もしもシンジとレイが双子だったら

このエントリーをはてなブックマークに追加
115名無しが氏んでも代わりはいるもの
終わりです。ありがとうございました。




お題『もしシンジとレイが双子だったら』

ケージにて

シンジ「何をいまさらなんだよ。父さんは、僕がいらないんじゃなかったの?!
    …レイのことは引き取ったくせに!」

シンジのゲンドウへの不信感激増の予感
116名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/13(日) 21:16:47.20 ID:???
  碇「冬月。レイを起こしてくれ」
冬月「使えるかね」
  碇「死んでいるわけではあるまい」
シンジ「!」

ストレッチャーでレイが運ばれてくる

冬月「十年ぶりの対面か…」
シンジ「…!」
  レイ「……」
シンジ「れ、レイ…? 君が? その、どうしたんだよ、そのケガ」
  レイ「……(すごく痛そう)」

シンジ「………」

シンジ「やります。僕が乗ります!」


唐突にお兄ちゃん魂発生
117名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/13(日) 21:17:47.34 ID:???
戦闘後

..ミサト「一人で…ですか?」
黒服「そうだ。彼の住居は、このさきの第六ブロックになる」
..ミサト「…それでいいの、シンジ君?」
シンジ「よくないです」
..ミサト「ほら、やっぱたった一人でなんて…」
シンジ「レイを引き取ります」
..ミサト「は?!」
シンジ「あんな父親失格の人のそばになんか置いておけません。
    妹は僕が面倒みます」
..ミサト「えぇええ?!」



成計画、発動
118名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/13(日) 21:55:07.93 ID:???
>>116>>117
いいね
119名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/14(月) 17:37:57.15 ID:???
>>118
いい…んですか?!


追加

本部の通路で電話してるミサト
..ミサト「だーかーら、レイは退院したらシンジ君とこに行くことになったから。
    上の許可も獲ったし。…心配しなくても、双子の兄妹の間柄でどうこう
    なんてこと、起きたりしないわよ」
. リツコ『当たり前でしょう! 何考えてるの、あなたって人は!…』
..ミサト「あいかわらずジョークの通じないやつ」
シンジ「…ジョークなんですか? それ」
..ミサト「やあねぇ、ジョークに決まってるじゃない。
    それともなにか、思い当たるフシでもあるのかナ?」
シンジ「ないですッッ!!」

ミサト、出歯亀疑惑発生
120名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/14(月) 17:39:40.13 ID:???
結局ミサトに引き取られることになったシンジ
街を俯瞰する高台にて
 シンジ「…すごい。ビルが生えてく…!」
  ミサト「これが、対使徒専用迎撃要塞都市、第三新東京市。
     わたしたちの街よ。…そして、あなたが守った街」
 シンジ「………」

 シンジ「…僕はただ、レイを守っただけですから」
  ミサト(いいセリフ台無しか…)


ミサトのマンション
  ミサト「さっ、入って」
 シンジ「あの…お、おじゃまします」
  ミサト「シンジ君。ここはあなたの家なのよ?」
 シンジ「……
     …た、ただいま」
  ミサト「おかえりなさい」
 シンジ「ただいま、おかえりなさい、か。なんか…気持ちのいい言葉ですね」
  ミサト「でしょ?」
 シンジ「……今度は僕が、レイに言ってあげるんですね」

  ミサト(…いい加減そこから離れなさいよ)


シンジ、兄馬鹿化の予感
121名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/16(水) 12:31:36.77 ID:???
 ミサト「シンジ君たら、ほんとにレイを引き取るための転居願い、出しちゃった
    のよ。あんな世話好きのお兄ちゃんだとはね」
 リツコ「受理する方も、する方じゃない?」
 ミサト「…やっぱり、許可下りないんじゃないかって思ってた?」
 リツコ「そうね。あのレイが他人と暮らせるとは思えないし」
 ミサト「思えなかったし、よ。もう引っ越し手続き済んでるんだから」
 リツコ「……」
 ミサト「何にせよ、シンジ君にとっても、これからがほんとの生活の始まりなのよ。
    ここでのね」
 リツコ「…そうね」

  ミサト「というわけで、またも新たなる同居人の歓迎会を…
     …って、シンジ君? どしたの、改まって」
 シンジ「ミサトさん、今までお世話になりました」
  ミサト「えええ?! ってまさか、こないだの転居願いって…」
 シンジ「ちゃんと目、通してくれなかったんですか?
     僕、ここを出て、レイと二人暮らしをすることになるんですけど。
     ミサトさんに二人も負担抱えてもらうわけにはいかないですし、
     レイの面倒、ちゃんと見てあげないといけないから」
  ミサト「……ッ」(書類の控えに首を突っ込んでいる)
 シンジ「…ミサトさん?」
  ミサト「シンジ君」
 シンジ「はい?」

  ミサト「お願いだからあたしの面倒も見てくれない…?」
 シンジ「お断りします(キッパリ)」
122名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/16(水) 12:46:16.71 ID:???
ミサトの必死の懇願により、同居継続

  ミサト「レイ、退院おめでとうー!」
  .レイ「……」
 シンジ「良かったね、レイ。…あの、勝手に手続き進めちゃって、
     …気に入ってもらえるように、がんばるから」
  .レイ「……」
  ミサト「あら、どしたのレイ? 困った顔しちゃって」
 シンジ「…やっぱり、一人の方が、良かったのかな」
  .レイ「……」
 シンジ「……あの」
  .レイ「…ごめんなさい。こういうとき、どんな顔したらいいかわからないの」
 シンジ「…、レイ…!
     べっ別に、気にしなくていいよ。レイが普通だって思う通りで、さ。
     あ、料理の味、どう? 手、つけてないけど、口に合わなかったかな」
  .レイ「……(ぱく)」
 シンジ「……」
  .レイ「おいしい…」
 シンジ「良かった…そうだ、味噌汁も飲んでみて。あったまるよ」

  ミサト「………気のせいかしらん。何かが違うって気がヒシヒシと」


いろいろと台詞前倒しの予感
123名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/17(木) 12:36:23.99 ID:???
学校でトウジとイザコザ発生後

 シンジ(なんであれに乗ってるんだろう。人に殴られてまで)
  .レイ「……」
 シンジ「…!」
  .レイ「非常招集。先、行くから。
     …お兄ちゃん」
 シンジ「……
     すぐ行くよ。待ってよ、レイ」


 シンジ「うおおおおおおッ!」
  ミサト「よっしゃ、いいわシンジ君!」
 青葉「目標、完全に沈黙!」
 一同「おお〜」

   碇「フ…問題ないな」
 冬月(…妙にあっさり同居を承諾したと思えば…)



シンジって、近しい人、親しく思える人のためにはがんばっちゃう奴だと思う
あと「お兄ちゃん」とか「ごちそうさま」とかに飢えてそう
124名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/17(木) 12:53:43.14 ID:???
  シンジ「どうしてあいつ、いつも一人なんだろうって思って」
  トウジ「そら言うたら、一年のとき転校してきてから、ずーっと友達いてへんな」
 ケンスケ「なんか、近寄りがたいんだよな」
  トウジ「なんや、お兄ちゃんとしては心配なんか?」
  シンジ「そりゃ…でも、僕が首突っ込むことでもないし」

  シンジ「レイ、もう掃除終わったの?」
   .レイ「あと、ゴミ捨てたら終わり」
  シンジ「じゃ、待ってるよ。一緒に買い物して帰ろう」
   .レイ「う、うん」

 ケンスケ「あ〜あ、完全に過保護兄だなぁ。な、トウジ」
  トウジ「……ワシも妹手伝わんといかんような気になってきたわ」
 ケンスケ「…状況は拡大感染の模様、か…」
125名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/18(金) 08:43:26.78 ID:???
単純に考えて、双子だったら
パーソナルデータも酷似してるはず として

  .レイ「今度の作戦は、わたしが初号機に乗る」
 シンジ「駄目だよ、危ないよ。僕が乗る」
  .レイ「…お兄ちゃんのけち」
 シンジ「けちとかじゃないってば」
  .レイ「けち」
 シンジ「ああもう、わかったよ」
  .レイ「…やった」(小さくばんざーいのポーズ)
 シンジ「しょうがないなぁ」

 伊吹「パルス逆流! 初号機、起動しません」
  リツコ「仕方ないわね。パイロット変更、パーソナルを書き換えて、再起動」
 伊吹「はい」

 レイ「おかあさんのけち…」
  碇「ユイはシンジびいきだったからな」
126名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/20(日) 15:16:16.10 ID:???
  ミサト「いっただっきまぁ〜す」
 シンジ「いただきます」
  .レイ「いただきます」
  ミサト「うんうん、シンちゃんのご飯は今日もおいし…
     ……?」
 シンジ「? どうしたんですか、ミサトさん」
  ミサト「んー、なんでもないわよ」
 シンジ「…? あ、レイ、はい、醤油」
  ミサト「……」
  .レイ「…何見てるんですか、葛城一尉」
  ミサト「な、なんでもないわよん」

  ミサト(…おかずに箸をつける順番が同じ…か)
127名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/20(日) 15:29:16.71 ID:???
 青葉「昔、お互いの存在を知らずに育った双子の兄弟がいたんだが、
     初めて出会った時、とても驚いたそうだ」
 日向「そりゃ、実は自分に兄弟がいるとわかれば驚くさ。双子じゃなくても」
 伊吹「驚くというか、喜ぶんじゃないかしら」
 青葉「それが、お互い話をしてみたら、乗っている車の車種、付き合っている
     彼女の名前、大学で専攻した科目、就いた職業。おまけに産まれた子供の
     人数、性別、名前まで、ことごとく一致したらしい」
 伊吹「ええ?!」
 日向「シンクロニシティってやつかな、双子の」
 伊吹「それにしても、すごい偶然」
 青葉「ま、事実は小説よりも奇なりってことじゃないか」

    三人「………」
 シンジ&レイ「な、「なんですか」」
    伊吹「シンクロニシティ、かしら…」
    日向「いや、単にハモッただけだって」
128名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/20(日) 15:31:18.93 ID:???
×おまけに産まれた
○おまけにその後産まれた

ミスった…
129名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/23(水) 11:57:44.37 ID:???
   教師「では出席を取りますよ…えー、相田!」
 ケンスケ「はーい」
   教師「えー、碇!」
シンジ&レイ「「はい」」
   一同「………」
   教師「……
      あー、…よし、碇は両名ともいるな」

  トウジ「まーた同じことしてんのやな、センセ」
 ケンスケ「『これがいわゆるセカンドインパクトで…』と
      いい勝負だよな」

  シンジ(呼び直してくれないんだ…)
130名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/20(金) 21:29:29.61 ID:???
アスカ「あんたたちねぇ、もうちょっと自分の立場を理解しなさいよ!
    同じクラスで同じ苗字なんて、キモチワルイでしょうが!」
 レイ「どうして?」
アスカ「どうしてって…」
 レイ「私、別に気持ち悪くないわ」
アスカ「…この子にジョーシキを問うのが間違いだったわ」

シンジ(僕はどっちに賛成しとけばいいんだろう…)
131名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/23(月) 13:34:20.35 ID:???
  レイ「……」(肉を残す)
. シンジ「あ、ゴメン、また一緒に盛っちゃったね…
    次から、気をつけるから」(味噌汁すする)
 アスカ「あんたたち、双子のくせに食べ物の好みは全っ然違うのね」
  レイ「そんなことないわ」(納豆まぜまぜ)
. シンジ「そういえば意識したことって、ないや」(すかさず醤油を渡す)

  ミサト「今日も我が家は平和、か…」(ビール二缶め)
ペンペン「クワーッ!」(焼き魚完食)
132名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/23(月) 13:55:19.16 ID:???
水泳授業中のレイ、プールサイドで足を滑らせる

バスケ試合中のシンジ、リバウンド取ろうとして足がもつれる


ケンスケ「ふぅむ、なるほどね」
 トウジ「何を一人で納得しとるんや」
ケンスケ「今、碇二人が同じポーズで転んだ」
 トウジ「上(プール)と下(グラウンド)で?」
ケンスケ「そう。十秒差くらいで」
 トウジ「ほぉ」
133名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/24(火) 17:39:32.41 ID:???
 .レイ「どいてくれる」
シンジ「うわっ、ごッ、ごめん」

シンジ、手をどける
レイ、左側から起きあがろうとする
シンジ、左側によけようとする

 .レイ「……」
シンジ「ご、ごめん」

シンジ、右側によけようとする
レイ、右側から抜けようとする

シンジ「……」
 .レイ「……」
シンジ「…僕が先にどくね」
 .レイ「…うん」
134名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/24(火) 18:00:29.65 ID:???
  ミサト「駄目、よけて!!」
 シンジ「えっ?」

   レイ「!!!」

 .伊吹「どうしたの、レイ!」
  .リツコ「ショックを起こしてるわ。…まさか、シンジ君の痛みを
     感じてしまったというの」
 .伊吹「双子のシンクロニシティ、ですか」
  ミサト「もう、こんなときに! ケイジに行くわ、あとよろしく」

ネルフ、マジでピンチ
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/25(水) 13:22:29.18 ID:???
シンジ「また、あれに乗らなきゃいけないのか」
 .レイ「そうよ」
シンジ「僕は…イヤだ。レイはあれに乗って怖い目にあったことがないから
    そんなことが言えるんだ。もう、あんな思い…したくない」
 .レイ「…わたしだって、痛かったのに」
シンジ「え?」
 .レイ「もう、寝てれば。初号機にはわたしが乗る。
    自分で動いて痛い目にあった方が、ましだもの」
シンジ「そんな…それは…」
 .レイ「さよなら」
136名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/25(水) 13:28:46.48 ID:???
シンジ「…ッ、駄目だ!」
 .レイ「!」
シンジ「…イヤだけど…ほんとにイヤだけど、それで他人に、妹につらいことを
    押し付ける方が、もっとイヤだ。
    僕が乗るよ」
 .レイ「…お兄ちゃん」
シンジ「心配、するなよ」



作戦後

 トウジ「シンジのやつ、実は反撃作戦の前に妹にグチッて、叱られたんやと。
     いやー、どこの家でも妹はしっかり者やなぁ。
     ワシも妹見舞いに行くとき、気をつけなあかんな。ハハハ」
ケンスケ「……」
 トウジ「ん、どないした、ケンスケ」
ケンスケ「……なんで…なんで俺にも妹がいなかったんだ〜!! ちくしょう!!」
 トウジ「……」
137名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/27(金) 12:11:08.46 ID:???
    ミサト「おっふぁっよ〜」
     プシッ
    ミサト「んぐ、んぐ、んぐ、んぐ、…ぷっはぁあ〜っ! くぅうう〜!
       朝一番はやっぱコレよねぇ〜」
   .シンジ「…コーヒーじゃ」
    レイ「ないんですか」
    ミサト「…?
       おっ、二人ともおんなじ顔して睨んじゃってー。やっぱり双子なのねん」
シンジ+レイ「「えっ」」

両者、お互いをじーっ

   .シンジ「…、えっと、その…」
     レイ「……」
シンジ+レイ「「…、ごめん」なさい」
シンジ+レイ「「…あっ」」

笑いこけるミサト
138名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/27(金) 13:26:41.05 ID:???
 アスカ「で、いるんでしょ、ここに。もう一人」
. シンジ「もう一人?」
 アスカ「あんたバカぁ? ファーストチルドレンに決まってるじゃない」
. シンジ「ああ、レイなら…」
 アスカ「……?!
     ちょっと、名前呼び捨て? まさか出来てんの二人?!
     何よ、トロくさいと思ってたけど、けっこうやるんじゃない」
. シンジ「いや、そうじゃなくて…あっ」

 アスカ「ヘロゥ? あなたがイカリ・レイね。プロトタイプのパイロ…
     …ッて、同姓?! まさか…まさかほんッとに出来てんの?!
     なんたる非常識、14歳なのにフケツにもほどがあるわッ!」
  レイ「……」
. シンジ「待ってよ。違うって」
139名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/27(金) 13:27:51.06 ID:???
 アスカ「ふん、弁解できるものならしてみなさいよ」
. シンジ「あの、妹なんだ。双子の」
  レイ「……」
 アスカ「……ふたご…」
  レイ「そうよ」
 アスカ「……」
 トウジ「黙ってもうたな」
ケンスケ「そりゃ、あれだけ大上段で行ったんだし」
 アスカ「………
     何よ、非常識よ。碇司令の子供だからって、二人揃ってパイロットなんて
     贔屓にもほどがあるわよ! この、親の七光りコンビがぁっ!!」
 シンジ「ええっ?!」
ケンスケ「…引っ込みがつかなくなった、と」
 トウジ「ほんま、エヴァのパイロットって、変わり者が選ばれるんちゃうか」
140名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/27(金) 14:11:17.15 ID:???
 アスカ「このグズに合わせるなんて、どだい無理な話なのよ」
  ミサト「じゃあ、やめる?」
 アスカ「ほかに人、いないんでしょ」
  ミサト「レイ」
  レイ「はい」
 アスカ「…!」
  ミサト「やってみて」
  レイ「はい」

 一同「おお〜」

 トウジ「さすが双子やなぁ」
ケンスケ「まさにユニゾンだね」
  ミサト「これは、レイの零号機の改修を優先させた方がいいかしら」
141名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/27(金) 14:13:43.52 ID:???
 アスカ「……何よ。だったらそうすればッ!!
     どうせ元から組んでる二人の方が、作戦も成功するでしょうよ!
     後から来た私なんか、どうでもいいんでしょ!! バカッ!!」

 シンジ「あの…」
 .アスカ「何も言わないで!」
 シンジ「……」
 .アスカ「わかってるわ。私はエヴァに乗るしかないのよ。
     …言い訳に使って、悪かったわね」
 シンジ「えっ?」
 .アスカ「双子のことよ。相性とか、呼吸とか、そんなの後講釈だわ。
     要は、もっと上手くやってみせればいいのよ。…それしか、ないんだわ」
 シンジ「……」
 .アスカ「…何よ、何笑ってんのよ! 気持ち悪い!」
 シンジ「べっ、別に笑ってなんかないだろ!」
142名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/27(金) 14:14:36.46 ID:???
ユニゾン作戦成功後

 トウジ「で、まだやっとるんやて? あいつ」
ケンスケ「そう。碇妹に張り合うつもりらしいよ」
 トウジ「ご苦労なことやなぁ」

 .アスカ「ちがーう! そこであんたがコケるんでしょうが!」
 シンジ「…もう、なんでこんな、漫才の真似みたいなことしなきゃならないんだよ」
 .アスカ「漫才じゃない! パートナーシップ構築のための訓練よ!
     日頃の生活から、双子どうしより、息が合ってるってことを証明してやるの!!」

ケンスケ「理屈は一応わかるような気もするけど…」
 トウジ「…せやけど、どう見ても漫才やな」
ケンスケ「だね」

  .レイ「……」
 シンジ「あ、レイ…! あの、これは別に…」
  .レイ「…がんばれば」
 シンジ「そんなぁ…」
143名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/05/30(月) 11:40:02.44 ID:???
伊吹「プロトタイプの零号機には、特殊装備は規格外なのよ」
. リツコ「レイには、零号機とともに本部で待機してもらいます」
..アスカ「残念ね〜? 温泉、行けなくて」
  レイ「……」

作戦終了後 
温泉宿露天風呂

 .シンジ「は〜、いい湯だなぁ」
ペンペン「クエーッ」
 .シンジ「綾波も、今頃準待機解かれて、風呂に入ってたりして」

同 本部大浴場

  レイ「はぷしゅっ」
  レイ「…一人だけど、いいお湯」
144名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/01(水) 18:57:42.38 ID:???
しまった…  ×綾波 ○レイ >>143


 .シンジ「また別れ道だ…」
  アスカ「うーん、右ね」
   レイ「私は左だと思うわ」
 .シンジ「僕もひ…」
  アスカ「もうっ私がリーダーなんだから、黙ってついてくればいいのよ!」
 .シンジ「でも、レイの方がここ詳しいんじゃ…」
  アスカ「シスコンは黙ってて!」
 .シンジ「……シスコン…」
   レイ「時間がないわ。行きましょ」
  アスカ「もーうー、リーダーの言うことをききなさいってば!」

 伊吹「三機とも、発進準備完了しました」
 青葉「しかし、パイロットが…」
  リツコ「大丈夫。あの子たちは必ず来るわ」

  リツコ「……たぶんね」
 一同「えっ」
145名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/10(金) 11:03:32.82 ID:???
  ミサト「レイは?」
 アスカ「誘ったわよ! でも付き合い悪いのよね、あの子」

  両者、シンジをじーっ

. シンジ「な、何?」


 アスカ「ど・こ・に・し・よ・う・か・なーっ、と。
     今度は、あんたも来るのよ」
  レイ「私、行かない」
 アスカ「…#」
. シンジ「なんで僕のほう見るんだよ」
146名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/10(金) 11:04:29.78 ID:???
 アスカ「当然でしょうが」
. シンジ「…?」

. シンジ「…!」
. シンジ(まさか…兄が責任とれとか、そういう…?)
 
 アスカ「……」
. シンジ「れ、レイ! どうして行きたくないの?」
  レイ「…肉、嫌いだから」
. シンジ「じゃあさ、レイでも食べられるところにしてもらおうよ。ね?」
  レイ「…う、うん」
 アスカ「……
     最初っからそうやればいいのよ。このドンカン」
. シンジ(……やっぱり…)
147球磨川 禊ψ ◆DMZBuMECHA :2011/07/23(土) 07:27:26.87 ID:???
『みつどもえは、全然似ていない三つ子で、性別は同じ女性ですが、顔は似ていない。』
『二卵双生児である可能性が高い。』

『一卵双生児なら、性別は同じで、顔と体つきは似ているし。』
148名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/09/01(木) 19:23:07.14 ID:???
. ミサト「そう言えば、二人は双子なんだから、何もシンジ君が
    お兄ちゃんじゃなくてもいいんじゃないかしらん」
シンジ「そ、そうですか?」
. ミサト「いいじゃない、お姉ちゃんレイ。ね?」
 .レイ「…お姉ちゃん」
. ミサト「そ。はいシンジ君ー、言ってみて」
シンジ「ええ?! もう、仕方ないなぁ…
    お…お姉ちゃん?」
 .レイ「…なに、弟」
シンジ「え…と、何でもない…よ」
 .レイ「そう」
. ミサト「…なんかいつも通りだわねぇ」
149名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/01/29(日) 23:58:16.60 ID:???
保守
150名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/03/20(火) 21:21:06.55 ID:???
この二人絶対結婚しないまんま年寄りになってW介護になりそうな気がする。
151名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/04/22(日) 22:59:40.62 ID:???
保守
152名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/08(水) 00:14:00.90 ID:???
捕手
153名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/08(水) 10:58:34.90 ID:???
どっかのスレでマヤがシンジの姉だったらという話があったな
マヤ、レイ、シンジの三姉弟だったらどうなるんだろう
154名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/18(土) 10:07:36.23 ID:???
test
155名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/18(土) 10:38:20.33 ID:???
このスレまだ残ってたのか!


 伊吹「シンジく…あ、いえ、シンジ、前回よりハーモニクス値が
     8も向上してるわ。
     …が、がんばったわね。お姉ちゃん、嬉しいわ。…なんて」
 シンジ「え? …あ、あの、…ありが、とう。…お姉ちゃん」
  .ミサト「お〜、いい感じじゃない」
 伊吹「ふふ。あ…レイも、お疲れさま。連動試験の数値、よくなったわね」
  .レイ「そう」
 伊吹「…えっ?」
  ミサト「あら? 『お姉ちゃん』は?」
  .レイ「……」
 伊吹「…えっと…」
  .レイ「……」
  ミサト「あちゃー…」
 伊吹「……こ、こんなところでしょうか、先輩」
  リツコ「…そうね。お疲れさま」
  .ミサト「ん〜、何がマズかったのかしらん」

 シンジ「レイ、どうかしたの? さっき」
  .レイ「…お姉ちゃんはわたし」
 シンジ(…続いてたんだ…)
156名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/23(木) 18:57:08.49 ID:???
マヤお姉ちゃんと双子乙
157名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/25(土) 10:24:02.63 ID:???
シンジ「考えてみればさ、僕が兄でもおかしくないんだよね」
レイ「シンジがお兄さんなの?」
シンジ「うん、レイは妹。……なんで笑うのさ」
レイ、そっぽ向いて、「笑ってないわ」
シンジ「嘘だよ、肩が震えてるじゃないか。そんなにおかしい?」
レイ、シンジを見て、「笑ってなんかいないわよ。でも、シンジがお兄さんだなんて」
シンジ「やっぱり笑ってるじゃないか」
158名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/31(金) 01:49:21.47 ID:???
まあ、実のところシンジは末っ子にしかみえない
もし、リツコ、ミサト、マヤ、マリ、カヲル、アスカ、レイ、シンジの順番の姉弟だったらと妄想してしまう
159名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/31(金) 07:31:26.77 ID:???
結構面倒見がいいとこあるし、さすがに末っ子はないんじゃないか
というかそもそもこのスレではシンジが兄だったと思うけど
160こうですか!わかりません!:2012/08/31(金) 19:46:36.55 ID:???
熱帯夜深更

 リツコ(…ん…何? …ああ、クーラーのタイマーが切れたのね)
 リツコ(…さすがに寝つけないわね、この暑さは)
 リツコ(…そうだわ)

 リツコ「ミサト。ちょっと、ミサト、起きなさい。
    悪いけど、クーラーのリモコン近くにないかしら」
 .ミサト「んー…。知らないわよう…あー、マヤちゃん、ねえ」
  .マヤ「…聞こえてます、お姉さまたち…こっちにもないわ。マリちゃん?」
  マリ「うにゃー、うっるさいなぁ…んっと…カヲルぅ、あとよろしく」
 カヲル「まったく、他力本願だねぇ…アスカ、すまないけど」
 アスカ「なぁにが、すまないけど、よ…んもう、レイー、お願い」
  レイ「…わたしも、お願い。シンジ」
 シンジ「えー…?
     はぁ…やっぱり、そうくるんだ。もう…はい、点けるよ」

 総員「ふー、やれやれ。おやすみー」
 シンジ「おやすみなさい」

 シンジ(良かったな、すぐにリモコン見つかって。みんな眠そうだったし)
 シンジ(……ん?)
 シンジ(…ありがとう、とかは…?)


