を支配していた。
どこまでも続く暗闇、その中で頼りなく揺らめくライトの光、湿った空気、自身が地面の枝を踏み折る音……それら諸々全てが直の感じている恐怖を容赦なく煽り立てる。
誰かに会いたい、せめてこんな森の中ではなくもっと安全な場所に移動したい、できれば秋山さんに助けてもらいたい……
直の頭にはずっとこれらの思考が渦巻いていたが、時間が経つとむしろこの頃のほうがマシだったと彼女は思い知ることになる。
最初は誰かに会いたいという一心だけだったが、次第にそれだけでなく――誰にも会いたくないという気持ちも同時に湧き出てきたのだ。
勘違いしてはいけない。これはわけもなく放り出されたわけじゃなく、殺し合いという目的が趣旨とされているのだ。
ライアーゲームのような多額の金を賭け、負ければ人生が破滅してしまうというものもごめんだが、これはもっと根源的な……直接命をやり取りする場。
以前の自分は、どこかでまだ余裕を持っていたのかもしれない。
負けるとその時点で人生は破滅だが、まだ命まではとられることはないと。
たとえ外国に売られることになろうともそこには自分と同じような境遇の人がたくさんいて、辛くてもその人たちと友情を育んだり、ささやかな幸せを手にしたり……
それが平和ボケした甘っちょろい想像だということはわかっているが、そんなことをどこかで思っていたことは否定できない。
あの時は未来があるというだけで、わずかだがたしかにまだ希望を持つことができたのだ。
……だが、今は違う。
だって死ぬのだ。未来も何もない、人生は破滅すらすることなく強制的にそこで見知らぬ第三者の手によって打ち切られる。
よく死んだほうがマシだという言葉を聞くが、今の自分にとって死ぬことよりもマシなことなんてとても想像できない。
もし誰かと遭遇してしまったら、襲い掛かられて殺されるかもしれない。いや、それだけでは済まずにもっと酷いことをされる可能性だって……
「うう……秋山さん……秋山さぁん……」
歩き続ける気力も失い、もう何度流したかもわからない涙を零しながら直はその場にへたり込んだ。
地面の草がちくちくと足に刺さってくるのも気にならない。
ただそこで泣き続けていれば何かが変わってくれるんじゃないか、などと馬鹿なことを期待すらして直は嗚咽をあげ続ける。
どうしてこんなことになったのか、まるで理解できない。
ここに送られてきたという事実は認識できる。世の中の不条理というものも今まで何度だって見てきた。
でもやっぱり、どんなに頑張っても完全に納得することなんてできなかった。
ライアーゲームの時といい今回のこの殺し合いといい、よりにもよってなんで自分がいつもこんなことに巻き込まれる羽目になるのだ。
もっとそれに見合った人なら他にたくさんいるだろうに、こんな何の変哲のないただの大学生である自分が、何故。
秋山さんはここに呼ばれていないのか。
今までどんな苦境に立たされても、最後の最後で必ずあの人は来てくれた。
あの人なら信用できる。きっと自分を助けてくれる。あの天才的な知能を駆使して、簡単にみんなを脱出させてくれる。
「うあぁ……うううぅ……秋山さぁん……」
なのに今、彼はここにはいない。
どんなに泣いても喚いても、決して自分の前に現れてくれない。
頼れる人がどこにもいないというのが、こんなにも辛いものだとは思わなかった。
「私、どうしたらいいんですか? ここで死んじゃうしかないんですか? そんなの嫌……嫌です……」
死にたくない。
これまでせいぜい18年かそこらの平凡な人生しか送ってきていないけど、それでもこんなところで終わりたくない。
元の世界には、末期ガンでもうあまり先の長くない父親もいる。ここにきて彼を悲しませるようなことはしたくない。
故に直は、その場でただ泣いて助けを求め続ける。
「誰か――誰か助けて……」
秋山さんじゃなくてもいい。それがフクナガさんでも誰でもいい。
お願いだから、自分を――
「あれ?」
――その誰かがあげた声を、たしかに直の耳は聞き取った。
瞬間、自分でも驚くほどの早さで地面に転がっているライトを手探りで拾い当てると、声のした方へと向ける。
その先には……見間違いでもなんでもなく、たしかに人がいた。
「わっ、眩しいなあ」
その直の前に現れた人物は、突然自身を襲ってきた光を遮ろうと片手を眼前にかざしたようだった。
性格の問題なのか、直は彼のその言葉を聞いて反射的に「ご、ごめんなさいっ」と謝ると顔に向けていたライトを少し下に落とす。
すると光は彼の胸あたりに移動して、それと同時にかざしていた手をどけた彼の顔がさらされる。
最初は何か違和感を感じていたものの、彼の表情を見た瞬間から直はそのことを忘れた。
(優しそうな人……)
それが、直がその少年に抱いた感想だった。
年は自分と同じくらいだろうか、もう少し下にも見えないこともないが、いずれにせよそう変わらないだろう。
何故か和服を着ているが、さして気にならなかった。現代日本でも平時から和服を着ている人はいないことはない。ただ、若い人で和服姿はたしかに珍しいが。
そんなことはどうでもよく、何よりその柔和な笑顔からにじみ出る雰囲気が恐慌に陥りかけていた直を心底安堵させた。
「よく知りませんけど、最近は提灯も発達したんですねえ。南蛮のものかな?」
妙なことに感心しながら、少年は一歩ずつこちらに近づいてきた。
それにより、だんだん彼の表情がよく見えるようになる。
遠くからでもわかったその笑顔の印象は近くで見ても変わることはない。やっぱり、優しそうな顔立ちだ。
よかった――直は心底そう思った。
この人は、きっと大丈夫だ。こんな柔らかな雰囲気を持った人が殺し合いになんか乗るわけない。
頼れる人がいなくて不安に思っていたが、最初にこんな人と出会えるなんて自分はついている。
「お姉さん、泣いていたんですか?」
「え?」
突然、少年――瀬田宗次郎は直にそんなことを聞いてきた。
言われて初めて、直は自分の顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていることに気づく。
途端に赤面し、汚れを拭おうとあげていた顔を慌てて下げた。
そんな直の様をどこか可笑しげに宗次郎は眺めていたが、やがてしゃがんでいる直のすぐ側までたどり着くとようやく歩みを止めた。
いつまでも頭を下げていては、彼に失礼だと思われるのではないだろうか。
そんなどこか場違いなことを考えていると、宗次郎は……やはりいつもと変わりのない、まったく邪気のない声で続ける。
「涙はあまり流すものじゃないですよ、お姉さん」
顔を下げているために少年の声しか聞こえない。早く顔を整えなければ。
「泣くってことは、自分が弱者だってことを他の人に明かしているのと同じですからね」
心なしか、彼の声のトーンが少し落ちた気がする。
注意深く聞いていないとわからないような、微少な差異にすぎないが。
だけど彼の表情を確認しようにも、まだ顔をあげることができない。あともう少しだ。
「強ければ生きて、弱ければ死ぬ……これがこの世の理だって、ある人が僕に教えてくれたんです」
さっきから少年がしきりに話しかけてくれている。早く返事をしないと、気分を害してしまうかもしれない。
「あっ、あのっ、それ知ってます。『弱肉強食』ですよね」
「はい、その通りです」
ようやく顔をあげて立ち上がった直を見て、宗次郎はにっこりと笑った。
なんで彼がこんな話をしているのか直にはよく理解できなかったが、とりあえず笑っているのだからこれでいいのだろう。
場にそぐわぬなごやかな空気が深夜の森に流れ……そして宗次郎はその空気を少しも壊すことなく、そのまま言葉を続けた。
「ですから、あなたはここで死んでくださいね」
支援
◆
最初は、かん高い鳥の鳴き声かと思った。
だが、それにしてはどうも様子がおかしい。
声のあとに続いて聞き取れるこの音は、明らかに何者かが地面を踏みしめて走っていることを示している。
となれば恐らく今のは鳥ではなく、女性の悲鳴か。
そう判断すると男は事実を確かめるべく、自分もまた森の中を駆け出していった。
◆
――何故彼女を仕留め損なったのかと聞かれれば、特に理由はない。
殺そうと思えばいつでも殺せた。
たとえば彼女を見つけた瞬間に手に持ったくないを投げつける。
出会ってすぐ、反応し切れない内に素早く近づいて喉を掻っ切る。
そうでなくともしゃがみこんでいたのだから、その隙を狙って脊椎あたりを刺突することだってできた。
それなのに自分はその機会を全て、自らの意思で逃がした。
強いて言うなら、いつでも殺せるからこそ逆に何もしなかったのかもしれない。
「……いや、違うか」
宗次郎は笑った。
それ以外の表情はあの場所に全て置いてきた。
だから彼は何があろうとも笑い続ける。
「あのお姉さんはきっと、あの時の僕なんだ」
だからなのかもしれない。
あのよく涙を流していた昔の自分を、まだまだ弱かった時の自分を、もう少しだけ見ていたくて。
そして、確実にそれを殺したという実感が欲しくて。
だからこそ、自分は彼女を一時的に逃がしたのかもしれない。
彼女は必死に逃げるだろう。それ以外に自分のできることを知らないから。
追い詰めた先で命乞いをするかもしれない。これ以上ないくらい無様に。みじめに。
それでいい。その姿は全て、かつての自分なのだから。
強ければ生き、弱ければ死ぬ。
この世で一番弱い者……すなわち昔の自分であり、今の彼女だ。
――最も殺さなければならない相手だ。
「さて、行こうかな」
逃げる時間は十分にくれてやった。あとは追い詰めるだけだ。
宗次郎はだらりと垂らしたくないをしっかりと構えなおすと、過去との決裂をするために森の中を静かに走り出した。
◆
直は必死で逃げていた。
時折、木々の枝が自身の顔や服を小さく切り裂いてくるがそんなことはどうでもよかった。
なりふりなんて構っていられない。今逃げなければ、確実に自分は殺される。
後ろを振り向くのが怖い。
そうすることで走るスピードが落ちる可能性があるし、何よりすぐ側まであの少年が近づいてきているのが目に入ったらと思うととても振り向けない。
思えば最初から違和感はあった。
自分が泣き崩れていて、そして初めて彼の声を聞いた時。
あの時、たしかに声は聞くことができた――だが逆に言えば、『声しか聞くことができなかった』のだ。
近づいていたのなら何故、彼が草木を掻き分けたりする音が聞こえなかったのだろう。
いくら泣いていたからといって、それを聞き逃すほど注意力は散漫じゃなかったつもりだ。
それはつまり、彼がそれほどの達人で……かつ、意識して忍び寄っていたからに他ならない。
たしかにそれだけじゃ殺し合いに乗った人間と決め付けるには根拠が薄い。だが、警戒するには十分すぎる理由だ。
支援
……なのに自分は、彼の顔を見た瞬間に何の根拠もなく彼を信じる心地になってしまっていた。
秋山さんの言葉が思い出される。
多くの人間が信じるという名の下にやってる行為は実は他人を知ることの放棄……つまり思考停止であり、だからこそ人を疑って疑って、そしてその心の中をじっと見つめることこそが大事なのだと。
さっきの自分はまさに、他人を知るということを放棄していたのだろう。
ただ一人でいるということの不安から逃れたい一心で盲目にこの人なら助けてくれると思い込み、そして何の警戒心もなく……殺されかけた。
「ハッ、ハッ、ハッ……ゼハッ……あ、あき、やま……さんっ!」
息絶え絶えながらも、直はまた秋山の名を呼んだ。
怖い。死にたくない。誰かに助けを求めたい。秋山に頼りたい。
だけどここに、秋山はいない。そう……いないのだ。
自分と同様に島には送り込まれているかもしれないが、それでも今この場には、彼は決して現れない。
『だったら、どうする?』
彼がいつもの不敵な笑みを浮かべながら話しかけてきたような気がした。
『だったら今、お前が生き抜くために必要なことはなんだカンザキ? このまま逃げ続けることか? それとも無謀を承知で殺し合いに参加することか?』
(私……私は……)
木の根に躓いてしまったことで、直の思考は強制的に中断された。
全力で走っていたために勢いを止めることができず、敢え無く直は顔から地面に突っ込む。
支援
しえーん
「痛っ……だぁ」
急いで起き上がると、ぼたぼたと鼻血が滴り落ちた。
思わず手の甲で拭うが、そこについた大量の赤を見ると痛みよりもむしろ、敢えて意識しないようにしていた今の自分のみじめさが思い出されてまた泣きそうになってくる。
しかもさらに悪いことに、顔だけじゃなく今ので体のそこかしこを打撲したらしく、手足を動かそうとすると激痛が襲いかかり、走りたくても走れない。
だけど、ここで止まるわけにはいかない。今は這ってでも前に進まなくちゃ、あの人が……
「案外早く追いついちゃいましたね」
――今一番聞きたくない声が、直の後方から飛んできた。
壊れたブリキ製のおもちゃかそれ以下の緩慢な動きで、直は倒れたまま身体ごと後ろを振り返った。
そこにはたたずまいも表情も、先の優しげな雰囲気も何もかもが先ほどと一切変わった様子のない少年が立っていた。
「あれれ、お姉さん顔ぶつけちゃったんですか? せっかくかわいいのに台無しですよ」
そんなことを指摘される……が、今度は鼻血を拭う気にもなれなかった。
ただ直の顔は青ざめ、今までそうならなかったのが不思議とばかりに身体が震え始めた。歯の根がガチガチと音をたてて、まるでくるみ割り人形のようだ。
彼が一歩こちらに向かってくるごとに後ろに後ずさろうとするが、思ったよりは自分の身体は進んでくれなかった。
怖い……どうしようもないほどに、怖い。
あんなに優しそうな顔をしているのに、今はそれが何よりも怖い。
「どうします、命乞いでもしてみますか? 僕は別に構いませんけど」
「……!」
宗次郎のその言葉に、直は目を一瞬大きく見開いた。
不思議と彼はすぐに自分を殺そうとはしていない。
獲物をいたぶる趣味があるようには見えないが、とにかく喋る機会が与えられたのは自分にとって幸運なことだ。
覚悟を決めなければ。怖いけれど、もう逃げ場はないのだから。
「あ……」
背中を冷や汗が伝い、喉がカラカラだ。声というものはこんなにも出しにくいものだったか。
あ、そういえば今鼻血が出ているんだった。それなら声が出にくいのも当然だ。
そんなこともわからないくらいに自分は今、焦っているのだろうか。
「あなた、は……わ、わた、私が弱者だって言って、い、いって、言ってましたよね?」
「はい」
「た、たし、たしかに私は、弱いです。馬鹿だし、運動神経もそんなによくないし、ひ、人を殺したことだってありませんし……で、でも――」
「……?」
てっきり命乞いをしてくるのかと思いきや妙なことを口走り始めたため、不思議に思ってそうな顔だった。
自分でも驚いているくらいだ。
言葉はしどろもどろながらも、逃げ場所がなくなったここにきてやっと、自分の意思がこんなにも明確な形で目に見えてきたのだから。
本当なら、秋山に助けてもらいたい。
だけど彼はここにはいない。
だったら自分のするべきことはただ一つ……
「私は、戦います」
その一言だけは言いよどむことなくはっきりと告げることができたことに、直は若干嬉しさを覚えた。そんな場合でないことはわかってはいるのだが。
――すると目の前の少年は……笑顔そのものは変わらないまでも直のその言葉に何故か落胆と、そして若干の嬉しさが混ざったような複雑な表情になった。
ゆっくりとしゃがみこみ、直の顔を覗き込むようにして問いかけてくる。
「戦うって、それはつまり僕と戦うってことですか? 殺し合いに乗って、優勝を目指すと」
「い……いえ、違います」
身体の震えは治まらない。相手はいつでも自分を殺せるのだと思うと、恐怖で吐き気すらしてくる。
だが直はそれらを必死に押さえつけ、決して逸らすことなく宗次郎の、底の見えない目を直視した。
「私は、殺し合いそれ自体を止めるんです。なるべく犠牲は最小限に抑えて、ここからみんなで脱出するんです。そのためには、一人でも多く仲間が必要なんです。それはもちろん……あなたも含めて」
秋山だったら、きっとそうするだろう。ここから脱出するための、現状考える上で唯一の道。
そしてその秋山がいないとなれば、自分がその役割を担ってみせる。みんなを脱出させてみせる。
「――助かりたくてそんなことを言っても無駄ですよ。それに、仮にそれができたとしても誰が信じますか? そんなただの理想論を」
「い、いいえ理想論じゃありません! 脱出はできるんです……それに誰だって、無事生き残って元の世界に戻りたいという気持ちはあるはずです! ですから、耳くらい傾けてくれるはず――」
「…………」
もう話を聞く価値もないと判断したのか、宗次郎は右手に持ったくないの刃を直に向けると、空いた左手で彼女の首根っこを優しく掴んだ。
少年の手はひやりとして冷たかった。そしてそれ以上の冷たさをもった凶器の刃が、直の頚動脈に押し当てられる。
鳥肌が全身に立っているのが、自分でもわかった。
「さっきの話……」
その時不意に、宗次郎は口を開いた。
「断言してもいいですが、絶対に誰もその話には乗りませんよ。結局、最後に信じられるのは誰でもなく自分だけなんですから」
「そ、そうかもしれません。けど……それが、わた、私の戦いですから。私にはそ、それしかできませんから――」
刃が押し当てられた部分から、血が伝って落ちているのが感覚でわかった。
震えが止まってくれない。押し留めていたはずの涙も、タガが決壊したかのように溢れてくる。ああ、やっぱり自分はダメだなあ、と直は深く思う。
やっぱり自分はどう頑張っても、秋山さんのようにはなれない。
――秋山さんのようには、なれないけれど。
「それでも……それでも私は、戦います!」
支援
投下乙!
直はどうなる事かと思ったけど、雷電に救われたか
そして、まさに原作通りの行動方針!さすが直
果たして雷電は直を守れるか
宗次郎は切ないな。同じ存在かと思えば、彼女は自分よりも強かった
宗次郎の今後も気になります
心理描写が上手いですね、見習いたいな
「よくぞ吼えられた」
――その時、一陣の風が吹いた。
◆
「!?」
唐突な男の登場に、宗次郎は反射的に左足で地面を蹴って後方へ跳んだ。
すると次の瞬間、彼がさっきまでいた場所が……凄まじい音と共に陥没した。
「ひっ!?」
何が起きたのか把握できないのは直も同じ。
命が助かったという実感もなく、ただ突然の出来事に頭をついていかせることができず、呆然としているだけだ。
もうもうと巻き起こる粉塵。その中に巨大な影を確認した時、得体のしれないものへの不安と恐怖で直の心臓はけたたましく鐘楼を鳴らす。
自分もまた、さっきの少年のようにこの人間らしき影から離れたいのだが身体が痛くて無理だ……というより、情けない話だが腰が抜けてしまった。
「どなたですか?」
宗次郎が、まるで気後れしていないように気軽な声をその男にかける。
その時ようやく土煙が晴れ、乱入者の姿が露となった。
投下終わってからにしよーね
「ひっ……」
その姿を見て、直はさっきとそう変わらない悲鳴をあげた。
自分を助けてくれた(のだと思う)その人は隆々とした肉体と鋭い目、なまずを思い起こさせる髭を持った偉丈夫で、きれいに剃りこんだ頭に『大往生』という三文字の刺青を彫っていた。
学生服を着ているが、その顔はとてもそうは見えない。強いて言うなら、大学の応援団団員を直は連想した。
……そしてその腕には妙な形状の鉄甲を身につけていた。全面に傾斜が施されて丸みを帯びており、防御に徹することを目的として作られたような。
正直、圧倒されて言葉が出なかった。
いつもの自分なら、先ほどまで自分を殺そうとしていた少年とこの男性なら、ほぼ間違いなく少年のほうについていくことだろう。
「拙者は男塾三面拳が一人、雷電」
大男は口を開くと、直をかばうように宗次郎の前に立ちはだかった。
猛々しい外見とは裏腹に、どこか知性を感じさせる声だった。
「其処にいる婦人の中に男の魂を見たが故、彼女の手足となりて己が命を捧ぐ者! 故に……貴様には、大往生あるのみ!」
その男――雷電は宗次郎だけでなく、この島に送られてきた者たち全てに宣言するかのごとく叫んだ。
あまりの気迫に当の直本人が気圧されてしまい、口を金魚のごとく開閉させるしかない。
だが宗次郎はというと柳に微風が吹いただけのようにまるで動じた様子もなく、冷静に雷電の姿を観察していた。
――やがて。
「……いえ、せっかくですけどやめておきます。僕の手持ちの武器じゃ敵いそうにありませんからね」
存外あっさりと、宗次郎は退くことを選択した。
くないを手早く懐に入れると、後ろから狙われる可能性だって考慮しているだろうにくるりとこちらに背を向ける。
だがそれを見ても、雷電のほうは拳を収めるわけにはいかない。
「逃さぬ!」
宗次郎の背中を目指し、駆け出そうとする。
……が、その時雷電は自身の足元に何か妙な感触があることに気づいた。
「待ってください!」
見ると、直がへばりついた状態のままで雷電の右足を両手で抱きかかえるようにしてしがみついていた。
さすがに彼女を蹴り払ってまで走れるはずもなく、雷電は仕方なくその動きを止める。
すると何の気まぐれか……去ろうとしていた宗次郎もまた直のその言葉に立ち止まり、こちらを向いてきた。
彼が話を聞いてくれたことに安堵を覚え、直は宗次郎に向かって声をはりあげる。
「あ、あの……お名前は何と言いますか!?」
「あれ、まだ名乗っていませんでしたっけ? 瀬田宗次郎と申します」
「私は神崎直です――瀬田さん、私が先ほど話したこと。あれは本当なんです。ですから、私と一緒にきてくれませんか?」
その言葉に驚いたのは宗次郎ではなく、雷電だった。
驚愕に目と口を大きく開くと、地面の直に向かって抗議の声をあげる。
「な!? 直殿と申されたか、あまりにそれは――」
「甘いですよ、神崎さん」
雷電の言葉に被せるように宗次郎は告げる。
「強ければ生き、弱ければ死ぬ。それがこの世の理です。ですから僕には、あなたのその話は必要ないんです。たとえ死ぬことになっても、それは僕が弱かっただけのことですから」
「でも――」
直の返事は待たず、踵を返すと再び森の中へ消えようとする……が、ふと何かを思い出したように、宗次郎は一度だけ振り返った。
「……ああそれと、あなたは僕が思っていたよりもずっと強かった。その点に関してだけは、お詫びします」
予想はしていたがやはり最後まで屈託のない笑みを浮かべ、宗次郎はぺこりと直に向かっておじぎをすると、それを最後に今度こそ音もなく走り去っていってしまった……
◆
「何故、あのようなことを?」
宗次郎の去ったあと、直は雷電と共に木の根に座り込んでいた。これは主に直の体力が限界に近かったためであるが。
夜が明けようとしているためか、森の木々の間から見える空が白み始めている。それに伴って暗かった森の中も徐々に明るくなってきた。
たったそれだけのことなのに、どうして人の心というものはこんなにも不安から解放されるのだろう。
……と言いたいところなのだがこの雷電という男は特に朝だろうが夜だろうがまったく変わった様子はなく、直はそれと比べてつくづく自分が凡人であることを自覚させられることになる。
「敵に情けをかけるも結構。しかし、時と場合を考えなければそれは己の命を失うことになりかねませぬぞ」
休んでいる間、雷電はずっとこの調子で直にくどくどと説教じみたことを聞かせ続けていた。
普通なら落ち込むところだろうが……直は何故か、彼のその様子に安心感を覚えていた。
本当にこちらを心配してくれていることが伝わってくるからだ。
だがそれでも、人は疑うべきだという秋山の言葉を忘れたわけではない。
これまで自分はなんとなく、人を疑うということは悪いことだと思っていた。
だが、違うのだ。本当に悪いのは、他人に対して無関心になること。そうなればそこには決して信頼関係というものは生まれない。
だからこそ疑う。疑うということは逆に、徹底的に相手のことを知ろうとする努力なのだから。
「あの……」
長々と続く彼の説教を途切れさせることに少し罪悪感を覚えつつも、直はおずおずとその間に口を挟んだ。
とはいっても雷電は別に気を悪くした様子もなく、その言葉の続きを促すように直の目をじっと見つめてきた。
……普段一対一で話すときにあまり目を合わせたりはしないため、少々怯む。
お詫び支援
「あ、あの、なんで雷電さんは私を助けてくださったんですか?」
「…………」
その問いかけは、直にしてみればかなり踏み込んだものだった。
せっかくの雷電の善意を、いわば踏みにじる行為をしているような気がしたからだ。
案の定雷電は目を閉じると、なにやら考えているように黙り込んでしまった。
やはりまずかっただろうかと直は強い焦りを覚える。
もしかして今ので機嫌を損ねてしまったのではないだろうか。
今からでも遅くはない、すぐに謝ってさっきの質問を取り消してしまったほうが……
「あ……」
「勘違いめされるな」
直が口を開いたと同時、雷電は重々しい口調で彼女に告げた。
「拙者は、直殿をただ助けたわけではござらん」
「!」
あんなことを聞いたくせに、雷電のその答えは直にとって予想していないものだった。
まさかこの雷電も、さっきの瀬田宗次郎のように……?
そんなことを考えていると、雷電は既に鉄甲を外した両手で直の肩を力強く掴んだ。
一瞬彼が何をしようとしているのか理解ができず、直は思わず悲鳴をあげかけた。
……だが雷電はそれ以上何もすることなく、ただ直の顔を正面から見据えたまま口を開く。
「直殿……そなたはあの時、瀬田という少年の手により己の命が失われようとしている際に断固として吼えられた。『自分は戦う』と……
故に拙者はそなたの前に現れた。いつまでも逃げ続けているようであれば、いっそ見捨てていたやもしれぬ」
「……!」
「だが、そなたは戦うことを選択なされた。さればこそ、我らはこの時より対等なる関係。どちらが上も下もない、共に戦う同志にござる。
直殿にそうなる価値を見出したからこそ、助け申した……それだけのこと。もしこれからまた、直殿が逃げ出すようなことがあれば、拙者は再びそなたを見捨てかねませぬぞ」
その言葉からは、隠しようもない強い意志が感じられた。
直は元来、『馬鹿正直の直』と呼ばれるほど人を信じやすい性格だ。
だからこそ他人に騙されやすいというものもあるが、ともあれ今の雷電の言葉に嘘偽りは見受けられなかった。
彼は誠心誠意、魂をぶつけるように語り掛けている。
「では、こちらも聞かせてもらいますぞ直殿。そなたはあの瀬田という少年をも我らの同志に引き入れようとなされた。それは、ただの慈悲からきたものでござろうか?」
雷電の疑問はもっともだった。
いくら直が心優しい少女だからといって、ついさっきまで殺そうとしていた男を仲間にしようなどとは、正直ただの馬鹿としか思えない。
「いいえ……それは絶対というわけではありませんが、そうすることが必要だと思ったからです」
「?」
直のその答えに、雷電は片眉を吊り上げた。
たしかに瀬田宗次郎は十分な戦力にはなるだろうが、それでも仲間に引き入れる意義は見出せない。
……すると直は、今度は自分のほうから雷電の目を見据えてきた。
「ただし直殿が戦うことを放棄さえしなければ、拙者は命を賭してそなたを護ろう。たとえ何があろうとも」
「は……はい」
自分はそれほどまでに思い責任を背負っていたのかと、内心直は驚く。もちろん、逃げるつもりはない。
隅でガタガタ震えているだけでは、決して生き残ることはできないのだから。
生き抜くためには、自分から動かなくては。この雷電が手足だとすれば、頭は自分の役目だ。
正直知能には自信がないが、それでもライアーゲームや秋山と共にいることで培ってきた経験が自分の唯一の武器だといえる。
……その時、雷電はようやく両肩を掴んでいた手を放すと自身もまた直に対して問いかけてきた。
「では、こちらも聞かせてもらいますぞ直殿。そなたはあの瀬田という少年をも我らの同志に引き入れようとなされた。それは、ただの慈悲からきたものでござろうか?」
雷電の疑問はもっともだった。
いくら直が心優しい少女だからといって、ついさっきまで殺そうとしていた男を仲間にしようなどとは、正直ただの馬鹿としか思えない。
「いいえ……それは絶対というわけではありませんが、そうすることが必要だと思ったからです」
「?」
直のその答えに、雷電は片眉を吊り上げた。
たしかに瀬田宗次郎は十分な戦力にはなるだろうが、それでも仲間に引き入れる意義は見出せない。
……すると直は、今度は自分のほうから雷電の目を見据えてきた。
「雷電さん、先ほども言いましたが、私の戦いはこの殺し合いを止めることです。では具体的に、どうしたら止められると思いますか?」
「む……」
逆に問い返されて、雷電は言葉に詰まった。
直にはあんなことを言ったが、実際は襲われている者を見過ごすことなどできるはずがない。
弱者を護り、殺し合いに乗った者を倒す……いつもならそれだけで済むのだが、今回はそういうわけにもいかないのだ。
これは殺し合い。最後の一人になるまで続けられる、最低最悪の遊戯なのだから。
支援
すみません、猿くらいました
どなたか続きお願いします
「私、考えたんです。どうしてあのワポルさんという方がこんなものを開いたのか。ただの娯楽にしては、あまりにもリスクが高すぎるんです」
「……どういうことにござろう?」
「だって、最初に全員が集まった場所を見たでしょう? あんなに大勢の人たちを集めるということはつまり、元の世界では一斉にあの人数が失踪したということになります。一人や二人ならともかく、五十人以上が同時に消えたとなるとマスコミに隠しきれるはずがありません」
「!?」
「にも関わらず、私達はこうして集められている。それなら、たとえ本当の目的が何であろうともワポルさんは絶対にこれを成功させたいはずなんです。二十四時間以内に誰も死ぬことがなければこの首輪が一斉に爆発すると言っていましたが、
あれは殺し合いを促進させるためのブラフで、実際はそんなことないと思うんです。そうなればこの催しは確実に失敗ですからね……では、現実に二十四時間以内に誰も死ななそうな場合、主催の観点から見てどういう手を打つか――」
「主催者本人の、何らかの形での殺し合いの直接的な介入……?」
「……恐らく、そうだと思います。ですからそこを狙うことができれば、私達は最低限の犠牲で元の世界に帰ることができるんです」
「しかし、そのようなことが実際にできるものでござろうか? 今我らがこうしている時にも、きっとどこかで殺戮は行われているはず」
すると、直はどこか沈痛な面持ちになる。
「はい……ですから、明らかに失敗だと思われる残り人数――全体の数を五十人と考えれば残り二十人から三十人を目安に全ての人を仲間にすることができれば、きっと成功します」
「…………」
再び雷電は黙り込む。
実際、直のこの計画は可能なのだろうか?
たしかに、この島にいるほとんどの人間は元の世界に戻りたいだけだろう。それは殺し合いに乗っている者も同様だ。
そういった人々に、帰れる方法があると説けば話に乗ってくる可能性は決して低いとは言えない。
あのワポルという主催者の言っていた、なんでも願いを叶えるという言葉を鵜呑みにして優勝しようとしている者もそうはいないはずだ。
そんな本当かどうかもわからないことを信じるよりは、具体的な道の示されているこちらに乗ってきてもおかしくない。
そのためには、少しでも多く仲間が必要だということは理解できる。
……しかし。
「直殿、そなたの申されることは拙者にもわかる。だがこの世界には、そなたの想像もつかないような異常者がいることも念頭に置かれた方が良い。たとえばあの、瀬田宗次郎のような……」
「…………」
あの男は間違いなく、自分たちとは違う存在だ。己の命よりも先に、独自の価値観で動いている。
それは雷電とて同じだが、その価値観のベクトルがあまりに外れすぎている。あのような手合いには、何を説いても無駄だろう。
それ以外にも、一旦こちらの仲間に入った上で内部分裂を狙う者もいるかもしれない。
この計画に穴があるとすれば……まず、そういった者たちの見極めだろう。
「直殿。拙者はあくまでもそなたの手足に過ぎぬ。故に、相手を仲間に引き入れるかどうかは全て直殿に一任する……だがもし本当にそのような者と相対した場合、いっそその場で屠ることこそ犠牲を最小限に食い止められる一番の手だということを覚えていてもらいたい」
「……はい」
本当は、直は宗次郎も含め全員を無事に元の世界に帰したかった。
根っからの悪者なんて、この世に一人もいない。ただ環境が悪かったせいで捻じ曲がってしまっただけなのだ。
できれば全員を救いたい……しかしそうもいかないだろうことは彼女にもわかっている。
今まで何度も何度も騙されてきたのだから。
その時、雷電は立ち上がると再び外していた鉄甲を身につけ、先ほどの重い雰囲気を一掃するように殊更明るい口調で直に話しかけた。
恐らく気を遣ってくれたのだろう。
「……さて、休憩も終わりにしてそろそろこの森から出ることにしよう」
「はいっ」
雷電にとっては明るい口調のつもりでも実際は大して変わりはなかったのだが、直はその些細な違いに気づくと笑顔で返事をした。
【E-5 ジャングル /一日目 黎明】
【神崎直@LIAR GAME】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 懐中電灯 支給品1〜3(本人確認済み)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:殺し合いを止めるため、一人でも多く仲間を増やす
2:人の見極めは慎重にする
【雷電@魁!男塾】
【装備】:無敵鉄甲@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康
【思考・行動】
1:直の手助けをし、外敵から彼女を護る
2:人の見極めは直に一任するものの、自身も警戒は怠らない
◆
「痛たた……やっぱり縮地を使うにはまだ無理があるよなあこりゃ」
宗次郎は最初に自分の休んでいた場所まで戻ると、そこに放置していた自分のもう一つの支給品である医療箱を開いた。
とはいえこれが本当に自分だけに配られたものなのか、それとも食料などのように全員に配られている基本的なものなのかは宗次郎には判断つかなかったが、まああるに越したことはない。ありがたく使わせてもらうとしよう。
幸い弾は貫通していたため、手当てにさほど手間はかからない。
袴をめくり負傷した右足を露にすると、包帯でまかれたところが血に赤く染まっていた。
普通に走る程度なら……それでも常人に比べればはるかに速いのだが……まだ支障はないかと思ったのだが、この調子では縮地を扱えるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。
少なくとも、傷口が塞がるまでは。
「安静にしてろってことかな? もちろんそんなつもりはないんだけど」
それにしても、さきほどの女性……神崎直はとんだ見込み違いだった。
昔の自分と同じ、弱い存在だとしか思っていなかったのに、最後の最後で立派にこちらに牙を剥いてみせた。
彼女は自分とは違う存在なんだと気づいた時、落胆と同時に……どこか、羨望のようなものを抱いている自分がいたことを宗次郎は知っていた。
とはいえ、精神的にいくら強かろうとも実際に力がなければ何の意味もないのだが。
「まあ、どうせ長くは生きられないでしょうけど頑張ってくださいね……神崎さん」
あの女の人が雷電という『力』を手に入れて、果たしてどこまでやれるのか。
さして興味があるわけでもないが、とりあえず宗次郎は直へと激励の言葉を呟いた。
【E-6 南・ジャングル / 一日目 黎明】
【瀬田宗次郎@るろうに剣心】
【装備】:クナイ@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式 クナイ×19@るろうに剣心 チョッパーの医療セット@ONE PIECE
【状態】:右足負傷(応急手当て済み)
【思考・行動】
1:包帯を貼り変える
2:弱肉強食の言葉に従い弱い者を殺す。
投下終了です。
転載してくれた方、本当にありがとうございました。
GJ!
転載したかったが俺携帯なもんでスミマセン……
直は耐えられなくなって発狂するかと思いきや覚醒したかー
にしてもこんな脱出に対する明確な目的をもって仲間を増やそうとする奴は初めて見た。
改めてGJでした!
直イイヨイイヨー!
あっさり殺られるかと思ってたら自分の意志を見せた上
脱出プランまで立てるとは…
超乙でした!
投下乙です
これはまた斬新な脱出方法ですね
直も雷電もかっこいいし、このコンビには頑張ってほしいな
マリ、ララ、海坊主投下します
深夜の街中に大男を引き摺る全裸の少女がいた。
傍から見れば暴行を受けそうになった少女が撃退に成功し、交番に運ぼうとしてるかのような光景だ。
「うんしょ……引き摺っちゃってるけど、大丈夫だよね」
結局ララは襲ってきたこの男をどこかの民家にでも寝かせておくことに決めた。
殺そうとしてたのであれば素手ではなく持っていた剣を使うだろう。
もしかしたらよろしくない取引を持ち込むつもりだったのかもしれなかったが、そこは持ち前のポジティブさと勘で「きっと大丈夫」と判断したのだ。
一応パワーじゃ負けないし、武装は外しておけば起きぬけに襲われはしないだろう。
「それにしてもペケもいなくなっちゃってるなんてなぁ。
この人を寝かせてあげたらそこのお家で洋服借りなくちゃね」
それとももしかしたらこの荷物のなかに入ってるのかも、と調べようとしたララがふと顔を上げ、向かおうとしていた家の前に女の子がいるのに気づいた。
年の頃は蜜柑よりも少し上くらいだろうか。ツギハギだらけのクマのぬいぐるみを持っている。
金髪のツインテールと黒い衣装から咄嗟に友人の殺し屋かと思ったものの、冷たい瞳と眼があった瞬間に他人だと気づく。
時々冷ややかな視線を(主にリトなどに)向けることがある彼女だがあそこまでの威圧的な視線を感じることは無かった。始めて遭遇した時のものでさえもう少し温かみがあっただろう。
だがそこはララである。その辺を深く考えずに少女に声を掛けることにした。
「こんばんわー! 私、ララ――」
友好的に片手を上げたララの目の前に、自己紹介を皆まで待たずにクマのぬいぐるみが飛んでくる。
そのまま振り下ろされる腕をすんでのところで避けたララは少し相手の様子がおかしいことに気づいた。
それでもポジティブな考えを捨てないララはてっきり彼女がいきなり殺し合いに巻き込まれ怯えてるものだと思ったらしい。
今度は説得しようと手を伸ばすがクマの攻撃によって遮られる。
「マリ……貴女とは馴れ合うつもりは無いの」
ララが何か言わないうちに少女はそれだけ言うと更にクマに指示を出す。ここに来てララはようやくあっちが殺る気であると理解したようだった。
支援
(えーっと、どうしよう!? さすがにこの人を抱えて戦えないし、この人を見捨てるわけにもいかないし……)
男を抱えつつクマの攻撃を避け続ける。思ったよりもクマの動きは素早く、しかも背後から少女が的確な指示を出しているため攻撃自体が正確であるため攻撃に転じることが不可能なのだ。
「そうだ! さっきこの荷物に入ってたカードで!」
天命を受けたかのように顔を輝かせたララはクマの攻撃をやりすごしつつバックの中から三枚のカードを取り出す。
(あの子さっき、自分のことマリって言ってたよね? それなら……)
ララはその内の一枚を指で押し出しながら声を上げた。
「えーと、ごめんね。……左遷、使用! 対象、マリ!」
直後、カードから何かが飛び出したかと思うとクマごとマリと名乗った少女を包んだ。
そしてそのまま光はマリとクマを連れてどこかへ飛んで行ってしまった。
「ふぅ、危機一髪。でもあの子、何で襲ってきたのかなー?」
飛んで行った少女のことを、襲われておきながら気にかけていたララだったがそのことは後で考えることにしたようだった。
何はともあれとララは少女が立っていた家に男を運び込み始めた。
ちなみに先ほど使用したカードが消失しまっていたことには気づいていなかった。
【A-6 民家 / 一日目 黎明】
【伊集院隼人@CITY HUNTER】
【装備】:逆刃刀・真打
【所持品】:支給品一式 未確認支給品0〜2
【状態】:健康 気絶中
【思考・行動】
1.気絶中に付き思考停止
【ララ・サタリン・デビルーク@To LOVEる】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 グリードアイランドのスペルカード(反射、堅牢)
未確認支給品0〜2
【状態】:健康 全裸
【思考・行動】
1.とりあえずこの人を運んで、服を探さないと
2.飛ばしちゃった女の子(マリ)が気になる
3.結城梨斗、西連寺春菜と合流
一方、思わぬ反撃に会った人形使いの少女――マリこと、マリオン・ファウナは左遷の効果によりどこかの道路上まで飛ばされていた。
一体あの攻撃は何だったのだろうかと頭をひねる。ララと名乗っていたあの女からは巫力は感じなかった。
だとすればあのカード自体の能力だろうか。
地図によれば、前に小さく見える神社からしてここはE-4。
さっきの街が中央のものなら大して離れてはいない。
再びあの二人を始末すべく、マリは北の街へ向けて歩き始めた。
――が、悲しいかな。先ほどまで彼女がいた街は北東の街。
中央の街で二人を見つられるはずもないのだった。
【E-4 道路/ 一日目 黎明】
【マリオン・ファウナ@シャーマンキング】
【装備】:クマシー@ONEPIECE(OS・チャック)
【所持品】:支給品一式 未確認支給品0〜2
【状態】:健康】少し混乱
【思考・行動】
基本:ハオ以外の参加者を殺害してハオを生還させるか、
出来ればワポルも殺害してハオと一緒に生還
1.ララと男を殺害すべく北の街を探す。カードに警戒する。
3.いつもの人形を取り戻したい
【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER】
グリードアイランドの島で使われている魔法カード。
使用するときは「(カード名)、使用!対象、(対象者の名前)」を
叫ぶことで発動する。カードによって様々な効果がある。
必ずしも正式名称である必要は無い模様。(偽名でも効く?)
左遷(レルゲイト):対象者をこの島のどこかへ飛ばす。
反射(リフレクション):使用してから30分、他の支給品による攻撃を反射することが出来る。
堅牢(プリズン):支給品を指定して使用すると、その支給品は18時間破壊されなくなる。
また他の人物の手に渡ってもすぐに自分のデイパックに戻ってくる。
【クマシー@ONEPIECE】
ペローナが仕えていたゾンビの一人(一匹)?
当ロワでは1mほどのサイズになっており、三日は腐らないよう防腐加工がされてある。
投下終了です。マリって思ったより出番が少ないから書きにくいですね…
投下乙です!
ララはなんとかスペルカードで危機を切り抜けたか
海坊主さん起きてくださいw
マリオンは、クマシーにオーバーソウルか。地味に強敵?
奉仕マーダーはいなかったので、活躍に期待ですね
カードはまあいいとしてクマシーが支給されるとは思わなんだw
一応自分の意思はないものとみていいんだよな?
てか海坊主、起きろw
こんばんは、サスケの作者です。
約一日様子を見てたのですが、大体の意見が
・次に繋ぎ辛い
・サスケも2部からの参加にするべきなのでは?
といった感じのようです。
更に言わせて貰えば、次に繋ぎ辛いといった人の中にはアニロワのラッドみんになる事を危惧されている方が割りといらっしゃるようですね。
で、それに関してなんですが。
もう既に指摘されてますけど、ウェザーの記憶ディスクはあくまでもビデオのようなものでありサスケの人格に直接影響を及ぼしたりはしません。
それにウェザーの記憶に関しては私が一通り書いたので、後からはスルーしてもらっても構いません。
他にここがあるから繋ぎにくいといった箇所があったら指摘してください。
空気が今一読めてないせいで本当に自覚が無いんですorz
次にサスケの参戦時期ですが、
これは只単に、二部サスケは何考えてるか分かりづらいからといった理由です。
私見ですが、二部サスケだと人間味が薄いように見えましたんで……
まぁ、これは個人の好みですから修正派が多いなら修正します。
で、SS自体の破棄に関してですが。
この辺はつい最近にやってしまったことなので、ある程度意見がまとまるまでは様子見させていただきます。
どちらも私の未熟さ。
更に言えば、記憶に関してはジョジョを未読の方への配慮の足りなさが招いた結果です。
ジャンプロワ全体に迷惑をかけてしまった事を深くお詫びさせていただきます。
>直の人
おおっ!直頑張れと応援したくなる対主催だ
登場話はどうなることかと思ったけど。
良いボディガードもゲットで期待できるw
宗次郎……。
キャラの気持ちが伝わってきた。好きだwGJ
>マリの人
海坊主寝てんのかよ!w
ララに感謝してもしきれないな。気絶はララのせいなんだけどw
マリちゃんキター!
何気にこのロワ初の奉仕マーダー?
オーバーソウルはそこか!wGJ
すみません、追記です
サスケの戦力不足を不安に思う方がいられたようですが
サスケに支給された、ウェザー・リポートのディスクは
・猛毒のカエルを降らせる
・30`先の車を豪雨で停止させた
・一メートル先も見えなくなる濃霧を発生させる
・サブリミナルで周囲の人間をカタツムリに変える
・純粋酸素を集めて、敵を中毒にさせるect
といった非常に強力な能力がありますし、サスケの忍術と絡める事も十分に可能なので
サスケらしさを失わずに、かつ戦力の強化が出来ると思います。
もちろん制限は必要ですが、戦力としてはかなり強力だと思いますがどうでしょう?
>gyy氏
報告乙です。
自分はそのままで通しで良いと思います。
サスケの参戦時期は次の書き手任せにしてみては?
戦力は十分ですねw
忍者と濃霧は相性良すぎだろ……
間違いは誰にでもあることなので気にしないでください。
また氏がSSを書いてくれることを楽しみにしています。
完成したのでこれから投下します。
宜しければ支援してくださるととても助かります。
支援
「もう一回死にな、負け犬」
「口の減らねえ木乃伊だ。二度と喋れないよう、地獄に叩き返してやる」
志々雄真実とロロノア・ゾロ。対峙する二人の間に、凝縮された剣気が膨らんでいく。
空気がびりびりと音を立てて痺れていた。狭い民家がより狭くなったような息苦しささえ感じられた。
立野広と天条院沙姫は、その緊迫感に圧倒され、声もなくただの彫像と化して動かなかった。
広にしても沙姫にしても剣の心得などないに等しかったが、
それでも自分達が動いた瞬間になにかが起こるのではないかという予感めいたものはあった。
志々雄とゾロから発せられる殺気はそれほどあからさまなものだった。
広はゆっくりと、睨み合う二人に障りないように、隣に佇立する沙姫のことを見上げた。
沙姫は綺麗な顔を歪ませて、それでも美しさだけはなんとか保ちながら、
持ち前のプライドの高さで恐怖に辛うじて耐えている。
「沙姫姉ちゃん……」
耳に残らないくらい小さな声で広はそっと囁いた。
「ヤバいよ、あいつら本気でやり合うつもりみたいだ」
「そうみたいですわね……」
言ってるうちにも空気はどんどん張りつめていき、一触即発の言葉通り、
指で触れれば破裂する薄いガラスの危うさを持ちはじめている。
支援
「殺す……のかな……」
「…………」
沙姫はなにも言わなかったが、その沈黙が肯定を示していた。
ここで人が死ぬ――。目の前で人が人を殺す――。
広達に突きつけられた現実はひどく残酷だった。
「俺、やだよ……。人が死ぬとこなんて、もう見たくないよ」
そこには涙ぐむ幼い少年の姿があった。
恩師に死に逝かれ、人の死の寂しさや儚さを身に徹して知っている少年の嘆きは、切実で悲痛なものだった。
「ここにいたら、俺達もヤバいかもしれない」
「そうかもしれませんわね……」
「……沙姫姉ちゃんは逃げた方がいいよ」
広は涙を拭い、沙姫を真剣な眼差しで見つめた。
沙姫は驚いた表情でその視線を受け止めている。
「なにを仰ってるの? 私に逃げろですって?
なら広、そういう貴方はどうするおつもりなのですか?」
「俺は……俺は逃げるわけにはいかないよ。あの怪我してる奴に助けられたってのに、
あいつに木乃伊男のこと任せたまま俺が行けるわけないだろ。俺もあいつと一緒に戦う」
広は志々雄を睨み付けて強がった。
腕は痛み、声は上擦り、膝は笑っていたが、それでも眼だけはしっかりと志々雄を射抜いていた。
死んだぬーべーが安心できるように強くあらなければと、広は胸の内で自分を叱咤する。
剣気を張ったままのゾロが口を開いた。
支援
「さっきからなにゴチャゴチャ言ってやがる。ヒロシ、お前がいると足手まといになるだけだ。
その女を連れてとっとと失せろ。こんな木乃伊くらい、俺一人で充分だ」
「言ってくれるじゃねえか。クククッ……志々雄真実も安く見られたもんだなあ。
もっとも、三人がかりだって俺は一向に構わねえんだぜ?」
志々雄は白刃を肩に担いで薄く笑った。
志々雄が見せた一瞬の隙。刹那の余裕――。
薄いガラスの層がたわむ。
ゾロはすかさず構えをとった。
「無刀流――――」
腰を落として両腕を広げるゾロ。
極限まで高められていた剣気がその瞬間に一気に破砕した。
広や沙姫に口を挟む暇はなかった。
「――――龍巻き!!」
轟という唸りを上げて、ゾロの前に風が逆巻く。同時に、その風が志々雄に襲い掛かった。
風は竜巻となり、そこらに散っていた家具や小物らを志々雄ごと飲み込んだ。
烈風の渦は飲んだものをその胎内で次々に粉砕していく。
部屋の中は正に嵐の通過した乱雑さを極めた。
141 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 20:06:12 ID:lxHfHfAF
しえん
「今だ、行け、ヒロシ!!」
ゾロが大声を張ると、広の身体は呪縛が解かれたように軽くなった。
広は命ぜられるがまま、まだ呆然とする沙姫の手を取って引いた。
「沙姫姉ちゃん!」
動こうとしない沙姫の手を無理矢理引っ張り、玄関へと走る。
「大したことねえんだな、世界一の剣豪ってのもよ」
勢いの弱りはじめた竜巻の中から志々雄の声がした気が、広はけして振り返らなかった。
広と沙姫はゾロ達を残して民家を飛び出した。
◆ ◆ ◆
「なんで逃がしちまうんだよ。一人ずつ殺るのが面倒になるだけだろうが」
無刀であったからとはいえ、ゾロの剣技『龍巻き』を耐え抜いた志々雄は、
まるで柔らかなそよ風に撫でられたかの如く平然としていた。
共に巻き込まれた椅子やテーブルがただの木片と化しているのに、
龍巻きの中心にいたはずの志々雄だけが僅かに衣服を乱した他はかすり傷すら負っていなかった。
これはいよいよ本物の木乃伊だと、ゾロは思った。
「まあいいじゃねえか。俺がお前の相手してやるってんだからよ」
「大層な自信じゃねえか。さすがは自称世界一ってわけか。
だがよ、一つ言っとくが、俺は相当強ええぞ」
「安心しろ。俺はもっと強ええんだ」
「ハッハッハ! そいつは面白れえ! 願ったり叶ったりだぜ。
――んじゃ、そろそろおっぱじめるとするか?」
志々雄は白刃を振った。
刃は暗い部屋の中にもかかわらず、窓から射し込む淡い月明かりを映して、
妖しく、そして艶かしく煌めいた。
鞭のようなしなやかさを持つこの刀は、さしずめ白鱗の大蛇といったところだ。
「ちょっと待て」
ゾロは今にも躍り掛からんとする志々雄に向かって片手を翳した。
支援
145 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 20:08:31 ID:lxHfHfAF
しえん
「おいおい、今更勘弁しろなんて言うんじゃねえだろうな」
「いや、こいつを巻かないと、いまいち気合いが入らねえんだ」
そう言って、ゾロは腕に巻かれた黒手拭いを解き、それを固く頭に締めた。
目深に巻いた手拭いは、ゾロがそれだけ本気になったという証だった。
「これでいい。さあ、いっちょやるか、木乃伊男さんよお――」
◆ ◆ ◆
支援
「どうして!? なぜ逃げ出したんですの?
