シンジが出した白いものは何?

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68考察:ガンダムとエヴァ
シンジをスポーツ選手や脚本家になぞらえる解釈がはやりのようだが、ここでシンジが
意味するものは、明らかに庵野監督自身だ。シンジが排泄した白い液体はガンダムであ
り、これは締め切りに追われた庵野監督が、現実逃避をして富野氏になりたいというこ
となのだ。当初の脚本では「オレって最低だ」の部分は「シンジ、イキまーす」だった
らしい。それが、周囲の圧力で潰され、そんな弱い自分に対する幻滅が「最低だ」とい
う台詞に現れているのだ。

そして傍らで眠るアスカのイメージカラーは赤である。
しかし、ここでアスカがガンキャノンのメタファーであると勘違いしてはならない。
精神崩壊や覚醒など、彼女が意味するものはイデオンである。眠り続けるアスカは、遺
跡で眠り続けたイデオンのメタファーだ。

イデオンのラストは滅亡であり、すでに映画の最初のシーンでラストが暗示されている
ともいえるだろう。

そしてこのシーンとパラレルな関係にある、ゲンドウとレイのシーンについても考察し
てみよう。小心者のゲンドウは大人になったシンジのイメージであり、ひげと眼鏡が庵
野監督自身であるとのイメージを補強している。
ここで注意したいのは、シンジは逃避の結果、富野氏に変身した庵野氏であり、ゲンド
ウは自己を保ったままの庵野氏であるということである。
レイのイメージは白であり、やはり彼女が意味するものもガンダムである(ガンダムの
パイロットは、アムロ・レイである)。
最初の人間アダムは、後にレイの子宮に収まるので、これはコアファイターであるとい
えるだろう。このコアファイターには、誰が乗っているのかというと、巧妙に隠されて
いるが、その名に『ア』がつくということで、アムロであることは当然だ。

ガンダムでアムロが覚醒したように、やはりレイも覚醒するが、こうなるとゲンドウに
は扱えなくなってしまう。ニュータイプ論を語れるのは、富野氏だけだからだ。そこで
レイがシンジの元へ赴くのは当然といえよう。
しかし、シンジは富野氏の振りをしているが、やはりその本性が庵野氏である以上、ニ
ュータイプ論を語ることはできない。シンジがレイを見て恐怖するのも仕方のないこと
であろう。余談だが、ここで量産機がレイに変身するのは、ガンダムの続編が大量生産
されていることに対する皮肉である。
そこで登場するのがカヲルである。カヲルとはレイの後に来た白い使者であり、シンジ
の「綾波に似てたんだ。僕にも」の言葉から、ガンダムの後に来て、庵野氏とも関わり
の深いνガンダムであることは明らかだ。
シンジの至福の表情から、庵野氏が逆シャアに対する深い愛着を持っていたことは明ら
かだが、補完世界ででアスカが割り込んでくる。この文脈でアスカが割り込んできたと
いうことは、イデオンからシャアへのイメージの変換が行われたと解釈するべきだろう。
富野氏のインタビューをみるとおり、シャア=富野氏であるので、ここでシンジのイメ
ージも庵野氏自身に戻ることになる(この後ゲンドウの死が語られるのも当然のことだ)。
補完世界でのシンジとアスカの言い争いを皮相に捉えることをしてはならない。これは
庵野氏と富野氏との言い争いだ。つまり、一般にいわれているとは逆に、ニュータイプ
論の究極である、「他人と一つになりたい」という主張をしているのがアスカで、「一
つになりたくない」と主張しているのがシンジなのである。
その結果シンジがATフィールドで他人と分かたれた世界に戻るのも、肯けることであ
ろう。
このようにEOEとは、庵野氏がガンダムに魅せられながら、富野氏と袂を分かつ様をメ
タフィクション的に描いた作品なのである。