お人好しぎみな末っ子。
別々の部屋で寝ろよという突っ込みはなしでよろしくお願いします
161名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/08/31(金) 20:39:13.05 ID:???
>>160
>>158だけどナイス!
GJ!!
162名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/09/25(火) 18:02:22.42 ID:???
双子かわいい
163名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/09/27(木) 07:28:27.09 ID:???
委員長「碇さん、プリント配るの手伝ってくれない?」
  シンジ「あ、うん。はい、貸して」
委員長「えっ…? …もう、碇君じゃなくて、碇さん! 妹さんの方!」
  シンジ「わっ、ご、ごめん」

委員長「碇君! 今週の掃除当番、忘れてるでしょ!」
   .レイ「? ごめんなさい」
委員長「あれ…? あ、ちょっと、違うわ。碇君、お兄さんの方よ」
  シンジ「あ…ごめんっ」
   .レイ「じゃ、私、先に帰るから」
  シンジ「うん。ミサトさんに、晩ご飯カレーだよって言っといて」
   .レイ「わかった」
  .トウジ「…まーたやっとるで。もはや恒例行事やな」
. ケンスケ「ま、仕方ないさ。双子が同じクラスに在籍してること自体、無理があるんだし」
  トウジ「あの二人もいい迷惑やなぁ」
委員長「こら、そこの二人! あなたたちも当番でしょ!」
. ケンスケ「いけね」
164真希波・マリ・イラストリアス ◆.H78DMARI. :2012/09/28(金) 07:43:51.90 ID:???
真希波・マリ・イラストリアス
「でたな!鬼婆ライダー!真希波キック!!」

ガツン!!ガシャン!!←マリが扇風機を蹴飛ばして、アスカの頭に倒れる時の音。

式波・アスカ・ラングレー
「うがぁーっ!!何をするのよ!?」

渚カヲル
「アスカ、落ち着けよ。マリだって寝ているんだから。それよりも、扇風機が壊れちゃったぞ。動かねえよ。」

式波・アスカ・ラングレー
「この扇風機、この間、ミサトマートで買った安物だわ。」

真希波・マリ・イラストリアス
「うるさいわね…。さっきの騒動で目が覚めちゃったじゃないの…。」

その後、扇風機無しで寝たが、蚊がうるさいので、マリとアスカは蚊をビシバシやる四マツ。
カヲルの顔に蚊が止まったため、二人でおもいっきりビンタ。

渚カヲル
「いてえな!おバカヤロー!」

マリとアスカ
「ちっ!逃したか…。」
165名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/09/28(金) 20:46:40.73 ID:???
キャラ違うし・・・
166名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/10/02(火) 12:57:37.42 ID:???
やはりここは長子リツコから末子シンジまでの8姉弟で
167名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/10/06(土) 17:55:03.22 ID:???
この際ゲームなどに登場したキャラも含め、
長女リツコ
次女ミサト
三女マヤ
四女サツキ
五女アオイ
六女カエデ
七女マリ
長男カヲル
八女アスカ
九女レイ
十女マナ
十一女マユミ
次男シンジ
の十三人姉弟でどうだ
1681/2:2012/10/19(金) 10:47:15.54 ID:???
それだとスレタイが…


  リツコ「やれやれ、ただいま。
     やっと我が家だわ。久しぶりとはいえ、徹夜がこんなに堪えるなんてね」
  ミサト「ふっふ〜ん、トシね、トシ。認めなさいよ」
   マヤ「あ。ミサトお姉さまだって、一つしか違わないじゃないですか」
  ミサト「あら、相変わらずマヤちゃんはリツコびいきなのねん」
   マヤ「べ、別にそんな」
   .マリ「はいはーい、いいから早く玄関あけてくんないかなぁ。遅刻しちゃうじゃんか」
 . カヲル「マリ、その前に『おかえりなさい』ぐらいは言わないとね」
   .マリ「ったぁー、年下のくせに呼び捨てするかー、ふつー。
     あ、そんなことより、シンジ、今日のお弁当なーに? さっき見逃しちった」
  アスカ「ざーんねん。今日のは、この私が腕をふるったの。期待してよね」
   マリ「…うそっ」
1692/2:2012/10/19(金) 10:48:52.42 ID:zAbSY/fQ
  カヲル「へえ、それは珍しいね」
   .マナ「ほんとほんと。やー、鬼が出るか蛇が出るかって感じだよね」
  マユミ「それはちょっと、言いすぎですよ。せいぜい、開ける前に爆発物処理班を呼ぶくらい、です」
  アスカ「…そこの二人、聞こえてるわよ」
   マリ「にゃー、怖い怖いー。さっ、巻き込まれないうちに先、行くか」
  カヲル「そうだね。シンジ、レイ、そろそろ出ないと遅れてしまうよ」
  シンジ「うん。行こう、レイ」
   レイ「あ、待って。ヴィオラ、持っていかないと」
  シンジ「そっか、今日通しで練習だっけ。兄さんは来れるの?」
  .カヲル「生徒会の方が長引かなければね。一応、席を作っておいてくれるかい?」
  シンジ「わかった」
  アスカ「ほら、もう、ぐずぐずしない! んじゃ、年少組、行ってきまーす」
  .ミサト「はーい、行ってらっさい」
   .マヤ「ふう。毎朝毎朝、あわただしいですね」
  .ミサト「そう言えば、従姉妹三人娘は今日帰ってくるんだっけ?」
  リツコ「そうね。松代の作業が一段落するみたいよ。さて、昼まで眠るわ。おやすみ」
   .マヤ「おやすみなさい、お姉さま。さ、私も出る支度しないと」
  .ミサト「うーむ、徹夜明けに寝ビール一缶…ダメか…どう思う、ペンペン?」
.ペンペン「クエーッ」


…くらいの感じで。これでも多すぎかww
170名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/10/19(金) 10:52:09.67 ID:???
うわっsage忘れすみませんでした
171名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/10/20(土) 00:38:26.30 ID:???
>>169の従姉妹達がサツキ・アオイ・カエデの3人で普段は同居というワケか
それもまた良し♪
1721/3:2012/10/22(月) 11:23:47.96 ID:???
シンジ「今日はエヴァの訓練もないし、ミサトさんも遅い、か。
    ただいまー…って、誰もいないよな」
 .レイ「…お帰りなさい」
シンジ「?! れ、レイ? 零号機の再試験じゃなかったの?」
 .レイ「神経系統の二次調整が必要になって、明日に延びたの」
シンジ「そう…なん、だ」
 .レイ「……」
シンジ「…あの、良かったね」
 .レイ「何が?」
シンジ「えと…、その、…今日、ゆっくり休めて」
 .レイ「……」
シンジ「あ…ごめん、別に、…休みがいいことだなんて、そんなの、
    僕の勝手な感じ方だよね。レイは、後から呼ばれた僕と違って
    ずっと真剣だもんな。エヴァに乗ることに」
 .レイ「……
    それは、いいことなの」
シンジ「え?」
 .レイ「きっと、他に、することがないだけだわ。私」
シンジ「…そう、かな」
 .レイ「え」
1732/3:2012/10/22(月) 11:24:53.92 ID:???
シンジ「そんなことないなんて、…僕だって、そんな風に言う自信ないけど、
    でも、レイは、ちゃんと自分で決めてそうしてるって気がするよ。
    結局成り行きで乗ってる僕とは違う。…いいことだと、思うよ」
 .レイ「……」
シンジ「…なんて、少しはきょうだいらしいこと言おうとしたりして。
    似合わないよね、はは」
 .レイ「…お兄ちゃん」
シンジ「…え」
 .レイ「…やっぱり、お兄ちゃんだと思う。私が、お姉ちゃんなんじゃなくて」
シンジ「…レイ…?」
 .レイ「……ありがとう。お兄ちゃんでいてくれて」
シンジ「…!」
 .レイ「…お茶、淹れるわ」
シンジ「あ…いいよ、僕がやる」
 .レイ「…あ」
シンジ「やらせてよ。お兄ちゃん、なんだしさ」
 .レイ「…、うん」
シンジ「僕も、レイがいてくれて、…その、すごく嬉s
1743/3:2012/10/22(月) 11:26:09.45 ID:???
ガラッ

 ミサト「たっだいまー。ったく参っちゃうわー、直前になってデータ差し替え、
    おまけにMAGIの評価待ちで、結局、夜にまた出勤だなんてもう最っ低だわー。
    ま、おかげで晩ご飯食べる時間できたのはラッキーだけど、にしてもリツコのやつ…
    …って、あれ?」

シンジ+レイ「「……」」

   ミサト「…ど、どうかしたの、二人とも?」
シンジ+レイ「別に「何でもないです」」
   ミサト「何でもないって、その二人ともなんかすごく…」
シンジ+レイ「「なんでもないです」」

   ミサト「………ひょっとしてあたし、すごくKYだったのかしらん」
 ペンペン「クエーッ(わかれよ)」



初心に帰ってみました。にぎやか大家族ももちろんいいけどね。
175名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/10/23(火) 18:49:56.88 ID:???
 トウジ「双子いうても、顔はあんま似てへんのな。あの二人」
.ケンスケ「男女の双子だからね。いわゆる『そっくりさん』な一卵性じゃなくて、
     二卵性双生児ってやつだと考えるのが自然なんじゃないの」
 トウジ「そら…つまり、どういうことや」
.ケンスケ「生まれるタイミングがたまたま一緒だったってだけで、遺伝的には
     普通の兄妹と同じってことかな。確か」
 トウジ「なんや、そうなんか」
.ケンスケ「しかも、ずっと別々に生活してきたんだろ。好き嫌いとか習慣とか、くせなんかも
     大して共通点ないと思うぜ、たぶん」
 トウジ「お互いのこと、知らんで生きてきたわけやから、か。
     …なんや、寂しい話やな。おーい、碇!」

 シンジ「えっ?」
  .レイ「何」

 トウジ「………?!!」
.ケンスケ「…共通点、ないはずなんだけどなぁ」
 トウジ「……
     おい、おいおい、見よったか今の?! 振り向く動きが完全に一致しとっ…」
.ケンスケ「いやー、謎が深いよなぁ、双子って」
 シンジ「ねぇ、何の用なんだよ…?」
  .レイ「気にしなくていいと思うわ」
176名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/11/09(金) 07:26:00.25 ID:???
test
1771/3:2012/11/09(金) 07:47:57.59 ID:???
.アスカ「あーあ、やっと解放されたわ。
    ったく、毎日毎日、似たような訓練ばっか。たまには、もっと派手ーな仮想演習とか
    やってくれたっていいのに。何のための決戦兵器なのよ。ね、シンジ」
シンジ「そ、そうかな」
.アスカ「何よ、張り合いないわねぇ。…ん」
シンジ「? あ、レイ」
 .レイ「…お兄ちゃん」
シンジ「これから、零号機の追加試験だっけ? 遅くまで、お疲れさま」
 .レイ「…平気。少しだから」
シンジ「なんか、リツコさんがあとで来てくれって。パーソナルデータの更新とか言ってた」
 .レイ「わかったわ。じゃ、先、帰ってて」
シンジ「うん」
.アスカ「……」

.アスカ「…あんた、よく気持ち悪くないわね」
シンジ「なんだよ、いきなり」
.アスカ「あの子よ、あの子。ファースト」
1782/3:2012/11/09(金) 07:49:07.11 ID:???
シンジ「ええ?
    なんでレイのこと、そんな風に思わなきゃいけないんだよ」
.アスカ「だって、ここに来たとき、初めて顔を合わせたんでしょ? 実の双子なのに。
    しかもお互い、全然知らないまま育ってきたんでしょ。なんで普通に接してるのよ」
シンジ「普通にって、…当たり前じゃないか。それこそ、実の兄妹なんだから。
    …アスカは、変だと思うの?」
.アスカ「変、って言うか、…イヤじゃないの? ある日突然、自分とよく似た人間が現れて、
    しかも自分と同じ立場で、一緒にやっていくなんて。
    同じ、なのよ? 自分の存在理由とか、少しは悩んだりしないわけ? あんたは」
シンジ「別に、…そういう風に、考えたことない、けど」
.アスカ「無自覚もいいとこね」
シンジ「…え」
.アスカ「あんた、馬鹿? ほとんど同じ人間を二人揃えるってことは、結局、一人はもう一人の
    交替要員ってことじゃない。あんた、あの子の予備でいいわけ」
1793/3:2012/11/09(金) 07:49:55.08 ID:???
シンジ「…予備だなんて、…そんな、僕もレイも、そんなつもりないよ。
    僕は僕で、レイはレイで…それで、アスカとも、皆で力を合わせて戦って、…それじゃ、
    駄目なのかな」
.アスカ「…駄目とは言わないわよ。
    ただ、あんたはそれで良くても、本当のところはどうなのか、ちっとは疑ってもみろ
    って言ってるの」
シンジ「…うん。…でも、僕は今のままでいい。
    ここに来るまで、お互い、いることも知らなかったけど、今は、僕の大事な家族なんだ。
    …家族ってどんなものなのか、わかった気がするんだ。
    だから、レイのことは疑わない。…ほんとに、そんなこと考えられないんだ」
.アスカ「……
    いつか、痛い目見るわよ。絶対に。…それでもいいわけ」
シンジ「…、うん」
.アスカ「…あんた、ほんとに馬鹿ね」
180名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/11/18(日) 08:04:48.79 ID:???
「エヴァに乗ったら呪われて人外になります」
ってなんだそれ

んな設定なくても、エヴァに乗るのは子供たちにとっちゃ充分に呪いだったろうに
181名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/11/24(土) 08:30:53.40 ID:???
幸福の科学の声優

子安武人 小清水亜美 吉野裕行 白石涼子 三石琴乃 置鮎龍太郎
掛川裕彦 伊藤美紀 安元洋貴 銀河万丈 千葉繁 三木眞一郎
真山亜子 西村知道 島本須美 柳井久代 青山桐子 大本眞基子
雪野五月

原作・原案:大川隆法『仏陀再誕』
企画・脚本:大川宏洋
監督:石山タカ明
音楽:水澤有一
キャラクターデザイン:佐藤陵、須田正己
美術監督:佐藤勝
編集:古川雅士
音響監督:宇井孝司
VFXクリエイティブ・ディレィター:粟屋友美子
VFXスーパーバイザー:オリバー・ホッツ
アニメーション・プロデューサー:藤田健
アニメーション制作:グループ・タック
配給:東映
制作:幸福の科学出版
182名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/11/26(月) 19:39:26.08 ID:???
Q1 双子だと実感するのはどんな時ですか?

  .レイ「…よくわからない」
 シンジ「うん。正直、それほど気にしたことない、かな…?
     皆にはよくそう言われるけど、自分では、あまり実感ないんだ」
  .レイ「必要、ないもの」
 シンジ「はは、そうかもね」


Q2 逆に、似ていても他人だなと思うのはどんな時ですか?

 シンジ「うーん…こっちは、ありすぎて答えにくいや」
  .レイ「そうね。たくさんある」
 シンジ「え、レイも、そうなんだ。じゃ、例えば?」
  .レイ「プールに行った時」
 シンジ「え…?(カラダ的な意味で? ていうか、あの時思わず見とれたの、気づかれてた…?!)」
  .レイ「泳げないなんて、思わなかったもの」
 シンジ「(良かった、そっちか…)
     えー? 人間は浮くようにはできてないんだよ」
  .レイ「……」
 シンジ「な、何だよ、その顔」
  .レイ「べつに」
183名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/11/27(火) 11:57:27.35 ID:???
レズ妄想できないじゃないか
184名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/11/27(火) 12:34:45.70 ID:???
幸福の科学の声優

子安武人 小清水亜美 吉野裕行 白石涼子 三石琴乃 置鮎龍太郎
掛川裕彦 伊藤美紀 安元洋貴 銀河万丈 千葉繁 三木眞一郎
真山亜子 西村知道 島本須美 柳井久代 青山桐子 大本眞基子
雪野五月

原作・原案:大川隆法『仏陀再誕』
企画・脚本:大川宏洋
監督:石山タカ明
音楽:水澤有一
キャラクターデザイン:佐藤陵、須田正己
美術監督:佐藤勝
編集:古川雅士
音響監督:宇井孝司
VFXクリエイティブ・ディレィター:粟屋友美子
VFXスーパーバイザー:オリバー・ホッツ
アニメーション・プロデューサー:藤田健
アニメーション制作:グループ・タック
配給:東映
制作:幸福の科学出版
185名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/11/28(水) 14:22:24.92 ID:???
創価学会の声優

青羽美代子…聖教新聞2009年4月1日5面。1968年入会、芸術部員副白ゆり長。
沢口(石橋)千恵…創価中学校・高等学校卒業。
高橋直純…聖教新聞2002年6月2日5面他(男子部メールマガジン「DAN」2002年6月7日号)東京昭島支部副部長
生天目仁美…聖教新聞(2006年4月11日)東京新宿青春支部女子部員
本名陽子…創価大卒、ビデオ出演
麻生かほ里…コンサート(2004年、創価学会音楽隊結成50周年記念演奏会・創価グロリア吹奏楽団第18回定期演奏会)出演、CDも発売。
伊瀬茉莉也…2008年7月19日PR大会出席と学会系ブログに記載。田中美奈子(創価)代表の動物愛護団体ELFにも参加
銀河万丈…創価・幸福の科学両方CMを担当。
186名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/12/02(日) 09:56:01.57 ID:???
新劇は双子設定の可能性あるな
187名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/12/03(月) 09:40:35.02 ID:???
Q あなたにとって、双子のきょうだいとはどんな存在ですか?

 シンジ「え…っと…
     …一緒にいると、なんだか、安心する。他人だけど、他人じゃないっていうか。
     お互い、違うけど似てるから、他の人とより、少しは、緊張せずにいられる…のかな。
     そのことが…似てるってことと、違うってことが、嫌じゃない。だから、安心する」

  .レイ「…不安。
     一緒にいると、自分が自分じゃないような、気持ちになる。
     そこにいる相手が、不確かな自分の、よすがになってしまう。ここにいるための。
     それは、自分にも、相手にも、違うことのはずなのに。だから、不安」

  .レイ「お兄ちゃん」
 シンジ「何?」
  .レイ「どこにも、行かないで」
 シンジ「行かないよ。だって…きっと、僕たちは、ここにいてもいいんだ」
  .レイ「…それで、いいの」
 シンシ「…うん。僕は、そう思う」
  .レイ「………ありがとう」
 シンジ「え? ごめん、今、何か言った?」
  .レイ「…なんでもない」
188名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/12/03(月) 11:00:59.46 ID:???
双子で最初からスタートした場合レイはデレ全開になるのか?
1891/3:2012/12/03(月) 11:12:33.59 ID:???
やっとQ観てきた。レイのこと気遣いながら話しかけるシンジが嬉しかった。
ただ、それだけに、序・破の気持ちを持ち続けてたのはシンジだけだったことが悲しい。
なんかQより『巨神兵東京に現る』の方が本編みたいだったなぁ。ちゃんと終わってたし。
あとカヲル君、彼はほんとにいい子だ…というか、シンジのこと心底好きなんだなきっと。


  .ミサト「うわーん、作戦部長が遅刻ってのはさすがにマズイわよねッ、ったく。
     (振り返って)さ、シンジ君、行くわよ! …って、あれ? レイ??」
  .レイ「…お兄ちゃんなら」
 シンジ「何やってんですか、ミサトさん! 先に車のとこに行ってますねって、
     さっき言ったじゃないですか。なのに、いつまで待っても来ないし」
  .ミサト「あっれー…? おっかしいわね、ずっとシンジ君がそこにいるもんだと…」
 シンジ「いたのは、レイでしょ。まったくもう」
  .ミサト「ゴメンゴメン、だって似てるんだもの、気配が。やっぱり双子なのねん」
  .レイ「そう?」
シンジ「それとこれとは関係ないでしょ。ほら、早く行くんじゃないんですか!」
  .ミサト「はいはい、怒らなくてもいいじゃない。んじゃレイ、戸締まりよろしく」
  .レイ「行ってらっしゃい」
1902/3:2012/12/03(月) 11:13:41.66 ID:???
 .カヲル「へぇ、そんなことがあったんだね」
 シンジ「うん。ったくもう、呆れちゃうよ。そりゃ、普段からズボラなとこはあるけど、
     幾らなんでも、人を取り違えるなんて。…それとも、…そんなに、間違えやすい
     のかな。僕らって」
 .カヲル「確かに、よく似てはいるね」
 シンジ「はぁ…やっぱり、そうなんだ」
 .カヲル「ただ、人違いをするほどとは思えないな」
 シンジ「…そう、かな」
 .カヲル「僕にとってはね。全然、違うよ。感じがね」
 シンジ「そうなんだ…」
 .カヲル「…どうかしたのかい? なんだか、元気が出たような顔をしているけど」
 シンジ「えっ、あ、いや、何でもないよ。…なんていうか、…ううん、やっぱりいいよ。
     (振り返って)あの、カヲル君はさ…、…?! レイ??」
  .レイ「…彼なら、さっきからそこよ」
 シンジ「えっ? あれ?? …ッ、ごめん、…その、二人とも」
  .レイ「………」
 .カヲル「ふふ。僕らも、気配が似ているのかな」
1913/3:2012/12/03(月) 11:15:45.62 ID:???
 リツコ「あら、そんなことがあったのね」
 .ミサト「レイってば結構怒った顔してて、もう、笑いこらえるのが大変だったわー」
 リツコ「人間の感覚なんて、案外当てにならないものかもしれないわね」
 .ミサト「そ。思い込みに勘違い、誤解にど忘れ。せいぜい反省しながら行かなきゃね。
    (振り返ってから)ねっ、リツコ」
 リツコ「? …呆れた。付け焼き刃で慎重になっても、身につかないわよ」
 .ミサト「それは言わないお約束」

 .カヲル「まだ機嫌、直らないのかい? 彼女」
 シンジ「うん…ねえ、レイ、ごめんってば」
  .レイ「…知らない」
 シンジ「はぁ…」
 .カヲル「大変だね、お兄ちゃんというのも」
1921/3:2012/12/05(水) 18:58:38.93 ID:???
>188 別に変わらないんでは? 双子だとしてもあのままかも


 シンジ「それにしても、ここに来たばかりの時は、大変だったな」
  .レイ「何が?」
 シンジ「いきなり、いろいろなことが起きて。エヴァとか、使徒とか、戦いのことだって、
     …僕なんかに、そんなことが起きるなんて思ってもみなかったから。
     でも、一番は、レイに会えたことかな」
  .レイ「そう?」
 シンジ「当たり前だよ。目の前の怪我してる女の子が、顔も覚えてないレイだったなんてさ」
  .レイ「…私は、知らされてた」
 シンジ「僕が来ること?」
  .レイ「うん」
 シンジ「そうなんだ。やっぱり、父さん…から、だよね」
  .レイ「そう、碇司令から」
 シンジ「…父さんのこと、そんなふうに呼んでるんだ。ずっと?」
1931/3:2012/12/05(水) 18:59:46.76 ID:???
  .レイ「そう。覚えてるかぎり、ずっと」
 シンジ「……」
  .レイ「どうしたの?」
 シンジ「…ほんとはさ、僕は、レイのことうらやましかったんだ。僕は小さい頃
     先生のところに預けられたのに、レイは、初めから父さんと一緒だったから。正直、
     父さんは僕よりレイの方が大事なんだって、…ずっとひがんでた」
  .レイ「……」
 シンジ「自分だけが辛い思いしてるって、思い込んでたんだ。…そんなはずなかったのに」
  .レイ「…お兄ちゃん」
 シンジ「ううん、いいんだ。
     あのさ、レイは父さんのこと、…好き?」
  .レイ「…わからない」
 シンジ「わからない?」
  .レイ「うん。…そういうふうに、考えたこと、ないから」
 シンジ「考えたことない、って…」
  .レイ「…お兄ちゃんは、葛城一尉のこと、名前で呼ぶのね」
 シンジ「あ…うん」
1943/3:2012/12/05(水) 19:00:49.28 ID:???
  .レイ「碇司令のことも、お父さん、って呼んでる」
 シンジ「…うん」
  .レイ「……いいな」
 シンジ「え?」
  .レイ「…なんでもない」
 シンジ「…、レイもさ、呼んでみればいいのに。父さんのこと、父さんって」
  .レイ「…無理。きっと」
 シンジ「そんなことない。できるよ、絶対」
  .レイ「…私にも?」
 シンジ「うん。
     そうだ、いきなりで難しいなら、例えば、まずミサトさんやリツコさんに試して
     みたらどうかな。…あ、でも、レイが嫌だったら、することないんだよ」
  .レイ「ううん。…やって、みる」
 シンジ「ほんと? 良かった、…けどなんか、無理やり押しつけちゃったみたいで」
  .レイ「違うわ。
     それに、私、お兄ちゃんのことは、お兄ちゃんて呼べたもの」
 シンジ「あ、…そういえば、そうだね。…なら、きっとできるよ。父さんにも」
  .レイ「…、うん」

 ミサト「どしたの、難しい顔して」
 リツコ「…ああ、ミサト。それがさっき、レイに名前で呼ばれたの」
 ミサト「レイに? 『リツコさん』って?」
 リツコ「そう。あのレイによ」
 ミサト「いいんじゃない? そう深刻に考えなくても。第一、いい傾向じゃない」
 リツコ「…だといいわね」
 ミサト「そうよう。喜びこそすれ、悩むことじゃないわよ。あ、それと」
 リツコ「何?」
 ミサト「驚いたのはわかるけど、…ボールペン、上下逆に持ってるわよん」
 リツコ「えっ? …!!」
 ミサト「…まったく、ほんとは嬉しいんじゃないのかしらん」
195名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/12/07(金) 09:58:38.89 ID:???
 リツコ「その後どう、双子との生活は」
 .ミサト「ん? もうすっかり慣れたわよ。公平に決めた家事当番も無事定着したし」
 リツコ「定着したのは二人にでしょう。察するに、あなたは大して入ってないんじゃない?」
 .ミサト「う…何よ、その言い方は」
 リツコ「何にせよ、お互い家族でいることが板についてきたようね。まさか、
     私生活に関してはあれほど自堕落で無責任なあなたが、二人の子供の
     保護者を務められるなんて、正直思わなかったもの」
 .ミサト「…前半はともかく、ま、おおむね同意するわ。自分でもまだ驚いてるもの」
 リツコ「人間の環境適応能力も、まだまだ捨てたものじゃないわね」
 .ミサト「そ。人間、何にだって順応してくもんよ。今じゃ、二人が一緒の速度で
     コーヒー飲みほすのも、同じ方に振り返っておでことおでこぶっつけるのも、
     同じタイミングでトイレに立っちゃって譲り合いするのも、あとは食事どきに
     両側から同時に手を伸ばして、お醤油ひっくり返すのにも慣れたわー。
     あ、でも、起き抜けでねぼけまなこの二人から、左右からサラウンドで
     『おはようございます』って挨拶されるのは、さすがにまだちょっち
     びっくりするけど」
 リツコ「…あなた、本当に大した環境順応力だわ」
196名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/12/20(木) 21:57:39.98 ID:???
test
1971/3:2012/12/26(水) 20:58:10.32 ID:???
  ミサト「二人ともおっはよう。ふむふむ、今朝は海草サラダにオムレツねん。
     いっただっきまー…ん? どしたの、レイ? 食べないの?」
  .レイ「……」
 シンジ「レイ? あ、そっか。はい」
  ミサト「え? お酢? サラダに?」
 シンジ「これでどう? 食べられそう?」
  ミサト「えっ、それじゃちょっち、酸っぱいんじゃ…」
  .レイ「…ありがとう」
  ミサト「ええ?? いいの、それで?」
  .レイ「うん」
 シンジ「ドレッシング、薄味にしたから、レイには海草のにおいが気になるのかもって思って」
  ミサト「なるほど、さっすがお兄ちゃん。…けど、なんでそうだってわかんのかしら」
 シンジ「さあ…なんとなく、そうかなって」
  ミサト「ふーむ…さしずめ、シンクロニシティか双子の神秘だわね」
 シンジ「もう、ちゃかさないでくださいよ」
  .レイ「…おいしい」
1982/3:2012/12/26(水) 20:59:23.35 ID:???
  ミサト「ただいま〜。ふー、今日もくたびれたわ〜」
 シンジ「お帰りなさい、ミサトさん。ちょうど、ご飯できるところですよ」
  ミサト「おー、ありがと。あ、でも、先にシャワー浴びてくるわ」
 シンジ「あ、はい」
  .レイ「お兄ちゃん」
 シンジ「何? あ、そうか」
  ミサト「どしたの?」
 シンジ「お風呂の温度、直しときますね。さっきレイが入ったから、少しぬるめになってて」
  ミサト「あ、なるほど。悪いわね…って、今のだけで話、通じてたの…?」
 シンジ「? 別に、普通に気がつく流れだったと思いますけど」
  ミサト「そうかしらん」
 シンジ「あ。また、シンクロニシティとかそういう話に結びつけようとしてるでしょ」
  ミサト「あはは、ごめんごめん。あっれー、シンちゃん、けっこう顔が怒ってるわよん」
 シンジ「誰のせいだと思ってるんですか。まったくもう」
  .レイ「お兄ちゃん、お味噌汁、沸いてる」
 シンジ「え? うわっ」
1993/3:2012/12/26(水) 21:00:51.00 ID:???
  ミサト「やれやれ、今日もなんとか平和に過ぎた、か。二人ともー、そろそろ寝なさい」
 シンジ「はーい。あ、そうだ、レイ」
  .レイ「覚えてる。けど、私」
 シンジ「それはいいよ。けどさ、ほら」
  .レイ「そうね。じゃ、明日」
 シンジ「うん」
  ミサト「…??!」
 シンジ「? どうかしたんですか?」
  ミサト「…一応訊くけど、今の、会話…だったのよね?」
 シンジ「?? そうですけど。レイ、明日からクラスの週番なんですけど、ネルフの検診で
     遅刻するから、午前中の仕事は僕が代わりにやっておくよって。でも、委員長って
     けっこうそういうこと細かいから、学校に来たら、ちゃんと断っておきなよ、って…
     …あれ? ミサトさん?」
  ミサト「……
     あり得ない…やっぱり…やっぱり、双子って人知を超えた存在なんだわ…」
 シンジ「ミサトさん?? ちょっと、どうしたんですかミサトさん?!」
  .レイ「そっとしておいた方がいいと思うわ」
200名無しが氏んでも代わりはいるもの:2012/12/30(日) 00:02:41.34 ID:???
いつも乙です
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/01/01(火) 11:27:10.52 ID:???
あけおめ
2021/2:2013/01/03(木) 19:52:25.45 ID:???
  シンジ「あけましておめでとうございます、ミサトさん」
   ミサト「はーい、おめでと、シンジ君。今年もよろしくね。
      …よろしく、なんて、軽く言うのはずるいけどね。お互い、がんばりましょ」
  シンジ「はい。…お正月の間くらい、使徒が来ないといいですね」
   ミサト「うんうん、まったくだわ〜。お屠蘇くらいゆっくり呑ませてほしいもの」
  シンジ「ミサトさんのお酒はいつものことでしょ」
   ミサト「あらら、初小言? もーう、怖い顔しちゃって。ね、ペンペン」
..ペンペン「クエーッ」
  シンジ「もう。…レイ、そろそろ終わった?」
   .レイ「…うん」
  シンジ「じゃ、開けるよ…、…!!」
   ミサト「…わーお。すっごい綺麗じゃない、レイの振袖姿! まさに天女のごとしだわ」
   .レイ「どうしたの、お兄ちゃん」
  シンジ「え?! ッいや、別に、…その、…あんまり、綺麗だから」
   .レイ「…! 本当」
  シンジ「本当だよ。えっと…に、似合ってるよ、すごく」
2032/2:2013/01/03(木) 19:53:28.72 ID:???
   .レイ「…、あ、ありがと」
   ミサト「ったく、二人して照れちゃって。本日の我が家は春爛漫ってとこねん」
  シンジ「べ、別にいいじゃないですか、ほんとに綺麗なんだから。
      レイ、帯とか初めてなんだよね、大丈夫? 苦しくない?」
   .レイ「平気。少し、動きづらいだけ」
  シンジ「そっか。あ、そうだ、あとで記念写真撮ろう、せっかくだから」
   .レイ「うん」
   ミサト「ふむふむ、今年もお兄ちゃんは世話焼き大好きで行くわけね。美しい兄妹愛だわ〜」
  シンジ「だから、そういうの今年はやめましょうってば」