貴方、あの方と一緒に戦うって言ってたんじゃなかったんですの?」
夜気は冷たく澄んでいた。
群青の空には数多の星が白い穴を穿っており、月は丸く照っていた。
地上の木々は蕭々と鳴っていたし、遠く黒いシルエットを型どった城は荘厳に見えた。
穏やかで、とても厳かな夜だった。
沙姫はその深い群青の空の底で、自分を表に連れ出した広を責めた。
あのままではゾロは志々雄に殺されてしまうことだろう。
ゾロがどれほど強かろうと、どれほど勇敢であろうと、どれほど戦い慣れしていようと、
武器も持たない傷ついた身体であんな化け物に勝てる道理はなかった。
例え一時の付き合いといえど、自分達を助けてくれた人が殺されるのはいい気持ちがしない。
自分がいたところでなにができたわけでもないし、実際足手まといになっていたかもしれないが、
それでも逃げ出すような卑怯なことだけはしたくなかった。
なのに、広は背中を見せた。戦うと言っていたくせに。
小学生なんだから怯えたところで無理もないと思っても、沙姫は広の行動が許せなかった。
「私、中に戻りますわ。戻って無用な争いを止めてきます」
「駄目だ、それは絶対駄目だ」
「いいえ、駄目じゃありません。私があの人達を止めてみせます」
「だから駄目だって! 沙姫姉ちゃんが行ったところでどうにもなんないよ」
「心配してくださってるの? 安心なさい、私の美貌にかかれば、あの方達だって必ず言うことを聞くはずですわ」
「それはもう無理だったじゃんか」
「そ、それは……。ともかく、広はここにいなさい。私は中に戻ります」
「駄目だ。行くのは……行くのは俺の役目だから」
広はそう言って、出てきたばかりの民家に引き返していった。
支援
「沙姫姉ちゃんはそこで待っててくれよ。危ないから動いちゃ駄目だからね」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。貴方一人に戻らせるわけないでしょう。私も行きます」
沙姫は慌ててあとを追おうとした。
だがそれを立ち止まった広が阻んだ。
「沙姫姉ちゃん、頼むよ。俺の言うことを聞いてくれ」
「でも……」
「俺なら平気だから。本当に、こういうのには慣れてるんだ。
大丈夫、パパッと木乃伊を追っ払って、絶対あの人連れて戻ってくるから」
「広……」
最初から広は自分を置いて戻るつもりだった。それを知って沙姫は胸が詰まった。
まだ年端も行かない子供が自分のことを心配してくれている。
美しいことはなんて罪なのだろうと、沙姫は改めて感じた。
「そこまで私のことを……」
「別に沙姫姉ちゃんのためだけってわけでもないけどな。
ぬーべーなら沙姫姉ちゃんのこと守っただろうし、怪我してる奴を見捨てたりはしないから。
だから俺もぬーべーと同じことをするだけだ」
自分より年下の少年が頼もしく見えた。
沙姫は自分も駆け出したくなる衝動を押さえて、小さな背中を見送った。
◆ ◆ ◆
151 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 20:09:58 ID:lxHfHfAF
しえん
支援
闇に白蛇が蠢いている。
蛇が走るたびに夜目にも鮮やかな鮮血が虚空に散った。
「ガッカリだな、もうちょっと歯応えがあるかと思ったんだが」
膾に切られ血だるまとなったゾロに、志々雄はため息混じりに吐き捨てた。
自ら再戦を臨んできたゾロにある程度の期待を持っていた志々雄だったが、
一方的とも言える展開にいささか飽きはじめている。
「チッ……刀さえあれば、こんな奴……」
「なんだ、もう言い訳か? 世界一の名が聞いて呆れるぜ」
「クソ……」
ゾロが顔をしかめるのを、志々雄は薄く笑って眺めている。
今なら簡単にとどめをさせるはずなのに、志々雄は何故かそうしようとはしなかった。
「まあ、テメエの気概は買ってやる。女子供を先に逃がし、尚且つ獲物もなしに一度は負けた俺に挑んできんだ。
大したもんだ。我が身可愛さを思えば、なかなかできることじゃねえよな。
……どうだ、俺と一緒に国取りでもやらねえか? お前なら十本刀――いや、十一本になるのか。
とにかく、そいつに加えてやってもいい。完全なる勝利ってもんを間近で味あわせてやれるぞ」
支援
155 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 20:11:29 ID:lxHfHfAF
しえん
志々雄は半ば本気で言っている。
無論、半分はゾロのような反骨心の塊が言いなりになるとは思っていなかった。
それでも言うだけの価値はあると、志々雄はゾロを評価した。
「生憎だが、俺はもう売約済みだ。国取りだかなんだか知らんが、そんなことやってる暇はねえ。
海賊王になるって言ってる馬鹿な男に付き合うだけで手一杯なんだ」
案の定の答えに、志々雄は満足気に頷いた。
「ククッ。そう言うと思ったぜ。――じゃあ、ここらで終いにするか」
もうこれ以上ゾロを生かしておく理由はない。
所詮この世は弱肉強食。強き者が残り、弱き者が死ぬ。
ゾロもまた食われる運命にあったということなのだろう。
志々雄が刀を八相に構えた。ゾロは片膝をついたまま動かなかった。
「お前は刀を持ってれば俺に勝てると言ったな? ククッ、そいつは違うぞ。
いいか、最期に教えといてやる。刀を持ち合わせなかったこと自体がお前の実力なんだよ。
本当に強い奴は、望むものを自ずと引き寄せるもんだ。
それができなかったということは、お前がその程度でしかなかったってっことなんだよ」
八相から大上段に構えを移し、志々雄は刀を振り被った。
◆ ◆ ◆
広が駆けつけると、既に決着がつきかけているらしかった。
血まみれで床に膝を着くゾロ。そして余裕さえ浮かべて刀を取る志々雄。
誰の眼にも結果の行方は見えたようなものだった。
「南無大慈大悲救苦救難……!」
頭でじっくり考えてる時間はない。
広はさっきは唱えられなかった経を無意識に口にし、二人が向かい合う部屋に飛び込んだ。
「悪霊退散!!」
と同時に、なんでも斬れるという謳い文句のカプセルを、志々雄の足下に思いきり投げつける。
無我夢中の行動だった。それでどうにかなるとは思ってもいなかった。
だがどうだろうか。さっきまで擦っても叩いてもどうにもならなかった小指ほどのカプセルが、
落下するや否や手榴弾よろしく軽い爆発音を立てて蒙々たる煙を巻き上げたではないか。
爆発と共に榴弾を飛ばすことこそなかったが、代わりに、中から馬鹿長い大剣が現れた。
その大剣は本当に長く太く、切っ先は壁を突き破り外にまで伸びていた。
「な、なんだ……?」
投げた当の広も困惑したが、突然そんなものを足下に投げられた志々雄も、目の前に剣が湧いて出たゾロも、
一瞬なにが起こったのかと声を失った。
投げるときにスイッチのようなものを押したのがよかったのか、
それとも見よう見まねの経が霊力を伴ってカプセルの力を発揮させてくれたのか、
はたまた死せるぬーべーが力を貸してくれたのかは定かでなかったが、
とにかく今は感慨に耽る余裕はなく、この好機を逃すまいと広は全身を口にして叫んでいた。
支援
159 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 20:12:55 ID:lxHfHfAF
支援
支援
「それ使って!」
広が言うより先に、ゾロはもう柄を握っていた。
「ありがてえ」
ゾロは水を得た魚のように嬉々として笑顔を見せた。
だが大剣は当然のことながら重いらしく、そう簡単には持ち上がらない。
ましてゾロは致命傷こそ負っていないものの全身には志々雄によってつけられた傷が無数に走っている。
傷が負担となっているのは言うまでもなかった。
「とんだ邪魔が入いっちまったな」
志々雄は興が醒めたと言わんばかりに刀を引いた。
ゾロのことは捨て置いて、まずは広に向き直る。
広はそれだけで腰が砕けそうになった。明らかに志々雄が怒っているのがわかったからだ。
そして広はその志々雄の怒りに対する術を持たなかった。
「小僧、引き返してきたことをあの世で後悔しても遅えんだぞ」
志々雄が一歩ずつ広に近寄ってくる。
近づくごとに圧力で胃が押さえつけられるようだった。
広は込み上げる吐き気を懸命に堪え、なんとか後ろにだけは下がるまいと下半身に力を入れた。
だが、広の眼に映る志々雄は強大だった。
いくら踏ん張ろうとも、身体が志々雄の近づくのを拒絶していた。
目眩を起こしそうな冷気が背中へ忍び寄ってくる。
支援
163 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 20:14:29 ID:lxHfHfAF
支援
「お、お前なんか怖くないぞ! お前なんか……お前なんか……」
語尾が小さくなる。
どうにもならないプレッシャーに大袈裟なぐらいの震えが起き、
自分でも気付かないうちに小便を漏らしていた。
いつものように二階から垂れる心地よさなど感じられない。
股を濡らして感じるものは絶対的な恐怖と、完膚なきまでの敗北感――。
それはこれまでぬーべーと戦ったどの妖怪よりリアルな恐怖だった。
「う……うわあぁぁぁ!!」
広はじっとしていることができず、奇声を発しながら志々雄に突っ込んだ。
勝算などあるわけがない。ただ怖いから動かずにいられなかっただけだった。
「身のほども知らねえのか……弱者め!」
無謀な突進を試みる中、自分に向けて白い蛇が伸びてくるのを、広は瞬きもせず見ていた。
それは生き物ではなく、紛れもない鋼の刃だった。
◆ ◆ ◆
「ヒロシ!!」
ゾロは志々雄が広の首を薙ぐのをはっきりと見た。
広の細い首から噴水のように血潮が吹いてゆく。
それからゆっくりと、まるでスローモーションの速さで広が倒れ込むまで、
ゾロはけして視線を逸らさなかった。
「ぬぅ……ぐぐぐっ……ふんぬ……」
剣は重たかった。身体中の傷が疼いた。
だがもうそんなことは言ってられない。広のお陰で得物を手にすることができたのだ。
ゾロは剣を握る腕に満身の力を込めた。
二の腕と肩の筋肉が隆々と盛り上がり、脈打つ血管が浮き出る。
破れた皮膚のそこかしこから血が溢れ出た。
「強い者が生き残り、弱い者は消えていく。それが自然の摂理ってやつだ。
――なあ、そうだろ? 剣豪さんよお」
転がる広をまるで虫けらのように一蹴りし、志々雄はゾロに言った。
広は一切動かなかった。
志々雄の足下にはぬめりを帯びた赤い海が広がっていた。
166 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 20:15:54 ID:lxHfHfAF
私怨
「……っるせえ!!」
その瞬間、なでしこの剣が民家の壁を切り裂きながら志々雄に牙を剥いた。
ゾロが遠心力を利用してなでしこの剣をして振り回したのだ。
剣は刃に当たるものすべてを裂いていく。
だが、肝心の志々雄だけは捕らえられない。
凄まじい刃風を引きながら、剣は誰もいない空を舞った。
「この程度か……!?」
「三十六煩悩鳳!!」
「なっ……」
跳びすさる志々雄を、ゾロの三十六煩悩鳳が追い討つ。
剛刀から繰り出された三十六煩悩鳳は、唸りを立てて志々雄に直撃した。
志々雄はその勢いに押されて、なでしこの剣が斬った壁を突き抜けて外に吹き飛んだ。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
初戦での傷。二戦目に受けた傷。重く扱いにくい大剣。
ゾロの疲労は激しかった。
今にも倒れそうだった。それでもゾロは倒れなかった。
広に歩み寄ると、そのぐったりとした身体をそっと抱き起こす。
「ヒロシ……」
既に息はなかった。
『ぬーべー』と叫んでるかのような口の形を残して、広から生が抜け落ちていた。
ゾロは開いたままで光を失っている広の瞳を静かに閉じてやった。
「馬鹿野郎が……」
歯を食いしばってゾロが言う。
しかし言葉に蔑みの色はなかった。
「……でも、お前のお陰であの木乃伊を倒すことができたんだ。
ありがとな、ヒロシ。充分強かったぞ、お前」
ゾロは小さな勇士を讃えた。
【立野広@地獄先生ぬーべー 死亡】
◆ ◆ ◆
169 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 20:17:41 ID:lxHfHfAF
私怨
民家から数メートル離れた場所で、志々雄は倒れていた。
意識はある。しかしダメージは大きかった。
初太刀をかわしたことで満足し、そのあとの攻撃への対処に遅れたのは己の怠慢だった。
もし受け流すか、或いはすぐさま反撃の体制を取っていたならば、こうはならなかったろう。
「まだ身体が鈍ってやがるのか……。まったく、ザマぁねえぜ」
志々雄は自嘲気味に呟いた。それから手を胸へと持っていく。
「……肋三本ってところかな」
それが代償だった。
痛みは鋭い。呼吸をするたびに肺腑を抉られるようだった。
だが全身を業火に焼かれることを思えば、この程度たいしたことはない。
志々雄はゆっくりと立ち上がった。
「禍根は絶たなきゃならねえな」
まだ身体が動くことを確かめると、自分が開けた穴に足を向けた。
しかし、志々雄が再び民家に足を踏み入れることはなかった。
支援
支援
さるさん規制らしい
したらばに投下来てるのでPCの人代理投下頼む
176 :
小さな勇士:2008/07/10(木) 20:28:13 ID:wy6lXhIA
突然ミシミシと音を上げて、民家が崩れだしたからだった。
一旦崩れるとそこからは早く、自身の重みを支えきれなくなった民家はあっという間に潰れた。
辺りは粉を撒いたような埃に覆われ、自分の足の先すら見えない。
おそらく壁を断つときに柱の何本かも一緒に斬ってしまったのだろう。
そして壁に穴が開いたことで家全体の比重が狂った。
支えを失った建物が瓦解するのは呆気ないほど簡単だった。
志々雄はしばらく砂塵の中にいたが、やがてくるりと踵を返した。
「生きてれば、いずれまたな」
志々雄はそう言って、その場をあとにした。
【D-3 何処かの民家/一日目 深夜】
【志々雄真実@るろうに剣心】
【装備】:薄刃の太刀@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式、不明支給品2個本人確認済み
【状態】:肋骨数本の骨折
【思考・行動】
1:一介の剣士として殺し合いを楽しむ。
2:ゾロが生きていれば再戦を果たす。
◆ ◆ ◆
支援
178 :
小さな勇士:2008/07/10(木) 20:29:49 ID:wy6lXhIA
沙姫はおろおろするばかりだった。
広が民家に戻って数分が経つ。
まだほんの数分に過ぎなかったが、外で待たされる身としてはそれが数十分にも数時間にも感じられた。
行かせるべきではなかった。やはり自分が行くべきだったと、後悔の念が沙姫の中で渦巻く。
なんと言っても広はまだ小学生なのだ。
そんな子供を一人にして、なにかあってからでは遅いのである。
広がどう拒もうと、やはり自分が行けばよかった。
そうすれば少なくともこんなところでやきもきしなくて済んだわけだ。
「どうしましょう……」
玄関に手を掛けて一人悩む。
もしかしたらもう広達が出てくるかもしれない。でも、出てこないかもしれない。
行くのは怖い。この扉の向こうは魔窟に続く深淵のようにさえ思えた。
この美しさでは、魔窟に住まう異形の者達をも魅了してしまうだろう。
沙姫は身の危険と共に、自分の美の及ぼす影響についても恐ろしくなった。
沙姫が逡巡していると、前触れもなく裏手から耳慣れぬ音が上がった。
けたたましいそれは、なにかを引き摺るようにも引き裂くようにも聞こえた。
そして続けざまに今度は破壊音が裏手からした。
支援
180 :
小さな勇士:2008/07/10(木) 20:31:03 ID:wy6lXhIA
「なん……ですの……」
沙姫は益々躊躇った。
戸を開け中に入るか、裏へ回ってみるか。それとも大人しくここで待っているか。
じりじりとした時間が過ぎる。掌にはいつの間にかべっとりと汗を掻いていた。
そのうちに沙姫は異変に気付く。
どうも様子がおかしい――。そう思った途端に家が崩れだした。
まるで映画でも観ているようだった。一つの建物が腹に響く音を立てて崩れ落ちていく。
あまりの唐突さと迫力に、沙姫は鑪を踏むようにして後ろに尻餅を突いた。
幸い、沙姫の方へ建物が倒れることも、屋根の一部が落下してくることもなかったが、
沙姫は頭の先から足の先まですっかり埃にまみれてしまった。
灰を被ったようになっても、沙姫の美しさは損なわれたりはしなかった。
「え……? どうなってるんですの……? 広……広は……?」
眼も開けられぬ粉煙の中、家が建っていたところに向かって呆然とする。
なにがどうなってしまったのか、何故急に崩れたのか、沙姫には見当もつかなかった。
181 :
小さな勇士:2008/07/10(木) 20:31:35 ID:wy6lXhIA
「広……広……広……。返事をなさい、ひろしー!!」
瓦礫を一つずつどかして、沙姫は埃に噎せながら少年の名を呼ぶ。
耳はさっきの轟音で痛いくらいに鳴っていた。
どこかで「沙姫姉ちゃん、助けて」と言われてるような気がしてならなかった。
沙姫は真珠のような爪が剥がれるのも厭わず、瓦礫を掘り返していった。
「待ってなさい、広。今私が助けてみせます……!」
沙姫は必死だった。
「――――すまねえ、ヒロシならここだ」
声が聞こえたのは、沙姫が掘り返しているところよりずっと離れたところだった。
沙姫がはっとなって振り向くと、ボロ雑巾になったゾロが広を抱いていた。
ゾロの腕に抱かれた広は、物言わなくなっていた。
支援
183 :
小さな勇士:2008/07/10(木) 20:33:11 ID:wy6lXhIA
【D-3 何処かの民家/一日目 深夜】
【天条院沙姫@ToLOVEる】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品本人未確認
【状態】:健康
【思考・行動】
1:ゾロを介抱し、何があったのか事情を訊く。
2:警察に連絡する、救急車を呼ぶ。
3:屋敷に帰る。
【ロロノア・ゾロ@ワンピース】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品3個本人確認済み(刀剣類はありません)
【状態】:全身数十箇所に及ぶ裂傷 極度の疲労
【思考・行動】
1:身体を休め、傷を癒す。
2:仲間を探す。
※ゾロは志々雄を倒したと思っています。
※広の支給品は広の死体と一緒(ゾロの腕の中)にあります。
※なでしこの剣は瓦礫の下に埋まっています。
184 :
小さな勇士:2008/07/10(木) 20:34:37 ID:wy6lXhIA
たくさんの支援ありがとうございました。
さるさん規制のため本スレではなく、こちらからのお礼で失礼させていただきます。
投下乙!代理の人も乙!
広ーー!お前は立派だった!
タイトルどおりの小さな勇士となったなぁ……南無
ゾロには是非、志々雄にリベンジしてもらいたいが、すこしきついか?
沙姫とゾロ…仲良くやれるかどうか、なんだか不安
志々雄は肋にダメージを負ったけど、まだまだ元気そうだ
薄刃の太刀は結構厄介ですな
2人の剣士のバトルも中々でした
連続になってしまいますが、修正したSSを本投下開始します
「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」
「いえ、そのような大きな声を出さなくても聞こえますよ、江田島先生。
むしろ、そんな大声を出せばあたりの人に気付かれ」
「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」
「…………はあ」
エリアでいえば、E-5にあたる川の傍の草原。
そこで、2人の男が会話をしていた。
1人は大柄な体躯に、見事なまでに髪のない頭、それでいて精悍な顔つきで立派なひげに和服を着た男。
もう1人は対照的に、端正な顔つきに金髪の優男といった印象の男だった。
大柄な男、江田島平八と青年、玉藻京介が遭遇したのはついさっきのこと。身構えた玉藻に江田島が「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」と叫び、
玉藻が唖然としたところに江田島が自分はこのゲームに乗っていないことを申告。互いに自己紹介を始めたところだった。
……ちなみに、もう江田島は自分の名前を叫んだのだから、さっきの自己紹介は本当は必要なかった、という
ツッコミはしてはいけない。ていうかしても無駄だ。
「私は玉藻京介と言います。童守小学校で教育実習生をしています」
「ほう。教育実習生、ということはお主も将来は教師を目指すものか」
「ええ。今は見習いの身ですが、ね。いつか生徒達に学業を教えたいと思っています。
もっとも……それを叶えるためには、まずここを抜け出さなくてはなりませんが」
「うむ」
江田島はこのゲームに乗るつもりは全くない。
確かに人が生死をかけた戦いで自分を磨くということは知っている。
だが、これはそんなものではない。こんなものではそんなことは望めない、いや望んではいけない。
あのワポルという男はただ楽しみたいだけだ。そのような事は赦せない。
それにあの説明の時を見る限り、明らかに学生が何人か見受けられた。
若者は国の宝。その芽を殺し合わせて絶つなど、断じて赦せん!
「とりあえず、まずは人員を集めましょう。私たちだけではどうしようもありません。
私たちのように、このゲームに抵抗する人間はきっといるはず。その人たちと合流、結託。
それから、この首輪を外す方法なりを模索しましょう」
「うむ。それがよかろう。わしが男塾校長江田島平八である!!」
「それはもういいですから…」
玉藻があきれ果てながら、つっこんだ。
しかし、それはどうやらすこし遅かったらしい。
「ねえ。あんた、すっごい大きな声してるね」
声に2人が振り向くと、そこには白い布だけを羽織った銀髪の少年がいた。
「うむ。わしが「君は何者だい?」ある!!」
江田島の声を玉藻が遮り、少年に問う。
少年はすこし不機嫌な顔になった。
「俺が何者か、かー。……それは俺が一番聞きたいことなんだよ。
俺は自分が何者か分からない。脳細胞がずっと変異を続けててさ、どんどん記憶が失われてくんだ。
どこで生まれたのか、本当の名前がなんなのか、本当の性別も、親も分からないんだ」
「……君は何を言ってるんだ?」
玉藻が少年の奇妙な言動にいぶかしげな顔を見せる。少年はそれを無視して続ける。
「俺は自分が何者か知りたい。その為には、他人と自分を比べてみればいいと思うんだ。そうして自分の正体を探すんだ。
そう、他人の……――とさ」
「?今、何と言―」
次の瞬間、少年は玉藻の目の前まで接近していた。
一気に接近してきた。地を蹴って、ほんの刹那の間に。
(なんという、脚力!まずい、対応が…!)
玉藻が後ろに下がろうとするが、少年はそこで腕を振りかぶり、
玉藻に向かってそれが突き出され―
横からの鉄拳でその腕を防がれた。
「え!?」
「ぬおおおおおおおおお!」
鉄拳の持ち主、江田島が少年の伸ばした腕を殴り飛ばし、殴り飛ばされた腕に吊られて少年も吹き飛ばされる。
が、地面に激突するかと思った時、手を地面につくと、バク転のように体を回転させ、見事に着地した。
着地した少年は、驚いた顔で玉藻の前に出た江田島を見る。
「すげえ……今の力、ただの人間とは思えないよ!あんたもネウロみたいな魔人なの?!」
「魔人……?」
玉藻がその言葉に反応するが、少年はそれを意に介さず、江田島だけを見ている。
「俺のスピードにもついてこれたし……気が変わった。そこのお兄さんにしようかと思ったけど、やっぱあんたにするよ」
少年が身をくぐめるのを確認し、江田島も身を構える。
「玉藻よ。下がっておれ」
「……それがよさそうですね」
玉藻が江田島から距離をとる。この戦いに、自分は邪魔になる。そう悟った。
190 :
参加するカモさん:2008/07/10(木) 21:12:23 ID:lxHfHfAF
支援
少年は喜悦に顔を歪ませ、言った。
「あんたの中身を、見せてくれ」
少年が地を蹴り、江田島に肉薄し腕を突き出す。明らかに細い腕、だがその力がとてつもないということは
既に江田島は先の拳で把握していた。少年の手は握り締められてはおらず、むしろ開かれている。じゃんけんで言えば、
グーではなくパー。ただし指を立て、掴むイメージのパーだ
それに今江田島の目の前でおこる豪速、怪力が備わり、人間に直撃したならば……人間の肉がまるでワニに噛まれた
ようにそがれてしまうに違いない。つまり、あれがどこに当たろうが危険だ。あの腕は、まさしく喰らい付くワニの顎も同然!
「ふん!」
その顎を紙一重でかわし、江田島も鉄拳を打ち出す。だが少年は身軽にそれをジャンプでかわし、今度は怪力の腕を振り下ろす。
江田島はそれを正面から拳で迎え撃つ
江田島の正拳と少年の腕が激突する。少年の開かれた指が江田島の拳に突き刺さる。
華奢な細腕とは思えない力。それが江田島の腕に一気に襲い掛かる。
「凄いなあんた!俺にこんなに対抗できた奴、始めてみた!
あんたみたいな奴の中身を見れば、俺の中身もわかるかもしれない……なあ、何者なんだよあんた!ネウロみたいな魔人?
まあ、後であんたの中身を見れば済む話なんだけどさ!!」
嬉々とした少年がもう片方の腕を空中で江田島に振りかぶる。もう一つのワニの顎が江田島に襲い掛かる。
「わしが何者か、知りたいか……」
「えっ!?」
が、次の瞬間少年の体勢が空中で崩れた。なぜか。
簡単な話。江田島が少年の指の刺さった拳を一気に引いたのだ。
ただ引いただけではない。それはもう恐ろしいまでの速さ。空中で踏ん張るものなどない少年は引っ張られ、
そして江田島に近づかせられる。
「あ、あんた…!まさか、この為に俺の指を……力を抜いてたのか!?」
全力を出して少年をただ吹き飛ばしてしまったらこうはいかない。肉を切らせて骨を絶つ。江田島は少年の力と自分の力が拮抗
するように、腕の力を調整したのだ。最初の手合いで少年の一撃が自分の全力より弱いと察した江田島は、目算でその力を調整、
ぶつかった時に瞬時に微調整をした。
力の調整、それは江田島ほどの男でなければそうそうできない所業である。
結果、少年は江田島に引き寄せられる。その先に待つのは、江田島の片方の鉄拳。
カウンター。こちらに向かう力と逆の力。その2つがぶつかった時、そのダメージは倍増する!
「わしが男塾塾長」
江田島の拳が少年の胴を直撃し
「江田島平八であーーーーーーーーる!!!!」
華奢な少年の体を紙のようにふっ飛ばし、埋まっていた指をも引き剥がし、少年は川の方へと吹っ飛んだ。
50メートルほど吹っ飛んだ少年の体が、無防備に川へと着水した。
やがて大きな水しぶきが上がったのを見て、江田島は安堵する
「あの者……恐ろしい相手であった。だがどうやら精神は童同然。是非わしが正しき道を導いてやりたいところだった……む?」
揺れる水面を見ていた江田島に奇妙なものが見えた
「あれは……何!?」
それはしゃれこうべ。要は、頭蓋骨。それが川の水面をいくつも揺れて動いているのだ。
さっきの少年のもの?いや、それにしては多い。川を漂い流れるいくつもの髑髏。それは果たして地獄のような光景。
百戦錬磨の江田島といえど、気を揺るがさざるを得なかった。
そして、そのわずかな心の隙を……『彼』は見逃さなかった。
「ぐうううう!!」
咄嗟に、地を蹴った江田島。だが、一歩遅かった。その背中を何かが大きく抉った。
江田島はその痛みに耐え、振り向きざまに拳を繰り出すが、彼はそれを軽々とかわした。
江田島の後ろにいた人物、それは当然1人しかいない。
「玉藻……お主……!」
「一気に致命傷を与えるつもりだったのですが……まさか背後の攻撃に気付くとは思いませんでしたよ」
江田島の怒りの視線を受けてなお、さっきまで友好的であった青年、玉藻京介は血の滴る刀、三代鬼徹を平然と構えている。
その表情には不敵な笑みが浮かんでおり、罪の意識はまるで感じられない。
「江田島先生。あなたはどうやら人間の中でもかなり強力な力を持っている方のようだ。
私はこのようなところで死ぬつもりはないのでね。素直に優勝するとしましょう」
「貴様!!」
裏切りに激昂した江田島が玉藻に向かって走り、拳を突き出す。だが、玉藻は先の少年のようにアクロバットではないものの、
身軽にそれでいて華麗にも見えるほどの動きでそれをかわす。
「おや、江田島先生。さっきより拳が鈍っているようですね。やはり背中の傷はそれなりに影響が出たようだ」
「ふん!!」
玉藻の言葉に答えず江田島は蹴りを玉藻に繰り出す。だが、その時背中の傷から痛みが走った。
「ぐ、ぬ…!」
本来の江田島ならば、これくらいの傷はなんてことはない。なにしろマグナムの一撃にすら耐えられる強靭な肉体だ。
だが、ここでは彼の身体能力は著しく弱まっていた。拳の威力。そして体の強靭さ。しかも理由はそれだけではない。
玉藻の使っている三代鬼徹。これは素でも石斧をたやすく切り裂くほどの切れ味があるが、肝心なのはこの刀が『妖刀』である点である。
「足を止めていいのですか?」
「なに?……!?」
すこし後ろに下がった玉藻を見て、江田島の瞳孔が開いた。さっきまでの玉藻とは明らかに違う点があった。
尾だ。玉藻の尻から金色の尾が生えているのだ。
「その尾は……狐か!」
「そう。教えてあげましょう。私は妖狐。古来より人間達に災厄と混乱をもたらしてきた、妖狐・玉藻です」
妖狐。要は、狐の妖怪である。古来より妖狐は400歳を越えると、人化の術を覚え人に化け人に災いをもたらす事を掟としている。
400歳をこえた彼、玉藻もそれに漏れず、完全なる人化の術を完成させるため、立野広の頭蓋骨を求めて童守小学校の教育実習生としてやってきた。
だが、それを鵺野鳴介に阻まれる。
その時の鵺野に興味を抱き、彼に再び術を仕掛けるがそれも突破され、ますます興味を持った。その矢先の出来事がこのゲームだった
先刻、江田島が気をとられた水面の髑髏。あれは、玉藻の仕業だ。妖狐の術の一つ、『幻視の術』。
古来狐は舞い落ちる木の葉で人を化かす、というのはよくある話。だが妖狐の場合は、木の葉だけに留まらない。
動いている物にならばどんな物にでも幻覚を纏わせる事ができる。
さっきの場合、玉藻は少年の着水によって川に起きた波紋。揺れて動くそれに髑髏の幻覚をつけ、江田島を動揺させた。
その隙に、三代鬼徹で切りかかった。さっきのからくりはこんなところだ。
先の鬼徹に話を戻そう。三代鬼徹は妖刀である。それは所持者が不幸にあったという逸話だけでなく、
これの持ち主ロロノア・ゾロが、目に見えない場所に鬼徹があったにもかかわらずそれを感知できたことから、
妖怪でいう妖気的なものが鬼徹にはあると伺える。
ではそれを妖怪であり妖気を操る玉藻が持てばどうなるか。ただでさえ強力な妖刀が、彼の妖気により強化されてもおかしくはない。
妖気により強化された妖刀、制限により弱まった肉体。この2つの要素が超人、江田島平八の背中に深い傷を負わせたのだ。
「鵺野先生を殺すのは残念ですが、私もここで死ぬつもりはない、もとより人間などに殺されるとは思っていない。
故に、私はあなた達を殲滅する。妖狐のプライドの下にね。もちろんあのワポルという男もただでは終わらせませんが」
「……」
「おや、裏切られた怒りで言葉も喋れなくなりましたか。その背中の裂傷で立っていられるとはたいしたものです。
このまま切り殺してもいいのですが、あなたの格闘術が優れているのはすでに把握しました。
ですから……あなたは一気に焼き殺すとしましょう!」
玉藻の尾が動き、摩擦を起こす。するとそこから炎が起こり、玉藻の周りを螺旋状に包んだ。
『妖狐 火輪尾の術』。妖狐は尾をすり合わせる事で炎を起こし、それを自在に操る。
俗に言う狐火と言う奴だ。ただの炎ではなく、霊的な炎であり、それは全てを焼き尽くすという。
「はっ!」
玉藻が江田島に指を向けると、炎が一気に江田島へと向かう。江田島が逃げる間もなく、炎は江田島の体を直撃した。
「ぐっ!!!!」
「ははははははは!悲鳴をあげないとは驚きましたよ。かつて、多くの霊能力者がこの術に敗れ去った。
……最近唯一1人だけ、この術に耐え切った男がいましたが……彼は霊能力者であり、白衣観音経を使ってやっとだった。
この意味が分かりますか?江田島先生」
江田島の答えを聞くまもなく、江田島に襲い掛かる炎が強くなっていく。
江田島の服は焼け消え、彼の体がどんどん火傷に包まれていく。
「霊能力者ではないあなたにはこの術に耐えるすべなどありえないということです!」
炎のレベルは既に玉藻に言わせれば『道鏡レベル』に上がっている。道鏡とは奈良時代の僧であり、
要するにその彼が耐えられたレベルの炎、ということである。
江田島の体を灼熱が襲う。江田島の体に激痛が走る。
だが、その江田島の口がゆっくりと動いた。
「……玉藻、よ……一つ、問う……」
「!?ば、ばかな!このレベルで喋れる気力があるというのか!」
江田島の体は炎に包まれている。炎は酸素を消費する。江田島はもはや呼吸すら辛い状態のはずなのに、言葉をつむいでいる。
そもそも、常人ならば既に焼け死んでいるほどの炎のはずだ。
「……教育、実習生、というのは……おぬしの、偽りの、姿か……?」
「……ええ。それがどうかしましたか。そのような物、ある生徒の頭蓋骨を得たいが為の仮の姿!
汚らわしい人間どもなど、私にとってはどうでもいい!」
「そう、か……」
それを聞き、江田島の腕がゆっくり動く。
「まだ動けるとは!ですが、これで終わりです、『空海レベル』!!」
炎が更に勢いを増し、平安時代に天台宗を開いたという僧、空海が耐えられた炎にまで温度のレベルが達する。
江田島の体がどんどん焼け焦げていく。
「これで流石に終わりでしょう。あなたは恐ろしい超人でした。ですが、もうここが限界で……!?」
玉藻の言葉が止まった。いや、止まらざるを得なかった。
江田島の鋭い、威圧を伴った眼光が、玉藻を射抜いていたからだ。
(許さぬ、許さぬぞ玉藻京介!)
江田島は憤怒していた。
教師とは、若人を導く者。若人は、国の希望。若人は、国の未来。その若人を導く教師、それは誇りに溢れなければならない。
だからこそ、許せない。
若人を殺す為に、教師を目指す者を騙ったこの男が。
今から若人の命を刈らんとするこの男が!
この男にこのまま殺されるわけには行かない。この炎に焼かれるわけには行かない。
「心頭滅却すれば、火もまた涼し!!」
江田島が叫ぶと、まるで炎が江田島の体を避けるようになった。それはまるで伝説に語り継がれるモーゼのよう。
もっともモーゼが割ったのは水であり、今江田島の体を避けて割れているのは炎だが。
「ば、馬鹿な!私の炎が!!
な、なぜ……!
!?まさか、あなたは……気の使い手!」
江田島平八は霊能力者ではない。
だが、百戦錬磨の戦士であり、闘士である。その過程で、彼は『気』を会得していた。
その『気』が無自覚か、それとも故意にか、霊的な炎から江田島を守っていたのだ。さながらそれは、『気』の鎧。
……加えるなら、なにしろ彼は大気圏を突入しても平気だった男。恐らくその時もこの『気』が作用したのだろう。
つまり、肉体が弱まってるとはいえ、玉藻の業火には充分堪えることができたのだ。
江田島が構える。それは拳を打ち出す構え。
「っ!だが、例え気を使えたとしても!全身火傷に背中の裂傷!もうあなたは満足に動けないはず!
ならば、私が今直接その心臓を貫いてあげましょう!」
江田島が接近してくる前に、玉藻は地を蹴って突進。三代鬼徹で江田島の心臓を貫く事にした。
妖気を伴った鬼徹の剣速と、満身創痍の江田島の拳、速いのは明らかに前者。玉藻はそう判断した。
(そう、人間如きに、霊能力者でもない相手に、この玉藻が破れるはずがない!)
その思いとともに、玉藻は江田島に突進する。
玉藻は焦っていた。いや、動揺していたというべきか、無自覚のうちに。
彼の自慢の術が霊能力者でもない相手に破られた。それは彼のプライドをかなり傷つけていた。
ただでさえ鵺野に敗北してから間がない。その傷はかなり深いものだ。
そのプライドの傷による焦り、それが玉藻の正常な思考力を奪った。
江田島の構えが、玉藻の刀がとどくはるか前で突き出される。
「気が狂いましたか江田島先生!そのようなところでは、拳が届きま――」
彼は油断した。焦りから油断した。
江田島の『気』が腕に収束した事に気づかなかった。
いや、気付いたとしても、江田島はそれを放てないと思ったかもしれない。何しろその腕は、
気で防いだとはいえ、かなりの火傷に覆われているのだから。
「若人の、未来……若人の、希望……絶たせは、せぬ!!」
だが、彼は知らなかった。
目の前の男が何者なのか。
何回も聞いていたはずなのに。
彼は、若人を導く者、その頂点にいる男。
若人を導き、若人の成長を見守る男。
そして、若人の希望を守る漢!
「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!!」
その叫びと共に放たれた拳、そこから放たれた、更なる拳、気でできたその拳が、接近していた玉藻を直撃した。
「なっ!!ば、馬鹿な、この、私が!!!」
『千歩氣功拳』。その技が、玉藻の体を遥か彼方まで吹き飛ばした。
**********
「ぐっ……まだ、まだ」
江田島は、自分のデイパックと玉藻のデイパックを拾い上げると、ゆっくりと歩き始めた。
衣服はほとんど残っていない、裸同然。その裸の体には見るのも痛々しい火傷が広がり、背中には大きな裂傷がある。
普通の人間なら死んでいて当然の傷。だが、江田島は歩みを止めない
「我が命……風前の灯、なれど……若人の未来の為ならば!この命、まだまだ燃やしつくそうではないか!」
彼はまだ自分にやるべきことは残っていると思った。あの少年も、玉藻もおそらくまだ死んでいないだろう。
それに、まだまだこのゲームに乗った悪漢はいる、彼の勘がそう言っている。
彼は歩む。満身創痍の体。
けれど、歩む。全ては若人の未来のために。
なぜなら、彼は。
「わしは、男塾塾長、江田島平八である!!」
【E-5 川岸・中央部西側 / 一日目 黎明】
【江田島平八@魁!男塾】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式<江田島>、支給品一式<玉藻、地図以外>、不明支給品1〜3<江田島>、不明支給品0〜2<玉藻>
【状態】:全身火傷、背中に深い裂傷、全裸
【思考・行動】
1:ゲームに反抗し、若人を守る。
※ 参戦時期は、後続の書き手に任せます。
※ 江田島の傷はかなりの重傷です。放っておくと命を落としかねません。
※ 玉藻京介、銀髪の少年を危険人物として認識しました。
*********
「くっ……まさか、妖狐である私が、2度も人間に敗れる、など……」
玉藻もまた江田島ほどではないが、かなりのダメージを負っていた、なにしろ千歩氣功拳が直撃したのだ。
妖狐といえどただではすまない。
「鵺野鳴介……江田島平八……何故だ、何故、人間はあれほどになっても、あんな力が出せる!」
鵺野鳴介は、傷だらけの体で玉藻に立ち向かってきた。結果、彼は一旦倒された。
火輪尾の術で試した時も、彼は生徒を守り、大きな霊力を出して術を破った。
そして、江田島平八。満身創痍だった彼。普通ならば動けないはずの彼が、その力を発揮して玉藻を撃退した。
「知りたい…あの大いなる力の秘訣が……私があの力を、手に入れる事ができれば!」
彼には元から興味があった。鵺野の力への興味が。脆弱で汚らわしいはずの人間が発揮した力の秘密。
その興味は、先の江田島の力によって更に強まった。
「……すこし、方針を変更しましょうか……どの道、これでは満足に戦えない。
回復を待ちつつ、窮地に陥った人間を観察……そして、あの力の秘密を見つけ出す!
その後、人間の殺戮を始めましょう」
デイパックは失ったが、地図だけは携帯していたのが幸いだった。それを広げ、潜伏する場所を探す。
「ここから近い場所は……あのビル街でしょうか」
地図で見れば南のほうに、肉眼では左の方に確認できる大きなビル街。
その中でも、二つのビルがくっついているように見える建物が気になった。
「都庁に似ていますが……あのような場所なら、監視カメラなども完備しているはず。
それを掌握できれば、人間の観察も容易になる。それに、高い場所なら眼下で起こった事も見渡せる……」
玉藻は立ち上がると、ゆっくり歩み始めた。
玉藻は気付かない
2人の共通項は『教師』
そして、2人の力の源もまた、近しいものであることに
【E-3 橋の袂 / 一日目 黎明】
【玉藻京介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【装備】:三代鬼徹@ONE PIECE
【所持品】:地図
【状態】:全身への痛み
【思考・行動】
1:都庁に似た建物に潜伏し、窮地に陥った人間を観察。人間の力の秘密を得る。
2:力の秘密を得た後は、人間の殺戮を開始、優勝を目指す。
※ 参戦時期は、ぬーべーを火輪尾の術で試した直後です。
※ 首さすまたがなく、自分の髑髏を取り出せないため妖狐本来の姿にはなれません
なるには、首さすまたが必要です。
********
時は僅かに遡る。
「あー、いったー。あのおじさん、本当凄いや。肋骨を折られるなんてネウロ以来だよ」
川、江田島たちのいるところの対岸、そこにさっきの少年、自身の世界で怪盗サイと呼ばれる者はいた。
先の江田島の鉄拳で川にたたき付けられたサイは、激しい痛みに耐えて水中を泳いだ。そして対岸までいき、切り立った崖のようになっている川岸を
痛みに耐えつつ、その怪力で強引によじ登り、崖からあがった後、今陸地をゆっくり歩いているところだった。
ちなみに、江田島たちがそれに気付かなかったのは、川の幅が広く対岸が遠かった事、まだ辺りが暗かった事、何より本人たちがそれどころではなかった事、が起因している。
「にしても、いつもより体が脆い気がするよ……いや、力も弱まってるし、今も回復が遅いなあ。
それでも、もう動けるくらいには治ってるんだけどさ」
ずぶぬれで歩きながらサイは考える。自分の身に起こっていることを。
サイにはいくつか普通の人間と違う点がある。
まず驚異の身体能力と怪力。それはさっき、江田島平八と渡り合ったところから察せられる。
本来なら人間の頭、体を一発で完全破砕できる。
それで、弱まっていてなお、江田島を恐れさせる威力が出る。
次に驚異的回復能力。その自己回復の速さたるや、銃で両足を打ち抜かれても、すぐ後には二階の窓から楽々と逃亡をはたし、
頭を銃でうたれても、腹をナイフで刺されても死なない。サイの身体はそれほどにまで強靭。だが、それもここでは弱まっている。
それでも常人に比べれば回復は速いのだが。
「デイパックの口ちゃんと閉めといてよかったよ。水が入ったら大変だしね……ん?」
呟きながら歩いていたサイは、前方にあるものに気付いた。
桜。綺麗に咲き誇る桜。辺りに花びらが舞い地面を覆い尽くすほど散っている。さながら桜色な絨毯のよう。
その絨毯の上で、少女が一人死んでいた。
一目で死んでいると判断したサイは別に驚きも悲しみもせず、桜の花びらに既にいくらか覆われた、
どこか幻想的なその死体に近づき、その死体をまじまじと見つめた。
「普通の女の子っぽいけど、でもあのおじさんみたいに実は凄いのかも。
……ま、『見れば』わかるか」
そう言って、サイは腕を振りかぶり、躊躇いなくその豪速の腕を少女に振り下ろした。
もちろん、相手への言葉を忘れずに。
「あんたの中身を見せてくれ」
**********
ボキンメキメキブシャベキピチャ
パキンメリメリメリップチュッズパッポキッ
ボキ バキン グシャッ
**********
「ちぇっ、結局普通の女の子だった。がっかりだなー」
ミシ ミシ メキ
「やっぱり頭を一発か。顔見知りか、あの子がよほど油断してたのか」
ミシ ミシ メキ
「俺みたいに速い奴かも。俺だって額に銃を押し付けるくらいできるし」
ミシ ミシ メキ
「火傷があったからまちがいないよね。ま、俺には関係ないし」
ミシ ミシ メキ
「ここにいるのって、結構凄い連中ばかりな気がする。そいつらの中身を観察すれば、俺の中身もわかるかも知れない」
ミシ ミシ メキ
「さて、こんな感じかな?」
桜の木の麓、そこに少女が一人立っていた。
黒髪のショートカットに髪留め、愛らしい顔立ちに小柄な体駆。
それは、ここで死んでいた少女、西蓮寺春菜と瓜二つだった。ただし服だけは違う。ピンクを基調としたピンク色の女子高生制服。
童実野高校という学校の女子用制服だった。
「俺の支給品にこれが入っていたのはラッキーだったなー。あー、あー。…声帯の感じから声はこんなものかな」
春菜の姿をしたそれは、彼女によく似た声を出し、そして先ほどまでここにいたサイと同じ口調で話した。
これがサイの特徴の一つ、変装能力。いや、むしろ変形能力と言った方が妥当かもしれない。
サイは細胞の変化が著しい。先にサイが脳細胞の変化を言っていたが、それが一端。細胞は常に変化を続けている。
更に、サイはその変化の方向性を変えることができる。それにより、自身の姿を自在に変えられる。時には140cmの老婆になったことも、
果てには犬にまでサイは変化した事がある。
怪盗サイ。それが彼の呼び名である。ただ、これは略称であり本来の呼び名は、
『怪物強盗X・I』
サイの犯行は誰にも見られない。誰もその姿を目撃できない。陰も形も捉えられない。
正体が分からない、サイの姿は『未知』である。ゆえに『X』。
姿が見えない、サイは『不可視』である。ゆえに『Invidible』、頭文字は『I』。
それを率直に並べて『XI』。続けて読んで、『サイ』。それが、サイの呼び名の語源。
その理由がこの変形能力。誰にでもなれる。だから誰も目撃できない。ただそれだけ。
「口調は、まあ、その辺の女子高生のを見習おうかな。知り合いにあったら、無口でいようっと。
それに、そうすれば相手の反応で本来の性格、口調が把握できるし」
サイはしばらくはこの春菜の姿でいる事にした。
理由は、このゲームの攪乱だ。サイは、他人の中身が見たい。中身を見る事で自分の中身を見つけたい。
ここにいるのはそれにふさわしい人員ばかりかもしれない。
かといって、全員自分の手で殺したい、というわけではない。別に彼は中身が見れればいいので、死んでいても問題はない。
木っ端微塵でもない限り。となれば、ここにいる者をできるだけ混乱させれば、殺し合いは促進するはずだ。
「それには俺のこの能力は向いてる。なにせ、濡れ衣なんてお手の物だし。着せたい奴に化けて誰か殺せばいい。
それに……俺にはアレもあるし」
サイがここに来る直前、その身に取り込んだものがある。
電子ドラッグ。ある教授が作り出したそのプログラム、それは映像プログラム。だが、その視覚情報は人間の脳に多大な影響を与える。
脳内麻薬の大量分泌。それによる身体能力の著しい向上。
そして一番の効果、それは人間の深層心理の犯罪願望を開放する事だ。
たとえ犯罪者の素質がなく、良心的な人間だったとしても、そのプログラムを見せられたならば、誰でも持っているような願望が特化され、
犯罪願望となる。
人は誰でも理性を持つ。電子ドラッグは、犯罪を抑えるその理性を完全に消し去ってしまう。そんな悪魔のプログラム。
それをサイは脳内に持っている。そしてそれを、他人に見せて暴走させる事ができる。
それには目を合わせてかなり相手に近づく必要があるのだが。
これを使えば、たとえやる気のない人物でも、暴れさせる事ができる。サイはそう考えた。変身能力と電子ドラッグ。
この2つを使い分け、殺人者を増やしていこう。そしてそれで増えた死体の中身を、自分が見る。
生来、面倒くさがりなところがあるサイはそう決めた。
そう考え、サイは立ち上がり、桜の下を去る。と、足を止めて振り返った。そして笑顔で言う
「せっかく中身を見せてもらったし、サービスであんたの姿を借りさせてもらったよ
名前も知らないけど……ありがと。じゃあね」
そう言って、前を向くと、今度こそその場から去った。
後に残されたのは、桜色の絨毯と、その上に乗る……『箱』。
それは確かに『箱』だった。立法系の形に、さっきまでサイが来ていた布が包んでいる。一体それは何か。
サイの支給品か?いや、違う。
最後に、サイの犯行について記述しよう。
強盗、と呼ばれるからには何か盗み、怪盗と呼ばれるからには高価な美術品などを狙うと思うだろう。
確かにサイは芸術品を盗む。だが、それだけではない。芸術品が盗まれたところから、さらに1人、
人間が消えるのだ。
それだけではない。後日、その現場にあるものが届く。それが『赤い箱』。
ガラス張りで立方体のそれは、赤いとしか言いようがなく、ただただ赤い。
一体、それはなんなのか……ヒントは、その箱の重量。
その箱の重量は、ガラスを除けば攫われた人間とほぼ同じ。
更にヒントを言えば、細胞のDNAも完全一致する。
ここまで言えば、もう言うまでもない。
届く箱とは、攫われた人間そのものであり、人間がサイにより破砕され、箱に圧縮され成り果てた姿なのだ
サイは人間の中身を見たい。余すところなく見たい。だから箱を作る。上下左右前後から見れる『箱』。
その為にサイは人を『箱』にする。
これがサイの犯行の全容である。
花びらが、箱になりはて、布に覆われた『西蓮寺春菜』の上に積もっていく。
たとえ知り合いがそれを見つけても、彼女と気づく事は、まずないだろう。
花びらは、それを哀れむかのように、まだまだ舞い散っていた。
【E-5 桜の木の下 / 一日目 黎明】
【XI@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:童実野高校の女子制服@遊戯王 春菜の髪留め
【所持品】:支給品一式 不明支給品(0〜2)
【状態】:西蓮寺春菜の姿 肋骨損傷(数時間で回復可能)
【思考・行動】
1:この会場の奴らの『中身』を見て、自分の『中身』を見つける。
2:変身能力で混乱を起こす。できれば集団。自力での襲撃も行動範囲内。
※ 参戦時期は、HALUからHALの目を得た直後です
故に、電子ドラッグを使う事ができます。本来はサイの指令を刻み込む、つまり支配下に置くこともできますが、
制限によりその力は使えず、また効果もそれほど大きくなく、
「犯罪への禁忌感を減らす」、要は相手を犯罪に走らせやすくする程度です。
サイはまだその制限を自覚していません。
※ ワポルが定期放送で死亡者の発表について触れなかった為、死亡者発表については知りません。
※ 春菜の名前を知りません
※ 江田島平八を『凄い奴』と認識。
※E−5に、サイが着ていた布と、箱状に圧縮された春菜の肉塊が放置されています
投下終了です
電子ドラッグは、『犯罪の禁忌感を減らす』程度に制限しました
支援感謝します
>ゾロの人
GJ!広……お前のお陰でゾロは勝ったんだぜ!
頑張った。後は先生に任せろ!
最年少なのに頑張った。
ししおはやっぱり強いなぁ。剣心でも勝てないだけのことはある。
ゾロとの再戦フラグに期待。2人とも良い剣士
そして沙姫www
美しさは罪とかシリアスなはずなのに吹いたわw
うぜぇwGJ
>サイの人
塾長……すごく……全裸です。
初っ端から死にかけとは流石だぜ!俺らに出来ないことをさらりとやりやがる……
次は対主催に出逢えればいいな
サイが思わぬ良キャラでビックリした。いてぇ…
正反対の先生がこれからどんな行動を起こすのか期待GJ
>雷電の人
ナオが意外に強い奴でびっくりした。宗次朗並の驚きかも試練。
ってか、雷電はギャグ枠じゃなかったのな。「知ってるのか雷電!!」しか知らんかったわ。
意外にも、雷電って強そうな奴なのね……
>クマシーの人
まさか、クマシーが出てくるとは思わなかった。
こいつならギャグも出来るし、バトルも出来るし……弱点知ってるブルックもいるし
扱いやすそうだね。
>木乃伊の人
やっぱり、ゾロは強かった。ってか、シシオも強い。
この2人の戦いに割って入った広はGJとしか言いようないわ。
それにしても……そのゾロでも持ちきれないなでしこの剣って一体……
>塾長の人。
塾長が馬鹿すぎてワロタ。そして強すぎてワロタ。
実質2対1の対決だったんだよね。
>直、雷電、宗次郎
直と雷電はいいコンビニなりそうですね
で、早くも明確な脱出プランを思いついたようで
どれだけ秋山の代わりを務められるか楽しみです
>ララ、海坊主、マリ
マリがどんなキャラなのかは知らないけど、幼女マーダーらしいので期待してます
てか海坊主は起きろw
>ゾロ、志々雄、広、沙姫
ゾロと志々雄の剣豪対決は、ひとまず痛み分けってことで終了か
個人的には、刀3本手に入れてから再戦して欲しいな
そして広は死んじゃったか…
ぬ〜べ〜が知ったらショック受けるだろうな
その辺りも楽しみです
>塾長、玉藻、サイ
ネウロは知らないけど、サイってこんな怖そうなキャラだったのか
普通にホラー映画とかに出てきそうな感じだw
塾長も塾長らしくてカッコイイ
全裸なのになぜかかっこよく見える辺り流石は塾長というべきか
>サスケ
1つ目に関しては、問題ないと思います
これと言って繋ぎにくい要素は見当たらないので
2つ目も、問題ないでしょう
個人的には2部のサスケを期待していたのですが、これも好みの問題ですし
あと、謝ることはないですよ
どうも、サスケの作者です
一日様子を見ましたが、修正や破棄の要求が一件もなかったのであれを通したいと思います
そこで質問なんですけど、状態表以外は仮投下から手をつけてないんですが本スレには投下するべきですか?
ロワ初心者なので、その辺が良く分かんないんです
手取り足取りになって心苦しいのですが、どなたか助言お願いします
前に言ったから重ねて言うのもなんだと思って言わなかっただけで、サスケのは破棄して欲しい
通したいと思うって・・・作者の一存で決めることかよ
半年ROMれそして氏ね
>>214 荒らしはスルーで
具体的な例も挙げずに破棄になるわけがありません
通しで良いかと
後、余り本スレで聞かない方が良いですよ
厨が多く、悪くなくても破棄にされますから
218 :
参加するカモさん:2008/07/11(金) 19:29:06 ID:o1lhRY2l
スタンドDISCってハメれば誰でもそのスタンドが使えるようになるんだっけ?
219 :
参加するカモさん:2008/07/11(金) 19:32:22 ID:ZDj4U4ov
本体にスタンドの素質があってさらに性質が合えばな
まあたまたまサスケがスタンド使いの素質持ちでウェザー・リポートとの相性が良かったんだろ
サスケは雷とか撃つしね
220 :
参加するカモさん:2008/07/11(金) 19:34:48 ID:SlOMT0kB
一般人にほいほいスタンドもたれても困るがまあサスケならいいだろ
ウェザリポはジョジョ中でも最強クラスのスタンドだが、
使うのがNARUTOのキャラならそう脅威でもない
そこまで危険視する展開でもないかとl
ウェザーリポートって確か周囲数万kmの天候を自在に操れて
それでいて接近パワー型のスタンドなんだよな
ヘビーウェザーにいたっては盲目以外は回避不可
さすがに制限されてるだろうが
件のSS見てきたが
>イタチから聞いた方法ってのが気にいらねぇが、俺は力“万華鏡車輪眼”を手に入れる為に!
なにこれ
天候変えたりするのは他のSSに毎回影響を与えるからリレーし辛いが・・・
致命的な矛盾があるわけでもないし、俺も通しでいいと思う
>>222 ロワ内で原作と思考が違うのはよくあること
まあウェザポはチンポリオにも使えたくらいだしな
DISCを填められたってことは、サスケ自身にも本来のスタンドがあるのかね?
さてはナルトか(能力:付きまとってくる)
どうせ今後のSSで天候変えたら他の通し済みSSに矛盾が出て「あの時没にしておけば……」ってなるんだろ?
