◆◆◆新世紀世界文学メイ作選◆◆◆

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
「碇司令。猫が死んだんです。おばあちゃんの所に預けていた」
「なぜ、ダミーシステムを破壊した」
「ダミーではありません。破壊したのはレイですわ」
「今一度問う。なぜだ」
「それは、たぶん……。きっと太陽がまぶしかったせいですわ」

エヴァ流『異邦人』
ジオフロントへの長いトンネルを抜けるとネルフ本部であった。
地底の闇が白くなった。
リニアカートレインが止まった。
運転席側からミサトが車の窓を開けた。
気圧の変化でシンジの鼓膜が圧された。
ミサトは窓から身を乗り出して、遠くへ叫ぶように、
「リツコー、 リツコー!」
髪を金髪に染め、水着の上から白衣をひっかけた女性がやって来た。

 エヴァ流『雪国』
やれやれ

「神の子供達はみな踊る」
「みんな、わしを探したのか」
「戦自のVTOLまで出て、あんたを探したよ」
「そうか。面倒をかけたな」
「これを飲むといいよ」
少年はたっぷりミルクを入れたコーヒーをカップ一杯にして
老人に渡した。
老人は、それを一口飲んで言った。
「ああ、もうわしは大丈夫だ。そろそろお帰り、碇が心配する」
「父さんなんか。父さんのことなんか、どうだっていいよ! ぼくは
あんたといたいんだ」
老人は微笑んだ。
その頃、港では漁師達が集まっていた。
「50メートル以上ある」
「56.3メートル。これまでで最大のエヴァンゲリオンだ」
「こんなでかい奴は余所の港でも聞いたことがない」
「たいしたじいさんだよ。こんな大物をたった一人でとは」
時計の針が進み、老人は再び眠りに落ちていた。
碇シンジは、その横顔をじっと見ていた。
冬月コウゾウはライオンの夢を見ていた。

エヴァ流『老人と海』
我が輩はエヴァンゲリオンである。初号機と呼ばれている。
どこで作られたのか、噸と見当がつかぬ。
なんでも薄暗い、じめじめした実験室でガオーガオーと叫んで
いた事だけは記憶している。

エヴァ流『我が輩は猫である』
 数日後、ミサトが諜報部員数名を引き連れてやって来た。
 「悪いわね、リツコ。友人を疑う真似なんてイヤなんだけど」
 「わかってるわ、ミサト。ダミーシステムの破壊。零号機パイロットの
失踪。いずれも犯人はネルフ内部にいると思われるものね。私を捜査の
対象に含めるのは当然でしょう」
 諜報部員達は徹底的に部屋を調べ尽くした。
 最後に地下室へ、その捜査の手をのばしたが、もちろん何も見つけるこ
とはできなかった。
 私の心臓は冷静な科学者そのもの、完全に平常通り静かに鼓動していた。
 ミサト達は引き上げようと階段を昇り始めた。
 私は自分自身の勝利と彼らが無実を確信するために、なにか一言云いた
くなった。
 「みなさん」とうとう私は声に出して云った。「みなさんの疑いが晴れて、
私もうれしく思います。それはそうと、ミサトも聞いて欲しいの。この家
はとてもよくできた作りになっているんです。なにしろ、この私が設計し
たのですからね」
 なにか得体の知れない高揚感と言ったものが私を支配していた。
 「この壁も床も少々の地震などではびくともしませんよ」
 ここで私は気が狂いそうなほどの自信と満足感に捉えられて、手にしてい
た金属パイプで壁を激しく叩いた。
 ああ、でも母さん、助けて!
 その反響が消えるか消えない内に、壁の中から恐ろしい叫び声が上がった!
 一瞬、階段上の一行は恐怖と畏怖のために、凍り付いていたが、次の瞬間、
あっという間に金属の皮膜を剥がし、その壁を突き崩していた。
 壁が崩れると同時に、ひどく腐って血糊のこびり付いたファースト・チルド
レン、綾波レイの死体が露わになった。
 その頭上に、大きく赤い口を開き、火のような片目を光らせながら、その
悪知恵によって私を殺人に誘い込み、さらにまた、その犯行を知らせる叫びに
よって、私をゼーレの老人達に引き渡した当の猫がいた。
 私はこの化け物を墓の中に塗り込めていたのだわ!