  冬月「どうした、碇。さっきから携帯の画面ばかり見て」
    碇「…いや、何でもない。葛城三佐のパイロット監督報告だ」
  冬月「要は、年賀状かね。時代は移っても残る、美しい日本の習慣、か。感慨深いものだな」
    碇「……」
  冬月「…碇。
      そうやって隠さなくても、私の端末にも同じものが届いていたぞ。添付画像も一緒に」
    碇「…!!」
  冬月「『あけましておめでとうございます お父さんへ』…か。綺麗になったな、レイも」
    碇「………」
  冬月「…もしや、泣いているのか、碇?」
    碇「…いや。何でもない」
  冬月「そうかね」
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/01/05(土) 17:21:23.30 ID:???
乙です
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/01/08(火) 20:57:07.14 ID:???
あげ
206名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/01/12(土) 10:55:19.61 ID:???
いいスレ
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/01/12(土) 10:57:36.93 ID:SGBiZTWX
双子ならアスカは精神が安定するよね
2081/4:2013/01/12(土) 13:16:38.45 ID:???
  .レイ「ただいま」
 シンジ「あ、お帰りー、レイ」
  .レイ「…?」
  ミサト「こっちこっち、キッチンに集合よん」
  .レイ「? …甘い匂い」
 .アスカ「豆よ、豆。豆に砂糖どばーっと入れた真っ黒いスープ。
     ほんと、日本人の食事のセンスって信じらんない。味の想像もつかないわ」
  ミサト「それは食べてのお楽しみよん。さ、レイも座ってー」
  .レイ「……」
 .アスカ「何よ?」
  ミサト「ああ、アスカなら、私が連れてきたの。せっかくの機会だし」
  .レイ「機会?」
 シンジ「お汁粉、作ってるんだ。昨日鏡開きだったの、すっかり忘れてて」
  .レイ「おしるこ」
  ミサト「そ。お正月に飾ってた鏡餅を入れて食べるの。
     この際だから、アスカにも日本の正月の良さを体験してもらおうと思ってね」
 .アスカ「別に、そんなの頼んでないわよ、私。
     こんなオママゴトみたいな真似につき合う義務も理由もないし」
2092/4:2013/01/12(土) 13:18:02.71 ID:???
 シンジ「まぁまぁ、とにかく、味見だけでもしてみてよ。
     はい、これ。箸はこっちを使って。…口に、合わないかもしれないけど」
 .アスカ「何よ、いちいちいじけんじゃないわよ。…わざわざ来たんだし、一応食べるわよ。
     ッてミサト、それは私の分でしょ! 何横から取ってんのよ!」
  ミサト「だーめ、一番乗りは家長の権利って決まってるの。さ、いっただっきまーす」
 シンジ「あ、ほら、ちゃんと皆の分あるから」
 .アスカ「ったくもう、何なのよこの家は。…じゃ、もらうわ。うわ、あっつそう」
 シンジ「うん、お餅もお汁粉も熱いから、気をつけて。はい、レイの分」
  .レイ「…いい匂い」
 シンジ「甘すぎたらごめん。そうだ、お茶も淹れるね」
  .レイ「……おいしい」
  ミサト「んー、さっすがシンジ君! やさしい甘さとあったかさがお腹に沁みるわー。
     うんうん、やっぱりこうでなくっちゃ。さあて、日本の伝統スイーツのお味はどう? アスカ」
 .アスカ「どうって、人が食べてる最中に…ん」
 シンジ「…あの、やっぱり、アスカには合わなかったかな」
2103/4:2013/01/12(土) 13:19:20.17 ID:???
  .レイ「……」
 .アスカ「! 何よ、いちいち同じ目つきで見ないでよ、妹。……べつに、悪かないわよ」
 シンジ「そっか。…良かった」
 .アスカ「…ふん、そんなことでくよくよしてちゃ、使徒になんか勝てないわよ」
 シンジ「…、そうだね。はは、ごめん」
  ミサト「ぷはーッ、おいしかったー。あ、シンジ君、おかわりある?」
 シンジ「ええ?! まだ食べるんですか?」
  ミサト「もっちろん」
 .アスカ「うっそー、この甘いのを? あとで気持ち悪くなっても知らないわよ」
  .レイ「…わたしも」
 .アスカ「!」
 シンジ「あ、うん。…はい。二杯目だから、ちょっと少なめにしたよ」
  .レイ「…ありがとう」
 .アスカ「ちょっと、馬鹿シンジ。私も」
 シンジ「え? だって気持ち悪くなるって…」
 .アスカ「いいから寄越す!」
 シンジ「え、あ、うん」
  ミサト「もーう、アスカったらむきになっちゃって、可愛いとこあるじゃない」
 .アスカ「!! 何よもう、うるっさい!」
  .レイ「…ふう。おいしい」
2114/4:2013/01/12(土) 13:20:33.40 ID:???
 トウジ「そういや年明け、碇兄妹と外で会ってんけどな」
ケンスケ「何だよ、その顔。ユニゾン発声で『あけましておめでとう』とでも言われたの」
 トウジ「いや…ワシも絶対そう来ると思ってたのにな」
ケンスケ「違ったの?」
 トウジ「…シンジが『あけまして』って言うたとたん、即、碇妹が『おめでとう』って
     綺麗に繋げてきたんや。いやー、さすがのワシも驚いたわ。シンジも驚いとったけどな」
ケンスケ「分割年始か…やっぱ、双子って謎だよなぁ」
 トウジ「んな大げさな。ま、にしても、今年はどうなることやろうな」


年始ネタ引っぱってごめんなさい。あとあまり双子っぽい点がなくてすみません。
いろんな方が読んでくださってるみたいで、大変うれしいです。これからも精進します。
212名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/01/15(火) 08:23:41.54 ID:???
この設定ならアスカはツンを控えめにしてデレを多めにしても良さげな気がする
213名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/02/04(月) 19:55:05.21 ID:???
ツンツンか
214名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/02/14(木) 12:50:01.43 ID:???
ツンヤン
215名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/02/15(金) 00:31:26.18 ID:???
.ミサト「あら、レイ、お帰りなさい。…ん? 何持ってるの? 後ろに」
 レイ「…赤木博士が、今日はこれを渡すものだって」
.ミサト「おー、ちゃんとチョコ用意したんだ。ふふ、レイもやっぱり女の子なのね。
   なんか安心したわ」
 レイ「そう、なんですか」
.ミサト「ん。かわいいわよん」
 レイ「…、よくわからない」
.ミサト「あらら? ま、そこがレイらしいっちゃらしいんだけどね。…あ、シンジ君なら
   今ちょーっち忙しいみたいよ」
 レイ「?」

.アスカ「だーかーら、もっとこう、気の利いたアイディアはないのかって言ってるの!
    こんなんじゃ、そこらのコンビニで売ってるのと変わんないじゃない」
シンジ「そんなこと言われても、いきなり作れるわけないだろ。だいたい、なんで
    当日になってからチョコの手作りなんてしようとするんだよ」
.アスカ「だぁもう、うっさいわね。当日になっちゃったからあんたに頼んでるんじゃない」
シンジ「…これが人に物を頼む態度とは思えないんだけどなぁ」
.アスカ「なんか、言った?」
シンジ「言ってないよ。…はぁ」

 レイ「……」
.ミサト「どうする、レイ? シンジ君、呼んでこよっか?」
 レイ「いい。…あとで」
.ミサト「そ。で、ちなみに、レイはお兄ちゃんに、どんなのあげるのかなー?」
 レイ「…、だめ、内緒」
.ミサト「ふふ、そっか。おっし、健闘を祈るわ」
216名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/02/21(木) 18:52:11.29 ID:???
test
2171/2:2013/02/21(木) 19:30:17.25 ID:???
伊吹「零号機、初号機、ともに、第七シークエンスまでの全てのチェックリストを
    クリア。深部シンクロテスト結果、およびハーモニクス、全て問題なし。
    第29次定期起動試験、終了しました。テストログは、集約後にメルキオールでの
    総合解析へ回します」
..リツコ「了解。…シンジ君、レイ、お疲れさま。上がっていいわよ」
両者『『はい』』
伊吹「二人とも、調子いいみたいですね。シンクロ率も、少しずつですけど、安定して
    伸びてきてますし」
..リツコ「そうね。双生児…身体情報、パーソナルデータともに酷似した二人と、二体のエヴァ。
    例の新システムの件、そろそろ本格的に……あっ」
伊吹「先輩? ……あっ」

日向「パーソナルデータの取り違え?! シンジ君と、レイの?」
伊吹「……そうなの…」
青葉「で、初号機と零号機は、ちゃんと起動してたのか?」
伊吹「ええ。…まさかテストが終了するまで、気づかなかったなんて…」
日向「いくら双子とはいえ…驚くべきは、エヴァのシステムの柔軟性ってことか」
2182/2:2013/02/21(木) 19:31:41.14 ID:???
青葉「にしても、赤木博士が同席してたにもかかわらず発覚しなかったとはなぁ」
  碇「ああ。信じがたいミスだ」
三人「「「!!!」」」
冬月「碇、そう怖い顔をするな。機体相互換試験に向けて貴重な先例が得られた
    とも考えられるだろう。少なくとも、検証に値する結果だよ」
  碇「そうか」
三人「副司令…!」
冬月「しかし、一歩間違えば重大事故につながっていたかもしれんのだぞ。
    今後、最低でも技術部への査察の増加は覚悟しておきたまえ」
三人「………」

. ミサト「うー…リツコ? そろそろ、やめといた方がいいんじゃない?」
..リツコ「………」
. ミサト「…あちゃー。こりゃ、飲み明かしコースだわ」
加持「ま、仕方ない。つき合うさ」
2191/3:2013/02/22(金) 13:16:25.43 ID:???
..ミサト「でー、結局、アスカはシンジ君にあげたのかしらん?」
.アスカ「な、何をよ」
 .レイ「チョコレート、14日の」
.アスカ「…やったわよ、一応。わざわざ上に報告しなきゃなんないわけ」
..ミサト「だって、首尾が気になるじゃなーい。あんだけ大騒ぎしてたんだから」
.アスカ「う…大騒ぎとは何よ、大騒ぎとは」
..ミサト「アスカってば、案外かわいいとこあるのよね。当日になってからあわてちゃってさ」
 .レイ「そう、騒いでた」
.アスカ「! 何よ、妹。あんたは関係ないでしょうが」
..ミサト「関係なくないわよーう。レイは、シンジ君にちゃんと渡したもの。ね?」
 .レイ「…うん。あ…お兄ちゃん」
シンジ「もう、何してるんだよ、三人で。またケンカ?」
.アスカ「またとは何よ。だいたい、あんたがボケッとしてるのが悪いんじゃない」
シンジ「?? 何がだよ」
..ミサト「ふーむ。
    ここはひとつ、本人に訊いてはっきりさせときませうか。…シンジ君?」
.アスカ「え、ちょっと、ミサト!」
..ミサト「アスカからはもらった? バレンタインのチョコ」
2202/3:2013/02/22(金) 13:17:51.10 ID:???
シンジ「え? …いえ、確か、アスカからは何も」
 .レイ「……」
.アスカ「何よ、やったでしょ、ちゃんと! その日のうちに!」
シンジ「もらってないよ! あの日は、チョコ作るの手伝わされただけで…あれ」
..ミサト「どしたの?」
シンジ「…チョコ作りの合間、味見しろってくれた分が、もしかして」
..ミサト「ええ? もーう、そんな遠まわしな…あら、ちょっ、アスカ? どこ行くの?!」
.アスカ「…どこまで鈍いのよ、ったく。馬鹿馬鹿しくてやってらんないわ…
   ! 何よ、あんたまで」
.カヲル「どうしたんだい? そんなに慌てて。
    …やあ、シンジ君。この間のお菓子、ありがとう。おいしかったよ」
シンジ「あ、…あれは、たまたま作った分があったから。良かった、口に合って」
..ミサト「ん?」
 .レイ「…お菓子」
.アスカ「…それって、つまり」
シンジ「その、なんか…かえって、ごめん、大したものじゃなくて」
2213/3:2013/02/22(金) 13:20:33.18 ID:???
.カヲル「そんなことないさ。嬉しかったよ、気持ちが感じられて」
シンジ「カヲル君…」
.アスカ「………あげたんだ。チョコ」
..ミサト「なんと。完全に想定外の展開だわ、これは」
 .レイ「…ちょっと、うらやましい」
シンジ「? どうしたの、三人とも」
.アスカ「……馬鹿シンジ。
    あんた、この私が作った分を、このニヤケ男にやったわけ…?」
シンジ「え? 違うって、アスカのじゃないよ。材料の残りがもったいないから、
    自分でも作ってみただけだよ。それを女の子にあげるのも変だし…
    …ッて、なんでそんなに怒ってるんだよ?!」
.アスカ「うるさいッ!! 馬鹿、フケツ、鈍感、信じらんない!」
シンジ「うわ?!」
.カヲル「…大変だね、他者の間で暮らすというのも」
.アスカ「あんたも、なに他人事ヅラしてんのよ! こんの底抜けの大馬鹿コンビが!!」
 .レイ「そういえば、葛城三佐はあげたんですか」
..ミサト「ん? …あらら、そっか、一応あたしもあげる立場だったか。うーん、今から
    用意するってのもなんだし…あ、そうだ! 代わりに、男子二人にはこの、
    特殊仕様のカッコいいチョーカーを」
両者「「 いりませんッ!!」」


規制長かったー…
>212
…やってみたけど、どうも上手くいきません。すみません。
ツンデレって今いちよくわからないんですが、アスカのは、キャラがどうこうと
いうより、シンジに「もっとしっかりしてよ、男でしょ、いいとこ見せてよ」と
言いたい気持ちの現れじゃないかという気がします。個人的にはですが。
222名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/02/27(水) 11:00:44.59 ID:???
222
223名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/02/27(水) 23:58:53.72 ID:???
LASとかはやめてほしい
224名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/03/08(金) 23:31:45.33 ID:???
かわいい
225名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/03/12(火) 18:37:55.28 ID:???
test
226名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/03/12(火) 20:31:42.08 ID:???
血縁的にそうかも、兄弟か親子かどっちか
2271/3:2013/03/15(金) 11:07:12.03 ID:???
. ミサト「二人とも、ちょっちそのままねー。…はい、オッケー」
 .レイ「もう、動いていいの」
シンジ「うん、いいんだよ。…それより、なんでいきなり身長測定なんですか」
. ミサト「んー。二人は背の高さまで同じなのかなって、気になってねん」
シンジ「なんですかそれ…」
 .レイ「それで、同じだった、んですか」
. ミサト「そう! なんと、ぴったりミリ単位まで一致してるの。さっすが双子だわ」
シンジ「もう、毎回双子双子ってはやすの、やめてくださいよ。いい加減慣れましたけど」
. ミサト「事実そうなんだから、しょうがないでしょー。それに、レイのほうはぜんぜん
    気にしてないみたいよ」
シンジ「そうなの?」
 .レイ「うん。…少し、嬉しいから」
シンジ「…、そっか。なら、僕もいいや」
. ミサト「ふふ。シンジ君、ほんとレイには優しいわね。表情まで柔らかい感じ」
シンジ「べ、別にいいじゃないですか、それこそ、双子なんだし。ミサトさんの好きな」
. ミサト「おっと、意外に鋭い反撃ー。…ん、レイ? どしたの、頭触って」
 .レイ「…身長。ずっと、同じなんですか」
シンジ「え?」
2282/3:2013/03/15(金) 11:10:34.04 ID:???
. ミサト「うーん。
    ずっと同じってことはないわ。二人とも成長期だしね、背だってもっと伸びるし、
    心も身体も、きっとどんどん変わっていくわ。もっともっと、あなたたちらしくね」
 .レイ「……」
. ミサト「けど、心配することないわ。どんなに年を重ねても、たとえお互いの距離が
    変化することがあっても、あなたとシンジ君が双子のきょうだいだってことは
    ずっと変わらない事実なんだから。…ね?」
シンジ「え? …! はい」
 .レイ「……おにい、ちゃん」
. ミサト「ん。…ただーし、お兄ちゃんの座は近いうちにおびやかされるかもよ?
    何しろ中学生くらいまでは、女の子の方が伸びが速いんだっていうし。身長」
シンジ「え?! そうなんですか?!」
. ミサト「案外、レイに抜かれるかもね。ふっふっふ、その間はレイお姉ちゃん復活かしらん」
 .レイ「そうなんですか」
シンジ「ええ、レイまで?! うわ、えっ、なんか、どうしよう」
. ミサト「もーう、本気で心配しちゃって、面白いやつ。大丈夫よ、高校に入った頃にはまた
    シンジ君が抜き返してると思うから」
2293/3:2013/03/15(金) 11:11:49.98 ID:???
シンジ「なんだ…」
. ミサト「ま、それもこれも、これから先のお楽しみねん。道は長いわー」
シンジ「ッて、ミサトさんが面白がってどうするんですか! ったく…うわ、もうこんな時間か!」
 .レイ「…これから」
. ミサト「ん、まだ不安? レイ」
 .レイ「…、いいえ。…うれしいの」
. ミサト「…そ。
    あなたたちは、いくらでも楽しんでいいんだからね、これからを。胸を張って行きなさい。
    そのために、私たち大人も頑張れるんだから」
 .レイ「…はい」
シンジ「レイ! もう出ないと、学校遅刻するよ!」
 .レイ「あっ…待って、今、行く」
. ミサト「はーい、行ってらっしゃい。二人とも、気をつけてよ」



なんかミサトさん特集みたいになってしまった。長いし。(いつもか)
>223 そういうのは苦手なんで、ラヴコメ程度の雰囲気までで止まると思います。
読んでくださった方、ありがとうございます。
230名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/03/28(木) 02:23:11.15 ID:???
その後、実はレイが姉であることが判明
それを聞いたアスカの反応「双子の順番なんて、たいして意味ないわよ」
231名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/04/09(火) 00:02:10.20 ID:???
確かにそうかもしれない
232名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/04/14(日) 15:43:10.37 ID:???
流石に?
233名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/04/16(火) 16:31:16.49 ID:???
>230
.アスカ「だいたいね、昔と今じゃ、双子の順番の決め方も違ってたのよ。知らないの?」
シンジ「し…知らなかった、けど」
.アスカ「相変わらずなーんにも知らないのねー。
    今は、先に産まれた方が上って決めることになってるでしょ? 昔は逆だったのよ」
シンジ「後から産まれた方が上、ってこと?」
.アスカ「そ。なんでも、後から産まれた方の子は逆に、先にお母さんのお腹に入ってた
    って考え方だったらしいわ。なーんか、ヘリクツっぽいけど」
シンジ「そうなんだ…アスカ、よく知ってるね、そんなこと」
.アスカ「はん、常識よ。どっちにしろナンセンスね、どうしても順番が知りたければ、
    受精のタイミングとか、卵割開始のあたりまで、ゲンミツにさかのぼるしかないじゃない。
    ま、フツーはそんな情報、残ってないし調べもしないけど」
 .レイ「残ってる」
シンジ「え? …どこに?!」
 .レイ「この前、見せてもらったもの。碇司令に」
.アスカ「……
    それって、受胎前から記録つけてたってこと?! …なんたる親バカ、信じらんない」
シンジ「…父さんって…」
.アスカ「あ、で、どっちが先だったの? 結局」
シンジ「え?!」
 .レイ「知りたい?」
.アスカ「当然でしょ。さ、もったいぶってないで教えなさいよ」
シンジ「…ちょ、ちょっと待って、なんか、心の準備が」
 .レイ「……」
.アスカ「ほらもう、どうなのよ」
 .レイ「………ないしょ」
234名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/04/22(月) 22:13:32.54 ID:???
いつも乙でしゅ
235名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/04/28(日) 18:48:01.27 ID:???
test
2361/4:2013/04/28(日) 20:52:29.01 ID:???
 .レイ「ごめんなさい、遅くなった」
シンジ「ううん、平気だよ。さ、帰ろう。お腹すいちゃったよ」
 .レイ「うん。…わたしも」
シンジ「はは、じゃ、帰ったらすぐご飯にしよっか」
 .レイ「うん…あ」
シンジ「? …あ、カヲル君!」
.カヲル「やあ、シンジ君。それに妹さん」
 .レイ「……」
.カヲル「もう、帰るところかい?」
シンジ「うん、やっと訓練終わって、二人で帰るところなんだ。君も、今
    上がったところ?」
.カヲル「いや、僕はまだ次の試験があるんだ。15分後には再エントリーだよ」
シンジ「…、そっか…」
.カヲル「僕に何か用があったのかい?」
シンジ「あ、いや、…別に、用ってわけじゃない、んだけど。…ッごめん、時間
    ないんだったよね。それじゃ、お疲れさま」
 .レイ「……」
2372/4:2013/04/28(日) 20:53:25.24 ID:???
.カヲル「…待って。確か明日は、夕方には全ての試験日程が終わるはずなんだ。
    その後なら時間が取れると思うよ。久しぶりに、器楽室にでも行こうか」
 .レイ「……」
シンジ「! うん。…あの、ありがとう」
.カヲル「ううん、僕も楽しみだよ。じゃ、また明日」
シンジ「うん。明日」
 .レイ「……」
シンジ「あ…ごめん、レイ。帰ろうか」
 .レイ「……」
シンジ「レイ? …ごめんよ、待たせちゃって。疲れてるのに」
 .レイ「……お兄ちゃん、あの人と仲、いいのね」
シンジ「え?」
 .レイ「…うれしそう、だった。ずっと」
シンジ「え…そう、かな。普通に話してたつもりだけど…変だったかな」
 .レイ「ううん。そうじゃ、ない」
シンジ「??」
 .レイ「……器楽室って、何」
シンジ「さっきの話の? ああ、ピアノがあるんだ、ここの器楽室に」
 .レイ「…ピアノ」
シンジ「うん。変だよね、本部の中なのに。そこで、何度かカヲル君と連弾したんだ」
 .レイ「れんだん」
シンジ「そう。…あ、二人で一緒に弾くんだ、ピアノを。高音と低音の担当に分かれて、
    いい音を出せるように、それぞれ考えながら、でも、協力して」
2383/4:2013/04/28(日) 20:56:51.74 ID:???
 .レイ「…同じ、一つの曲を?」
シンジ「そうだよ。難しいけど、楽しいよ」
 .レイ「……そう、よくわからない」
シンジ「あ…そっか、言葉じゃ、伝わりにくいよね。ごめん」
 .レイ「そうじゃ、ないの」
シンジ「え?」
 .レイ「……わかりたくない、そんなの」
シンジ「レイ? 今、何て?」
 .レイ「…何でもない」
シンジ「…レイ? え…あ、待ってよ。待ってってば」
 .レイ「……」
シンジ「??? 急にどうしたんだよ、もう。長話したのは、そりゃ、僕が悪いけど」
 .レイ「……あの人、ここで何してるの」
シンジ「え? …カヲル君のこと?」
 .レイ「そう」
シンジ「何って、…まだ担当するエヴァが調整中で来ないから、ここで予備訓練だけしてるって
    ミサトさんが言ってたじゃないか。でも、予備なんて言っても大変だよな。僕らより
    試験の量もずっと多いみたいだし。…レイも、零号機が準備できる前は、あんなふうに
    毎日忙しかったんだよね、きっと。なんか…僕だけ、楽してエヴァに乗ってるみたいだ」
 .レイ「…わたし、あんなことやってないわ」
シンジ「え…?」
2394/4:2013/04/28(日) 20:57:51.25 ID:???
シンジ「…どういうこと? それって、カヲル君が」
 .レイ「…、ごめんなさい。わたしの気のせい、だと思う。
    試作型の零号機とは、課される試験が違っても不思議じゃないもの」
シンジ「…レイ…?」
 .レイ「……ごめんなさい。…変なことばかり、言った」
シンジ「…、そんなことないよ。レイはずっとここにいて、長い間一人でがんばってきたんだから、
    後から来た人のことが気になるのは、当たり前だよ。変なんかじゃない」
 .レイ「…ごめん、なさい」
シンジ「なんだよ、謝ることなんかないってば。ほんとにどうしたんだよ、さっきから」
 .レイ「……」
シンジ「……
    しょうがないなぁ、まったく」
 .レイ「…お兄、ちゃん?」
シンジ「こんな遅い時間まで残らされてたからだよ、きっと。落ち着かないのも、気になるのも。
    ほら、早く帰って、ご飯にしよう。レイの好きなもの作るからさ」
 .レイ「……お兄ちゃん」
シンジ「さ、行こうよ。帰ろう」
 .レイ「…うん。うん、…お兄ちゃん」