サスケは単体でも十分強いしウェザーなんたら云々はいらないよ……
とりあえずディスクによる影響はサスケの心境ってだけでいいよ。
破棄はしなくてよい。
ウェザーリポート
能力:天候を自在に操る。
・気流、雨、稲妻等、あらゆる気象現象を自在に発生させて操る事ができる。また、応用範囲が極めて広い。
(例:雲による水分吸収、空気摩擦による発火、空気の塊によるクッションetc)
・上記の気象現象は空からも、自ら発生させた雲(スタンド像)からも発生させる事ができ、
その規模は本体の周囲半径1m足らずの極小範囲から半径30kmの広範囲まで任意に調節できる。
・能力の射程範囲は広いが、本体の近くでは特に精密な天候操作が可能になる。
本体の至近距離では、スタンド像から強烈な風圧を纏ったパンチを放つ事ができる。
・「雲(スタンド像?)」を自由に造形し、「雲のスーツ」を作製できる。
これには気密性があり、真空中でも2分程度は耐える事ができる。また、複数への分割も可能である。
・「雲(スタンド像?)」を周囲に拡散し、その範囲内における気流の変化を感知できる。
「空から魚や蛙等(判例ではヤドクカエル)が降る」といった異常気象(「怪雨」)を発生させる事ができる。
・本体が自殺を試みた時、本体の意志を無視して本体を助ける。
(例:飛び降り自殺→突風を起こして本体を吹き飛ばす)。
空気を操り、周囲に純粋な酸素だけを集める事ができる。(生物に対して強い毒性を持つが本体も危険)
あと、本スレに投下しなきゃ正式に投下されたということにならないからこっちに投下してください。
自分は貴方の作品好きだから。
229 :
参加するカモさん:2008/07/11(金) 19:56:22 ID:551YiZWn
ヘビー・ウェザー
太陽光線によって、天候レベルの「サブリミナル効果」(潜在意識への催眠暗示のようなもの)を発生させる能力。
・オゾン層を破壊(操作?)する事で太陽光の屈折率を変化させる。
そして、その光を見た者全てがサブリミナル効果による「思い込み」で、以下の現象を体験する。
影響範囲内の各所(日光が届く所なら屋内にまでも)に『悪魔の虹(仮)』が発生する。(これは実在)
『虹』に触れたもの(主に生体組織)からは、カタツムリ(またはその卵)が大量発生し、更にどんどん繁殖する。(実は幻覚)
『虹』やカタツムリに触れ(られ)た生物達は、身も心もカタツムリのように変化していく。
また、「カタツムリ化」した生物に触れ(られ)た場合も同様。(実は「思い込み」)
能力発動後、やがて「マイマイカブリ」(カタツムリの天敵である昆虫)がどこからともなく現れ、
カタツムリ(化した生物)達を襲う。(幻覚だが実際に喰い殺される事もある)
※上記の「カタツムリ発生」、「カタツムリ化」、「マイマイカブリ襲来」はサブリミナル効果による幻覚や「思い込み」だが、
影響下にある者にとっては現実同然であり、これらが原因での死亡もあり得る。
これらの「思い込み」は、影響下の全ての者に同内容で認識される。
(例:「カタツムリ化」したと思い込んでいる者は、後から来た他者にも「カタツムリ化」して見える)
一旦この能力の影響を受けた生物は決して逃れられない。
(「思い込み」だと理解しても、目を閉じても、時間が経っても、夜になっても、場所を移動しても無駄)
・このサブリミナル効果は盲目の生物には全く効果がない。
・この能力は本体の無意識によって発動し、本体には全く制御できない。(能力の原理にも気付かない)
・本体にも『悪魔の虹』やカタツムリ等は見えるが、それに触れても「カタツムリ化」はしない。
・何らかの理由で能力が封じられるか、本体が死亡した場合、全ての「思い込み」効果は消える(ただし死者はそのまま)。
・この能力の発動中も、『ウェザー・リポート』本来の能力には全く影響なく、通常通り使用できる。
調べたら結構なチートだなこれwwww
ジョジョはほとんど知らないからあのSS読んだときは「???」って感じだった
正直新手の荒らしなのかと思った
通ったとしてもどう扱っていいか全く分からないな
そういやヤドクガエルも降らせられるんだったか
サスケが兄貴の言うとおりナルト殺して超車輪眼ゲットだぜーとか
"生き物をカタツムリに変える能力"って表現とか
明らかに原作を読み込んでないのがミエミエだし正直破棄して欲しい
後の展開に影響与えないならここまで気にしないんだけどね
>>232 味方だよ
敵はこれ以上のチートだった
>>231 マーダー枠なんだからやる気になってくれないと困るだろ
どうせナルポキャラだし、実際今になるまでその点に文句言う奴いなかったじゃん
破棄させたくて難癖付けてるだけだろ
っていうかジョジョが絡むと毎回荒れるよな
信者の民度が低いのかね
235 :
参加するカモさん:2008/07/11(金) 20:09:52 ID:UmTw6hAi
ジョジョキャラ>>>>ナルトキャラみたいに言ってる奴自重しろ
まあ俺はどっちも大して知らないしどうでもいいけど
これだけ荒れるなら破棄したほうがいいんじゃね
今回のロワに、疑問を持たれながら
>>227>>229の設定を盛り込まなきゃならない理由が分からない
強引に入れて何がしたいのって感じ
通すのに賛成してる人達は本当にこれを繋いでいけるの?
入れなくてもいい設定を無理矢理持ちこま無きゃいけない理由が本当にあるの?
序盤からリスクを抱え込む必要は無いと思もう
まとめるとこういうことか?
・サスケの思考が原作と大きく離れている→これは二次創作のロワです
・ウェザー・リポート強すぎ→どうせナルトキャラには使いこなせません
・お前原作読み込んでないだろ→読み込んでなきゃ書いたらいけないんですか
=通しでおk
サスケはどこがどう違うの?
っていうかこれ書いたのサスケの腐女子じゃね?
SS読んだが心情描写とかサスケに無敵能力つけてSASUKETUEEEEEEEEとかそれっぽい
腐女子でも面白いの書くならおk
このサスケSSは面白くないけどな
>>238 原作ではナルトをぶちのめした後
「絶対兄貴の言うことなんかきかねえ、俺は俺のやり方でいく」って感じで
万華鏡車輪眼を独力で身に付けようとする
241 :
参加するカモさん:2008/07/11(金) 20:17:47 ID:D7dh0tcp
通し派も破棄派も単発ばっかだな
二人で争ってんのか
腐女子がどうとかこじつけにもほどがある。
こういう話はしたらばでしようぜ。
書き手さんもこういうことはしたらばに。
書き手本人は見てたらしたらばに来てください
貴方の作品で議論してるんだからきちんと説明をしてください
>>236 入れなくても良い設定を強引に?
馬鹿かお前は
んな事言い始めたら、どんな面白いアイデアも「強引にそんな設定だすな」で終わっちまう
面白くするための設定をお前の主観だけで『強引に』とか判断すんな
245 :
参加するカモさん:2008/07/11(金) 20:29:45 ID:P203wLNA
面白くなってないのが問題なのでは・・・
>>237 ・サスケの思考が原作と大きく離れている→これは二次創作のロワです
さすがにこれはマズイと思うんだw
・ウェザー・リポート強すぎ→どうせナルトキャラには使いこなせません
これは書き手さん次第だから何とも言えないけど、面倒なことになる可能性はあるから制限はした方が良いと思う。
・お前原作読み込んでないだろ→読み込んでなきゃ書いたらいけないんですか
さすがにキャラの信念的なものくらいは把握しないとマズイと思う。
>>244 ごめん、言い方が悪かったかもね
面白いアイデアならそんな事言わなかったけど、出されたものがあれだっただけについ
でもお前もお前の主観だけで判断すんなと判だry
ツマンナイ話しか書けない癖に調子に乗って捻った展開やろうとしてすみません。
皆さんの指摘に対して反論の余地がありませんので、今回も破棄させていただきます。
前回、そして今回もジャンプロワの皆さんに迷惑を掛けた事に関しては詫ようがありません
ですが、もう書き手としての参加は二度としません
鳥変えでの投下も決してしないことを誓います
もし不安があるようでしたら、したらば管理人の方に私のIPを規制して貰ってもらって下さい
では、これで私は失礼します。
ジャンロワの成功を一読み手として願っていますね
今までで一番懸命な判断したな
まあ乙彼
>>248 何で話し合おうとしないの?
反論も何も、いちゃもんには反応しなくていいのに…
したらばでだって案出てたじゃん
引き止めるなよ
もっとも彼の精神衛生上よい判断をしたんだから
正論なしたらば議論より本スレの罵倒の方が書き手に影響しやすいという方程式完成の瞬間である
>>251 引き止めるとかじゃなくあれだけ通そうとして何もせず、擁護意見もスルーして、挙句の果てには適当な態度で去っていく書き手にいらついただけ
>>253 そういう奴だからこそスルーせんと、変に逆恨みされて荒らしになられたら困るだろう……
つうかもう逆恨みされてんだろ。
今日も巧みなマッチポンプで糞書き手を潰してやったぜフヒヒ
まあこの程度で潰れるような書き手はうちにはいらんな
もうやめようぜ
所詮ああいう奴だったんだから
あのまま議論に参加させてもなげやりになったろうし、通してもいつか化けの皮が剥がれてた
引っ掻き回されたのが最小限にすんで良かったとして忘れちまおう
そだね
ところでパロロワ辞典にここの記述ページって無いんだっけ?
こりゃ今回も前途多難だな……
鬼龍キター!!!!!!
やったぜ!!!
今現在の作中最強キャラは亀仙人でおk?
塾長だろJK
わしが男塾塾長江田島平八である!!
我が名はダイアー!!
そんな掛け合いを考えていた時期が俺にもありました・・・
>>248 おまえはわるくない。
書き手としての参加は二度としませんではない。
スキルを磨いて現状を把握、そしてまた投稿だ。
無知は悪いことじゃない。悪いのはひとつの考えにしか
たどり着けない思考なのである。
蒸し返すな馬鹿
また予約入ったな
結構なペースで進んでて嬉しい限りだ
まあ序盤はこのぐらいのペースじゃなきゃ
今気付いたんだが、ネウロとライアーゲームってネウロや秋山出ないのか?
ヒロインは出てるのに
気付くの遅すぎるだろw
ま、あれだ、書き手がつかなかったってのと枠が無かったってので出れなかった
どちらにも出て欲しかったがな
ネウロはチートすぎる
秋山はそもそも知ってる人が少なかった
ってとこかな主にその二人が出てこなかった理由
神崎直知ってて秋山知らない奴がいるとはそう思えないけれど
あ、ごめん。
だからライアーゲーム自体知ってる人が書き手に少なかったんじゃないかと。
一応当選してるんだからそれは無い
カカカカーって感じに笑うやつだろ?
ネウロは作者でさえチートすぎて扱いに困ってるからなw仕方ない
Dグレは誰も出なかったな
博愛主義者や傍観者みたいな特殊なスタンスで出してみたかった
ビィトが出てないですね。
>>277 Dグレは……
アレンもリナリーもマーダー枠で出すわけにいかんしなあ。
秋山やネウロもだが。
DBはセルとかブウをマーダー枠で出せるか?
セルやブウって正気の沙汰じゃないな
亀爺が最強クラスなのに損なん出たらバランスブレイカーどころじゃない
DBキャラのマーダーは出せたとしても桃白白が限度だな
それでも悟空対決時の亀仙人より強いかも知れんが
とりあえず、もうマーダー枠から変化球マーダーはいらんよな。
DBからマーダー出すならやっぱりレッドリボン関係かな
ブルー将軍とか、超能力者ってのは結構面白いかも
マーダー枠ってあと何枠?
2人投下(サイとマリ)されて、2人(鬼龍と星海坊主)予約されている。
なので、残り1枠
最後の枠か
直球で手ごろな強さのマーダーがいいな
出来れば3作以上書いてる常連書き手に空気読みながら書いてもらえれば
ナルトがいるからサスケが面白そうだとは思う
元の世界でやらなきゃならんことがあるから、必ず戻りたいだろうし
>>286 るろ剣の雪代縁とか刃衛とかハンタのウヴォーとかが該当するかな?
刃衛ならシンセングミにも因縁があるな
あれ?ファウスト八世の予約なくなったのか
あ、本当だ。
ファウストのネクロマンシーは結構楽しみだったのになw
人が死ぬほど下僕が増えていくという…
死体を操るから誤解フラグ出来るし。
しかもBJ並みの医者だ
マーダーとして出すならVS葉戦後ぐらいかな
今日は二本投下か
すみませんが、2,3時間ほど遅れます。
侍ってます
投下します。
「ワポル……か。どこの天人だか知らないがこの俺に大層な真似をしてくれるぜ」
夜兎族特有のマントに飛行帽を被った40代の親父がそこにいた。
彼は第一級危険生物を追い、駆除する宇宙の掃除人えいりあんばすたーである。
しかもその中でも最強とうたわれる掃除人で、いち掃除人でありながらあちこちの惑星国家の政府にも顔が利き、
数多の星を渡り数多くの化け物を狩ってきた男。
ついたあだ名が星海(うみ)坊主……生ける伝説である。
彼は今回の出来事を何処かの酔狂な天人が企てた遊戯だと見当をつけていた。
しかも苦もなく最強のえいりあんばすたーである彼を攫い、首輪をつける手並み。
まさに気付かぬ間に自分の首には決して逃れ得ぬ鎖が繋げられていた。
こんな真似が出来るものとなるとそんじょそこらの道楽貴族ではありえない。
よほど大きな犯罪組織が裏についていることだろう。
そして彼を星海坊主と知りながらこの遊戯の中へ放り込んだというのなら――
脱出は不可能。
それが彼の下した結論だった。
宇宙最強を誇る戦闘民族「夜兎」。
その生き残りである彼のことはさぞ調べがいがあったことだろう。
ことさら自分のことを隠して生きているわけでもない。
ここまで大規模な拉致監禁、そして殺戮を強制させるような企てに自分の対策がないわけがないだろう。
「細工は流々、後は仕上げをごろうじろ」というわけだ。
「ふざけた野郎だ……」
怒りが込み上げる。
ワポルに、そして今のこの状況に歓喜を感じてしまう自分自身に。
夜兎の本能は闘争を求める。
夜兎族の居場所は……戦場だ。
この身体に流れるのは獣の血。
獲物を求めてさまよう夜兎はしょせん戦場でしか生きられない。
「生き延びてやるさ……望みの通りにな」
そして、血のこと以上に彼には死ねない理由があった。
それは彼のたった一人の娘「神楽」のことだ。
いつの間にか家から消えていて、今まで散々探し回っていた。
そしてようやく居場所を掴んだのだ。
「地球」――神楽はそこにいる。
夜兎の血を恐れ、家族を壊すことを恐れ彼は家から逃げ回っていた。
結果、家族はどうしようもなく壊れてしまった。
だがまだ無くなってしまったわけではない。
「罪滅ぼし」がしたかった。
日の下で共に生きることができなくとも月の下でなら一緒に生きていける。
必ず探し出して……護るのだ。
その為に殺戮が必要だというのなら
「ためらう理由がどこにある?」
しょせん夜兎が歩くのは血塗られた道だった。
そんなことはとうの昔に知っていたし――慣れていた。
人は簡単には変われない、変われるものか。
もがいても、もがいても、結局変われやしなかった。
なにも変えることなんてできなかった。
苦しいだけなら いっそ……
◆ ◆ ◆
空条承太郎は辺りを見回し、ここが何処かの軍事基地であることを確認した。
次に地図を確認する。
島の形に見覚えはなかった。
いくらなんでも世界中のすべての島を知っているわけではないが、彼は海洋学者であり
それなりに地図、海図とは親しい付き合いをしている。
少なくとも日本近海にあり得る島ではない。
「これもスタンド能力か?」
スタンドとは素質ある者の生命エネルギーが生み出す力ある映像のこと。
その能力は個体差があり、彼、承太郎は今まで様々なスタンド使いと相対してきた。
今の事象に近いと思われるのは、船そのものに取りついて我が物とするオランウータンの使っていた能力。
それとも宿敵DIOの館を幻で別世界のように見せていたスタンド能力か。
しかしどちらも強力な力ではあったが、今回のこれがスタンドだとするなら力の桁が違いすぎる。
あのワポルという者は間違いなくスタンド能力者だろうが、この島や他の参加者については保留とするべきであった。
彼は冷静にデイパックを開け、支給品を確認する。
今自分に何ができるのか、殺し合いを強制させられている今の状況では最優先事項だ。
中から出てきたのは一本の日本刀。
それ以外に武器らしいものは何も入っていなかった。
彼に剣術の心得はなかったし、戦闘手段ならば彼のスタンド・スタープラチナがある。
戦いにおいて役に立つとは思えなかったが、牽制や脅しには使えるかもしれない。
そう判断し、承太郎は刀を持って歩きだ――そうとした。
彼の視線の先。
そこには白いマントで身を覆った壮年の男がいた。
「よう、いい月だな」
「あんたは?」
男の軽口に承太郎は端的に返す。
「面白みのねえ野郎だ。俺は人からは星海坊主と呼ばれてる」
「そうか、俺は空条承太郎。ところで……」
承太郎は刀を腰に当て、半身に構えをとった。
「なぜそんなに血に飢えたような顔をしている?」
「わかるかい? あんたも中々の修羅場をくぐってきているようだな」
男はニンマリと笑うと、背中から大きな黒い棍棒を取り出した。
「あんたに恨みはねぇ。だがすまねぇな、ここで死んでくれや」
「やれやれだぜ」
承太郎は大げさに嘆息すると、帽子のつばを引き下げた。
「これからのことは、あんたをぶちのめしてから考えるとするか」
「フ、吠えるねぇ、やってみな。できるものならな」
男――星海坊主の殺気が膨れ上がる。
それを見て承太郎は迅速に動いた。
「!」
なんと承太郎は地面に両手をつき、深々と身を伏せたのだ。
「すみまっせーーーーーんっっ!!」
「………」
“なんだ、これは?”
それが承太郎の思考に上った最初の言葉だった。
上からは星海坊主の冷やかな視線が浴びせられている。
今承太郎がしていること。
それは土下座に他ならなかった。
支援
支援
「なんの……真似だ?」
だがその言葉に承太郎は答えることができない。
否、答えてしまう……自らの意志とは関わりなく。
「すいまっせーん!! 調子にのってましたァア! 命だけは、命だけは勘弁してくださいィィィ!!
靴の裏でも何でも舐めますんでぇえ!!」
地面に額をこすりつけながら叫ぶその姿はヘタレ以外の何物でもなかった。
“か…身体が勝手に……口も…”
どういう事か、今の承太郎は身体の自由が全く効かなかった。
なんとか、力を振り絞って顔をあげるが、そこにはこめかみに血管を浮かべてキレた親父がいた。
「ちょっとぉおおおおおお!? なにやってんのおおお!?
こちとらオラ、ワクワクしてきたぞ的に気ぃ昂ぶらせてたんだぞ?
それをなにエロビデオ見てたらテープが切れて国会中継に切り替わっちゃったみたいな
萎え方させてくれてんのォオ!?」
頭を踏みつけられ、にじられる。
かつて恋人のスタンドを持つ鋼入りのダンに屈辱的な行為を受けたが、
今回のこれは承太郎にとってその時以上の恥辱だった。
“く、くそ……一体これは……まさかスタンド攻撃を受けているのか?”
だが反応からして目の前の男からの攻撃ではない。
ここではないどこからか遠隔攻撃を受けているとしか思えなかった。
先ほどからスタープラチナを出そうとしているにも関わらず、一向に現れないのも奇妙だった。
“く、攻撃の正体が掴めない限り……やられる!”
まさかの展開支援
支援
こんな情けない承太郎は初めてだwwwwwww
頭上では星海坊主が今にも棍棒を振り下ろさんとしているところだった。
“いったい何処からどうやって攻撃されているんだ!?”
承太郎が手に持つ刀が妖しい輝きを放った……ような気がした。
◆ ◆ ◆
「ワポル……それに悪魔の実、ですか?」
「そうだ、ワポルはバクバクの実を食った大食い人間。なんでもかんでも胃に入れちまう化け物さ」
“なんだか他人事を言われてるように聞こえないなぁ”
歩きながら弥子とサンジはお互いの情報を交換し合っていた。
向かうは一番近い施設、軍事基地と思しき場所だった。
「それに、そっちの話も聞けば聞くほど不思議だぜ。車、飛行機、自動販売機……それに魔人、か」
「いえ、魔人の方はこっちでも異常なんですけど……」
話しているうちに森をぬけ、広々とした場所へ出る。
道路をはさんで目指す軍事基地は目の前だ。
弥子は意気揚々とサンジの手を引くと入口まで走った。
「さあ、早くいってサンジさんの手料理を食べさせてよ!」
「おう、とっておきの料理をご馳走す――」
サンジがすべて言い終える前に、弥子は腕を引かれたたらを踏んだ。
「え? なにす……」
「し、弥子ちゃん静かに! 誰かいる……」
基地の正門に身を隠しながら二人はおそるおそる中の様子をうかがう。
支援
支援
そこでは黒い棍棒を持つ男と刀を持つ白いコートを着た男が対峙していた。
「サ、サンジさん……まさか――」
「ああ、白い方はわからねぇけど、棍棒持ってる方はありゃ確実に乗ってるな……危険だぜ」
「ど、どうしよう」
そうこういっている内に白いコートの男が土下座した。
どうやら許しを請うているようだ。
その様子を見てサンジが舌打ちする。
「弥子ちゃん行こう……北の方に民家がある。そこでなら料理もできるだろ」
「ちょ、ちょっとサンジさん! 見捨てるんですか?」
サンジは土下座する男をまるでゴミでも見るかのような目で見た。
「男ってのは意地をなくしたら生きている資格はないのさ。
意地ってのは男が何もかもなくしても最後に残っていなきゃならない。
奴はそれを唾吐いて捨てたんだ。助ける価値なんてないさ」
非情に見捨てようとするサンジに弥子は追いすがった。
「ま、待ってください! サンジさん強いんですよね? 何とか、それでも助けてあげる訳にはいきませんか?」
「弥子ちゃん、どうしてそんなにこだわるんだい? あんな男、助けたところで足手まといになるだけさ。
もしかしたら命おしさに裏切られるかもしれない。」
サンジはそう言うと黙って弥子の瞳を見詰めた。
厳しいだけではない、弥子の身を案じる優しさもその視線には含まれている。
「上手く言えないけど……あの人を見捨てたら、そういう選択をしちゃったら私はもう誰も信じられない気がする。
あの人を見捨てることで、私自身も誰かから見捨てられるんじゃないかって、そうやって人を信じられなくなっちゃう気がするの」
しばし見つめ合う二人。
支援
先に目を逸らし、申し訳なさそうに目を伏せたのは弥子の方だった。
「ご、ごめんなさい。やっぱり無理強いはできないよね、はは、サンジさん優しいからって甘えすぎちゃった。
本当にごめんなさい……なんとか私だけでやってみる」
明るく笑って弥子はサンジに背を向けた。
怖くて怖くて堪らなかった。
足が震えてその場から動かなかった。
しかし……ネウロと、あの理不尽な魔人とともに幾度もの窮地を潜りぬけてきた思考だけは止まらなかった。
“私が普通に間に入ってもただ殺されちゃうだけだよね……何か方法を考えなくちゃ”
武器が必要だ。
弥子は今まで怖くて確認していなかった自分のデイパックを下におろすと中身を確認しようとした。
できるだけ急がなければならない。あの白いコートの男が殺されてからでは遅いのだ。
だがその弥子の手を止める者がいた。
「サンジ、さん……」
「はーあ、解ったよ弥子ちゃん。レディにそんな顔させるなんて紳士失格だ」
弥子の顔に笑顔が戻る。
それを見てサンジは優しくほほ笑んだ。
「俺に策があるからよーく、聞くんだ。まず……」
◆ ◆ ◆
星海坊主は微塵の容赦もなく、承太郎の後頭部めがけて黒い棍棒――宝貝・降魔杵――を振り下ろした。
一瞬後には承太郎の顔は潰れたトマトと化す筈だった――だが
支援
「オラァ!!」
「何ィッ!?」
突如横から割って入ってきた黒いスーツの男が承太郎の顔面を蹴り飛ばしたのだ。
結果、降魔杵の狙いは外れ承太郎は奥歯を折るだけで済む。
そして承太郎は無防備に頭部に衝撃を受けてそのまま気絶してしまった。
「貴様、何奴!?」
「あとでな、ほら、弥子ちゃん!!」
突然現れた黒スーツの男――サンジ――は承太郎の胸倉を掴み上げると
基地施設の方向へと思いきり投げ飛ばした。
「てめぇ!」
「おっとっ」
星海坊主はサンジへと棍棒の一撃を見舞うが、それは軽快に回避される。
そしてサンジが投げ飛ばした承太郎はというと、施設入口の前にはすでに回り込んでいた弥子がいて
彼女が承太郎の体を引きずりながら施設の中へと運びこんでしまった。
それを確認すると星海坊主はサンジへと向き直った。
サンジは不適な笑みを浮かべている。
「俺の名はサンジ、お前の相手は俺さ」
「そうかい……俺は星海坊主。さっきの奴よりかはマシなようだな……」
「あんな情けねぇ奴と一緒にするなって!!」
言うが早いか、サンジの高速の蹴りが星海坊主に襲いかかる。
その蹴りを星海坊主は後ろに大きく飛んで回避した。
着地と同時に前に跳躍し、降魔杵を振りかぶる。
「おるぅあぁーーーーーッ!!」
支援
支援
その一撃はコンクリートの地面を大きく砕き、クレーターを穿った。
「うおおおっ!?」
サンジは間一髪で回避に成功したものの、その衝撃に弾き飛ばされてしまう。
その隙を星海坊主が逃すはずもなかった。
倒れたサンジ目掛けて追撃の降魔杵が迫る。
だが単純な直線の攻撃。
サンジは勢いよく転がり起き、その攻撃と交差しながらカウンターの蹴りを放った。
それは星海坊主の腹部へと突き刺さる。
「腹肉(フランシェ)シュート!」
「ぐほぉおっっ!!」
星海坊主は基地を取り囲む塀へと激突し、倒れた。
だがサンジが追撃に移るよりも早く星海坊主は顔をあげる。
「くっくっく、滾る……夜兎の血が……やはり俺は獣だ……それ以外になれないのさ」
「ああん?」
次の瞬間、あっという間に間合いを詰め、星海坊主は降魔杵をサンジへと叩き込む。
「ちぃ!」
焦りながらもそれをかわすサンジだったが、降魔杵は休むことなく次々とサンジの急所に襲いかかってきた。
「つァアアアアアアっっ!!」
“こ…この野郎! さっきのダメージ全くねえのか!”
途切れることのない黒い暴風のただなかでサンジは星海坊主のタフネスに驚愕する。
申し訳ありませんあと1時間ほど時間をください……
糞ワロタw支援
“だが弱点は見つけた! これなら弥子ちゃんに話した『あの作戦』を使うまでもねえな”
サンジが見つけた星海坊主の弱点。
それは攻撃が単調なことだった。
スピード、パワーこそ脅威だが獲物をただ振り回すだけの攻撃しかしてこない。
棍棒のリーチもすでに掴んだ。
“次だ、次の攻撃を逆手にとって沈めてやる!”
「おぅりゃぁああああッッ!!」
狙い澄ましたかのように御あつらえ向きの大振りの攻撃がやってきた。
“ここだ!”
降魔杵の攻撃を?い潜り、サンジは星海坊主の首を狙いに行く。
首肉(コリエ)からのコンボ技、羊肉ショットでとどめを刺すつもりだった。
しかし、そこで想定外の事態が起きる。
サンジが攻撃に態勢を移した瞬間、星海坊主はニヤリ、と哂った。
「降魔杵変形!!」
なんと黒い棍棒のようだった降魔杵が一瞬でその姿をかえ、まるで薙刀のような大太刀へと姿を変えたのだ。
「んな?」
「悪いな、許しは請わねぇよ」
変形した降魔杵はサンジの見切りを狂わせ、無情にもその胴を深く薙いだ。
鮮血が、舞う。
ってあれ? し、支援!
支援
一気にバトル支援!
「ぐぅ――――」
サンジは喉から吐き出されようとした絶叫を両手で抑え――ゆっくりと両膝を地についた。
「倒れねぇ、声も上げねぇ、か。見上げたもんだ」
「う、る…せぇ」
“ここで声を上げちまうわけにはいかねぇんだ。弥子ちゃんが……きちまう”
絶叫を聞きつければ、あの可愛い少女は震えながらもここへやってきてしまうだろう。
サンジを救うために。
それだけは、それだけは絶対に避けなければならなかった。
“ち、畜生……甘く、見過ぎちまった……せめて、『作戦』だけは……”
「情けだ、介錯してやる。最後にいい残すことはないか?」
星海坊主は静かに刃をサンジの首筋に当てる。
「そ、…だな。あ、あんた、コレ…を」
サンジは懐から一枚のカードを取り出すと星海坊主へと差し出す。
「ん?」
星海坊主が興味を抱き、ゆっくりとカードへと手を伸ばす。
その瞬間、サンジの唇が動いた。
「左遷(レルゲイト)オン・星海坊主」
「!」
支援
呪文とともにカードが消失する。
そして星海坊主は声を上げる間もなく、この場から消え去った。
完全に。
◆ ◆ ◆
星海坊主とはもちろん本名ではない。
だがこのサンジの支給品、グリードアイランドの魔法カードは
ゲームに登録された名前を対象にすることで発動するのだ。
おそらくワポルは星海坊主の本名を知ることができなかった。
その為、星海坊主は『星海坊主』という名前としてこのバトルロワイアルというゲームに登録されていたのだ。
かつてこの魔法カードが元々存在していたグリードアイランドでは偽名でゲームに登録していた男がいた。
だがそれにも関わらず魔法カードの対象となりえていたことと同じである。
◆ ◆ ◆
「は、は……最初からこうすりゃ良かったぜ」
作戦がなくても勝てる、無力化できる相手と侮った結果が今の惨状だ。
だが、最悪の事態は免れた。
あの恐ろしい男はこの島の何処かへと転移した。
ただ一時の安息かもしれないが、危機は去ったのだ。
「さあ、弥子ちゃんに料理を作ってやらなきゃ、な……」
サンジは立ち上がろうとするが、足に力が入らず無様にうつ伏せに地に倒れた。
だがサンジは這いつくばりながら、それでもなお弥子のもとへ行こうと身体を引きずる。
「何がいいかな、やっぱりカレーが手頃か……でもやっぱり手早くできるパスタなんかも……」
ずるずる、ずるずると、彼は、彼にできる最速の動きで弥子のもとへ行く。
支援
支援
支援
「ち、口の中が血だらけで味がわからねぇや……仕方ねえ、あの情けない男に味見の手伝いでもさせるか」
文句は言わせねぇ、と呟きサンジは進む。前へ、前へと。
彼は軽快にしゃべっているつもりだったが、それは声というよりただ喉から空気が漏れている、というだけだった。
「さあ、早く行ってやらなくちゃな」
行って、元気な顔を見せてやれば弥子は安心するだろう。
そして腕をふるってとびきりの料理を振る舞えばその笑顔は確かにサンジの勲章となりえる輝きを持つに違いない。
そしてサンジは震える手を伸ばし……そこで彼の時間は永遠に停止した。
◆ ◆ ◆
弥子は白いコートの大男を医務室のベッドにようやく横たえさせると一息ついた。
100s近い重量を一人引きずっていたのだ。
華奢な彼女にとってとんでもない重労働だった。
しかもなぜか気絶しても刀を手放さないのだから苦労もひとしおだ。
「あーもう、お腹すいたあ!」
だがもうすぐサンジが帰ってきて料理を作ってくれるはずだ。
サンジは彼の支給品だった魔法カード左遷を使ってあの男を何処かに飛ばしたらすぐに来ると言っていた。
だから今頃はもう危機は去り、この背中とくっつきそうなお腹を満たすことができるはずだ。
「待ちきれないなぁ、そうだ、食堂の場所を確認してこよう!」
彼女は期待に満ちて走り出す。
あの頼りになるサンジが自信をもって請け負ったのだ。
何一つ疑ってはいなかった。
支援
だがそれでも……不安を覆い隠すために空元気を出していたのは否めない。
“大丈夫、大丈夫だよ、きっと――”
湧き上がる黒いもやもやとした不安を、強引に握りつぶし……弥子は廊下へと飛び出していった。
【C-6 中央西・基地施設/一日目 黎明】
【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 未確認支給品1〜3(未確認)
【状態】:健康 疲労による大きな空腹
【思考・行動】
1:食堂を探しに行こう!
2:サンジさんは大丈夫だよね……
3:この男の人どうしようかな
4:死にたくない、でも誰かを殺すのなんて…
※サンジと互いの世界について幾ばくかの情報交換をしています。情報の深度は他の書き手にお任せします。
※参加時期については後続の書き手に任せます
ただし、XIを知っているので、3巻以降であることは確かです
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
【装備】:妖刀・村麻紗@銀魂
【所持品】:支給品一式
【状態】:気絶 投げ飛ばされた衝撃による軽度の打撲 奥歯が一本折れています
【思考・行動】 気絶中につき不明
※承太郎は吉良と同じ時間軸から呼び出されています。
支援
支援
※妖刀・村麻紗について
この妖刀は一度手にすれば離れません。
また持ち主の意思に関わりなく、『危険な場面』では行動・言動がヘタレオタク化します。
行動・言動がヘタレオタク化しても承太郎の精神は変化していません。
(通常時は呪いの影響はありません)
原作では土方の精神を乗っ取っていましたが、それは数日経った後のことであり、
このロワの開催期間中に承太郎の精神が乗っ取られることはありません。
※承太郎は現在、村麻紗の影響によって闘争本能を表に出せないため、
闘争本能で操作するスタンドを出すことができません。
【?? ???/一日目 黎明】
【星海坊主@銀魂】
【装備】:降魔杵
【所持品】:支給品一式 未確認支給品0〜2
【状態】:健康 やや興奮状態
【思考・行動】
1:???
2:神楽を探し出す為に優勝し元の世界へ帰る。
※宝貝・降魔杵はワポル(?)によって仙道以外でも使用できるように加工されています。
※星海坊主はこの島の何処かへと瞬間移動しました。
どこに飛ばされたかは次の書き手にお任せします。
※サンジの所持品はその場に放置されています。(支給品G・I魔法カード二枚)
【サンジ@ONE PIECE 死亡】
投下終了しました。
途中で送信してしまいました。
たくさんの支援どうもありがとうございました。
乙です
承りwwwwwwこれは新天地wwwwwwww
乙
承りは普段はクールなナイスガイだけど戦闘時はヘタレになるって認識でいいの?
海坊主って強いな・・・
投下乙!
サンジ……最後まで女性を尊重して女性を守って逝ったか…南無
果たしてサンジの死を知ったヤコがどうなるか……
直みたいに強く頑張って欲しい
頼れるのは承太郎なんだけど……今のところかっこいいシーンがねえw
ていうかこれは間違いなく1番情けない承太郎ww
星海坊主は、神楽のためにマーダーとなったか…
果たしてどこへ飛ぶのやら、楽しみです
投下乙です
いきなりヘタレ化した承太郎に吹いたwwwww
って笑ってたらサンジが…
承太郎にはサンジの仇打ちも兼ねて星海坊主と再戦して欲しいけど…
このヘタレっぷりじゃ無理だろうなw
これはGJすぎるw
凄い面白かったw
承太朗の新境地開拓w
サンジは最後までサンジでらしくて良かった。
海坊主は実力的にも上位マーダーになれそうだ
GJでした
やられたよ、承でまさかこんなネタをやろうとはwww
サンジのこともアレだったけど、それ以上にわらかしてもらったわ
えー……投下します
「うっひょー広っれえ〜! くそぉ……サニーがいればすぐにでも大航海してやんのに!」
島の最南端、道路から少し外れたところにある崖。
本来なら人が落ちないようにするための柵が敷いてあるべきだが、この島に限っては一切そのようなものは見当たらず、そのために少しでも足を滑らせれば為すすべもなく崖下の海に転落してしまう。
にも関わらずその崖っぷちに自分から望んで向かうような者は、自殺志願者かもしくはよほどの命知らずぐらいなものだろう。
そして間違いなく後者に当たるであろう麦わら帽子を被った少年――モンキー・D・ルフィはそこに仁王立ちとなり、眼前に広がる広大な海を満面の笑みで見渡していた。
「何をしておる、置いてゆくぞルフィ!」
「え〜? だってほら見てみろよ真夜! まだ今は見えねえけど、もう少し待てばあの海の向こうから太陽が出てきてすっげえきれいになるんだぞ!」
「今はそのような場合ではなかろうに……」
「まったく、あの頃の悟空を思い出させるのう」
一人気ままにはしゃぐルフィを横目に、棗真夜と武天老師……亀仙人の二人は深くため息をついた。
彼ら三人はとりあえず岩山から下りると、さてどこへ向かおうかと悩んだ際に地図を見て、とりあえず中央にある城周辺の町を目的地にしようと決めたのだが……
その矢先にこの海を見つけたルフィが勝手に突っ走って、慌ててそれを追いかけてきたのがこの現状だ。
まあ中央に向かうといってもそこに何があると決まったわけでもなし、これも数分で済むだろうからあまり腹を立てるべきではないのかもしれないが。
「それにしても老師、あの岩山でルフィが話したこと……真であろうか?」
彼の気が済むまでしばらく放置しておこうと決めたらしく、真夜は近くの建物を背にしてちょこんと座り込むと、同じく隣に座り込んだ亀仙人に向かって聞いてみた。
ルフィと初めて出会って少しの間話をし、彼から聞き出した情報は主に以下の通りだ。
まずルフィはとある海賊団の船長で、幼少時にゴムゴムの実とやらを食した結果、全身がゴムで出来たゴム人間になってしまったこと。
次に、あのワポルという男はルフィと同じようにバクバクの実を食べたらしく、それで岩だろうが鉄だろうが何でも食べることのできる特殊な体質になっていること。
そして最後に、ワポルはかつてドラム王国という国の王であったらしいが、事情はよく知らないがその国を一度出て行ってしまい、また舞い戻ってきたところをたまたま出くわしたルフィたちによって吹っ飛ばされたということ。
ルフィの説明はところどころに擬音が入ったり、本人もよくわかっていなかったりすることが多くていまいち不明瞭な点が多かったものの、なんとか聞き出せた情報はこのくらいだった。
……だがその話を聞いたところで、やはりワポルがこのような殺し合いを開くに至った経緯は一切わからない。
そもそも奴にそのような力はないはずだ。
せいぜいが何でも食べれるだけの一国の王にしか過ぎない男が、どうしてこんなことができる?
疑問は尽きなかったが、それでもこうなってしまった以上は何かしらの理由があるということなのだろう……
「…………」
「…………」
「……老師?」
さっきから隣で黙りこくっている亀仙人に不審なものを感じ、真夜は彼の顔を覗き込んだ。
サングラスに隠されているためにその目を見ることはかなわなかったが、亀仙人は真剣な顔をして真夜をじっと見つめている。
この老人はひょうきんな性格とは裏腹に実力は確からしい。それは今までの行動からも片鱗は窺える。
まさか敵がこちらを襲わんと、何処からか隙を狙っているのを察知したとでもいうのだろうか。
重々しい雰囲気が漂う中、亀仙人は静かに口を開いた。
支援
「……のおマヤちゃん、やっぱり元のピチピチギャルに戻ったほうが」
「ふんっ」
小さい身体に全身全霊の力を込めてスケベ爺の顔面に拳をめり込ませる。
鼻っ面を押さえて転げまわる爺を無視して真夜はやれやれとばかりに頭を抱えた。
この老師といい、あのルフィといい、どうにも今一つ頼りにならない。
戦闘力はあるのかもしれないが、それ以前の問題としてなんというか、人間的にこう……
やはりここは、柔剣部部長の自分がリーダーとして引っ張っていくべきなのかもしれない。
なに、問題児集団をまとめるのは普段から慣れている。
片手に持った、子供用のサイズに縮めた如意棒をくるくると器用に回しながら、真夜はそんなことを心に思う。
そういえば、とその如意棒を扱っていたら思い出した。
真夜たち三人に配られた支給品のことだ。
彼女に与えられた支給品は結局これ一つだけだったが、亀仙人とルフィにも一応それぞれ用意されていた。
亀仙人には、何故か『44』と書かれたバッジと……正直、これはどう贔屓目に見ても戦いに役立つとは思えない……やけに鋭利に研がれた石の刃物の二つ。
大したものではないと最初は思ったが、この石で作られたナイフが意外にもとんでもない切れ味を誇っていた。
途中草木が生えているところで試してみたら何の手応えもないのにスパスパと綺麗に切れる。
その上、いくら切っても一切磨耗することはない。
さすがにもっと硬いものでもぶつければ刃こぼれくらいはするだろうが、下手すればこれは新品の包丁なんぞよりもよほど性能が良いのではなかろうか。
彼の支給品は特別良いというわけでもないが、ちゃんと使える武器が入っているだけまだ当たりだと言えるだろう。
しかしもう一人、ルフィの支給品はといえば……
支援
――みかんだった。
何の変哲のない、悪魔の実とかいうものでもない、正真正銘のみかんが三つ。
当然、それらは既にルフィの胃袋の中だ。
……まあワポルがルフィに倒されたことがあるというのが本当ならば、嫌がらせ目的でわざとこれをルフィにあてがった可能性もある。
ルフィ本人は嫌がらせどころか、むしろみかんが食べられて大層満足していたのだが。
「やはり、前途多難かのう……」
なおも崖のほうで一人はしゃいでいるルフィを遠目に見つつ、真夜はもう何度目になるかもわからないため息をついた。
……と、気づくとさっきまで隣で背中の甲羅を地面につけてそれを支点に転がり続けていた亀仙人が、もう痛みからは復活したのか静かにその場から立ち上がっていた。
「……? どうした老師。また儂にセクハラまがいな発言をするつもりなら……――――ッ!?」
その時、真夜の息が止まった。
別に何かされたというわけではない、だが止めざるを得なかった。
――空気が一瞬にして重く、張り詰めたものへと変貌したのがわかったからだ。
真夜は完全に静止した時の中で、この空間を作り出した元凶を見出さんと自分もまた、亀仙人が見ている方向――道路が続いている先へと目を向ける。
この空気にいち早く気づいた亀仙人はといえば、何も言わず、何も構えず、だがサングラスの奥の目を鋭くして全身の筋肉に緊張を走らせていた。
遠くにいるルフィも、何か防衛本能が働いたのかさっきまではしゃいでいたのが嘘みたいに真剣な顔つきになり、じっと二人と同じ方向を見つめている。
――『何か』がいる。
瞬間的に、そしてある種必然的に三人の思考は一致する。
最初、それが人間の放つ殺気だとは思わなかった。敢えて言うならば餓えた野獣か。
だがそれでもまだ足りない……もはや、まったく未知の領域と言っていい。
この世の全ての負の感情を一つに凝縮したらこんな感じだろうか。
「何者じゃ……」
その時初めて、真夜は亀仙人の真剣な声を聞いた――はずなのだが、今の彼女はあまりにもこの尋常でない殺気に意識が向けられていたため、それに気づくことはなかった。
姿こそ見えないが、黒いものが少しずつこちらに近づいてきているのがわかる。
冷や汗が頬を伝い、顎へ向かい、そして地面に滴り落ちるに至るまで、真夜は微塵も動くことができなかった。
やがて、すぐ側にあるビルの扉が開き、中から一人の男が現れる。
その男は非常に恵まれた体格を黒いコートに包み込み、悠然とした足取りで一歩ずつ、確実にこちらに向かって歩いてきた。
オールバックに固めた髪、鼻の上あたりを横一文字に切り裂いた傷跡、何よりもその男の発するどす黒い闘気が、彼がカタギの人間ではないということをあらん限りに示していた。
「一つ、貴様らに問おう」
まだ少し距離が開いているところでぴたりと歩みを止めると、男は低い声で三人に問いかけた。
「貴様らは、俺が直接手を下すに値するか?」
「……先に質問をしたのはこっちの方じゃ。お主は何者じゃ」
支援
男からにじみ出てくる圧倒的な圧力に、しかし決して呑まれることはなく亀仙人は冷静にそう聞き返した。
それと同時、背負っていた自身の甲羅を地面に落とす――すると、コンクリートで整備されていたはずの道路に、甲羅が落ちた衝撃で無数のヒビが走った。
この老人は、今までこんなものをつけて平気な顔で歩いていたのかと真夜は驚く。
それを見た男は一瞬目を大きく開いたが……次の瞬間には微笑を浮かべる。
「ふっ……なるほど、度胸だけはあるということか」
「もう一度だけ聞くぞ、若いの。お主は――何者じゃ」
「いいだろう、爺。他のガキ共は知らんが、たしかに貴様は戦い甲斐がありそうだ……答えてやろう。俺は宮沢鬼龍。流派は……――灘神影流」
「わしは武天老師……まあ、周りからは亀仙人と呼ばれておるがの。流派はその通称が示しておる通り、亀仙流じゃ」
「亀仙流……知らんな」
「それはお互い様じゃ。わしもお主の灘神影流なんぞ知らん」
その会話の内に、亀仙人とこの鬼龍というらしい男は互いに相手の力を推し量っていた。
流派はたしかに双方共に聞いたことがないが、それでもこの眼前にいる男が只者ではないということくらいわかる。
一触即発の空気……何がきっかけで爆発するかわからないこの場で、取り残された真夜はとても喋ることも、動くこともできなかった。
達人クラスの二人がこうして向かい合っているのだ。一体どうしてその中に割り込めることができようか。
――いや、一人だけそれができる者がいた。
意識しているわけではないだろうが、この静寂を最初に打ち破らんと拳を振り上げて猛然と駆けてゆく男。
「俺はルフィ! 流派は特になし! よろしく!」
「!」
この男もまた鬼龍の殺気に動じた風もなく、まったく奴を恐れていない。
鬼龍の強さを感じ取っていないはずはないだろうが、それでも決して臆することなく向かっていけるのは彼の精神力が強いためか、はたまた単純に馬鹿なだけか。
どちらにせよ、ルフィは鬼龍に目掛けて拳をぶち込まんと『彼特有の動作』を開始した。
「ゴムゴムのぉ……」
「小僧、貴様は邪魔――」
ルフィと名乗った小僧とこちらの間の距離、およそ十五メートル。
奴の攻撃が届くまで、まだあまりに距離が開きすぎている……あんなところから拳を放とうとしても到底届くはずがない。
――そう鬼龍は判断したために特に防御も回避も行わなかったのだが、それはあくまで彼の世界での常識に基づいた判断だ。
そんなものは、あらゆる異能力者が集まったグランドラインを冒険している男には通用しない。
「銃(ピストル)!!」
「!?」
一瞬、目の錯覚かと鬼龍は自分の目を疑った。
ここから随分と離れている――それはたしかだ。
故に、あんなところから放っている奴の拳が届くはずがないのだ。
だが、その届くはずのなかった拳が今こうして、今まで彼の培ってきたあらゆる常識を覆して猛スピードで飛んできている。
いかに幾多の戦いを経験してきた鬼龍とて、これはさすがに考慮の外と言うほかない。
支援
瞬間、凄まじい轟音と共に鬼龍の巨体が一瞬宙に浮いたのを、真夜はたしかにその目で見た。
あのルフィという男、戦闘力はありそうだとは思っていたものの、実際こうして目の前にしてみると度胸、破壊力共に予想以上だ。
だが背中から地面に派手に倒れるかと思いきや、鬼龍は半歩分後ろに飛ばされただけで、相変わらずその二本の足は宿主をしっかりと支え続けていた。
見ると、鬼龍は自身の前に両腕を交差させており、確実に彼の顔面を捉えていたはずのルフィの拳はそれによって阻まれていた。
腕を多少痛めたかもしれないが、それでも鬼龍本人はさしてダメージは負っていない。
ルフィの強さが予想以上ならば、あの一瞬の間にガードが間に合ったという事実一つとっても、鬼龍の強さもまたこちらの予想を遥かに超えている。
「……小僧、貴様はなんだ?」
鬼龍はゆっくりと顔の前に掲げていた両腕を下ろすと、殴り損なって悔しげな顔をしているルフィを初めて本格的に意識した。
かつて鬼龍が闘ってきた相手にも、リーチを少しでも伸ばそうとパンチをする際に自身の間接を外したり、そう見せかけるために目の錯覚を引き起こさせたりする輩は存在した。
だがこの麦わら帽子を被った小僧は、それらとは確実に違う。
明らかに、人間である限りは有り得ない距離から腕を伸ばしてきた。
対してルフィは、非常にあっさりと答えてくる。
「俺はゴムゴムの実を食べた、ゴム人間だ!」
「…………」
意味がわからない。
まるで無邪気な子供の夢想した世界をそのまま具現化したような、そんな答えだった。
むしろこの男の存在自体がそんなものなのかもしれないが。
……だがその答えがどうであれ、奴の腕が驚異的なリーチを持っていることに変わりはない。
さらに言えば、ゴム人間などと豪語しているということは腕だけでなく、足や首も伸ばすことができる可能性が高い。
厄介な相手だ……とは、鬼龍は思わなかった。それならそうと認識した上で戦うまでのこと。
相手に手の内を見せた時点で、奴の伸びる能力はただの曲芸へと価値が下がる。
「もういっちょ! ゴムゴムのお〜っ」
ルフィが再び攻撃を開始せんと突っ走ってくる。
先とゴムゴムの銃と似たような攻撃だが、違うところはルフィ本人が勢いをつけて既に鬼龍の懐に潜り込んでいるところだ。
腕を後方に伸ばすだけでなく、同時に自身も前に走ることでゴムの伸縮域を限界まで引き伸ばし、それによって更に拳の威力を高めた技。
「銃弾(ブレット)ォッ!」
ゴムゴムの銃と比して威力だけでなく、速さも格段に上がっている。
常人なら見切ることすら不可能なルフィのパンチ……しかしこの鬼龍という男に限っては話は別だ。
さっきのようにまるで対処していなかったのならばともかく、事前に何かしら来るとわかっているのならばこの程度の攻撃はどうとでもなる。
猛烈な勢いで飛んでくるその拳が自身の顔面に当たる直前、いとも簡単にそれを片手で払い、一瞬にして軌道を逸らす。
「おっ!?」
それによってルフィは一瞬バランスを崩してしまう。
そうなれば後に残るのは、不用意に鬼龍の間合いに飛び込んでいるルフィの体のみ。
その瞬間、ルフィはただ鬼龍に殺されるためだけに近づいてきた、哀れな羽虫そのものと化す。
何の容赦も躊躇もなく、彼は完全に無防備となっているルフィの身体に必殺の蹴りを浴びせた。
「!?」
……だがその時、鬼龍はその足に妙な感覚を覚えた。
まるで手ごたえがないのだ。
いや、正確には何かを蹴ったというのはわかるのだが、肝心の骨が折れ内臓が潰れゆくいつもの慣れた感覚が、まったくない。
――それによって鬼龍は理解する。
この男は単に体の一部をゴムのように伸ばせるだけというわけではなく、その名の通り全身がゴムでできているのだと。それも遺伝子レベルでだ。
「効かねえよっ」
威力自体は死んでいるわけではないらしく、鬼龍の蹴りによって空高く吹き飛ばされたルフィが叫ぶ。
「ゴムだから!」
そして、さっきのお返しだと言わんばかりに空中から蹴りを繰り出した。
鬼龍の左前方から、何もかもを粉砕するかのようなルフィの足が飛来してくる。
「ゴムゴムの鞭!」
多少の岩盤ならば一撃で粉砕できる破壊力を持ったルフィの蹴り。
だが鬼龍はそれを避けることも防御することもせず、ただ衝撃に備えるために体を低く構える。
奴が何をしようとしているのか、ルフィにはわからない。わからないが、とにかく彼にできることは全力で足を振りぬくことのみ。
これはさすがの鬼龍といえど、まともに当たればただではすまないはずだ。
――すまないはずだったのだ。
「い!?」
ルフィは驚愕する。
鬼龍はたしかに防御も回避も行わなかった。ただ、ルフィの蹴りを……その両手で掴んでみせただけだ。
蹴りの衝撃が体に伝わっていないはずはないだろうに、それでも掴んでみせたのだ。
まさか自分の蹴りが防がれるどころか掴まれるとは夢にも思わず、ルフィはあまりのショックに、次に自分の体がどうなるのかを忘れた。
ゴムという性質上、一度伸びたものは必ず収縮する。
そして一方が鬼龍によって捕えられているということはつまり、宙にいるルフィの体の方が足に引っ張られる形でどんどん鬼龍の元へ吸い寄せられるように縮んでいくのだ。
「打撃が効かないだと? 自惚れるなよ小僧……貴様に通用しないのはただ、力任せに撃つだけの初歩的なものに過ぎん」
その縮んでいく過程で、たしかにルフィは鬼龍のその言葉を聞いた。
――そして次の瞬間、彼の体に衝撃が走る。
「ぁぐあッ……!?」
鬼龍の突き出した掌底が、ルフィの鳩尾に突きこまれたのだ。
いつもならゴムという特性をもつルフィに普通の打撃は一切通用しない。衝撃を吸収してしまうからだ。
だが鬼龍の狙いはルフィの体ではなく、その中身……すなわち内臓器官そのものに『気』を送り込み、直接衝撃を与えること。
かつてルフィと戦った相手に『六王銃』という、これと似た技を使ってきた者がいたが、威力は恐らく同等かもしくはそれ以上だ。
ルフィは今度は吹っ飛ぶことはなく――血を吐いて、その場に崩れ落ちた。
「発勁……武道における本物の打撃とは、こういうものだ」
倒れ伏したルフィを見下ろしながら、鬼龍は呟く。
普段の状態ならともかく、内臓がいかれている今なら普通の攻撃も通用するかもしれない。
そう思い、鬼龍は彼に止めを刺さんと足を振り上げた。
「わしらを忘れてもらっては困るのお」
その時、軽い老人の声が背後から聞こえてくる。
いつの間に自分の後ろへと移動した――と思うべきところなのだろうが、このタイミングで仕掛けてくることも、この亀仙人のスペックならば瞬間的に背後へ回るのが可能だということも鬼龍にはわかっていた、
「忘れてなどいない。だからこそ貴様らは今まで俺に仕掛けてこれなかったのだろう」
そう……亀仙人と真夜がずっとルフィ一人に鬼龍の相手を任せっぱなしにしていたのは、二人が戦っている間に彼の隙を突こうとしていたためだ。
少しでも隙があれば攻め入るつもりでじっと待っていたのだが、鬼龍はその点見事だった。
ルフィと互角以上に戦いながらも決してこちらに対する警戒を怠ることなく、結果亀仙人ほどの使い手でもそこに一分の隙も見つけることができなかったのだ。
だがさすがにルフィにとどめが刺されることだけは防がねばならず、亀仙人はそこで無理にでも割り込むしかない。
そしてそれを全て読んでいた鬼龍は、倒れているルフィのことはひとまず置いておき、上体を思い切り捻ると後ろにいる亀仙人目掛けて裏拳を放った。
――だがそこにいる亀仙人の体は、圧倒的な質量を誇る鬼龍の拳がぶち込まれると同時、ぐにゃりと変化した。
「!」
「ほほ、俗に言う残像じゃよ」
声が聞こえてきた方向……すなわち自身の真下に首を向けようとしたが、次の瞬間に彼が見たのは何故か空だった。
首が下がりかけたその時を狙って、逆に下からの亀仙人の掌打によって勢いよく上に押し上げられたからだ。
支援
「ぐ……ッ」
人体というものはどんなに鍛えても、完全にカバーすることのできない弱点がいくつかある。
そのカバーしきれない致命的な弱点の一つは、脳が揺れること。
これにはたまらず鬼龍は、この時初めて体をよろめかせて後ろに下がった。
そこを逃す手はない。亀仙人は宙に舞い上がって鬼龍の背丈を飛び越えるほどの跳躍力を見せると、その顔面に思い切り蹴りを食らわせた。
一度バランスを崩した人間は脆い。それは先ほどのルフィでも実証済みだ……そしてこの鬼龍もまた例外ではない。
さらに、かつて武道の神とまで謳われた亀仙人の蹴りだ。
単純な破壊力ではルフィの方が上かもしれないが、鋭さが格段に違う。
遂に鬼龍をそれまで支え続けてきた二本の足は地面を離れ、彼は背中から後方にある建物の壁まで飛ばされた。
「ちぃっ」
だがこんなものでやられる鬼龍ではない。
一刻も早く朦朧とする意識を回復させなければならないが、立ち止まっては追撃がくることは必至。
追突した壁から素早く抜け出ると、すかさず大きく右へ跳んだ。
案の定、その数瞬後に亀仙人が自分が今いた場所に突撃し、壁ごと建物が破壊されたのをぼやけた視界の中で見ることができた。
もう少し判断が遅れていればやられていたかもしれない――
「老師が言っておったろう。『わしら』を忘れてもらっては困ると」
その時――銀髪の若い女の『顔』が上空から降ってきた。
何故体よりも先に顔が見えたかといえば、答えは簡単だ……その女が、ムーンサルトの要領で空中を舞っていたからだ。
それは、その女の背中に翼があるのではないかと一瞬疑うほどにきれいな光景だった。
言わずもがな、彼女は棗真夜。
既に身体操術は解いており、本来の姿である十七歳の美少女に戻っている。
艶かしい姿態を恥ずかしげもなく見せつけるように、宙にその身を投げ出している。
片手に亀仙人の支給品であった石のナイフを借り受け、それを一気に振り下ろさんと鬼龍の頭上に降りてくる――
支援
(*^_^*)
携帯なので代理投下できないので、誰か代理投下頼む。
感想書きたいがネタバレになるw
「俺も言ったはずだ――忘れてなど、いないと」
「!?」
ふと、真夜は鬼龍の姿勢がおかしいことに気づいた。
こちらに背を向けたまま右足一本で立っているが、もう片方の足がどこにも見当たらないのだ。
どこだ、どこに行った。もう一本の左足は、どこへ消え……――ッ!?