エヴァ流「黒猫」
キール・ローレンツ
「だれかある! エヴァをもて、エヴァを。
汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオン量産機を!
代わりにネルフをやるぞ!」
 碇ゲンドウの奴め、6人もおる。5人まで倒し
たが、全てクローンだ。だれかエヴァを!
代わりにネルフをやるぞ!」

   エヴァ流『リチャード三世』
おもろい! 応援age。
98:2001/06/13(水) 03:29
スマソ。sage進行だったのね。逝ってきます。
10名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/06/13(水) 03:34
ageてよし!
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/06/13(水) 07:35
この五体の隅々までチルドレンだ
12名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/06/13(水) 10:58
いいねー純文学小説を読みたくなってきたよ
13良スレ期待age:2001/06/13(水) 11:24
「加持くん、面会よ」
「え?俺に?はて、誰かな?」
「それはもう、すごく綺麗な金髪のドイツ人のおねえさんよ。
 ミサトが知ったら、さぞかし怒るかもしれないわね」
「またまた〜、リッちゃんまで、そういうこと言うぅ。
 これも仕事のうちだって。え〜と、ちょっくら行ってくるよ」
「3番の面会ブースよ」

「え〜と、と…」
「リョウジッ!」
「エ、エリス!?…」

   エヴァ流『舞姫』
そうか、この手があったか。
たまには図書館でも行こうかな。
*レイ登場
レイ「LCL水槽はいや。あの水槽を見ると気が滅入るわ。とても我慢できない。
   なぜ、総司令は私ばかりを見るの? 母上の夫ともあろう人が、どうして
   あんな眼でみるのかしら。私にはわからない。いいえ、ほんとうはわかっ
   ているのだわ」
ロン毛のネルフ隊員「すわりませんか、レイさん」
メガネのネルフ隊員「なぜ話しかける。どうして、そんなに彼女を見つめるんだ」
レイ「月を見るのはすてき。小さな銀貨そっくり。冷たく、純潔よ。そう、月は
   処女なのよ。他の女神達と同じように。待って。このモニターに映っている
   のはだれ?」
ロン毛のネルフ隊員「5thチルドレンです。レイさん」
レイ「 5thチルドレン! あぁ、この男なのね。総司令が恐れている、ただ一人
   の男。ぜひ、この男をここへ。会って話がしたいわ。あの唇に触れてみたい」
メガネのネルフ隊員「いけません。総司令に禁じられています」
レイ「そう。あなたは、この私よりも総司令が大事だというのね。でも、青葉。
   おまえなら私の頼みを聞いてくれるわね。それとも総司令が恐れる男を、
   おまえも怖がるの?」
ロン毛のネルフ隊員「私はだれも恐れません、レイさん」
レイ「この男の名は、なんというの?」
ロン毛のネルフ隊員「カヲル。渚カヲルです」

エヴァ流『サロメ』
やからにしかなってないが3が一番わかりやすい・・・・。
1=3以外はもっとひねれ
17幸福な王子:2001/06/14(木) 03:56
エヴァンゲリオンは語りつづけました。
「ずっとむこうの通りに、小さな病院がある。窓がひとつあいていて、
 男の子がひとり、窓越しに見える。その部屋の片隅の寝台に、
 その子の妹が寝ている。
 男の子は妹に充分な治療をさせられなくて、ひどく気に病んでる。
 わたしが悪いのだ。わたしが女の子に怪我をさせたようなものだ。
 つばめさん、つばめさん、小さいつばめさん。
 この体の特殊合金を外し換金して、彼のところへ持っていってやってくれないか?
 わたしの体はこのケージに固定されて、動けないから」
「もう一晩だけ、あなたのもとにおりましょう、でも、あなたの装甲を外すなんて、
 わたしにはできません。そんなことしたらすっかり素体だけになってしまいますよ」
「つばめさん、つばめさん、小さいつばめさん、わたしの言いつけどおりにしなさい」

そこでつばめはエヴァンゲリオンの装甲を剥がし、さっと飛び降りました。
換金した金額の小切手を、女の子がいる病院の窓辺へと、そっと置いてきました。
「えらいこっちゃ!これでナツミは転院できる!神様、ほんまにおおきに!」
小切手を見つけた男の子は、久しぶりの笑顔で大喜びしてました。
そこでつばめはエヴァンゲリオンのもとへ飛んで帰り、自分の見たことを話しました。
「奇妙ですね。今とても暖かい気持ちがするのですよ。気候はひどく寒いのに」
「それはお前がとてもよい行いをしたからだよ」とエヴァンゲリオンは答えました。