規制解除ヤッター。
>189で何も考えずに登場させてしまったので、カヲル君の位置付けの話。
長くてすみません。読んでくださった方、いつもありがとうございます。
240名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/04(土) 00:11:16.58 ID:???
 ミサト「じゃあ…行くわよ、二人とも!」
..シンジ「え、あっ、はいっ」
  .レイ「はい」
 ミサト「せーの、じゃんけん…ぽんッ!
    …あっちゃ〜、またあいこか。シンジ君ー、レイ、真面目にやってる?」
..シンジ「すみません…って、なんで謝らなきゃいけないんですか」
 ミサト「だって、これじゃいつまでも今週の風呂掃除当番、決まらないじゃない。
    だいたいねぇ、六回も続けてあいこ出すなんて、普通思わないでしょ。ま、
    仲がいいというか、双子の面目躍如ってとこかしらん」
..シンジ「わざとやってるわけじゃないんですけどね…」
  .レイ「わたしが、やります。掃除」
 ミサト「だっめっよッ、ちゃんと公平に決めた上で実行しないと。さっ、もう一回
    仕切りなおしていくわよっ! せーの!」
  .レイ「じゃんけん、ぽん。…あ、また」
..シンジ「……はぁ…」
2411/2:2013/05/04(土) 21:47:56.51 ID:???
 アスカ「じゃ、行くわよ」
. シンジ「う…うん」
  レイ「…いいけど」
 アスカ「せぇのッ、あっち向いてホイッ!!
    ……ぷっ…ぷくく、あはははは! うそっ、ホントに二人で同じ方見るんだ!
    どんだけ仲いいのよあんたたち! もう運動神経つながってんじゃないの?!」
. シンジ「………」
  レイ「…何がそんなに楽しいの」
 アスカ「は?! おっかしいに決まってるじゃない! あ〜、今の撮っとけばよかった、
    近年稀に見る決定的オモシロ瞬間だったのに〜! あはははは」
. シンジ「………」
 アスカ「何よ、馬鹿シンジ」
. シンジ「べつに」
 アスカ「怒ってるじゃない。ったく、あんたたちをオモチャにしようなんて思ってないわよ。
    今後の作戦展開のために、ちょっと確認したかっただけ」
. シンジ「作戦? 何の」
 アスカ「…あんた馬鹿? 使徒との戦いに決まってんじゃない!
    もしあんたたちが、エヴァでも同期した動作ができるんなら、戦術に幅ができるでしょ」
  レイ「目標に複数の弱点が存在したり、コアを多重攻撃する場合ね」
 アスカ「そ、妹はわかってるじゃない。…あんたね、一応兄の癖に、なんッにも考えてないの?」
. シンジ「…う…」
2422/2:2013/05/04(土) 21:49:00.51 ID:???
 アスカ「はん、普段は世話焼いて偉っそうにしてる癖に、肝心なとこは妹に頼っちゃって。
    ほんと、どっちが上なんだか。つくづく頼りないっていうか、恰好悪いの」
. シンジ「……う…」
  レイ「……
    で、本当なの、今の」
. シンジ「え?」
 アスカ「…何よ、つまんないの。この程度はお見通しってわけ」
. シンジ「?? 何が?」
  レイ「……」
 アスカ「……あんた、ほんッッとに馬鹿ね。
    んな作戦あるわけないじゃない。ウソよ、ウ・ソ! テキトーに言っただけだってば!」
. シンジ「…えっ、…なッ、なんだよそれっ」
 アスカ「あははは、真面目に考えちゃっておっかしい〜! あ〜、面白かった。なかなか
    いい暇つぶしだったわ。じゃ、私、エヴァの準備できたみたいだから」
. シンジ「………」
  レイ「…お兄ちゃん?」
. シンジ「………」
  レイ「別に、気にしなくていいと思うわ」
. シンジ「……うん、ありがと……はぁ…」
2431/5:2013/05/06(月) 22:41:22.36 ID:???
 トウジ「おはようさん…お、なんや、暗い顔して」
.ケンスケ「ふーむ。碇妹の姿も見えないし、ケンカでもしたの」
 トウジ「ほんまか? ったくしゃあない兄貴やな、はは」
 シンジ「………」
 トウジ「ど、どないしたんや」
.ケンスケ「?! まさか、本当に妹さんに何かあったのか?」
 シンジ「…ううん、レイは今日は本部。そうじゃなくて…
     あのさ、なんで双子だと皆にからかわれるんだろう」
 トウジ「は?」
.ケンスケ「…なるほどね。で、皆って、たとえば誰」
 シンジ「ミサトさんとか、アスカとか…二人だって時々茶化すだろ」
.ケンスケ「それは確かに」
 トウジ「ま、挨拶がわりにやっとる感じやな。…すまん、嫌だったんか」
 シンジ「…、別に、いちいち嫌だって感じる訳じゃないよ。本当のことだし。
     たださ、なんで毎回毎回、双子のことで何か言われなきゃならない
     のかなって。…アスカなんて、僕を馬鹿にするためにわざわざ
     話題に出してる感じなんだ、最近」
 トウジ「そら、確かにやっとれん話やな」
.ケンスケ「けど、そんなのいつものことじゃないか? あいつの場合」
 トウジ「せやせや。気にする必要ないで、あんなキンキン女」
 シンジ「…、そうだよね」
 トウジ「おう。考えすぎっていうか、考えるだけ無駄やで、きっと」
2442/5:2013/05/06(月) 22:42:17.40 ID:???
.ケンスケ「他人を見下すことにしか興味ない、損な性格なんだろ。相手にする
     ことないさ」
 シンジ「…うん。ありがとう、二人とも」
 トウジ「しっかし、家族のことまでダシにするか? なんや腹立ってきたわ。
     妹にはとんだとばっちりやし。ワシらみたいに、学校終わったらハイ
     さよならって訳にもいかんしな…ほんま、同情するで」
 シンジ「そうなんだよ…
     本部にいるときの方が、周りを気にしない分、好き勝手言われるんだ。
     …僕のことはもうしょうがないけど、何も、レイが一緒のときに限って
     ちょっかい出してこなくたっていいのに」
.ケンスケ「? そうなのか?」
 シンジ「うん。なんで、妹と一緒にいるだけで嫌味言われなきゃいけないんだろ」
 トウジ「わざわざ妹の前でか?! なんつー性根の曲がったやっちゃ」
.ケンスケ「…ふぅむ。
     思うに、単に仲間外れにされたくないだけじゃないか? それって」
 シンジ「え? …アスカが?」
 トウジ「何言うとるんや、あの個人主義の唯我独尊女が? あり得へんって」
.ケンスケ「けど、碇妹と一緒のときが多いんだろ? からんでくるの」
2453/5:2013/05/06(月) 22:43:27.25 ID:???
 シンジ「あ…うん、ほとんどそうだよ。それで、双子双子って」
 トウジ「やっぱりただの嫌がらせと違うか、それ」
.ケンスケ「あのさ、これは俺の想像だけど、シンジは妹のこと、かばいすぎなんじゃ
     ないかな。っていうか、あいつにはそう見えてるんじゃないかって話
     なんだけど」
 シンジ「え…そう、かな」
 トウジ「ちょっと待てや、妹かばうのは兄貴として、男として当ったり前やないか。
     それのどこが悪いっちゅうんや」
.ケンスケ「いや、悪いって訳じゃないさ。ただ、俺たちと違って、シンジはあいつの
     単なるクラスメートじゃない。共にエヴァに乗って戦う、仲間だろ」
 シンジ「? そんなの、わかってるよ」
.ケンスケ「だからさ。本来はシンジと碇妹と、あいつとで、三人のチームのはず
     なのに、あいつには、お前たち二人の繋がりばかり強くて、自分だけ
     疎外されてるような気になってるんじゃないか? 双子の相性の良さ
     ってのが、その思い込みに拍車をかけてる可能性もあるかもな」
 シンジ「…それで、いつも…?」
2464/5:2013/05/06(月) 22:44:59.55 ID:???
.ケンスケ「もしかしたらって話だよ。
     ま、理由はどうあれ、結果としての行動が単なる嫌味と嫌がらせじゃ、
     とてもじゃないけど同情はできないけどね」
 トウジ「せや。結局自分の不満をシンジにぶつけとるだけやないか」
 シンジ「……」
.ケンスケ「おい、仮定の話だって。あんまり本気にとるなよ、確証もないんだし」
 .アスカ「そ・の・と・お・り。憶測で人の内面を語ってんじゃないわよ」
.ケンスケ「?!」
 シンジ「あ、アスカ?!」
 トウジ「おわッ出た、出おったで鬼が!」
 .アスカ「あんたたち…さっきから聞いてれば、勝手なことをベラベラとよくも並べて
     くれたもんだわね…? どういう目に遭うかわかってんでしょうねッ!」
 トウジ「あかん、逃げるで!」
.ケンスケ「異議なし!」
 シンジ「うわっ、まっ、待ってよっ」
 .アスカ「待ちなさいよ、この三馬鹿トリオがぁっ!! …くッ、このっ!」
.ケンスケ「うぎゃあ!」
 シンジ「あっ、ケンスケ?!」
 トウジ「捕まったか…成仏するんやで、ワシらはお前の分まで生きるさかい!」
.ケンスケ「見捨てるのかよ!」
 .アスカ「ちょっと、相田」
.ケンスケ「はははははい?!」
2475/5:2013/05/06(月) 22:46:01.35 ID:???
 .アスカ「……
     さっきの話、誰かに話したらコロスわよ。もちろんシンジにもう一回言うのもよ」
.ケンスケ「へっ?」
 .アスカ「…それだけよ」
 シンジ「あ、解放された…ッて、こっち来るよ?!」
 .アスカ「こらぁっ! 自分たちだけ逃げられると思ったら大間違いよッ!!」
 トウジ「ぎゃあああぁ、く、来るなぁあああ」
.ケンスケ「………なんとまぁ。
     俺の推測も、あながち外れちゃいなかったってことか。…ま、エヴァに守って
     もらってる身だし、武士の情けだ。黙っといてやるさ」
 .アスカ「待ちなさいっこのっ!! この私から逃げられると思ってんの?!」
 シンジ「うわぁあああ?!」
 トウジ「ひぃい、やめろ、やめんかい! リアル鬼ごっこは勘弁やって!」
 .アスカ「はぁ?! 身の程を教えてあげるって言ってんのよっ!」
.ケンスケ「……
     やっぱ、考えすぎだったかもな。あの有り様じゃ」
248名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/08(水) 08:03:57.28 ID:???
おもしろい
249名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/11(土) 01:20:55.55 ID:???
あげ
250名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/12(日) 15:57:08.27 ID:???
age
251名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/14(火) 08:05:33.88 ID:???
 シンジ「わ…、珍しいですね、シュークリームなんて」
  .ミサト「ふふん、たまにはおみやげ。…なんてね、マヤちゃんが、近所に新しいお店が
     できたって、皆に買ってきてくれてね。二人の分もとっといてくれたのよ」
 シンジ「そうなんだ…今度、お礼言わないと」
  .レイ「…?」
  .ミサト「ん、レイはもしかして初めて? 中にはね、甘〜いクリームが入ってるわよん」
 シンジ「あれ? ミサトさんの分は?」
  .ミサト「ああ、あたしは皆と一緒に食べてきちゃったから。さっ、どっちでも好きな方食べて」
 両者「えっと、じゃあ「こっち…、あっ」」
  .ミサト「お、ひさびさに出たわね〜、双子のユニゾン」
 シンジ「だから、わざとじゃないですってば。…レイ、ごめん、僕はこっちにするね」
  .レイ「え、…いい、これ、食べて」
 シンジ「いいって、そんな遠慮しなくていいんだよ」
  .レイ「…でも」
  .ミサト「おっと、二人して譲り合っちゃって、かっわい〜。しっかしこういう時は困るわね…
     んー、決められないならいっそじゃんけん、って、それも駄目だったか…」
ペンペン「クワーッ!!」
  一同「「「あっ」」」
  .レイ「…食べた」
 シンジ「まるごと一個…ひと口で…」
  .ミサト「ていうか、食べられるんだ、この手のもの。 って、あらら、どうする? 一個になっちゃったけど」
  .レイ「……」
 シンジ「しょうがないですよ。レイ、良かったら、半分ずつにする?」
  .レイ「! …、うん」
 シンジ「じゃあ、切ってくるね」
  .ミサト「…なんと。丸くおさまっちゃったみたいだわね」
  .レイ「この方がいい、私」
  .ミサト「ひょっとして、空気読んだのかしらん…? いや、それはないか」
ペンペン「クワッ、クックックーッ」
252名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/21(火) 18:41:08.77 ID:???
test
253名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/24(金) 18:05:28.34 ID:???
  ミサト「ふうー、いいお湯だったわー。ずいぶんゆっくりしちゃったけど、
    二人とも、まだ起きてるー?」
  ミサト「寝ちゃったのかしらん。って、んん…?!」
 シンジ「……」(SDATで音楽鑑賞)
  .レイ「……」(読書)
 三者「……」
  ミサト「……ちょっと、二人ともっ!」
 両者「?! うわっ、ご、「ごめんなさい」」
  ミサト「…あのねぇ。もしかして、ずっとそうやって座ってたの? 二人で?」
  .レイ「はい」
 シンジ「そ、そうですけど。あ、けっこう時間経っちゃったんだ…」
  ミサト「黙ったまんまで…?」
 シンジ「え? あの、はい。レイとだと、喋らないでいても落ち着くんです、なんか」
  .レイ「喋らないと変、ですか」
  ミサト「はぁー…まいいわ、そろそろ寝なさい。明日も学校でしょ?」
 両者「「はい」」
  ミサト「うーむ…一応、保護者としてはなんか言っといた方がいいのかしらん。この場合」
ペンペン「クワーッ(あくび)」
254名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/26(日) 00:11:44.35 ID:???
日向「それにしても仲良くなったよな、あの二人。
    シンジ君が来たばかりの頃は、どうなるかと思ったけど」
伊吹「少し変わったわよね、レイ。前より表情が出てきた気がするわ」
青葉「共同生活がいい方向に働いてるってことだろう。別々に育った
    からこそ、やっと会えた今を大事にしたいのかもな」
日向「しかし、葛城さんもよく続くよなー。中学生二人を世話するなんて」
青葉「そうだな…ただでさえ多感な時期なのに、使徒との戦闘で普通じゃ
    考えられないようなストレスも抱えてる子たちだ。周りには見せないが、
    かなり大変なはずだ」
日向「それに加えて、作戦時には情を抑えて厳しく接しなきゃならない、か」
伊吹「本当、大変ね…」
青葉「ああ。つくづく頭が下がるよ」

 シンジ「…ミサトさん! ミサトさん、起きてくださいよ、もう朝ですってば!
     僕たち、先に出てますよ! …レイ、ミサトさんのお弁当は?」
  .レイ「大丈夫、包んだ」
 シンジ「ありがと。…ちょっと、ミサトさん! ちゃんと起こさないと無理かな…」
  .レイ「駄目、時間ないわ」
 シンジ「〜っもう、しょうがない、行こう。じゃ行ってきますッ! 知りませんよ!」

  ミサト「…ふぁ〜い、行ってらっしゃーい……くかー…」
ペンペン「…クワッ(処置なし)」
255名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/05/30(木) 19:29:33.69 ID:???
 シンジ「そう言えば、僕らのパーソナルデータって似てるんだよね」
  .レイ「そう、前に取り違えたこともあるって、赤木博士が」
 シンジ「ええ? …それくらい、似てるってことか。って、エヴァは動いたんだよね?」
  .レイ「うん。乗ってた私たちも気づかなかった」
 シンジ「そうなんだ…じゃあさ、もしかしたら、それで起動する初号機と零号機も、
     僕らと同じ双子みたいなものだったりして。…なんて」
  .レイ「……」
 シンジ「(ハズした…!)あ…変なこと言った、よね。…ごめん」
  .レイ「違うわ」
 シンジ「え? …何が?」
  .レイ「双子じゃなくて、零号機はお姉ちゃん。試作機だから」
 シンジ「え…そっか、そうだね。じゃあ、初号機は弟かぁ」
  .レイ「うん、弟」

 青葉「はは、なんか面白いこと言うな、あの二人」
 日向「やっぱりまだ子供、って感じだな」
 伊吹「……」
 日向「? どうした、マヤちゃん」
 伊吹「えっ? ごっごめんなさい、つい……想像したら、結構かわいいなって…」
 青葉「…兄弟エヴァが?」
 伊吹「そう、なんか親近感がわくっていうか、あ!先輩に話してみようかしら」
 両者「……」
256名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/06/03(月) 07:34:42.39 ID:???
test
2571/4:2013/06/04(火) 08:18:00.01 ID:???
 .アスカ「グーテンターク、ぼけぼけ兄妹。
     ったく、相変わらず冴えない顔並べちゃって…特にシンジ、なーに
     いつも以上に暗い顔してんのよッ!」
 シンジ「痛っ! ッもう、レイは関係ないだろ」
 .アスカ「ふん、何よ、相変わらず兄妹仲のおよろしいことでー。で、どうしたのよ」
  .レイ「テスト。学校の」
 .アスカ「は?」
 シンジ「中間試験の結果。今日、返ってきただろ。なんか…覚悟してたよりも
     もっとやばい点数で…はぁ、帰ってミサトさんに何て言おう…」
 .アスカ「何よ、そんなこと? あんたも?」
  .レイ「……」
 .アスカ「……馬っっ鹿じゃないの?
     あんたたちね、中学校の定期試験くらいで何真剣に悩んでんのよ。
     あんなの進学上の通過点でしょ、単なる」
 シンジ「簡単に言うなよな。その単なる通過点でつまづきそうだから、こうやって
     落ち込んでるんじゃないか」
 .アスカ「だ・か・ら馬鹿だって言ってんのよ。通過点は通過点じゃない。しょせん
     腕試し、模試が駄目でも、本番でいい点とれりゃいいのよ」
  .レイ「本番?」
 .アスカ「そ。えーと、あんたたちの場合だと…高校受験?だっけ?」
2582/4:2013/06/04(火) 08:19:07.53 ID:???
 シンジ「高校、かぁ…なんだか、全然実感ないや」
 .アスカ「馬鹿、現実逃避してんじゃないわよ! そうやってのほほんと過ごしてると、
     中学の残り一年ちょっとなんて、あっという間に終わっちゃうわよ」
 シンジ「…そうじゃなくて。
     本当にそういうの、実感ないんだ。クラスの皆はそうかもしれないけど、
     僕に、受験なんか来るのかな、って。…その前に死ぬかもしれないのに」
  .レイ「……」
 シンジ「アスカは…不安になったり、しないんだ」
 .アスカ「……
     はン、当ったり前じゃない。何辛気臭いこと言ってんのよ。何のために
     エヴァに乗ってるわけ?
     私たちは使徒に勝って、生き残る。カンタンじゃない」
 シンジ「…すごいな、アスカは。…アスカが言うと、本当にそうなりそうな気がする」
 .アスカ「ふふん、あんたなんかとは覚悟が違うのよ、覚悟が。
     ほら、妹。あんたも覇気のない顔してないで、もっと顔、上げなさいよ」
  .レイ「……」
 .アスカ「…な、何よ」
 シンジ「どうしたの、レイ」
  .レイ「……死なないわ」
 シンジ「え?」
2593/4:2013/06/04(火) 08:20:54.16 ID:???
  .レイ「お兄ちゃんは死なせない。私が、守るもの」
 シンジ「…、レイ」
  .レイ「…私には、他に何もできないと思うから」
 シンジ「…そんなこと、言うなよ。
     だったら、レイは僕が守る。一緒に生きてけば、何だってできるよ」
  .レイ「…お兄ちゃん」
 .アスカ「……あーあー、ほんっとにウルワシイ兄妹仲でいらっしゃることでー。
     何よ、…それじゃあ、私のことは誰も守ってくれないわけ。わかってるわよ、
     せいぜい自力で生き残ればーってことでしょ。ばか」
 シンジ「…、違うよ」
 .アスカ「うん?」
 シンジ「アスカは、僕たちで守る。…どこまでできるかわかんないけど、でも、
     絶対守るから」
 .アスカ「…え」
  .レイ「…うん。私も」
 .アスカ「…、何よ、それ」
 シンジ「あ…、やっぱり当てにならない、よね。アスカに比べたら全然力不足だし、
     …けどさ、僕たちだってエヴァを動かせるんだし、…その、手助けくらいなら」
 .アスカ「…ばーか。んなこと言ってるんじゃないわよ」
 シンジ「あの、…ごめん」
2604/4:2013/06/04(火) 08:22:04.68 ID:???
 .アスカ「何謝ってんのよ、やっぱり馬鹿ね。
     …しょうがないわね。じゃ、もしあんたたちがヤバい目に遭ったら、その時は
     特別にこの私が、まとめて面倒みてやるわ。いい、特別よ、トクベツ」
 シンジ「…アスカ? あれ、レイ」
 .アスカ「ん、何よ」
  .レイ「……ありがとう」
 .アスカ「へ…?」
 シンジ「あ…」
 .アスカ「……何よ、あんた、笑えるんじゃない」
 シンジ「そうだよ。ほんとにたまに、だけどね」
  .レイ「うん。…トクベツ」
 .アスカ「…、なによ、いきなり。
     ッて馬鹿シンジ、なんであんたまでニヤニヤしてんのよ! 気持ち悪い!」
 シンジ「ええ?! なんだよ急に?!」
 .アスカ「男がやたらとニヤけても気色悪いだけだって言ってんの! もうっこの馬鹿!」
 シンジ「ちょ、うわっ、何するんだよっ」
  .レイ「……
     みんな、ばか、かも。でも、…私も、そうかもしれない」



規制解除やったー。
長くてすみません。読んでくれた方、ありがとうございます。
ずいぶん遅れましたが>248-250 ありがとうございました。励みになりました。
261名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/06/11(火) 18:56:00.76 ID:???
 加持『へぇ、二人とも、外に遊びに出るタイプじゃないのか』
  .ミサト「そ、だから休日っても静かなもんよー。ま、当人たちはそれで
     充分くつろいでるようだし、他人が口出すような問題でもないし」
 加持『おいおい。他人ってお前、一応保護監督者だろ? いいのか、
     そんなんで』
  .ミサト「だからこそ、よ。あの子たち、二人でいるだけで満足みたいだもの。
     いつまでもそれじゃ困るけど、今はまだ、そっとしときたいのよ。実際、
     割って入れるような雰囲気じゃないしね」
262261:2013/06/11(火) 18:57:58.00 ID:???
 加持『そうか。にしても、そんなに双子の結束が堅いんじゃ、家族三人の
     共同生活にならないんじゃないのか? シンジ君はイヤフォンで音楽、
     レイは本、お前だって長電話。まったく、一つ屋根の下だってのに』
  .ミサト「ああ、それなら大丈夫。あの子たち、いくら集中してても…」

 シンジ「…ん」
  .レイ「…あ」
 シンジ「もうこんな時間か。ミサトさん、そろそろご飯の支度始めますけどー?」
  .レイ「私、お風呂入れてくる」

  .ミサト「…我に返るのも、二人同時だから」
 加持『…どこまでも双子だなぁ、そういうところは』
263名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/06/18(火) 22:18:49.69 ID:???
test
2641/3:2013/06/18(火) 22:19:53.66 ID:???
委員長「あ、ねえ、碇君! ちょっと頼まれてほしいんだけど」
  シンジ「え…な、何? 掃除当番ならちゃんと…」
委員長「違うわよ、妹さんのこと。図書室で借りた本、そろそろ返却するようにって
     伝えておいてくれない? 図書委員の子に言われちゃって」
  シンジ「あ、うん。…ごめん、すぐ返すように言っておくから」
委員長「お願いね」

 トウジ「おーい、碇ー。ちょっと待ってんか」
  レイ「わたし?」
 トウジ「せや。ってうーん、そやないとも言えるんやけど」
  レイ「…?」
 トウジ「シンジや。あのな、シンジにな、こないだの宿題のプリント、もいっぺん
     貸してんかって頼んでくれるか? いやー、直接言うと『またー?』とか言われるし、
     ここはいっちょ、妹からやんわりと言うてもらえへんかなー、て…」
  レイ「……」
 トウジ「やっぱ、あかんか…」
  レイ「…ううん。わかった」
 トウジ「ほんまか! いやぁ助かった! ありがとさん、恩に着るで」

.ケンスケ「なぁシンジ、…って、妹さんは? 一緒じゃないのか?」
 シンジ「え? レイなら、本部に行くって先に帰ったけど」
.ケンスケ「なんだ、一歩遅かったか…」
2652/3:2013/06/18(火) 22:20:56.97 ID:???
 シンジ「何だよ? レイがどうかしたの」
.ケンスケ「いや、明日の社会科の授業さ。俺と彼女の二人で、教材の準備しとくことに
     なってたんだ。分担決めとこうと思ったんだけどな…あ、そうだよ、シンジから
     聞いといてくれないか? どうせ、家に帰れば一緒だろ?」
 シンジ「えー? まぁ、うん、別にいいけど」
.ケンスケ「悪い、頼むな」

 アスカ「馬鹿シンジ! 妹に、更衣室のロッカーまた鍵開けっ放しだったって言っといて!
     ッたくいくら使うのが私らぐらいだからって、無防備っていうか、無頓着にもほどが
     あるわよ! あんた一応兄なんだから、一般常識くらいきっちり教えときなさいよね!」

  ミサト『あ、シンジ君? 悪いんだけど、レイに、明日の機体連動実験、午後になるって
     言っといてくれる? リツコのやつがまッた伝え忘れたみたいなのよー。ゴメンね』
 シンジ「いえ、それじゃ、伝えておきますね」
  ミサト『ありがと。ほんと、いつも悪いわね。じゃ』
 シンジ「……」
  .レイ「どうかした」
 シンジ「ううん。…ただ、なんか皆、僕とレイがいつも一緒だと思ってるみたいだからさ。
     レイも今日、トウジに伝言頼まれたろ。まったくもう、いくら双子だからって、人のこと
     掲示板代わりに使うことないのに」
2663/3:2013/06/18(火) 22:22:02.33 ID:???
  .レイ「…双子でも、一緒じゃないの」
 シンジ「別にそういう訳じゃないよ。まぁ、他の皆からは一緒に見えてるみたいだけど」
  .レイ「でも、違うのね」
 シンジ「え?」
  .レイ「……」
 シンジ「…なんだよ。レイが気にすること、ないよ。僕は別に迷惑だなんて思ってないし」
  .レイ「…?! どうして」
 シンジ「わかるよ、そのくらい。レイってさ、けっこう顔に出るんだよ、いろいろ」
  .レイ「…わかるの」
 シンジ「全部じゃないけど。レイのことはこれでも見てきてるつもりだし、…それに一応、双子だし」
  .レイ「…、うん。…そうなのね」
 シンジ「うん」

ペンペン「…クワッ(クソッ、俺にも双子の妹がいれば…!)」
2671/6:2013/06/20(木) 00:03:41.05 ID:???
 シンジ『くッ、このっ…!
     あ…まただ。何で、うまくいかないんだろ…ちゃんと動かしてるのに』
 .カヲル『まだ少し力みすぎてるんだよ。焦らずに、エヴァの反応を感じて』
 シンジ『うん。こうかな…っ、あ…、動けた…!』
 .カヲル『そう。良くなったよ』
 シンジ『うん…、でもやっぱり、こう動かそうって思った通りとは、違う気がする』
 .カヲル『動かそうとするんじゃなくて、エヴァと一緒に動こうと考えればいいのさ。
     協調の前提は、相手の呼吸をはかること。ピアノと同じだよ。少し、貸してみて』
 シンジ『あ、うん。…うわっ』
 .カヲル『こう…』
 シンジ『…すごい、エヴァってこんな風に動けるんだ』
 .カヲル『操縦桿はそのまま握ってて。動作のタイミングは手動主体にするから、僕の
     操作はそっちのプラグにも同期する。入力操作と、エヴァの実際の動きとの
     差を感じるようにしてごらん』
 シンジ『う、うん。…あ、…』
 .カヲル『ね。わかるだろう、機体との協調なんだ。それを無視して動かそうとすると…』
 シンジ『あ…! これって、さっきミスったのと同じ』
 .カヲル『そう、ほんの少し、次のコマンドが早かったのがわかるかい?』
 シンジ『そっか…合わせられてなかったんだ』
2682/6:2013/06/20(木) 00:04:48.28 ID:???
 .カヲル『エヴァは、君自身の身体とは違うからね。自分で普段動くときのように無意識に
     やってしまうと、スムーズに連動してくれない場合がある。少し注意してみる
     だけで、ずいぶん違うはずだよ。さ、やってみようか』
 シンジ『うん』

  レイ「……」
 アスカ「ん、妹じゃない。何やってんの?
    …あー、またやってるんだ、あの男ども。よく飽きないわね、あんな初級訓練」
  レイ「……」
 アスカ「あんたも最初の頃はやったでしょ? ま、今はエヴァの制御技術が安定してきて、
    使う数値も実地の機体出力だし、各エヴァの反応差も反映されてるし、昔よりは
    ずいぶんマシね。けど、あんなの退っ屈じゃない? ほんと、呆れるわねー」
  レイ「……」
 アスカ「…何よ、シンジ以外には返事しないってわけ。
    はいはい、ちっとは変わったかと思った私が馬鹿だったわよ。…シンジもシンジよ、
    あんな得体の知れない補充パイロットなんかにべったりしちゃって。ったく男同士で
    キモチ悪くないのかしら」
  レイ「…、ごめんなさい。私に話してたの」
 アスカ「は…? あーのーねぇ、あんた以外にいないでしょうが。
    …っていうか、あんたもよくよく物好きねー。シミュレータ室の前でじーっと待ってても、
    あの二人だったら、あと一時間は出てこないわよ。たぶん」
2693/6:2013/06/20(木) 00:05:50.93 ID:bfgjbwhd
  レイ「…待ってる」
 アスカ「そ。待ってるんでしょ、ダイスキなお兄ちゃんが出てくるのを」
  レイ「…、よくわからない」
 アスカ「はぁ…もう、じゃなんでここにいるのよ」
  レイ「……」
 アスカ「…ちょっと、ほんとにわかってないわけ?
    あんたね、無自覚か無関心か知らないけど、いい加減にしなさいよ! いつもは
    自分のテスト終わったらさっさと帰るくせに、今はそうやってずっと中の様子見て。
    それを待ってると言わずして何て言うってのよ。
    馬鹿シンジに、早く戻ってきてほしいんでしょ。あんた自分の気持ちもわかんないの?」
  レイ「…そう、かもしれない」
 アスカ「……
    わかんないなら、知ろうとしなさいよ。せめて気づこうとだけはしなさいよ、自分の心に。
    じゃなきゃ、あんたいつまでもそのままよ」
  レイ「……」
 アスカ「ま、シンジの馬鹿は、別に変わらなくてもいいんだろうけど。
    じゃーね。まったく、あの兄にしてこの妹ありね、どこまで馬鹿なのよ」
  レイ「……」
2704/6:2013/06/20(木) 00:07:00.79 ID:???
 シンジ「ありがとう、カヲル君。…じゃなくて、ごめん。遅くまで付き合わせちゃって」
 .カヲル「かまわないよ。どうせこの後もエントリーの予定なんだ」
 シンジ「そうなんだ…大変だね」
 .カヲル「大したことはないよ。さっきの訓練プログラムと似たようなものさ」
 シンジ「でも、すごいよ、カヲル君は。きっと僕なんかより、ずっとエヴァのこと
     わかってるんだろうな。だから、あんなに操縦も上手いんだよね?」
 .カヲル「…さあ。所詮、僕のは仮象訓練だから」
 シンジ「そっか…
     …あの、変なこと言うみたいだけど、…さっきみたいにカヲル君と一緒だと、
     エヴァに乗るのも、そんなに嫌じゃないんだ。あ、いや、単に一人が怖いって
     だけかもしれないけど、はは」
 .カヲル「…そうなのかい?」
 シンジ「…うん。
     怖いし、不安でたまらない。…けど、君ならエヴァに乗るのも戦うのも、きっと
     怖くも辛くもないんだろうな。エヴァの動かし方を見てると、ほんと、そう思うよ」
2715/6:2013/06/20(木) 00:08:06.75 ID:???
 シンジ「僕みたいに変に緊張したりしなくて、レイやアスカのやり方とも違うけど、もっと
     ちゃんと自信がある感じで、迷いがなくて、何をすればいいかわかってて。
     …僕も、君みたいになれたらいいのに」
 .カヲル「…そうではないかもしれないよ」
 シンジ「え?」
 .カヲル「僕たちは、エヴァに乗らなければならない。だけどそれは良いこととは限らない。
     特に、君にとってはね」
 シンジ「…でも、皆が乗れって言うんだ。それに、初めて、自分にも何かできるかも
     しれないって思えたことなんだ。…好きには、なれないけど」
 .カヲル「…そうだね。
     ごめんね。僕には何も言えないよ」
 シンジ「カヲル君…?」
 .カヲル「……
     それに、僕はまだ本物のエヴァに乗ったこともないから。既に何度も実戦に
     耐え、使徒に勝っている君とは、比較にならないよ」
 シンジ「そんな、…それはだって、まだ専用の機体が準備できてないんだから仕方ない
     じゃないか。君のせいじゃないよ」
 .カヲル「…そうだね。早く、君の力になりたいよ」
2726/6:2013/06/20(木) 00:09:23.26 ID:???
  レイ(…私、なぜお兄ちゃんを待ってたの)
  レイ(私、なぜお兄ちゃんを連れて帰りたいと思ったの)
  レイ(お兄ちゃんが他の人といるのが嫌だから?)
  レイ(お兄ちゃんが他の人と笑ってるのが嫌だから?)
  レイ(…そうじゃない。私…それだけじゃ、ない)
  レイ(…私)
  レイ「……私、あの人が怖い。…そうなのね」

 シンジ「レイ?! どうしたの、先に帰ってるかと思ってたのに。あ、遅くなるって
     言ってなかったっけ…? ごめん、ずいぶん待たせちゃったよね」
  .レイ「いい、平気。…帰ろ」
 シンジ「…? なんだよ、怒ってるの? …わかった、早く帰ろう、って、そんな
     引っぱらないでってば、ちょっとっ」
  .レイ「帰るの」
 シンジ「もう、どうしたんだよ。…ごめん、カヲル君、僕たちこれで帰るね」
 .カヲル「うん。二人ともお疲れさま」
  .レイ「さよなら」
 シンジ「レイってば、…待ってよ、ちゃんと歩いてるだろ、痛いんだってばっ」
  .レイ「痛くない。お兄ちゃんの、ばか」
 シンジ「ええ?! なんでそうなるんだよ?!」
 .カヲル「…大変、だね。…二人とも」
273名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/06/20(木) 00:10:34.36 ID:???
うわぁ下げ忘れみっともない。
すみませんでした
274名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/06/30(日) 13:31:59.04 ID:???
  .ミサト「MAGIシステムって、三台のスーパーコンピュータで構成されてるのよね。
     いつも三台で競合・審議してるの? ケースによっては効率悪いんじゃ
     ないかしら」
 日向「いえ、扱うケースによっては、タスクを分散して共同作業しますよ。
     もちろん個別に検証はしますし、審議制そのものも継続されますけど」
  .ミサト「柔軟に、個々の力を合わせて事に当たるってわけね」
 .アスカ「ちょっと、何度言ったら覚えるのよ! こんの非常識妹、それに馬鹿シンジ!」
 シンジ「う…なんで僕まで怒られるんだよ」
 .アスカ「あんたが責任持ってしつけておかないからでしょうが! わかってんの?!」
 シンジ「…う…ご、ごめん」
  .レイ「ごめんなさい。ここ、片付けておくから」
 .アスカ「もう、ちゃんとやっといてよね!」

 日向「また二人揃って怒られてますね、シンジ君とレイ。真っ向から怒られるシンジ君と
     冷静に事態収拾をはかるレイ、担当というか対応も、いつも通りですね」
  .ミサト「ん〜、重たいタスクを分散処理してるのよ、きっと」
 日向「…双子システムですか?」
275名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/07/04(木) NY:AN:NY.AN ID:???
  伊吹「初号機、および零号機、ともに前回よりシンクロ率が2.4上昇して
     います。ハーモニクス、問題ありません」
  リツコ「シンクロ率自体はシンジ君の方が高いものの、二人の搭乗ログは
     回を追って酷似していく感じね。これも双子の神秘かしら」
  伊吹「深部シンクログラフも、一致箇所が増えましたしね」
  .アスカ「…何それ。どこまで共通項増やせば気が済むのよ、気持ち悪い」
  ミサト「二人にそんな気はないのよ。あの子たち、それぞれ目の前の課題を
     こなすだけで精一杯だもの。作為があったら、むしろ余裕の証だわ」
  .アスカ「はいはい、あの二人はケナゲないい子ですよー…っと、来たわね。
     良かったわね、また二人仲良くシンクロ率アップできて」
   .レイ「…何」
  シンジ「?? どうしたんだよ、いきなり」
  .アスカ「またそうやって、何もわかってない顔して。…いいわよねー、あんたたちは
     いつも一緒でいられる相手がいて。暮らすのも一緒、作戦でも一緒、今度は
     データまでお揃い。どうせ自覚も使命感も二人で半分こなんでしょ」
  シンジ「! 何だよそれ」
  ミサト「アスカ、やめなさい」
  .アスカ「やめないわよ。何でも同じなんだから、いっそプラグスーツもお揃いにしたら?
     馬鹿シンジは男って顔じゃないんだし」
  リツコ「アスカ!」
  .アスカ「何よ、二人ばっかり庇っちゃって。そうやって甘やかすから…」