「ぐあっ!?」
……死角から放たれた鬼龍の回し蹴りにより、真夜の体は一瞬にして地へと叩き落された。
「ガッ……」
咄嗟に体を捻ることでまともに喰らうのは避けられたものの、与えられたダメージそのものは消えていない。
まさか、完全に回復しきっていない頭でこれほどまでに完璧な回し蹴りをしてくるとは思っていなかった。
それも威力精密さどれをとっても、今までの相手とは比べ物にならない。
これが、この鬼龍という男の長年の戦いによって積み重ねられた経験と勘というものか。
どうやら鬼龍は相手が女だからといって手加減するような男ではないらしく、倒れ伏した真夜の背骨に足を乗せると自身の全体重をかけてきた。
「あが……ッ、ガッ、――ッ、――ッ!」
たまらず、真夜は肺の奥から搾り出すように苦悶の声を出した。
ミシミシと体のどこかが悲鳴をあげている。
視界がゆがみ、目の端から生理反応としての涙がにじみ出てくる。
「女が男に勝つことなどできん」
鬼龍が、まるで独り言を呟くように口を開いてきた。
その口調には侮蔑といったものはまったく感じられない。
これは、むしろ……そうだ、哀れみだ。
女として生まれてきた真夜に対して、この男は心底哀れみを覚えているのだ。
「これを差別と思うか? 違うな……厳然たる事実だ。筋力から骨格一つ一つに至るまで、女が格闘技において男に優れたものなど、何一つない」
「……ッ!」
何か言い返してやりたいが声が出てこない。
鬼龍のかける力は留まることなく、どんどん重くなってきている。
これ以上やられると、本格的にまずい――
「ぬ!? マヤちゃん今行くぞい!」
遠くから、ようやく崩壊した壁から出てきた亀仙人の声が聞こえた。
だがそれがとても間に合わないだろうことは、真夜自身がよく知っている。
鬼龍があとほんの少し足に力を入れるだけで、自分の華奢な骨はあっけなく折れてしまう。
「女として生まれてきた自分の運命を呪え」
その言葉を最後に、真夜の背中に乗せた足がほんの一瞬軽くなる。
だがこれは、直後に訪れるとどめのための前ふりに過ぎない。
――もはやこれまでかと、覚悟を決めたその時。
「こんにゃろォ!」
「!?」
今の今まで気絶していたと思っていたルフィが、例のごとく自身の腕を伸ばして、鬼龍の横っ面を殴りぬいた。
今度こそまともに喰らってしまい、鬼龍の巨体が大きく揺れ、真夜の背中から足が離れる。
「礼を言うぞ、ルフィ!」
その隙にうつ伏せの状態から前に体をずらして一瞬丸まると、真夜は倒立するような形で足を上へと突き上げた。
そしてそのまま開脚して肉付きのいい腿を露にし、地面のアスファルトについた両手を軸に思い切り回転する。
それによって真夜の足が鬼龍の腰に直撃し、立て続けに彼の体勢を崩すことができた。
――さらにそこへ、亀仙人が飛んでくる。
「喰らうがよい!」
駆けてくる勢いがプラスされた亀仙人の一撃。これをもらえば鬼龍も無事では済まないはずだ。
ほぼ勝ちを確信した真夜の顔に――しかし、何か赤いものが飛び散った。
「ぐおっ……!?」
亀仙人のうめき声に少し遅れて、彼の愛用していたサングラスが割れたまま、地面に音を立てて落ちた。
見ると攻撃を仕掛けようとしていたはずの亀仙人が、自身の顔を片手で押さえたまま立ち止まっているではないか。
そこから視線を誘導すると、鬼龍の下げている右の指に血が滴り落ちているのがわかった。
「お主、老師の目を……ッ!」
全身を巡る血が一瞬で冷えていくのを真夜は感じた。人が本当に怒りを覚えた時に起こる現象だ。
亀仙人が押さえているのは顔……もっと正確に言えば、目の部分。
鬼龍はあの瞬間、亀仙人の攻撃をもらう前に相手の目をその右手の指で潰したのだ。
「老いたな、武天老師」
当の鬼龍は、どこか残念そうな声でぽつりとそう口にすると、立ち止まった亀仙人に上段蹴りを食らわせる。
元々体格に差のある二人だ。鬼龍の蹴りをまともにもらい、亀仙人は敢え無く吹っ飛んだ。
「何やってんだお前ェ! よくも亀のじいちゃんを!」
亀仙人がやられて黙っていられないのは真夜だけではない。
怒り心頭といった様子で、ルフィが勢いに任せたまま突っ込んでくる。
だが無為無策にやってくるだけでは鬼龍の相手になるはずもない。
今度こそルフィを一撃で仕留めようと右手の五指を曲げ、必殺の体勢に入る。
「させぬ!」
手に持つ石のナイフで、真夜は鬼龍の体を切りつけんとアスファルトを蹴って飛び掛る。
だがそれは咄嗟に身をかわした鬼龍の、身にまとったコートを一部切り裂いただけに留まってしまう。
しかしそれだけで終わるわけがない。たとえ石でできた原始的な武器といえど切れ味は抜群だ。
せめて奴の腱のどこかしらを切ることができれば、状況は一変するはず。
そう信じて真夜は二撃目、三撃目を繰り出していく。
「……!」
その戦闘を見て、ルフィは立ち止まった。
自分の割り込める隙間が、まったく見当たらなかったからだ。
(たしかに、単純な肉弾戦においては女は男に敵わぬかもしれん)
そんなことはこの男に言われるまでもなくわかっている。
――だがしかし、その差を埋めるためにこうして武器というものが存在するのだ。
いかに肉体が強力なれど、一振りの刃の前には皆平等にただの肉の塊に過ぎない。
「それが貴様の切り札か」
「ははっ、どうかのう!」
果敢に攻め続ける真夜。
だが時間を長引かせては、相手に反撃のチャンスを与えるだけだ。
ここは一瞬でケリをつけなければならない――
「!」
その時、下から上へと真っ直ぐに手を蹴り上げられ、真夜の持っていた石のナイフが天高く舞い上がった。
唯一といっていい武器を失い、真夜の顔が絶望に満ちる。
「この程度か」
右手を跳ね上げられたためにガードが空いた。
そこに鬼龍の一撃が見舞われることは誰の目から見てもわかりきっている。
わかってはいても、避けられない。
――避ける必要が、ないからだ。
「誰が武器が一つだけと言うた!?」
叫び、真夜は石のナイフを持っていた右手とは別に……左手に隠し持っていた一本の小枝を取り出した。
それは正真正銘ただの小枝。
石器ナイフの切れ味を試すために草を切っていた際、ついでに近くに生えていた木から拝借しただけの小枝。
――だがそれも、真夜にかかれば強力な武器と化す。
真夜の『氣』は『木』。岩をも断つ樹の刃。
この世における様々な物質に氣を送り込むことで、彼女は先の石のナイフとは比べ物にならないほどの殺傷力を持った刃を作り出すことができるのだ。
「でやあっ!」
そして硬質の刃と化した小枝を、思い切り切り上げる。
この男に対してちまちまとした攻撃はさして効果のないことだ。
彼女の狙いは最初から一つだけだった。それこそ一瞬で勝負をつけることができる箇所。
(首輪か……!)
鬼龍の顔に動揺が生まれる。
体そのものを狙ってくるのならば、体内に気を練ることで軽傷に済ますことも不可能ではない。
だがこの女はそうではなく、首輪を傷つけてそれを爆発させることを狙っている。
これはさすがに鬼龍といえど防ぎきれるものではない。
「おのれっ……」
「喰らうがいい!」
真夜の二段構えの策は、結論からいえば成功だった。
咄嗟のこと、それもこんな至近距離からの攻撃なこともあって、鬼龍はどうすることもできずに真夜の攻撃をその首輪に受けるしかなかった。
真夜はその瞬間、勝利を確信した。
――しかしそんな希望をあざ笑うかのように、彼女の手元に固い衝撃が走る。
「なっ!?」
たしかに首輪を切りつけることはできた。
だがこの世の全てを切り裂くはずだったその木の刃は、首輪を切断はおろか傷一つつけることすらできなかったのだ。
馬鹿な、と真夜は驚愕する。
勝利は確定していたはずだ。
この刃が首輪を切って爆発を誘うと同時、自分は巻き込まれないためにすぐに鬼龍から離れる。
あとはそれだけでよかったはずなのに。
この首輪、一体どんな物質で出来ているというのだ。
――瞬間、動きの止まった真夜の顔に、鬼龍の最大級の威力を伴った拳が襲い掛かる。
「!」
唐突に思考を揺り戻し、その飛んでくる拳に右手を合わせると真夜は後方へと力を受け流す。
そして腕が完全に伸びきったと同時、それを掴んだまま、まるでサーカスの曲芸のように地面を蹴って宙に上がった。
たとえ今の目論見が失敗したとて、それで戦いに負けたわけではない。
せめて腕の一本だけでも破壊できればルフィか老師のどちらかがきっと倒してくれる。
それだけを信じ、真夜は宙に浮いた自身の体を思い切り右回りに捻った。
鬼龍の拳は強く真夜の手に握り締められたままだ。そんな状態で彼女が回ればどうなるか。
そうなれば当然鬼龍の腕もまた同時に捻られ、筋肉と骨、両方が破壊されて使い物にならなくなる。
しかし右回りに捻ったはずの体が、不思議なことに逆回転している。
おかしい。
右に回ったのなら鬼龍の靭帯が断裂する感覚が伝わってくるはずなのに、それどころか自分の手はいつの間にか奴の拳から離れている。
――ああ、そうか。
あの瞬間、鬼龍は自分が回転する方向と逆に、自身の腕を強烈な腕力で捻ったのか。
……無防備に宙に浮いている真夜の目に、彼が追撃を加えようともう片方の拳を腰だめに構えている姿が映った。
そして少量の吐しゃ物が口から出た感覚を最後に、彼女の意識は一瞬で遮断された。
豪快に吹っ飛び、一度大きく地面にバウンドすると、ゴロゴロと糸が切れた人形のように転がっていき――その先にある崖へと、吸い込まれるように落ちていった。
「真夜ァッ!」
「お前もだ、麦わらの小僧」
「!?」
彼女に気をとられた瞬間に、鬼龍は一瞬でルフィに詰め寄ると、同じように一撃を喰らわせた。
幸い発勁ではなかったためにルフィ本人にダメージはなかったのだが、その勢いは如何ともしがたく、彼もまた崖へ飛ばされていく。
下は海。落ちればゴムの能力と引き換えに万年カナヅチとなってしまった彼は溺れてしまう。
助かることは容易だった。単に落ちないように陸地に向かって腕を伸ばせばいいだけなのだから。
だが自分の真下で意識もなく落ちていく真夜を目撃した時、ルフィの頭からそのような思考は消え失せた。
まったく同時に二つのことを考えられるほど彼は賢くはない。
ただ、真夜を助けなければ。そう思っただけだった。
――結果、彼は腕を陸ではなく真夜に伸ばして彼女の体に巻きつけて引き寄せると、そのまま崖下の海中へと沈んでいった……
◆
「邪魔なガキ共は始末しておいたぞ、武天老師」
その場にいた四人の内の半分が消え去ったあと。
鬼龍は、ようやく目を閉じたままふらりと立ち上がった亀仙人に話しかけた。
亀仙人の目からは、痛々しい血の涙が流れ続けている。どう見積もっても失明は免れないだろう。
「お主……甘く見たのお」
「なに?」
だが亀仙人は、不敵に笑った。
二人を海へと落とされ、自身もまた両目が見えないというこの状況で、笑ってみせた。
「あの二人はまだ死んではおらんよ。気でわかる」
「……だとしても、それがどうした? 今ここで俺と貴様が戦うことに、何の関係がある」
支援
セリフが離れてしまいました。
上スレッドのセリフ2つを以下に直してください
「あの二人はまだ死んではおらんよ。気でわかる」
「……だとしても、それがどうした? 今ここで俺と貴様が戦うことに、何の関係がある」
「鬼龍といったかの……お主は、何故戦う?」
突然、亀仙人は鬼龍に問いかける。
問答をするつもりはなかったものの、彼は迷いなく答えてみせた。
「俺が最強であることを示すためだ」
その一言は簡潔であるが故に、他のどんな百の言葉よりも力があった。
だが亀仙人は、何故かどこか哀れみを覚えているような顔になる。
彼のその表情に、鬼龍は苛立ちを覚えた。
「最強……そのようなものを目指して何とする。その先には何もない。ただ、お主がむなしい思いをするだけじゃ」
「最強のその先だと? そんなもの、最初から求めていない。ただ俺がこの世で最も強い――その事実があるだけでいい。それ以外は何もいらん」
「じゃが時は過ぎ行くものじゃ。こ〜んな小さかった小僧が、今や二児のパパになるくらいにの。そうなれば当然人は老いる。新たな世代が台頭してくる。
それでもなお最強なんぞというまやかしに固執するぐらいなら、わしは喜んでその座を彼らに明け渡そう」
亀仙人のその言葉に鬼龍は失望を露にした。所詮、この爺もこの程度だったか、と。
武道家は戦いを止めた時から弱くなる生き物だ。だからこそ、どこまでも戦い続けなければならない生き物でもある。
ただ己が一番強くありたいという、その純粋な願いのためだけに。
「――爺。実戦を退いてから、どのくらいになる」
「さてのう……もはや周りがわしの手に負えないようになってから、もう随分と時が経つ」
「そんなことだから、俺に簡単に目を潰される。武道家は戦い、敗れて死ぬまで武道家だ。そしてそこから逃げ出した貴様に、もはや用はない」
鬼龍はこれ以上話すことはないと戦闘態勢に入った。
未練などない。この爺は、とんだ見込み違いだった。
空気が張り詰め、再び全てが静止する。
その中で、亀仙人は静かに口を開いた。
「……じゃが、そんな老いぼれでも戦わなければならん時があってな」
決して目は見えない。彼の世界は、どこまでも続く闇のみ。
だが目が見えないからこそ、逆に見えるものがある。
「お主のような者だけは、この命に代えても逃すわけにはいかん!」
「戦うことを止めた爺がほざくな……!」
そして両雄が、激突する。
◆
――勝負は長くはかからなかった。
一線を退いてから日が長いとはいえ、さすがに武天老師はこれまで戦ってきた誰よりも強かった。心苦しいことだが、認めざるを得ない。
あの老師がまだ現役だった頃はあれ以上の力を持っていたのだと思うとぞっとする。
だがそれ故に、彼が戦いの世界から身を引いたことに鬼龍は残念な気持ちを覚えた。
「まさか、静虎や尊鷹以外に俺に灘神影流の技を使わせる奴がいたとはな……」
鬼龍は久方ぶりに本気を出した。
これまで滅多なことでは使ってこなかった奥義を放ち、結果辛くも勝利を収めることができた。
そう――鬼龍は勝ったのだ。自身も決して無傷とはいかなかったものの、この老師に勝つことができた。
そこには喜びよりもむしろ、亀仙人がここまでの使い手であったことに対する感謝の念があった。
鬼龍は、目の前で力尽きて倒れている老人に向かって心中で礼を言う。
彼を弔う気はさらさらなかった。
戦う者に墓標は必要ない。それこそが、鬼龍の亀仙人に対する最大の敬意の表れだからだ。
背を向けると、そのまま何処へと向かって歩き出す。
目的地はどこでもよかった。ただ強者がいればそれでいい。
この世界は本当に面白い。
こんな序盤から、これほどの使い手に出会えたのだ。
他に参加している連中もまた、相当な力を持っているに違いない。
それらを全て、この手で叩き潰すことができる。これほど嬉しいことはない。
彼にしては珍しく純粋な興奮に笑みを浮かべながら、鬼龍は進んでいく。
◆
――そして次の瞬間、彼の頭部に何かで強く殴られたような衝撃が走り、それまで何があっても地に伏すことのなかった鬼龍の体は大きく音をたてて崩れ落ちた。
視界が大きく揺れ、世界が垂直となる。何が起きたのか、まったく理解ができない。
そしてその先に彼は、一人の若者が銃を構えているのを見た。
髪を長く伸ばした、長身の男……
「……悪いな。いくら武道を極めようと、所詮あんたはこれまで俺が戦ってきた化け物なんかじゃない……鉛弾一発で死んでしまう、ただの人間ってことだ」
薄れゆく意識の中、鬼龍は理解した。
自分が、たかだかあんな銃一つにやられたのだということを。
いつもなら気づいていただろう。殺し屋に命を狙われることなど特に珍しくもない。
だが亀仙人と戦った直後で、軽い興奮状態にあったこと。それが、あの男にここまでの接近を許してしまった。
なんという不覚か。
(この俺が、こんなつまらないことで死ぬだと?)
男がもう一度確実に頭を狙おうと近づいてきたのを見た瞬間、鬼龍の中で何かが弾けた。
「なっ!?」
瞬間、男は驚愕に目を見開く。
たしかに自分の撃った弾はこの鬼龍とかいう奴の頭に当たったはずだ。
本来なら即死。こうして近づいてきたのも、ただ念を入れるためだけに過ぎない。
なのに、もう死んでいるはずの鬼龍が頭から血を流しながらも立ち上がってきたのだ。
「調子にのるな小僧……貴様ごときにこの俺は殺れん。この世で俺を殺していいのは唯一人、俺だけだ!」
最後の炎。
もはや相手の姿もよく見えない中、鬼龍は男に向かって突撃し――突然、ガクンと地面に膝をついた。
「!?」
男に銃で撃たれたためではない。
鬼龍もまた、亀仙人と戦って体が限界を迎えていたのだ。
ここにきて体が動かないことに、鬼龍は深い無念を覚える。
「悪いな……終わりだ」
男が冷静に、銃を構えなおした。
もはや死は避けられないだろう。
だが――
「……覚えておけ、小僧。俺を殺したのは――決して貴様ではないということを」
男……和泉紫音の放った銃弾が、鬼龍の脳天を貫いた。
【F-4 道路上/ 一日目 早朝】
【和泉紫音@GANTZ】
【装備】:ベレッタM92(残弾数、予備含め28)@現実
【所持品】:支給品一式 首さすまた@地獄先生ぬ〜べ〜
【状態】: 左耳欠損(未治療)
【思考・行動】
1:なんとか鬼龍を殺せたことに安堵
2:アーロンの案に乗る。
3:ガンツからの指令に従う。
※ 参戦時期はゆびわ星人編前です。
二日目の深夜にD-4でアーロン・ゆきめと合流する約束をしました。
【武天老師(亀仙人)@DRAGON BALL 死亡】
【鬼龍@TOUGH 死亡】
※ 亀仙人のデイパックと支給品である石製のナイフ@TOUGHと44番のバッジ@HUNTER×HUNTER、
鬼龍のデイパック(支給品一式、未確認支給品1〜3)が放置されています
◆
「うごがぼぺ! な、なんどが助がっだ……!」
「すまぬ……世話をかける、ルフィ……だがあまり叫ぶな。頭に響く……」
同時刻、崖下の海。
当初、二人は為す術なくただ沈んでいくだけだったが、その中でルフィはデイパックの中から出てきたあるものを手にした。
先の戦闘では使わなかった真夜のもう一つの支給品、如意棒。それを見た瞬間、ルフィにしては珍しく閃いたものがあった。
真夜を背中に背負ったまま、如意棒を縦にかまえるとそれを限界まで伸ばす。
幸いそこまで深いところではなかったらしく、比較的早く如意棒は海底にその根を下ろすとあとはぐんぐん水面へ向かっていき、結果なんとかルフィと真夜の二人は海中から浮かび上がることができたのだった。
当然長く伸びた如意棒はバランスを崩すが、なんとか崖のほうに向かって倒れてくれたためにつっかえ棒となり、再び沈んでしまうというようなことはなかった。
そうこうしている内に真夜も目を覚まし、現在高くそびえ立つ崖を下から見上げている形となっているのだが……
「……さて、これからどうしようか」
途方に暮れる二人には、海の向こうから朝日が顔を出したのにも気づくことはなかった。
【F-4 崖下の海/一日目 早朝】
【棗真夜@天上天下】
【装備】:如意棒@DRAGON BALL
【所持品】:支給品一式
【状態】:衰弱
【思考・行動】
1:老師は無事であろうか……
2:ここをよじ登るだけの体力はないぞ……
3:妹や仲間がここに来てないか心配
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康
【思考・行動】
1:亀のじいちゃん、大丈夫か!?
2:早く陸に上がらねえと!
3:仲間を探す。
4:それにしても真夜、なんかでっかくなってねえか?
代理投下終了です
僭越ながら、Lot氏に投下乙!
1対3のバトル描写が上手く、情景を思い浮かべる事が容易でした
老師と鬼龍の武の激突、そしてそれを無慈悲に屠る和泉
ルフィと真夜は果たしてどうするのか、GJ!
投下乙、代理投下も乙!
亀仙人……びしょ濡れの真夜を見る前に死んでしまうなんて惜しいことを……って冗談は置いといて
カッコ良かったよじっちゃん。
投下と代理投下乙!
じっちゃん……!
頑張った。格好良かった。二人を守れて良い漢だったよ!
そしてマーダー2人も良い味だしてたなぁ
難所のパートをこう上手く魅せられて凄い。
氏のバトル描写が大好きだGJ
「夜神さん……俺、実はあの部屋のこと少しだけ知ってるんです」
僕の前を歩いていた加藤が、足を止めもせず唐突に言った。
僕は自分の耳を疑う。
あの部屋――おそらく、首輪が爆発して男が死んだあの部屋のことだ。
僕と加藤の共通する『あの部屋』といえば、あそこしかない。
何故この男がそんなことを知っているのか……。どうしてこいつが……。
思索の奔流が押し寄せる。
目の前をゆく男が急に怪しく見えだす。
加藤がなにを知っているのか、どの程度のことをわかっているのか、興味が湧いた。
情報はなににも勝る武器になる。加藤の知るすべてを聞き出したかった。
「あの部屋というと、最初の『あの部屋』のことかい?」
白々しい問い。
なにを知っているのか早く聞きたかったが、がっついていた姿は見せたくない。
かといってあの部屋に興味なさげでは不自然にすぎる。
僕はいぶかしまれないよう、自分の身に起こったことを案じる保守的な姿勢で加藤に接する。
擬態はお手のものだ。
「ええ、黒い球のあった、あの部屋のことです」
加藤は視線を前に向けたままだった。
その様子からいくぶん緊張しているようにも感じられた。
頬を汗が流れ、鼻息が荒くなっている。脈拍が上がっている証拠だった。
嘘をついている――はじめはそう思った。
だが違う。こいつは嘘は言っていない。そんなに器用な奴でもないはずだ。
緊張してるのは僕にこの話をするべきかどうか悩んでいるからだろう。
察するに言えない事情があるか、または言っても信じてもらえないと思っているか。
いずれにしろ話を聞かなければ先には進まない。
僕は疑って掛かることはせず、加藤が話しやすいように声のトーンを和らげて続きを促した。
「加藤くん、その話、詳しく聞かせてもらえないかな」
「……その前に、夜神さんは死んだことがあるって言いましたよね」
加藤はまたも唐突だった。
死んだかだって? ――ああそうだった、確かにそう言ったっけ。
咄嗟に口から出たデマカセだが、なかなか傑作だ。
僕がどう答えたものか窮していると、すぐに加藤が言葉を継いだ。
「すいません。こんなこと、あまり思い出したくないですよね。
ただ、もう一度確認しときたくて。夜神さんも死んだことあるんですよね?」
「なんだか怖いな。さっきのあの部屋の話と、なにか関係あるのかな」
「関係あります」
益々意味がわからない。こいつは正気だろうか――。
僕は加藤を見据えたが、彼が発狂してる風はなく、例の真っ直ぐな瞳を前に向けていた。
仕方なく、加藤の話に付き合ってやる。
「そうだ。僕はLに殺された。真相に近づきすぎたんだ。
……でも、本当は死んでなかったんだろう。そんなことあるわけがない。
きっと色々あって疲れていて、それでそんな夢を見のさ。
ここには薬でも嗅がされて連れてこられたんだろう。そうだ、だから僕はこうしてここに――」
「違うんだ!!」
加藤は複雑な表情をして怒鳴った。
感情の起伏の激しい奴。加藤の本質――御しやすい。
「違う? なにが違うって言うんだい」
「それは……」
煮え切らない、もどかしい間がある。
加藤の持つ情報が堪らなく欲しかった。
「なあ加藤くん、ちょっと話が見えないな。
できれば順を追って説明してくれると助かるんだけど」
加藤は一層複雑な表情をし、森の真ん中で足を止めた。
この辺りなら誰かが来る心配はないだろう。
加藤はどこから話していくべきか、それを考えている様子だった。
僕は加藤の頭の整理がつくまで黙って待った。
森は深く暗く、沈黙しているとそのまま茫漠とした闇に溶けてしまいそうだった。
五感が研ぎ澄まされる。頭がどんどんクリアーになっていく。
Lとの知恵比べにも今なら負ける気がしなかった。
やがて加藤がおずおずと口を開いた。
「俺も……死んでるんですよ。電車に轢かれて」
「なん……だって……?」
「死んだんです。電車に吹き飛ばされて自分の身体がバラバラになるのを、
俺は薄れていく意識の下で見てました」
どうリアクションをとればいいのか――。
嘘をついているわけでもない。おかしくなったというわけでもない。なら……。
僕は加藤という男がわからなくなっていった。
「ははは、冗談だろ? そんなわけ……」
「…………」
加藤はなにも言わなかった。
……なるほど、こうなることがわかっていたから言い淀んでいたんだ。
どうせ信じてはくれないだろうと。おかしな奴だと思われるだろうと。
しかし、そう思われるのを承知で僕に打ち明けたということは、そこに意味があるからだ。
やはり加藤の言うことが真実だということになる。
一度死んだ人間がこうして目の前にいるのを信じるべきか――いや、待てよ……。
Lだ……。Lがいる。
レムに殺されたはずのLが生きてたじゃないか。あの部屋にいたじゃないか。
加藤とL――。死んだ人間同士――。繋がりはある。
犯罪者達の持つ説明のつかない力の秘密が垣間見えた気がした。僕は益々それが欲しくなる。
このまま僕も死んだことにしておけばもっと面白い話を聞けるかもしれない。
僕は思いきり笑い転げたくなった。
「信じられないと思いますが、俺達は本当に死んでるんです」
「死んでる……嘘だろ……。でも現に僕はこうして……。
――いや、どうやらその様子じゃ嘘を言ってるわけでもなさそうだね。
加藤くん、君の知ってることを僕に話してくれないかな?」
我ながら名演技じゃないか。
今にも泣き出しそうなこいつの顔。――駄目だ、おかしくて堪らない。
僕の境遇に立ち、僕を憐れみ、そして僕のために涙を流そうとするなんて、つくづく愚かな男だ。
しかしこういう質の男だからこそ、僕が思うように動かせるというもの。
馬鹿に感謝しなければ。
「わかりました、夜神さん。俺の知る範囲でお話しさせてもらいます」
腹の中での哄笑がやむことはない。
僕らは近くに聳え立つ老杉の根元に場所を移すことにした。
◆ ◆ ◆
加藤の話はさすがの僕を驚かせるに充分だった。
死んだ特定の人間があの部屋に集められること――。
黒い球体は『ガンツ』と呼ばれていること――。
ガンツは死人達を『せいじん』と称される怪物と殺し合わされること――。
加藤はそのミッションに何度か参加させられていること――。
その他ガンツミッションの細かいルールなど諸々――。
普通ならどれも信じられる話じゃなかった。安っぽいSFでももう少し説得力がある。
だが、死神の存在やデスノートの力を知っている僕にはわりと受け入れやすい話でもあった。
死神がいるんだから死人を呼ぶ球があってもおかしくないし、怪物だっているだろう。
それに加藤の言う通りなら、Lが生きていたことも説明がつく。
加藤の語るところを疑う理由はどこにもなかった。
ただ、気掛かりなこともある。
加藤によると今回のミッションはこれまでと大分違うらしい。
これほどまでに大人数が集められたことは曾て一度もなかったというし、
また、ガンツ以外の介入者が関わってくるのもはじめてらしかった。
なにより対戦相手がせいじんではないというのが一番大きい。
個々に武器を取り、そして殺し合う――。
なにかが違い、なにかが狂っている。
加藤はそこまでを捲し立てるように一気に語ってくれた。
この収穫は大きい。
どうあれこの話からわかるのは、今回の件にはやはりガンツが関わってるということだ。
ガンツがなんであるか加藤も詳しく知らないらしいが、
それでもこの情報を持っているのは少なからずアドバンテージになるだろう。
僕は全部を聞き終えた上で意味ありげに頷いて見せた。
「突飛な話……だね」
「信じてもらえますか?」
「そうだな――俄には信じられないけど、信じないわけにはいかない……ってところかな」
一体ガンツとはなんなのか。あの壁を食らう男は。この殺し合いの意味とは。僕がここにいる理由は。
――知りたいことは山のようにあった。
Lの顔がちらつく。
あいつに勝ちたい。あいつを消したい。あいつを殺したい。
だが、それにはまだまだ情報が足りない。
すべてを僕が掌握するには知らなきゃならないことが多すぎた。
僕は加藤に言う。
「まだ頭が混乱してるけど……話してくれてありがとう。
君のお陰で朧気ながら状況が見えてきたよ」
根本の部分はなにも解決していなかった。
この首輪の外し方もわからなければ、ここからの脱出法も、
黒幕と考えられるガンツやカバ男から力を奪い去るやり方も、
Lの殺し方や、ひいては僕が神になる方法まで、まだ濃い霧の中にある。
それでも視界が少しはひらけてきた気がする。
要するにガンツがすべての鍵なのだ。
そして加藤――馬鹿正直で単純で、ガンツをよく知る男。御しやすい男。
使える。こいつは使える。
これが新たなガンツのミッションと仮定するならば、この男ほどの適任はいないだろう。
僕はこの男といる限り安全を保証されたようなものだった。
この男と行動し、利用し、身を守らせればそれでいい。僕はLについてだけ対処していける。
もうすぐだ――もうすぐLを抹殺できるかもしれない。
笑いが込み上げてくる。
「これからどうしますか」
「これからか……。やっぱりLを放っておくことはできないな。
どうにかして奴を止めたい。いや、止めなければならない」
「そうですね」
「それと、Lの他にも犯罪を犯そうとしてる奴がいないとも言い切れない。
そいつらを止め、罪のない人達を守らなければ」
「はい、俺もそう思います!」
ちっぽけな正義感をくすぐってやるだけで僕の言いなりか。
まるで犬だな。ご褒美に尻尾を振って喜んでいるかのようだ。
滑稽な奴――。お前みたいな善人ぶった奴がいくら頑張ろうと、この世の悪はなくならないんだ。
正義を押し通そうと思うならば、僕のように犠牲を惜しまない崇高な志を持つべきだ。
その志がなければ、それはただの偽善にすぎない。
加藤、お前はなにも理解していない。身の程をわきまえろ。
「となると、やはり人を集めるのが先決だろうな。
加藤くん、この地図を見てくれ――」
僕は地図を広げ、懐中電灯で手元を照らす。
背の高い加藤は腰を縮めて覗き込んだ。
「いいかい、おそらく僕らはこの辺りにいる」
懐中電灯を加藤に渡してから地図の左上を指でなぞった。
A-2を中心に広大な森が広がっている。
「この森がたぶん僕らのいるところになる」
「確かですか?」
「正確なことは言えないがね。でも間違いないだろう。
僕らは砂漠のような砂地を突っ切ってきたし、地理的に該当する森はここだけだ。
まあもっとも、それはこの地図が正しいものであるとした場合の話だけどね」
加藤は僕の説明に耳を傾けている。
もし仮にまったく見当外れな説明をしたとしても、こいつは僕を疑いすらしないだろう。
造作もない。面白味もない。
頭の中にまたLの顔がちらついた。
Lとの戦いを渇望している僕と、Lとの決着を切望している僕。
一体どちらが本当の僕なんだろうか。――きっとどちらも僕の本音なのだ。
「加藤くん、人が集まりそうな場所はどこだと思う?」
「人の集まりそうな場所……。やっぱり街とか……」
「そう、街や村――建物の多いところだろうね。
建物が多ければ隠れる場所もあり、なにか使えるものが手に入ると考える人は少なくないはずだ」
「なら俺達が向かうところは……」
「街だ。それも中心地を目指そう」
中心を目指すのに確たる意味はない。街ならどこでもよかった。
強いて理由を作るなら、そこが一番栄えていそうだからだ。
一人でも多く、そして一分一秒でも早く僕の手足となる兵隊を作るなら、
少しでも人の集まる可能性に賭けるべきだった。
「近くに病院らしいところもありますね。腕の手当てができるかもしれない」
「すまないね、面倒を掛けて」
そんなこと気にしないでくださいと、加藤は大きな声で言った。
「そうとなったら急ごう、加藤くん。こうしてる間にもLが誰かを襲っているかもしれない」
加藤に右手を伸ばし引っ張り起こしてもらった。
僕は刀を持った忠実な犬を連れて、覇業に向って歩き出した。
【A-1 砂漠 1日目 黎明】
【加藤勝@GANTZ】
【装備】:雪走@ONE PIECE
【所持品】:支給品一式 不明支給品0〜2(本人確認済み)
【状態】:健康 Lへの怒り
【思考・行動】
1:島の中心部を目指す
2:GANTZに反抗し、ゲームを脱出する
3:月と一緒に、反抗者を探し仲間にする
4:月を信じる
5:襲撃者はできれば殺したくない
※参戦時期は、おこりんぼ星人戦で死亡直後です
【夜上月@DEATH NOTE】
【装備】:スペツナズナイフ@現実 手榴弾@現実
【所持品】:支給品一式 手榴弾×4 不明支給品0〜1
【状態】:健康 左肩に浅い切り傷
【思考・行動】
1:優勝して、主催の力を手に入れる
2:反抗者グループを作りマーダーを打倒、その後グループを壊滅させる
3:L=キラ、という悪評を広める
4:加藤は利用するだけ利用する
5:島の中心部を目指す
※参戦時期は第1部終了直後です
投下終了しました。
GJ!
ライトはやっぱり良キャラだなwあの黒笑顔が読んでる最中に蘇った。
ライトの人心を掴む話術はぞくぞくする。
信頼しまくっている加藤のこれからも気になるGJ
>二人の武道
あ、熱い……!亀仙人も鬼龍もルフィもマヤもかっこよかった。
そして和泉の美味しいところ取りも見事。
各キャラそれぞれに見せ場があって、知らないキャラもいたけど好きになったw
これは確実に序盤の名勝負のひとつ。
>神への道
月の懐柔が着実に進んでいるww
このままいったら加藤は間違いなく忠実な犬コース。
そつなく無駄のない情報交換は見事です。
ライトの黒さと加藤の白さが良い味だしてる
名前: ◆SzP3LHozsw 投稿日: 2008/07/15(火) 20:01:20 ID:JCYmXK7o0
すいません、『神への道』の状態表が間違ってるのに今気付きました。
本スレ399の 【A-1 砂漠 1日目 黎明】 を 【A-2 森 1日目 黎明】 とさせてください。
またさるさんに引っ掛かってるので、どなたか本スレに転載してくれると幸いです。
お手数掛けます。
投下乙です
月は腹黒いなw
完全に信用しきってる加藤が何だか哀れだw
ところで、ちょっと各キャラの支給品をまとめてみたのですが、
結城梨斗 ワゴム×19@ワンピース 不明0〜2
ララ・サタリン・デビルーク グリードアイランドのスペルカード(左遷、反射、堅牢)@HUNTER×HUNTER 不明0〜2
天条院沙姫 不明1〜3(未確認)
レン・エルシ・ジュエリア 不明1〜3
西連寺春奈 不明1〜3
サンジ 不明1〜3
ロロノア・ゾロ 不明1〜3(刀剣類ではない)
モンキー・D・ルフィ 不明1〜3(未確認)
ブルック 不明1〜3
アーロン 不明1〜3(未確認)
瀬田宗次郎 クナイ×19@るろうに剣心 チョッパーの医療セット@ONE PIECE
志々雄真実 薄刃の太刀@るろうに剣心 不明0〜2
緋村剣心 黒刀・秋水@ONE PIECE スタングレネード 不明0〜1
相楽左之助 千年パズル@遊戯王
猿飛あやめ 仕込み傘@銀魂 不明0〜2
坂田銀時 噛み切り美容師のハサミ@魔人探偵脳噛ネウロ ホロホロのスノボ@シャーマンキング りんご@DEATH NOTE
土方十四郎 ビニール袋に入ったMr.5の鼻くそ×6@ONE PIECE ポテトチップス@DEATH NOTE ブルマのパンツ@DRAGON BALL
沖田総悟 刀? 不明0〜2
立野広 なでしこの剣@ジャングルの王者ターちゃん 不明0〜2
ゆきめ 不明1〜3(未確認)
鵺野鳴介 1080@シャーマンキング 不明0〜2
玉藻京介 三大鬼徹@ONE PIECE 不明0〜2
玄野計 不明1〜3(未確認)
和泉紫音 首さすまた@地獄先生ぬ〜べ〜 不明0〜2(未確認)
加藤勝 雪走@ONE PIECE 不明0〜2
小島多恵 RPG@現実 石仮面@ジョジョの奇妙な冒険 不明0〜1
獏良了 Xガン@GANTZ 千年リング@遊戯王 毒薬、解毒薬
海馬瀬人 ベレッタ@現実 GANTZスーツ(ロワ仕様)@GANTZ ベレッタ@現実
武藤遊戯 不明1〜3
太公望 不明1〜3(未確認)
蘇妲己 傾世元禳@封神演義 ベルフェゴールのナイフ×9@家庭教師ヒットマンREBORN 不明0〜1
聞仲 打神鞭@封神演義
剣桃太郎 不明1〜3
雷電 無敵鉄甲@るろうに剣心
江田島平八 不明1〜3
麻倉葉 不明1〜3
麻倉ハオ S&W M36 百衣観音経@地獄先生ぬ〜べ〜 不明0〜1
マリオン・ファウナ クマシー@ONE PIECE
L GANTZスーツ@GANTZ 和道一文字@ONE PIECE 不明0〜1
夜神月 スペツナズナイフ@現実 手榴弾×4@現実 不明0〜1
山本武 無限刃@るろうに剣心 不明0〜2(刀剣類ではない)
三浦ハル 真選組パトカー@銀魂 菊一文字則宗@るろうに剣心 新八の眼鏡@銀魂
桂木弥子 不明1〜3
XI 童実野高校の女子制服@遊戯王 不明0〜2
吉良吉影 不明1〜3
クロロ・ルシルフル バタフライナイフ
亀仙人 不明1〜3(未確認)
棗真夜 如意棒@DRAGON BALL 不明0〜2
伊集院隼人 逆刃刀・真打@るろうに剣心 不明0〜2
神崎直 不明1〜3
うずまきナルト 不明1〜3
以上が25話までのまとめです
間違いがあったら教えてください
で、いくつか気になることがありました
まず、何人か支給品の数が合わないキャラがいました
支給品が一つも明らかになっていないのに、残りの不明支給品の数が0〜3個になっていたり、
2つ分かっているのに残りが0〜2個になっていたり
これは状態票にそう書いてあるだけなので、あまり気にすることではないかもしれませんが
それから、沖田の支給武器が何なのか書いてませんでした
描写から刀剣類であることは分かるのですが、詳しい記述は見当たりませんでした
これは後の人に任せるということでいいのでしょうか?
ご連絡
mDgNTat2nU氏、このレスに気付いたら議論スレ見てくれませんか?
完成してからの予約なので投下します。
闇夜を二人の男が歩いている。
一人は青年。一人は少年。ぴりっとした微かな緊張感を漂わせ、二人の距離が埋まることはない。
どちらかが歩み寄らない限り、溝はそのままだ。
鵺野は得体の知れないハオを警戒しているのもあるが、一番心を占めているのは広のことだ。
生徒を守ると公言して憚らない鵺野だ。広のことが心配で仕方がない。
広は勇気もあるし、行動力だって桁違いの鵺野自慢の生徒だ。しかし、ここは殺し合いの舞台なのだ。
どんなに勇敢でも広は子供。鵺野のような能力を持たないただの小学生。
早く見つけてやらなければ。自分でなくても良い。誰か良い人間に保護されていればいいが……。
(無事でいてくれ……)
そんな鵺野を見て、ハオは歩く速度を落とした。言葉にしなくたってハオには鵺野の心が手に取るように分かるので何も言わない。
生徒の身を案じている鵺野をよそに、ハオは辺りを見回した。
周りは特になにもない平地。舗装されてはいるが道路は新品のように美しい。
――おかしい。違和感は最初からあったのだ。
霊や精霊がまったく見当たらない。
地球は様々な魂が溢れている。花に宿る妖精、物に宿る意思、強い人間の思い。
どこにだって彼らは居る。シャーマンはそれらと時に争い、時に協力しあって生きてきた。
いないことなど普通はありえないのだ。少なくとも地球上にそれらがまったく存在しない場所などハオは知らない。
「ねぇ、先生。ここは何処かな?」
「は?」
緊迫した空気の中、ハオの第一声は問いかけだった。
漠然とした質問に鵺野はどう答えようか悩む。それは鵺野だって知りたいぐらいだ。
先ほど島を囲むような海を見て、どこかの無人島かと推測していたのだがハオの推理を聞いて鵺野はしばし考え込んだ。
霊能力者だから気がつく異変。それは鵺野も感じたばかりの違和感だ。
――ここはおかしい。
「どうなってるのかは分からないけど、簡単には脱出できそうにないね」
「ここが普通じゃないっていうのは確かか……うむ」
考えなければならないことがまた一つ出来てしまった。
船や飛行機があれば脱出できるのではないか、と考えていたが何かしらの仕掛けが施されている可能性もある。
試してみなければ断言はできないが……。
異界か結界かそれかまた別の何かか。自然界に逆らっている異物な場所ということしか分からない。
ひとしきりの考察をしながら歩いていると、突然空から声が聞こえた。
「我が主人のため、お命頂戴致す!」
「――なっ!?」
癖なのか無意識なのか、子供の姿をしているハオを背に庇いながら鵺野は声の出所を探す。
鵺野は奇襲に備えると、長い長髪が目の端に映った。時代錯誤な服装をした女性が傘を構えている。
一触即発と思われたがある少年の叫びによってそれは未遂に終わる。
「ちょっと待てってば! ストップ! 」
+++
「なるほど、梨斗とその護衛のせっちゃんか」
「ええと……鵺野さんと……」
「僕は未来王ハオ、よろしく」
「はあ……」
せっちゃん(仮)こと本名猿飛あやめの暴走によって起こった騒動は、梨斗の努力によって大事には至らなかった。
こういうトラブルには悲しいことに慣れている。騒がしい女の子の扱い方は痛いほど知っていた。
結局、梨斗はあやめに本当のことを言い出すことができなかった。相手は完全に梨斗を信用している。
その真っ直ぐな視線に、一度発した言葉を撤回することなどできなかったのだ。
というか言おうとした途端にこの有様だ。新たな人間が増えてそれどころではない。
実際に戦ってみれば何か思い出すかも、と近くの民家で怪我の処置中あやめが武器を持って走っていってしまった時には驚いた。
体に叩き込まれた動きは記憶を失くした位ではなんてことないらしい。
動きはやはり普通の人間のものではない。本当に忍者なのかも、と梨斗は思う。
あやめが襲撃(未遂)した二人組みは殺し合いに乗っている人間ではないらしかった。
鵺野だからぬ〜べ〜なのか不思議なあだ名を持つ教師と、未来王と偉そうに名乗る年下の少年。
どっちも少々不思議な人物である。
どうしてこんな所に連れてこられたのか、と心当たりを話し合ったが目ぼしい情報は得られなかった。
お互いの探し人についても聞いてみたが成果はない。ハオの貼り付けたような笑顔が気になったが気のせいかもしれない。
あやめの記憶喪失は伏せておくことにした。
あやめは梨斗の護衛の忍者さんなのだ。
初めにそう鵺野達にあやめが名乗ってしまって、完全に梨斗は言い出す隙を見失った。
今更嘘でした、なんてこの空気では言えない。
(うう……情けないな、俺)
ララと合流できたら記憶喪失を治す方法を聞いてみよう。ララは不思議なアイテムを大量に持っている。
おかしな病気や特性を持つ宇宙人なのだ。記憶喪失ぐらい簡単に治してしまうかもしれない。
そのときにちゃんと謝ろう。
ララがこの場所に呼ばれているかは梨斗には分からなかったが、妙な確信があった。
殺し合いという異常な舞台。梨斗のような一般人がわざわざ呼ばれるとはとても思えない。
考えられるのはララのおまけとして梨斗が呼ばれた可能性。
ララは一星のお姫様だ。殺し合いという悪趣味な出来事は今までなかったが、大なり小なりララ絡みでハプニングに巻き込まれている梨斗には納得できる話である。
もちろんララを責めるつもりはない。
ララがこんなことを意図したはずがない。きっと同じように心細い思いをしているに違いないのだ。
(みんな……無事でいてくれ)
こんな場所につれてこられてないのが一番だが、梨斗はそれを願うことしか出来ない。
記憶喪失について黙っているのは、梨斗なりの優しさでもあった。
梨斗は平凡だがとても心優しい少年である。混乱でとっさに嘘をついてしまったが、よくよく考えれば記憶喪失はすごく不安なのではないか。
他人も、自分でさえ分からない。それはとても恐ろしいことに思えた。
少なくとも梨斗だったら怖くて仕方がないと思う。自分は何者なのか、それを忘れて結城梨斗を失ってしまうのは怖い。
嘘でも不安を紛らわせられるのではないか。
現に、あやめの瞳も記憶喪失直後より輝きを増しているように思えた。自分の立ち位置が定まったからかもしれない。
嘘をついた責任はとる。あってまだ数時間だが梨斗を信頼しているようなあやめのためにも。
――記憶喪失の治し方も探そう。
知り合い探しともうひとつ、梨斗に目標が出来た。
+++
「特徴を教えてくれ」
梨斗と鵺野がお互いの探し人について詳しい情報交換をしている。
それから少し離れたところに傘で素振りをしている女性とそれを眺めて座っている少年がいた。
ハオとあやめには特に探している人はいない。ハオは誰がここに連れてこられているのか知らなかったし興味もなかった。
名簿も何を考えているのか真っ白で情報は一切ない。
あやめは記憶喪失だが、梨斗の護衛なのでその探し人の対象は同じだ。
梨斗は片っ端から知り合いの特徴を挙げている。誰が呼ばれているか分からないため、その情報共有には時間がかかりそうだ。
「はやく戦いの勘を取り戻さなきゃ――主人のために?」
「ええ、よく分かったわね」
ハオがあやめの気持ちを代弁するように話すと、あやめはやや驚いた様子で素振りしていた手を止めた。
視線の先には話している二人の姿が見える。
殺し合いという訳の分からないものに巻き込まれたが、主人である梨斗に出会えてよかったとあやめは思う。
記憶を失って空っぽだった頭に、梨斗は春菜やララ達の情報を加えてくれた。
「……坂田銀時」
「え?」
ハオが抑揚のない声色で呟く。
その単語に妙な胸騒ぎがした。
「知っているか」
「いいえ、知ら、ない」
空っぽの記憶にそんな名前は入っていない。だけど凄く懐かしいような不思議な気分になる響きだ。
歯切れ悪く答えると、ハオは悪戯っこのような笑顔を浮かべながら呟く。
「君が好いてる男の名だよ」
「あなた、私のこと知ってるの?」
あやめの問いにハオは数瞬悩むそぶりをしながら頷く。
「彼よりはよっぽどね。君の名前は猿飛あやめ――さっちゃんと呼ばれていた」
「さっちゃん……?」
猿飛あやめ。
不思議と嫌な思い出が蘇りそうにある。名前関係で昔何かあったのだろうか。
「さっちゃん、……さっちゃん。そうね、なんだか凄くしっくりくるわ」
「言霊っていってね、言葉には魂が宿るものなんだ。忘れようとも惹かれ合う」
「……ちょっと待って。梨斗は私を『瀬田宗次郎』って言ったわ。あなた嘘を、」
「それは男の名前じゃないか」
確かに。宗次郎なんてダサくて地味な名前、自分には似つかわしくないと思っていた。
即答したハオに反論を封じられて、あやめはある仮定を口にした。
「梨斗が嘘を……?」
信じられない。何のために?
いや、ハオという男が嘘をついている?
だが、ハオのもたらした懐かしい響きは不思議な説得力があった。
坂田銀時。名前を聞くだけで胸がざわめく。
猿飛あやめ。不鮮明ながらタカビーな女が何か悪口的なものを言っている映像が一瞬浮かぶ。
「僕はこれ以上、君に関してのことはしらない。彼が何を思い君に嘘をつくのかも分からない。でも、」
「……」
「――油断するな」
ハオの忠告があやめの脳裏に響き渡った。
+++
「じゃあ、また後で」
学校の前でひとまず梨斗達と鵺野達は別れる事になった。
鵺野達は学校での捜索。梨斗達は一足先に中央へと向かう。
12時頃に中央の病院で落ち合う約束も取り付けた。
お互いに探し人がいるのだ。二手に別れて手数を増やしたほうが効率がいい。
戦力分散もちょうど良いだろう。あやめの実力は戦闘未遂で知れている。
鵺野がハオと行動するのは目を離さないようにするためだ。相変わらず穏やかな様子を崩さないが、あの強大な霊力は油断できない。
鵺野には多少なりともそれに対抗する手段がある。
それに梨斗とあやめは元の世界の知り合いらしい。組み分けは結局そのままとなった。
ハオは梨斗達を笑みを浮かべながら見送った。
梨斗を春菜の元へとうまく誘導することもできた。ここから桜の木は近い。きっと気がつくだろう。
その確信がハオにはある。縁というものは侮れないのだ。
梨斗と一緒に行動していた猿飛あやめも興味深かった。
記憶喪失。梨斗とあやめの二人の心を読んでいると事態は少々複雑なようだった。
――油断するな。
ハオはあやめに疑心暗鬼の種を植え付けただけだ。どう育つのかはあやめ次第だ。
だがハオは知っている。人間がいかに脆いか。簡単に疑心に囚われてしまうか。ハオが落とす必要はない。人は勝手に落ちていく。
昼に落ち合う約束もした。それまでにあの二人はどうなっているだろうか?
あやめの疑心、梨斗と春菜。これらが絡み合い、どのような結果を生み出すのかまではハオには分からない。
「行くぞ」
鵺野に言われてハオはその後をゆっくりと付いていく。
鵺野は再び彼らと出会ったとき、片方もしくは両方欠けていたらどう思うだろう。
守れなかったと悔やむだろうか。悲しむだろうか。自分を責めるだろうか。
そのときが覇鬼と鵺野の魂をS.O.Fに捕食させるチャンスになるかもしれない。
【D−5 学校 一日目 黎明】
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【装備】:白衣観音経@地獄先生ぬ〜べ〜
【所持品】:支給品一式、不明支給品0〜2個(本人確認済み)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:学校を探索 。広、梨斗の知り合いを保護する
2:ハオに警戒。
3:市街地を探索
【備考】
ガンツの部屋で確認した参加者は広のみです。
ゆきめ、玉藻が参加していることには気付いていません。
12時頃に梨斗達と病院で落ち合う約束をしています。
【麻倉ハオ@シャーマンキング】
【装備】:S&W M36 (残り弾数4/5) 、1080@シャーマンキング
【所持品】:支給品一式×2、不明支給品0〜2個、春菜の不明支給品0〜2個。
(怪しまれないよう、バッグ一つに統合済み)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:鵺野の心を壊して弱らせた上で隙を突いて殺害し、覇鬼と鵺野の魂をS.O.Fに捕食させる
2:鵺野に殺させた人間の魂をS.O.F に喰わせて成長させる。
3:対主催チームに潜り込むか、マーダーを利用したい。
4:とりあえず鵺野の行動に付き合う
【スピリット・オブ・ファイアについて】
ハオの持ち霊。素霊状態では弱い炎しか出せないようです。
力や格のある魂を喰うと、成長します。
成長すると乗って空を飛べたり、指で串刺しにしたり、人間を溶かすことができます。
(どの程度の魂を食べれば、力を取り戻せるのかは次の書き手任せです)
12時頃に梨斗達と病院で落ち合う約束をしています。
ハオの言葉が頭から離れない。
二人っきりに戻ってしまって、おかしな寂しさを感じつつ梨斗とあやめは歩いていた。
「……せっちゃん?」
様子のおかしいあやめに梨斗は心配そうに声をかけた。
「やっぱりせっちゃんなんて名前は嫌よ。さっちゃんにして」
「元気ないと思ったらまだ名前で悩んでたのかよ!」
「私は護衛だけどレズでもデコでもないわ」
「……段々俺慣れてきたかも」
調子が戻ってきたあやめに梨斗はほっとする。この軽口にも段々慣れてきた。
学校からしばらく東に進むと、巨大な桜がより鮮明に見えてくる。
「すげー……」
ぽつり、と梨斗が声を漏らすとあやめが梨斗の腕を引いた。
あれ、と指を指した先。桜の近くに立っているのは、見知った人物。
あやめも梨斗から外見的特徴をよく聞いていた。
「――西連寺!」
黒髪の美少女が、そこに立っていた。
【E-6 桜付近 / 一日目 黎明】
【結城梨斗@to loveる】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 ワゴム×19@ONE PIECE 他支給品0〜2(未確認)
【状態】:精神的疲労(極小/回復中)、顎から目元までに掛けての切り傷
【思考・行動】
1:知り合い、広を探す。
2:記憶喪失については話さないままとりあえず現状維持。記憶喪失を直す方法を探したい。
3:もしも知り合いが居るとしたら皆を守りたい。
4:ゲームからの脱出。
【猿飛あやめ@銀魂】
【装備】:仕込み傘@銀魂
【所持品】:支給品一式 他支給品0〜2(未確認)
【状態】:健康、記憶喪失 、微かな疑心暗鬼
【思考・行動】
1:梨斗やその仲間を守る?
2:ゲームからの脱出。
※梨斗の言うことを完璧に信用していたはずですが、ハオの言葉に動揺中。
銀時の名前に強い何かを感じています。
【XI@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:童実野高校の女子制服@遊戯王 春菜の髪留め
【所持品】:支給品一式 不明支給品(0〜2)
【状態】:西蓮寺春菜の姿 肋骨損傷(数時間で回復可能)
【思考・行動】
1:この会場の奴らの『中身』を見て、自分の『中身』を見つける。
2:変身能力で混乱を起こす。できれば集団。自力での襲撃も行動範囲内。
※ 参戦時期は、HALUからHALの目を得た直後です
故に、電子ドラッグを使う事ができます。本来はサイの指令を刻み込む、つまり支配下に置くこともできますが、
制限によりその力は使えず、また効果もそれほど大きくなく、
「犯罪への禁忌感を減らす」、要は相手を犯罪に走らせやすくする程度です。
サイはまだその制限を自覚していません。
※ ワポルが定期放送で死亡者の発表について触れなかった為、死亡者発表については知りません。
※ 春菜の名前を知りません
※ 江田島平八を『凄い奴』と認識。
投下終了です。
両者とも投下乙!