「エヴァンゲリオン。あなたはもう素体だけにおなりです。
 ですからわたしはいつまでもあなたのおそばにいましょう。」
「いや、小さなつばめさん」とエヴァンゲリオンは言いました。
「もうすぐ冬が来る。お前は暖かい南の国に行かなくては」
「わたしはいつまでもあなたのおそばにいましょう。」とつばめは言って、
エヴァンゲリオンの足もとで眠りました。

そして冬が近づいたある寒い朝、エヴァンゲリオンの肩の上で、
つばめはつぶやくように言いました。
「さようなら、エヴァンゲリオン。お手にキスをさせてくださいませんか?」
「つばめさんがやっと南の国にいくことになって嬉しいよ。
 小さなつばめさん、お前はここ長く居すぎた。お別れです。
 わたしのくちびるにキスしなさい。わたしはお前を愛してるのだから」
「エヴァンゲリオン、わたしが行くのは南の国ではありません。
 死の家へ行くのです。死は眠りの兄弟です。そうじゃありませんか?」
そしてつばめはエヴァンゲリオンのくちびるにキスをすると、
足もとへ落ちて死にました。

その瞬間、何かが壊れたような、奇妙な物音がエヴァンゲリオンの内側で響きました。
エヴァンゲリオンの鉛の心が、悲しみでにまっ二つに割れたのです。

エヴァ流『幸福な王子』
18在原業平:2001/06/14(木) 22:13
名にしおエヴァ
いざ言問わん都鳥
我が思う人はありやなしや
19某店長:2001/06/17(日) 00:59
 「ひぃえぇぇぇぇ!」
 葛城ミサトは悲鳴を上げると同時に全力ダッシュした。
 ローヒールを履いているとはいえ、100m11秒フラットは、まさにオリンピック級
だったが、もちろん本人が知る由もなかった。
駐車場を横切り、自分の車に体当たりのごとく突進するや、カギの束を何度か
お手玉した後、ようやくドアを開き、派手なブラックマークを残してA610を発進
させた。
 本道に出るときはオーバースピードでセンターラインを越えて、危うく対向車と
正面衝突しそうになった。
 落ち着いて。落ち着くのよミサト! 自分自身に言い聞かせた。
 まだ、この車のローンだって、あと31回残っているんだから。
 そう。きっと気のせいよ。このところの残業、徹夜続きで疲れているんだから。
幻を見るくらい誰にだってあるわよ。ついついビールの量も増えるし、給料日前だ
からエビチュでなくBOAだし、発泡酒なんかは肉体労働者の飲物で、あたしのよ
うなエリートの頭脳労働者が飲むものじゃないし‥‥って、ちがう!、
 だいたい最近、シンちゃんがあたしを見る眼がアブナイ雰囲気なのよねえ。それ
にアスカだって、ことあるごとに一緒にシャワーを浴びようってしつこいし、そん
な時に限って加持のヴァカは京都へ行ったまんまで、体がうずくし‥‥って、そう
じゃなくって!
 もう、昨夜も遅くに2chへアクセスすれば、厨房のセクハラ質問ばかりでマジ、
ブチ切れてマウス叩き壊したし‥‥って、関係ない!
 前方にコンビニの灯りが見た。
 ミサトはようやく落ち着きを取り戻して考えた。ちょっち買い物していかないと。
ツマミに辛い物が欲しいわよねえ。シンちゃん、料理はうまいけど辛い物は苦手
みたいだから。そうね板ワサとキムチくらいは。
 駐車場に車を停めて、店内へ入ると女性店員が一人で品物を整理していた。手早
く品定めをするとレジへ向かった。
 「お客さん、顔色が悪いですが、だいじょうぶですか?」
 「え? そ、そう!? ちょっち疲れてるせいかなぁ。なんか今夜は会う人がみんな
同じ顔に見えたりするのよねぇ」
 「そう。もしかして、それは」女性店員が顔を上げた。「こんな顔?」
 それは今夜、ミサトが会った七人目の綾波レイだった。
 「ひぃえぇぇぇぇ!」