  リツコ「やめてちょうだい。プラグスーツまで揃えられたら、区別がつかなくなるわ」

残総員「「「「えっ」」」」

   .レイ「…そうね」
残総員「「「「えっ」」」」
276名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:???
 .シンジ「ただいま…ッて、ああ! お味噌切れてたんだった…もう、スーパー入る
     までは覚えてたのに、何やってるんだよ…しょうがない、もう一回行こう」
ペンペン「クワッ!」
   レイ「ただいま。これ、買ってきた」
 .シンジ「あ! いつも使ってるやつだ…ありがとう、けど、どうして?」
   レイ「なんとなく、要るような気がして」

  .レイ「…!」
  .レイ「…、…」
 .アスカ「ん、何やってんの? シャワー浴びに行かないの?」
 シンジ「レイー? ごめん、シャンプー新しいの、ここに置いとくから」
  .レイ「! ありがと、今、取りに行く」
 .アスカ「もうっわざわざ女子ロッカー室の前まで来て何やってんのよ! ていうか
     シンジ、あんた先に帰ったんじゃなかったの?」
 シンジ「え? そうだけど、でもなんか、レイが困ってる気がして。ちょうど上の
     コンビニにいたし、これ要るかなって」
 .アスカ「はぁ?! …もいいわ、男子はとっとと去りなさい! 大声出すわよ!」

 シンジ「だから、カンニングなんかしてないってば」
 トウジ「せやけどこの、一言一句違わへん二枚の答案用紙! 動かぬ証拠やで。
     さぁ説明できるもんならしてみんかい!」
 シンジ「そんなこと言われても…だいたい、レイの席は教室の反対側なのに
     どうやって答案見るんだよ」
ケンスケ「ふーむ。抜き打ちだったから、事前にペーパー用意するのはちょっと
     考えられないしな…けど、スペルの間違え方までまったく同じってのは」
 トウジ「えらい芸の細かいやっちゃなぁ、ははは」
 シンジ「もう、何だよそれ…」
  .レイ「…芸って、何」
277名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:???
 青葉「脳神経接続、だな。距離に依存しないタイプの」
 伊吹「接続媒体は…現状では検出できないもの、よね」
 日向「それなら、量子通信が妥当じゃないか? いっとき話題になったやつ」
 伊吹「ベルの実験の? その場合、ハードは何になるのかしら」
 青葉「そりゃ、双方の脳神経回路そのものだろ」
 日向「いや、生体電流の組織か、それが作るホログラフィ構造かもしれないぞ」
 伊吹「あ、むしろ情報そのものが、高次ハードとしてふるまってたりして」
 青葉「飛躍しすぎだって。MAGIやエヴァを見ればわかるだろ」

 ミサト「MAGIの検証待ちの間に、何を盛り上がってるのかしら。あの三人」
 リツコ「双子の思考パターンの共時性、要はシンクロニシティについて、仮説を述べ合ってるそうよ」
 ミサト「へぇ。テレパシーの一種、とかでいいのにね」
 リツコ「それじゃつまらないんでしょ」
 ミサト「難儀な性分ねぇ」
278名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:???
test
2791/5:2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:???
シンジ「何、トウジ。相談って」
 .レイ「私にも、なの」
トウジ「ん、碇妹にも聞いてほしいんや。あのな…実は妹のやつがな、こんど
    …退院、することになってな」
シンジ「…、ホント?!」
トウジ「ああ。主治医のセンセイが、ようやくOK出してくれたんや」
シンジ「そっか…!
    良かった、…ほんとに、良かった。おめでとう、トウジ」
トウジ「おお、いや、お前にもずっと気にさせとったみたいやし。シンジには
    先に言うとこ思ってたんや。…そういう訳やから、もう心配せんでええで」
シンジ「…うん」
 .レイ「妹、さん」
シンジ「あ…そっか、レイは入院してたからわかんないか。トウジの妹さん、
    最初に使徒が襲ってきたときに怪我しちゃったんだ。…僕が、初号機で
    巻き込んで」
トウジ「なんや、もうそのことはええって。
    でな、相談はここからなんやけど…なあ、退院祝い、何がええやろか…?」
2802/5:2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:???
シンジ「え…? 普通に、花束とか、何か妹さんの好きなものとか…
    うーん、こういうのって僕より、委員長にでも訊いた方がいいんじゃないかな」
トウジ「アホ! 男として、いや一人の兄貴として、んなこと他人に頼れるかい!
    なあ頼むで碇兄妹、なんかこう、妹を思いっきり喜ばせるようなええアイディア、
    お前らならあるやろ? な? な?」
 .レイ「…わ、何」
シンジ「ちょっとッ、って、僕らに訊くのはいいんだ?」
トウジ「水臭いこと言うなや! お前らなら詳しいやろ、何せ碇妹は何度も入院
    …って、考えてみたら、えらい無神経な話やったな。…すまん」
 .レイ「別に、平気」
トウジ「…ありがとな。
    いや、いざ退院て決まったら、何してええかわからへんのや。お前らに
    話したら、何かわかるかと思ってな。悪い、つい勢いで訊いてしもて」
シンジ「…そっか。
    あ、でも別に、特別なことは何もしてないよ。僕たちのときは」
2813/5:2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:???
トウジ「へ? …ほんまにか?」
 .レイ「うん」
トウジ「……んな、な、何やてぇ?! シンジお前、それでも兄貴かいっ!
    たッた一人の妹がめでたく退院したちゅうのに、何もしないんかっ!」
シンジ「いや、違うって、…普通に、お帰りって言って、普通にご飯作って…
    退院したって言っても、身体はまだ疲れやすいだろ。だからあえて特別な
    ことはしないっていうか。それに自分の家に帰ってきたら、まずは普通に
    過ごしたいかなって思って」
トウジ「…んんん、一理あるっちゅうか、深いなぁ。
    けど、そんなんでええんか? なんか、そやな、お祝い会とか」
 .レイ「別に、…そういうの、わからないから」
トウジ「んんんん…」
シンジ「そんなに真剣に悩まなくても、トウジの妹さんが喜ぶことは、トウジが
    一番知ってるよ。僕らなんかに訊かなくてもさ」
トウジ「ま、そらそうやけど…」
 .レイ「うん。…お兄ちゃんが心配したり、喜ぶのが、一番嬉しい」
2824/5:2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:???
トウジ「! そっか、そうなんか…
    よっしゃ。なんか、気が楽になったわ。ありがとな、二人とも」
シンジ「ううん、そんな、あんまり役に立てなくてごめん。…そうだ、何か手伝える
    ことがあったら言ってよ。僕らも協力するからさ」
トウジ「おう。そのときは頼むで」
 .レイ「うん。
    …でも、気をつけて」
トウジ「ん?」
シンジ「え、何に?」
 .レイ「やりすぎ。最初の頃、よくやってたから」
シンジ「…あっ」
トウジ「? 何の話や?」
シンジ「ちょっと待ってレイ、もしかして」
 .レイ「退院してきたら、知らないうちに部屋が葛城三佐の家に引越しされてたり。
    一日に何度も、ご飯とかおやつ作ったり。枕もとに勝手に毎日花を置いたり」
シンジ「ちょ、レイ、それはもう何度も謝って…」
トウジ「ま…まあ、ほほえましい兄妹愛やないか」
2835/5:2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:???
 .レイ「ギプス取れなくてシャワー浴びにくいから頭洗ってあげるって言ってきて
    断っても聞かなかったり、下着勝手に出してきたり、夜中にトイレ行ったら
    わざわざ起きてきてついてこようとしたり、目が覚めたらそばで寝顔見てたり、
    謎のぬいぐるみとか小物を部屋に置いたりそれ触らないでたらがっかりしたり」
シンジ「うわ〜〜〜ッッ」
トウジ「……シンジ…お前…」
シンジ「違うんだってばッ、僕はただその、レイってどんな子かまだわかんなくて、でも
    何かしてあげないとって思ってだから別にそんなつもりは」
トウジ「……感動したッ!
    お前、兄貴の、いや、漢の鑑や! いやぁお前のことみくびっとったわハハハ」
シンジ「え? うん、えと、ありがと…う…?」
トウジ「そうとわかれば早速大歓迎会の準備開始や! ほら行くでシンジ!」
シンジ「いや、違うって、ちょっと待ってよっ」
 .レイ「……」

.ケンスケ「トウジの妹さ、こないだめでたく退院したろ。トウジの奴、喜びのあまり
     思いっきりはしゃすぎて空回りして、妹さんから逆に怒られたらしいぜ。
     まったく、小学二年生に叱られるなっての。なぁシンジ」
 シンジ「………」
.ケンスケ「? どうした、頭なんか抱えちゃって」
  .レイ「気にしないであげて」
284名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:???
test
285渚カヲルψ ◆MC2Wille3I :2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:???
人工内耳の音は、機械的に合成されているコード化された音声である。
ヒトには冷たく、機械にとって優しい音である。

このため、音入れしたばっかりは、脳がこういうコード化された音に慣れていないため、
すぐには言葉はわからない、強い違和感を感じるなどの状態になる。

人工内耳の音は、機械的に合成された音で、ヒトの声はガリガリとしわがれたようで、
まるでロボットがしゃべっているような感じの声である。

自分が知っている作品のセリフ、BGMなどは、昔の音の記憶の勘で補完するため、大体わかります。
286名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/07/21(日) NY:AN:NY.AN ID:???
 加持「どうだ、子供たち。ジオフロントの土で育ったスイカの味は」
 シンジ「おいしいです、すっごく! 果物がこんなに濃い味がするなんて、
     知らなかったな」
 加持「はは、そうか。人工的に供給してるとはいえ、ここには太陽光と
     水がふんだんにあるからな。何より、本物の土がある。今の人類に
     再現可能な限りの、天然に近い土がね」
 .アスカ「こんな、泥だらけホコリだらけのところなのに。なんか悔しいけど、
     土ってすごいのね」
 加持「そうさ。土に育つものは、手をかければ必ず応えてくれるからな」
 .アスカ「んっ?! 何か、固いもの噛んだ…何? この、黒い、ちっこいの」
 加持「ああ、そりゃ種だよ、スイカのね」
 .アスカ「種ぇ?! じゃ、このちっこいのから、こんなばかでかい実ができるんだ…
     なんか、見ても信じらんない。実感、なさすぎて」
 シンジ「ほんとだね…」
  .レイ「ぷは。…おいしかった」
 シンジ「あは、もう食べ終わったんだ…あれ? レイ、種は? 全然捨ててないけど」
  .レイ「…捨てるもの、だったの?」
 .アスカ「ええ?! 全部食べちゃったわけ? あんたねえ…お腹の中にスイカが
     生えてきても、知らないわよ」
 シンジ「何言ってるんだよ、そんなこと……ないです、よね…?!」
 加持「それはない。安心していいよ。ただ、あまりお腹にいいものでもないけどね」
 シンジ「え?!」
 .アスカ「ちょっと、今からでも吐き出しなさいよ! ほら、早く!」
  .レイ「平気。何ともない」
 .アスカ「違うわよ! あんたが良くても…」
 シンジ「…? う…なんか…急に、お腹、痛くなってきた…」
 .アスカ「…ほら、絶対こうなるんだから! もう、このくらい予測してしかるべきよ」
 加持「おいおい、大丈夫か?! これも、例の双子のなんとかってやつか」
  .レイ「?…ほんとに、何ともないのに」
287名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/08/02(金) NY:AN:NY.AN ID:???
  .ミサト「明日のこと、まだ迷ってるのね。
     もう決めたでしょ、シンジ君。いつまでもそうやって考え込んでないで」
 シンジ「僕は別に、…ミサトさんが一方的に、行けって言っただけです」
  .ミサト「不安なの、お父さんと二人だけで会うのが」
 シンジ「…当たり前ですよ。何話せばいいかもわからないのに」
  .ミサト「会話なんて無理にできるもんじゃないわ。顔を合わせれば自然と
     話したいことが出てくる、そういうものよ。まずは、まっすぐお父さんの
     顔を見ること。短い間でいい。それだけでも、大事なことなのよ」
 シンジ「……」
  .ミサト「…ま、他人がどうこう言うもんじゃないけどね。けど、逃げることでもないわ。
     せめて明日、レイが一緒に行ければね」
 シンジ「…その方が、僕は」
  .ミサト「え?」
 シンジ「…何でも、ないです。…もう寝ます。おやすみなさい」

 .カヲル『そう、妹さんは行かないのか。残念だね』
 シンジ「いや…僕は別に、…どっちでも一緒だったから」
 .カヲル『心配、なんだね。お父さんが、君と彼女のどちらを見てくれるのか』
 シンジ「そういう訳じゃ…、…いや、そう…なのかな。
     …うん。一緒ならたぶん、父さんはレイとだけ話すだろうから。
     僕はただ二人のそばについてるだけ。自分から話すこともできないくせに、
     二人の邪魔をしたくないからって自分に言い訳して、結局何もしない。
     …だからレイが行けなくて、本当は少しほっとしてるんだ。…嫌な奴だよな」
288名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/08/02(金) NY:AN:NY.AN ID:???
 .カヲル『そう? 君はお父さんも妹さんも、恨んでしまいたくないだけだよ。
     二人を大事に思うから、自分を悪く見たがるのさ。自責することないよ』
 シンジ「そう…かな。…そう、どっちにしろ、明日は行かなきゃ。レイの分も」
 .カヲル『そうだね。君が元気な姿を見せるのが、お母さんも一番安心すると思うよ』
 シンジ「うん。…あの、ごめん。夜遅くに、いきなり電話でこんな話して」
 .カヲル『構わないよ。話を聞くくらい、僕で良ければ』
 シンジ「…うん。…ありがとう、いつも」

 シンジ(父さんもレイも、恨みたくない、か)
 シンジ(…なんでレイじゃなくて、カヲル君に聞いてもらおうと思ったんだろ。
     父さんの話するなら、真っ先にレイが浮かんでいいはずなのに)
 シンジ(でも考えてみたら、レイが父さんにどう接してるのか、父さんはどうなのか、
     僕は大したこと知らないんだ)
 シンジ「…双子って、思ってたより、近くないんだな。本当は」
289名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/08/09(金) NY:AN:NY.AN ID:???
test
290名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/08/09(金) NY:AN:NY.AN ID:???
 加持「あれ? 葛城、今日休みだっけ?」
  リツコ「そう。彼氏の付き添い」
 加持「カレシ? …ああ、シンジ君か。授業参観でもあるのかな…
     って、さっき、レイ見かけたぞ?」
  リツコ「今日は学校はないわ。そうじゃなくて、お母さんの命日だそうよ」
 加持「ああ…墓参りか。面倒見がいいな、葛城は」
  リツコ「違うのよ。ただ行くだけなら、シンジ君は一人でも平気でしょうね。
     問題は」
 加持「もしかして…碇司令が一緒、とか」
  リツコ「おかげで彼、渋っちゃってね。心配だから車で送るそうよ。レイは
     零号機の追加機能試験だし」
 加持「それでここにいたのか。テストぐらい、延期したっていいだろうに」
  リツコ「そうもいかないのよ。今日中にデータを取りきらないと、予定されてる
     機体相互換試験に間に合わないもの。
     それに予定通り終われば、レイは碇司令の帰りのヘリに便乗させる
     つもり。三人で顔を合わせるくらいはできるでしょ」
 加持「へぇ、さすがリッちゃん。…しかし、果たしてそう上手く事が運ぶかな」
  リツコ「あら、スケジュール上、可能な限りのことはしたつもりだけど?」
 加持「スケジュール上は、だろ。あの三人が、素直に家族の再会を演じると
     思うか?」
  リツコ「それこそ、面倒見きれないわよ。それに、双子の結束が固いのは
     よく知ってるでしょ。息を合わせてうまくやるんじゃない」
 加持「結束ねぇ。…かたや他人に預けられて育ち、かたや離れることなく
     手元で過ごす。いくら血のつながった双子といえど、埋められない溝も
     あるんじゃないのか。まして、その張本人を挟んで向き合うときては」
  リツコ「…他人が首を突っ込むことじゃないわ。さて、そろそろ行かなきゃ」
 加持「ま、確かにな。お疲れさん」
2911/3:2013/08/09(金) NY:AN:NY.AN ID:???
墓地にて
降下してくるヘリの窓にレイの姿

   碇「では先に帰る。仕事が残っている」
 シンジ「…!」
   碇「何だ」
 シンジ「…、ッあの…今日は、うれしかった。父さんと話せて」
   碇「…そうか」
 シンジ「でも、…レイとは、一緒に帰るんだね」
   碇「それがどうした」
 シンジ「父さんは…、あっ!」

ヘリから降りてきたレイ、回転中のローターの風にあおられて転ぶ

 シンジ+碇「「!!」」

  .レイ「…痛」
 シンジ「大丈夫、レイ! あ…膝、血が出てる、すぐ手当てしないと」
   碇「どけ。すぐに本部の医務局に連れていく」
 シンジ「何悠長なこと言ってるんだよ、父さんこそどいてよ! ほらレイ、貸して」
   碇「お前はいい。素人が手を出すな。レイ、行くぞ」
2922/3:2013/08/09(金) NY:AN:NY.AN ID:???
 シンジ「絆創膏貼るくらい何だよ! そうやっていっつも他人任せにして」
   碇「お前こそ、何も知らないくせに」
 シンジ「父さんよりは知ってるさ。…あっ」
   碇「お前と話してても埒が明かん。レイ、行こう」
  .レイ「あ…、! 痛ッ」

 両者「「!!」」

 シンジ「何するんだよ父さんッ! 無理に歩かせちゃ駄目だ、捻挫してるかも」
   碇「いや、骨折の恐れもある。おい! 担架だ! 早くしろ!」
 シンジ「そんなの待ってられないよ! はい、レイ、おぶさって」
  .レイ「う、うん」
   碇「おい、勝手にさわるな! 早く下ろせ、あ、いや、早く運べ、いいから」
 シンジ「父さんこそ周りをうろうろしないでよ! 危ないだろ!」
   碇「危ないのはお前のおぶい方だ。…ああレイ、大丈夫か」
 シンジ「だから前を塞がないでってば!」
  .レイ「……」
2933/3:2013/08/09(金) NY:AN:NY.AN ID:???
  .ミサト「…で、結局、仲良く三人で帰ってきたそうよ。
     その後も、医務局まで揃ってレイの付き添い。ほんと、レイのこととなると
     血相変えるんだから」
 加持「案ずるより生むが安し、か。心配無用だったな。…ところで、なんでお前
     そんなに機嫌悪いんだ? ハッピーエンドじゃないか」
  リツコ「ああ、ミサトはね。シンジ君を車でお墓まで送っていったでしょ」
 加持「それは聞いた…って、ん? まさか」
  リツコ「そう。レイの騒ぎでみんなヘリで帰っちゃって、連絡もなく一人で墓地の前に
     置いていかれたそうよ。この暑さの中」
 加持「…そりゃまた、貧乏くじだ」
  .ミサト「なんですって」
 加持「いやいや、お疲れさまです、葛城作戦部長。あとで一杯おごってやるから」
  リツコ「しばらく話しかけない方がいいわよ、拗ねてるから」
  .ミサト「うるっさいわねもうッ。ふんだ」
2941/2:2013/08/10(土) NY:AN:NY.AN ID:???
 .カヲル「じゃあ、親子三人で話ができたんだね」
 シンジ「うん…会話っていうより、レイの心配してただけだったけど。なんか、
     それも情けないよね、はは」
 .カヲル「そんなことないさ。君は、そのきっかけを無駄にしなかったんだからね」
 シンジ「そう…なのかな。…うん、医務局で別れるとき、少しだけど、父さんの
     顔を見て話ができたんだ。…父さんも、普通に応えてくれた。いつも
     こうやってレイの面倒見てやってるのか、とか。あれ、結局レイの話だ」
 .カヲル「それでもいいと思うよ。次は、君自身の話ができるといいね」
 シンジ「…、うん。…ありがとう、カヲル君が励ましてくれたおかげだよ」
 .カヲル「僕じゃないさ。妹さんのおかげ、だろう?」
  .レイ「…わたし」
 シンジ「え…そうか、そうだよね。レイも、ありがとう。レイが来てくれたからだよ」
  .レイ「…、私、別に何も、してない」
 シンジ「あ…」
2952/2:2013/08/10(土) NY:AN:NY.AN ID:???
  .レイ「…でも、よかった」
 シンジ「…!」
  .レイ「なんだか、いつもと違ってた。お兄ちゃんも、…碇司令、も。…うれしかった」
 シンジ「…、そっか。…足首、もう大丈夫?」
  .レイ「うん。今朝、赤木博士に湿布、替えてもらった。もう平気」
 .カヲル「そう、良かったね」
  .レイ「……」
 シンジ「? どうしたんだよ、照れてるの、レイ。そっぽ向いたりして。…あ」
 .アスカ「やーっぱり、ここにいた」
 シンジ「アスカ? 終わったんだ、2号機の試験」
 .アスカ「当たり前でしょ。
     それより何をぐずぐず居残ってるのよ、あんたたち! テスト上がったんなら
     明日に備えてさっさと帰って休みなさいよ。いついかなる時も即応できる態勢を
     整えとくのが、待機中の当然の務めでしょ!」
 シンジ「何だよ、別に、ちょっと話をしてくぐらいいいじゃないか」
 .アスカ「はぁああ…そこが無自覚だって言うのよ。あのね、予備人員なんかとぐだぐだ
     無駄話をしてるヒマはないの。ほんっと、意識低いんだから。
     妹も、馬鹿シンジとおんなじ顔してこっち見ないの! うっとうしい!」
  .レイ「……」
 シンジ「もう、レイにまで当たるなよな。一人だけ遅くなったからって」
 .アスカ「何か言った?!」
 シンジ「べつに。はぁ…ごめん、カヲル君。また今度」
 .カヲル「うん。お疲れさま」
296名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:???
test
2971/2:2013/08/19(月) NY:AN:NY.AN ID:???
  .レイ「じゃ、私、先に行くから」
 シンジ「うん…」
  .レイ「…どうしたの」
 シンジ「え?! …あ、いや、別に」
  .レイ「……」
 シンジ「…、あは、ちょっと緊張してる、のかな。けど別に、大丈夫だよ。
     レイは気にしないで。ほら、遅れるよ」
  .レイ「…わかった」
 シンジ「じゃあ、あとで」
  .レイ「うん。行ってきます」
 シンジ「行ってらっしゃい。…
     …ふう」
  ミサト「そんなに固くならなくても大丈夫よ、シンジ君」
 シンジ「…ミサトさん」
  ミサト「予備テストは全部OKだったんだし、あなたたちはいつも通りにやれば
     いいんだから。始めてみれば、案外、すぐ済んじゃうわよ」
2982/2:2013/08/19(月) NY:AN:NY.AN ID:???
 シンジ「…、はい。でもやっぱり、別のエヴァに乗るのって、なんだか不安で」
  ミサト「そっか。レイの零号機でも、駄目?」
 シンジ「……」
  ミサト「ま、とにかく、余計なことは考えずに、自然体で行きなさい。
     案ずるより産むが安しってね。そう、レイのあの落ち着きを見習うつもりで、ね」
 シンジ「…はい。僕も、あんなふうにできればいいんですけど。…こういう時って
     やっぱり、レイには敵わないや」
  ミサト「いやいや、実は赤の他人には見分けられないだけで、本当はレイも
     緊張してるのかもよ。その辺、どう? お兄ちゃん」
 シンジ「ええ? そんな、いくら双子だからって、考えてること全部わかるわけじゃ
     ないですよ。たまに何となく、気持ちが伝わる気がするだけで」
  ミサト「うーむ、傍目からは以心伝心って感じなのにね。今は?」
 シンジ「…よくわからないです。
     わかるって思えることの方が、本当は少ないのかもしれない。…僕は
     レイのこと、本当は大して知らないのかもしれない。変ですよね、初めて
     会った頃より今の方が、わからないことが多い気がするなんて」
  ミサト「そんなことないわ。
     誰だって、大人だってそうよ。それに、自分だけわかったつもりになるより、
     その方がずっと正直だわ。理解できなくてもいい。ただ、信じてあげなさい。
     あなたの妹なんだから」
 シンジ「…はい」
299名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:???
誰かシンジとレイの双子漫才を
300名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:???
ついでに300ゲンドウ、じゃなくてゲット
301名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/01(日) 01:44:16.34 ID:???
良スレ
302名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/05(木) 11:26:10.90 ID:???
test
303名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/05(木) 11:52:46.52 ID:???
プロバ規制やっと解除、長かった…
>>300 おめでとうー
>>301 ありがとうございます


.アスカ「そうよ、あんたたち息だけはぴったりなんだから! せっかくの双子の特性、
    他の何かに生かすべきなのよ」
 .レイ「生かす?」
シンジ「何だよ、いきなり」
304名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/05(木) 11:53:41.29 ID:???
.アスカ「何でもかんでもエコが叫ばれるこの時代、効率化は急務よ。有用な人的資源は
    眠らせずに活用すべきだって言ってるの。そうね、たとえば…あ!なんだっけ、
    ニニンバオリ?とか!」
 .レイ「私が後ろから腕だけ出して、お兄ちゃんにお蕎麦食べさせるのね」
シンジ「え…っと、それって、ただの宴会芸じゃ」
.アスカ「…う、うるさいわね。じゃあえっと、あれよ、機関銃の砲手と、弾帯を送る係!
    これなら実践的でしょ?」
 .レイ「アパム、弾持ってこい。の人ね」
305名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/05(木) 11:56:20.12 ID:???
シンジ「うーん…確かに実戦では役に立つかもしれないけど、エヴァで戦うときは
    予備の弾は手近な兵装ビルから出してもらうし、わざわざ二機でやらなくても」
.アスカ「ッもういちいち細かいこと言うんじゃないわよ! ったくもう、じゃあれでいいわ、
    餅つきで! ネルフの公式行事とかで、会場のにぎやかしでもやってなさいよ」
 .レイ「お兄ちゃんが杵でついて、私がお餅を返す係ね」
シンジ「…アスカさ、もうどうでもよくなってるんじゃない…?」
.アスカ「無能な兄は黙ってて! …にしても妹、あんた詳しいのね。よく調べてるわね」
 .レイ「別に、普通」
3061/3:2013/09/05(木) 13:15:27.33 ID:???
本部内実験場
固定位置で壁面に拘束された初号機

  レイ「初号機、起動を確認。引き続き、簡易機体連動試験に入ります」
 .リツコ『了解。全て問題ないわ。…レイ、どう? 初めて乗った初号機は』
  レイ「……
    お兄ちゃんの、近くにいる気がする」

固定位置で壁面に拘束された零号機

 伊吹『ボーダーライン、クリア。零号機、起動しました』
  リツコ『やはり、初号機ほどのシンクロ率は出ないわね』
 伊吹『でも、さすが双子ですね。初実験で、ここまで安定した数値になるなんて。
     シンジ君、大丈夫? ご苦労さま、無事に、起動できたわ』
 シンジ「……はい」
3072/5:2013/09/05(木) 13:18:17.55 ID:???
  リツコ『気分は悪くなさそうね。では予定通り、続いて機体連動プログラムに移って』
 シンジ「はい。…あの、もう一つの実験の方は」
 伊吹『あ、レイなら大丈夫よ。さっき、シンジ君より少し早く、初号機の起動に成功したわ』
  リツコ『あなたは心配しなくていいの。簡易版プログラムだから、すぐ終わるわ。いつも通り
     エヴァを動かすことに集中して』
 シンジ「…はい」

 シンジ(…零号機か。いつも、レイが乗ってるエヴァ。…何度も助けてもらった)
 シンジ(だからなのかな。何だか、知らない場所って感じがしない)
3083/5:2013/09/05(木) 13:28:09.43 ID:???
 シンジ(エントリープラグは同じ仕様だし、LCLも、操縦桿も同じ。でも、それだけじゃなくて
     …レイのすぐ近くにいる気がする)
 シンジ(…そうか。レイの…匂いなんだ)
 シンジ(……?)
 シンジ(…なんだこれ、何か、変な…機体に、抵抗がある…、感覚が…おかしい)
 シンジ「!」

警報
3094/5:2013/09/05(木) 13:29:00.79 ID:???
  リツコ「どうしたの?!」
 伊吹「脳神経パルスが乱れてます。変です、今まで安定してたのに…、制御神経、断線開始!」
  リツコ「回路を強制遮断。精神汚染の恐れがあるわ。食い止めて」
 伊吹「駄目です、信号を受け付けません! 零号機、制御不能!」

拘束具を破壊し振り払うように前へ出る零号機
不器用に数歩歩き、突き当たった壁に頭を激しく叩きつけ始める

   ミサト『何があったの! パイロット…シンジ君は?!』
   リツコ「今は、まだ不明よ」
   ミサト『不明、って…!』
3105/5:2013/09/05(木) 13:30:31.95 ID:???
  伊吹「パイロット、脳波シグナル微弱。意識ありません」
オペレータ「零号機、内部電源に切り替わります。活動停止まで残り15秒」
   リツコ「完全停止したら、すぐにプラグを強制排出。再入力、準備急いで」
  伊吹「はい!」
   ミサト『リツコ!』
   リツコ「事が収束してから報告するわ。今は口を出さないで」
   ミサト『違うわ! 次に予定していた2号機の連動試験は中止、ただちに発進準備!』
  伊吹「えっ?」
  日向『上空に、未確認の移動物体が侵入しつつあり! 不規則に形態を変動中!』
  伊吹「そんな、まさか…!」
   リツコ「…使徒?!」
3111/7:2013/09/06(金) 12:50:21.33 ID:???
晴れ渡った第三新東京市上空
陽炎の包む街並を長大な影が変転しながら横切っていく
高度500mにまでそびえ立つ形状不定の巨大物体
無光黒面で形成された幾何学立体、複雑な塔様の集合体、有機的な曲面が
入り組んだ機械のように次々と形を変え入れ替わっている