>神への道
なんと輝いている月、もちろん悪方向に
対主催結成ステルスという奇妙なスタンスですが、加藤を利用する様でなんとも輝くなあ
果たして月は対主催集団を築くのか、その前に果てるか、Lとの対決は
月の描写がなんともらしく、キャラ把握ができていて羨ましい
加藤……がんばれ
>想い人
ぐおおおおお!こ、ここで切るとはなんとも酷!
リト、リトにすこし疑惑を向けるさっちゃん、そして春菜の姿をしたサイ、どうなるか気になりすぎる!
ハオもまさか、春菜があんな状態になっているとは予想もしなかっただろうなあ
ぬーべーを虎視眈々と狙っているし、こっちも気になる動向です
改めて、両者GJ!
投下乙です
ハオはステルスとして順調に活躍してるな
さっちゃんは早くもリトに疑いを持ち始めたか
そして梨斗に最大級の死亡フラグw
下手に近づくと殺されるぞw
ところで、「二人の武道」なのですが、容量が大きくて一つのページには収まらないようです
どこで切ったらいいでしょうか?
>神への道
やばいって、月がヤバイって……
加藤みたいなお人よしと組んだ事で、コイツのやばさが際立ってるわ。
ってか、加藤カワイソスギ
>想い人
リト包囲網完成www
ってか、ハオはリトの気持ちも知っているはずなのに、あくどすぎだろww
リトオワタ…
さっちゃん関連はリトの優しさが裏目に。
前後から刺されるぞw
ハオ楽しそうだな。先生はちゃんと見張ってろよ!w
優しさじゃなくて利用しようとしたのが裏目に出ただけじゃないか?
すいません、◆LotxnP5wDI氏は
>>426の質問に答えてもらえないでしょうか?
wikiに収録出来なくて困ってます
>>408 まとめ乙です、それから申し訳ない。
【日本刀@るろうに剣心】とさせてもらいます。
ヒソカ、遊戯、桃の投下を開始します。
上空に浮かぶ神秘的な輝きを放つ月が二人の男の影を晒していた。
一人は物柔らかな風貌をした少年、武藤遊戯。
もう一人は厳めしくもどこか優しさを持っている、そんな正反対の雰囲気たちを同居させているような少年、剣桃太郎。
二人の背景に存在するピラミッドの階段の二段目に遊戯が腰を降ろしており、
桃は後頭部に回した腕を枕に、階段の一段目に頭を預けて横になっていた。
「へぇ。じいさんにもらった宝物か」
宝物というのは遊戯が探しているという千年パズルのことだ。
彼の祖父がエジプトで発見してきたもので、彼にプレゼントされた物。
丁度真後ろの建物を黄金に塗り固めて逆さにしたような形をしている。
遊戯はそれをペンダントのようにして常に身につけていた。
さて―――――― その千年パズルには様々ないわくがあると言う。
祖父が言うには元々千年パズルが見つけ出されたのは今世紀初頭、とある発掘隊が王の谷のファラオの墓から持ち出した。
だがその発掘に関係した人物は皆謎の死≠遂げたらしい。
その中の一人だけが、闇のゲーム≠ニいう言葉を残して…。
普通の神経を持つ人間であれば不気味だと取るその昔話も、遊戯にとっては寧ろ好奇心を湧きたてるものにしかならなかった。
結果、遊戯は無事その後パズルを完成させた。
そしてそれと同時に遊戯はもう一つの人格を手に入れたのだった。
遊戯がもう一人の存在に気付いてきたのはごく最近。
パズルを完成させて以来、どうも記憶が切断されてしまうということがしばしばあった。
そこで遊戯は考えた。もしかすると、その間自分の身体は別の自分に支配されているのではないか、と。
考えれば考えるほど怖くなって、その末友人にその事を打ち明けた。
けれど…遊戯が恐れていた事態は招かれなかった。
皆、それでもずっと友達だ≠ニ受け入れてくれたのだ。
「それに、たくさんの思い出が詰まった……大切な、とても大切なものなんです」
「そうか」
この時遊戯の表情に温かさが垣間見えたような気がした。
桃の頬も、無意識の内に微かに綻ぶ。
「じゃあそろそろ行くか」
重たい上半身を緩慢な速度で起こした桃がパックを寄せて立ち上がる。
遊戯も取り敢えず腰を持ち上げてはみるが、その目的が疑問だった。
「行くって、どこにですか?」
「……その千年パズルとやらは探さなくて良いのか?」
「あ……………ッ、有難うございます!」
「フッフフ」
ポケットに手を突っ込み歩き出す桃の背後を遊戯が追う。
二人で遊戯の宝物≠見つけ出すために。
◇ ◇ ◇
右頬に星、左頬に雫。
それぞれのマークのペイントを施した男が醸し出している雰囲気は不気味だという表現が言い得て妙である。
喜怒哀楽の感情がまるで読めない。
殺し合いゲームに対して歓喜しているのか激怒しているのか悲観に走っているのか、はたまた愉快に思っているのか。
奇妙な外見に表層意識さえも読みとれないとくれば彼を見た者は誰しもが恐怖を覚えるだろう。
「あの子、部屋に居たときから目をつけていたんだけど…」
男、ヒソカは獲物を狙う野獣の如く、舌なめずりをし木の幹に頬を撫でつけながらピラミッドの側に居る二人の人物を見据えていた。
「うぅ〜ん、良い。やっぱり良いねェ……ボクにはわかるよォ………」
さながら憧れの先輩への告白のタイミングを待つ女生徒のように、木陰から二人を見守る。
木の影が覆いつくしているのだから、彼には光が届いていない。
つまり彼の股間が輝いているのは月明かりのせいではなく、目標に与えられた希望のせいなのである。
「おっとそろそろ動き出したか。それじゃあボクも……行こうかな?」
◇ ◇ ◇
「で、さっきから見ているあんたは一体何なんだ?」
「え?」
突然動きを停止させる桃を見れば一歩踏み出そうとした遊戯も足を止める。
あまりに突発的な出来事なので状況処理を遅らせたまま目の前の桃の背に視線を送ることしかできない。
数秒後、その脳内作業が終了し恐る恐る桃の背から前方へと顔を覗かせてみるのだが、そこには誰も居ない。
「気付いていたか。やっぱりね」
「え!?」
後ろから声がした。
遊戯は驚く。桃が振り向かずとも背後に誰かが居ることに気付いたことに。
「俺たちに何か用か?」
「うーん、まぁそんなトコロかな」
漸く桃は足先を相手の方向を揃えて、まともに相手と視線を交えた。
すると淀んだ黒い霧が地面を伝って自身の身体を這い上がってくるような錯覚に陥る。
それは桃の脳が発する危険信号であり、ただの幻覚というわけではない。
桃は警戒心に瞳を光らせ遊戯を庇うように腕を横に伸ばした。
コイツは、この目は左之助とは違う。
―――――――――――――――…………殺戮者だ!
「も、桃さん…」
「遊戯、下がってろ」
お い し そ う な 子
桃の熱い眼差しによって、ヒソカの全身にゾクゾクと電撃が駆け巡る。
目を離さなければ電撃に出口などないためとうとうショートし、我慢できなくなったヒソカが一瞬にして桃の鼻先スレスレまで顔を近付けた。
「…ッ!!」
「さぁ、戦ろうか」
◇ ◇ ◇
ドゴォ!
影と影がぶつかり合い、中央から凄まじい土煙が立ち上がる。
遊戯は階段の影から息を潜めてその光景を見ていることしかできなかった。
「すごい……桃さんもあのピエロみたいな人も………人間とは思えないぜ…!」
ヒソカが腕を突き出せば、桃は腕を掲げて攻撃を阻止する。
桃が足を振り上げれば、ヒソカは上体を捻って攻撃をかわす。
まさに一進一退の攻防が繰り広げられていたのだが。
「……あれ?何か桃さんの様子がおかしいな」
支援
「…………フッフフ…やるな…」
端から見れば互角。しかし実際には、ヒソカが桃をおしていた。
桃は本来右手を使って戦闘を行っている。けれど、だからこそ左手も必要になる。
拳を出したと同時に相手からの攻撃が襲ってきた時、回避できぬ状況にあればそれを防ぐのは左腕の役割なのだ。
しかし先ほどから桃は攻撃から逃げることを選択しようとしない。
いや、正確に言うならば選択できなかった。
ヒソカは人間を遥かに凌駕するほどの速度をもって的確に攻撃を繰り出してくるのだ。
桃が距離をとろうと後ろに退がったとしても、磁石のように素早くヒソカがくっついてくるので意味が無い。
そのため相手の拳は左腕で防御しているのだが、その度に左拳にまで衝撃が到達し軋むような痛みに襲われる。
やはり、左之助と対峙したときに負った怪我が問題なのだろう。
一応遊戯の支給品によって簡単な処置は施しているが…あまり役割を果たしてはいない。
(……何か様子が変だねェ)
また、ヒソカも桃の様子がおかしいことを察していた。
何と言うか、動きがぎこちない。
それに戦いにあまり集中できていないようにも見える。
恐らくその原因は―――――――。
(怪我をしているのか)
桃の左手に巻かれた包帯。その下に隠れているのは膨れ上がった左拳。
「つまらないな、今はボクだけをみてくれないと…」
「…!」
支援
「つまらないな、今はボクだけをみてくれないと…」
「…う!」
視野全体に広がるヒソカの顔面。
目線がかち合って寒気が走ったと共に、ヒソカの膝が桃の腹部にめり込んだ。
「桃さん!!」
思わず立ち上がる遊戯の胸の中は桃への不安だけが面積を埋め尽くしていた。
自分にできることなど何も無い、それでもつい、遊戯は吹っ飛んだ桃の元へと駆け出してしまった。
その光景を見てヒソカは歪んだ笑みを漏らしゆっくりと桃の方へ歩み寄る。
ゴン=フリークス≠ニいう少年。
彼は父親を探す、夢を叶えるという目的をもってハンター試験を受けた才能ある少年である。
ヒソカはそんな彼の実力を認め、彼の成長を見る度に性的興奮を覚えていた。
成長すればするほど確かにゴンは自分に近付いていった。
今はまだ遠くあっても、ゆっくりと、着実に。
ヒソカは桃がその感覚≠ノ似ていると感じていた。だからこそこうやって戦いに誘ったのだ。
だが、桃から与えられた高揚感はゴンのそれとは少し違うものであった。
自分の目標のために戦い、成長を遂げるゴンとは、違う目の輝き。
(なるほど)
――――――ヒソカが、足を止めた。
「大丈夫ですか、桃さ………ッ!?」
「遊戯!」
支援
途端、どういうわけか遊戯の身体が綺麗な放射線を描いて宙を舞った。
桃も不可思議な現象にただ、困惑して―――――遊戯の行き着く先へと視線を動かすと。
ヒソカの手のひらの上に、遊戯の頭が乗っていた
「…………」
そこから足元へと視線を落とすと、その頭と繋がっていたはずの胴体。
そう、ヒソカは自らの肉体に宿るオーラを自在に操作することができる、念≠使ったのだ。
正確には、ヒソカはそれをガムのように伸縮させることが可能な技、伸縮自在の愛(バンジーガム)
その技で自身のオーラを付着させていた遊戯を引き寄せればあとは簡単。
全ての握力を右手に注いで遊戯の首を、ちぎった。
「遊戯―――――――――――ッ!」
「あんまりこういうやり方はしないんだけど…君は、こうした方が強くなるだろう?」
驚愕の表情を浮かべる桃を挑発するようにヒソカが遊戯の頬を舌で撫で上げた。
そして一頻り舐め回した後で頭部を草むらに放り投げた。
「遊戯………」
じいちゃんにもらった、大切な宝物
――――――蘇える。
たくさんの思い出が詰まった……大切な、とても大切なものなんです
――――――遊戯の温もりある笑顔が。
あ……………ッ、有難うございます!
――――――温かい過去の情景が、桃の中に蘇える。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!」
「!!」
支援
燃え盛る炎!空に届く獣の呻き!
額に巻いていたハチマキを解き、重力に従って垂れ下がったそれに氣を注入する!
見よ、これぞまさしく!
「硬布拳砕功!!!」
鋭い刃と化したハチマキがヒソカに襲い掛る。
咄嗟に身をひねったことによって怪我は負わなかったものの、ヒラヒラと舞う自身の髪の毛が視界の隅を通り抜けていくのをヒソカは見逃さなかった。
先刻のヒソカの蹴りが腹部に入っていなければ、間違いなく舞ったのは髪の毛ではなく鮮血だっただろう。
「念……とはちょっと違うね。フフフ、やっぱりボクの目は間違っていなかった。
―――――でも、ボクを倒したいならもう少し強くならなくちゃいけない。それから…その左手も治すことだね」
「………」
「それじゃあ、そろそろ行くよ。君も疲れているようだしねェ。
君が強くなったらこのカードを使ってボクを呼ぶと良い。早くしないと…会場中が死体だらけになる」
磁力のカードと添えられていた説明書を置いてヒソカは踵を翻し立ち去った。
桃はそれがわかるとガクリと膝を落とし、涙を飲み込んで足元に転がった遊戯の頭を見据える。
「すまねェ……遊戯、俺は…………」
数時間とは言えど、桃にとって遊戯は仲間となっていた。
守りきれなかった、仲間。失った、悲しみ。
この感覚には嫌というほど覚えがある。
寂しさ、虚しさ、怒り、後悔、様々な色が桃の中で渦を巻く。
あの時ああしていれば、こうしていれば…そんなことを言っていたって時が戻るというわけでもないのに。
骨が砕けそうになるほど握り締めた右拳を地面に叩きつけ、悔恨する。
救えなかったものを、左腕で胸の中に抱き締めて。
支援
「………」
千年パズルっていうものを知りませんか?
「………俺が」
たくさんの思い出が詰まった……大切な、とても大切なものなんです
「……俺がお前の代わりに探してきてやるよ」
―――――千年パズルを。
――――――そして、もう絶対に負けたりなんかしない。
「あぁ、強くなってみせるさ。仲間を失わないくらいに、強く…な」
誓いを背負った少年の背中を、月が優しく照らしていた。
【A-3 ピラミッド付近】
【剣桃太郎@魁!男塾】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 不明支給品1〜3個(刀剣類はないようです)
【状態】:左拳損傷(包帯済み) 疲労(中)
【思考・行動】
1: カードを受け取る?
2: 強くなる
3: パズルを見つける
4: 主催者打倒
5: そのために仲間を集める
支援
【ヒソカ@HUNTER×HUNTER】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 スペルカード(初心、再来)@HUNTER×HUNTER 不明支給品1〜2個
【状態】:健康
【思考・行動】
1: 桃とまた再戦したい
2: ゲームを楽しんだ上で優勝し、主催者を殺す
※ 支給品の一つ、魔法カード(磁力)の所有権は桃に渡しました。
【武藤遊戯@遊戯王 死亡】
※ 支給品 包帯@るろうに剣心、他不明支給品1〜2個は放置されたままです。
投下終了。
支援有難う御座いました。
投下乙です
遊戯は死んじゃったか…
桃には遊戯の分も頑張ってほしいな
それと、沖田の支給品に関してですが、最後に注意事項として書いておけばいいでしょうか?
>>449 感想有難う御座いました。
はい、それでお願いします。
本当にお手数をお掛けします。
>>445訂正します。
【A-3 ピラミッド付近/黎明】
何度も申し訳ありません。
失礼します。
投下GJ
ヒソカきめぇw原作のヒソカらしさが出ていて凄い良かった。
なんという無差別マーダー…
遊戯乙。王様はどうなるのか、バクラはどうするのか…
桃頑張れ桃
投下乙!
遊戯……まさかの死。
ヒソカの念は強力ですねえ、本人のキャラの濃さも去ることながら
良マーダーになりそうです。
桃、果たしてパズルを見つけ、ヒソカにリベンジできるのか?
なんだか、リベンジしてほしい人が多くてしょうがない
適当なとこで切ればいいじゃん
だよな
その程度のこともいちいち聞かなきゃ分かんないのかよ
前までの話と食い違いが出来てしまったので下記の文章を削除します。
カードの対象設定は《023:聞く耳持ちません》で記述された内容に準拠します。
読み込みの甘さによるミス、大変失礼しました。
>>325 > ◆ ◆ ◆
>
> 星海坊主とはもちろん本名ではない。
> だがこのサンジの支給品、グリードアイランドの魔法カードは
> ゲームに登録された名前を対象にすることで発動するのだ。
> おそらくワポルは星海坊主の本名を知ることができなかった。
> その為、星海坊主は『星海坊主』という名前としてこのバトルロワイアルというゲームに登録されていたのだ。
> かつてこの魔法カードが元々存在していたグリードアイランドでは偽名でゲームに登録していた男がいた。
> だがそれにも関わらず魔法カードの対象となりえていたことと同じである。
>
> ◆ ◆ ◆
何を根拠に俺が荒らしだなんて言ってんだよ
何もおかしなこと言ってないだろ
安価つけなきゃ最初何の話かわからんかった
まあSSを分割するときは魅せ方というか見栄えに影響するから書き手本人に聞くのがマナー
書いた本人が一番どこで区切るべきか分かってるだろうしね。
レイアウトとか書き手は色々考えてるのさー
あとまあwikiで分割話って結構細々と面倒な作業があるんだよね
ひと手間減るだけでもだいぶ精神的に楽
性格や制限とかにやや不安があるので
小島多恵をしたらばに仮投下させていただきます
ご意見どうかお願いします
自分は問題ないと思いました。
本投下楽しみにしています。
特に問題はないと思います
>>457 過剰反応しすぎ
自意識過剰もほどほどに
結局書いた本人は何も言って来ないか
もう収録されちゃってるみたいだし、別にいいのかな
467 :
参加するカモさん:2008/07/18(金) 14:14:45 ID:ic+azkir
いいんでない?不味いようなら本人が好きなように直せるんだし
しかし名指しで呼ばれてるんだからちょっとぐらい出てきても良さそうなもんだが
自分のを収録してくれてる人が聞いてるんだし
忙しいのかな?
特に問題がないようなので、本投下開始します
−私が教室の隅っこで、絵を描いていたとき。
『あの……さ……』
−それが、始まりだった。
*****
ぽたり、ぽたりと血が落ちる。
それは砂の上に落ちて、鮮やかな染みを作っていた。
ぽたり、ぽたりと血が落ちる。
背中に空いた穴、そこから血が流れ出る。
ぽたり、ぽたりと血が落ちる。
それでも彼女の足は止まらなかった。
*****
−彼に呼ばれて、校舎の一角で向かい合った時。
『俺……と、付き合ったりとか……はは。だめだよね……』
−それが、彼との交際の始まりだった。
*****
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
背中が痛い。背中が痛い。背中が痛い
背中に空いた、傷が痛い
顔が痛い。顔が痛い。足が痛い
ここまで砂の中を歩いてきた、足が痛い。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
それでも、彼女の足は止まらない
*****
−教室が、あっという間に地獄に化した時。
『立てるか? 逃げなきゃホラ!』
−それが、彼と私の逃亡の始まり。
*****
ずるずる、ずるずると片足を引きずる。
歩けるようになっても、どうしても鈍いところがある。
ずるずる、ずるずると片足を引きずる。
滴り落ちた血が、奇妙なシュプールを砂に描く。
ずるずる、ずるずると片足を引きずる。
彼女が歩みをやめないから。
*****
−変な怪物が私に襲い掛かってきた時。
『!!』
−それが、彼が私を守ってくれた、始まり。
*****
どくどくと、どくどくと音がする。
顔に刺さった何かから音がする。
どくどくと、どくどくと音がする。
自分が付ける仮面から伸びた、何かから音がする。
足りない、足りない、足りない、と声がする。
だから彼女は歩き続ける。
*****
−彼が不良たちに連れて行かれるとき。
『大丈夫だからっ!!大丈夫』
−それが、私が彼の身を案じた、始まり。
*****
ぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたり。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずる。
どくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどく。
足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない。
見つけた。
*****
−彼が大男に向かっていった時。
『うオオオオオオオッ』
−それが、私が彼の強さを見た、始まり。
*****
それは本能に任せての事。
首にズブリと牙を立てた。
それだけでは満足できず、両手を相手の胴に突き刺した。
ズキュン、ズキュン
抜けていく。抜いていく。
満たされる。自分が満たされていく。
塞がっていく。自分の傷が、塞がっていく。
既に命なき死体の血でも、傷が塞がるには十分だった。
*****
始まって、そして今がある。
今、私は、彼が――
大好き。
*****
「はぁ……はぁ……助かった…」
私は思わずそう口にした。だって実際そうなのだから。
背中をまさぐる。服に穴が開いたままだけど、そこから突っ込んだ指で肌を探っても、さっきまであった穴はもうなかった。
塞がったんだ。傷はもう塞がった。もう血は流れない。さっきまでみたいな激痛もない。
私は、助かったんだ。
嬉しい。よかった。よかった……。
そこで気付いた。
喜んでなんて、いられない。
自分を容赦なく撃った、あの男。
酷い。酷い。酷い。
笑って人を撃つなんて、ひどい人。
悪人。あの人は悪人だ。悪い人だ。なんて人だ。
あの人はきっとこれからも笑って人を撃って殺すんだろう、私みたいに。
脳裏に浮かぶビジョン。さっきの男が逃げる人の背中に笑いながら銃を撃つ。
『あーっはははははは!』
ひどい、相手の人がかわいそう。私のように、騙されて撃たれる人。
黒い学ラン、黒い髪。端正な顔立ちのその人……。
計、チャン?
気付いた。気付いてしまった。
計チャンが、危ない。
計チャンが強いことは知っている。でも、それでも不安が消えない。
あの男以外にも、ここには『酷い人』が多い気がする。
『さっきの』だってそうだ。胸に傷があった。あの男じゃない。きっと別の誰かがやったんだ。
計チャンが撃たれる姿が目に浮かぶ。頭が吹っ飛んで、脳みそが宙を舞う。
計チャンが刺される姿が目に浮かぶ。胸を貫かれて、そのまま体を切られてしまう。
計チャンが潰される姿が。
計チャンが殴り殺される姿が。
計チャンが焼き殺される姿が。
計チャンがバラバラになる姿が。
嫌だ!嫌だ!
そんなの嫌だ。
計チャンを、私の大事な人を、あんな奴らに殺されたくない。
嫌だ、嫌だ、そんなのは嫌だ。
彼は私の大切な人。
私に光を与えてくれた人。
私を守ってくれた人。
私に笑顔をくれた人。
私は彼を失いたくない。
「しんじゃ嫌だよ、計チャン…」
涙が流れる。
でもどうすればいい。
ここにいっぱいいる『酷い人』たち。
その人たちに計チャンが殺されないようにするには、どうしたらいいの?
私に何ができる?
「あ」
なんだ、簡単だ……。
殺せばいいんだ。計チャンが殺される前に、『酷い人』をみんな私が殺せばいいんだ。
そうだ、簡単な話だったんだ。
いつも彼に守られていた、弱い私。でも今の私は違う。
もう、外れていた石の仮面。多分これが私に力を与えてくれた。それがなんとなくわかる。これは、本能、なのかな。
近くにあった『ゴミ』を掴む。私の栄養の搾りかす。既にやせ細ったそれを、腕に抱える。
あっという間に折りたたむ。それほどまでに私の腕の動きは速くなってる。
残った骨が合わせた腕の中で粉になるのが分かる。腕の力も増している。
残った頭を片手に掴み、握り締める。頭蓋骨はあっさりと砕け散り、かさかさの皮と肉が手にこびりつく。
その手を近場の壁に叩きつける。壁は砕け散り、一緒に肉と皮も飛び散った。
凄い。凄い。
今の私なら、あの高笑いの男もあっという間に倒せるかもしれない。
いや、倒せる。銃弾なんてもう怖くない。握って壊せばいい。
私なら、『酷い人』を全員殺せる。計チャンが殺される、その前に。早く。
だけど、どうしよう。
あの男も最初は友好的だった。きっと『いい人』のふりをする『酷い人』もいっぱいいる。
どうしたらいいだろう。それじゃあ、私は騙されちゃうかもしれない。
どうしよう……。
「あ、そうか」
みんな殺せばいいんだ。
私と計チャン以外、みんな殺せばいい。
そうすれば『酷い人』は間違いなくいなくなる。
よかった……一時はどうしようかと思った。
最後は私と計チャンと二人きり。
あの人は、最後に残った1人を元の場所に返してくれるはずだ。
……一緒に帰りたい。一緒に帰って、二人で暮らしたい。
あの部屋で、二人でおきて、二人で朝食を食べて、二人で出かけて……。
でも、駄目。
だって、計チャンにはしんで欲しくない。
だから、私は自殺しよう。
全部終わったら、私が死ぬ。それで計チャンが残る。それで計チャンは生き残る。そして元の場所に帰れる。
大丈夫。計チャン良い人だから、きっとまたいい人が見つかるよ。
私が隣にいたいけど……でも、しょうがないよね。
我慢、しなくちゃだめだよね。
わたしの幸せより、計チャンが幸せになってくれた方が嬉しいから。
涙が流れた。
ないちゃ駄目だよ。
ないたら、決意が脆くなっちゃう。
計チャン、生きて、おねがい……。
私は、一緒に行けないけど、ごめんね。
*****
すこし後、私は近くの駅の中に潜んでいた。
あの後、私は脚力も試してみた。
やっぱり、足は速くなり、蹴った壁もスポンジみたいに簡単に壊れた。
だけど、そこで予想外な事が起こった。
夜が明けてきて、差し込んできた日差し。それを受けた私は、途端に体に熱さを感じた。
苦しみ。焼けるような熱さ、何かが失われる感覚。私は、がむしゃらに地面を蹴って、この駅の窓ガラスを破って飛び込んだ。
日陰に入ると、苦しみは消え、私は安心した。
吸血鬼。
その言葉がやっと私の脳裏によぎった。
私はさっき、血を吸った。それにより傷は治り、強靭な肉体を得た。
まさに吸血鬼そのものだ。
となれば、さっきの私の苦しみも説明がつく。
吸血鬼は日光を嫌う。吸血鬼のセオリー。他にもにんにくとかあるけど……どうなんだろ?
ともかく、夜が明けたら私は迂闊に外に出られない。
もたもたしていられないのに。でももう外を出歩くわけにはいかない。
一体どうしたら……。
そうだ。ここは駅なんだ。
飛び込んだところは改札よりも中、すこし進めばすぐホームがある。
ホームの近くには線路も見える。
ということは、電車も走っているかもしれない。
電車の中なら、日が強くなければ物陰に潜んで日を避けられる。少なくとも、上からの日光は防げる。
それに、電車ならば移動も容易だ。
私は早く行動しなくちゃいけない。早く計チャン以外を全員殺さないといけない。
それには速い移動手段が必要、だと思う。少なくとも物陰に隠れながら歩くよりはいいと思う。
地図を見ると、線路は山手線みたいに輪になっていて、駅はここを入れて3つある。
電車に乗って、外をなんとか見れば、線路沿いの範囲は大体見ることができるはず。
もし、相手を見つけたら近場の駅に潜んで、近くを通るのを待つ。
本当は直接向かいたいけど、昼間のうちは難しそう。だから、昼間のうちは隠れて潜む。そして、相手が近づいてきたら……
私はデイパックからあるものを取り出した。
奇妙な形の銃。前に計チャンが持っていたのに似ているが、アレよりずっと大きくて長い。小さいモニターがついていて、説明書によるとこれで相手をターゲットするらしい。
上トリガーでロックオン、下トリガーで、撃つ。
試し撃ちをしたら、すこしタイムラグの跡に壁が吹き飛んだ。すごい、銃よりも凄い。だって銃弾なんてないんだから、避けようがないんだ。
しかも、どうやら射程はかなり長くって、500mまで撃てるらしい。まるでスナイパーだ。ドラマのシーンが頭によぎる。
建物の中に潜んで、相手が来るのを見計らうスナイパー。私はそんな風に潜むんだ。
電車内から撃って当たればいいんだけど、さすがに猛スピードで走ってる電車の中から撃って当たる自信は、素人の私にはない。
だから、電車で敵を探して、駅で敵を待つ。そうやって夜までにこの辺りの敵を一掃したい。
夜になれば……私は自由に歩いていける。
神様……計チャンがどうか夜までに無事でいますように。
そう考え、私は日光の入らないところで、電車を待った。
計チャン。
弱い私を守ってくれた人。
今度は私があなたを守るから。
ちょっと怖いけど、でも、計チャンの為なら……私、頑張る。
もし、最後にあなたと2人きりになれたら……あなたの絵を、描きたいな。
いい絵の具を見つけたの。紅くって、綺麗で、おいしい絵の具。
それであなたを描いていいかな?
駄目だったら、いいんだけど……。
でも、できれば描きたいな……。
だから、安心して、計チャン。
みんな、私が殺すから。
わたしが、計チャンを、守るから。
【C-2 駅/ 一日目 早朝】
【小島多恵@GANTZ】
【装備】: Xショットガン@GANTZ 日本刀@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式<沖田> 石仮面@ジョジョの奇妙な冒険 未確認支給品0〜1<沖田>
【状態】:吸血鬼 健康
【思考・行動】
1:玄野以外の人間を殺害し、自分も自殺して玄野を生き残らせる。
2:電車が着たら乗り込み移動。敵を探し、見つけたら近場の駅に潜伏する。夜までこの繰り返し。
3:日差しを避ける
※ 吸血鬼@ジョジョの奇妙な冒険 になりました。身体能力の向上、吸血による体力回復の能力が備わりました。
日光への耐性は強化されており、20秒程度は活動が可能です。また、性格もやや邪悪になっており、
玄野以外の人間への思いやりが欠落しています。
本来は血を吸った相手を屍生人に変える能力もありますが、少なくとも既に死人だった沖田には効果がありませんでした。
生者への効果は不明です。
※ 沖田のデイパックを回収して使っています。
※ 電車が動いているのか、動いているとしたら、どの程度のサイクルで動いているのかは、後続の書き手の判断に任せます。
※ A-1からC-2にかけて、血痕が残っています。
※ C-2に血を吸われてひからび、破砕された沖田の死体が放置されています。
※ C-2に壁を壊された建物がいくつか見られます。
本投下終了です
うわあぁぁぁあこえぇ……
栄養になった沖田乙
多恵ちゃんヤンデレすぎる。このロワでは貴重なヤンデレ
太陽に弱いのはネックだけど接近戦は強そうだなぁ。
玄野はどうするんだろうGJです
投下GJ
タイトルがギアスwなんという吸血鬼。
行動方針がはっきりしたのが良いですね。
駅に潜む吸血鬼とかホラーだ…
多恵ちゃんの内面描写がよかった。ぞくぞくする
>>487 過剰反応しすぎ
自意識過剰もほどほどに
投下乙です
これはいいヤンデレw
本格的にマーダーとして動き始めたし、これからの活躍が楽しみだ
それにしても…
春奈といい沖田といい、死んでからもろくな目に合わない奴が多いなw
投下します
「――西蓮寺!」
其処には梨斗が好意をもっている、西蓮寺春菜が立っていた。
思わず梨斗は叫ぶ。
最愛の春菜に出逢えたことが嬉しくて。
「あ………」
サイは内心焦っていた。
まさかこの姿を借りていちばん最初に出逢ったのがこの姿の持ち主と知り合いだとは予想していなかったから。
ひとまずサイは笑いかけておいた。
下手に口を開かないほうがいいと思ったのだ。
「この子が西蓮寺春菜?」
「あぁ」
「何か変じゃない?」
「そうか?」
あやめが訝しげに小声で問う。
目の前の人間がもつ空気にはどこか違和感があったからだ。
それから臭い。職業柄血の臭いはいやというほど知っている。
その生臭い臭いがここには漂っていた。
記憶は無いがあやめの感覚が反応しているのだろう。
「西蓮寺は一人だったのか?」
「うん。一人は……怖かったよ」
「そ、そっか。ででで、でももう大丈夫だから安心しろよ。そういえばその制服、どうしたんだよ?」
「え?あぁ、ちょっとしたトラブルがあって。でもちょうど支給品の中に制服があったの」
目尻に涙をためる春菜を見て梨斗はしどろもどろになりながらも笑ってみせた。
「ひとまずララたちと合流しようと思うんだけど、どうかな?」
「そうだね、二人に任せる」
「………ちょっと待ちなさいよ」
「何だよもう、さっきから」
「あ、あの、私が何か怒らせるようなこと…」
「気にしないで。さ、行こう」
ベタベタと暑苦しいわね。
だいたいなんなのよその態度。
邪魔者みたいな扱いして…護衛としての私の立場って何なの?
「梨斗、その子絶対に…」
「しつこいなぁ、西連寺に失礼だろ」
「………」
サイは戸惑う表情を作りながらも内心はあやめへの警戒心でいっぱいだった。
気付きかけているのか?俺の正体に…。
そのあと、梨斗と春菜、その後ろをあやめがついていくような形で進んでいると、いきなり梨斗が立ち止まる。
春菜もあやめも一歩進んだあとで足を止めた。
「さっちゃん、悪いけどあの家に忘れ物とりにいってくれないかな?オレの地図がないみたいなんだ」
「そんなの私か春菜ちゃんの地図を見ればいいだけじゃない」
「…食料や支給品も無いんだよ。悪い、さっちゃん!」
忘れ物?本当に?そんなもの取りだしたことなんてあった?
ただ邪魔なだけじゃなくて?
もしかして私は…仲間に逢うまで利用されてただけ?
あやめの中にあった小さな疑念がだんだんと膨らんでいく。
「オレたちはゆっくり歩いてるから」
「………絶対に追いつくからね」
その忘れ物とやらを探したあとで徹底的に邪魔してやる。
だから追いついてやると宣言してあやめは異常な速度でその場をあとにした。
■
梨斗と春菜はあやめが居なくなったあと他愛もない話で盛り上がっていた。
とはいえ話しているのはほとんどが梨斗であり春菜は相槌をうったり笑ったりしているだけである。
「それでララのやつが…」
「ふふ。あれ……どうしたの?」
また、梨斗が足を止めた。
ただならぬ空気を感じて春菜が梨斗の顔を覗き込む。
「なぁ、西蓮寺」
「え?」
「……じゃない、よな。君は西蓮寺じゃない」
「!」
サイは一瞬目を見開くがすぐに微笑んでみせる。
「いきなりどうしたの?」
「ごまかさなくていいよ。たしかに君は西蓮寺の姿をしている。
君が桜の下に立っているときは本当に西蓮寺だと思った。
でも西蓮寺は…そんな笑いかたはしない。
オレは西蓮寺のことよく知ってるからわかるんだ。君は、西蓮寺じゃない」
「……へぇ」
梨斗の心臓の脈うつ速さが急激にスピードを高めた。
それでも梨斗は春菜から…サイから逃げようとはしない。
「じゃああの女の人を逃がすために、君は俺と二人きりになったってこと?」
「それもあるけど…少しは、期待してたのかもしれない…」
「そっか。でもすごいねあんた、ただの人間なのに俺の正体見破るなんてさ」
逃げ出したい気持ちはいっぱいある。
でもここで逃げたらあやめを逃がした意味が無くなる。
「あとさ、これは俺のわがままなんだけど」
「何?」
「……西蓮寺の姿で人を殺すのは…止めてほしい」
「へぇ。でも俺にも俺の都合ってのがあるからね」
寂しそうに言う梨斗をまっすぐと見つめながらサイが冷めた声で言い放った。
しかしそこで梨斗の真後ろに今まで居なかった人間が立っているのが見えた。
「降魔杵変形!」
危機を感じてか、すぐにサイは後ろに跳ぶ。
「っぁ……」
サイと梨斗の目は釘づけになった。
梨斗の腹部から突きてている刃に。
刃が視線から逃れると、ブシュゥゥゥゥ!とシャワーがバスマットを叩くような音が辺りに響いた。
「本当は不意打ちなんてまねは好きじゃねぇんだけどな…
さっきみたいなことになったら困るんだよね、おじさんも」
「………」
梨斗がドサッと音を立てて崩れて、サイといきなり現れた人間、星海坊主はにらみ合った。
「それじゃあ一発やっとくか」
■
前へ前へと武器を突き出す星海坊主。
素手と刃物、そのリーチの差は大きい。
でも刃物が的に当たらなければ意味はないわけで。
「おっとと、おじさん強いね」
「お前もなかなかだ」
戦闘種族夜兎の血を引く星海坊主に負けず劣らずの速度とパワーでぶつかっていくサイ。
驚異的な能力には両者とも目を丸くするほど。
星海坊主からすればサイは春菜の姿でいるのだから、女子高生がここまでの力を備えているとは更にたまげた。
娘の神楽も見た目は可愛らしい少女なので納得できないこともないが。
「アハハハハハ!さっきもあんたみたいなのと戦ったんだけどさぁ、もしかしてここってあんたや俺みたいなやつがわんさか居るのかな?」
「そりゃあ俺も手を焼くな。なんせ俺はここに居るやつ全員殺るつもりなんでなぁっ!」
(………)
薄れゆく意識の中、梨斗は考えていた。
この勝負を長引かせてはいけない。
いつまでも続かせていてはあやめが来てしまう。
自分が春菜を引きつけておいた意味がない。
(何とかしないと…さっちゃんが来る…)
力が入らない腕を必死にパックに伸ばした。
腕が震えて上手くパックのチャックに触れられない。
でも梨斗は諦めない。
懸命にそれを掴もうとする。
(何か方法は…!)
シャッ!
念願のパックが開く音が聞こえた。
もうすぐ自分が死んでしまうというのに梨斗の顔色が明るくなる。
(これだ!)
「左遷、使用…対象者、西蓮寺!」
「え?」
手の中にあったカードと一緒に星海坊主と激しい戦いを行っていたサイの姿も消える。
星海坊主は振りかぶった腕を止めて唐突な出来事に目を丸めた。
これはさっき自分におきた現象と同じ…?
(…良かった)
あやめは今後必ずここにもどってくる。
それを知っているのは春菜だけだ。
星海坊主はあやめのことを知らないので多分サイが居なくなれば他の場所に移動するはず。
「てめぇの仕業か?戦いに水をさすようなまねしたのは…」
「ぐぅぅぁ…」
いつのまにか星海坊主が梨斗の目前まで来ていて、無力な梨斗の後頭部を踏みつけた。
とてつもない力によって鼻の骨がひどい音を立てて砕かれる。
それでも梨斗は最後の最後に抵抗をした。
(さっちゃんに、謝らなきゃいけない…!)
そのとき、辺りを光が包む。
【D-6 道路/一日目 黎明】
【星海坊主@銀魂】
【装備】:降魔杵
【所持品】:支給品一式 未確認支給品0〜2
【状態】:健康 やや興奮状態
【思考・行動】
1:何これ?
2:神楽を探し出す為に優勝し元の世界へ帰る。
※宝貝・降魔杵はワポル(?)によって仙道以外でも使用できるように加工されています。
【????/????? 黎明】
【XI@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:童実野高校の女子制服@遊戯王 春菜の髪留め
【所持品】:支給品一式 不明支給品(0〜2)
【状態】:西蓮寺春菜の姿 肋骨損傷(数時間で回復可能)
【思考・行動】
1:???????
2:この会場の奴らの『中身』を見て、自分の『中身』を見つける。
3:変身能力で混乱を起こす。できれば集団。自力での襲撃も行動範囲内。
※ 参戦時期は、HAL?からHALの目を得た直後です
故に、電子ドラッグを使う事ができます。本来はサイの指令を刻み込む、つまり支配下に置くこともできますが、
制限によりその力は使えず、また効果もそれほど大きくなく、
「犯罪への禁忌感を減らす」、要は相手を犯罪に走らせやすくする程度です。
サイはまだその制限を自覚していません。
※ ワポルが定期放送で死亡者の発表について触れなかった為、死亡者発表については知りません。
※ 春菜の名前は認識できていませんが、苗字は認識済み。
※ 江田島平八、星海坊主を『凄い奴』と認識。
※ 移動した場所は後続書き手に任せます。
■
その頃。
やっぱり無かったじゃない、忘れ物なんて。
もぬけの殻だった家を背にしてあやめは舌を鳴らした。
相変わらず無表情ではあるが本当は梨斗の嘘に腹をたてていた。
家の傍に立っていた木を梨斗に見立てて一発蹴りをいれて怒りを緩和させてみる。
それでもいらいらは取りだせないがまずは二人に追いつくのが先だ。
「待ってなさいよ、梨……斗?」
まっすぐと進んでいった二人を追おうとしたあやめの前に光が発生した。
【E-6 民家の前/一日目 黎明】
【猿飛あやめ@銀魂】
【装備】:仕込み傘@銀魂
【所持品】:支給品一式 他支給品0〜2(未確認)
【状態】:健康、記憶喪失 、疑心暗鬼 梨斗への苛立ち
【思考・行動】
1:…?
2:梨斗と春菜を追う
3:梨斗やその仲間を守る?
4:ゲームからの脱出。
※梨斗の言うことを完璧に信用していたはずですが、ハオの言葉に動揺中。
銀時の名前に強い何かを感じています。
【結城梨斗@to loveる】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 ワゴム×19@ONE PIECE グリートアイランドの魔法カード(同行・漂流)@HUNTER×HUNTER 他支給品0〜2(未確認)
【状態】:精神的疲労(極小/回復中)、顎から目元までに掛けての切り傷 腹部に刺傷 鼻の骨骨折 虫の息
【思考・行動】
1:あやめに本当のことを告白し危険人物について伝える
※魔法カード、再来によってここに戻ってきました。
投下乙。
話は良かったけどサイをどっかに飛ばしたのはさっちゃんがここに来るからですよね?
だったらリトの行動が矛盾しちゃうかと。
だからそこんとこだけ修正してもらいたいです。
投下乙です
内容自体は問題ないと思いますが、
スペルカードは他のキャラにも多数支給されているので、流石に出しすぎではないかと思います
別のカードならともかく、同じカードが出ているわけですし
では、
>>496以降を修正します
力が入らない腕を必死にパックに伸ばした。
腕が震えて上手くパックのチャックに触れられない。
でも梨斗は諦めない。
懸命にそれを掴もうとする。
(何か方法は…!)
シャッ!
念願のパックが開く音が聞こえた。
もうすぐ自分が死んでしまうというのに梨斗の顔色が明るくなる。
(これだ!)
「初心、使用…対象者、西蓮寺!」
「え?」
手の中にあったカードと一緒に星海坊主と激しい戦いを行っていたサイの姿も消える。
星海坊主は振りかぶった腕を止めて唐突な出来事に目を丸めた。
これはさっき自分におきた現象と同じ…?
(…ふぅ)
あやめは今後必ずここにもどってくる。
それを知っているのは春菜だけだ。
星海坊主はあやめのことを知らないので多分サイが居なくなれば他の場所に移動するはず。
梨斗が自分にとっての勝利を確信したとき、パックから一枚カードが覗かせているのに気づく。
(良かった…あれ?カードがもう一枚あるぞ)
「てめぇの仕業か?戦いに水をさすようなまねしたのは…」
「ぐぅぅぁ…」
カードに手を伸ばそうとするといつのまにか星海坊主が梨斗の目前まで来ていて、無力な梨斗の後頭部を踏みつけた。
とてつもない力によって鼻の骨がひどい音を立てて砕かれる。
それでも梨斗は最後の最後に抵抗をした。
(さっちゃんに、謝らなきゃいけない…!)
そのとき、辺りを光が包む。
【D-6 道路/一日目 黎明】
【星海坊主@銀魂】
【装備】:降魔杵
【所持品】:支給品一式 未確認支給品0〜2
【状態】:健康 やや興奮状態
【思考・行動】
1:何これ?
2:神楽を探し出す為に優勝し元の世界へ帰る。
※宝貝・降魔杵はワポル(?)によって仙道以外でも使用できるように加工されています。
修正支援
【E-6 ??/????? 黎明】
【XI@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:童実野高校の女子制服@遊戯王 春菜の髪留め
【所持品】:支給品一式 不明支給品(0〜2)
【状態】:西蓮寺春菜の姿 肋骨損傷(数時間で回復可能)
【思考・行動】
1:???????
2:この会場の奴らの『中身』を見て、自分の『中身』を見つける。
3:変身能力で混乱を起こす。できれば集団。自力での襲撃も行動範囲内。
※ 参戦時期は、HAL?からHALの目を得た直後です
故に、電子ドラッグを使う事ができます。本来はサイの指令を刻み込む、つまり支配下に置くこともできますが、
制限によりその力は使えず、また効果もそれほど大きくなく、
「犯罪への禁忌感を減らす」、要は相手を犯罪に走らせやすくする程度です。
サイはまだその制限を自覚していません。
※ ワポルが定期放送で死亡者の発表について触れなかった為、死亡者発表については知りません。
※ 春菜の名前は認識できていませんが、苗字は認識済み。
※ 江田島平八、星海坊主を『凄い奴』と認識。
■
その頃。
やっぱり無かったじゃない、忘れ物なんて。
もぬけの殻だった家を背にしてあやめは舌を鳴らした。
相変わらず無表情ではあるが本当は梨斗の嘘に腹をたてていた。
家の傍に立っていた木を梨斗に見立てて一発蹴りをいれて怒りを緩和させてみる。
それでもいらいらは取りだせないがまずは二人に追いつくのが先だ。
投下乙
でもいくら愛称でスペル発動おkっつっても西蓮寺でサイが飛ばされるのは流石にないのではないでしょうか?
対象設定が曖昧すぎると思います
「待ってなさいよ、梨……斗?」
まっすぐと進んでいった二人を追おうとしたあやめの前に光が発生した。
【E-6 民家の前/一日目 黎明】
【猿飛あやめ@銀魂】
【装備】:仕込み傘@銀魂
【所持品】:支給品一式 他支給品0〜2(未確認)
【状態】:健康、記憶喪失 、微かな疑心暗鬼 梨斗への苛立ち
【思考・行動】
1:…?
2:梨斗と春菜を追う
3:梨斗やその仲間を守る?
4:ゲームからの脱出。
※梨斗の言うことを完璧に信用していたはずですが、ハオの言葉に動揺中。
銀時の名前に強い何かを感じています。
【結城梨斗@to loveる】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 ワゴム×19@ONE PIECE グリートアイランドの魔法カード(同行)@HUNTER×HUNTER 他支給品0〜1(未確認)
【状態】:精神的疲労(極小/回復中)、顎から目元までに掛けての切り傷、腹部に刺傷、鼻の骨骨折、虫の息
【思考・行動】
1:あやめに本当のことを告白し危険人物について伝える
※魔法カード、再来によってここに戻ってきました。
支給品の数も合わせました、ご意見有難うございました。
投下乙
リトがまさかサイを見抜くとは、愛ゆえか
星海坊主の襲撃も切り抜け、あやめとの誤解もこれで解消できるといいけど…
飛ばされたサイは果たしてどこにいくやら、楽しみです
サイがリトに対して偽名として名乗ったようなもので、姿も同じだし
ギリギリ通しでいいかと思いますが
前から思ってたけどスペル設定がなぁ…
飛ばされる本人が自分の名前だと認識してればいいけどサイはギリギリ……か?