エヴァ流『怪談』
20スチーブンソン:2001/06/17(日) 02:02


     「あ、あたしじゃないわよ」


エヴァ流『ジキル博士とハイド氏』
大人なんて、ほんま勝手なもんや。
人類のためだの、世界の平和だのとご大層なことばかり抜かしよって、結局は自分らの都合しか考えとりゃせん。
そうさ、だからわいは起動するや、いきなり参号機でバク宙を決めて連中の背後へ廻ってやった。
見てみい。ミサトさんはもちろん、あのニセパツキン姉ちゃんも眼ェ白黒させておったで。あれでネルフ一の科学者云うんやから笑わせよるわ。
綾波の零号機なんぞ問題やない。あの高慢ちきな惣流の弐号機かて、わいの参号機には指一本触れられなかったで。
あのいけすかんヒゲメガネの総司令が見てたら、なに抜かすやろな。いや、言葉よりも腰抜かすんとちがうか!
おっと、あれはシンジのおやじさんやったっけ。
そうや。無敵のエヴァンゲリオン参号機。わいが待ってるのはシンジ、おまえや。おまえだけなんやで。さっさとこんかい。ったく、いつまで待たせるんじゃ!?
しかし、ケンスケには、ちょこっとやが、すまん思うとる。もし、あいつがパイロットやったら、きっとミサトさんやパツキン姉ちゃん達の言われるままに、この参号機を操縦したのとちがうか? ま、実際のところはわからへんけどな。
お、初号機や。シンジの奴ようやく来よったか。さあ、これからが本番や。

エヴァ流『長距離走者の孤独』
22名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/06/23(土) 03:23
走れ、ケンスケ。もうすぐ陽が暮れる。
第三新東京市に入った頃には、山並みの向こうに夕陽がまさに落ちようとしていた。
眼鏡はとっくになくした。周囲はぼやけたままだった。息継ぎの時に二、三度血を吐き出した。それでも足は停めなかった。あの眼鏡のヒゲ野郎に正義とは何かを見せてやるのだ。今こそ一人サバゲーで鍛えた体力、脚力、根性を見せてやれ。なんとしてでも倒れてはならない!
「ああ、相田さん。走るのを止めて下さい」
人影が走りながら話しかけた。
「だれだ!?」ケンスケは走りながらたずねた。そのぼんやりと見える横顔には見覚えがあるような気がした。
「洞木ノゾミともうします」
「洞木!? 委員長の妹さんか!」
「そうです。姉の男運の悪さはご存じでしょう。最初の人には死に別れ。次の男には騙され。今また信じていたあなたに裏切られようとしています」
「いや、まだです。まだ陽は沈んでいません」
「もう無理です。どうあっても間に合いません。いまごろ姉は、あなたの身代わりとしてエントリプラグに載せられ、起動実験が始まっています。エヴァに関わった者は全て不幸に見舞われるのです」
「いや、そうではない。それを証明するためにも、僕は行かねばなりません」
夕陽のせいか、ノゾミの頬が染まったようにも見えた。
「いっそ全てを捨てて、この私をあなたが遠くへ連れて行っては下さいませんか」
「え!?」
危うく足を停めるところだった。だが一瞬にして迷いは吹き飛んだ。
「できません。それにまだ陽は沈んでいません。まだ間に合うはずです」
「ああ、やはり姉は男を見る眼がないんだわ。もう勝手にして下さい」
急げ、ケンスケ。もう迷いはない。あとわずかで陽が沈む。地下のネルフ本部まで、あと少し。今こそ自由と正義と、そしてなにより愛のために。走れ、ケンスケ!

エヴァ流『走れメロス』
エヴァの「走れメロス」ならし●ぽのき●ちって同人サークルがやっとったやないか
ネタ的にはありきたりって琴音
25司馬遼太郎:2001/06/25(月) 07:21
ゼーレの愚かさには『先進国』のインパクト後の歪み
そのものがあらわれていたのかも知れない。

人間の全能感を全て肯定し、
欠点を削除するという独裁者特有の最短距離での指導は、
「先進国」の思潮が無理な接木であると筆者は言っている。

筆者は社会学の専門家ではないが、成熟した民主主義と経済に
育まれた人間は、あるいは、ピューリタンの伝統の根強い
あの人工国家において特異な「才能」を世に送り出すことに
成功しているのかもしれない。

