.ミサト「明日のこと、まだ迷ってるのね。
もう決めたでしょ、シンジ君。いつまでもそうやって考え込んでないで」
シンジ「僕は別に、…ミサトさんが一方的に、行けって言っただけです」
.ミサト「不安なの、お父さんと二人だけで会うのが」
シンジ「…当たり前ですよ。何話せばいいかもわからないのに」
.ミサト「会話なんて無理にできるもんじゃないわ。顔を合わせれば自然と
話したいことが出てくる、そういうものよ。まずは、まっすぐお父さんの
顔を見ること。短い間でいい。それだけでも、大事なことなのよ」
シンジ「……」
.ミサト「…ま、他人がどうこう言うもんじゃないけどね。けど、逃げることでもないわ。
せめて明日、レイが一緒に行ければね」
シンジ「…その方が、僕は」
.ミサト「え?」
シンジ「…何でも、ないです。…もう寝ます。おやすみなさい」
.カヲル『そう、妹さんは行かないのか。残念だね』
シンジ「いや…僕は別に、…どっちでも一緒だったから」
.カヲル『心配、なんだね。お父さんが、君と彼女のどちらを見てくれるのか』
シンジ「そういう訳じゃ…、…いや、そう…なのかな。
…うん。一緒ならたぶん、父さんはレイとだけ話すだろうから。
僕はただ二人のそばについてるだけ。自分から話すこともできないくせに、
二人の邪魔をしたくないからって自分に言い訳して、結局何もしない。
…だからレイが行けなくて、本当は少しほっとしてるんだ。…嫌な奴だよな」
.カヲル『そう? 君はお父さんも妹さんも、恨んでしまいたくないだけだよ。
二人を大事に思うから、自分を悪く見たがるのさ。自責することないよ』
シンジ「そう…かな。…そう、どっちにしろ、明日は行かなきゃ。レイの分も」
.カヲル『そうだね。君が元気な姿を見せるのが、お母さんも一番安心すると思うよ』
シンジ「うん。…あの、ごめん。夜遅くに、いきなり電話でこんな話して」
.カヲル『構わないよ。話を聞くくらい、僕で良ければ』
シンジ「…うん。…ありがとう、いつも」
シンジ(父さんもレイも、恨みたくない、か)
シンジ(…なんでレイじゃなくて、カヲル君に聞いてもらおうと思ったんだろ。
父さんの話するなら、真っ先にレイが浮かんでいいはずなのに)
シンジ(でも考えてみたら、レイが父さんにどう接してるのか、父さんはどうなのか、
僕は大したこと知らないんだ)
シンジ「…双子って、思ってたより、近くないんだな。本当は」