ビルの陰を這うアンビリカルケーブル
身を隠しつつ、上空の物体を窺うエヴァ初号機と2号機
後方では市民たちの緊急避難が続いている
3122/7:2013/09/06(金) 12:51:14.18 ID:???
緊迫する発令所
 日向「12分前に、突然現れました。形状、サイズ、質量も常に変化し続けています。
     本部直上をほぼ中心として微速移動していますが、その速度も軌道も不定です」
  ミサト「住民の退避は?」
 青葉「現在、シェルターへの避難は78%まで完了。やはり、目標に近い西地区が
     遅れています」
  ミサト「…全ての住民の避難が完了するまで、うかつに手は出せないわね。
     初号機と2号機は現状維持。一定の距離を保ちつつ、目標を監視。くれぐれも、
     まだ攻撃はさせないで」
 日向「了解」
3133/8:2013/09/06(金) 12:53:59.18 ID:???
  リツコ「司令も副司令も不在のこの時に、使徒襲来とはね。それも未確認のタイプ…
     MAGIの回答は、現時点では分析不能。通常の物理法則には従っていないのよ。
     私たちに見えているあの物体が、目標の本体ではないということもあり得るわ」
  .ミサト「相手は使徒よ。我々の常識が通用してくれる敵じゃないわ。とにかく今は、
     現状でできることをするしかないわ」
  リツコ「…初号機をあのまま出したのも、そのため?」
3144/8:2013/09/06(金) 12:55:11.24 ID:???
  .ミサト「2号機だけでは、退避未完了の地区を全てカバーしきれないわ。たとえ戦闘には
     耐えなくても、2号機のバックアップなら可能だわ」
 日向「目標、再び移動を開始!」
 .アスカ『本部に向かってるわ。…ミサト!』
  .ミサト「住民の退避は?!」
 青葉「まだです! 最短でもあと15分!」
  .ミサト「アスカ、まだ手出ししないで。そのまま目標を追跡」
 .アスカ『…ッ、じれったいわね。初号機、場所を変えるわよ!』
3155/8:2013/09/06(金) 12:56:19.82 ID:???
  レイ「…了解。初号機、2号機のフォローを続けます」
初号機内のレイ
モニタ中央、上空で緩慢に回転伸縮する目標の巨影が移動していく
じっと見据えるレイ
ふと眉をひそめる
突然、目標の巨大構造の一端が形状変化して開き、多数の黒い棘腕が弾け出る
形状不定の時とは違い、全てに重質量反応がある
轟音をあげて次々と街並に突き刺さり破壊する棘腕の群れ
初号機にも迫る
3166/8:2013/09/06(金) 12:57:17.52 ID:???
  レイ「!」
とっさにATフィールドを展開する初号機
瞬間、目標全体が反応する
あらゆる尖端がコースを変えて初号機を包囲、一斉に展開して周辺一帯を呑み込んだ直後
急に目標構造の全てが折り畳まれて元の大きさに戻る
ぽっかりと削り取られた市街
初号機の姿はない
何事もなかったかのように再び無音の形状変化を始める目標
3177/8:2013/09/06(金) 12:58:29.45 ID:???
  .ミサト「どうなってるの?! 初号機はっ?!」
 日向「全シグナル消失! 目標周辺にも、それらしき反応は皆無!」
 伊吹「パイロットとの交信も途絶えています。プラグからの信号、全て断絶!」
 青葉「目標、沈黙! 再び形状・質量ともに、不規則に変動中」
  .ミサト「…アスカッ!」
 アスカ『わかってる!』
3188/8:2013/09/06(金) 12:59:20.92 ID:???
ビル陰から飛び出し、目標に掃射を加える2号機
再び実体を得て広範囲に展開する目標
降り注ぐ黒い尖端
貫通され宙に砕ける建造物群
それら全てを機敏に回避していく2号機
再度攻撃に出るが、目標は一時的に展開攻撃と収縮を繰り返すのみ
初号機の反応は戻らない
ミサトの感情を殺した声が撤退を命じる
全市を睥睨するかのように宙にそびえる巨大な目標の姿
プラグ内で強く唇を噛むアスカ
319名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/15(日) 08:22:26.13 ID:???
test
320名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/18(水) 07:36:33.14 ID:???
短く息を吸い込んで目を見開くシンジ
本部内病室

 .カヲル「気がついたね」
 シンジ「…え…、カヲル君…? ここは…僕は、確か…」
 .カヲル「君の実験中に、零号機が暴走を起こしたんだよ。覚えている?」
 シンジ「え…っと、…うん。
     でも何だか、はっきり思い出せない…ような」
 .カヲル「無理もないよ。零号機から、大量の脳神経パルスの逆流を受けたんだからね。
     どこか、痛むところはないかい」
 シンジ「うん…、大丈夫、だと思う。零号機は…?」
 .カヲル「あれからごく短時間で停止して、再固定された。機体とシステムの再検査も
     済んでる。心配しなくていいよ」
 シンジ「そっか…、良かった。…でも、あとでレイに謝らないと。怒ってないといいけど…
     そうだ、僕はどのくらい寝てたんだろう。あ…カヲル君、もしかしてずっとここで
     付き添っててくれたんだ…その、ありがとう」
 .カヲル「……」
 シンジ「…カヲル君?」
 .カヲル「シンジ君、ごめんね。
     君に伝えなければいけないことがある。…落ち着いて聞いてほしい」
 シンジ「え…?」
321名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/19(木) 07:33:03.14 ID:???
  リツコ「目標は高次元体。すなわち、我々の三次元物理空間ではなく、より高い
     数理次元の超立体としてふるまっています。我々に見えているあの物体は
     目標の三次元的断面。本体の落とす影に過ぎないの。おそらく目標の本体…
     コアは、我々の手の届かない高次空間に存在し、こちらに干渉するときにだけ
     ATフィールドを介して実体化する」
  .ミサト「…向こうから攻撃してこない限り、手出しできないってことか。
     初号機は?」
 伊吹「被襲時の状況を分析した結果、機体は展開していた目標のATフィールドの
     収縮に巻き込まれる形でロストしています。現在は、目標本体と同じ高次元
     空間に捕獲されていると考えられます」
  .ミサト「つまり、目標に取り込まれた…予想される、初号機の状況は」
 日向「アンビリカルケーブルの先端は、目標の展開ラインのすぐ内側の地点で
     切断されていました。その時点で初号機が内部電源に移行したとすると、通常の
     活動限界までは5分20秒」
  リツコ「レイが機体を生命維持モードに切り替えていれば、16時間程度はもつわ」
 伊吹「同時に、電源が生きている間は、初号機のATフィールドが高次空間の影響下でも
     機体を保持し、パイロットを守ってくれるはずです」
322名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/19(木) 07:47:59.60 ID:???
 青葉「目標は、現在も第三新東京市上に滞空中。出現当初と似たパターンの
     不定移動を繰り返していますが、軌道半径は徐々に縮小しています」
  .ミサト「…そう。
     状況は芳しくないけど、かろうじて、何かする時間はあるわね」
 .アスカ「…時間だけは、ね」
  .ミサト「アスカ?」
 .アスカ「何かできるつもりでいるのなら、甘すぎるわよ。
     高次元への回路を開けるのは目標だけ。つまり私たちは、目標の側から
     何か仕掛けてくるのを待つ以外に何もできない。おまけに先の戦闘状況から
     して、仮に目標が実体化して、こちらからそれを攻撃したとしても、本体に
     届く保証は何もない。何の手応えもなかったもの」
 青葉「…確かに、その通りですね。2号機との交戦の前後で、目標の行動に変化は
     認められません」
 .アスカ「今回だけは、無理よ。…私たちには、何もできない」
 伊吹「そんな…」
  .ミサト「いえ、一つだけ方法はあるわ」
 日向「えっ?」
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/19(木) 07:49:59.76 ID:???
 .アスカ「…エヴァのATフィールドね」
  リツコ「そう。高次元空間で本体を支えているのもまた、目標のATフィールド。
     何らかの形でそれに干渉できれば、本体をこちらの物理空間に引きずり出す
     ことが可能かもしれない」
 .アスカ「…使徒殲滅の第一段階は、そのATフィールドの中和、無力化。セオリー通り、
     基本に忠実にやるのが、今回も早道ってわけね」
 青葉「しかし…それを実行するには、相当量の物理エネルギーが必要になります」
 日向「大出力のATフィールドに加え、強制干渉するための、いわば起爆剤。
     さらにそれらをコントロールする、精度の高いオペレーションが不可欠ですね」
 .アスカ「2号機一機で、できる方法じゃないわ。…悔しいけど」
 日向「せめて、零号機が使えればな」
 伊吹「先の実験では、搭乗者との神経接続には成功したものの、実働テストまでは
     行えませんでした。つまり、実戦での機動は未知数です」
 青葉「加えて、エヴァが搭乗者に原因不明の拒否反応を示した…」
 .アスカ「…馬鹿シンジには零号機は動かせない、ってことね。ミサト」
  .ミサト「わかっているわ」
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/20(金) 08:06:57.58 ID:???
 シンジ「使徒に…呑み込まれた…?」
 .カヲル「…そうだよ。
     上では今も、使徒の監視と周辺の捜索が続いている。でも、初号機らしき反応は
     見つかっていない」
 シンジ「そんな…嘘、だ」
 .カヲル「…うん。嘘だったら、良いのだけれどね」
 シンジ「……僕の、せいだ」
 .カヲル「シンジ君…?」
 シンジ「…僕のせいで、レイはやられたんだ。
     僕の代わりに初号機で出たから、…僕が出られなかったから、代わりにレイが
     そんな目に遭う羽目になったんだ。僕が、零号機で失敗なんかしたから」
 .カヲル「…シンジ君」
 シンジ「僕のせいだよ。僕が出てれば良かったんだ。レイが危ない目に遭ってるのに
     僕は何も知らずに寝てただけだった。…くそっ」
 .カヲル「シンジ君…」
 シンジ「…ごめん。だけど…、…もうッ、肝心な時に何やってるんだ、僕は…!」
 .カヲル「……」
325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/20(金) 21:32:47.54 ID:???
キタキタ
326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/24(火) 07:42:47.84 ID:???
>>325 うわっびっくりした、ありがとうございます


初号機内のレイ
電力消費を最小限に抑えているために薄暗いエントリープラグ

 レイ(また…この音、機体が軋んでる)
 レイ(さっきより、それにその前よりも、大きくなってる。ダメージが蓄積してる)
 レイ(まだ、ATフィールドは保ってる。でもあとどのくらい、待てばいい)
 レイ(…待つって、何を)
 レイ(……)
 レイ(…?)
 レイ(…初号機。私のじゃない、エヴァ)
 レイ(…お兄ちゃんは、ここで何度も怖い目に遭った。そう言ってた)
 レイ(だから、エヴァに乗るのは好きじゃない、って)
 レイ(好きじゃないって、何)
 レイ(そんなふうに考えたこと、ない。私)
 レイ(…こんなふうに、何もせずに何か思ったこと、今までなかった)
 レイ(命令通り動いてれば、気づかずに済んだこと。見なくて良かったもの)
 レイ(知るのは、怖い?)
 レイ(心を感じるのは、怖い?)
 レイ(…そう、怖い。…だから、待つのは嫌)
 レイ(でもここは、お兄ちゃんの匂いがするから、…少し、平気)
 レイ「…お兄ちゃん、…お腹、すいた」
327名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/27(金) 10:53:30.27 ID:???
本部医療棟廊下

 加持「よ。待機中のはずのパイロットが、何やってるんだ」
 .アスカ「! …なんだ、驚かさないでよ」
 加持「浮かない顔だぞ」
 .アスカ「…この状況下で、浮いた顔なんてできないわ。まだなの、ミサトは」
 加持「まだだ。作戦部と技術局合同で、集められるだけの情報を取ってるよ。使徒を
     刺激しない範囲ぎりぎりまで、現場に出てね」
 .アスカ「何か新しいものが…って、見つかるわけ、ないわよね。相手は高次元体だもの、
     私たちが周りをうろちょろしたところで、たかが知れてるわ。ほんっとイラつく、私、
     …何も、できなかった」
 加持「そう自分を責めることもないさ。葛城だって同じだよ。動かずにはいられないんだ。
     それより、シンジ君の見舞いには行かないのかい。意識は戻ったんだろ?」
 .アスカ「?! なんで、この私が」
 加持「じゃなきゃ、なんで2号機を離れてこんなところにいるんだ」
 .アスカ「…、違うわ。行かない」
 加持「そりゃまたえらく断定的だな」
 .アスカ「…あのシスコン馬鹿に今、何て言えばいいのよ。
     それに、あのいけ好かない予備人員がついてるんでしょ。私の出る幕なんてないわ」
 加持「そうか? …ん、戻っちゃうのか」
 .アスカ「2号機で待機する。やっぱり、持ち場を離れるなんてするもんじゃないわ。
     やだな、作戦時の行動に影響出そう」
 加持「君なら大丈夫さ。現にそうやって、自分の気持ちにちゃんと向き合えてるからな」
 .アスカ「何よ…、あーあ、大人目線。そういうセリフはあのお子様シンジに言ってよね。
     じゃ、私が来てたってことは、言わないでよ」
 加持「はいはい、了解」
328名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/30(月) 07:38:44.43 ID:???
 .ミサト「初号機のサルベージ…?」
 リツコ「そうよ。
    現存する全てのN2爆弾を一斉に使徒の示現体に投下。MAGIのサポートのもと、
    その膨大な爆発エネルギーを2号機のATフィールドで高精度に強制収束し、
    使徒のATフィールドにぶつけ、こじ開ける」
 .ミサト「そんなことが…」
 リツコ「アスカと2号機なら、やれるわ」
 .ミサト「…やれる、じゃなくて、やってもらうしかない、でしょう」
 リツコ「…そうね。本人も、そのことはわかっているはずよ。
    本体へ流れ込んだエネルギーは、使徒内部で飽和状態となって、コアを破壊。
    たとえそれが叶わなくても、最低限、捕らわれている初号機をこの物理時空へ
    弾き出すことは可能だわ」
 .ミサト「待ってよ、それじゃ間違いなく機体が大破するわ。中のレイはどうなるの?!」
 リツコ「私たちは初号機を失うことはできないのよ。わかっているでしょう。
    …この際、パイロットの生死は問いません」
 .ミサト「!」

リツコの頬を張るミサト

 リツコ「…ッ、レイを失うのは、あなたのミスなのよ!」
 .ミサト「…確かに、ね。状況を誤認し、不慣れな機体で出した私の責任だわ」
 リツコ「……」
 .ミサト「だけど…いえ、だからこそ必ず、あの子を迎えに行ってあげなきゃ。
    作戦部長として、当作戦案は人的損失があまりにも大であると判断します。
    支持はできないわ」
 リツコ「…、本作戦は技術部主導で行います。既に国連の協力は取り付けているわ」
 .ミサト「結構。邪魔はしないわ。しかし作戦部は、タイムリミットぎりぎりまで、初号機
    およびそのパイロットの、別の救出方法を探ります」
 リツコ「…わかったわ」
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/09/30(月) 17:46:56.85 ID:???
3301/3:2013/10/02(水) 08:00:09.08 ID:???
>>329 ありがとうございます


 レイ(ここはどこ)
 レイ(エヴァの中。…エヴァ初号機の、エントリープラグの操縦席)
 レイ(いつもは、お兄ちゃんがいる席)
 レイ(……)

  アスカ(…このまま出すぅ?! 無理よ、ろくに連動訓練もしてない不慣れな機体で、
      まともな作戦行動が取れるわけないじゃない! 私一人で充分よ!)
   ミサト(零号機は現在、仮凍結中。全てのシステムをチェックして再起動するには
      時間がなさすぎるの。戦闘に耐えないのはわかってる。住民の避難が
      完了するまでの、後方支援でかまわないわ。…レイ、いいわね)
   レイ(はい。初号機で、2号機のバックアップに回ります)
  アスカ(ちょっと! あんた本当にそれでいいの?!)
   レイ(平気。…邪魔、しないから)
  アスカ(馬鹿シンジの代わりをやる気なら、考えが甘すぎるわよ。絶対怪我するわ)
   レイ(…いい。それにそんなつもり、ないもの)

  レイ(嘘ね)
 レイ(…?! なに)
  レイ(嘘つき。本当は、思ってること、当てられて動揺していたくせに)
 レイ(…何の、こと)
  レイ(初号機に乗って、碇シンジの代わりをするつもりだったのね。戦って、勝って、
     彼の代わりになりたかったのね。いいえ、彼に替わりたかった。そうなんでしょ)
3312/3:2013/10/02(水) 08:01:06.09 ID:???
 レイ(…そんなこと、…、…ない)
  レイ(嘘ばかりつくのね。本当は少し嬉しかったくせに)
 レイ(なぜ。お兄ちゃんが零号機で、危ない目に遭ってたのに)
  レイ(碇シンジは初号機に乗って、お父さんに褒められていたわ。前の戦いのとき)
 レイ(あ…)
  レイ(『よくやったな、シンジ』。
     本当は、自分がそんなふうに言われたかった。お父さんが優しい言葉をかけて
     くれるのは、それまでずっと自分だけだったのに。
     どうして?って、感じたでしょう。思い出すたびに、今まで知らなかった、息苦しい
     気持ちが増えたでしょう。それが彼への、本当の心よ)
 レイ(…ちがう)
  レイ(碇シンジは初号機で戦って、いつも勝つ。一人で使徒に立ち向かって、勝ってきた。
     私はただ横で、彼の手助けをするだけ。彼よりも前からここにいたのに)
 レイ(いえ、それでいいの。私は、碇司令の命令の通りに動くだけ。
     ずっと、それだけで良かったもの)
3323/3:2013/10/02(水) 08:01:52.74 ID:???
  レイ(また嘘なのね。
     ここと、みんなと繋がるたった一つのよすがだった零号機も、碇シンジに
     反応した。もう私だけのものじゃない。エヴァに乗れるのは、私一人じゃない)
 レイ(いいえ、それでかまわない。みんなのためだもの。碇司令が決めたことだもの)
  レイ(だったら、もう私は要らなくなるかもしれない)
 レイ(!)
  レイ(それが私の、本当の心。怖くて、悲しくて、どこまでも虚ろな、本当の気持ち)
 レイ(違う)
  レイ(だったらなぜ、碇司令の命令でもないのに、初号機に乗ったの?)
 レイ(…違う、わ)
  レイ(お父さんが帰ってきて、褒めてくれることを願ったからでしょう。
     レイ、よくやったな)
 レイ(…!)
  レイ(もうシンジはいなくていい。これまで通りお前がいればいい。レイ、私のレイ)
 レイ(…やめて)
 レイ(もうやめて)
 レイ(やめて…)
 レイ(……お兄ちゃん)
 レイ「お兄ちゃん、…助け、て」
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/10/03(木) 07:36:33.24 ID:???
本部医療棟
暗い病室の中、ベッドの上で固く膝を抱えて突っ伏しているシンジ
ふいにはっと顔を上げる

 シンジ「……レイ」
 .カヲル「…え?」
 シンジ「レイ…の声が、聞こえた、気がして…今」
 .カヲル「そう…? …僕には、何も」
 シンジ「ッでも、聞こえたよ。…聞こえたんだ」
 .カヲル「…シンジ君」
 シンジ「レイ…今頃きっと、助けを待って、一人で我慢してるんだ。初号機の中で。
     …僕はこんなとこで、一人で何やってたんだろう。使徒が来てるっていうのに」
 .カヲル「……」
 シンジ「行かなきゃ」
 .カヲル「……」
 シンジ「僕なんか…今は役に立たないかもしれないけど、…でも、行かなきゃ。
     ここでただ待ってるなんて駄目だ。ほんとに待ってるのはレイの方なんだから」
 .カヲル「…そう、だね」

立ち上がり、手を差し出すカヲルを見上げるシンジ

 シンジ「…、カヲル君、…その、ごめん、一人なんて言って。ずっといてくれたのに」
 .カヲル「僕のことは、いいよ。今は妹さんのことだけ考えないとね」
 シンジ「あ…うん」
 .カヲル「初号機の内部電源はもう残り少ない。作戦部も技術部も、最終的な行動方針を
     決めている頃だ。でも、作戦が発動するには、まだ少しだけ時間があるはずだよ。
     きっと、何かできるさ」
 シンジ「…うん」

カヲルの手を掴み、ベッドから下りてしっかりと立つシンジ
334名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/10/04(金) 07:30:24.97 ID:???
test
335名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/10/05(土) 11:58:16.50 ID:???
地上作戦指揮車輌内
コンソールに向かう日向と背後から見守るミサト
モニタから警告音

 日向「…駄目ですね。やはり2号機だけでは、目標ATフィールドの突破どころか
     表層部の中和さえ困難です」
  .ミサト「目標の物理実体…私たちの空間を通過する、目標の三次元断面。それを
     直観的に把握できないのが厄介ね」
 日向「ATフィールド自体も、常に形状変化を続けていますからね。いくら2号機でも
     あの変幻自在の目標に瞬応しろというのは、酷な話ですよ」
  .ミサト「やはり力押しで行くしかない、か…
     いえ、だとしても、何か方法はあるはずだわ。N2爆弾の配置をパターンCA+、
     発火順はB-16タイプに切り替えて、もう一度シミュレーションしてみて」
 日向「はい」

モニタ上に開く2号機からの通信ウィンドウ

 .アスカ『まだやってたんだ、ミサト』
  .ミサト「アスカ? ま、ね。MAGIの使用なら、ちゃーんとリツコに許可取ってるし」
 .アスカ『そんなのやらなくたって、私がちゃんとやるわ。信用しなさいよ』
  .ミサト「アスカのことは信用してるわよ。けど、できるだけのことはやっときたいの。
     リツコ相手に大見得切っちゃったんだもの、発言の責任は取らないとね」
 .アスカ『なーに言ってんのよ。もしここであの子を見捨てるような真似したら、二度と
     馬鹿シンジに顔向けできない。…だからでしょ』
  .ミサト「…、手厳しいわねぇ」
 日向「? …葛城さん、本部からです」
  .ミサト「おかしいわね、まだ時間はあるはずだけど。はい…、…えっ?」
 .アスカ『ミサト?』
  .ミサト「…シンジ君が?」
336名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/10/07(月) 23:03:50.09 ID:???
test
3371/5:2013/10/07(月) 23:05:20.64 ID:???
 シンジ「初号機の強制サルベージ…?!
     爆弾で、無理やり使徒に吐き出させるって、…何なんですかそれ、レイは、
     中に乗ってるレイはどうなるんですか!」
 .アスカ「何甘ったれたこと言ってるのよ。N2の直撃を、ATフィールドの内側で受けて
     無事で済むはずないでしょうが。…もう、そんなことには拘ってらんないのよ」
 シンジ「…そんな」

作戦計画が映示されたブリーフィングルーム
中央に孤立したシンジと、誰一人目を合わせようとしない
3382/5:2013/10/07(月) 23:06:08.22 ID:???
 シンジ「何だよそれ、…そんなわけない、だって何か、…ッそうだ、ATフィールドを
     中和すればいいなら、爆弾なんて使わなくたっていいじゃないですか。
     僕もやります。エヴァで、零号機でアスカを手伝います。もうどんな怖い目に
     遭ったっていい、何だってやります、だから」
  リツコ「残念だけど、あなたには何もできないわ」
 シンジ「…え…?」
  リツコ「先の搭乗者相互換実験の評価がまとまったの。零号機は搭乗者、すなわち
     あなたを拒絶した。たとえもう一度シンクロできたとしても、まともには動かない」
3393/5:2013/10/07(月) 23:07:29.21 ID:???
 伊吹「今作戦では、変化し続ける目標に対するため、精度の高い操縦が必要なのよ」
 シンジ「そんな、それじゃ…、…ミサトさんッ」
  .ミサト「2号機は今作戦の要。その2号機まで危険に晒すわけにはいかないの」
 シンジ「…、僕じゃ、足手まといってことですか」
  .ミサト「…そうよ」
 シンジ「……」
  リツコ「確かに、レイ以外に唯一零号機とシンクロできるのはあなただけよ。しかし
     あなたでは零号機は動かないの。それが現状なのよ。わかって」
3404/5:2013/10/07(月) 23:08:16.02 ID:???
 伊吹「今零号機が出ても、逆に2号機の中和作業を乱す原因になりかねないのよ」
 日向「初号機が大破しても、エントリープラグを可能な限り無傷で回収できるよう
     想定される全てのケースで対策を講じてある。君が何もしなくても大丈夫だ」
 .アスカ「…気休め言っちゃって」
  ミサト「……」
 シンジ「……、僕は…」
 .カヲル「零号機は動きますよ」

振り向く一同の視線の先、試験プラグスーツ姿で歩み出るカヲル
3415/5:2013/10/07(月) 23:10:56.24 ID:???
  リツコ「…、部外者の参加は許可されていないはずよ。すぐに出て行って」
 .カヲル「あいにく部外者でいるのはやめたんですよ。だから提言に来たんです。
     現状でも、零号機には作戦行動が可能ですよ。僕が一緒ならね」
  .ミサト「…えっ?」
 .カヲル「違いますか。赤木リツコ博士」
  リツコ「……」
 伊吹「あなた、エヴァとの適合はそんな簡単な話じゃ…、え…先輩?」
 .アスカ「何よそれ、…私、聞いてないわよ」
  .ミサト「どういうことなの。…リツコ!」
  リツコ「……」
342名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/10/09(水) 07:17:19.33 ID:???
 (ここは、どこ)

  (名前、決めてくれた?)
  (ああ。男だったらシンジ、女だったらレイと名づける)
  (シンジ、レイ…ふふ)

 (だれ)

  (この子には明るい未来を見せてあげたいんです)

 (だれ?)