しかし母性原理が動かしている「世界」においては、
その思想は幼児的な退嬰をもたらしただけと断言して良い。
ゼーレはひとつの例題にもなりえない。

余談ではあるが、エヴァンゲリオンは『ヒト型』決戦兵器であり、
起動の核となったのは女性の魂だったことは興味深い例として
挙げられる。
26名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/06/25(月) 18:58
私はイロモノ
良スレage
28名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/07/07(土) 17:36
3
琴音ちゃん、股で挟んで・・・ハァハァ(;´Д`)
30フランツ・カフカ:2001/07/08(日) 02:49
 とある朝、碇ユイが長く重苦しい悪夢から覚めると、自分が一匹の巨大なエヴァンゲリオンになっていた。
 夢の続きを見ているのかしら。もうひと眠りすれば、さわやかな目覚めの朝を迎えられるかしら。それとも……。
 ユイは以前読んだユングの著作から明晰夢に関する記述を思い起こそうとした。
 自分が夢を見ていることを知りながら、夢の世界にいる。これがそうかしら。
 ふと目覚まし時計を見ると、6:45だった。
 あら、いやだ。目覚ましが鳴らなかったのかしら。もう時間だわ。主人とシンジを起こさなくては。今朝はネルフ本部で、いよいよエヴァ零号機の起動実験の日なのだから。遅れたら大変。冬月先生に、またお小言云われてしまうわ。
 シンジを連れていくのだって、普段より時間が掛かるはずだし。でも、あの子には明るい未来を見せてやりたいもの。
 上半身を起こすと、ベッドサイドの鏡を見て愕然とした。
 まあ、なんてこと。肌がガサガサじゃない。やはり就寝前のローション変えたほうがいいのかしら。これじゃファンデーションものりが悪いわ。いくら実験だからといっても最低限の身だしなみは整えなくては。それに……。
 科学者としてはもちろん、女としても赤木さんには負けたくないものね。

 エヴァ流『変身』
31Franz Kafka:2001/07/08(日) 03:42
誰かが碇シンジを調査したに違いなかった。
悪いことは何もしなかったにもかかわらず、彼は拘束されたからである。
彼に部屋を貸している教師の妻は毎朝8時までには朝食を届けに来ていたのだが、
それが今日に限ってやってこなかった。これはいままでについぞなかったことである。

シンジはそれでもまだしばらく待って、枕に頭をうずめたまま向かいに住んでる老婆が、
この女にはおよそ見慣れない好奇の目で自分を観察しているのを眺めていた。
がしかし、不信に思うと同時に空腹も感じてきていたので彼は呼び鈴を鳴らした。
すぐにドアをノックする音が聞こえ、この家ではまだ一度も見かけたことのない男が入ってきた。

すらりとはしていたが、頑丈そうな体格で、体にぴったりとあう黒い服を着ていた。
旅行服に似たもので、さまざまなひだがポケットや止め金やボタン、それにバンドもついており、
そのせいで何のために役立つものかは判然としなかったがいかにも実用的な服であるように思われた。

「どなたです?」
シンジはたずねすぐベッドの中で上半身を起こした。


エヴァ流『審判』
32ジョゼフ・コンラッド:2001/07/11(水) 01:34
 宇宙貨物船ノストロモ号は月軌道を通過した。
 いつの間にか乗員8人全員が食堂に集まり、大型モニターに映る月と、その向こうに姿を現しつつある地球を見つめていた。
 往復10ヶ月に渡る長い宇宙航行が終わりに近づいていた。
 取って置きのシャンパンとワインが振る舞われ、景気の良い音と共に栓が抜かれた。
 突然、彼女が口を開いた。
 「あの地球もねえ。40年前にはサードインパクトに見舞われたのよ」
 グラスを差し出して言った。
 「もっとついでよ。私は14才だった。あの使徒との戦いの時にはね。もちろん大学は卒業していたし、世の中のことは少しは知ってる気になっていたけれど、周りのことは全て予想も付かないことばかりだったわ」
 月が次第に小さくなるのに対して、地球は刻々と、その大きさを増していった。
 いつの間にかシャンパンとワインのボトルは全て空になっていた。
 「そりゃあ、なんといってもエヴァ・パイロットだった、あの頃よ。あれこそが人生の頂点、自分自身と世界を変えられると思っていた最高の日々だったわ。いえ、青春だけかしら、本当にあったのは。今でもわからない。でも、ここにいるみんなだって、そんな時期があったはずよね。」
 乗員達は静かに頷いた。
 「そして、そう。そのなにものかは、まだあると思っている内に、いつの間にかなくなってしまうものなの。一息つく間に影のように、ひっそりと過ぎ去ってしまうもの。青春や、若さや、愛や、力や、幻影に彩られていた夢物語と共にね」
 その集団とは反対の隅に初老の男が一人、ぽつねんと坐っていた。この時代には珍しく、近視矯正手術も受けずに、時代錯誤の眼鏡をかけていた。
 「また、アスカの長い昔話のせいで」アゴヒゲに手をやり、ずり落ちそうになった眼鏡を指先で戻した。「地球周回軌道への進入が半日遅れたな」
 そう碇シンジ船長はひとりごちた。