逆に箱の方が飛ばされてリトびっくり展開が見てみたいようなw
510 :
参加するカモさん:2008/07/19(土) 11:02:42 ID:wrawMfhS
ふざけた展開ですね
正直がっかりですよ
したらばで議論されない限り問題なし。
うーん。
フラグ全潰しでもったいないとは思うけど、これといった矛盾はないんだよね。
なんというか惜しい作品だ投下乙
名簿はみかんの皮の汁で書かれているといい
投下乙です
内容自体は面白いと思うのですが、支給品やフラグのことなどで少々問題があるように感じます
したらばの議論スレで問題点をまとめているので、意見お願いします
完成したので投下します。
路上に放置された車が一台。
それに寄り添うように四人が座っている。
いきなり鼻がご立派な怪物と幽霊?に襲われた四人は、車に乗って逃げたはいいもののD-3の路上で立往生を余儀なくされていた。
車はアーロンという怪物と衝突した衝撃に加え、荒い運転によってついに動かなくなってしまったのだ
「どうじゃ?」
「……そう簡単には直せそうにねぇな」
元々このパトカーは真撰組の所有物である。真撰組副長である土方はなんとも不思議な気分で車の調子を確かめる。
部下によって、時には自らの手によって廃車に追い込んだことのあるパトカー。
このパトカーもまた土方が最後の運転手になってしまった。
細かいところまでは分からないが、目先の故障箇所は前輪のパンクだ。
エンジン類もこの調子ではいくつか壊れているかもしれない。
叩いて直るというレベルの故障ではなかった。というかこのパトカーはやけに年季が入っている。
ハルの荒い運転は故障のきっかけに過ぎなかったのだろう。
検査を終えて土方が首を横に振ると、落胆したように少女は表情を曇らせた。
車が支給されて帰れると思ったらこの有様。出鼻をいきなり挫かれた様なものだ。
「三浦……」
玄野の気遣うような声にハルは笑顔を浮かべて見せるが、やはりどこか冴えない。
「いえ、みなさんが無事でよかったです!車は壊れちゃったけど、いい人達と出会えてハルはハッピーです!」
ハルは落ち込む気持ちを持ち前のポジィティブで切り替える。
土方、玄野、大公望。優しそうな、頼れそうな人達と出会うことができた。
記憶は曖昧だが、ハルの行動で三人を救えたらしいのだ。人を引いたという事実はショックのあまり忘却の彼方である。
「だが、ありゃ一体なんなんだ?」
「ゆきめと、……確かアーロンと名乗っておったな」
「玄野さん達を襲った人達のことですか?」
危機を共に乗り越えた連帯感とでも言うのだろうか。すぐに打ち解けた四人は軽い自己紹介を済ませた後、先ほどの出来事について話し始める。
ハルは車であの場に突入すると同時に気を失ったので、二人の顔や姿は一切見ていない。
ハルの疑問に男達は一斉に顔を見合わせた。
「……魚星人?」
「魚人とか言っておったのぉ」
「お、俺は別にびびってねえぞ。幽霊なんて怖いわけねぇだろぉぉぉぉ!」
「はひ?魚?幽霊?」
いまいち要領の得ない会話にハルは疑問符を浮かべる。
土方の真っ青な顔がなんだかおかしい。
しかし今はこうやって普通に話しているが、目の前の三人は実際に殺されそうになったのだ。
ぞくり、とハルの背筋を冷たいものが滑り落ちる。思い出すのは最初に見た死体だ。
急に黙り込んでしまったハルに合せるように場に沈黙が落ちる。殺し合いというここに集められた目的を思い出してしまったからだろうか。
沈黙を真っ先に破ったのは玄野だ。彼にはずっと気になっていることがあった。
「変なこと聞きますけど、皆さん死にました?」
「はぁ?」
それに訝しげな表情を浮かべたのは土方だ。
「んな訳ねーだろ。そもそも死んでたら今こうして話せないだろ」
「ハルも死んだことはないです……」
玄野は二人の答えに表情を険しくする。どう説明したらいいのやら。そもそもこういう説明は苦手なのだ。
加藤がいれば任せられるのだが、今事情を詳しく知るのは自分しかいない。
「太公望さんは?」
「わしはそもそも人間じゃなくて仙人だしのう。こう見えてお主らの数倍生きておる」
「仙人……!?」
三人は驚愕して太公望を凝視する。そもそも仙人を見たことがないので本物かどうかは判別することができないが。
やはりおかしい、と玄野は思う。
今までにこんなおかしなことはなかった。生きた人間、それに仙人が集められた『殺し合い』という異常なミッション。
スーツも武器も玄野の手にはない。
いつもと違う。どうしてこんな事になっているのか。
「最初に集められた黒い球がある部屋覚えてます?」
玄野以外の三人が頷く。忘れるはずはない。
玄野はたどたどしいながら、自らが知ることを三人に話す。
死人が集められて行われるミッションのこと。ガンツのこと。ワポルのことは見たことも聞いたこともないということ。
累積点が100点に到達すると3つの特典のうち一つを得られること。玄野が体験したミッションについても軽く話す。
要点がまとまってるとはいえない説明だったが、それでも異常事態だということは伝わったらしい。
「ハルは死んだんですか?」
「分からない。普通は皆死んだ時の記憶があるから、それがないっていうことは……」
「おいおいおい!マジかよ……漫画や小説じゃあるまいし……」
「いや、死人という点は気になるが状況的にその『ミッション』と考えるのが妥当じゃ」
玄野が語った『ミッション』の内容。
黒い球、突然謎の部屋に集められる、参加者の頭蓋内の小型爆弾。クリア後の得点。
ミッションも星人を殲滅するという内容だが、今のこの状況も自分以外を殲滅しろというのと同意である。
類似点が多すぎるのだ。現に黒い球が存在するのを太公望たちは見ている。無関係とは考え辛い。
ミッションを終えない限りは元の場所には帰れない、と玄野は告げた。
「そんな……」
「どうしろって言うんだよ」
土方が苛立ちを隠そうともせず舌打ちをする。ハルは突きつけられた現実に衝撃を隠せない。
玄野だってこんな事態は初めてだ。戸惑いは消えることはない。
太公望は少し唸ってから自分の支給品を確認する。やはり宝貝は入っていない。
なくても戦えない事はないが、大幅な戦力ダウンだ。
打神鞭、杏黄旗、太極図。一つでもあれば心強かったのだが現実はそう甘くない。
正直、真正面からじゃあの二人……特にアーロンに勝てる気はしない。
そもそも太公望は軍師タイプなのだ。策を考え罠を張る。それが彼の戦い方だ。
「そう悲観するのは早いぞ。付け入る隙がない訳ではない」
と、太公望は己の首を指した。そこにあるのはもちろん首輪の他ない。
普通『ミッション』では頭蓋内に爆弾を仕掛けられるらしいが、今回は違う。
頭蓋内だったら手の施しようもないが、首輪は外側についているのだ。外す方法もあるかもしれない。
それに首輪があるのだから、頭蓋内まで爆弾を仕掛けている可能性は低いだろう。二度手間になってしまう。
頭蓋内の方が外す方法もなく効果的だと思うのだが、主催者の思考までは分からない。
「首輪さえ外せば逃げられるんじゃないかのう?」
太公望の言葉に、皆の瞳に爛々とした輝きが蘇った。
+++
必要なのは、と太公望は指を二つ立てる。視線が己に集まるのを確かめてから太公望は話し始めた。
まず一つ。首輪を解除できる人間、方法を探すこと。
首輪によって殺された人間のことは未だ記憶に新しい。主催者に命を握られているという脅威。
何をするにしてもまず首輪が障害になる。脱出でも主催者打倒でも、首輪をどうにしかしなければ行動を起こす前に主催者によって殺されてしまう。
そしてもう一つ。これはついさっきその必要性を実感したばかりだ。
「強い仲間を集める、か」
理不尽な暴力に対する自衛手段。
殺し合いという馬鹿げたゲームだが、優勝景品のためかあるいは元の世界に帰るために手を汚す選択をする参加者もいるはずだ。
現にゲーム開始数分も経たずして、四人は殺し合いにのっている人間を二人も見ている。
太公望達を害するものは主催者だけではない。
それらに対抗するためには多くの仲間、多くの力が欠かせない。
まず二つ。生き残り、首輪を外すために必要なもの。
「強い人……」
「ツナさんが来ていれば心強いんですけど、」
支給されていた名簿は白紙。自分で作れということだろうか。
これでは知り合いが来ているかなんて知りようがない。
玄野は経験豊富ではあるが、それはスーツの力によるところも大きい。いつものように戦えるかといったらノーだ。
ハルは普通の女子高生である。太公望と土方はそこそこ戦えるが、戦闘に特化した相手には劣るだろう。
「土方さん?」
ふと、土方がその場から立ち上がる。
自分の荷物をまとめている様子に慌てて声をかけると強い奴に心当たりがある、とだけ土方は答えた。
最初に集められたとき、土方は確かに見覚えのあるヒヨコ頭が同じ空間にいるのを確認した。
そいつがガキの頃からの付き合いだ。見間違えるはずもない。
――沖田総悟。
真撰組一番隊長にして隊一番の問題児。だが18という若さながらその剣の腕は土方も遠く及ばない。
頭がカラッポな代わりにすべて剣術に才能が注がれたのだろう。
真撰組最強を誇る剣の使い手。十分『強い』人間に該当するだろう。
同じ場所で銀髪のテンパも見かけたような気がするが、こっちはうる覚えだ。
そいつも十分に『強い』。いけ好かない奴だが、戦力にはなると思う。
「やらなきゃいけねえ事は分かった。俺はそいつらを探す」
「一人でですか!?」
「……そうだ」
このまま四人で行動した方が安全なことは分かっている。だがそうだからといって悠長に行動するのは土方の性に合わない。
これは自分のわがままだというのも土方はよく理解している。
あの幽霊を見たとき、一瞬だけミツバではないかと土方は思ったのだ。
白い肌、白い着物。ほんの数日前に見たミツバの最期の姿とそれは酷似していた。
そして、葬式から数日も経たないうちにこんなゲームに巻き込まれている。
(……総悟)
ミツバの忘れ形見。
頻繁に土方の命と地位を狙ってきて憎たらしいのは間違いはないが、そんなのでも長年共にいれば情だって移る。
沖田は土方以上にミツバに依存していた。
おそらく心の整理も終わらないままここに放り込まれているのだろう。
ミツバのために、というのもあるが――一言で言うと心配なのだ。上司として腐れ縁として。
「ちょっと待て」
「止めても無駄だ」
「そうではない。……これをもって行け」
「……は?」
太公望から差し出されたのは打ち上げ花火。
説明書には空に大きな花を咲かせます!と書いてある。
「わしらの仲間の証じゃ。丁度十本もあるから五本程もっていくが良い。
位置を知らせるのにも使えて、仲間の証にもなる。なんと素晴らしいアイテムじゃ」
要するに花火を信頼の証にしたいという。これを広めていけば見ず知らずの人間と争うことも減るだろう。
悪い奴らに渡ったら厄介ではあるが、そんなことばかり考えていたら何もできない。
絶対に信頼できる、と確信したら渡すよう太公望は強く言い聞かせる。
ピンチのときに使えば、それを知る仲間が駆けつけてくるかもしれない。悪い奴らも来る可能性もあるわけだが。
随分と穴のある作戦だが、現段階では大した策はうてないのだ。
「達者でのう」
「……おう」
+++
急に静かになってしまった。
カツカツと音を立てながら土方は道を進む。背後に感じる違和感をどうしようかとずっと考えているが良いアイデアがなかなか浮かばない。
はぁ、と頭を搔きながら土方はゆっくりと背後を振り返った。
「お前、どうして付いてきたんだ」
「はひ……だって、土方さん一人じゃ心配で」
隠れてるようで丸見えの尾行を行っていたのはハルだ。
一時は土方を見送ったものの、不安になって思わず追いかけてしまっていた。
「早くあいつらの所へ戻れ」
「で、でも、やっぱり土方さん一人じゃ危険です!」
ハルは弱いかもしれない。運動神経は良いが戦ったことはない。戦力にはならないかもしれない。
でも、一人より二人の方が絶対良いと断言できる。
色んな方向に注意が向けられるし、誰かに襲われたときだって複数だと相手はやり辛さを感じるはずだ。
会話はお互いの主張を譲らないまま平行線だ。
「だから……、」
「じゃあ、交換条件です!この刀を土方さんに渡す代わりに、ハルを連れて行ってください!」
ぎらり、と鞘から抜かれた刀は怪しい光を醸し出す。
(……あ)
土方はその交換条件に、一瞬心が揺さぶられた。
かっこよく太公望達と別れたはいいものの、そういえば武器をひとつも持っていないことを失念していた。
幽霊とかパトカーとか様々な心労が重なったせいかもしれない。
――やべえ。このままじゃ襲われたら一発でジ・エンドだった。セーフ。まじセーフ。
刀は、喉から手が出るほど欲しい。
たらり、と土方の顔から汗が流れる。ごくりと唾を飲み込んだ。
刀を向ける少女はとても頼りない。
刀と引き換えに少女のお守り。格好つけた代償か、と土方はぼんやり考える。
「背に腹は変えられない、か」
「はひ?」
「いや、……仕方ねぇ。刀を寄越せ」
「!じゃあ……」
ぱあ、とハルの顔が爛々と輝く。それに多少のバツの悪さを感じながらも土方は頷いた。
【C-3 道路 / 一日目 黎明】
支援
【三浦ハル@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 新八の眼鏡@銀魂
【状態】:健康
【思考・行動】
1:土方さんに付いて行く。
2:みんなで元の世界に帰りたい。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
【土方十四郎@銀魂】
【装備】: 菊一文字則宗@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式 ビニール袋に入ったMr.5の鼻くそ×6@ONE PIECE、ポテトチップス@DEATH NOTE、ブルマのパンツ@DRAGON BALL 打ち上げ花火五本
【状態】:健康
【思考・行動】
1:沖田・銀時・他仲間(強い・首輪解除できる人間)を探す。信頼できそうな仲間に会えたら花火を渡す。
※参戦時期はミツバ編直後なようです。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
「行かせてよかったのか?」
「わしらと居ても危険なことには変わりないんじゃ。土方一人で行動させるのもちと不安だったしのう」
土方とハルが歩いていったほうを眺めながら、太公望と玄野はこれからについて話し合った。
追いかけていってしまったハルが心配だが、土方と一緒なら大丈夫だろうと玄野は思った。
そこで玄野はずっと気になっていたことを口にする。
強くもなく、首輪解除をできるわけでもないが大切な人を探したいと告げると太公望は快く頷いてくれた。
――小島多恵。あと他の仲間達。
来ているかは分からないが、ガンツからのミッションだとすればその確立は高い。
(多恵ちゃん……)
怯えてるかもしれない。早く会って抱きしめたかった。
【D-3 道路 / 一日目 黎明】
【玄野計@GANTZ】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0〜3)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:太公望と共に仲間を集める。多恵達を探す。
2:みんなでこのゲームから脱出する。
※参戦時期はゆびわ星人編前です。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
支援
【太公望@封神演義】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 打ち上げ花火五本 未確認(0〜2)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:仲間を集める。信頼できそうな相手には花火を渡す。多恵達を探す。
2:宝貝が欲しい。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
D-3道路に壊れたパトカー(修理すれば動く範囲?)が放置されています。
さるさんに引っかかったようなので代理投下させていただきました
今支給品まとめてたんだけど、ハズレが多くて本当にイライラしてきた
くだらない一発ネタみたいなののために余計に手間がかかると思うとな…
いや、別にハズレ自体はいいよ
いくつかはそういうのもあった方が面白いし
だけどなぁ、何の役にも立ちそうにもないものを、一つの話でいくつも支給するってのは何考えてんだよ
パンツだの眼鏡だのスナック菓子だの…
どうせ出すならもっと使えそうなもの出せよ
土方の支給品なんてホント悲惨なことになってんじゃねえか
投下お疲れ様です。
落ち着きながら、きちんと周りに指示を出す太公望。
同じく落ち着いているのに、一人での行動を好む土方。
色々なキャラがきっちり描かれていて良かったと思います。
このロワは支給品で悪魔の実やスタンドDISCとかの能力付加系アイテム出してもいいの?
ルール蘭にその辺書いてないけど
投下乙
みごとに分散したな。剣を手にした土方がどうなっていくのか楽しみだ
>>535 良いと思われ
只、ワンピのロギア系とか
スタンドもGERとかチート過ぎるのは自重した方が良いかも
乙。
順当に分かれたね
なぜだかしたらばに書き込めないのでこちらで言います。
作品破棄します。
弥子、承太郎投下します。
廊下を突き当たって右。至って単純な経路を辿って、桂木弥子はそこに居た。
───“グツグツ、トントン”
何かを煮込む音も包丁をまな板に打ちつける音もまだここには無い。
無音の室内で空白の時間を一人で過ごすということに何となく世界に取り残されたような疎外感を感じて、窓を開いて外界とこの空間を結んでいる。
窓枠に頬杖を突く弥子はまるで恋人でも待っているかのように、切なく、それでいて待ちわびしいという雰囲気を纏っていた。
────遅い。
考えてはいけない、そう思い直ぐに“彼ならきっと大丈夫”と無理矢理思考を切断しても一度生まれた不安は水を与えずとも簡単に育ってしまうわけで。
────見に行ってみようかな。
踵を返し、直ぐに“彼を信じなくちゃ”と必死に気持ちを切り替えてまた窓の向こうの景色を覗いてみても気付けば足のつま先は部屋の出口を見つめているわけで。
「……あの、人、は…目覚めたかな?」
気持ちを紛らわさなければ。その材料として頭の中に出てきたのがサンジに助けられた男、空条承太郎。
…これも一種の“利用”なのかもしれない。
微かな罪悪感と大きな不安を胸に抱き、弥子は食堂を飛び出して行った。
◇ ◇ ◇
時は僅かに遡る。
「ここは……?」
薄く瞼を開いては、見慣れぬ天井。
状況が把握できぬまま状態を起こすと身体の節々が軋みを起こした。
「確か……そうだ、俺は」
ぼやけた記憶の糸を紡いでいけば屈辱的なあのシーン。
───“すみまっせーーーーーんっっ!!”
「く……ッ」
そうだ、俺はあのハゲとの戦いの最中に何者かからの術を受け…!
何故か頭を下げて戦闘を放棄してしまったんだ!
無論、承太郎本人には敵に土下座をし許しを請うなどというつもりは一ミリも無かった。
地面に擦りつけていた額を持ち上げようとした、それでも無駄だった。
戦闘意欲すら湧かずスタンドを出現させることさえできないという状態だったのだ。
しかし、それなら予めスタンドを出しておけば問題は解決するのではなかろうか。
まさか戦闘になった途端意思を無視してスタープラチナが消えてしまうだなんてことは………いや、有り得る。
“奴”は遠距離から他者の身体を操作できるというかなり強力なスタンドを持っているのだから、そのくらいわけないのかもしれない。
それでもその現象には必ず条件というものがあるはずだ。
その条件さえクリアしなければ承太郎にだって賞賛はある。
まずは“奴”を見つけだし倒した後に、ワポルをこの手で裁こう。
「休憩は終わりだ。行くぞ、スタープラチナ」
支援
発現させたスタンドに呼び掛け、帽子を被った承太郎は先程の男が居た場所へと歩き出した。
…勿論、自分がヘタレてしまった根本的な原因も一緒に。
◇ ◇ ◇
「……あれ、どこ行ったんだろ、あの人」
皺が刻まれたシーツ、下の方で無造作に丸まった布団。
触れた寝台にはまだ先刻までそこに人が眠っていたという証の温度があった。
再び不安が動き出す。
────ネウロが居ない、サンジが居ない、承太郎が居ない、一人ぼっち。
一つ不の要素が現れれば、それがスイッチだったかのように次々と嫌な考えが頭を支配する。
────サンジさんは何でこんなに遅いの?さっきまで寝てた人が何でいきなり一人で出て行くの?まさかサンジさんと戦ってた人が追いついちゃったの?だとしたらサンジさんは?連れてかれちゃった人は?みんなどうなったの?私はどうすれば良いの?
答えが出るはずはないのにどんどんどんどん浮かんでくる。
いけない。駄目、今は泣いている場合ではない。言い聞かせる、言い聞かせる、言い聞かせる。
立ち止まっていては駄目。私が、動かなければ。
「…まだ、追いつけるよね!」
一人になりたくない。
その思いが強すぎて、近くに敵が居るかもしれないという危険を無視し弥子は走り出していた。
◇ ◇ ◇
支援
546 :
参加するカモさん:2008/07/20(日) 00:32:53 ID:cvdGcFBV
sien
走る、走る、走る。
足止めをしてくる空腹感を振り切って、走り続ける。
何に向かっているのかは、その先に何があるのかは、まだ弥子にはわからない。
「ハァッ……くッ…ハァ………居、た」
あれは確かにあの人の後ろ姿。
大きな体格の割にかなり弱気な───。
「来ないほうが、良いぜ」
後ろ姿のまま弥子に告げる承太郎の向こう側に転がっているのは、見覚えのある黒と、見覚えのない赤。
だが、その言葉と光景の意味を直ぐに理解するには、今の弥子には到底難しいことで。
「何、言ってるんですか…?サンジさん、ちゃんとそこに居るじゃないですか」
緊張した頬の筋肉を和らげようと口角を持ち上げてみるが、叶わない。
きっと頭では理解していたのだ───承太郎の言葉の真意を。
けれど心が理解したくなかったのだ───承太郎の足元に横たわる人物の理由を。
見たくない、でも信じたい。矛盾していることは重々承知。
複雑な心境のまま、弥子は佇んだ承太郎の横を通り抜けて、地に伏した人物の確認を行う。
「………」
血が“赤黒い”ということを、彼女は知っている。
数々の事件と向き合ってきたのだからそれは当然のことなのだ、けれども。
地にひれ伏したサンジから溢れ出ている“赤黒い”液体が血液であるということを認めたくなかった。
支援
「サンジさん、ごめんなさい。私来ちゃいました」
呼びかける。
「約束破っちゃってごめんなさい…」
呼びかける。
「何回でも謝りますから、何か…言ってください」
反応は?
「ねぇ、サンジさん…」
─────────────無い。
“どうして?”
─────────────何故なら彼はもう。
“……………”
私が無理を言ったから。でも、そうしなかったら今私の隣に立ってるこの人はどうなっちゃってた?
私が何もできなかったから。何もできない、そういえば私はいつもネウロに助けられてたんだっけ。
ねぇ、ネウロ。
─────私はあのとき、どうすれば良かったのかな。
弥子が向かっていたものは、そこにあったのは、絶望の黒一色だった。
【C-5 中央西・施設入口付近/一日目 黎明】
【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 未確認支給品1〜3(未確認)
【状態】:健康 疲労による大きな空腹 ショック
【思考・行動】
1:私のせい?
2:サンジさんが…。
3:死にたくない、でも誰かを殺すのなんて…
※サンジと互いの世界について幾ばくかの情報交換をしています。情報の深度は他の書き手にお任せします。
※参加時期については後続の書き手に任せます
ただし、XIを知っているので、3巻以降であることは確かです
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
【装備】:妖刀・村麻紗@銀魂
【所持品】:支給品一式
【状態】:投げ飛ばされた衝撃による軽度の打撲 奥歯が一本折れています
【思考・行動】
1: (本当は居ない、承太郎をヘタレにした)見えない敵を探し出して倒す
2:ワポルを倒す
※承太郎は吉良と同じ時間軸から呼び出されています。
※妖刀・村麻紗について
この妖刀は一度手にすれば離れません。
また持ち主の意思に関わりなく、『危険な場面』では行動・言動がヘタレオタク化します。
行動・言動がヘタレオタク化しても承太郎の精神は変化していません。
(通常時は呪いの影響はありません)
原作では土方の精神を乗っ取っていましたが、それは数日経った後のことであり、
このロワの開催期間中に承太郎の精神が乗っ取られることはありません。
※承太郎は現在、村麻紗の影響によって闘争本能を表に出せないため、
闘争本能で操作するスタンドを出すことができません。
投下終了。
途中二回ほどタイトルが約束となっていますがスルーお願いします。
それから、サンジの遺体の場所は地図のみで判断したのですがよろしかったでしょうか。
支援有難うございました。
乙です
承りは見えない敵と戦い続ける・・・悲惨www
投下乙です!
弥子は鬱状態かぁ…ここから立ち直れるか、それとも闇に堕ちるか…
承太郎がなんとかしてくれるといいんだけど、弥子に気弱へたれと思われてるから
説得力がなぁ・・・
ともあれ、良い繋ぎの話GJ!
感想有難うございます…ですが、申し訳ない!修正前の文を投下してしまったorz
>>542-543にかけてのジョジョパート
時は僅かに遡る。
「ここは……?」
薄く瞼を開いては、見慣れぬ天井。
状況が把握できぬまま状態を起こすと身体の節々が軋みを起こした。
「確か……そうだ、俺は」
ぼやけた記憶の糸を紡いでいけば屈辱的なあのシーン。
───“すみまっせーーーーーんっっ!!”
「く……ッ」
そうだ、俺はあのハゲとの戦いの最中に何者かからの術を受け…!
何故か頭を下げて戦闘を放棄してしまったんだ!
無論、承太郎本人には敵に土下座をし許しを請うなどというつもりは一ミリも無かった。
地面に擦りつけていた額を持ち上げようとした、それでも無駄だった。
戦闘意欲すら湧かずスタンドを出現させることさえできないという状態だったのだ。
しかし、それなら予めスタンドを出しておけば問題は解決するのではなかろうか。
まさか戦闘になった途端意思を無視してスタープラチナが消えてしまうだなんてことは………いや、有り得る。
“奴”は遠距離から他者の身体を操作できるというかなり強力なスタンドを持っているのだから、そのくらいわけないのかもしれない。
それでもその現象には必ず条件というものがあるはずだ。
その条件さえクリアしなければ承太郎にだって賞賛はある。
まずは“奴”を倒し、ワポルを裁こう。
「休憩は終わりだ。行くぞ、スタープラチナ」
「……どういうことだ?」
スタンドが、発現しない。
「まさかまだ敵に見られている…!?」
黒い背景の中央に、閃光が駆け抜ける!
ならば早く見つけ出さなければ。──という考えとは裏腹に、敵に思考を読まれないよう承太郎は悠長に歩き出した。
…勿論、自分がヘタレてしまった根本的な原因も一緒に。
本当にごめんなさい、今後はもうちょっと落ち着いて投下します。
では失礼しました。
投下GJ
あああ…弥子……頑張れそして承太郎は文字通りの見えない敵と戦いすぎw面白かった
投下乙です
承太郎の迷走っぷりが泣けるw
異変の原因はその手に持ってる刀だって早く気付けw
そして弥子…
早くもサンジの死を知ってしまったか
今の承太郎だと支えになれるかどうか微妙だな…
投下乙です。
承太郎は自分の手から離れない刀に疑問を持たないのかww
あとこれは指摘、修正要求となってしまいますが、
星海坊主は飛行帽を被っていると前話で描写されています。
なので承太郎が星海坊主のことをハゲと認識しているのはおかしいと思います。
また一応この時点では帽子脱いでもバーコードですけどねww
>>559 あー…本当だ。すみません。
ミスばっかりだorz
では、
「そうだ、俺はあのハゲとの戦いの最中に何者かからの術を受け…!」
の部分を、
「そうだ、俺はあのじじいとの戦いの最中に何者かからの術を受け…!」
に訂正します。
残ってる奴で一番強いのって誰だろ?
疱疹演技キャラになるのかな
男塾
563 :
参加するカモさん:2008/07/21(月) 12:13:22 ID:JgF0K6SI
マジレスするとハオかダッキか塾長
塾長は強いってのもあるけど、負けるところが想像できないんだよな
逆に言うと殺すのが大変なキャラになりそうだと思う
そうそうに手堅く殺るしかないな
ララも強いと思う
まぁマジレスするとララか亀仙人だろうな
タフしらんけど亀たおせた鬼龍ってすごいと思う
568 :
参加するカモさん:2008/07/21(月) 12:32:59 ID:ZjDFo6KV
亀は死んでる
でもって亀を倒した鬼龍はスゴイ
もし亀がマッスル化してたら鬼龍に勝ち目はなかったがな
鬼龍は強いけどやっぱり亀の方が強いもん
そこら辺は書き手の上手さだろうな。仮に亀の方が強いって読み手に言われても、
原作でも一線を退いた亀に、全盛期の力はないんです
とでも言っておけば鬼龍の勝ちに出来る。
ぶっちゃけ、亀vsクリリンの時のスピード出されたら誰も勝てないよ。
ララはステルスに弱そう
基本こいつは誰かを疑ったりしないし
出る前は、「塾長は強すぎだろwww」と思ってたけど、登場話読んだらそうでもないなって思えてきた
連戦とは言え、大ダメージ負ったわけだし
不意打ちとか騙し打ちとかなら普通に負傷する程度のレベルに設定したのは良かったと思うんだ
それでも塾長って死ななそうなんだよな
なんつったってあの男塾の超絶最強キャラだし
あんまり死にそうにない死にそうにないと言ってるとやり辛くならん?
逆だろ
死ぬ死ぬって言われてたら死なせたくなくなり、死なない死なないって言われてたら早く死なせたくなる
これ書き手の心理
そうか、ハードルが上がると思うんだけどなぁ
そう言ってる方がハードルあがるな
スルーしてればなんて事無い雑談なのに、いちいち取り上げられたら注目度も増して書きにくくなる
察して欲しいところだ
ふ〜ん、なるほどそういうものなのね
書き手未経験の身からしてみれば面倒な話だな、
余計なことは言わない方が良さそうだ
支給品紹介書いてるんだけど、スペルカードの再来の効果って、指定したエリアに飛ぶってことでいいのかな?
原作通りだと指定した「街」になってるけど、この会場には街二つしかないし
予約来たな
SZの方は剣心と葉、ブルックの絡みが気になる
DOの方は何気にマーダー揃いでどうなることやら
聞仲ってマーダーか?
マーダーでしょ
殷に帰るのが目的だからそうだろ
どんな手を使ってもいいわけだからステルスも可能だよな
支給品の紹介とかしてみようかと思ったんだけど、どこでしたらいいかな?
ここに書いていい?
前から気になってたんだけど、採用されたOPや他のOP候補って誰が書いたの?
今活躍してる書き手さん達なのかな?
>>586 既出支給品の紹介ならwikiですれば良いんじゃない?
オススメとかならいらんよ。
変に説明されて使いにくくなったり、思わぬ支給品で
どんでん返しや話にインパクトを出すことを狙った人が断念したら最悪。
それは悪い面だけ見たらでしょ?
紹介することで、忘れてたのを思い出すとかって効果もあるんじゃないかと思ったんだよ
まあするなっていうなら無理にしようとは思わないけど
う〜ん、あるっちゃあるだろうけれども、
本当に有益なものなら他の人も思いつくだろうし、
忘れられていたものなら、その程度のものってことでない?
でもまぁ、これはあくまでも俺個人の考えだからね。
実行するかどうかの判断は他の人の意見を待ってからでも良いんでないかな。
>>589 支給品の紹介なんて要らないな
出して欲しいと思うなら自分で書いて出せばいい
それが一番
>>587 何人かはそれっぽい人がいるが実際にどうなのかはワカンネ
>>587 過去ログとか漁って鳥を探してくれば分かるんでない?
鳥つけてない人ばかりなんだよ
詮索しない方がいいのかな?
個人的にとても気になるんだけどなあ
LoとSzは書いてると思う
採用されたのがLoで相沢がSzだと見てるが、どうかは知らん
>>593 う〜ん、鳥を付けてないなら詮索しない方が良いんじゃない?
まぁ「○○の作品だから」ってんで選ばれるを避けるためだったのかも知れないけどさ。
>>594 それっぽいかも
サンキュ
>>595 勿体無いな
没になったにしてもwikiに残せたりしたら良かったのに
ちなみにOP全部あるけど、こういうのって載せていいのかね?
599 :
参加するカモさん:2008/07/22(火) 22:18:41 ID:JSLem7ve
別にいらんだろう
作者さんにok貰えたら載せたいな
いいんじゃないの?このスレに投下されたもんだから自由にのせて
誰が書いたかはなんとなく分かる
没OPまでいちいち載せる意味がわからん。
603 :
参加するカモさん:2008/07/22(火) 23:11:47 ID:nkIhBu5j
それにしても星海坊主は飛ばされ役だな
>>602 面白い話が読めるってのは良いことじゃない。
>>603 帽子を死守出来ているのはさすがだよな。
また予約入ったみたいだ
これで2週目まだのキャラは海馬、吉良、ナルト、雷電、塾長、玉藻、星海坊主、左之助、ヒソカだけか
前3人はそろそろヤバいかもしれんね
>>430 ごめんなさいごめんなさい
ここのところ少しロワから離れていたもので見逃してました。
収録なさってくれたようでありがとうございます。
本当にごめんなさい。
今回も唐突ですいませんが、投下します。
「前進!! 直進!! 大躍進!! フハハハハハハ!!」
……爆音と共に砂煙が次々と宙へ立ち上っていく。
凄まじい勢いで高笑いを上げながら、砂漠から森へと向かう一人の男の姿があった。
男の名は海馬瀬人。
といっても現在、彼の姿はスーツの周波数を変えることで、誰の目にも映らなくなっている。
海馬はほんの僅かな試行錯誤を繰り返すだけでスーツの機能を理解してしまっていた。
人の姿も見えないことを良いことに海馬はスーツの簡単なテストを兼ねて、ひた走る。
走る。走る。走る。
結果は彼を大いに満足させるものだった。これだけ激しく砂漠の中を走り回っても疲労はわずかである。
森の入り口へと到着すると、急停止。
「ふぅん……」
呼吸を整えながら浮き出た汗をハンカチで簡単に拭うと、海馬は拳を手近にあった、自分の背丈よりも倍以上はある木に叩き込む。
……雷の直撃を受けたように木は真っ二つにへし折れた。
吹き飛ぶようにして倒れ込んだ木を、目で追うこともせず、海馬は嘲るような笑みを浮かべながら、森を進む。
……暫くすると、同じように適当な木を倒し、歩く、という動作を繰り返し続ける。
自然を大切にしないにも程があるが、考えもなしにやっていることではない。これは目印代わりなのである。
多少の誤差はあるものの、ここから真っ直ぐ西に進めば、あの集落へと辿り着くことが出来るのだ。
そこへ向かうなら海の近くにあるのだから、下から北上すればいいだろうと考える者もいるかもしれない。
だが、万一にもB−1が禁止エリアに指定された場合、死体の元に向かうには森を通るか、大きく回り込んで進む必要が出来てくる。
森は慎重に進まないと禁止エリアに入ってしまう恐れがある。回り込めば時間のロスが惜しい。
そこで敢えて海馬は森を進むことで、自分の歩むべき孤高のロードを作り出していく事にした。
スーツの力をもってすれば、大した労力でもない。
勿論、A−1を禁止エリアにされたら涙目なわけだが、その場合は素直に諦めればいいだけのこと。
いくらでも死体はこの先、手に入るだろう。あの死体の首輪に拘る必要は特にない。
砂漠と島の端にある地理的な面で、人が訪れる可能性も少なく安心して作業が出来るという利点があるのは、正直惜しいとも思う。
ただ、それだけのこと。どうとでもなる問題だ。
……南の村へ向かうことも当然、考慮しなかったわけではない。
駅があるので、それを利用しようとする人間はまず村へ向かうことを考えるだろう。
中心部と同じく、人が集結するエリアと考えていい。他の参加者達と遭遇するには絶好の場所。
で、あればこそ、海馬はそちらに向かうことを良しとしなかった。
何故なら、参加者をこの島に配置したのはワポル。
ランダムな要素も多少は加えているかもしれないが、誰がどのように行動するかはある程度、予測の範囲内にあるとみて間違いない。
……A−1なら通常の考えでいけば、南の村に行くとみていい。
だからこそ、敢えてそちらには向かわないことを選ぶべきなのだ。
敵の呼吸を乱してやることは、全てのゲームに通じる必勝法である。
ついでに言えば家々を探し回った結果、結局一つも刃物は見付からなかった。つまり誰かの支給品を頼りにするしかない。
別に交換してやっても構わないのだが、自分の持つ手札を露呈しなければならないのは弱みを見せることと同義、屈辱に等しい。
それより誰かから奪った方が都合がいい事には間違いない。しかし集団となっていれば、それも難しいと言わざるを得ない。
周りに人がいなければ高圧的な手にも出られるし、情報を集める上でもその方が手っ取り早い。……拷問することだって出来るのだ。
……こちらに向かうことを選んでも、別に損をすることはない。
「ワハハハハハ!! ワポル、次のオレの行動を読めるものなら、読んでみるがいい!!
既にオレには貴様の喉元に突き刺さる剣、フィナーレのビジョンがはっきりと浮かんでいるぞ!! クク……、ハハハハハハ!!」
……というわけで海馬はひたすら自然保護団体をも恐れず森林破壊を続けながら、森の中を力任せに直進していく。
多少、目立つが他の参加者と遭遇することを考えれば、都合がいいとさえ言える。
最初に力を見せつけておけば交渉の上でも優位に立てることは言うまでもない。
襲い掛かってくれば返り討ちにするまでの話である。
……海馬瀬人は迷い無く揺るぎなく歩み続けた。
と、そこにどうやら早速、カモが飛び込んできたようだ。
「……おーい。誰か、そこにいんのかってばよ!!」
額当てをした金髪の少年が前にいた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
夜神月と加藤勝は森の中を南へと向かう。
延々と続く森の中を抜けるにも時間が掛かるだろうし、森を抜けたところで小屋や遺跡があるだけだ。
……人が集まる場所とは到底思えない。
森に向かったのは視界に入っていたからで、砂漠の中を延々と進むよりはいいだろうと考えただけのこと。
一刻も早く人集めをしなければならない。
夜神月は黙々と一心不乱に歩き続ける。
夜の森の中を懐中電灯からの明かりだけで進むのだ。余計なことを考えていては、とてもまともに歩行出来るはずもない。
……と一見、そう見えても無理もない表情をしている。が、実際には彼の思考の大半は歩くことには割り振られてはいなかった。
それでも躓く様子さえ、見せない。実に驚くべきことだ。
(……ついでに駅を調べてもいいか)
月の考えた駅とは中心部に行く途中にある、C−2の駅のことだ。
橋の近くにある以上、島の西側に向かおうとした者でB−2の橋を通った者の大半はこの駅の存在に気付くだろう。
逆に言えば待ち伏せに遭いやすい場所とも言える。だが、D−3はタワーがあり、F−2にも同じように駅がある。
どれを選んだところでリスクはある以上、調べられるものは調べておかないと後々に響いてきてしまう。
……最初、列車か何かが運行していることには期待していなかった。捨て置いた方がいいだろうと思っていたぐらいのものなのだが。
どうやら加藤から話を聞くところによると、こちらの姿が見えなくなっている以外は通常通りの街中でゲームを行っていたらしい。
星人。人には何故か見えることのない存在。ゲームの参加者も同じことになっているのは、どちらもガンツの仕業なのだろう。
実在するとは思ってもいなかったが、死神よりは現実感があるともいえる。
……どことなく死神と共通点があるような気がしないでもない。
その星人を狩ることが、今までのゲームの目的だった。今回のこれも同じ目的で開催されていると考えるべきなのだろうか。
真四角という明らかに人の手が入った痕跡が濃厚な島。見境のない建造物がどこからか集められたように適当に配置されている。
こんな島にまともな住人が住んでいるとも思えないのだが、もしも、人がいれば何らかの情報が得られるかもしれない。
……ひょっとするとワポルそっくりの人間が白蟻よろしく、街中を食べ歩いているかもしれない。なかなかぞっとする光景だ。
まあ、まともな人間が住んでいることを期待しよう。しかし、その場合、病院に行って人で溢れかえっていたりする場合がある。
そうなれば参加者の見分けがつかないのではないだろうか……。
と、加藤は心配していたが首輪がある以上、その心配もない。この首輪は参加者を識別するために着けられたものということか。
加藤にそれを話すと、ああっ! と納得したような顔をする。少しはポーカーフェイスでも覚えたらどうかと、月は思う。
今までのゲームは10人程の規模で同じ位置に転送されていた。
つまり誰が参加者かを見分けるまでもなく、星人が殺害対象である以上、お互いを参加者と認識させる必要もあまりなかった。
脳に仕込まれた爆弾。……連中はそんな技術まで持っている。
しかし、その高度な技術力の分、爆弾に気付くことが出来ずに死ぬ者も多かった。加藤も何人か頭が破裂して死んだ人間を見ている。
そこで分かりやすい方法に変えたということなのだろうか。
……だが、そんな技術があるなら、わざわざ加藤のような以前からの参加者からも埋め込まれていた爆弾を取り除いてやる必要はない。
――もうひとつ爆弾が仕掛けられている。
ワポルはあの部屋で首輪を爆破する際に実験だと言った。つまり、この首輪は試験的に導入されたものだ。
余程の慢心か、何か理由でもない限りは今まで使っていた脳の爆弾を敢えて使わないことは考えづらい。
絶望的な情報のようにも思えるが、だがそれ故に利用出来る。心の弱い人間に、このことを告げてやれば……。
それより、問題は連中は情報の隠蔽もそれで行っていたということ。
一般人にガンツの情報が漏れた場合、脳の中の爆弾が破裂することになるという。
しかし、それだけでは情報を完全に隠すことは出来ないだろうし、無理な口封じは信憑性を増すだけではないか?
ともあれ、加藤たちは、このためにガンツについても調べることが出来なかったのだろう。普通なら調べようとするに決まっている。
以前までのゲームでは、ゲーム終了後は部屋に戻された。致命傷を負っても、生きてさえいれば五体満足な状態で再生されるという。
その後は、ガンツの採点が終わると、普通に部屋から出て行くことが出来る。あとはそのまま、自分の足で帰宅することになる。
その物件を所有する人間や出入りする人間がいないか、気になる点はいくらでもあったに違いない……。実に惜しいことだ。
人に知られることを望んでいなかったということは、もしかすると対抗する勢力のようなものがあったのかもしれない。
黒幕の力を奪った後のことを考えると、留意しておく必要がある。
死者。ゲームの参加者。選出される基準ははっきりしない。全ての死者が選ばれるわけではない。人以外にも犬がいたらしい。
加藤は玄野という幼馴染みと共に地下鉄に撥ねられたことで死亡し、ゲームに参加することになった。
星人を殺すか転送することで、ポイントを稼ぎ、100点になれば解放されるという。解放がどのようなことを意味しているかは不明。
……Lの存在がある以上、死者が生き返るということは有り得るとしてもいいだろう。
だが、月自身は死亡した覚えはない。死者の参加するゲームなどに参加させられるはずもない。
そもそも死神のリュークから聞いた話では、死んだ人間は全て悪人も善人も区別なく「無」になる。
つまり、このゲームは死後の世界にある何かのようなものではなく、あくまで現実に根を下ろしたものだということだ。
……仮に何らかの技術をもってして、死者を甦らせてゲームに参加させようとしたとしよう。
だが、そもそも死人を甦らせる理由自体が乏しいのはどうだ。
普通に考えれば、自分のように攫ってきた方が問題は少ない。人を甦らせるなら余分な作業が必要となるのだ。
実際に加藤達のケースでは撥ねられた死体が忽然と消えたことが、ニュースとなってしまっていたらしい。
……そんな話を聞いた覚えはないが、多分、Lに拘束させていた頃に起こった出来事なのだろう。
東京近辺だけに限ってもかなりの範囲。そこでいつ、誰が、どこで、どんな状況で死ぬか。
その全てを把握し、可能な限り人目につかないように回収する。
転送という技術をもってすれば不可能ではないにしろ、神懸かり的な監視能力が必要となるだろう。
そんなことが本当に可能なのだろうか?
……実のところ方法がないこともない。
死神の眼。
人間の残された寿命を見ることが出来る、死神の眼をもってすれば予め死ぬ人間の見当がつくはずだ。
後はその人間を追い掛けるだけで、死体が簡単に手に入る。
いや、死神の眼があるなら、デスノートを持っているわけだから、それを使えばこれから死ぬ人間を見極める必要もない。
デスノートでないにしろ、死亡状況を何らかの形で操れるとすれば、騒ぎを起こすのが目的でもない限り、地下鉄事故にはしないはず。
……デスノートがあって、死体を見付からないように回収するなら事故死なんて書き込むはずもない。
玄野計 事故死
加藤勝 事故死
よりにもよって事故死した死体を回収してまでガンツは何をしたいというのだろうか。
もう一つ考えると、Lの存在がある。
決して人目につかないように行動していて、その上、死因となったのは死神レムにデスノートで名前を書かれたからだ。
つまり、たとえ死神の眼をもっていたとしても、このキラ以外にLの死を予測出来た者などいないはずなのである。
……まあ、別に死亡した直後に転送する必要がないのだとすれば、病院に運ばれた死体、埋葬される死体を集めていたとしてもいい。
……その場合、衆人環視の中で死体を回収する必要はどこにもない。
加藤たちの事例が特別なのか、Lの事例が特別なのか。
……正直、実際には死者を甦らせる話も、とある理由があれば特別おかしいことでもない。
クローンを例に挙げて見れば分かることだが、歴史上の優れた人物を再生しようと試みるというのは、よくある話だ。
世界一の頭脳を持つ名探偵L、迷惑な話だが技術で可能でありさえすれば誰かが甦らせようと考えても、不思議ではない。
生き返させる必要があるとも思えない加藤や犬をわざわざ甦らせて、ゲームの参加者としていた点が疑問だっただけ。
普通の人間より遙かに優れた者なら、甦らせようと考えた者がいたとしても理解はできる。
それで目的は殺し合いというわけか?
新世界の神とも思しき存在であるキラをも含めて、よりにもよって殺し合いをさせようというわけか?
それで黒幕はいったい何を得る? 一時の娯楽か?
……そうなのかもしれない。
……死神リュークが人間界にデスノートを落とした理由は、単なる退屈しのぎ。
これだけ超常的な力をもった存在、生命さえも自由に操れる存在であれば、どんな理由があったとしてもおかしくはないだろう。
……だからこそ、その力を得る機会があるとも考えられる。永遠の命、……それさえも夢ではないかもしれない。
(もしも、そんなに退屈だったというのなら、……これから楽しいものを見せてやろう。
……末期の思い出として墓の下まで持っていくといい)
……結局、ここまでは全て加藤から得た情報のみからの推察だ。
もっと他の情報を集めれば、新たな解釈が生まれるところもあるに違いない。……個人的には気にくわない部分もある。
今のところガンツの正体も分からないでいるし、ワポルの情報さえも得られなかったのは予想外のことだ。
加藤の説明を聞けばワポルの存在は、不要の一言で済ませられる。
ガンツさえあれば、今まで通り十分なのだ。
……やはり首輪を調べる必要がある。
勿論、首輪を解除したところで脱出できるなんて思ってもいない。部屋に招かれた時と同じようにされれば、すぐに元の木阿弥。
何の意味もない行為だ。だが、反抗するグループを作るには首輪の解除はそれなりに意味をもつ。
期待はしていないが、もし自分の首輪を解除することが出来た場合、部屋に戻される可能性もある。……黒幕に呼び掛ける絶好の機会だ。
脳の中に埋め込まれたという爆弾。
そちらも調べておく必要があるだろう。実在していれば加藤の話の裏付けとなってくれる。
……もし、なかったとしても十分にそれは利用できる。加藤自身がそのことを心の底では恐怖している様子があるからだ。
恐らく、加藤はそんなことに手を染めるのは拒みたいだろう。だが、その方が好都合。真実を知る者は一人の方がいいのだ。
どちらにしても「なかった」と加藤には告げるつもりでいる以上、確認したという事実さえ共有してくれれば、それで十分効果的だ。
……嘘というものは一人よりも二人の方が真実みを増すもの。
しかし、確実に黒幕と交渉する方法がなかなか思い浮かばない。
以前のゲームにあった星人を殺害するための銃、通称X銃。とは、別に加藤が主に使っていたという捕獲用の銃があるらしい。
通称Y銃。それで星人を捕獲すれば、宙に向かって星人を送ることが出来たという。
……ひょっとすると、それを使えば黒幕と接触することも可能なのではないだろうか、と一度は考えてみたのだが。
殺し合いという舞台にはそぐわない武器である以上、あるとも思えないし、絶対に危険がないという確証があるわけでもない。
実際にあったとしても余程のことがない限り、試すことは出来ないとみていい。……やはり他の方法を探すより他にないだろう。
もしかして既に引っかかった?
したらばにいけないんだっけ?
規制解けるまで待つしかないかも。
まだ解けないのかな。
五分間何もしなければ解けるはずなんだが…がんばれ。
究極のじらしプレイw
……それにしても、デスノート以上の力を持つかもしれない黒幕。そんなものが本当に存在するのだろうか。
今更ながら少し冷静になるとそんなことを考えてしまう。常識的な考えでいけば、Lは別人だと判断する方が当然なのだ。
Lの意思を継ぐものがLの仮面を被り、キラを追い詰めようとしている。そんな風に考えたって別におかしくはない。
加藤に語ったように、薬で眠らされて連れてこられ、全てがキラを捕まえるための壮大な芝居であったとしても不思議はないのだ。
……それでも結局のところ、信じてしまったのは、どこかでそれを望んでいたからかもしれない。心の底から真実であって欲しいと。
……死後の世界がないのなら、この世に全てがあればいい。
……善人は永遠の幸福を得ることになるだろう。悪人は永遠の苦痛を得ることになるだろう。
天国と地獄。二つの世界に君臨する神の姿。
先を進む加藤の頭をぼんやり眺めながら、月は来たるべき新世界の姿に思いを馳せていた。
と、そこに水をさすような声が聞こえる。
加藤ではない。加藤が、警戒するように言ってきたが、それ以外に聞こえてくる別の声がある。
「……おーい。誰か、そこにいんのかってばよ!!」
額当てをした金髪の少年が前にいた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
平穏というものの価値を、どうして人は真の意味で理解することが出来ないのだろうか。
それは特別に難しいことをせずとも誰もがお互いをほんの少しだけ、思いやれば簡単に得ることが出来るはずのものである。
それに人々が気付きさえすれば世界は何と穏やかなものになることだろう。
……それに比べれば正義も悪も世界を変えるには何の力も持たない。
真に人が求めるべきものは安心。それがわからないものはどれだけ優れた能力の持ち主であろうと愚か者に過ぎない。
吉良吉影は懐中電灯を見た程度ですげえ! といちいち騒ぎ立てる馬鹿面を忘れたくなって、あるべき世界の姿に思いを馳せていた。
これと比べてみれば川尻早人はよく出来た息子だ。
唐突に出来た息子だったため接し方が、なかなか掴めずにいて……つい、殺してしまったが、おかげで新たな力を得ることも出来た。
家族というものの力は本当に偉大かもしれない。例えそれが仮初めであったとしてもだ。
家族は生活を維持する上での基本であり、人に心から安心を与えてくれる存在。……本来はそうでなければならないのだ。
そう考えていると一刻も早くあの家族の元に帰りたいと思えてくる。
こんな異常な状況に巻き込まれること自体、何かの間違いなのだ。間違いは早く正さなければ、一つのミスが次々と誤算を生む。
吉良は苛立ちが段々と高まってきていることを内心、自覚していた。が、それをあっさり抑えられるなら連続殺人などは起こさない。
……何か気休めとなって安心を与えてくれるものでもあれば、そう、美しい女性の手があれば……。
と期待するのだが、実際にはそう上手くいくはずもない。
「……川尻のおっちゃん。やっぱどうかしてんじゃねえ?」
件の馬鹿面が、顔を覗かせるだけだった。
猫のようなヒゲっぽいものが目に止まる。洒落ているつもりなのか、理解に苦しむ。猫草も変な生き物だったが、こいつもおかしい。
どうせならグルグルと頬に渦巻きでも書いていればいいじゃないか。それなら子供染みた変な偽名とも合うに違いない。
……どうにも感情の捌け口を見付けられず、吉良は木にもたれかかるようにして身体を楽にして呼吸を整えようとする。
人の感情の機微を察することに長けているように見えないナルトに気付かれるぐらい、不安な気持ちが端々に表れているようだった。
しかし、それも無理はないのだ。こんな状況に追い込まれて冷静さを保っている人間など、脳に欠陥でも抱えてない限りは有り得ない。
例外があるとすれば物を知らない子供ぐらいなものだろう。ナルトはスタンド能力に目覚めて、浮かれているだけのただの子供。
……少し現実を教えてやった方がいいのだろうか。そうすれば騒ぎ立てることも少なくなるに違いない。
「……いや、残してきた家族のことが少し心配でね。しっかりしているから、私がいなくとも大丈夫だとは思うのだが」
「そんな下んねーこと言うなってばよ!
オレが必ず帰してやるって約束したんだから、それを信じろ!
オレはスゲーんだから、やることはやる! やってやる!!
だから何にも心配することなんてねえから、安心してろよ!!」
「…………ああ、ありがとう。ナルト君の方もご家族の方がきっと心配しているだろう。決して無理はしてはいけないよ」
「……あ、うん。いいってことよ!」
……大体、本当にどうか出来るのであれば部屋に集められた時点で、何かしておいて欲しいところだ。
それが無理だったから、こういう状況に陥ってしまっているというのに、これだから頭の悪いガキは困る。
……くらいのことは言いたいところだったが、勿論、そんな本心を明かすわけにもいかない。プッツンといきなりキレ出しては困る。
本当の狙いは、ほんの少しだけでも家族のことに思考を向けさせてホームシックにでも、なってくれればいいと思っただけだ。
まあ、泣き喚いてこられては困るので、それとなくではあったが、一応の効果はあったとみていいだろうか。
ほんの一瞬だけ暗い顔をしていたのが見えた。家族のことを考えたからだろうか。……いや、それとも家族がいないからなのか。
後者だ、吉良はそう判断する。
それもそうだ。普通、まともな家庭で育っていれば、こんな年にもなって忍者遊びに本気で興じているはずもない。
……手に入れてしまったスタンド能力が、その一人だけの妄想に、拍車をかけてしまったのだろうか。
触れたものを爆弾化させるキラークイーンのスタンド能力に目覚め、殺人を犯し続ける自分と、どこかで……似ているのかもしれない。
吉良はそう思った。
「だからさ。だからさ。そこでオレはね。
言ってやったんだってばよ。何て言ったかわかる? へへ……」
……やっぱりあの程度のことで黙るような繊細なところを期待するだけ無駄だったようだ。
まさかどれだけ自分が凄いのか武勇伝を聞かされる羽目になるとは思ってもいなかった。
カカシ先生やら、エロ仙人やら、心の中で勝手に作り出した師匠の存在やら仲間の話が次々と出てくるのには本気で閉口したくなる。
支援
(駄目だこいつ……早く何とかしないと)
この年で、ここまで異常な精神を持つようになるとはいったい周囲の大人は何をしていたのだろう。
殺し合いだけでなく社会の歪みという残酷なものを突き付けられることになるとは思ってもみなかった。
……勿論、最終的には殺す必要があるのだが、こんなアホのままで殺していいものか、どうにも腑に落ちない感情に襲われる。
広瀬康一が靴下を裏返しに穿いていた程度でも、ストレスを感じたというのに、こいつはそれ以上だ。
せめて、少しだけでも真っ当な人間に戻してやらなければこのまま捨て置いたら一生後悔しそうな気がする。
(何だ? この吉良吉影、ひょっとして今、この小僧のことを心配しているのか?
いや違う! この小僧が死んだら、あの「チャクラ」とかいったスタンドを利用できなくなる心配があるだけ……。
ただそれだけ……)
実際に便利なのである。はっきり言って生き残る上では途方もなく強いスタンドといえるだろう。正直、甘く見ていた。
吉良吉影は、ナルトにいくつもの影分身を作り、偵察に回って来てもらうことにする。
森を抜けるためにも手分けした方が早い。森の外に広がる砂漠や、小屋の位置、流れる川から現在地がB−2であることを把握した。
スタンドは一人一体のはずだが、ナルトのスタンドは恐らく砂粒とか霧のような微小な粒子か何かの集まりで出来ているのだろうか。
以前に爆破したスタンド能力者も複数のスタンドを出していたが、タネは大体同じと思っていいはず。
自分の持つスタンド、キラークイーンのシアーハートアタックとて一見別のスタンドのようにも見えるが技のひとつに過ぎない。
それにしても特筆すべきなのは、遠隔自動操縦でありながら本体と同じような意思を持ち、得た情報を本体に送ることが出来る点。
情報を送るには一度、スタンドを解除しなければならないし、得た疲労は本体にも伝わる、だがそんなものは欠点とすらいえない。
攻撃を受けても煙となって消えるだけ、それによっても本体に情報を送ることが出来る。本体にダメージは伝わらない。会話も出来る。
破壊出来ないほどに頑丈ではあるが、熱でしか対象を識別することが出来ないシアーハートアタックと比べると格段に優れている。
こんなスタンドに遠距離から次々と攻められたら、どうしろと言うのか。
情報を本体に送ることで、相手のスタンド能力を知ることも出来る。
スタンド能力を知れば相手に対抗する手段はいくらでも出てくる。更には変化の術を併用すれば、どんな姿になることも出来る。分身では本体がダメージを受ける心配もない。
「チャクラ」で本体を強化することも出来るために、近距離戦闘も可能。これといった穴が見付からない。
……ひょっとして最強なんじゃないか、このスタンド。本体がアホでなければという限定はつくものの。
(大した奴だ……)
以前に似たスタンド使いを倒した上、無敵のスタンド、パイツァ・ダストを手に入れた吉良とて、戦慄することを隠せないスタンドだ。
それ以外の点でもどうやら様々な応用が利くところを見ると、正直、本当にスタンド能力なのか疑いたくなるぐらいだった。
スタンド名――チャクラ
本体――うずまきナルト
破壊力:B スピード:B 射程距離:B
持続力:D 精密動作性:A 成長性:?
能力――身に纏うことで本体の身体能力を向上させるスタンド。
スタンドを操作することで、己の分身を作り出したり、姿形を他のものに変化して見せることも可能。
分身は本体と同じ意思を持ち、個別に行動することが出来る。分身が消えれば、本体にその分身の得た経験が伝わる。
スタンドがダメージを受けても煙となって消えるだけで、本体にはそのダメージが伝わることはない。
……さて、色々脇に逸れたような気がするが、現在地はわかった。
ここからどう行動するかだが、はっきり言って吉良は人の集まる所に行くつもりは殆どなかった。
何故、わざわざ危険を冒してまでそんなことをしなければならないのか。危険を避けるために集団に入るのにそれでは本末転倒である。
確かに集団に属するには最初に潜り込まないといけない。これから先、恐らく殺し合いが始まっていくことだろう。
既に何人か死んでいるかもしれない。それが知れた時、グループの中で、後から入ってきた人間を疑う気持ちが生まれないはずもない。
『こんな奴ら信用出来るか! オレは一人で部屋に……』
まあ、こういったタイプなら何の問題もなく始末出来る。失踪したように見せ掛けることも簡単なので、都合が良いとさえ言える。
問題なのは、こちらから武器を取り上げようとしたり、疑心暗鬼に走ったあげく危害を加えようとする連中だ。
いくらスタンド能力があるからといって拳銃が恐ろしくないわけではない。本体はどこまでいっても人間だもの。
至近距離からの一発で簡単に死んでしまう。毒殺だって怖い。
……そのため、少しでも危険を減らすには最初の内から集団の中に潜り込んでおく必要がある。
さすがに多人数での集団同士の遭遇となれば、対等に話をすることも出来るだろう。……そうして信頼を増やしながら、少しずつ崩す。
これが理想的だ。
だが、集団となればその中で主導的な役割を果たそうとするものが生まれることになるだろう。
それがあくまで安全を優先する人物であればいい。勢いだけのバカに振り回されるなんてのは絶対に御免だ。
……そこまで言うなら自分でやればいいのでは、と考える者もいるかもしれない。だが、リーダーなんて注目される役はお断りである。
あくまで嫉まれず、そして馬鹿にされず平穏に生きていくのが人生目的である以上、それは譲れない。
これからもう暫く待てば、危険な中心部から離れようとする人間が、何人かは出てくるだろう。
そういった人間と合流して、そのうち誰かをリーダーに祭り上げる。危険を避けようとした人間なら、迂闊な真似はしないはずである。
ナルトのスタンドならそれを見逃すこともなく、安全な人間か確認することも出来る。
……これが最善だろうと思うのだが、待ちを良しとしないバカが、肝心の能力を持っている点が色々と台無しにしてくれる。
あげくの果てに地図に載っているA−1のモアイ像を見に行きたいとか言い出す始末だ。……どうも一緒に行きたいらしい。
火影の里という忍者の里には、歴代火影という里の長を勤めた人間の顔が彫り込まれている場所があるのだそうだ。
そのため、何か意味があるのではないかという発想に飛んだようだ。
……明らかに、どこかの国の影響を受けていることが分かる。……その火影の里の火影になるのが夢だと聞かされた。
こういう時、人は本当に無力であることを実感するのかもしれない。
……本来なら何か言わなければいけないのだが、言葉というものは探せば見付かるというものでもない。
ナルトがじっとこちらを見詰めてくる。
(ど、どうする……!?)
