32 :
オープニング。:
漆黒の空間に、ゆっくりと光が生まれた。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
部屋の中に浮遊しているキャンドルに、順番に火が灯されていく。
誰がやっている訳でもない。自然に、順番に、魔法でも使っているかのように部屋は光に包まれる。
灯りが生まれるたびに、部屋の全貌が明らかにされていく。
部屋の大きさは、未だに計り知れない。どれだけキャンドルが灯されようとも、その端を確認することは叶わない。
その代わりに、キャンドルと同じように浮遊しているおもちゃが見えた。
くまの、うさぎの、少女の、少年の、ねこの、様々な種類の人形が所々に浮かんでいる。
弥海砂は、呆然とそのファンシーな光景を見つめていた。
目が覚めたら、ここにいた。
海砂がどうしてここにいるのか、その疑問の答えは出ていない。
しかし、海砂にはこれっぽっちも不安や恐れはなかった。拉致監禁なら一度経験があるし、それに――ライトがいる。
海砂は整った容姿をした青年に寄り添いながら、思案顔の青年を余所にただただ幻想的な光景を眺める。
デートみたいだ、と海砂が緊張感のかけらもない事を考えていると、老人のような声とともに部屋の中心に人のようなものが現れる。
人のようなもの――と言ったが、他に表現が見当たらなかったのだ。
巨大な口に、巨大な耳。体の大きさもさることながら、その頭に乗った大きなシルクハットは見たものに多大な印象を残すだろう。
「みなさん、ごきげんよウ♪」
その巨体の隣には、普通の人間に見える黒い肌の少女がビデオカメラのようなものを構えながら立っている。
周りがざわめく。だが、海砂はとても冷静だった。
「早速ですが、みなさんには――殺し合いをして頂きまス♪」
巨体は、とんでもない事を突然言い放った。
怒り、驚き、一番初めにどんな反応が返ってくるか。巨体と少女は笑みを浮かべながら、待っていると一人の少女が素っ頓狂な大声を上げた。
「ええっー!?海砂、そんなことできない!――ライト、どうしよう!」
33 :
オープニング。:2008/06/04(水) 23:30:27 ID:LqrrwOzq
竜崎に褒められたこともあるお得意の過剰演技を交えながら、海砂はやや大げさに驚いた。
ついでに隣にいるライトに抱きつくことも忘れない。
少女のカメラが海砂の方を向いたので、海砂はカメラ目線にピースをして笑顔を浮かべた。
(掴みはバッチリ)
海砂は、この異常な事態を「どっきり」だとすぐに判断することが出来た。
普通では有り得ない過剰な演出、それにインパクト抜群な着ぐるみの司会と殺し合いなどという物騒な言葉。
傍らの少女のカメラも海砂の考えを確信に変えた。
海砂は、人気急上昇中のモデルである。最近では、TVにCMに引っ張りだこだ。
海砂が純粋な一般人ではない。それが、大きな勘違いの原因だった。
場違いすぎるほどの海砂の様子に、張り詰めていた部屋中の空気が緩む。
「アララ…♪」
「どうするぅ、千年公?」
「仕方がありませン。ロード、やってしまいなさイ♪」
はーい、と片手を挙げたロードと呼ばれた少女はぐるりと会場中を見回した。
もはや数分前に漂っていた緊迫感は霧散していて、ロードに向けられている視線もなんとなく生ぬるい。
「恋人?」
ロードが指差したのは、やはり弥海砂と夜神月だった。
ロードの持っているデジタルカメラに嬉しそうに頷く女と嫌悪感のような表情を浮かべている男が映る。
「決めーたぁ」
「え、何を?」
「お姉さん、早く離れた方がいいよぉ?」
34 :
オープニング。:2008/06/04(水) 23:31:00 ID:LqrrwOzq
ロードがライトを指差した後、カウントダウンを開始する。
5、4、3、2、1…………――ぼんっ!