エヴァ流『青春』
33名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/07/12(木) 05:11
age
保全sage
35作者不詳:2001/07/26(木) 01:21
「こうして旧日本軍が開発した大型ロボットを操縦する少年探偵と警察署長、
開発の中心人物だった天才科学者、それに改心した元ギャングは、共に
様々な事件や陰謀に巻き込まれ、大活躍するのでした」

この時、綾波レイは夜が明け始めたことに気づき、司令のお許しを受けた
物語を止めた。その時、弐号機パイロットが声をかけた。「へえ、ファーストの
話って、意外に素晴らしいじゃないの。楽しいし、気が利いていて、なかなか
魅力的だわ」
すると零号機パイロットは「そう? でも、この大型ロボットの話だって、次の
少年型ロボットが活躍する話に比べれば、まだまだよ。もし、司令が明日の
晩も私の話をお望みならだけど」と答えた。
司令は心の中で、「いくらクローンで代わりはいるとはいえ、記憶が完全に
移植されているとはいえない。この物語の続きを聞いてしまうまで、この女は
生かしておこう」

第二夜になるとレイは語り始めた。
「ある極東の島国に、一人息子を事故で失った天才科学者がおりました。彼は
最新の科学技術を駆使して息子そっくりのロボットを製作したのです」
こうして第三夜は美青年探偵の姿をした変幻自在の人型ロボットの話。
第四夜はホバークラフトが頭部にドッキングして、そのまま操縦装置となる
巨大ロボットの話。
第五夜は三体のロケットが合体して、それぞれ違った機能を持つ三種の巨大
ロボットに変身する話。
第六夜は各部バラバラになったロボットが電磁力で合体する話。
第七夜は一組の男女が合体変身してカンフーアクションを行う巨大ロボットの
話。5分短い。
第八夜は超古代文明が残した巨大ロボットの話。美形ライバルのはしりとか。

レイの物語は夜毎果てしなく、とうとう千と一夜の間続きました。
その最後はニュータイプといわれる少年がモビルスーツと呼ばれる巨大ロボット
に乗って、美形ライバルと戦い続ける物語でした。
司令はすっかり感心して綾波レイは、お前以外考えられない。ダミーシステムは
全て廃棄すると宣言しました。
こうしてネルフ本部とその近隣は花火が打ち上げられ、スモークがたかれ、
様々なレーザー光線が飛び交い、さながら超巨大ロックコンサート会場のような
騒ぎとなりました。
しかし、赤木博士だけは、その輪に加わりませんでした。
めでたし、めでたし。