だが、救いは彼方から訪れる。
「……おっ、見付けたぜ。川尻のおっちゃん。あっちの方だ。名前は海馬瀬人だってさ。なんかスッゲ偉そうなヤツだった」
八方に飛んでもらっていたナルトの影分身のうちのひとつが誰かと接触したらしい。腕を振るうようにして、男のいる方角を指し示す。
勿論、このような事態を想定していないはずがない。
点けていた懐中電灯はすぐに消す。
ナルトのスタンドは便利だが、過剰な遭遇となってしまうのは非常に危険なのだ。
みすみす危険人物を勝手に連れて来られては堪ったものではない。まずは情報をこちらに伝えてもらうのが先決。
何度も執拗に言い付けていたことが功を奏したらしい。忘れないでくれていたことに心の底から安堵する。
……内容を聞くところによる高笑いを上げながら、木をへし折って歩き回っていたという。
……明らかに危険人物じゃないか。それでもワポルに対抗していると言っていたらしい。……わけがわからない。
植物の心のような生活を送ろうとしている吉良にとって、それで人を集めようとしていたと言われても、到底承伏できる話ではない。
その上、透明になることが出来る――恐らく近距離パワー型のスタンド使い――最悪も最悪だ。
そんな安心を脅かす最悪のスタンドがあっていいだろうか。
常にこの男が潜んでいないか、気を配っていなければいけなくなる。こんなものに存在されたら安心した生活が汚される。
「別に気配を読めば、大丈夫だって!」
などと、ナルトは気楽に言ってくれるが、気配を読むなんてことが漫画の世界でもないのに本当に出来ると思っているのだろうか。
確かに何かおかしいと、勘付く程度のことは誰にでもある。透明な人間でも歩けば足音ぐらいはするだろう。
しかし、それは集中していればの話。襲われている間も変わらずに精神を保ち続けるなど、余程の達人でなければ無理に決まってる。
普通の人間はスタンドに対抗出来ない。見えることも触れることも出来ないからだ。本体を狙う以外にはどうしようもない。
……スタンド使いにも、決して見えないスタンド。どれだけ驚異的なことか、更に衣類も含めて本体以外も透明化させることが可能。
例えば、透明にした拳銃からの銃弾を、音だけで躱せるような者がいるとでも言うのだろうか。そんなものは怪物の領域だ。
……だが、シアーハートアタックなら、透明でも熱を追跡して始末することが可能。予め知ることが出来て、実によかった。
何より相手は透明になることが出来る。突然、消え去ったとして何の違和感もない。
思わず高笑いを上げたい気分になる。これでまずは一人。どうやら運はこの吉良吉影に味方しているようだ。
こうやって一人ずつ消して、いずれ平穏な日常を取り戻すのである。が、そんなしい気分を盛大にぶち壊してくれる声が。
「……おっ、また見付けたぜ。川尻のおっちゃん。あっちの方だ。
今度は二人組だった。夜神月と加藤勝。月って奴が肩に怪我してたけど、Lってヤツに襲われたんだって。
で、大量殺人鬼のキラに気をつけろって……」
――キラークイーン。
あまりの展開に咄嗟に吉良はスタンドを出しかけたが、さり気ないポーズの姿勢をとったように見せ掛けることで、何とか誤魔化す。
……クールになれ。クールになるんだ。吉良吉影。
必死に心の中で自分に呼び掛けながら、冷静さを取り戻そうとする。
……いったい何の確証があってそんなことを言っているのだろうか。
この状況で「キラに気をつけろ」という言葉が飛び出す。
吉良の存在を知っているということは、承太郎の仲間。
しかし、ゲームの参加者の中に吉良がいると考えない限り、そんな発言が出来るはずもない。
かなり近付いているに違いないが、まだ承太郎たちにも誰が吉良かは掴めていない。そのはずなのだが、何故。
とりあえず、そいつらへの考察よりも重要なのはナルトがどこまでの話を知ったかだ。
事と次第によっては始末しなければ。こいつの能力は危険過ぎる。敵に回して確実に勝てる保証はない。
「それで彼らは、そのキラが……?」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
いつでも爆破できるようにそっと肩に手を置きながら、(まさか、これも分身だということはないだろうな)、先を促す。
「だから、そのLって奴がキラなんだってばよ!!」
……ピタ。
吉良は歯車の間に何かががっちりと挟まったような感覚に襲われる。
何を言っているのか分からずに、一瞬途方に暮れてしまった。キラがL。
既に能力もスタンドの姿までも承太郎たちに知れ渡っている。そこまでの知識があって、よりによって誰かと誤解出来るものだろうか。
夜神月と加藤勝と言ったが、父親からの情報ではそのような者達は承太郎の仲間にはいない。最近出来た仲間かと思ったのだが……。
まさか、全く別に自分を探ろうとしている人間がいたのだろうか。
どうする? ひょっとするとL=キラと考えているのは、夜神月と加藤勝の二人だけなのかもしれない。
……スタンド使いばかりが集められているとすれば、この場に空条承太郎が呼ばれていたとしておかしくはないはずだ。
どのような確証があって、そんな大それたことを言っているのかは知れないが、これはひょっとすると利用できるのかも。
しかし、Lの正体が分からなければ利用するも何もない。L、何かの隠語なのか。それともエルという名前なのか。
この吉良と同じ殺人鬼であることだけは間違いないようだが、……何者なのだろう。不気味としかいいようのない存在である。
さては……新手のスタンド使いかッ!?
とりあえず両方の情報は得た。ここからどうするかである。
……どちらも危険な可能性は高い。それならいっそのこと、お互いをまず遭遇させてしまったほうがいいだろうか。
上手くいけば相打ちとなってくれるだろうし、もしも安全だということが分かれば情報を得るために接触してやってもいい。
だが、問題はその案にナルトが賛同するかどうかという点だ。
影分身を使えるのはナルトだけ。つまり、ナルトが納得しない限りどんな案を考えつこうとあまり意味はない。
迂闊に近付くわけにもいかない以上、安全策は絶対に取らなければならない。
海馬にシアーハートアタックを使うつもりだったが、簡単に始末を出来るという保証はない。仕留められなければ、逃げようとする。
そこを月たちに見付かって、こちらに疑念をもたれても厄介である。
……さて、どうしたものか。
待っていてくれと伝えたようだが、あまり時間を掛ければそのうち不審に思ってくることだろう。
急がなければこちらの位置を相手に掴まれてしまうかもしれない。
殺人鬼、吉良吉影は自身の保身のためだけに思案し続けた。
何か無くしたものを探すように良い案が浮かばないか考えて、自然と周囲に目を向けていく。
と、そこに手持ち無沙汰にしているナルトが目に映る。ある支給品のことを思い出した。
ふっ、と顔を和らげると、それをディバックから取り出す。
「そうだ。まずはご苦労様だったね。
ちょうどいいものがあるんだった。ナルト君にこれを上げよう」
意外! それはお菓子!
吉良は箱からクッキーを一枚だけ取り出すと、さっと箱を閉じようとする。
しかし、それをみすみす見逃そうとするナルトではなかった。
「ガキの使いじゃねーんだってばよ。
……それにたったの一枚かよ。このケチッ!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……
激しく火花散る視線の交錯。上と下という背丈の差は確かにある。
けれど、その眼差しに秘められた意思の強さに何の違いもあるはずもない。闘いとは常に譲れないものを持つ者同士の間で行われる。
……だが、ここで舐められてはいけないッ!
主導権があくまで、こちらにあることを絶対に理解させなければ。
一度に沢山望むのは贅沢な考えであることを徹底的に叩き込むッ!
最初が肝心なのだ。さもなければもっと付け上がるに決まっている。
別に決して卑しい理由でお菓子を惜しんでいるわけではない。これは人として当然の教育的指導というものなのである。
吉良の凄みとさえ呼べる気迫を前に、ナルトは渋々、折れることになった。
それでも交渉の結果、かろうじてもう一枚増やすことになったのは僥倖といっていいだろう。
さて、お互い一応の合意が出来たところで、吉良はナルトにお菓子を渡してやることにする。
「ナルトッ! こいつは取れるかッ! 手を使っちゃ駄目だぞ!」
……ちなみに、上は非常に悪い例である。
犬にフリスビーでも投げてやるように、お菓子をやるなど言語同断。
きちんと菓子屑が零れないように何かに包んでから渡さなければ、礼儀正しい人間に成長することは期待できない。
吉良は懐からハンカチを取り出すと、そっとクッキーを包んでからナルトに丁寧に手渡してやる。
「…………あ、あんがと。おっちゃん」
……もう少し、きちんとした感謝の仕方があるのではないか。そう言ってやりたいところだが、ぐっと堪える。
これは報酬である以上、あまり口うるさく言っても仕方あるまい。
何故、吉良はナルトにお菓子を与えようとしたのか。その訳は意外にあっさりとしたものである。
単にこちらの言うことを聞いて貰いやすいように友好関係を深めておこうとしただけだ。
……ほとんど犬猫の躾と同レベルである。だが、直球である分だけアホには、猫草と同じように効果的であるかもしれないのだ。
そして吉良は一枚だけ、自分の分として同じようにクッキーを取り出した。
実のところ吉良は、最初の時、あのまま箱を閉じようなんて思っていなかったのである。
食べないのか、と訊いてくるのを心の底では期待していたのだ。が、それはまったく無為に終わったことは、改めて説明するまでもない。
そうすれば、もう少しは奮発してやったかもしれないものを……。
無遠慮な子供の図々しい言動のために、当初の計画を歪めなければいけない無念さを胸に秘め、吉良はクッキーを寂しく見詰めていた。
同じものを食べる。それはお互いに信頼を深める行為に他ならない。
たとえば古典的な問いに、目玉焼きに何をかけて食べるか。というものがあるだろう。
醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、塩、コショウのみ。
どれほどに思い合った相手であっても、食の嗜好が違えば致命的な亀裂が入ってしまうことが、世の中にはあるのである。
……草食動物が肉食動物と仲良く暮らせるはずもない。
酒を飲み交わす。サラリーマン世界であろうと極道の世界であろうと、その意味するところはどちらも変わらない。
――お互いを同じ仲間だと認識させる。そのために吉良は敢えて、決して望んだ行為ではないが、クッキーを食べようとしていたのだ。
一口であっという間に食べてしまったナルトを横目にしながら、吉良は見せ付けるように、自分の持つ菓子の存在をまずはアピール。
その後は一口で食べず、噛み分けてゆっくりと味わう。まずいこともなかった。それほど、うんまァーいこともなかったが。
……大量生産のものである以上、まずまずといったところだろう。味の方は別に期待もしていなかった。
ところが、これで少しは友好関係が深まったかと思えば唖然とした様子で、ナルトはこちらを見てくる有様だ。
「なんだ? 私は一枚しか、食べていないぞ!」
吉良はきっぱりと自分の正義を標榜する。
恐らく、一人で何枚も食べようとしていると思ったに違いない。
大人である自分はたったの一枚で我慢してやろうとしているというのに、何て卑しい考え方をしているのだろうか。
大体、食べたいから食べてるわけではない。誰が得体の知れない奴から受け取ったものを好き好んで食べようと思う。
それを事もあろうに意地汚いように勝手に解釈するとは、何て食い意地のはった小僧なのか。こじつけも、そこまでいけば傑作だ。
そんなにも食べたいというのなら、存分に食わせてやろう。爆弾に変えて砕いてから耳に水で思い切り流し込んでやってもいい。
次第に物騒な発想に傾いていく吉良だが、あることに気付き一瞬で冷静さを取り戻す。向いている視線が、どうも奇妙なのである。
不満があるとすれば、顔よりも下を見るのはおかしなことではないだろうか。菓子箱を持つ手に注目しているようでもない。
確かに、嫌なことがあった子供は決して視線を合わせようとしないこともある。だが身体の一部を凝視するようなことはあるだろうか。
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
大地を駆け抜けるような音、心臓が激しく脈打つ。血は血管を巡り全身から汗が噴き出す。
突然、服が窮屈になる。
突然、全身が丸みを帯びてくる。
突然、胸のボタンを外したくなる。
何故だか知らないが、吉良はあの広瀬康一のスタンド「エコーズ」に左手を重くされた時のように胸に重みを感じていた。
……既に敵のスタンドの射程距離内にいて、攻撃されているのか?
しかし、あの時とは微妙に違う。この奇妙な感覚は新手のスタンド使いの攻撃と見て、間違いないだろう。
だが、焦ってキラークイーンを出すわけにもいかない。
もしかすると様子を窺い、スタンドの姿を確認しようとしている。……承太郎の仲間たちの仕業かもしれないのだ。
ギリギリの限界を見極める必要がある。まずは視線を下に向けよう。
ともかく何が起こったのかを確認しなくてはならない。まだ生命に関わるような攻撃は受けていないはずだ。
けれど何かで視界が遮られてしまっている。実に困った。これでは、何が起こったのか分からないではないか。
……いや、冷静になって考えてみればわかることだった。胸が盛り上がっている。これが原因で胸に重みを感じていただけのこと。
「な、なにィ――――――――ッ!?」
意外! それは突然の女体化!
「……川尻のおっちゃんも、おいろけの術、使えたのか?
ま、女の格好で驚かせるのもいいけどさ。オレにもやらせる気?
んー。ハーレムの術で歓迎ってのも、別にいいけどさぁ……」
ナルトの声など耳には入らない。
吉良はわなわなと手を震わせながら、その豊満な胸を掴み上げる。
「……ぁあっ」
男の身では余程の肥満体でもない限りは、胸の肉を揉みしだく経験など有り得ないだろう。
絞るようでありながら、身がほんのわずか軽くなる。不思議な体感に吉良は身悶えた。
……ずささっ。ナルトは思わず本能的に身を引いた。
無理もないと言える。
いかにお色気の術を使ったといえ、正体はおっさんである。それがいきなり目の前で胸を揉みながら変な声を上げれば仕方有るまい。
健全な青少年には目に耳に毒だった。気の毒とさえ言える。
……聞き慣れない女の声が、自分の声として内に響く。
吉良はわけのわからぬ異常過ぎる事態に思わず絶望し、いつもの癖で爪を噛もうとした。
見る人が見れば、その姿はある人物の、指をしゃぶる癖に似ていると見えたかもしれない。
ところがそんな絶望を止めてしまうような眼を疑う光景に襲われ、吉良は思わず我を忘れてしまう。
「こ、これはぁぁああああっっ!?」
吉良は叫びを上げた。
「こ、これはぁぁああああっっ!?」
吉良は叫びを上げた。
「こ、これはぁぁああああっっ!?」
吉良は叫びを上げた。
「こ、これはぁぁああああっっ!?」
……なんて美しい手なのだろう。
吉良は恍惚とした表情でその手を同じく美しい手で触れる。重ねる、その手のたおやかな自然な動作は見る者の眼を奪うに違いない。
真珠の如き、眩い輝きを秘めた爪は月の光を返して、なお天に届く程。
折り曲げた指、伸ばされる指、てのひらの皺、全てが美の調和を内に秘め、共に視界に入る光景を美しく艶やかな世界に形作っていく。
触れれば柔らかな手の温もりの感触が安心というものを、これでもかという勢いで、何と心地よく真摯に伝えてくることか。
もし、この手で口を塞がれでもしたら皆が呼吸を忘れることだろう。
――恐ろしいことに吉良は自分の手に見惚れているのだ。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……
……まあ、それはそれとして、そんな大声を上げてしまうと、近くに誰かがいた場合、どうなるのだろうか。
ついでに人を待たせていることをすっかり忘れているのもどうかと思う。
けれど、吉良がそれらに気付くには、まだ暫くの時間が必要となりそうだった。
【A‐1 森 / 一日目 黎明】
【海馬瀬人@遊戯王】
【装備】:ベレッタ(残弾数6/7)@現実 GANTZスーツ(ロワ仕様)@GANTZ
【所持品】:支給品一式×2 手榴弾×4 RPG@現実 不明支給品0〜2
【状態】:健康
【思考・行動】
1:返り血を浴びないように小島の死体から首輪を手に入れる。そして首輪分析
2:ワポル打倒を目指す。ただし手段は選ばない。友情ごっこなんぞに興味はない
3:ナルトと川尻(吉良)と接触する?
※参戦時期はおそらく王国編以前だと思います
※小島多恵から色々と話を聞きました
【A-2 森 1日目 黎明】
【加藤勝@GANTZ】
【装備】:雪走@ONE PIECE
【所持品】:支給品一式 不明支給品0〜2(本人確認済み)
【状態】:健康 Lへの怒り
【思考・行動】
1:島の中心部を目指す
2:GANTZに反抗し、ゲームを脱出する
3:月と一緒に、反抗者を探し仲間にする
4:月を信じる
5:襲撃者はできれば殺したくない
6:ナルトと川尻(吉良)と接触する?
※参戦時期は、おこりんぼ星人戦で死亡直後です
【夜神月@DEATH NOTE】
【装備】:スペツナズナイフ@現実 手榴弾@現実
【所持品】:支給品一式 手榴弾×4 不明支給品0〜1
【状態】:健康 左肩に浅い切り傷
【思考・行動】
1:優勝して、主催の力を手に入れる
2:反抗者グループを作りマーダーを打倒、その後グループを壊滅させる
3:L=キラ、という悪評を広める
4:加藤は利用するだけ利用する
5:島の中心部を目指す
6:首輪と脳の中の爆弾を調べたい。
7:ナルトと川尻(吉良)と接触する?
※参戦時期は第1部終了直後です
【B−1 森の中/一日目 黎明】
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 ホルモンクッキー×17@HUNTER×HUNTER 不明支給品0〜2個(本人確認済み)
【状態】:健康 女性化
【思考・行動】
1:ナルトや他の人間を利用してゲームを生き残る。
2:海馬瀬人は安心を脅かすスタンド使い、始末したいが。
3:夜神月と加藤勝……まさか、承太郎の仲間か?
4:……それはともかくとして、なんて美しい手なんだろう。
※参加時期はバイツァ・ダストを身につけた直後です。
※スタンド使いが呼ばれていること、仲間らしき者がいることから承太郎も参加している可能性を考えました。
※ナルトには川尻浩作と名乗っています。
※L=キラ、危険人物だという情報を聞きました。
【うずまきナルト@NARUTO】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 不明支給品1〜3個(本人確認済み)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:ゲームには乗らない
2:川尻浩作(吉良)と行動する
3:夜神月、加藤勝、海馬瀬人と合流したい
※参加時期は2部に入ってからです。
※海馬瀬人、夜神月と加藤勝、と簡単な情報交換をしました。
※L=キラ、危険人物だという情報を聞きました。
【ホルモンクッキー@HUNTER×HUNTER】
これを食べると24時間の制限付きで性別が変わります。
もう一枚食べれば、性別がまた変化します。一箱20枚いり。
以上で投下終了です。
容量を超えていた場合、吉良吉影パートで分割して下さい。
……熟女を望んでいた方がいたとはいえ、こんな展開していいのかな。
予約はした方がいいのはわかっているのですが、したらば以外でするのは
問題がないだろうかと考えてしまって……
支援ありがとうございました。無駄に待たせてしまってすいませんでした。
乙です
前半の重苦しい雰囲気を見事吉良がぶち壊していったなw
てか吉良どうすんだろ。殺人衝動が抑えきれなくなったら色んな意味でやばい……
そこに加えて月加藤海馬が加わったらまさにカオスになりそう……
投下乙です
吉良が予想外すぎw自分の手に見とれてどうするw
ナルトの影分身はそんな使い方もあるのか……接触した人物が厄介者ばかりだけど
キラ違いもいい感じのフラグになりそうだ
原作で登場してない設定だけのアイテムを出すのって問題ないかw
っていうか吉良きめえwwww
投下乙です
吉良の中でのナルトの評価悪すぎて吹いたw
確かに忍者だとか言っても普通は信じられないだろうけどw
にしても吉良キモすぎwwwwww
いい年したおっさんが急に女体化して胸揉みしだいて自分の手に見惚れ始めたらナルトじゃなくても引くわwwww
投下GJ
ジョジョ勢は良い味だしすぎだろwwwきめぇww
吉良パートに吹いたwクオリティ高すぎるw
GJ!
予約しない糞書き手は死ね
この話も破棄な
ちょっとは周りの迷惑考えろやボケが
670 :
参加するカモさん:2008/07/24(木) 09:18:28 ID:31l8MCBU
すんません、
>>669は暑さに脳をやられたみたいなんで、取り合わないでおいてください
>>670 これは俺の意見じゃなくて、スレ住人の総意だから
もう破棄は決定
672 :
参加するカモさん:2008/07/24(木) 09:25:47 ID:31l8MCBU
はい、わかりましたよー
じゃあ涼しいところで安静にしててくださいねー
sageることも出来ない奴に偉そうなこと言われたくないな
死ねよ
>>672 煽りも一緒ですよ。
スルーしてください。
反論する人もいなくなったし、完全に破棄ということで
もうwikiに載せられてしまってるようなので、誰か削除お願いします
677 :
参加するカモさん:2008/07/24(木) 11:48:29 ID:YYtmxcel
自分でやれ
やり方分からない
どうでもいいけどやけにIDに8が多いな
俺もかw
ゲリラ投下くらいで何いってんだか
折角予約入ってないパート書いてくれて、内容も悪くないのに
夏厨のせいで…
今からこんなんじゃ完結なんざ無理やな
予約しないで投下が流行りそうだな・・・
簡単に出来ることでもないし、別に流行ったりしないだろ
仮に流行ったとして、何か問題があるわけじゃないし
若干不安がありますが、これから投下します。
まるでなにかから逃れるように、俺は右手に川を見ながら土手の上を疾駆した。
苦しかった――肺が破裂しそうだった。
足がもつれそうになった――踏ん張って耐えた。
まだ男を殺した感触が手に残っている。
肉を裂き、刃が骨に当たる鈍い手ごたえ。そして噎せ返るほど濃厚な血のにおい。
いつもと変わらぬ人斬り。相も変らぬ殺し。
人を殺すのは慣れていた。殺し自体は好きじゃなかったが、それでもそれが俺の仕事だった。
それなのに何故だか今は胸がむかついていた。ともすれば胃の中のものを全て吐き散らしそうだった。
新撰組や幕府方の士をいくら斬ろうと、ここまで陰鬱な気持ちになることはなかった。
あの男は何者だったのだろうか――。
口ぶりから男が動乱を生き抜いてきた志士であるのは疑いようもなかった。
攘夷派ということはあるまい。
桂先生を悪く言っていたのだから長州に与する者ではないはずだ。
では佐幕派か、そうでなければ開国論者なのか。それとも公武合体を望む者ということもあるうる。
偶然とはいえそのような者を斬ったとなると、それなりにツイていたようだ。
少なくともこんなところで無関係な庶民を斬るより救いがある。
しかし、正直なところそんなことはどうでもよかった。
あの男の思想がどんなものであれ、桂さんにどんな心象を持っていようと、
今の俺にはそれほど大きな意味をもたらさなかった。
いや、もちろん意味はあるのだろう。
佐幕派の一人を斬ったとなれば、それだけ新たな時代を早く呼び寄せることになる。
仮にそうならなくとも、新時代到来の前に立ち塞がる邪魔者を消せたのは意味のあることだった。
だがそんなことじゃなかった。俺の感情を激しく揺さぶるのはそんなものではない。
――笑えよ。
耳元であの男の声が聞こえる。
寒気のする思いだった。心の臓を鷲掴みにされたみたいだった。
俺はいつから笑うことを忘れてしまったのか――思い出すことはできない。
笑うとはどんな感覚だったか――思い出すことはできない。
死んでいった者達は本当に俺のような奴に笑って欲しかったのだろうか?
巴も俺に笑ってもらいたかったのだろうか?
俺にはどうもわからない。
――死んだ嫁さんは喜ばない。時代も変わることはない。
本当にそうなのか?
だとしたら俺は今までなんのために多くの人を斬ってきたのか……。
すべては新時代のためだった。誰もが安心して暮らせる時代を呼び込むためだった。
それなのに……。
自分のやってきたことの意味があの男の所為で翳んでいくようだ。
あの男の最後の言葉。命を賭してまで俺に伝えようとした言葉。
取るに足らないはずの言葉がじわじわと俺を蝕んでいく。
巴を想う。狂おしかった。無性に恋しかった。
俺が妻とした女。俺が愛した女。俺が殺した女――。
巴……巴……巴……。
何度呼び掛けても巴が答えてくれることはなかった。
当たり前だった。巴は死んだのだ。俺がこの手で殺したのだ。答えてくれるわけがなかった。
巴がなにを考え、なにを俺に求めていたのか――今となってみればわかりはしない。
だがもし巴がそうして欲しかったのだとしたら――いや、駄目だ。
俺に笑う資格などあろうはずがなかった。そんなことを考えてもいけないのだ。
俺は人斬りだ。人を殺すことしか知らない剣鬼だ。
数知れぬ士を斬り、あまつさえ巴まで手に掛けたこの俺が、残された世で笑うなど許されることじゃなかった。
俺は笑えない。笑ってはいけない。笑う資格がないのだ。
俺は胸中でそう自戒し、歩度を緩めて河原へ降りた。
こんな考えに囚われていてはいけなかった。こんな考えが湧くのは弱気になっているからに他ならない。
荷物を傍らに置き、冷たい川の水を掬って荒々しく顔を洗う。
澄んだ清らかな水が薄い赤に染まった。あの男の返り血だった。
気がつけば小袖も袴も生臭い血をいっぱいに吸っていた。
まるでこの血の所為で妙に胸が騒ぐのだと言わんばかりに、俺は膝上まである川に身を没した。
流れに浸かり、頭から水を被る。身体中に浴びた血が溶けて流されていく。
しかし俺の手は赤く染まったままだった。
人斬りはどこまでいっても人斬りなのである。一度手を汚せばけして洗われることはない。
それが人の命を奪うことを生業とした者の宿命なのだ。
巴が喜ぼうと喜ぶまいと、時代が変わろうが変わらなかろうが、それだけは絶対に揺るがない事実だった。
――笑えよ。
再び男の声が聞こえる。耳元からではない、耳の奥底からだった。
声が煩わしかった。
揺れる水面に俺が映っている。剣を振ることに疲れた男の顔だった。
その顔にやはり笑顔はない。
――笑えよ。
男の声に巴の声が重なる。水面の俺と巴の顔が重なる。
やめろ、やめてくれ……。
支援です
――笑って。
巴……。俺には無理だ。俺にその資格はないんだ。
――笑って。
巴……。俺を惑わさないでくれ。
――貴方はどうして笑ってくださらないの。
だから俺は……。
「見つけたでござるぞ!」
堤の上から怒りを帯びた仰々しい声が降ってきた。
その声に驚き、俺は俯いていた川から顔を上げた。さっきの奴等だった。
追いつかれた――軽い舌打ちをして、すぐ思い直す。
まとめて殺せばいいだけだった。さして問題ではない。
「ヨホホホホ。貴方足が速いですねえ。追いかけるのに骨が折れました。
――あ、私ガイコツなんで、本当に折れたら困ってしまいますが」
「こらブルック、先に喋るなって言ったろ」
「葉殿、ぶるっく殿、無駄話はあとにしてくだされ。今はそこの武士に一言物申しておかねば!」
血は血を呼ぶ。戦いの輪廻から俺が解き放たれることはない。
やらなければこっちがやられるだけだ。
俺は俺を惑わす全ての考えを頭の中から追いやって、刀の鯉口を静かに切った。
俺の後ろから陽が顔を出しはじめている。
その陽が人斬りの行き着く先を照らすことはないだろう。それでも俺は刀を振り続ける生き方しか知らなかった。
鬨を上げながら抜刀し、堤の斜面を駆け登った。
【D−2 河原 /一日目 早朝】
【緋村剣心@るろうに剣心】
【装備】:黒刀・秋水@ONE PIECE、スタングレネード
【所持品】:支給品一式 不明支給品1個(本人確認済み)
【状態】:精神疲労大、肉体疲労小
【思考・行動】
1:全参加者を殺して日本に戻り、幕府と薩長の戦争を終わらせる。
2:さっきの男のような使い手に注意する。
3:(誰も殺したくない?)
※巴を殺した少し後の人斬り抜刀斎だった時代から来ています。
※精神疲労のためか、銀時の言葉に若干動揺しています。
【ブルック@ONE PIEC】
【状態】:健康
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品x1〜3
【思考・行動】
1:少年(剣心)に一言物申し、わからないようなら力づくでわからせる。
2:麦わら海賊団のメンバーを探す
3:ワポルを倒して殺し合いから脱出する
※スリラーバーグ出航後からの参戦です。
【麻倉葉@シャーマンキング】
【状態】:健康
【装備】:阿弥陀丸
【所持品】:支給品一式、不明支給品x1〜3
【思考・行動】
1:少年(剣心)に一言物申し、わからないようなら救うつもりでいる。
2:人と接触する時は自分が先に接触してブルックを紹介する。
3:ワポルを倒して殺し合いから脱出する。
※阿弥陀丸とセットで参戦しているよです。
短いですがこれで終わります。
元々は剣心VSブルック・葉&阿弥陀丸を書いてたのですが、
最後まで剣心に訴え続けていた銀時の言葉を汲んでやろうと思い直し、少し手を加えるつもりがここまで大幅に変えてしまいました。
手直しどころか丸々差し替えてしまったので、予約した時点のものとは最早まったくの別物です。
剣心の揺らぐ内面を主題に持ってきたため、せっかくのマーダーという立ち位置を壊しかねないと自分で思いました。
もし問題があるようならできるかぎり修正や破棄に応じようと思うので、率直な意見を言ってもらえれば幸いです。では。
乙です。
短!?これを三日か!
……などと最初は思ったんですがそういうことなら納得です。
しかし剣心はぶれてるなあ。まあ元はいい奴だし仕方ないけど、
それでもマーダーであることをやめられない心苦しさがすごい伝わってきました。
内容はいいと思いますよ、ってか剣心の心情が……揺れてますねぇ
投下GJ
問題ないと思いますよ。しかしここで切るとはw
早朝だから第三者を割り込ませようと思えば可能だし
投下乙です!
もう死んでいるのにこう言わずにはいられませんね。
坂田銀時かっけえええええええええええええええええええええええええええええ!
(最期の言葉+)笑顔が無いという言葉が剣心の心を揺さぶりまくってますねw
「見つけたでござるぞ!」 で、ござる口調時の剣心を思い浮かべて噴きましたw
この続きの話にあると思われる侍VS侍+レイピア?ってのも楽しみです。
つーか、完成間に合わなかったのを適当に途中で切って投下してるだけだよね
それっぽい言い訳つくって
沙姫とゾロ投下します。
(色々と心配なのですが、修正・破棄などの要望が出た場合応答できるのがどうしても二日後になってしまいます)
「広が………広が…」
立野広の死について、一から十まで話を聞き終えた天条院沙姫は衝撃の事実に驚愕するしかできなかった。
彼女特有のダイヤモンドのように美しい輝きを放つ涙が乾いた大地に潤いを与える。
「広ィ…」
そうよ、あの時。あの時どうして私は最後まで広を止めなかったの?
あの子が何の力も無いただの子供だということをわかっていて、何故待つことを選んだの?
何故、どうして?あそこで私さえしっかりしていればあの子が死ぬことはなかったはず!
広を守ると誓っておいて、結局守られたのは私ではじゃない…!
「オイ、お前まさかヒロシが死んじまったのは自分のせいだとか思ってねェだろうな」
広の遺体を土に埋めるという作業を終えたゾロが隣で咽び泣く沙姫に、正面を向いたまま訊ねる。
問わずとも沙姫の心中など透けて見えてはいるのだが。
「当然でしょう!あの時、広ではなく私が貴方たちの元へ行けば――――」
「何ができたんだ!」
感情的に喚く沙姫の声にゾロの張りのある声が被さった。
そこには怒りも悲しみも含まれていない。ただ何かを訴えるような感情だけがあることを、沙姫は感じた。
「お前が来たって、お前がヒロシになってただけだ」
「……それでも―――たし…私は………」
「広は強かったぜ、アイツのおかげで俺はあの木乃伊野郎を倒すことができたんだ。俺もお前と同じ、助けられてんだよ。
だから嘆くな。アイツに助けられたこの命を守ることだけを考えろ。それがアイツへの恩返しだ」
支援
支援
支援
膨らんだ土の前にしゃがみ込み拝みながら、放り投げるような乱雑な語調で沙姫に告げる。
だがその言葉からは温かな気持ちが十二分に伝わってきた。
何と不器用な男なのだ、と沙姫は思う。
そうですわ。この方の言う通りです。
私は広に守られた、一つの生命(いのち)なのですわ。
だったら最後まで守り抜いてみせましょう。死んでいった、あの子のためにも。
―――――――だから、強くならねば。そのためには…。
「ゾロさん、と言いましたか。貴方にお願いがあります」
「あァ?」
◇ ◇ ◇
「準備万端ですわ!」
ど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!
右手にスコップ。
左手にライター。
腰にダイナマイト。
頭に兜。
奇妙な格好に変身を遂げた沙姫の前には、頭痛を覚えるゾロの姿があった。
「大丈夫かよお前…」
「ちょっと頭が重たいですけどこれくらい我慢しますわ」
「そうじゃねェ!」
ご心配なさらずとも、広のためなら、痛くも痒くもありません。
か弱い私が身を守るためには、このような武器たちがどうしても必要になってきますの。
おかしな格好?いいえ、よーく見てみなさい。
こんな色気のないものでも私が着れば美しいドレスに見えてきませんこと?
支援
「あとはこの眼鏡を装着すれば完璧ですわね」
これ以上は頭が破裂しそうだったのでゾロは沙姫の痛々しい変貌を尻目に背を向け、自分とヒロシのパックの中身を渡すという替わりに譲り受けた槍のようなものを見つめた。
刀ではないため使いこなせるかどうかという懸念はあるが無いよりはマシである。
それにまぁ、刃物と言えば刃物なのだ。時間は掛かるだろうが銃器類よりは断然使いやすいに決まっている。
「さて、そろそろ参りましょうゾロさん。病院で手当てをしてさしあげま…!!」
「?」
眼鏡を装着した沙姫が振り返ると同時にゾロも立ち上がり、互いに向き合う形となった。
途端、沙姫の表情が硬直する。彼女の白いキャンバスのような頬に、じわりじわりと桃色の絵の具が滲んでいった。
「なななななな!!何て格好をしているんですの!!?」
「テメーに言われたくねェ!!」
可聴領域を超えそうなほど甲高い声で喚きだす沙姫の視界に映るのは下着姿のゾロだった。
無論、端から見れば妙な格好をしているのは沙姫の方であるのだが…沙姫がそれに気付くわけもなく。
目のやり場に困り咄嗟に視線を逸らすが既に脳裏にはゾロの鍛え抜かれた肉体が焼きついていて意味が無い。
半裸の男、光のない木陰、人気の無い場所―――この三点セットから連想されるものといえば……。
…白から黒へ黒から白へ白からピンクへと忙しく切り替わっていく沙姫の脳内。
ま、まさか…散々良いことを言っておきながらこの男!いきなり服を脱ぐだなんて…!
さては私の油断を誘い、あんなことやこんなことをするためにあのようなことを!?何て卑劣な男なんですの!
確かに、この尋常ならぬ美貌に目が眩む気持ちもわからなくもありませんが…。
しかも二人きりという状況。こうなってしまって仕方がないかもしれませんわね。
……でも、やはりこの方も理性を保つべきですわ!か弱い乙女を無理矢理襲うだなんてあってはなりません。
それにしても一体私はどうすれば…?あの木乃伊を倒した男に、私が勝てるのかしら…。だったら逃げるしか…。
いいえ、駄目よ、逃げては駄目沙姫!広のために強くならなければ!
「たァァァ―――ッ!!」
「うお!」
「このッ!変態ッ!」
何の前触れもなくスコップを我武者羅に振り回し出す沙姫の豹変振りを理解できぬまま、次々に繰り出されるあまりに出鱈目な攻撃を避け続けるゾロ。
身に覚えも無いフレーズに脳を悩ませながらゾロは身体を軽々と動かしながらやりすごしていた。
「待て待て待て、何のことだ!?」
「何ッ、とぼけているんですッ!スケベッ!」
「―――――――!」
変態だのスケベだの、何言ってやがるんだこの女はァッ!
いきなり武器振り回しやがって、お前のほうが充分変態だろうが!
心中で盛大なツッコミをいれながら、流暢な動きでの回避とは、何と器用な男なのだろう。
怪我はしているものの、ゾロにとっては戦闘慣れしていない少女の攻撃など屁でもないのだ。
そのため、次に出る攻撃を予測し武器でスコップを弾き返し、沙姫の華奢な手首を掴み反撃を仕掛けることに時間など必要無かった。
「ああ!」
「とりあえず落ち着け!」
沙姫の手首に痛みが走ると同タイミングで襲ってくる浮遊感。
その後受身を取る暇も無く天と地が逆さまになってしまい、状況に気付いた今からではもう遅い。
視界いっぱいに広がった空を遮るもの一つ。
「……ひ!」
「ハァ……ハァ…!」
―――――息を荒げる、ゾロの顔だった。
…勿論、呼吸が荒いのは疲労のせいであるのだが、今の沙姫にそれを理解する余裕などなく。
「やややや、止めて……ッ!」
「待て、どういうことだ。ちゃんと説明しろ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
両肩を掴み沙姫を地面に押さえつけるゾロの姿は事情を知らぬ人間から見れば変質者。組み敷かれた状態の沙姫から見ればまさに野獣。
このままではこの綺麗な肌が汚されてしまう。抵抗せねば。だが、スコップは手の中に無く。
………仕方なしに、沙姫は四肢を激しく動かして必死の抵抗を試みる。
――――――――すると、奇跡は起きた。
「うぐァッ!」
漫画であればゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!という効果音がついていたはず。
何と逃げなければ≠ニいう沙姫の思いが神様に通じたのか、乱暴に振り上げた膝がゾロの股間に直撃したのだ。
その攻撃が催す効果は男であれば理解できるだろう……。
顔面蒼白になったゾロが見せた一瞬の隙も見逃さず、沙姫はここぞとばかりに腕に力を込め、ガタイの良い身体を跳ね除け…。
「くッ!」
「何しやが…――――――い゛ぃ゛ッ!」
最後にもう一発、地面をのた打ち回るゾロの手と手の隙間をすり抜かし、地面に落としていたスコップの柄で股間を殴ってやった。
「貴方がもうこんな悪事を行えないよう、今すぐ私が皆さんにこのことを報告してやりますわ!」
そして捨て台詞のみを残し、早急に立ち去っていった。
……苦悶の表情を浮かべる、ゾロを置き去りにして。
【E-3 木の下/一日目・黎明】
【天条院沙姫@To LOVEる】
【装備】: 兜@家庭教師ヒットマンREBORN! ダイナマイト×10@家庭教師ヒットマンREBORN! スコップ@現実 すけすけゴーグルくん@To Loveる ライター@現実
【所持品】:支給品一式 不明支給品 0〜2、ゾロ・ヒロシの不明支給品 0〜2
【状態】:健康 変態(ゾロ)への怒り
【思考・行動】
1:この島に変態が居ることを皆に伝えなければ!
2:広のために、自分自身を守り抜く。
3:警察に連絡する、救急車を呼ぶ。
4:屋敷に帰る。
※ゾロが下着姿になってしまった原因が眼鏡のせいだと気付いていません。
※そのため、ゾロのことを変態だと認識しています。
【すけすけゴーグルくん@To Loveる】
見かけは何の変哲もない眼鏡。
これをかけて人や鏡に映った自分をみた場合、下着は残して衣服などが透けてしまう。
端にあるボタンをうっかり押してしまうと透明度が変わってしまい、下着すら見えずすっぽんぽんに見えてしまう。
外すにはコツがいるためララが居なければはずすことはできません。
【ロロノア・ゾロ@ワンピース】
【装備】: 馬孫刀@シャーマンキング
【所持品】:支給品一式、不明支給品無し
【状態】:全身数十箇所に及ぶ裂傷 極度の疲労 股間の痛み
【思考・行動】
1:痛ェ!!
2:いったい何なんだ!
3:仲間を探す。
※ゾロは志々雄を倒したと思っています。
※なでしこの剣は瓦礫の下に埋まっています。
※広の遺体は埋葬しました。
【所持品】:支給品一式 不明支給品無し
【状態】:全身数十箇所に及ぶ裂傷 極度の疲労 股間の痛み
【思考・行動】
1:痛ェ!!
2:いったい何なんだ!
3:仲間を探す。
※ゾロは志々雄を倒したと思っています。
※なでしこの剣は瓦礫の下に埋まっています。
※広の遺体は埋葬しました。
投下終了。
あと、よくよく考えてみると広の支給品は一つ無くなっているので、
ゾロ・ヒロシの不明支給品は0〜1でしたね。すみません。
予約後即投下じゃ予約無し投下と変わらないじゃん
死ねよ
投下乙です!
前半のシリアスな雰囲気から一変、後半の思わぬギャグ調に噴き出しましたw
原作でもそうですけど、ゾロは事が終わった後なら冷静に状況を分析しますね。
自分が着れば美しいドレスに見えるというのも、そのキャラらしさが出ているのではないでしょうか。
ところで、どうやら『すけすけゴーグルくん@To Loveる』というのは単行本に載っていないそうですが、良いのでしょうか?
すいません、少し投下が遅れそうです。
誰も感想書かないね
待ってます。
投下の方もGJ
シリアスかと思ったら吹いたwこれは良い繋ぎ
ゾロは良いキャラだし、沙姫は元キャラ知らないんだけど好きになったw
テンポ良くて良いですね。
氏の作品はロワ慣れしてきたのかますます上手くなってきて困るwGJ
>>716 感想有難うございます。
ギャグは特に書かないのでちょっと心配だったのですが、楽しんでいただけて嬉しいです。
ゴーグルくんに関してですが…実のところ、単純な武器なので説明をつければ……などと思いまして…。
ですが確かに、単行本のみの知識の方には説明のみでは把握しづらいかもしれませんね。
というわけで破棄しようと思ったのですが、似たようなアイテムがあったのでこれより修正版を投下します。(私は何度修正文を投下したら気が済むのかw)
721 :
参加するカモさん:2008/07/24(木) 23:49:45 ID:0vy9xEoE
感想は書くに値する作品なら意識しなくても自然と出てくるだろ
>>706 「あとはこの眼鏡を装着すれば完璧ですわね」
これ以上は頭が破裂しそうだったのでゾロは沙姫の痛々しい変貌を尻目に背を向け、自分とヒロシのパックの中身を渡すという替わりに譲り受けた槍のようなものを見つめた。
刀ではないため使いこなせるかどうかという懸念はあるが無いよりはマシである。
それにまぁ、刃物と言えば刃物なのだ。時間は掛かるだろうが銃器類よりは断然使いやすいに決まっている。
「さて、そろそろ参りましょうゾロさん。病院で手当てをしてさしあげま…!!」
「?」
ふと装着した眼鏡の端にあるデッパリに触れながら″ケ姫が振り返ると同時にゾロも立ち上がり、互いに向き合う形となった。
途端、沙姫の表情が硬直する。彼女の白いキャンバスのような頬に、じわりじわりと桃色の絵の具が滲んでいった。
「なななななな!!何て格好をしているんですの!!?」
「テメーに言われたくねェ!!」
可聴領域を超えそうなほど甲高い声で喚きだす沙姫の視界に映るのは下着姿のゾロだった。
無論、端から見れば妙な格好をしているのは沙姫の方であるのだが…沙姫がそれに気付くわけもなく。
目のやり場に困り咄嗟に視線を逸らすが既に脳裏にはゾロの鍛え抜かれた肉体が焼きついていて意味が無い。
半裸の男、光のない木陰、人気の無い場所―――この三点セットから連想されるものといえば……。
…白から黒へ黒から白へ白からピンクへと忙しく切り替わっていく沙姫の脳内。
ま、まさか…散々良いことを言っておきながらこの男!いきなり服を脱ぐだなんて…!
さては私の油断を誘い、あんなことやこんなことをするためにあのようなことを!?何て卑劣な男なんですの!
確かに、この尋常ならぬ美貌に目が眩む気持ちもわからなくもありませんが…。
しかも二人きりという状況。こうなってしまって仕方がないかもしれませんわね。
……でも、やはりこの方も理性を保つべきですわ!か弱い乙女を無理矢理襲うだなんてあってはなりません。
それにしても一体私はどうすれば…?あの木乃伊を倒した男に、私が勝てるのかしら…。だったら逃げるしか…。
いいえ、駄目よ、逃げては駄目沙姫!広のために強くならなければ!
>>709 【天条院沙姫@To LOVEる】
【装備】: 兜@家庭教師ヒットマンREBORN! ダイナマイト×10@家庭教師ヒットマンREBORN! スコップ@現実 スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER ライター@現実
【所持品】:支給品一式 不明支給品 0〜2、ゾロ・ヒロシの不明支給品 0〜2
【状態】:健康 変態(ゾロ)への怒り
【思考・行動】
1:この島に変態が居ることを皆に伝えなければ!
2:広のために、自分自身を守り抜く。
3:警察に連絡する、救急車を呼ぶ。
4:屋敷に帰る。
※どうやら偶然触れてしまった眼鏡のメモリがずれて、衣服類が透けて見えるようになってしまったようです。
※ゾロが下着姿になってしまった原因が眼鏡のせいだと気付いていません。
※そのため、ゾロのことを変態だと認識しています。
【スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER】
物が透けて見えるメガネ。メモリで強弱の加減が出来る。
私の分をwikiに保管してくださっている方、いつもいつも申し訳ないです。
>>717 待っています。
>>719さんも感想有難うございます。書く側からすれば、自分のSSでキャラを好きになってもらえるというのはすごく嬉しい、というか有難いです。向上心が湧いてきました。
乙です。
ゾロ哀れ……なんとか助かったと思ったら変態扱いw
L包囲網より先にゾロ包囲網が出来上がるんじゃなかろうかw
今から寝るのでちゃんと感想書けないがひとつだけ・・・
氏は別ロワ住人でもありますね!!!!!!!!!!!!!!!!w
ごめんなさい、感想は明日DO氏の分と一緒に書きます
あうあう……、頑張ったのですが間に合いませんでした……
予約は破棄させてください。本当にごめんなさい。
まずは投下GJ
沙姫が沙姫らしく、ゾロがゾロらしく、キャラの掴み具合が良かった
そして氏にしては珍しいギャグ調
二人のすれ違いっぷりが笑えたw
そういえばハンハンにもめがねあったんですよね。しかし氏、たしかめがねはメガネだったような・・・
とにかく次回が楽しみw
>>726 えっと、延長ってのはできないのでしょうか?
かなり残念なんですが・・・
>>711 乙です!
話自体はギャグ調なのにここで二人が別れると
なんだかそれ自体が死亡フラグ立ってるようで怖い……特に沙姫。
修正しちゃったのか…
別にとらぶるの眼鏡でも問題なかったと思うけどな…
730 :
参加するカモさん:2008/07/25(金) 09:57:54 ID:MyGXgdFH
見る者全てが変態に見えてマーダー化ですか
>>729 だよな
俺もTo LOVEるでいいと思うんだが、p9氏どうだろう・・・
問題ならそれなりに議論が行われるだろうから、もう少し待ってみていいんじゃない?
二日後返事まってます
やっぱりジャンプロワには読み手様が沸く宿命だったか・・・
投下乞食の癖に自分の理想の展開じゃなかったときの文句の言いっぷりだけは一人前だよ・・・
733 :
参加するカモさん:2008/07/25(金) 11:10:52 ID:MyGXgdFH
今日も今日とてマッチポンプ乙です
たまに聞くけどマッチポンプっとどーゆー意味?
マッチポンプとは「ググれば五秒で分かる」というように、検索すればすぐに分かるという意味ではなく、
「マッチで火をつけておきながら、それをポンプで消す」というように、自分でわざわざ問題を作り出しておきながら、
そ知らぬ顔で、自分がそれを解決することで賞賛や利益を得るあくどい自作自演の手法を意味する和製英語である。
真面目な話、今後こんな風に正式にテンプレ作らない?
「修正・破棄要求に関して、書き手さんは問題議論スレで正式に出されたもの以外には応じないことを推奨します。
本スレで出た指摘に関しては明らかな誤字脱字などのもの以外には安易に応じないで下さい。
なお毒吐きはあくまで毒吐きです、書き手さんは見ないことをお勧めします」
すぐに修正依頼に応じてくれる書き手さんは悪くない、むしろすごくいいことなんだが、
問題議論スレに行かずに本スレで修正依頼→即修正って慣習がついてしまうとまずい。
いつか問題作が出たときに本スレが議論で炎上、そこに愉快犯や荒らしが便乗してさらに大炎上っていう
悲惨な事態が起こりかねないんだよね。
なお、これに関する反論や意見は全てしたらばの問題議論スレでよろしく。
山本武、レン・エルシ・ジュエリア、ゆきめ、投下します
全てが凍り付けばいい。
全て雪に閉ざされてしまえ。
私さえも凍らせてしまいたい。
私の心の片隅の、
うるさい声を今すぐ止めたいから。
*****
「時間超越……」
「宇宙人……」
かつて年老い……えー、ピチピチ139歳の医者が支配していた医務室。
そこで遭遇した山本武とレン・エルシ・ジュエリアの2人はとりあえずの情報交換を終えた。
といっても、先刻被ってしまったお互いの質問を順序を決めて質問しあい、お互いに答えたところであり、まだまだ情報交換は不十分であるのだが。
山本はレンから、彼が宇宙人であること、さっきのは幻術ではなくくしゃみによって生じる性別変換であり女性の人格ルンがいること、
この会場に少なくとももう1人、ララという宇宙人がいることを聞き、自分の質問に関しては『少なくとも10年後の年代ではない』という答えを得た。
レンは山本から、彼が時間超越の経験があること、幻術というものが存在する事を聞き、
自分の質問に関しては『山本は宇宙人ではない』という答えを得た。
その結果
「へー。宇宙人なんて本当にいたんだなあ。面白ぇー」
「え、お、面白い……?」
気楽で天然なところがある男、山本武に宇宙人の話などそれほどインパクトはなかったようで、結局『面白い』で済んでしまった。
このあたりはレンのクラスメートたちにも共通する反応ではあるのだが。
「よし!んじゃあいこうか!」
「え?ど、どこに?」
元気よく立ち上がり、扉に向かって歩き出した山本にレンは戸惑って話しかけた。
「どこって……特には決めてないけど」
「は?あ、あの、何をしに……?」
なんだか山本の行動についていけなくなってきた気がしてきたレンに、山本はあっけらかんと笑って答えた。
「そのララちゃんって子を捜しにだけど」
「……え?」
あっさりと。ひどくあっさりと彼は言った。
それは確かに今レンが1番したい行動だった。
誰かに殺される前にララを見つけて守りたい。
でないと大変な事になる。それ以前に、彼女は自分の想い人だ。絶対に死なせたくなんかない。
けれど、怖い。
自分は強いとはいえない。正直言ってララ自身より弱いと思う。他の殺人者に自分が殺される可能性のほうが高いといえる
でも、それでも、男として、ララを守りたい。ララの無事を確認したい。
相反する二つの思い。迷い。ここで篭っていようかという一抹の悪魔の囁き。
それを、山本はあっさりと覆した。
ここを出よう、と。
ここを出て、ララを捜そう、と。しかも
「き、きみも、付いてきてくれるの?」
「ああ。そのつもりだったんだけど。迷惑だったか?」
「え。そ、そんなことはない、けど!」
正直、同行を頼みたくなかったと言えばうそになる。
けれど、レンとてララを助けたいという事に見知らぬ他人を巻き込むのは気が引けた。
だから口に出さなかったのに、彼はそれを自分から言ってしまった。
言われてしまったら……。
「で、でも、きみに迷惑をかけるわけには……」
「うーん。でも、ツナたちはここにいるかわからないしなあ。俺、周りに人がいすぎてあの説明の時よく周りを見れなかったから。
だったら、君の探している人を、一緒に探したほうがいいかなって」
「え……な、なんで…」
なぜだ。
自分と彼は初対面なのに、どうしてそんな事が言えるんだろう。
自分だったら?
彼が知り合いを捜したいって言ったら。仮にララがここにいるかわからなかったら。
行かない。多分この城に篭ると思う。ルンも恐らくそうだろう。むやみに外には出ない
けど、彼は行くという。見知らぬ自分のために、誰がいるからわからない外に出るという。
次の瞬間には襲われるかもしれない場所に行くという。自分のために。
「なんでって、そりゃあ…」
山本が苦笑してそれに答えようとした、その時。
「くだらないわね。人間はこれだから」
突然の第三者の声。それにレンが反応した、その刹那。
轟音と共に木でできた扉に穴が開き、
そこから氷の散弾がレンに飛来した。
*****
sien
sien
人がいる気配にはすぐ気付いた。
全開だった門を入り、城の中に満ちた雪の中でしばし心を休めた。
彼女は雪女。山の雪から生まれ、雪の中で育った、雪でできた存在。
雪が満ちたこの空間は彼女にとって心休まる場所といえる。
心休まる領域(フィールド)であるからこそ、そこにある異質の気配に気づく事ができた。あるいは周りの雪が彼女の妖力を高め、
その結果気配を察する事ができたのかもしれない。
いずれにしても、彼女は扉越しに2人の人間の気配を察知し、その扉の前で様子を伺った。
C・Dエリアを任された以上、ここでぐずぐずする訳にはいかない。ここの雪の中で、自分の妖力をできるだけ高めておきたかった。
雪女は雪や氷の中でこそその本領を発揮する。これからおそらく日も高くなる。気温が上がれば彼女はどんどん不利になる。
だからこそ、今のうちにこの雪に満ちた空間で妖力を高め、蓄える。いくらか雪をデイパックに詰めておくのもいいかもしれない。
解けてしまえばそれまでだが、彼女の極寒の体温に触れさせていれば恐らく大丈夫だろう。雪があるだけでも、彼女にとっては心持異なるものだ。
だが、それには人間は邪魔だ。心置きなく力を高めるには安全な空間が必要だ。そこに紛れ込む人間など、耳元でうるさい蚊のようなものだ。
つまり、潰さなければうざったくて仕方がない。
その上、扉越しに聞こえてきた男の声
『君の探している人を一緒に探したい』
(なによ、それ)
自分ではなく、他人の探し人を捜す?
愚かだ。なんて愚かな自己犠牲の精神だろう。
人間は所詮、自分が可愛い自己中心的な生き物だ。
あの言葉も結局自己満足。自分がヒーローになりたいだけに違いない。他人を優先する俺はヒーローだ。そう言いたいだけだ。
そう、そうだ
―そんなことない―
(違う)
否定する。
記憶の片隅の声を否定する。
それは、自分の声。正確には、『前のゆきめ』の声だった。
彼女は一度消えた存在だ。
ゆきめという雪女は、鵺野鳴介という男に惚れ、彼と恋仲を築き人間社会で暮らした。
けれど、それは彼女の故郷である、山の掟を破るものだった。
雪女は本来男を魅入り、氷付けにするのがその役目。
だが彼女はそれを破り、人間の中で生活しようとしていた。
山の神はそれを許さずに、刺客を送りゆきめを亡き者にした。
だが、そのゆきめを山の神は復活させた。ただし、精神は新しい『ゆきめ』の状態で。
彼女は『前のゆきめ』ではなく、新たに作られた『ゆきめ』。
冷酷な心を持ち、容赦なく人間を凍らせる。
ただし、記憶だけは持っている。『前のゆきめ』の記憶を。
それは果たして山の神でも消し去れなかったのか、それとも彼女の目的の為、残されたのか。
彼女の役目は、鵺野の抹殺。
鵺野を殺す事で、彼女の憂いを完全に絶とうとしたのだ。完全な雪女とするために。
記憶はある。けれど心はそこにない。
だから、彼女は、『今のゆきめ』は客観的に記憶を見る。
鵺野鳴介。教師。鬼の手を持つ。霊能力の威力、技、身体能力。
そう、それで充分。
他の記憶など愚かな記憶だ。人間と共に生活するなどという、哀れな記憶。
だから、特に思い出さなくていい。そう彼女は言い聞かせていた。
その記憶が、時々さっきのように顔をのぞかせる。声と言った形で。
『前のゆきめ』の心はもうないはずなのに。
記憶だけが、彼女の使命の邪魔をする。
(くだらない、くだらない、くだらない!)
必死に否定する。人間を否定する。
見えようとする記憶、鵺野鳴介が、彼女を守る記憶…
(違う、違う、違う!
人間は愚か!人間は低俗!人間など汚らわしい存在!
……いいわ。わからせてあげる。
あの男に、もう1人の男に、そして私の記憶に!
人間が所詮、自分が可愛い生き物だって!)