まるでビックリ箱が開いたような、どこか緊張感に欠ける音が海砂の真横から響く。
首輪が爆発した。
海砂は爆風で吹き飛ばされる。
夜神月――青年の首は体と切り離され、床へと落ちた。
海砂は、そこでやっと自身の首にいつの間にか嵌められていたものの存在を認識する。
冗談のような一瞬が過ぎ去った後、部屋は再び恐怖の中に引き込まれた。
「ルールはとっても簡単ですヨ♪最後に生き残った一人が優勝でス♪」
千年公と呼ばれていた男――千年伯爵は、嬉しそうに声を張り上げる。
「詳しいルールは後で配るデイパックに入っている、ティキぽんが書いてくれた説明書を見て下さいネ♪」
他にも便利なアイテムや武器が入っている事や、地図や食料等の基本支給品について軽く説明をした後
千年伯爵は巨大な口を更に広げながら、上機嫌に告げる。
「優勝した人には、我輩が何でも願いを叶えてあげまス♪」
「金でも飴100年分でも、――死者を蘇らせてあげてもいいよぉ」
いつのまにか千年伯爵の隣まで戻ってきていた少女は、声と共に指を鳴らす。
すると、参加者達は床に吸い込まれるようにどこかへと消えていく。
「素敵な『悲劇』を我輩に見せてくださイ♪」
「次の放送で会おうねぇ」
【夜神月@DEATH NOTE 死亡】
35 :
オープニング。:2008/06/04(水) 23:32:24 ID:LqrrwOzq
たくさんいた参加者の中で、一人だけ部屋に残されていた弥海砂は未だにショックから抜け出すことが出来ないで居た。
爆風で体を打ったが、そんなことはどうでもいい。
(ライト、嘘だよね。ライト、ライト、ライト、ライト、)
男の死体を抱きかかえつつ、海砂は名前を呟くことしかできない。
そんな様子の海砂に、千年伯爵達は嬉々と言葉をかける。
「夜神月を蘇らしてあげましょうカ――?」
「え……?」
ライトを殺したのは、この二人に他ならない。死神の目を持っている海砂は二人の名前を正確に捉える。
デスノートがあればすぐに殺してやれるのに。
だが、海砂の思考は千年伯爵の言葉によって吹っ飛んだ。
「始まる前から殺すなんて、僕もフェアじゃなかったよぅ。特例として蘇らせてあげる」
「ほんとうに……?」
ライトを殺された怒りなど今の海砂からは消えていた。それよりもライトだ。
ライトが生き返るならなんでもいい。
「分かりましタ♪では、心を込めて彼の名前を呼んでくださイ♪
そうすれば魂をあの世から呼び戻すことができル♪」
魔導式ボディを取り出しながら、伯爵は海砂に囁いた。
「ライト!ライト、ライト、ライト――!」
37 :
オープニング。:2008/06/04(水) 23:34:17 ID:LqrrwOzq
「……ミサ」
「ライト!?」
声が聞こえた。愛しいあの人の声。
姿は妙な骸骨になってしまったが、海砂の愛の前では見た目など関係ない。
涙で視界が見えないのを無視しながら、海砂はライトに抱きつこうと――
「え」
視界が真っ赤に染まった。
体に力が入らなくて、海砂はそのまま床に倒れる。
体から血が溢れていた。丁度海砂倒れた先にはライトの首が転がっていて、海砂は呆然と原型が少ししか残っていないそれに問いかける。
なんで、と。
薄れていく視界には、両手を死神の鎌のようなものに変化させている骸骨が映った。
鎌を見て連想するのは死神。二人を結んでくれたキューピット。なのに、どうして――?
【弥海砂@DEATH NOTE 死亡】
38 :
オープニング。:2008/06/04(水) 23:35:20 ID:LqrrwOzq
「ハッピーバースデイトゥユー♪ハッピーバースデイトゥユー♪」
「ハッピーバースデイディア……♪――ライト」
「ハッピーバースデイトゥユー♪」
【夜神月@DEATH NOTE 生存確認?】
【夜神月@DEATH NOTE】
状態:AKUMAレベル1、見た目は弥海砂
装備:不明
道具:基本支給品一式(不明支給品1〜3個)
基本行動方針:伯爵様に言われたとおりに人を殺しまくる。
「備考」
[AKUMAについて]
詳しくはWIKI参照。
簡単に言うと人を殺すために作られた生物兵器。
夜神月の攻撃手段は今のところ両手を変形させて死神の鎌のようなものを確認(他にもあるかもしれませんが詳細は不明)
原作では触れただけで人を消滅させるウイルスを含んだミサイルを撃てますが、このロワではさすがに禁止。
レベル1なので知能が著しく低いです。多少の人を騙す演技力と殺人衝動しかありません。
人を殺してレベル2に進化して知能が発達すれば夜神月の人格が出てくるかも……?
イノセンスにしか破壊できないとなっていますが制限対象なので誰でも壊せます。一般人よりは頑丈ですが、ちゃんと死にます。