  (いいえ。この子たちは二人とも、私の子供ですわ)

 (…この人は)

  (あなた、……を)

 (だれ…?)
3432/4:2013/10/09(水) 07:52:53.21 ID:???
電源の尽きた初号機エントリープラグ内

 レイ(…あ)
 レイ(小さい光の点滅、…プラグスーツの表示。もう、機能の限界)
 レイ(LCLの浄化装置も、もうずっと止まってる)

 レイ(…? 何、嫌な、音、…プラグの、外?)
 レイ(…そう、電力がもうないから、…初号機のATフィールドが、変形を始めている)
 レイ(…機体の、限界)
3443/4:2013/10/09(水) 07:53:41.84 ID:???
 レイ(…わたし、も)
 レイ(くるしい、のに、身体が、ぜんぜん動かない。もう、わからない)

 レイ(苦しい…? 痛い…? …ちがう、…ただ、寒い)
 レイ(身体が寒い、そんなことが、どうしてこんなに、つらいの)
 レイ(感覚が苦痛だけになって、すり減っていく。私、が、なくなっていく)
 レイ(…このまま)
 レイ(私、このまま誰とも会えずに、消えていくの)
 レイ(…? …なぜ、そんなこと、思うの)
3454/4:2013/10/09(水) 07:54:58.55 ID:???
 レイ(一人が当たり前だと思ってた)
 レイ(でもいつのまにか、周りに他の人たちがいた)
 レイ(そのことも、当たり前だと感じるようになっていたのね)
 レイ(あのままずっと続いていくと思っていた)
 レイ(いえ、そう願っていた。自分でも知らずに)
 レイ(人と人の間にある、形もなく、目にも見えない、けれど、温かくて慕わしいもの)
 レイ(つながっていたい)
 レイ(みんなとの繋がりが途切れた今になって、そう願っていたとわかった)
 レイ(だから、寒いの)
 レイ(…つらいの)

 レイ「……さ、む、…い」
3461/2:2013/10/10(木) 07:55:38.87 ID:???
第三新東京市 払暁
市街の一部を呑み込んだまま変転する使徒の黒い巨影
使徒の予想展開範囲のすぐ外に佇立する2号機と零号機
上空に到達しつつある国連の爆撃機
一帯に交錯する多数の通信

 日向「よく間に合ったもんだよな、零号機のエントリープラグの改装。
     まったく前例のない無茶な仕様だっていうのに」
3472/3:2013/10/10(木) 08:00:04.41 ID:???
 青葉「結局、通常のインテリア二つをぶった切って前後にくっつける形で、
     何とかプラグ深度の安全範囲ぎりぎりにおさめたそうだ。電装系は
     シミュレーションプラグのマルチチャンネル型をそのまま持ってきてる。
     要はあり合わせのつぎはぎ、担当者は悲鳴をあげてたろうな」
 伊吹「でも、こうして形にしてくれたじゃない。時間もほとんどなかったのに」
 日向「やっぱり皆、レイを見捨てるのは嫌だったってことだろう」
3483/3:2013/10/10(木) 08:01:55.71 ID:???
 青葉「状況が状況とはいえ、子供を犠牲にするのは後味悪いからな。でなきゃ、
     例の特殊待遇のパイロットの実力を見たかったか、だ」
 日向「関連テスト、二人とも一発で通ったって?」
 伊吹「ええ。特にシンジ君、いつもとは操作環境がまるで違うのに、すごい
     集中力よ。機体の再チェックも問題なし」
 青葉「…そろそろ時間だ。始まるぞ」
3491/5:2013/10/13(日) 21:35:31.53 ID:???
改装された零号機のエントリープラグ
ややこわばった顔で操縦席に座っているシンジ
突貫工事で取り付けられた不恰好な複座インテリアの前方に目を向ける
簡略版ヘッドレストの向こうに覗いているカヲルの肩口
少し振り返る

 .カヲル「どうかした?」
 シンジ「…あ、いや、…その、…っすごいな、って。本当に零号機が動くなんて」
 .カヲル「動かしているのは君さ。僕にできるのは、エヴァへの思考波をできるだけ
     フラットにして暴走を抑えること、それに万一の時に、エヴァからの逆流を
     せき止めることくらいだ。あくまでも君の補助に過ぎないよ」
3502/5:2013/10/13(日) 21:36:23.38 ID:???
 シンジ「…、うん…
     でも、…ごめん、僕の代わりに、そんな危ない役目押し付けて」
 .カヲル「気にしないで。前に言ったろう、君の力になりたいって。僕はそれで充分だよ」
 シンジ「あ…」
 .カヲル「大丈夫さ。零号機は僕が抑えてる、君はいつもの通り、作戦指示に従って
     エヴァを動かせばいい。妹さんを助けることだけ、考えて」
 シンジ「…うん。…そうだ、今は僕が、やらなきゃ」
 .アスカ『ふーん、頑張っちゃって。なに肩肘張ってんのよ、馬鹿シンジ』
3513/5:2013/10/13(日) 21:37:17.70 ID:???
 シンジ「アスカ?! 何だよ、作戦前なのに」
 .アスカ『だから、でしょうが。
     あんたのことだから、どうせ自分で自分にプレッシャーかけて、悲壮感で
     ガチガチになってるんでしょ。たった一人で戦いに臨むわけでもないくせに』
 シンジ「…、何が言いたいんだよ」
 .アスカ『この作戦は私の2号機が仕切るの。目標に仕掛けるのも、ATフィールドの
     強制収束とそのコントロールも、この私が全て担当するのよ』
 シンジ「…それはさっき説明受けた、けど」
3524/5:2013/10/13(日) 21:39:22.47 ID:???
 .アスカ『万一、エヴァ二機のATフィールドでも目標に干渉しきれなければ、上空の
     国連軍がN2を投下する。でも心配ないわ。爆発のエネルギーはあくまで
     エヴァのATフィールドに沿って走り、最終的には目標のATフィールドと相殺
     されるの。MAGIが修正したそのための精密爆撃案が、すでに実行部隊に
     伝達されてるわ。…ま、ミサトの悪あがきも、ちっとは役に立ったってことね』
 シンジ「…ミサトさんが」
 .アスカ『だからあんたの役目は、零号機を起動させておくこと、そして作戦発動時に
     ATフィールドをフルに展開すること。それだけよ』
3535/5:2013/10/13(日) 21:40:43.35 ID:???
 .アスカ『難しい部分はこの私が全部片付ける。零号機の安定制御は、そこの予備人員が
     引き受ける。これで一体、どこに失敗する要素があるっていうのよ』
 シンジ「…うん。アスカ…あの、ありがとう」
 .アスカ『…、礼なら後で、妹を無事に助けてから、ちゃんとしてよね。じゃ』
 シンジ「……
     そっか。僕一人じゃ、ないんだ。…ずっとそうだったんだ、本当は」
 .カヲル「…そうだよ。シンジ君」
  .ミサト『時間よ。始めるわ。
     レイが生きている可能性が、まだあるうちに』
 シンジ「…ッ、はい」
354名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/10/15(火) 00:17:23.41 ID:???
3551/18:2013/10/19(土) 14:21:51.73 ID:???
黒から濃藍に移ろい始めた空
かすかな明るみを背景にそびえる使徒の動影
次々と稼動し出し安全装置を解除していく都市兵装
急速に密度を増す各種交信

オペレータ『エヴァ両機、最終作戦位置』
オペレータ『目標は依然変化なし。移動率、予測範囲内』
オペレータ『第三新東京市対空迎撃システム、全種起動完了』
3562/18:2013/10/19(土) 14:22:39.33 ID:???
オペレータ『爆撃部隊、全機予定高度に到達』
  日向「了解」
  伊吹「零号機、起動安定。…初号機の予想活動時間、残り5分切ります」
   リツコ「…ミサト」
   .ミサト「始めるわ。レイが生きている可能性が、まだあるうちに」
  シンジ『ッ、はい』
  .アスカ『了解。待ちくたびれたわ』
  日向「全兵装、攻撃態勢に入ります」
   .ミサト「…作戦開始」
3573/18:2013/10/19(土) 14:23:35.41 ID:???
目標へ斉射を開始する兵装ビル
次々と降り注ぐ火線と衝撃
駆け上がる爆煙の中、使徒の一部が構造変化し質量を得て展開する
数秒で薙ぎ払われる迎撃施設群
爆発がおさまる間も置かず別方向から次の攻撃が始まる
使徒の巨影がさらに実体化し、大きく突出する
伸びきった側面に正対するエヴァ両機
やや後方で身構える零号機
仁王立ちした2号機が上体を落とし、一気に両腕を開く
 .アスカ『行くわよ。2号機、作戦行動開始!』
 シンジ「…フィールド全開ッ!」
3584/18:2013/10/19(土) 14:24:23.64 ID:???
一帯を打つ大衝撃
寸分の狂いもなく協調した両機のATフィールドが使徒の大構造に喰い入る
急停止する使徒の攻撃突端群
反転する前に、生き残った兵装施設が火力を浴びせる
熱を帯びて歪む風景
とてつもない規模の力を両肩に受け集中する2号機
拮抗が破れ、使徒の形状が痙攣するようにねじれつつ裏返されていく
一つまた一つと有機的な構造が開かれ、中核へ向けてATフィールドが超次穿孔する
次第に鈍る速度
3595/18:2013/10/19(土) 14:25:24.62 ID:???
 .アスカ『…もうっ、重いん、だから…ッ!』
 シンジ「…!」
 .カヲル「落ち着いて。ただ押すだけじゃ遅い。2号機に合わせて、力の焦点を絞って」
 シンジ「…、絞る…」
 .カヲル「そう、2号機に速度を揃えるつもりで。…うん、いいよ。あと少し、一点へ…」
 シンジ「……」
 .アスカ『! 少し…入りやすくなった…、…馬鹿シンジ?』
3606/18:2013/10/19(土) 14:26:37.51 ID:???
めまぐるしく切り替わる使徒の構造
変転し、伸縮し、ありえない形状が突出・崩壊して距離感の狂った内部構造を吐き出す
異様な遠近法の中心へと抵抗を貫通していく干渉フィールド
  .ミサト『行けるか?!』
 青葉『目標内深部に新たな反応あり! パターン青!』
  リツコ『…コアに届いたんだわ』
 日向『! シグナル確認、微弱ですが、初号機の反応です! 生きてます!』
 シンジ「レイ…!」
 .アスカ『このまま捕まえる!…ッ、何?!』
3617/18:2013/10/19(土) 14:27:39.23 ID:???
使徒の巨影が端から崩落しはじめる
迎撃設備に撃ち落とされつつ地表に激突する黒い物理構造
大混乱に陥る地上部
  リツコ『…まずいわ。ここに固定された部分を破棄し、高次空間へ撤退するつもりよ』
 日向『干渉フィールド、擾乱! 錨定ポイント消失していきます!』
  .ミサト『逃げられる! 初号機は!』
 青葉『駄目です、コアに引きずられていきます!』
3628/18:2013/10/19(土) 14:28:27.98 ID:???
反転していく使徒の構造
中心の視覚化不能部位が周縁を切り離し、速やかに自らの内部へ折り畳まれていく
大きく息を呑むシンジ
動揺は即時機体に反映され、カヲルの背中に強い緊張が走る
プラグ内全方位モニタをノイズが駆け巡る
 伊吹『零号機、パルス、ハーモニクスともに乱れています。このままでは危険です!』
 日向『両機の干渉フィールド、弱体化しています! 目標の形態収縮、さらに加速!』
  リツコ『…上空の部隊に伝達。即時、プランBでの爆撃を開始』
 伊吹『えっ…?』
3639/18:2013/10/19(土) 14:29:48.41 ID:???
 青葉『待ってください、この配置とタイミングでは…2号機と零号機も巻き込まれます!』
 .アスカ『! N2を落とすの?!』
  .ミサト『プランB…?! どういうこと!』
  リツコ『言ったはずでしょう。初号機を失うわけにはいかないのよ』
 青葉『爆撃部隊、降下開始します…!』
  .ミサト『…リツコッ!』
36410/18:2013/10/19(土) 14:30:37.53 ID:???
激しく乱れる外界
異様な軋みをあげて降り注ぐ使徒の巨大な骸殻
エヴァ両機のすぐ傍にも落下する
動きを阻まれる両機
 .アスカ『ここまでなの…馬鹿シンジ、下がって! 何ぼさっと立ってるの!』
遠ざかってゆく使徒の中核
深くうなだれて両肩を落としているシンジ
すがるように顔を上げる
 シンジ「…いやだ」
36511/18:2013/10/19(土) 18:33:29.66 ID:???
反転するパルス
鋭く息を吸い込み、声を殺して違和感に耐えるカヲル
不器用に頭をもたげる零号機
右腕が不規則に痙攣しつつつつ伸ばされていく
 .アスカ『…ったく、この馬鹿!』
加勢する2号機
前に出て零号機の盾になる
36612/18:2013/10/19(土) 18:35:34.47 ID:???
再び使徒に向かうエヴァ両機のATフィールド
噛み合う力場が嵐となる
 青葉『第一波投下開始まで、残り10!』
  .ミサト『目標と、初号機はっ?!』
 日向『駄目です! 出力がまるで足りません! …最後の次元アンカー消失、
     振り切られます!』
 .アスカ『くうッ…!』
36713/18:2013/10/19(土) 18:37:03.15 ID:???
全ての表示が歪み高速で流れるエントリープラグ
徐々に機体の自由が失われていく
必死に目標の残影を見据えているシンジ
 シンジ「…いやだ。
     こんなの、絶対に嫌だ。これで会えないなんて、そんなの…何だっていい、違う、
     もうどうなったっていい、ただ、…レイ」
36814/18:2013/10/19(土) 18:38:08.96 ID:???
暗い初号機のエントリープラグ
既に動けないレイ
薄く開かれた目
  レイ(…お兄、ちゃん…?)
  レイ(…違う。何も、聞こえない)
  レイ(…だめなのね、もう)
  レイ(わたしは、それで、いい。でも、…ただ、…お兄ちゃんにだけは)
36915/18:2013/10/19(土) 18:39:12.97 ID:???
伸ばされた零号機の手の向こう、ゆらめいて消失する使徒中核
大きく空を切るATフィールド
一帯を吹き抜ける空間擾乱
目標を見失い、降下を中止する爆撃部隊
いっぱいに見開かれたシンジの両目
 シンジ(…いやだ。父さん)
脳裏を一閃する光景
墓地で向き合う碇とレイと自分
黒い墓標
刻まれた名前
 シンジ(…母さ、ん)
37016/18:2013/10/19(土) 18:40:13.48 ID:???
認識不可能などこか
一面の沈黙
その中心で、烈光を放つ初号機の双眸


突如、地上に残された使徒の構成体が一斉に弾けて流体と化す
何もない宙の一点が強引にこじ開けられる
激しく揺らぎながら、再び引きずり出される使徒のコア
めまぐるしく変転する周辺空間ごと軋み、ひしゃげ、握り潰されていく
371名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/10/19(土) 18:41:01.94 ID:???
コアを掴む手
夜明けの空に出現した初号機の右腕
黒い使徒の残像からもう一方の腕が突き出し、そのまま断裂を押し広げる
砕け散るコア
空間の傷口から身を乗り出す初号機
咆哮をあげて使徒を引き裂き、劣化していく残骸を蹴って地表へ跳ぶ
振り仰ぐ零号機
伸ばされた腕と腕が交差する
次の瞬間、衝撃とともに地面に組み伏せられる零号機
37218/18:2013/10/19(土) 18:42:25.15 ID:???
激しく揺さぶられるエントリープラグ
両肩パーツが圧壊する音が響く
 .カヲル「…あ…!」
至近距離から見下ろす初号機の双眸
声も出せないまま凝視することしかできないシンジ
圧倒される人々
そのまま、全てが静止する
山々の稜線からなだれ落ちる朝日の光
3731/2:2013/10/23(水) 08:08:45.05 ID:???
本部ケージに固定されたエヴァ各機
搬出されてくる零号機のエントリープラグ
ブリッジに着くのももどかしく、操縦席から飛び出そうとするシンジ
動かないカヲルに気づく

 シンジ「カヲル君…? ッ、大丈夫?!」
 .カヲル「ん…」
 シンジ「どうしたの?! あ…やっぱり、最後に僕が、無理やりエヴァを動かしたから」
 .カヲル「…、そんなことないよ。…僕は平気だから、早く行かないと」
 シンジ「え…?」
 .カヲル「ほら、初号機の固定は済んでる。もうエントリープラグも排出されているはずだよ」
 シンジ「! …レイ」
3742/2:2013/10/23(水) 08:10:00.38 ID:???
 .カヲル「早く、妹さんのところへ行ってあげないと。ずっと一人で耐えていたんだから」
 シンジ「…、でも」
 .カヲル「僕のことは気にしないで。さあ、行きなよ。お兄さんなんだろう?」
 シンジ「…うん。…ごめん、カヲル君」

疲労した足をもつれさせながら走っていくシンジ
見届けて、プラグインテリアに痛む全身を預けるカヲル
目を開く

 .カヲル「…エヴァンゲリオン、初号機」
3751/6:2013/10/26(土) 08:29:16.60 ID:???
 レイ(……)
 レイ(…まだ、いきてる)
 レイ(…?)

  声「…、…!」

 レイ(…なに?)

  声「…! …」

 レイ(…だれ?)
3762/6:2013/10/26(土) 08:30:06.21 ID:???
  声「…レイ…!」

 レイ(…おとう、さん…?)

  声「レイ、ねえッ、しっかりしろよ! レイ…!」

 レイ(…ちがう)
 レイ(……おにいちゃ、ん)
 レイ(そう、お兄ちゃん、わたしの)
3773/6:2013/10/26(土) 08:31:16.58 ID:???
 シンジ「レイ! あ…気がついた…? …ッ」
  .レイ「…お兄ちゃん」
 シンジ「……」
  .レイ「なに…、少し、痛い」
 シンジ「! ごめん、…安心して、つい。ごめんよ」
  .レイ「……」
 シンジ「あ…ごっごめん、嫌だった…?! あの、別に変な意味じゃ」
  .レイ「ちがう、…今まで、こうやってされたこと、ないから。
     …でもなぜ、そんなに私にくっついてるの」
 シンジ「……
     馬鹿ッ、心配してたからに、決まってるだろ…! もう、本当に、僕は…」
  .レイ「あ…」
3784/6:2013/10/26(土) 08:32:22.53 ID:???
  .レイ「…お兄ちゃん」
 シンジ「……」
  .レイ「…、怒ってるの」
 シンジ「え…? 違うよ、…怒るわけ、ないだろ。…良かった、助かって。本当に良かった」
  .レイ「…泣いてるの」
 シンジ「……」
  .レイ「…ごめん、なさい。…心配、かけて」
 シンジ「…、違うよ。…謝らなくたっていいんだ。僕は…レイが、帰ってきてくれただけで、
     それだけでいい。…もう、こんなに身体、冷えちゃって。つらかったろ…」
  .レイ「…そう、…私、ずっと、寒かったの」
3795/7:2013/10/26(土) 08:36:52.60 ID:???
  .レイ「寒くて、…ただ、寒くて、…どうすればいいか、わからなかったの」
 シンジ「…レイ」
  .レイ「……」
 シンジ「あ…、え?! ッなに、どうしたの、レイ?!」
  .レイ「…あったかい、から」
 シンジ「え…あ」
  .レイ「…ごめんなさい。今も、どうしたらいいか、わからない。私、こんな時何すれば
     いいのか、…何も、知らなくて。…ごめんなさい」
3806/7:2013/10/26(土) 08:37:49.50 ID:???
 シンジ「…馬鹿だな、謝らなくっていいんだよ。…レイはレイでいい。何しなきゃいけない
     なんて、そんなことないんだ」
  .レイ「……」
 シンジ「…僕の方こそ、こんなに遅くなって、ごめん。レイの呼ぶ声、何度もしてたのに」
  .レイ「…! きこえた、の」
 シンジ「うん。…なんとなくだけど」
  .レイ「……」
 シンジ「レイ?」
  .レイ「…お兄ちゃん」
 シンジ「ん?」
3817/7:2013/10/26(土) 08:40:14.17 ID:???
  .レイ「何か、したい。…お兄ちゃん、に」
 シンジ「…え?」
  .レイ「何かしたいの。何すれば、いい」
 シンジ「…、…笑えば、いいと思うよ。…なんて」
  .レイ「!」
 シンジ「…違う、笑ってほしいんだ、僕は、レイに。その方が、僕は好きだ」
  .レイ「…、うん」

シンジの腕の中でゆっくりと笑顔になるレイ
3821/10:2013/10/28(月) 11:12:55.26 ID:???
シンジとレイの周りに集まってくる人々
レイが顔を上げ、シンジも振り返って皆に気づく
腰に両手当てて思いっきり仏頂面で見下ろしているアスカ
状況を自覚して慌てるも動けず、レイと顔を見合わせて結局小さく照れ笑いするシンジ
やや表情を緩めるアスカ
ちょっと泣きそうな笑顔のミサト

  .ミサト「よくがんばったわね、レイ。…お帰りなさい」
3832/10:2013/10/28(月) 11:13:44.86 ID:???
 伊吹「一人で…よく我慢してくれたのね。初号機の搭乗レコーダ、見たわ」
 .アスカ「ま、それもこれも、私の働きがあってこそだった訳だけど」
  .レイ「…あ…」
 シンジ「僕だけじゃないんだ。他の人もみんな、レイのこと心配してくれてた。みんなで、
     助けたんだよ」
  .レイ「…うん」
  .ミサト「あれ、リツコは?」
 伊吹「先輩はまだ初号機のところです。最後の再起動がやっぱり不審だって…私も
     すぐ行かないと」
3843/10:2013/10/28(月) 11:14:30.96 ID:???
 .アスカ「どうだか。顔、出せないだけじゃないの? ほんとは」
 シンジ「え?」
  .ミサト「そう言いなさんな。…リツコだってレイが心配だったのよ。そうでなきゃ、最後の
     最後まで、作戦部の無茶な横槍を許容してくれたりしないもの」
 日向「…そうですね。結局、技術局の協力あってこその、救出成功でしたからね」
 青葉「ま、よく上手くいったもんですよ。あの状況下で」
 .アスカ「ふーん。N2爆撃に晒されるとこだった身としては、いまいち納得いかないけど。
     ね、シンジ?」
3854/10:2013/10/28(月) 11:15:30.48 ID:???
 シンジ「え? 僕は別に、…レイが帰ってこれたんだから、それで、もう」
 .アスカ「はぁー…ったく、妹のこととなると甘いんだから。あんたね、もっと自分の立場…」
  .レイ「…あの、…、…ありがとう」
 .アスカ「?!」
  .ミサト「…!」
 日向「えっ」
 青葉「おお?!」
 伊吹「うそ…あっ、ご、ごめんなさい」
  .レイ「? …何か、変、だった」
3865/10:2013/10/28(月) 11:16:48.13 ID:???
 シンジ「ううん。全然、変なんかじゃない。…もう、そんなに変な顔しないでよ、アスカ」
 .アスカ「は?! 何で私なのよ、このシスコン! だいたいあんたが…」
  .レイ「……」
 .アスカ「〜、何よ、わかったわよ。
     …別に、改まって礼なんか言わなくていいわ。作戦だったんだもの、当然よ。
     あんたは気にすることないわ。…お疲れ、妹」
  .レイ「…、うん」

ストレッチャーを引いて到着する医療班
てきぱきとレイを寝かせ処置を始める
3876/10:2013/10/28(月) 11:17:37.39 ID:???
所在なげに見守るシンジ
改めて皆に向き直り、頭を下げる

 シンジ「…、あの、…ありがとう。みんな…ありがとう、ミサトさん。アスカも」
 .アスカ「…ふん、私はついでなワケ」
  .ミサト「あら? もーうアスカったら拗ねちゃって、可愛いんだから」
 .アスカ「私のどこが拗ねてるッての?!」
  .ミサト「ほら、そういうとこよん」
 .アスカ「はあ?!」
3887/10:2013/10/28(月) 11:18:25.67 ID:???
 日向「…葛城さん、大人げないですよ…」
 伊吹「あの、レイは普通の状態じゃないんだから、静かにしてあげましょうよ、ねっ」
 青葉「…ええっと、じゃ、俺は報告書の作成しに行くんで」
 シンジ「もう、二人ともいい加減にしてよっ」
  .ミサト「はいはい、ごめんごめん。
     さ、あとは専門家に任せて。大丈夫、落ち着いたらまたお見舞いに行きましょ」
 シンジ「…はい。レイ、じゃ、またあとで」
  .レイ「…うん、…あとで」
3898/10:2013/10/28(月) 11:19:13.62 ID:???
運ばれていくストレッチャー
見送るシンジ
見つめ返すレイの姿が遠ざかっていく

 .アスカ「おとなしく寝てんのよー。…さ・て・と、馬鹿シンジ。今度はあんたの番よ」
 シンジ「何が?」
 .アスカ「あのねぇ。作戦前、礼は妹が助かってからちゃんとするって、約束したでしょ。
     …まさか忘れたとは言わせないわよ」
 シンジ「え?! あ、うん、…そういえば」
3909/10:2013/10/28(月) 11:20:02.98 ID:???
 .アスカ「ありがとうはもう聞いたし、次は何か、実質的な見返りがあるべきよね。さーて
     何してもらおっかなー、っと」
 シンジ「お礼ってそういう…あ! 忘れるとこだった、…カヲル君、こっちに来ないって
     ことは、まさかまだ」
 .アスカ「ちょっと! サブの予備人員なんかどうでもいいでしょうが!」
 シンジ「よくないだろ、彼がいなきゃ零号機は出せなかったんだから」
39110/10:2013/10/28(月) 11:22:15.10 ID:???
 .アスカ「出ても出なくても、大した違いないわよ、どうせ。私の2号機がメインだったんだし
     …ッて馬鹿シンジ、どこ行くのよ!」
 シンジ「カヲル君を捜す。やっぱり、さっき様子がおかしかった」

歩き出しながらもう一度顔を上げるシンジ
まだこっちを見ているレイ
繋がる視線を、やがて初号機の巨大なシルエットが遮る


以上で>287からの流れはだいたい終わりです
遅くなったけど
>>354 ありがとうございました
392名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/10/28(月) 22:08:05.04 ID:???

どうなるのか
3931/5:2013/10/30(水) 08:08:22.54 ID:???
ようやくプラグから降りようとしているカヲル
顔を上げる
駆け寄ってくるシンジ
ふと足を止め、後ろで同じく立ち止まっているアスカを振り返るシンジ

 シンジ「? どうしたの、アスカ。ていうか、何もここまで一緒に来なくてもいいのに」
 .アスカ「……」
 シンジ「アスカ?」
 .アスカ「…何でもない。
     ほら、カレがお待ちよ。とっとと行って手伝えば。…っほらっ、危ないっ」
 シンジ「うわッ、カヲル君!」
3942/5:2013/10/30(水) 08:09:08.66 ID:???
ふらついて足を滑らせたカヲルをすんでで捉まえるシンジ
そのまま手を貸して助け降ろす
渋面のアスカ

 .カヲル「…ごめん、…もう、大丈夫だから」
 シンジ「大丈夫じゃないだろ! こんなに顔色悪くて、汗もひどくて…どうしてさっき言って
     くれなかったんだよ、もう、なんでだよ…一人で、無理しないでよ。僕だって少しは
     何か手伝えるよ。何か、させてよ。…いつも助けてくれるのに」
 .カヲル「…、ごめんよ」
 .アスカ「……
     馬っ鹿みたい。さっきの初号機と同じね、…何よ、邪魔にして」
3953/5:2013/10/30(水) 08:09:57.23 ID:???
 .カヲル「…シンジ君、僕は、本当に大丈夫だから。それより、ほら」
 シンジ「うん。…
     アスカ、待ってよ」
 .アスカ「なんで? カンケーないもの、先に帰るわ。じゃーね、お疲れ」
 シンジ「…、邪魔になんか思ってない!」
 .アスカ「!」
 シンジ「そんなこと思ってない。アスカ、作戦前に2号機から励ましてくれたろ、僕一人じゃ
     ないって、難しいところは全部やるからって。だから絶対、失敗するわけないって。
     …あれ、あの時一番、嬉しかった」
3964/5:2013/10/30(水) 08:10:48.22 ID:???
 シンジ「だから、ありがとう、アスカ。…ありがとう」
 .アスカ「……」
 シンジ「アスカ…? …あの、…何か、怒らせた…の、かな」
 .カヲル「…そんなことは、ないと思うよ」
 .アスカ「……何マジメに頭下げてるのよ、馬鹿シンジ。ほんと、日本人てお辞儀中毒よね」
 シンジ「へっ?」
 .カヲル「…ほら、ね」
 .アスカ「妹にも言ったでしょ。あれも作戦のうちだったんだし、リーダーが冴えない部下を
     励ますなんて、作戦時の当然の対応よ。何カンチガイしてるのかしら、これだから
     男子って馬鹿なのよね。ほんっと気が回らないっていうか、自己中心主義っていうか」
 シンジ「………」
3975/5:2013/10/30(水) 08:14:30.10 ID:???
 .アスカ「…だから、あんたも気にしなくていいの」
 シンジ「あ…」
 .アスカ「そんな些細なことで馬鹿正直に恩義を感じられても嬉しくないわ。
     ただし、礼はちゃんとしてよ。男に二言はないんでしょ」
 シンジ「…うん」
 .アスカ「…何よ、また真面目くさって。
     まいいわ、じゃーね、男ども。Auf・wieder・seh-・en!」
 シンジ「え?! ちょっと、結局先に帰るの?! じゃなんでついて来たんだよ、もう」
3986/5:2013/10/30(水) 08:15:36.82 ID:???
 .カヲル「…ふふ、…いい人だね、素直じゃないけれど」
 .アスカ「聞こえてるわよ、予備人員! あんたはさっさと身体直して、馬鹿シンジを
     安心させてやるの。そんなんじゃ予備としても役に立たないでしょ!」
 .カヲル「…はいはい」
 シンジ「?? なんなんだよ、アスカ…」


文章長すぎます規制がめんどくさい…
もう少しこぼれネタ拾いになります
>>392 ありがとうございます、この先もありますのでもうしばらく見てやってください
3991/4:2013/10/31(木) 07:40:31.92 ID:???
  .ミサト「レイの検査、問題なかったって?」
  リツコ「ええ。今夜一晩は念のため様子を見るけど、明日には帰せるわ」
  .ミサト「…はぁー。良かった…何はともあれ、これでひと安心ね」
  リツコ「……」
  .ミサト「? 何よう、人の顔じっと見て。わかってるわ、問題は他にも山積してる、
     仮にも責任者が、簡単にラクになるなってんでしょー」
  リツコ「いえ、違うわ。…あなた、今本当にそう思って言ったでしょう」
  .ミサト「ん?」
  リツコ「レイのことよ。本気で安心してる言い方だったもの。ごっこで始めた家族も、
     案外、本物になりそうじゃない」
4002/5:2013/10/31(木) 07:44:16.59 ID:???
  .ミサト「ま、ね。…シンジ君のせいかもしれない」
  リツコ「え?」
  .ミサト「シンジ君、レイには一生懸命だもの。他人の顔色を気に病んで、あれだけ
     他人と接するのを苦手にしてる子がよ。…本当はあの子、たとえ痛みや
     傷を負っても、もっと人に近づきたいって、ずっと思ってたのかもね」
  リツコ「そんなに単純な話かしらね。…私には、肉親という明確な理由付けを盾に、
     一番安全な関係に逃げ込もうとしてるようにも見えるけど」
4013/5:2013/10/31(木) 07:45:07.06 ID:???
  .ミサト「あ、またそうやって突き放すー。
     確かにそうかもしれない。けど、始まりはそれでもいいんじゃないかしら。
     そこから近づいても離れても、お互い閉じることなく、続けていけるならね」
  リツコ「…そうね。
     ところで、その二人のこと。初号機のログから一つ、わかったことがあるの」
  .ミサト「何?」
  リツコ「再起動の瞬間、初号機とレイのシンクロ率はゼロだったの。完全にね」
  .ミサト「えっ?! …じゃあ、あれはやはり」
4024/5:2013/10/31(木) 07:46:01.66 ID:???
  リツコ「暴走、…とも言いきれないのよ。あれは明らかにシンジ君に反応していたの。
     使徒から脱出した際、2号機には目もくれず零号機だけを目指したのも、
     恐らくはそのせい」
  .ミサト「シンジ君にって、…だって、同じ時空間にすらいなかったのに」
  リツコ「そう。そして、機体内のレイには、そこまでの激烈な反応は起こさなかった」
  .ミサト「…ということは、…もしかして今後も、レイは初号機とはシンクロできないかも
     しれないってこと…?!」
4035/5:2013/10/31(木) 07:46:58.31 ID:???
  リツコ「本人を参加させた再起動実験も含め、さまざまな追試を経たあとでないと
     はっきり言えないけどね。ただ、作戦部には早めに伝えておこうと思って」
  .ミサト「…、わかったわ。ありがとう」
  リツコ「双子とは言っても、やはり他人なのかもしれないわね」
  .ミサト「……」
  リツコ「…ミサト?」
  .ミサト「……」
  リツコ「念のため訊くけど、もしかして『レイのシンクロ率が零なんて出来すぎ』
     なんて思ってないわよね」
  .ミサト「お、思ってない思ってない」
4041/8:2013/11/03(日) 22:29:52.61 ID:???
本部内医療棟
一人で歩くレイ
ふと顔を上げると、廊下の先から駆け寄ってくるシンジの姿