エヴァ流『千夜一夜物語』
36名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/07/26(木) 09:38
応援age
37名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/08/04(土) 17:45
応援age
この板はもうだめだな。
文学には弱いのでわからんsage
40安部公房:2001/08/19(日) 23:47
 ついに最後のプロテクトを破った。
 しかし、3Dコンソールに出た表示を見た男は愕然とした。『SUPER SOLENOID ENGINE』 S2機関。対消滅を利用した事実上の半永久機関。
 もし、これを起動させる事ができれば、もはやアンビリカブル・ケーブルや内部電源に頼ることなく、無限の自立行動が可能となる。あとは、その起動のタイミングだ。
 その二日後、いつものように男は女と共にエントリプラグ内から二体の人造人間を操り、砂の除去作業に掛かっていた。
 突然、エントリプラグ内の女が苦悶しだした。零号機が砂の上にがくりと膝を突き、頭部から砂の中にめり込むように倒れた。
 男は慌てて初号機を停止させると、エントリプラグから飛び降り、零号機のエントリプラグをこじ開けて叫んだ。「どうした、だいじょうぶか !?」
 女は下腹部を押さえたまま、苦痛に喘いでいた。男にできることといえば、女の体をプラグスーツの圧力から解放させてやる事だけだった。そうした一部始終をモニターされているのは判っていた。
 それから数分としないうちにVTOLが砂塵を巻き上げて飛来した。
 機内から武装した隊員二名と共にリーダーと思しきアゴヒゲの男。その後から髪を金色に染め、白衣を着た女医らしき者が現れ、簡単に女を診ると鎮静剤を打って言った。「おそらく子宮外妊娠です。すぐに本部へ運びましょう」 
 担架に乗せられた女にヒゲの男が一言声をかけた。「レイ」
 男は瞬きひとつせずに機内へ消えていく女の紅い瞳を見つめていた。VTOLが噴射を開始し、叩き付ける砂を全身に浴びながらも男は微動だにしなかった。
 その後にはエントリプラグを突き出したままの零号機が、早くも砂に埋もれようとしていた。二日もすれば完全に埋没し、その所在さえ判らなくなるだろう。
 それに目をやりながら男は、ぼんやりと考えていた。あの女と暮らし始めてから一年近く経つ。その間、生理が来たと思えることは一度としてなかった。
 生理のない女が妊娠できるのだろうか。いや、それよりも、あの女の胎内に子宮そのものが存在するのかどうか。
 水色の髪。紅い瞳。白い肌。青白い乳房。それらの記憶を反芻しながら考えていた。
 そして無限の力を持つS2機関。その初号機を操縦できるのが彼しかいないならば今、男は人類の歴史始まって以来、最も神に近い存在になったのかもしれない。
 すると、あの女レイは。女神になるのだろうか。そして、その子供とは。
 男は初号機を見上げ、初号機は天井都市と、そのはるか無限の彼方を見つめていた。

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第三新東京市/地方裁判所/第一小法廷

碇 シンジ

 上記ノ者、失踪確定後七年ヲ経過。因ッテ法ノ定メル所ニヨリ
死亡ト認メ、戸籍ヲ末梢スル。
=========================

エヴァ流『砂の女』 
41名無しが氏んでも代わりはいるもの:2001/08/20(月) 00:02
ぽよよん
>>40
×末梢 → 〇抹消 (恥
43ドストエフスキー:2001/08/24(金) 02:03
「碇ユイ君だったね」
冬月はその女子学生を前にして、やや戸惑いながら言った。
「はい、冬月先生。よろしくお願いします」
「きみのレポートを読ませてもらったよ。二、三疑問が残るが、面白い着眼点だ。久しぶりに刺激のある内容だった」
「ありがとうございます」
「クローン人間は妊娠、出産のストレスを精神的外傷として持たないため、人間的により自由であるという考えだね。
キリスト教を初めとする宗教上の原罪という概念は、全て妊娠、出産のトラウマが原因だというわけだ」
「はい」
じっと冬月を見守る、その瞳の輝きに冬月は落ち着きを無くした。
「そうしたクローン人間こそが新しい人類であり、閉塞状況にある人類が新たな段階へ飛躍するためにはクローン人間に、
その未来を託すか、われわれ旧人類が肉体を捨て去り、人造人間へ精神を移植するしかないと言うんだね」
「はい。多少、過激な考えであることは認めます」
「碇君は、この先どうするつもりかね。就職か。それとも大学院に進んで、研究室に入るつもりかね」
「まだ、そこまで考えていません。それに指導教授から同じレポートを三島の研究所へ送っていただきましたし」
「三島の遺伝研? すると葛城教授のところへ」
「はい。量子細胞学の世界的権威ですし、クローン人間が成功するなら、あの先生以外にないと思います。それに、
もうひとつ別の選択もあるんじゃありませんか」
「別の選択?」
「ええ。家庭に入ろうかとも思ってるんですよ。いい人がいればの話ですけど」
今にして思えば、あの日あの時、あのレポートが全ての始まりだった。