そして、彼女は扉を氷の弾丸で打ち抜く。
その顔には、邪悪な笑顔が張り付いていた。
*****
「あ、あ……」
「ふふ、馬鹿な男」
「はは、よく言われる、かもな」
そう言って、山本武は笑って見せた。
ただし、その体には血がにじみ、体にはいくつか抉ったような傷がついていた。
そしてそこには、小さな氷が突き刺さっていた。
一瞬の事だった。
彼がそれに気づいた時、その行動は迅速だったといえる。
すぐにレンを突き飛ばし、抜くのを躊躇った無限刃を抜き飛来する氷をいくつか迎撃した。
一閃した剣は、氷の弾丸を見事に打ち落とした。なにせ至近距離の弾丸にも対応できた彼だ。これくらいは造作もない
ただし、それがとっさの事でなく、弾が多くなければ、全てを迎撃できただろう。
結局、いくらかの氷が彼の体に被弾し、最悪にも、持ち手に当たった一弾が彼の手から無限刃を吹き飛ばし、遠くへとやってしまっていた。
「あ、あ…」
突き飛ばされたレンはそのままの姿勢で固まってしまっている。顔は蒼白になり、驚愕と恐怖、そして後悔の顔になっている。
おそらく自分を庇って山本が汚した事に愕然としているのだろう。山本はすぐに声をかけようとしたが、穴だらけの扉を開ける音と女の声がそれを遮った。
「ほーら。自己満足の為に、友達かばってそんな怪我しちゃったじゃない。
本当人間なんて無力。あなたも、そしてそこの君も、ね?」
白い着物、水色の髪。どこか時代錯誤にも思えるいでたちの若い女が、笑みを浮かべて語りかけてきた。彼女が指差す先には、震えるレンの姿。
「ぼ、僕は…」
「でも……今の行動、私感動しちゃった」
ちっとも感動していない女の顔。
間違いなく今の攻撃を放ったのはこの女だ。山本はそう理解した。
武器は持っていない。ということは、彼女は素手でこの氷の弾を撃った事になる。
ということは、今指を向けられているレンは1番危険だ。
助けたいが、剣は弾かれ、体には傷。
迂闊には動けない。そもそも、この氷の一撃はなんなのか。
今度こそ幻術? 本当にそうだろうか、この痛みは。
もし本物だったら。それが山本の脳裏をよぎる。
その時は…
だが、そんな山本の思考を女の声がまたも遮った。
sienn
sien
「そこの君。あなたは見逃してあげる。
とっととここから消えなさい?」
「え……」
レンが呆然とする。『そこの君』とは間違いなくレンのことだろう。
現に、彼女はレンに向けていた指を下ろした。
そして、その指を山本に向ける
「ただし、あなたはダメ。
ほら。早く行きなさいよ。出ないと、あなたから凍らせるわよ?」
女の目がレンを射抜く。冷たい目。本気の目。殺意の目。
レンが震えて、目線を山本にやった。
恐怖。恐怖。恐怖。でも、逃げたくない。それが視線から分かった
(……ごめん、な)
山本は心の中で謝る。自分がこれからすることは、多分彼にとって最悪の行為だ。
彼に罪を背負わせることになる。
でも、山本はこうするしかないと思った。
なぜなら、彼には大切な人がいる。だったら、その為には彼に生きてほしい。
生きて、その人を守らせてあげないと。
だから
せめて、笑って言った。
「レン。逃げろ。俺は、後で追いつくから」
支援
*****
レンは迷っていた。恐怖と共に迷っていた。
山本を見捨てて逃げたくない。それは、人間としての倫理観の問題だ。
けれど、悪魔も囁いている。逃げ出そう。あんな怪我した人間はもう頼りにならない。だったら今逃げて、生き延びるべきだ。
そして、彼が悪魔を後押しした。
「レン。逃げろ。俺は後で追いつくから」
「えっ!?で、でも!そんな怪我じゃ!」
そう言うと、山本は笑顔で答えた。
「大丈夫だって。俺、丈夫だから。足も速いし、あんな奴、すぐ撒いて追いつくさ」
本当だろうか。本当にそうなんだろうか
『本人がそういっているんだ。速く逃げよう』
ただのやせ我慢じゃないのか? 僕を逃がす為に…
『だったらなおさらだろう? 彼のためにもここは逃げるべきじゃないのか』
そんなこと、ない! お前は誰だよ! ルンじゃない、お前は!
わかっている、これは自分の本能の声だ。
恐怖に屈して、保身を考えて逃げ出したい、心の声だ。
それをなんとか理性で阻もうとする。
倫理観で抑えようとする。
でも、また、二つの言葉が重なってしまった。
「ララちゃんを守るんだろ?だったら、早く言ってあげないと」
『ララを守るんだろう? だったら、ここで死ねないじゃないか』
そうだ、僕は、ララちゃんを、守らなきゃ…
でも、山本くんを放って……
で、でも、きっと山本くんは追いついてくれる。
でも、でも…!!
迷うレンの目が、よりにもよってゆきめと視線が合ってしまった。
冷たい、氷のような視線。
圧倒的な恐怖が、レンを支配した。
「なにしてるの? 早く行きなさいよ。撃たないから。
殺すわよ?」
限界だった。
「うわああああああああああ!!」
*****
「ふふふふふふ!!あっははははは!
やっぱりそう!人間なんて所詮そんなもの!」
医務室でゆきめが高らかに笑っている。
目の前には、山本武。
そして、レンは……いなかった。
「どう?ご希望通り見捨てられた気分は。今あなたはどう思ってるのかしら。彼を助けられて俺は満足だ。俺は凄いんだ。俺はヒーローなんだ。そんなところでしょ?
ハッ! あんたはとんだ偽善者よ。自己犠牲で自己満足する愚かな男! それで結局、死んでいれば世話ないわ!
あんな嘘ついて、あんたは死ぬ。わかった?素直に認めなさい」
山本は答えない。顔をすこし俯かせていて、表情がうかがい知れない。
見なくても分かる。おそらく後悔と死への恐怖に顔が歪んでいるに違いない。
いざ、自分の命が危険になれば、人間などそんな偽善を纏っていられるはずがない。
偽善の仮面は脆くも剥がれ、本性がきっと現れる。
命乞い? やけになる? 狂う? レンを追いかけて逃げる?
ゆきめはどれでも構わない。
どれにしたって、彼女にとっては愉悦となる。彼女は冷酷な雪女なのだから。
どれにしても、この男を氷付けにして、すぐにレンを追う。そしてレンを絶望の中氷にして殺し、その哀れな生首をこいつに見せてから殺す。なんていう喜劇の結末だろう。自分の英雄精神は無駄だと、わからせてから殺してやる。
そして、彼女の期待は裏切られる。
「あんた、何言ってるんだ?」
支援
「え……」
ゆきめはあっけに取られた。
なぜなら、顔を挙げこちらに顔を向けた山本の顔に浮かんだのは、絶望でも、恐怖でもなく、不敵な笑みだったからだ。
「俺はあんたを撒いてレンくんを追いかけるよ。嘘なんてついてない」
「なんですって?その怪我でよく言えたものね!」
ゆきめが再び氷弾を山本に放つ。胴に刺さった氷はいくらかある。動けるはずが…
「な!?」
ゆきめは驚愕した。押し寄せる氷の弾を山本は横に素早く交わしたのだ。
口で言えば簡単だが、山本は怪我をしている。それでいて、氷の弾を見極め、床を蹴りかわした。驚くべきは、その脚力と反射神経。
「野球でならしてたんでね。それくらいじゃ、俺は負けない」
「……だったら、なんですぐ逃げないの? あんたのその足なら、全力で行けば逃げられるでしょう?」
ゆきめは素直にそう質問してしまっていた。後から思う。なぜそんなことをしたのか。人間を凍らせる自分に、そんな質問は無意味なのに。
する意味が、ないはずなのに。
後悔した時には遅く、山本は答えを口にしていた。
「だって、あんたをこのままにしたらレンくんを追いかけるだろ? だから、あんたをここで倒していく」
山本が身構えた。武器はない。けれど、その目つきは真剣そのもの。
怪我も負っている。なぜ、そんなことができる。
「なによ…まだ自己犠牲精神? また他人への奉仕! いい加減にしなさい! あんたも本音を言いなさいよ!
死にたくないでしょ!? 生きたいでしょ! なら、あんな臆病者、さっさと見捨てなさいよ! あんたが命を賭けて守る価値がないじゃない」
ゆきめは自分の言っている事に戸惑っていた。
自分は熱くなっている。なぜ?
いつのまにか山本を心配するような言葉になっていないか。違う!
違う違う違う!私は人間の愚かさを証明したいだけ。あの馬鹿な男を嘲り笑いたいだけ!あの偽善者の本性を見たいだけ!
そして、山本は堂々と答える。
本当の理由を。
「けど、あいつには大切な人がいる。本当に大切なんだ、って。話しててわかった。
俺で言えば、きっとツナたちのような人なんだと思う。
だったら、俺だってあいつらに会いたいと思うし。生きたいと思う。
万が一俺があんたに手間取ったら、あいつここに足止めしちゃうからさ。
だから、あいつ気にするだろうけど、先に行かせた。
あいつ罪悪感あると思うけど、行かせたんだ。
それに、さっきも言ったけど、そもそも俺はあんたに負ける気―」
「うるさい黙れ!!この偽善者!!」
山本の言葉の終わりを待たず、怒りに満ちたゆきめの叫びが響き渡り、
氷の弾が山本に向かって放たれた。
*****
ざっ、ざっ、と雪をふんで走る。
はやく、はやく、逃げないと。
レンは必死に入り口の門を目指す。
(そうだ、僕はララちゃんを守らなきゃ。
守って、宇宙の破壊を防がなくちゃ。
そ、そうだよ。仕方ないんだ。
山本くんもきっと後できてくれる。
そう、そう。
そう、さ……)
だが、その足がだんだんと遅くなっていく。
行かなきゃ、いけないのに。
(いいのか?本当にこれでいいのか?僕…)
ララを守りたい。死にたくない。山本が行けと言った。
この3つの理由でここまで無我夢中で逃げてきた。
でも、だんだんとこみ上げてくる思い。
自分は、取り返しのつかない事をしているんじゃないかと。
あいつはどうしただろう、とふと思った。
結城リト。ララを誑かした、レンにとっての好敵手。
けれど、ララを惚れさせた男ではある。
そして、ここぞという時に強さを見せる『男』であることは、彼も認めている。
支援
『男』。
レンは『男』にこだわっている。
理由は、いわずもがな自分の体質のことだ。ルンという人格の性で女性と扱われることもあり、幼少の頃はララにその影響で女の子の服を着せられたほどだ。
レンはそれが嫌で、『男』にこだわった。『男らしい』という事にこだわった。
もっとも、それはリトより足が速いとか、リトよりものを食べるのが速い、とかそういうすこしズレたことの話だったのだが。
「僕、は……」
今までは。
*****
「くっ!」
「やっと捕まえたわ」
ゆきめの吹雪が山本の足を捉え、右足を氷の枷で床にくっつけていた。
今まで、氷の弾を避け続けてきた山本だったが、突然の攻撃の切り替えに対応ができなかった。
弾よりも速くて避けにくい、ダメージよりも相手の拘束を重視した冷気の風。
「なるほど。今までの攻撃は俺に馴れさせる為に……」
「そういうこと。今気づいたって遅いわ」
ゆきめは、氷の槍を準備する。
あの程度の拘束、あの男の脚力なら抜け出せない事もないだろうが、それでも動きは確実に鈍る。そこは絶好の攻撃チャンスだ。
「じゃあ、ね!」
「っ!」
山本が苦しそうに顔をゆがめた、その時だった。
「ま、まて!!」
「……なによ、あんた。見逃してあげたのに、戻ってきたの?
しかも何?それ」
ゆきめが侮蔑で満ちた視線で医務室の入り口の方を見やる。
そこには、やはり体を震わせたレンが立っていた。ただし、どこから持ってきたのか消火器を抱え、その噴射口をゆきめに向けている。
「や、山本くんから離れろ!」
震えて言うレンに、ゆきめは呆れながら言う。もちろん、腕は山本に向けて離したりはしない。
「あのねえ。それ、知ってるわよ?消火器でしょ?粉を撒き散らす人間の道具。
でも。それって不意打ちでやらないと、意味ないでしょ。そんなあからさまに向けられてるんじゃ、意味なんてないわよ。
そもそも、なんであなた戻ってきたの?あなた、馬鹿?」
レンを嘲りながら語るゆきめ。消火器の粉は確かに相手を惑わせるのに効果的だ。だが、それは奇襲したときの話であり、それにゆきめは普通の人間ではない。
来るとわかっていれば、放った吹雪で粉を相手に押し戻すことだってできる。
つまり、レンがあんな消火器を見せ付けている時点で、レンは完全に攻撃に失敗している。なんて愚かだ。
その愚か者は、顔に恐怖を浮かべながらも、なんとか声を振り絞る。
「ぼ、僕は! 『男らしく』してなきゃ、いけないんだ!
で、でないと、ララちゃんが僕に振り向いてくれない!
いや、ララちゃんにふさわしい、『男』になれないんだ!」
「はぁ?」
ゆきめが口を開けた状態になる。
どうも相手のいうことは支離滅裂だ。ついに恐怖が頭までいったのか。
―ふさわしい、女に―
塩園
(!?)
何かが、記憶に引っかかった。
そのせいで、彼の言うことに耳を背ける事ができない。
「山本くんは、『男らしかった』!
だ、だから、僕も、ここで頑張らなきゃ……頑張らなきゃ……。
逃げ出したりするような、軟弱な『男』じゃ…。
『男』になれない……そう、思う……。
そう、思うんだーーーーーーー!!」
そう叫んで、レンは消火器の噴射口をこちらに向けながら突進してきた。
やぶれかぶれのヤケクソ。
『男らしい』という概念に最後まで翻弄された、馬鹿な男。
それで、人生を棒に振る。
「ふふふ!馬鹿な男!いいわ!そのヒーロー気取りな馬鹿なこだわりと一緒に、凍って死になさい!」
ゆきめは腕から冷気の風を放つ。
ただし、威力は押さえ、消火器の粉を相手に吹き飛ばせる程度にする。
さっきまですこし妖力を使いすぎた。ここで回復する予定とはいえ、万一の連戦がないとも限らない。
これから先は長いのだ。こんなくだらない雑魚に余計に力を使う必要はない。
そう考え、ゆきめはレンに向かって冷気の風を放ち、同時にレンがレバーを強く握った。
レンの行為はあまりに無謀だった。彼も、やけくそのパニック状態で、消火器の粉を出して混乱させる、しかもう頭の中になかった。
ゆきめの対応はあまりに的確だった。冷静に思考し、最小限の力でレンを無力化し、山本共々葬り去る事ができた。
もし、その消火器が、本当に『消火器』だったなら。
「キャアアアアアアアアアアアア!!!」
*****
山本は全てを見ていた。
ゆきめの手から小さな吹雪のようなものが出て、そしてレンの消火器から……炎が噴出された。
そう、紛れもない炎だ。消火用の粉ではない。
それが、吹雪と拮抗したのは一瞬だった。レンが止まらずに突進した為、炎が拮抗を押し切り、ゆきめの突き出された腕に襲い掛かった。
「キャアアアアアアアアアアア!!!」
炎を至近距離まで近づかれたゆきめの腕が、溶けた。
氷が解けるように、溶けた。
雪女。ここで山本は、やっと彼女がそうなのかと理解した。
そして同時に、今がチャンスだと。
凍っていない方の足で、足の枷を踏み砕き、地をかける。
ゆきめの方は、消火器を振り回すのに夢中なレンが牽制していて、こっちにはまるで注意が来ていない。
山本の目当ては、無限刃。
それを拾い上げると、すぐにゆきめの方に方向転換し、走る。
見れば、ゆきめがもう片方の腕でレンに氷弾を撃ち、レンを引き離していた。
「うわっ!」
「よくも……よくもやってくれたわね!」
怒りに満ちたゆきめの顔。溶けた腕からは未だに水が滴り落ちている。
やはり、彼女は炎が弱点。炎にやられれば、早々に回復はできない。
山本は、覚悟を決めて、無限刃を抜いた。
抜きたくはなかった。人を殺め、それによりその力を持つこの刃だけは。
だが、このままではレンがやられる。
『できれば抜きたくはない』、それが最初に決めた事。
なら、今が『抜かなければならない時』だ。
無限刃を構え、走ってくる山本にゆきめが気付いた。
「剣を持ったからって!」
ゆきめが氷の弾を放つ。
その寸前、山本は、横の壁に無限刃をぶつける。
鋸型の刃が壁に当たり、摩擦で火花が散る。
そして、無限刃が燃え上がった。
無限刃。新井赤空作最終型殺人奇剣。
人を切り続ければ刃がこぼれる。ならば、あらかじめ刃をこぼしてのこぎり状にすることで殺傷力を一定に保つことを可能にした、
人を切り続ける為の剣。
だが、無限刃には後天的なもう一つの能力がある。
発火能力。この剣の持ち主、志々雄が多くの人間を切り続けた結果、その脂が刀身に染み込み、その結果、
刀身を摩擦熱や火薬で燃え上がらせる事ができるようになった。
人を切り続け、その結果得意な能力を得た呪われた剣。だからこそ、山本はこの刀を使いたくはなかったのだ。
「なっ!」
燃え上がった刃に、氷の弾はあっという間に無力化された。
山本が正確に氷の弾を打ち落とし、欠片すら残らなかった。
動揺したゆきめの懐に、山本がその脚力で一気に飛び込む!
支援
−時雨蒼燕流 八の型 篠突く雨−
かつて、山本の父が友を助ける為に編み出した技。
それに、すこし似た状況で
炎の刃が、ゆきめの体を切り裂いた。
*****
「ここまで来れば大丈夫、か?」
「た、多分」
レンと山本はドラム城の外まで逃げ延びていた。
ゆきめを切り裂いた後、山本はレンを連れて医務室から逃げ、城の門を潜り外まで出た。
レンは幸いにも消火器(もはや『放火器』と呼んだほうがいいかもしれない)で氷の弾を防いでいて、
軽く腹に痛みがある程度で済んでいた。
sien
支援
「レン」
「え?」
山本に声をかけられ、レンが振り向く。
すると、山本は満面の笑顔を浮かべた。
「ありがとな。……助けようと思ったら、助けられちまった」
「い、いや……山本君が庇ってくれたから、僕は……。
って、山本君、怪我治さないと!」
「え?大丈夫だってこれくらい」
「いやいや!血が滲んでるし!どこかで治療しないと!」
そう言ってレンは辺りを見回す。
ララを捜したい。
けれど、今はまず山本の怪我を治したい。
彼がいたからこそ、自分はここにいる。
それに、ここで彼を見捨てるのはやっぱり『男らしくない』。
自分は彼を見捨てて逃げ出した。その償いをしなくちゃいけない。
でないと、ララにふさわしい『男』にはなれない。
レンはそう思った。
【Dー4 ドラム城外・住宅地外れ /一日目 黎明】
【レン・エルシ・ジュエリア@To LOVEる】
【装備】:消火器型火炎放射器@魔人探偵脳噛ネウロ
【所持品】:支給品一式 支給品0〜2(未確認)
【状態】:健康、彩南高校女子制服姿。 男へのこだわり
【思考・行動】
1:山本の怪我をどこかで治す
2:絶対にララを見つけて守り抜く。
3:ララをゲームから救出する。
4:……どうにかして服を手に入れたい。
5:このゲームは戦争を引き起こすのが、狙い?
※山本とある程度の情報交換を行いました。
【ルン・エルシ・ジュエリア@To LOVEる】
【思考・行動】
1:???
【山本武@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備】:無限刃@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式 支給品0〜2(確認済み・刀剣類はない様子)
【状態】:胴体にいくらか怪我
【思考・行動】
1:レンと一緒にララを捜す。
2:ゲームに乗って人を殺す気はない。
3:無限刃はここぞという時にしか使わない。
4:時雨金時があれば。
5:主催者の打破。
6:宇宙人か、面白えー
※レンとある程度の情報交換を行いました。
*****
「ううっ……くうっ」
雪に満ちたドラム城内。
その中を、両腕、右足を失い、体の大部分を水に溶けてしまっているゆきめが這って進んでいた。
あの一撃。本当ならばゆきめは死んでいた。
だが、あの男が直前に刃の軌道を変え、彼女の解けてない腕と足を切り裂き、そのまま逃走した。
もっとも、炎に包まれた刃を受ければ腕に受けたとはいえ、雪女の彼女にとっては致命傷になってもおかしくはない。
彼女にとっての幸運は、ここが雪に満ちた場所であり、そこで休めばなんとか体の再構成ができるということだった。
もっとも、それにはかなり時間が掛かってしまうが。
それはまずい。
なにしろ、アーロン、和泉との盟約がある。
自分はC・Dエリアを任されている。24時間以内にこの辺りの人物を殺さなければならない。
だが、ここからしばらくは動けない。動けるようになっても、日が高くなった後では……。
支援
sien
(待って。なにも私が行く必要はないわ)
彼女の支給品。あれを使えば、城からこの辺りの人物をここに引き寄せる事ができる。
ここは彼女にとって最高の空間。最高の狩場だ。
なら、そこに相手から来てもらえばいい。
回復さえすれば、ここの雪を元にこの城を凍らせ彼女の完全な支配下にし、入ってきた相手を氷のトラップなりなんなりで歓迎できる。
そうすれば、回復に使った時間分のロスはきっと取り戻せる。なにせ自分は雪女。雪の中でこそその実力を発揮できる。さっきは相手を侮りすぎた。
次からは、全力でしとめなければならない。
ただ、ここに殺人者来られては自分は格好の的だ。もちろん協力を仰ぎ、結託するのもありだが、自分のこの状態ではやられる可能性のほうが高い。
だから、できるだけ上にいかなければならない。見つかりにくい、それでいて雪に囲まれた場所で回復をしなければいけない。
−俺が守る−
一瞬、さっきの少年2人の姿が、また記憶に掠ったのをゆきめは無視し、残った腕で雪に包まれた中を這っていった。
彼女のデイパックから、幅広の口を持った、支給品が覗いていた。
【D-4 北西・ドラム城 一階 / 一日目 黎明】
【ゆきめ@地獄先生ぬ〜べ〜】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 拡声器@現実 未確認(0〜2)
【状態】:両腕、右足欠損 体の一部が半解 人間に対する激しい嫌悪
【思考・行動】
1:雪の中で回復、その後城を支配し、拡声器で参加者を呼び、罠にかける。
2:『前のゆきめ』の全否定。
3:アーロン・和泉に嫌悪感。
4:アーロンの案に乗る。
5:他の参加者を殺す
※ 参戦時期は110話以降、ゆきめ復活直後。
二日目の深夜にD-4でアーロン・和泉と合流する約束をしました。
※ 『前のゆきめ』の記憶を持っています。ただしその精神、人格はありません。
投下終了です。
多数の支援ありがとうございました。
いくつか未見の技など描写に不安なところもあるので、その辺りの指摘はぜひ欲しいところです。
投下乙です
消火型火炎放射器とは、また物騒なものをw
てか山本強いな
ただの中学生だと思ってただけに意外だ
そしてゆきめの支給品は拡声器か
瀕死の状態で拡声器使うとか、自殺行為だなw
ゆきめ死んだと思ったら生きていて、でも拡声器の死亡フラグw
山本とレンはよく知らないけど窮地を協力して脱したんだから良いコンビなんだろう
技についても詳しくないので言及は避けます
ただ一点気になるのが、句読点の有無かな
もう4作目になるんだからいい加減句読点を付ける事を覚えて欲しい
私的な意見だけど、「、」や「。」を打てないと、それだけで文章の価値を下げたように見える
普段のレスなら気にも留めないが、読み物として人に読ますならこのくらいの基本は抑えてもらいたい
でもGJ!
投下GJ
氏のバトル描写が好きなんでまた読めて嬉しい
山本つえーかっけー
ゆきめ好きとしては複雑だがw
ここで拡声器きたかw
このロワには出ないかと思ってたから楽しみ
拡声器フラグを破れるのかGJでした
GJ
トラブルはよく知らないんだけど、
レンが意外にも成長の見込みがあるキャラでびっくりした。
そして拡声器はいずれ出るだろうと思ってたけどついにきたか……
ゆきめはある意味絶対的な死亡フラグを跳ね返せるのかw
投下乙
レンルンって意識共有してるんだっけ?
ゆきめは災難だったというしかないなw
よりによって山本の支給品……w
投下します
ヒトを、他の動物と区別する要素はいくつか存在する。
それは手や脳、足の発達だったり、道具……とりわけ火を自由に扱えることだったり、言葉を話すことだったり、死者の埋葬というヒト特有の風習を生み出したことだったり。
――だがその中に、それが服を着用しているかどうかという区別法は、実は存在しない。
たしかに動物は自分から服を着たりすることはないだろう。
しかし、たまに街頭で飼い主によって服を身につけさせられたイヌや、サーカスでパツンパツンのシャツを着たクマなどを見かけたりすることはあるはずだ。
このような例からして、極論ではあるが動物が服を着ていてもおかしくはないということがわかる。
そしてそれを逆に言えば、服を着ていないヒトがいたとしても、これまたおかしくはないということだ。
(……だからって納得できるはずもねえんだがな)
ようやく気絶から目を覚ました海坊主こと伊集院隼人は、目の前で依然として全裸のままの――いや盲目である彼には決して見えることはないのだが――少女の存在に頭を抱えた。
これでも心配してくれているのか、じっとこちらの顔を覗き込んでいるようだ……全裸で。
ヒトが服を着るようになったのは、聖書によれば人類最初の男女が禁忌とされる果物、リンゴを食べたことがきっかけになったそうだが、そんなものを馬鹿正直に信じるほど彼は敬虔なクリスチャンというわけではない。
だがもし仮にそうだとしたら、この少女はきっとリンゴを食べ忘れた第二の女の股から生まれてきたに違いない。
なんだかんだでアダムも男だ。あの種馬野郎よろしく浮気の一つや二つしていたっておかしくはない。
――ここは北東の住宅地にある、とある一軒家。
出会い頭にいきなりこの少女に気絶させられて、やっと気がついた時には海坊主は備え付けのベッドの上……といっても敷き布団などといったものは一切ないのだが……で天井を見つめていた。
どうやら彼女がここまで運んできてくれたらしいが、非常に体格に差があるにも関わらず自分を軽々と振り回してみせたことと併せても、とんでもない怪力を有していることがわかる。
人は見かけによらないというが、こんなろくに筋肉のない華奢な腕であの力はどう考えても常識外だ。
――まあ元の知り合いにも100 t ハンマーを振り回す女がいるのだが、それは例外としておこう。
支援
しかも全裸ときた。コミュニケーションを図ることもあって、目覚めた時に開口一番「いいかげん服を着ろ」と言ってみたところ、「だってどこにも服がないんだもん」と切り返されてしまった。
聞くところによると、彼女は彼女でいつまでも裸じゃまずいだろうと思ったらしく、この家のクローゼットなどを隅々まで調べてみたのだが、中身は全て空。
服はおろか下着すら入っていなかったという。
そりゃあ、こんな殺し合いの場に人が住んでいるわけないよなと海坊主はズキズキと痛む頭で納得する。
きっとここだけでなく、他の全ての家屋でも同じことだろう。
このような住宅街があることからも、恐らくこの島は元々人が住んでいたのをあのワポルとかいう頭の悪そうな声をした奴が買収したものだ。
当然、元からの住人はみんな強制的に立ち退いたか……もしくは人知れず闇に葬られたか。
単に殺し合いをさせたいだけならこんなところよりもどこぞの無人島でも買い取ったほうがはるかにコストも掛からなくて済むだろうに、
わざわざ住人を排除してまでここを選んだということは……推測だが、何かに利用しようと思ってまずこの島を買い取り、そしてあとからここを使って殺し合いを開こうと考えたのかもしれない。
要するになんでもよかったのだ。それがたとえ殺し合いでなかったとしても。
目的は、単純に娯楽か。
この中で誰が生き残るか、裏社会の連中を集めて賭けでもしている可能性もある。実に、胸糞悪い。
……それはともかくとして、いつまでもこの少女を裸でいさせるわけにはいかないだろう。
いくら彼女自身が微塵も羞恥を感じていなくとも、自分が決してその裸体を見ることがなくても。
もっとも最初から小娘の裸なんぞに興味はないが。
支援
「ほら、これでも着てろ」
仕方なく、海坊主は自分の着ていたジャケットを彼女に手渡す。
平均的な成人男性のものよりもはるかに巨大なため、サイズが合わずにぶかぶかになるだろうが、むしろこの場合はそれが功を奏したといえる。
おかげで上半身は完全にすっぽりと包まれ、きわどいところでなんとか下半身も隠れてくれた。
同年代の女の子としてはきれいな二本の足が、大きなジャケットから伸びている。
これならなんとか、外を出歩いてもいきなり警察に通報されたりなんてこともないだろう……この島にそんなものがいるとはとても思えないが。
「おじさん、ありがとっ」
……正直、ある程度年をとった男特有の加齢臭がして嫌がるのではないかと思っていたのだが、彼女は無邪気に礼を言ってくる。
こんなお世辞にも人相がいいとは言えないサングラスをかけたオッサンに対して、まったく物怖じしていない。大した度胸だ。
まったく似ても似つかないが、なんとなく海坊主は、昔自分が育てていた一人の娘を思い出した。
だからというわけでもないが、こんな娘でも風邪なんかひかれたら困るというものだ……意外と熱が出たらおとなしくなってくれるのかもしれないが。
「さて、まずは状況確認といこうか」
布団がないために固くて座り心地の悪いベッドの上に座ると、海坊主はぶかぶかのジャケットを着込んで何故か楽しそうに笑っている少女に向き直った。
「俺は伊集院隼人というんだが……ファルコンだの海坊主だの、色んなあだ名みたいなもんがある。まあそこらへんは適当に呼んでくれりゃいい。
あとは……少し訳ありでな。俺の目は、一切ものを見ることができねえ」
最後だけ、少し口ごもる。
正直なところ、海坊主は自分のこの目について他人に語るのはあまり好きではない。
別にそのことで哀れみを覚えられるのが嫌だとかそんな大した理由じゃない。
単純に、いちいちそれで相手が言葉に詰まったり謝ったりしてくるのが鬱陶しいからだ。
この娘もまた、他の多くの人間がするような反応を返してくるかとうんざりしていたのだが……
「へえー、変わってるんだね」
少女はそう口にしただけで、特に他の感想を持った様子はなかった。
ほお……、と海坊主は少し感心する。
目が見えないという事柄を、彼女は単なる身体的特徴としてしかみなしていない。
この手の障害を差別するな、などと声高に主張する連中は世間にたくさんいるが、実際それは内心で差別していることの裏返しだ。
この娘のように、天然でそういう反応をする奴は珍しい。
――その時、こちらの自己紹介が済んだと判断したらしい。今度は向こうが口を開いてきた。
「私はララっていうの。ララ・サタリン・デビルーク」
外人か。
それにしてはやけに日本語が流暢だが、別におかしいわけじゃない……昨今ではそのような外人も段々と増えてきている。
とりあえず名前だけ聞けば十分とばかりに、海坊主は話を次に進める。
支援
「嬢ちゃんの名前がララってことはわかった。
それじゃあ、一体どういう経緯でこんなところにやってきた? 裸ってことは風呂にでも入ってる最中に攫われてきたのか?
リトに春菜っつったか……この島に知り合いがいるようだが、他には誰かいないのか?
その怪力は一体何なんだ? 嬢ちゃんに配られた支給品は? 俺をここに運んでくるまでに何か気づいたことは?」
「日曜日だからリト達と遊ぼっかなーって部屋の中をうろうろしてたら、いつの間にか連れてこられてたよ。
私が裸なのは、ペケがいないから。あの子が私の服を構成してくれてるから、いないとこうなっちゃうの。
最初の部屋でリトと春菜を見つけることはできたからあの二人がいることは確かなんだけど、他の人はよくわからないなあ。
この力は、私がデビルーク星の人間だからだよ。あと、私に配られた荷物はなんだかすっごいカードが三枚と、それとね……」
「ちょっと待った」
大量の質問攻めにも、ララは少しも怯むことなくなんなく回答してみせた。
予想以上に彼女の頭の回転が早いことに驚きを感じつつもじっと黙って聞いていた海坊主。
彼女の返事でよくわからないところは、こんな小さな少女の言うことだ、ある程度は勝手に脳内で解釈することでスルーしておいてやろう。
ペケというのは恐らく、ファッションコーディネーターか何かのあだ名だろう。
ララはいつもそのペケとかいう奴に服装を見繕ってもらっているから、そいつがいないと何を着ればいいのかわからなくなるために現在こうして裸であると。
かなり苦しいが、そう考えればまだ理解できないこともない。
――だが、どうしても聞き捨てならない単語が先ほど耳に入ってきた。
「……デビルーク星ってのは、一体何のことだ?」
「デビルーク星はデビルーク星だよ? 私、そこのお姫様なんだけどちょっと今はそこを出ちゃってて」
「…………」
認識を改める必要があるかもしれない。
この娘は頭の回転が早く、怪力で――そして、相当の妄想癖であると。
顔を拝むことはできないが恐らく15,6歳ほどだと思う。
その年にもなって自分が異星人で、しかもお姫様であるなどと堂々と吹聴するとは、いよいよ世も末といったところか。
――これでもし海坊主がララのお尻の方から立派に生えている尻尾を見ていれば、嫌でも彼女の話を信じざるを得なかったのかもしれない。
だが残念なことに彼は盲目だ。
これでもそのハンデを乗り越えるために視覚以外の五感は鍛え上げてきたが、まさか人から尻尾が生えているとは思わない上に今は目覚めたばかりでそれらが少々鈍っている。
したがって、彼がララのことを少し頭のおかしな少女としか認識できないのも無理ないことだといえる。
彼の……というより一般的な人間の共通見解として、宇宙人など存在しないのだから。
対するララの方はというと、突然黙り込んでため息をついている海坊主を不思議そうな顔でキョトンと見ているだけである。
「私の話、再開しちゃってもいいの?」
「……ああ、いいぞ。支給品のところからだったな」
半ば諦観を覚えながら、海坊主は先を促した。
ここで無理に彼女に向かって妄想と現実の区別をつけろと言ったところで詮無いことだ。
怪力のことはひとまず置いておいて、今は話を聞いたほうがいい。
「それでね、私のは三枚のカードと……あ、あれ?」
「どうした?」
突然自分のデイパックをゴソゴソと漁り出したララを不審そうな目で見つめる。
どうやら何か不測の事態が起こったらしい、相当焦った様子だ。
デイパックを逆さに引っくり返したようで、中のものが一気に床に散乱した音が聞こえた。
その音から察するに、どうやら刃物や銃といった類のものは彼女の支給品にはないらしい。
支援
「あれ? あれ? あのカードが二枚しかないよぉ」
「……多分、ここにくるまでに落としたんだろうよ。
まあたかだかカードの一枚や二枚、なくしたって問題はねえだろ」
「うーん……残念。あれ、すっごい便利なのに」
そのカードが何なのかは知らないが、この殺し合いという場においてはそんなに大したものでもないだろう。
それをこんなにも残念がっているのは、よほど高価な価値のあるものなのか……もしくは単純に、年相応に自分の持ち物をなくしたという事実そのものが悔しいのか。
どちらにせよ、海坊主にとっては大した問題ではなかった。
「まあ、カードのことは置いといてだ……他に何か、使えそうなものはあるか?」
「あとは、この黒いノートだけだね。ええと、これは……デスノートって読むのかな」
「デスノートだあ?」
突如として現れた珍奇な代物に、海坊主はガクンと肩を落とした。
期待はしていなかったが、本当にろくな物がない。
武器とは言わないがせめて何かしら有効利用できそうなものは与えられていないのだろうか。
最初、自分の支給品を確認する際に変わった刀のほかに食料と水、コンパスにそして感触や大きさからして恐らく地図と思われる紙を見つけた。
自分一人ではその地図すら見ることができないが、こうしてララがいる以上はその代わりを果たしてくれる。
だからこそ、あとはたとえばこの島にいる参加者の名簿などといったものがあれば随分とやりやすくなったものなのだが。
……いや、このデスノートとやらを使えないものと決め付けるのは尚早だ。
そもそもこの殺し合いが今回初めて開催されたものだとは限らない。
前も、その前も同じように行われていたと仮定するならば、過去に死んでいった人間の名前でも載っているのかもしれない。
その中に著名な政治家や失踪した人間の名前が入っていれば、そこから何かのヒントに繋がる可能性だってある。
半ば無理矢理自分に言い聞かせるように身を乗り出すが、次にララの口から出た言葉はそんな希望を打ち砕くには十分なものだった。
支援
「うーんと、『デスノートに名前を書かれた人間は死ぬ』……だって。うっわー、怖いねこれ。
しかもたーっくさん書かれてあるよ人の名前。誰が作ったんだろこんなもの」
「…………。……そうか」
その言葉を聞いて、この島に来て……いやこの少女と出会って何度目になるかもわからないが、海坊主は頭を抱える。
なんてことはない。ただの閻魔帳だった。
その元の持ち主は自分で勝手にそんな設定を作り上げておいて、知り合いの人間の名前を書き連ねて一人喜んでいたのだろう。
なんとまあ、寂しい青春だ。
近年そういった行為をする少年が増えているとはニュースで聞いているものの、実際目の当たりにしてみると怒りを通り越して呆れてしまう。
青少年の心の闇とか歪んだ社会が生み出した影響とか色々と言われているが、海坊主からしてみればそんなもの、自分自身で行動を起こす決断を下せないだけの、ただの臆病者の逃避でしかない。
言いたいことがあるならその口で言え。腹が立ったのなら自分の手で殴れ。
そうすることが難しくなるのは、もう少し大人になってからで十分だ。
ララは興味深そうに読みふけっているらしい。パラパラとページを捲る音が聞こえてくる。
……この娘はそういったものとは無縁そうだな。
ふと、海坊主はそう思った。
この無邪気な少女に関して言えば、思いついたことはなんでも口に出すだろうし、腹が立ったら素直にその感情を発露するだろう。
そう考えると、ララは幾分『マシ』な娘であるかもしれない。
とりあえずこのままその閻魔帳を読ませ続けるのはなんとなく教育上悪いのではないかという気がして、彼女の手からデスノートを取り上げる。
「あー」という不満そうな声があがったが、今度は別に怪力を揮うことはなく大人しく従ってくれた。
……もしまたやられそうになったら今度は全力で応対する気だったが、まあ良しとしておこう。
sien
「で、だ。嬢ちゃん」
「さっきから気になってたけど、私嬢ちゃんじゃないよ? ララっていうんだから」
どうやらそこだけは譲る気がないらしく、強い意志を持ったはっきりとした口調だった。
「…………」
まったく、これだから子供というのは扱いづらい。先の言葉を翻して海坊主は再度ため息をつく。
このように何をきっかけでヘソを曲げるかわからず、しかも一度曲げたらこちらが折れるまでしつこく拒絶の意を示し続けるときたもんだ。
普段あまり子供と関わらない海坊主にとっては、たしかにララは宇宙人だといえる……自分にとってまったく未知の存在、という意味で。
「……ララ、さっきの質問に戻るぞ。俺が気絶してる間、何か気づいたことは?」
呼び名を変えた瞬間、パッとララの表情が明るくなったのが目いっぱい感じられた。
これだけ喜怒哀楽を素直に表現するような娘は、むしろ昨今では珍しいのではなかろうか。
「うんっ! それでね、おじさんをここに連れてきてたら、途中でマリって女の子がいたんだ」
「……ああ?」
明るく告げてくるその言葉に、海坊主は片眉をあげた。
さっきからララが何か言うたびに留めている気がするが、それも仕方ない。
何かしらの情報を少しは期待していたが、まさかいきなり直球がくるとは思っていなかった。
ララはそんなこちらの思考を知ってか知らずか、ニコニコと笑いながら続けてくる。
「その娘、突然襲い掛かってきたからこのカードで……っていってももう無くしちゃったんだけど、それを使ってみたらあっという間にパヒューンってどっかに飛んでっちゃった」
「いや、いやいや待て嬢ちゃ……ララ。頼むからもう少し詳しく教えてくれ」
ララのその説明により、一気に話が胡散臭くなる。
マリという娘と遭遇して、襲われて、そこまではいいとしてカードを使ったらどこかへ飛んでいった?
何度その様子を頭の中でシミュレートしても、どうしても最後のところで途切れてしまう。
この手の子供によくありがちな誇張表現が入っていることを加味しても、まったく意味がわからない。
「だーかーらー、私に配られた三枚のカードの一つが左遷(レルゲイト)っていって、それをマリに使ったらどこかに飛んでいっちゃったの。
その行き先は私にもわからないんだけど、とにかくそういう効果のあるカードが――」
……有り得ない。
海坊主はただ、そう断ずる。
ララが重度の妄想癖であることは承知していたが、ここにきてそんなどこかのファンタジー漫画のような話をされるとこちらが対処に困る。
幻想に惑わされずに現実をしっかりと見据えなければ、命というものは実にあっけなく失われる。
これまでの数多の経験から、それだけはしっかりと海坊主は学んできたつもりだ。
だからこそ、ここはどうしてもはっきりさせなければならないところだというのに。
戦場において、現実と妄想を混同して……要するに狂っていった連中なら山のように見てきた。
そいつらに共通して言えるのは、妄想は妄想でもあまりにとりとめがなく、辻褄がまったく合わない……それこそ夜に見る夢のような話ばかりだということだ。
しかも他人の目から見てはともかく、自分の中ではしっかりと整合性がつけられているためにタチが悪い。
まさに今のララのような状態だ。
あまり考えたくないが、もしかしてこの娘は元来の妄想癖というわけではなく、この殺し合いの空間に耐えられずに既に発狂してしまってこうなっている可能性もある。
通例ならばもうそこまで進行してしまった奴は放っておくものだが、しかし今、このララを見捨てるのはさすがに忍びない。
どうしたものかと考え込んでいると、ララの方もまた自分の話が信じられていないことを感じ取ったらしかった。
支援
「んー、おじさん私の話信じてないでしょ」
「…………」
そりゃ信じられるか否かと問われれば迷わずに否だと答えられる。
だがこういう、一度自分の考えを正しいと思ったらそう信じて疑わない奴を真っ向から否定するのはあまりよろしくない。
ここで別れて二度と会わないというのならともかく、一応これからも連れていくつもりだ。
彼女を元に戻すためにはいきなり否定するのではなく、ゆっくりと時間をかけていくしかない。
だから海坊主は、とりあえずの曖昧な返事を返す。
「あ……ああ、いやそんなことはないぜ。その左遷とやらで飛んでったんだろ? 別に疑ってるわけじゃ……」
「信じてない!」
ぷくーっと河豚のごとく頬を膨らませるララ。
どうやらまたヘソを曲げてしまったらしい。勘弁してくれ、と海坊主は宙を仰いだ。
最初からこの調子では、これから先が思いやられる。
――そんな彼を少し怒ったような目で見つめながら、ララは思う。
(リトなら、私のこと信じてくれるのに)
カードで飛んでいった云々の話よりも、もっと単純にそのことによってこの海坊主が自分という存在そのものに不信感を持っていることに、ララは悲しみを覚えていた。
日常の場であろうとこの殺し合いの場であろうと、一人ぼっちというものはやっぱりいやだ。
この海坊主とも仲良くしたい。互いに信じあえる関係になりたい。
そのためにはどうすればいいか……
「…………」
互いに黙り込んで、しばし静寂がこの家の中を支配する。
ふとララは窓から外を見てみる。
どうやら夜が明けようとしているらしい。暗かった空が白み始めているのがわかった。
あの飛んでいったマリは、もうこの空の下のどこかに着陸したのだろうか。
そんなことを考えた時、ララの頭に一つ案が浮かんだ。
(そうだ!)
そう、簡単なことだ。
海坊主がこちらの言うことを信じてくれないのならば、それが本当であるということを証明すればいいのだ。
残念ながら左遷のカードはどこかに落としてしまったために使用することはできないが、自分はあと二枚も同じようなものを持っているではないか。
「おじさん、さっきのノート貸してっ」
「あ?」
海坊主の返事も聞かずに、彼の脇に置いてある黒いノートを手に取る。
別に何でもよかった。
たまたま目に付いたのがそのノートだった……理由はただそれだけ。
「おい、何する気だ」
「いいから見ててっ、えーと……こっちでいいか」
なんだか知らないが、何かとてつもなく嫌な予感が海坊主を襲う。
昔からこういう時はろくなことが起きたためしはない。
ララを制止しようと慌ててベッドから立ち上がる……が、一手遅かった。
凛としたララの声が部屋に響く。
支援
支援
「堅牢(プリズン)オン、対象……デスノート!」
その時、大量の光が一瞬で部屋に満ちた。
海坊主は盲目で、かつサングラスをかけているためにその光を知覚することはなかったが、それ以外の五感が明らかに何かが起きているということを彼に伝えている。
最初はララが懐中電灯か何かを照らしてきたのかと思った。
だがそれにしてはどうも様子がおかしい。何か違和感を感じるのだ。
あの人工的な感じのする光ではなく、これはどちらかというと自然現象のそれに近い気がする。
(何してやがる、ララ!?)
……やがてその光が収まると、また元の静かな空間に舞い戻る。
一体何が起きた、と声をかけようとした海坊主よりも先に、ララの素っ頓狂な声が耳に届いた。
「あーっ、またカードが消えちゃった! もしかしてこれ、使い捨てなのかなあ……もったいないことしちゃったかも」
どうもまたカードを紛失したらしい。
というよりは自分の目の前から突然それが消えてしまったような、妙な反応だった。
「おい、どうしたんだ」
「あっ、そうだ! ねえねえおじさん、ちょっとこれ持ってみて」
「?」
そう言って妙に興奮した彼女から手渡されたのは、一冊のノート。言わずもがな、例の閻魔帳だろう。
わけのわからないままにそれを手に持つと……次の瞬間、何かとんでもない力でそのノートが引っ張られた。
支援
「うおおっ!?」
大して力を入れていなかったために敢え無くそれは海坊主の手から零れ落ち、一瞬宙に軌道を描いて正確にララのデイパックの中へとすっぽりと収まっていった。
何が起きたのか理解できない。
今のはララがこのノートを取り返そうと無理矢理引っ張ったわけじゃないだろう。
まるでノートそのものに横向きの強い重力がかかったような、そんな感覚だった。
もう一度同じことを試してみたが、やはり結果は同じ。
これは一般の常識では説明がつかない。
「ね? 私の言うこと、信じてくれるでしょ?」
どこか得意げなララの声が聞こえてきたが、海坊主にとっては今はそれどころではない。
これまで自分の築いてきた現実が、ガラガラと音をたてて崩れ去っていくのを感じる。
(……もしかして、俺のほうがおかしくなっちまったのか?)
その問いに答えてくれるのは、少なくともこの場には誰一人としていなかった。
支援
【A-6 民家 / 一日目 早朝】
【伊集院隼人@CITY HUNTER】
【装備】:逆刃刀・真打
【所持品】:支給品一式
【状態】:動揺中、少し頭が痛い
【思考・行動】
1.何が起きた?
2.ララを連れて行動
【ララ・サタリン・デビルーク@To LOVEる】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式、グリードアイランドのスペルカード(反射)@HUNTER×HUNTER
デスノート@DEATH NOTE
【状態】:健康、ジャケット一枚
【思考・行動】
1.これでおじさんも私のこと信じてくれるよね!
2.おじさん(海坊主)と一緒に行動
3.飛ばしちゃった女の子(マリ)が気になる
4.結城梨斗、西連寺春菜と合流
※デスノートについては単に名前を書かなければ無害だと認識してるため、あまりその危険性は考えてません
※スペルカードが使い捨てであることに気づきました
【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER】
グリードアイランドの島で使われている魔法カード。
使用するときは「(カード名)、使用!対象、(対象者の名前)」を
叫ぶことで発動する。カードによって様々な効果がある。
必ずしも正式名称である必要は無い模様。(偽名でも効く?)
左遷(レルゲイト):対象者をこの島のどこかへ飛ばす。
反射(リフレクション):使用してから30分、他の支給品による攻撃を反射することが出来る。
堅牢(プリズン):支給品を指定して使用すると、その支給品は18時間破壊されなくなる。
また他の人物の手に渡ってもすぐに自分のデイパックに戻ってくる。
【デスノート@DEATH NOTE】
ノートに名前を書くと、その書かれた人間は死亡する。偽名は不可。
死因を書かない場合、全て心臓麻痺となる。
たとえそれがノートの切れ端でも効力を発する。
1人の名前を書いてから12時間は使用不可。
なお、リュークやレムといった死神はついてこない様子。
投下終了しました。
デスノートの制限甘いよ、そもそもそんな扱いにくいもの出すなよとの声がありましたら
ジェバンニのノートに修正させていただきます。意見お願いします。
支援ありがとうございました。
投下GJです。
そりゃシティーハンターの世界にあんなものがあるわけないよなあ……
デスノートはいいと思いますよ。
これで少なくとも18時間はララのものになったわけか……
もし遭遇したら月やらLやらが目の色変えてすり寄ってきそうだw
投下乙です
確かにまともな人間なら海坊主みたいな反応するだろうな…
とはいえ、この場では早く常識を捨て去らないと命取りになりかねないな
海坊主には頑張ってほしいところだ
それで、デスノートに関してなのですが、今のままでは少し強力すぎるのではないかと思います
時間制限があるとはいえ、どんなキャラでも一発で殺せるわけですし
回数制限や有効範囲の制限など、制限をもう少し厳しくするか、
そうでなければジェバンニが複製したものと置き換えるか
いずれにしても修正は必要かと思います
投下乙
本名を嫌う海坊主が本名を自分から名乗るのが少し不自然だったが、彼がララの扱いに手を焼く様子がありありとしてて面白かった
本物の宇宙人だって知ったらどういう反応を採るんだろうなw
でデスノートだが、率直に言うと何だ出したんだよって思った
ノートに名前を書きさえすれば人が殺せるなんて便利アイテムはロワに向かない
まして短い時間制限だけなものだと、月みたいに躊躇いを持たない奴の手に渡れば最強クラスのキャラを簡単に殺せてしまう
空気読んでもらってそんなものは出して欲しくなかったな
デスノートを他のものと差し替えるかジェバンニの複製にするかしてくれ
このまま通すのは反対だ
デスノートはいいと思うよ
いざとなったら処分してもいいし
投下乙ですー
海坊主が見てて可哀想なほどに現実的思考で哀れ……
でもまあこれでこの世界の認識を変えてくれれば生存確率も上がるだろうから頑張れw
デスノートはたしかに制限甘い気はしますね。個人的には24時間くらいでいいんじゃないかと。
まあジェバンニノートを月もLも知らないわけだからそれならそれで面白い気がするけど。
>>825 いざとなったら処分しなくちゃいけないようなものをわざわざ出すってのがね
せめてもう少し制限きつくして欲しい
デスノートの制限か。
すぐに思いついたのは
その1:一度使うと24時間使用不可
その2:一度使うと使った人間も死ぬ
その3:一度使うと使った人間は死後地獄に落ちる(使いにくくさせる)
その4:名前を書かれても、対象が身体に力をこめれば跳ね除けられる。
とりあえず制限案四通りを出してみました。
すでに原作モノとかけ離れた全くのオリアイテムになってないか、それ?
投下GJ
氏の作品は安定して面白いなぁ
海坊主w
ララとのこの先に期待できる流れ
続きが楽しみな良作GJ
デスノは制限つけても強力なので1日でやってくれましたの偽ノートにするのが無難だと思います。
せっかくのロワで名前と顔さえ分かれば殺せるなんてもったいなさすぎるw戦え!w
ハオみたいに名前をすぐ知ることの出来るチートもいるわけですしw
参戦時期からしてデスノ勢はその存在をしらないだろうから、面白くもなりそう
皆様意見、感想ありがとうございます。
見たところ、やはりデスノートに関する認識が甘かったようなので
ジェバンニが一晩でやってくれたノートに修正したいと思います。
>>818 【ララ・サタリン・デビルーク@To LOVEる】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式、グリードアイランドのスペルカード(反射)@HUNTER×HUNTER
ジェバンニの複製ノート@DEATH NOTE
【状態】:健康、ジャケット一枚
【思考・行動】
1.これでおじさんも私のこと信じてくれるよね!
2.おじさん(海坊主)と一緒に行動
3.飛ばしちゃった女の子(マリ)が気になる
4.結城梨斗、西連寺春菜と合流
※デスノートについては単に名前を書かなければ無害だと認識してるため、あまりその危険性は考えてません
※スペルカードが使い捨てであることに気づきました
>>819 【ジェバンニの複製ノート@DEATH NOTE】
本物のデスノートと見た目も内容もまったく変わらない複製ノート。
複製であるため、当然その効力は一切ない。
乙です。
まあそれが妥当かな……ジェバノートでも十分場を掻き回してくれそうだし
修正乙です
確かにそれが無難でしょうね
複製でも十分場をかき乱してくれそうだし
>>831 ま、それが無難かな
つうかこれからは予め考えてからにしてくれよな
予約強要発言とかもだが、あんたはどうも頭でじっくり考える前に動いてそうだ
何か危惧することがあったらまずよく考えろ
自覚あるか知らんがトラブルメーカーとして見られ始めてるぞ
>>834 だよな
お前みたいなトラブルメーカーはこのロワには不要だから
この作品も破棄にして、今すぐここから消えろよ
うろたえるな小僧ども!
お前らの方が不要だよ
LO氏の作品は好きなのでこれからもばんばん書いてくださいね。
ところでそろそろ次スレが
参加者
5/5【To LOVEる】結城梨斗/ララ・サタリン・デビルーク/西連寺春菜/天条院沙姫/レン(ルン)・エルシ・ジュエリア
5/5【ONE PIECE】モンキー・D・ルフィ/ロロノア・ゾロ/サンジ/ブルック/アーロン
5/5【銀魂】坂田銀時/沖田総悟/土方十四郎/猿飛あやめ/星海坊主
4/4【るろうに剣心】緋村剣心/相楽左之助/志々雄真実/瀬田宗次郎
4/4【地獄先生ぬ〜べ〜】鵺野鳴介/ゆきめ/玉藻京介/立野広
4/4【GANTZ】玄野計/和泉紫音/加藤勝/小島多恵
3/3【遊戯王】武藤遊戯/海馬瀬人/獏良了
3/3【封神演義】太公望/蘇妲己/聞仲
3/3【魁!男塾】剣桃太郎/雷電/江田島平八
3/3【シャーマンキング】麻倉葉/麻倉ハオ/マリオン・ファウナ
2/2【ジョジョの奇妙な冒険】空条承太郎/吉良吉影
2/2【DEATH NOTE】夜神月/L
2/2【家庭教師ヒットマンREBORN!】山本武/三浦ハル
2/2【魔人探偵脳噛ネウロ】桂木弥子/XI
2/2【HUNTER×HUNTER】クロロ・ルシルフル/ヒソカ
1/1【ドラゴンボール】亀仙人
1/1【天上天下】棗真夜
1/1【シティーハンター】伊集院隼人
1/1【LIAR GAME】神埼直
1/1【NARUTO】うずまきナルト
1/1【TOUGH】鬼龍
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あと1KBで埋まっちゃうな
ネタバレ名簿もほしいな
支給品枠はまだたくさんあるし資格作品も欲しいな
参加資格作品はもういらないでしょ
参加者は出そろったし