「HEY!YOU!ちょっと、そこのアンタよア・ン・タ!」
年はそう、14歳ぐらいだろうか。鮮やかな赤毛にカラーリングした少女が一人、
やはり同い年ぐらいの少年を呼び止めた。水色のノースリーブからスラリと伸びた長い腕が、
彼の肩を掴む。彼は、その黒い肌の腕を一瞬、眩しそうに見つめた。
「あ、あの…僕に何か用?」
彼はどうしていいか分からない、と言った様子で反射的に答えた。
初対面なのに、馴れ馴れしいな、この子、とでも言いたげな表情を浮かべながら。
「アンタが碇シンジね、てゆーか私の弐号機っていいカンジしない?」
ハァ?の文字が一瞬彼の脳裏をよぎる。頭が真っ白になる、って、こんな感じなのかな…と。
(誰だろうこの子、しかもネルフの内部構造を知っているみたいだし、初めてエヴァを見たのに驚かない、
と言うよりも弐号機っていったい…僕はそんな機体、知らないよ。僕はただ、父さんの搭乗要請に
従っただけなのに、誰も知らないはずの僕の事情に詳しいみたいだし、君はいったい…誰?)
と、頭の中を、目まぐるしく質問が駆け巡った。もちろん口には出さずに。
「無口なのね…つまらない男!」
勝ち誇った様に早口につぶやくと、クルリと彼に背を向けて歩き出した。
彼女の後姿を見送りながら、彼は一言だけ、うめく様に低い声を喉の奥から絞り出すのが精一杯だった。
オマエモナー…と。