エヴァ流『罪と罰』
三島の遺伝学研究所・・・
4544:01/09/15 02:55
桜の名所なんです。
46鈴木 俊二(本物):01/09/16 19:44
三島か、懐かしいな。
47ミッチェル:01/09/17 01:31
アスカがドアを開けようと瞬間、それが内側から開いた。
「あっ!」二人同時に声を上げて、しばらく立ちすくんだ。
「ちょっとシンジ! こんな時間にどこいくつもりよ!? そんなに大きな荷物にチェロ
ケースまで持って。ここを出ていく気!!」
「ご、ごめん。アスカと顔を合わせるとつらくなるから、黙って行くつもりだったんだけ
ど」
「そんな問題じゃないでしょ! あんた、あたしの首締めたの忘れたわけじゃないでしょ
うね! でも許してやるわよ。内罰的なあんたにしては珍しいことだし」
「アスカ…」
「でも、だからって黙って行こうなんて、あんたほんとに一体何考えてるのよ!」
「お願いだ、アスカ…」
「どっちにしたって、あんた一人じゃ何もできないくせに!」
「聞いてよアスカ!!」
「な、なによ。そんなムキになって」
「いいかい。ミサトさんは、もう戻らない。おそらく加持さんだって。これから僕らは一
人で生きていかなきゃならないんだ。父さんもいなくなった。最初からそうだったんだ。
アスカはドイツにママがいるんだよね。僕は先生のところへ戻る。全て終わったんだ、エ
ヴァのパイロットもネルフの隊員も」
「ふざけんじゃないわよ! 全て終わった!? 冗談じゃない。これから始まるんじゃな
い!」
「ごめん、アスカ。でも、ミサトさんと三人で暮らしていた時は色々あったけど、ほんと
うに楽しかった。もう行くよ」
「ちょっと、待ちなさいよ! バカシンジ!!」
シンジの乗ったエレベータのドアが閉まった。
なによ、カッコつけちゃってさ! この時間だもの、終電車に間に合うはずないじゃない
の。
このあたしが何も知らないと思ったら大間違いよ。ちゃーんとミサトから情報、ゲットし
てるんだから。
出て行ったはいいけど、いつかと同じようにオールナイトの映画館でヒマつぶししてるか、
駅のホームで一人ポツンとSDAT聞いてボンヤリしてるか、大方、そんなところでしょ!
で、明日になれば戻って来て『やっぱり二人でやり直そう』って云うか、このあたしが迎
えに行くのを待っているかのどちらかなんだから。
わかってんよ、バカシンジ!!
そう、日本の漢字で『あした』って『明日』って書くのよね。明るい日。ちょっといいじ
ゃない。
シンジが戻って来たら、こんな英語を教えてやらなくちゃ。
"Tomorrow is another day."

エヴァ流『風と共に去りぬ』
48某転調(本物):01/09/17 03:35
>>44-47
桜でしたら和光市の理研も負けず劣らず。
量子細胞学の架空論文でもお願いできませんか?
>>47
?????? 奥さんでない奥さん !!!!!!
応援sage
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。

二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。

『エヴァはわらったよ。』

『エヴァはかぷかぷわらったよ。』

『エヴァは跳てわらったよ』

『エヴァはかぷかぷわらったよ。』

上の方や横の方は、青くくらく鋼のように見えます。
そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れて行きます。

『エヴァはわらっていたよ。』

『エヴァはかぷかぷわらったよ。』

『それならなぜエヴァはわらったの。』

『知らない。』

つぶつぶ泡が流れて行きます。
蟹の子供らもぽつぽつぽつとつづけて五六粒泡を吐きました。
それはゆれながら水銀のように光って斜めに上の方へのぼって行きました。

私の幻燈はこれでおしまいであります。(宮沢賢治)
↑あ、なんか懐かしい。
「おちついて、シンジ君。ゆっくりと歩くことを考えて」

「弐号機、フィールド全開!」
「やってるわよっ!」
「まさか! 初号機が瞬間移動!?」

「カヲル君、きみはぼくにその役目がやれるって?
ぼくはただのエヴァ・パイロットだよ!」
「もう、きみはぼくを必要としていないよ。
それに、いいかい。ぼくは神でも使徒でも
クローンでもない、ただのエヴァパイロットだよ。
ただ、だれよりもエヴァの操縦が好きなパイロットさ」

「いいかい、アスカ。まず、ゆっくりと歩くことから
始めるんだ」

エヴァ流『かもめのジョナサン』