20 :
鈴原夏美:
1の妹の夏美です。
うぅ、ぐすん、聞いてください。最近お兄ちゃんが変なんです。
この間の夜遅く、いきなり夏美の部屋に入ってきて、こう言ったんです。
「にぃやって呼んでくれや」
私、何だろう? と思いながら、にいや、って呼んでみました。
お兄ちゃんは不満だったらしくて、もっと弱々しく、もうちょっと高い声で、と細かく注
文してきました。
変なお兄ちゃん、と思ったけど、お兄ちゃんの顔がとても真剣だったので、私はそのとお
りに従いました。
何度か繰り返していると、お兄ちゃんは左腕を差し出しながら、「袖を持ちながら言うんや」
と注文してきました。
ちょっと恥ずかしくなっていた私が、頬に熱を溜めながら「にぃや……」と言った、その
ときでした。
お兄ちゃんがいきなり「亞里亞!」と叫びながら、私をベッドに押し倒したのです。
「お、お兄ちゃん? だめ、お母さんたちが起きちゃう!」
抵抗しながら言うと、お兄ちゃんは私の頬をぱちんと張りました。
「違うだろ亞里亞、にぃやって呼べぇやっ!」
亞里亞なんかじゃない、私の名前は、夏美なのに……私はとても悲しくなって、抵抗す
る気力なんて、すっかり無くなってしまいました。
「亞里亞、亞里亞、亞里亞ぁ、亞里亞あぁ、亞里亞あぁっ!」
木偶人形のような私に、お兄ちゃんは何度も何度も……。
事が終わったあと、ぼろぼろのパジャマとたくさんの精液を体に絡ませた私に、お兄ちゃ
んは「亞里亞、気持ちよかっただろ?」と聞いてきました。
「にぃ……や……」
それが私が口にできた精一杯の言葉でした。
お兄ちゃんは満足そうに口元を歪ませると、自分の部屋へと戻っていきました。
うぅ……お兄ちゃん、早く昔の優しいお兄ちゃんに戻ってよぉ……。