  .レイ「…お兄ちゃん?」
 シンジ「レイ! …
     ふう…良かった、間に合って。もう、検査とかは、全部終わったんだよね?」
  .レイ「うん、…だけど、お兄ちゃん、…なんで」
 シンジ「なんでって、レイの迎えだよ。他にないじゃないか」
  .レイ「でも、…」
 シンジ「え?」
4052/8:2013/11/03(日) 22:31:27.20 ID:???
  .レイ「…、ううん。どうして、この時間、わかったの」
 シンジ「リツコさんが、今ぐらいには全部の検査が済んでるはずだからって。ほら、
     荷物持つよ」
  .レイ「あ、…うん」
 シンジ「身体疲れてるのに、いろいろ調べたり検査したりで、大変だったろ。早く帰って
     ゆっくりしよう。ミサトさんも夜には帰るっていうから、久しぶりで三人揃って
     晩ご飯だね。そうだ、レイは何が食べたい?」
  .レイ「……」
4063/8:2013/11/03(日) 22:32:24.57 ID:???
 シンジ「レイ? あ…ごめん、こんなに一度にたくさん言われても、困るよね」
  .レイ「ううん、そうじゃない。…お兄ちゃん、無理してる、から」
 シンジ「…え」
  .レイ「無理しなくて、いい。私、…平気だから」
 シンジ「…って、…何言ってるんだよ。そんなわけないじゃないか、レイのことで、無理
     なんてあるはずないだろ。…そっか、もしかして、作戦のことを気にしてるの」
4074/8:2013/11/03(日) 22:34:12.01 ID:???
  .レイ「そうじゃなくて、…あの人のこと」
 シンジ「…あの人?」
  .レイ「ここにいて、少しは、聞いたから。…初号機の回収作戦のこと。零号機のことも。
     使えないはずだった零号機を、お兄ちゃんがあの人と、動かしたこと」
 シンジ「…、うん。
     カヲル君がいなかったら、僕は何もできずに見てるだけだった。…レイは一人で
     初号機を動かせたのにさ。はは、情けないよね、兄のくせに」
4085/8:2013/11/03(日) 22:35:05.09 ID:???
  .レイ「…そうじゃ、なくて。
     だからお兄ちゃん、…私だけじゃなくて、あの人のことが気になったから、ここに
     来たんでしょ。それで、赤木博士に訊いたり、して」
 シンジ「…レイ」
  .レイ「私は、もう平気。だから、無理、しないで」
 シンジ「…、レイってば、それ、…カヲル君と、同じこと言ってる」
  .レイ「…え?」
4096/8:2013/11/03(日) 22:35:58.64 ID:???
 シンジ「自分のことはいいから、ってさ。
     確かにカヲル君とは、あのあとケージで別れたきりで、…誰に訊いても居場所も
     わからなくて、ちゃんと手当てを受けられたのかすら知らなくて、…それは、すごく
     心配、だよ。
     …うん。レイの言う通り、リツコさんなら知ってるかもって思って訊きにきたのも
     本当だ。…でも駄目だった。リツコさんでも、情報が制限されてるんだって」
  .レイ「……」
4107/8:2013/11/03(日) 22:37:12.14 ID:???
 シンジ「だけど、違うよ。
     僕はレイを迎えに来たんだよ。迎えに来たかったし、レイと一緒に、家に
     帰りたかったから。…だから、無理じゃない」
  .レイ「…、お兄ちゃん」
 シンジ「何?」
  .レイ「…うそつき。
     駄目、無理してる。…わかるもの。だって私、…双子、だもの。お兄ちゃんの」
 シンジ「あ…」
  .レイ「今日は、帰ろ。でも明日、…その次でも、いつでもいい、手伝うから」
4118/8 最近長くてすみません:2013/11/03(日) 22:40:02.76 ID:???
 シンジ「…うん。…ありがとう、レイ」
  .レイ「ん…」
 シンジ「なんか、ちょっと気が楽になったかも。…さ、もう行かなきゃ。ミサトさんの方が
     先に戻って来ちゃうよ。早く帰って、ご飯作ろう。何がいいかな」
  .レイ「…じゃあ、…お味噌汁、お豆腐の」
 シンジ「え、そんなのでいいの?」
  .レイ「…それがいいの」
 シンジ「わかった。じゃ、うんとあったまれるようなの、作るからね」
  .レイ「! …うん。…帰ろ、お兄ちゃん」
412名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/11/06(水) 21:36:19.71 ID:???
良スレやね
4131/7:2013/11/08(金) 11:35:54.33 ID:???
>>412 ありがとうございます
読んでくださった方に心から感謝します
どこまで行けるかわかりませんが、少しでも楽しんでもらえるようがんばります


本部総司令室
巨大な執務机に両肘をつく碇と後方に立つ冬月
デスクの正面に直立したリツコ

  リツコ「…初号機の機体洗浄は終了しました。汚染や変異の心配はありません。
     中破した零号機の修復、また両機の、各専属搭乗者との再起動実験の日程は
     提出した企画書通りに行う予定です」
4142/7:2013/11/08(金) 11:36:46.70 ID:???
  リツコ「搭乗者二名の身体検査は問題なし。両名とも、本日より通常の待機任務に
     復帰させています」
 冬月「委員会への報告には目を通したよ。問題はあるまい。
     IPEAも今回の運用方式については口出しはせんだろう。N2全弾の臨時徴発、
     および国連軍航空隊出動の後処理も、おおむねこちらの思惑通りに進んで
     いる。関係各方面への報告とその内容についても調整済み、か…あとは、
     お定まりの事務処理と情報操作だな」
4153/7:2013/11/08(金) 11:37:52.04 ID:???
   碇「ああ、現状で問題はあるまい。赤木君、ご苦労だったな」
  リツコ「……」
 冬月「何だね」
  リツコ「…申し訳、ありませんでした。
     今回、初号機の回収が成功した理由は、ひとえに碇シンジ君の意志、そして彼を
     補佐した葛城三佐の事前の行動にあります。…私は判断を急ぎ、危うく初号機を
     喪失するばかりか、零号機や2号機も破損してしまうところでした」
 冬月「いや、あの場ではあれがもっとも妥当な判断だったろう」
4164/7:2013/11/08(金) 11:39:34.12 ID:???
 冬月「葛城君の功績は認めておるよ。だからこそ今回の昇進だ。だが、君に落ち度が
     あった訳ではない」
   碇「ああ。…初号機パイロットと葛城君の行動方針には、偶発的要素が多すぎる。
     結果が伴わないならただの無謀に過ぎん。初号機パイロットへの配慮にしても、
     度が過ぎればただの個人的感傷だ。
     今後も、君の目が必要だ。引き続き、頼む」
  リツコ「…はい」
4175/7:2013/11/08(金) 11:41:39.49 ID:???
リツコが去った室内

 冬月「しかし、今回は無駄足だったな。おまけにその間に使徒襲来、そればかりか
     初号機の一時捕獲まで許してしまったとは」
   碇「いや。Mark.6の建造方法が、従来のエヴァとは異なるとわかっただけでも充分だ。
     建造が順調に進んでいることも確認できた。これで、いつでも彼を送還できる」
 冬月「仮象プログラムによるエヴァの動作データの蓄積も、そろそろ目標精度に達して
     いるはずだったな。本部居留を拒む口実は一通り揃った訳だ。だが…」
   碇「…何だ」
4186/7:2013/11/08(金) 11:42:42.34 ID:???
 冬月「お前の息子のためには、彼が傍にいた方がいいのではないかね。今回のことも
     彼の協力があってこそなのだろう」
   碇「初号機は自力で再起動して脱出した。零号機があの場に出ていたからでも、
     例の少年の力でもない。
     それに、これ以上の干渉は邪魔だ。レイにまで影響が及びかねない」
 冬月「…そうだったな。運命を仕組まれた子供たち、か…過酷すぎるな。
     ところで、碇」
   碇「何だ」
 冬月「レイの見舞いには、行かなくて良かったのかね。レイが葛城君の部屋に戻る前に
     一度くらい顔を出す時間はあったろうに」
4197/7:2013/11/08(金) 11:44:56.60 ID:???
   碇「…いや。そんな時間は」
 冬月「もしや、病棟の廊下で息子とはち合わせしそうになってとっさに引き返したとか」
   碇「……そんなことはない」
 冬月「やはりそうか。全く、ここまで素直になれんとは、損な性分だな」
   碇「違うと言っている。なぜ言い切れる」
 冬月「そう顔に書いてあるからな」
   碇「?! …」
 冬月「やれやれ。
     今日も世はこともなし、だよ。…ユイ君」
420名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/11/08(金) 17:36:44.40 ID:???
さすが冬月
421名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/11/14(木) 21:02:24.95 ID:???
test
422名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/11/17(日) 03:19:53.54 ID:???
おもしろいね
4231/7:2013/11/20(水) 21:55:07.18 ID:???
>>419 >>420 ありがとうございます


 シンジ「うーん…レイだったら、何がいいと思う?」
  .レイ「…、駄目、わからない。…ごめんなさい」
 シンジ「別に、謝ることないよ。けど、そっか…」
 加持「何してるんだ? 二人して同じポーズで」
  .レイ「…同じ、ですか」
 シンジ「え?! あ、ホントだ…ごめん、レイ」
  .レイ「ううん。…あの、何ですか」
 加持「いや、すまんすまん。いつも和気あいあいの双子が、珍しく難しい顔してるのが
     ちょっと気になったんでね。何か悩み事かい?」
4242/7:2013/11/20(水) 21:56:37.31 ID:???
 シンジ「悩み事っていうか…
     そうだ、あの、加持さんは、アスカと同じユーロ支部から来たんですよね」
 加持「一緒じゃないが、まあ同じ方面かな。どうして?」
 シンジ「その、…この間の作戦の時、アスカに助けてもらって。何かお礼をしろって…
     ッじゃなくて、お礼をしたいんですけど、アスカってどんなものが好きなのか
     僕らじゃ見当がつかなくて。…それで」
 加持「同じユーロ圏にいた俺なら、何かヒントを知ってるんじゃないかってことか。
     …気持ちはわかるが、そりゃちょっと違うぞ。シンジ君」
 シンジ「え?」
4253/7:2013/11/20(水) 21:59:06.45 ID:???
 加持「他人の話より、アスカ自身が何に喜ぶのか。それを考えないとな」
 シンジ「あ…、そうです、よね。
     …馬鹿だな、僕は。すみません、変なこと言って」
 加持「ま、そうは言っても、知恵を貸すくらいやぶさかじゃないけどな。
     そうだな…お礼って、例えば双子揃って、何かプレゼントでもしろっていう
     雰囲気だったのかい?」
 シンジ「え…っと、…いえ、レイと一緒っていうより、なんか、僕ばかり何度も言われてて」
  .レイ「そう、なの」
 シンジ「うん」
 加持「…ふーむ。ならその通り、君に何かして欲しいんだろう」
4264/7:2013/11/20(水) 22:00:04.06 ID:???
 シンジ「僕に、ですか…何だろう」
 加持「ここは思いきって、デートに誘ってみたらどうだ? 男として」
 シンジ「え? …えええ?! そッそんなの、無理ですよッ」
 加持「なぜ?」
 シンジ「何でって…だって別に、アスカはそんな意味で言ったわけじゃないかもしれないし
     …僕だって、…いえ、アスカのことは大事ですけど、でもあの、そんなふうには
     考えたことないっていうか」
 加持「恋愛してるどうしじゃないと、デートしちゃいけないのかい?」
4275/7:2013/11/20(水) 22:05:54.95 ID:???
 シンジ「そりゃそうですよ! そういうのは、…その、好きな相手とするものでしょう?!
     お礼代わりになんて、そんないい加減な気持ちでするなんて失礼ですよ。それに
     アスカだってきっと嫌だろうし」
  .レイ「デートって、何」
 シンジ「え?! 何って…えっと、なんて言えばいいか、…もうッ」
  .レイ「…?」
 加持「礼をしたいっていうのは決していい加減じゃないと思うけどな。…しかし、ま、君の
     言いたいこともわかる。じゃあ、食事に招待するっていうのはどうだ?」
 シンジ「…それ、あんまり違わないと思いますけど」
4286/7:2013/11/20(水) 22:11:29.04 ID:???
 加持「いや、君が葛城の家に招いてみたらどうかってことさ。君の料理はちょっとしたもの
     なんだろう? 葛城に聞いてるよ」
 シンジ「え…あの、いや、別に」
 加持「普段一人で過ごしてるアスカに家庭料理をふるまって、他人との食事の良さってのを
     味わってもらうのも、悪くないかもしれないぞ。それならレイも同席できるしな。ちゃんと
     お礼する形にもなるさ」
 シンジ「そう…ですね。…そうかもしれない、僕には他に大してできること、ないし」
  .レイ「違うわ。お兄ちゃんの作るご飯、おいしいもの。…私も、手伝うから」
 シンジ「…、うん。やってみよう」
4297/7:2013/11/20(水) 22:15:04.91 ID:???
 シンジ「あの、ありがとうございました。アスカに喜んでもらえるかわからないけど、でも
     僕なりに、がんばってみます」
  .レイ「……」
 加持「…ん?」
 シンジ「レイも一緒に、だよ。ね?」
  .レイ「…うん」
 加持「どうやら心配なさそうだな。じゃ、健闘を祈るよ」
 シンジ+レイ「「はい」」
4301/7:2013/11/21(木) 08:36:51.63 ID:???
>>423 リンクミス申し訳ありません
 × >419 >420
 ○ >>420 >>422


 .アスカ「…で、こうなったってワケ?」
 シンジ「うん、レイと一緒に、朝からいろいろやってみたんだ。それでこんな量に…
     あっ、もちろんちゃんと味見して、良かったのだけ出してるから」
 .アスカ「……」
 シンジ「…あの、…口に合うと、いいけど」
 .アスカ「…黙って。今、味の検証してるから」
4312/7:2013/11/21(木) 08:37:53.02 ID:???
 シンジ「あ、はい…」
 .アスカ「……」
 シンジ「……」
 .アスカ「…なんてね。ばーか、そんな真剣な顔して、人の顔じろじろ見るんじゃないわよ」
 シンジ「えっ、あっ、…ごめん」
 .アスカ「悪くないわよ。食べたことない料理ばっかだけど、思ったより抵抗ないし」
 シンジ「あ…」
 .アスカ「た・だ・し。あのね、いろいろ勉強したみたいだけど、ユーロっても広いんだから。
     フレンチとイタリアンとスパニッシュを一緒くたにしてどうすんのよ。それも自己流」
 シンジ「…う…ごめん」
4323/7:2013/11/21(木) 08:39:21.17 ID:???
 .アスカ「だから、別にまずいなんて言ってないでしょうが。
     あんたの作るものがまあまあだってのは、前のユニゾン合宿の時に証明済みだし。
     妹も一生懸命やったみたいだし。それで、わざわざ来てやる気になったのよ」
 シンジ「…、ありがとう」
 .アスカ「…ふん」
 シンジ「でもあの、…なんか、怒ってる、から。…やっぱり気に入らないのかなって」
 .アスカ「そりゃそうよ。けど、別にあんたの…
     …だぁもう、そっち、大人ども! うるッさいのよ!! 食事くらい静かにさせなさいよ!」
4334/7:2013/11/21(木) 08:40:55.33 ID:???
  .ミサト「えー? なーに、アスカ。あ、レイ、ビールもう一本、お願いっ」
  .レイ「はい。お兄ちゃん、次のお皿、まだ」
 シンジ「ちょ、ちょっと待って」
  .ミサト「いーじゃない、今日はあたしの昇進祝いも兼ねてるんだから」
 加持「いや、このたびはおめでとうございます。葛城二佐」
  .ミサト「ありがと。はい、乾杯ー」
  リツコ「だからって、シンジ君たちの会に押しかけるのはどうかと思うけど」
  .ミサト「あ。なによう、お招きしてもらっておいて」
4345/7:2013/11/21(木) 08:41:43.17 ID:???
  リツコ「呼んだのはシンジ君じゃなくて、あなたがでしょう。全くもう」
 加持「まぁまぁ、おかげでこうして美味い物で呑める訳だし。すまんな、シンジ君。我々の
     つまみまで担当してもらって」
 シンジ「…いえ…あの…」
 加持「大体、半分はリッちゃんのためでもあるのに。聞いたぞ、救出作戦進行のことで
     落ち込んでるみたいだって」
  リツコ「…それはどうもありがとう。でも、人をダシにしないでちょうだい」
  .ミサト「ふふん。ほんとはちょっと嬉しいくせに、このこの」
  リツコ「きゃあ、ちょっと、やめなさいもう」
4356/7:2013/11/21(木) 08:42:32.40 ID:???
 .アスカ「………」
 シンジ「……あの…なんか、気がついたらこうなっちゃってて…」
  .レイ「ごめんなさい。楽しそう、かと思って」
 .アスカ「…いいわよ、もう。その代わり今度、仕切り直しなさいよね」
 シンジ「あ、うん。…ごめん、今度はちゃんとするから」
 .アスカ「はいはい、期待しないで待ってるから。
     にしても、まあ、悪くないわね。あ、ねえ妹、これ、もうちょっとない?」
  .レイ「うん。少し、待って」
4367/7:2013/11/21(木) 08:43:19.60 ID:???
 .アスカ「向こうのもうまそうだから、試しに味見しに行ってくるかな。…ほらミサト、ちょっと
     寄越しなさいよ。主賓は私なんだから!」
 シンジ「……なんか、アスカってけっこう楽しんでるんじゃ…」
  .レイ「うん」
 .アスカ「そこ! 何か言った?!」
 シンジ「あっいや、別にっ」
  .レイ「……」
437名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/11/23(土) 21:28:50.36 ID:???
今回も面白かったです
438名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/11/23(土) 21:41:50.44 ID:???
どことは言わないがなんか色々とイライラするわ
439名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/01(日) 12:13:54.88 ID:???
>>437 ありがとうございます
>>438 ごめんなさい、としか
なんであれこんなスレに目を留めてくれて有難いです


  .ミサト「じゃ、二人をそこまで送ってくるから。あとよろしくねん」
 シンジ「あ、はいっ」
  リツコ「シンジ君、ご馳走さま。久しぶりに人間らしい食事だったわ」
 加持「ああ。納得したよ、道理で葛城が手放さないわけだ。こんなにいい家に毎日
     帰ってこれるんじゃな。つくづくうらやましいよ。またな、子供たち」
 .アスカ「…ん? ちょっとミサト、私は?!」
  .ミサト「もう遅いし、泊まっていきなさい。おいしいわよー、シンちゃんの朝ごはん」
 .アスカ「はあ?! 何言ってんのよ、待ちなさいよ、ミサト!」
  .レイ「…行っちゃった」
 シンジ「あれは…そのままどこかで飲んでくるんだろうな、きっと」
  .レイ「うん。夜中コース」
 .アスカ「…あんたたち、ずいぶん慣れてんのね」
 シンジ「うん、まあ、なんていうか…」
  .レイ「いつも、だから」
 .アスカ「分割答弁しない! ったくもう、どうなってんのよこの家は!!」

再びプロバ規制なのでこれだけ
レス代行人さん、いつもありがとうございます
440通りすがり:2013/12/03(火) 17:17:28.94 ID:???
整形は同じ土俵に上がれないのだ
441名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/18(水) 08:37:05.37 ID:???
プロバ規制が解けないので保守小ネタ
レス代行人さん、ありがとうございます


  .ミサト「双子といえば、この間TV見てた時なんだけどね」
  リツコ「あら、仲良く並んで見てそうね」
 加持「チャンネル争いもなさそうだしな」
  .ミサト「そ。で、その時やってた映画に、敵軍に捕まって、そのまま死んじゃった
     女の子がいてね。あとでその子のお兄ちゃんって男の子が出てくるのよ。
     妹を見取ってくれた主人公に、『僕の双子の妹なんだ。そばにいてやりたかった』
     って言うシーンがあって…」
  リツコ「シンジ君が、思わずうるっとしちゃったのね」
  .ミサト「あ! こら、もう、先に言わないでよう」
 加持「で、レイの反応はどうだったんだ?」
  .ミサト「それがね。その妹の子、不時着失敗した軍の大型輸送機に乗ってたんだけど、
     死ぬ前に、主人公に『積荷を燃やして…』って頼むのよ。レイったら、そこに引っか
     かったらしくってね。 『おかしいわ。再起動可能な機体を廃棄しようとするなんて』
     ですって」
リツコ「あらあら」
 加持「はは、彼女らしいっちゃらしいのかな。しかしシンジ君、がっかりしたろ」
  .ミサト「いや、むしろ『あれはエヴァじゃないから! 巨神兵だから!』って、一生懸命
     説明してたわ。ま、確かに似てるけどね」
 加持「おいおい」
  リツコ「相変わらず、面倒見がいいお兄ちゃんね」
  .ミサト「ところでリツコ、その巨神兵が口から出す、すごいビームあるじゃない」
 加持「ああ、王蟲の大群をなぎ払ったあれか」
  リツコ「プロトンビーム? 魅力的でしょうけど、エヴァには実装できないわよ」
  .ミサト「あ、もう、だから先に言わないでってば」
442名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/22(日) 18:23:05.41 ID:???
ミサトww
443名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/29(日) 07:56:33.40 ID:???
test
444名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/29(日) 08:00:24.85 ID:???
  .ミサト「そういえば、他のでも反応してたっけ。双子のお子様たちが出てるやつ」

    『やっぱりバルンガ、いい目してる! この剣、まだ人を殺してないっ』
    『やっ、やなこと言うなよー』
    『だって本当だもの! 父様の黒いヴィーニッヒなんか、血で真っ赤っ赤よ』

  .レイ「…私、こんなふうに、普通の人に見えないものなんか、見えたりしないわ」
 シンジ「え? あ、うん」
  .レイ「見えないから」
 シンジ「わ、わかってるよ」

    『あなたが「この世で一番美しい」と思っているGTMを、ここに降ろしていいよ』
    『マグダルーッ! いっ一番美しいGTMは、母上の「カイゼリン」だぞ!』
    『それとね、デプレに剣を教えてね。父様ったらちっとも教えてくれないの』
    『こらーっ! 言い直せ! マグダル!』

 シンジ「べ、別に僕、初号機がこの世で一番カッコいいロボットだなんて思ってないから」
  .レイ「そう?」
 シンジ「思ってないってば」
  .レイ「そう」

 加持「はははは、なんだそりゃ」
  .ミサト「ねっ? 面白いでしょー、二人」
  リツコ「…なんか自慢話されてるだけのような気がしてきたわ」
4451/4:2013/12/29(日) 08:01:36.13 ID:???
 .アスカ「だから、二人ともミサトに甘すぎるのよ。
     何とも思わないわけ? 一応、保護者兼監督者でしょ? ズボラ、ガサツ、
     酒にだらしない、デリカシーはない、…ッもう前にも思ったけど、問題提起
     していいレベルよ、実際」
 シンジ「そこまで言うほどじゃ…それに、今日のはわざとだったと思うよ」
 .アスカ「わざと?」
 シンジ「…たぶん」
 .アスカ「何のためによ。場の雰囲気をほぐすためって言いたいなら、あれじゃミエミエで
     逆に鼻につくわ。どうせやってるうちに地金が出ただけよ。ま、ミサトらしいけど」
  .レイ「でも…見た目より緊張してたと、思う」
 .アスカ「ミサトが? どうだか。殊勝なこと言っても、結局、自分の情で動く性格だもの。
     そのくせ周りの目を気にしてる。それこそわざとらしいのよ、いつも」
  .レイ「……」
 シンジ「アスカ…なんか、冷たいね。ミサトさんに」
 .アスカ「別に、普通でしょ。それにミサトだけじゃないわ。まさか、赤木博士や加持さんまで
     一緒になって騒ぐなんて…あーあ、ゲンメツ。あの二人は子供じみた悪ノリとか、
     ましてや、家族ゴッコの脇役に甘んじたりしないと思ってたのに」
4462/3:2013/12/29(日) 08:03:37.55 ID:???
  .レイ「……」
 .アスカ「何よ、妹。あんただって何も知らない子供ってわけじゃないんだから、今さら他人に
     ご機嫌取りされてもうるさいだけでしょ。ずっと大人どもの間でやってきたんだから」
 シンジ「…、そっか。アスカは慣れてるんだよね、…特別扱いされることに」
 .アスカ「今頃何言ってんのよ。ま、この私だって、傍から見ればどうせ一人で気を張りすぎて
     滑稽なんだろうけど」
 シンジ「まさか、そんなこと」
 .アスカ「お笑いよ、何もかも。わかってるもの。だから、常に目に見える戦績を示し続けて
     やらなきゃいけないの。しょせん確かなのは記録上の数値だけ、それ以外は、
     全部お飾りよ。人間なんて」
 シンジ「……」
  .レイ「…ずっと、そうしてきたのね。自分、一人で」
 .アスカ「そうよ。孤立無援で当たり前。…だから優しく見せようとする大人は、嫌いなの」

 加持「…なんて、今頃こき下ろされてたりしてな」
  リツコ「無理もないわよ。あの子たち、人の気持ちや思惑には本当に敏感だもの」
  .ミサト「にしても、いささかやり過ぎたわ。…見透かされてるわね、きっと」
 加持「それ込みでやったつもりもあったんだけどね。しかし逆効果だったかな」
  リツコ「あら、珍しく弱気?」
4473/3:2013/12/29(日) 08:05:02.29 ID:???
 加持「相手があの子たちだから、かな。
     いくら偉そうに見せてたって、俺たち大人もくだらない人間に変わりないなってさ。
     わからないことだらけなのは、あの子たちと同じさ。それをわかったような顔をして
     やり過ごしてる、それだけだ」
  .ミサト「そう、…あの子たちの年頃には、大人になれば何でもわかると思ってたのにね。
     今はできないことだって何もかも解決できて、もっといろんなことができると思ってた」
  リツコ「なってみれば、期待してたことの半分も叶えていない。当たったのはこうして、酒に
     頼って愚痴をこぼし合ってることくらいね。自分は絶対にそうならないって、あれだけ
     嫌ってたはずなのに」
  .ミサト「増えたのは後悔の苦さと、自己嫌悪の数、か。それを経験と呼び、処世術と言い
     聞かせて、自分が成長してないと思い知らされることから目を背けてる。…ほんと、
     大人になっちゃったわね」
 加持「こうして、さもわかったように人生語ったりな。だからなんだろうな、せめてあの子たち
     には、生きることを重荷に思ってほしくないのは」
  .ミサト「つまらない大人になってほしくない、でしょ。…望んでもいないのに、立場上、
     大人以上の背伸びを強いられる。そういう子たちだもの。こうやって私たちが勝手に
     託す、同情や夢や、願いも含めて」
  リツコ「そうね。でも、あの子たちは初めから、私たちとは比べ物にならない責務を、すでに
     負っているのよ。誰も代わってあげることはできない」
  .ミサト「ええ、それもわかってる。…わかってるわ」
4481/4:2013/12/29(日) 08:08:23.47 ID:???
キッチンで片付けするシンジとレイ

 シンジ「アスカはあんなこと言ってたけど、…でも、けっこう楽しかったな。今日」
  .レイ「うん。…たのしかった」
 シンジ「準備は大変だったけどね。ごめん、レイにもずいぶん手伝わせちゃったね」
  .レイ「ううん。それも、楽しかったから」
 シンジ「そっか。…また、やろっか。そのうち」
  .レイ「うん」
 シンジ(…そうしたら、そのときは)
  .レイ「…そのときは」
 シンジ「え?」
  .レイ「誘ったら…来てくれると、思う? …碇司令」
 シンジ「……」
  .レイ「…お兄ちゃん」
 シンジ「あ、いや、…、わかんないや。
     …でも、そうなったらいいだろうな。ちょっと、気恥ずかしいけど」
  .レイ「…うん」
 シンジ「だけど、想像つかないよ。あの父さんが、みんなと一緒に食事するなんて」
  .レイ「…、うん。…つかない」
 シンジ「…? レイ、…今、少し、笑った?」
  .レイ「?! あ…」
 シンジ「あ、ううん、別にいいんだよ。…ただ、レイも嬉しいんだな、って。父さんのこと」
  .レイ「うん…」
 シンジ「……」
  .レイ「お兄ちゃん、は」
 シンジ「え?」
  .レイ「そんなに、嬉しくないのね」
4492/4:2013/12/29(日) 08:10:54.80 ID:???
 シンジ「そう、かな」
  .レイ「前ほど、気にしてないみたいだから。碇司令を」
 シンジ「…どうなんだろう。
     ここに来て、…レイやミサトさんや、アスカや、みんなと知り合って、エヴァ…父さんの
     仕事を知って。前より父さんの近くに来てるはずなのに、それで何かわかったのかって
     いえば、全然そんなことなくて。…父さんは結局、初号機のパイロットとしてしか
     僕を必要としてくれないのかもしれない」
  .レイ「……」
 シンジ「でも、少しはわかった気がするんだ。…わかる気がするんだ、レイを見てると」
  .レイ「…私」
 シンジ「うん。父さんは、レイのことちゃんと見てる。…ちゃんと、心配してる。
     それにこの前の作戦、僕は、レイだけは助けたいって必死に思ってた。それでそのあと
     急に気がついたんだ、零号機の事故の時、ハッチを手でこじ開けてまでレイを助けた
     父さんも、もしかしたら、僕と同じ気持ちだったんじゃないかって。そうなら、そのことは
     …そのことだけは、僕にもよくわかるから」
  .レイ「……」
4503/4:2013/12/29(日) 08:12:11.42 ID:???
 シンジ「レイが、僕と父さんの間にいてくれるんだよ。
     レイがいるから、父さんと、少しは繋がってる気になれるんだ。父さんのことは、…僕を
     捨てたことや、勝手に呼び戻してエヴァに乗れって言ったことは、この先もずっと許せない
     かもしれない。でも、…レイのことだけは、父さんと一緒でいられる。だからもう、
     今までみたいに父さんのことばかり必死で見ようとしなくてもいいって、思えるように
     なったんだ」
  .レイ「…碇司令のこと、嫌いになったわけじゃないのね」
 シンジ「嫌いは、嫌いだよ。これまでもずっと。…ただ、それで全部じゃないって気がついたんだ。
     僕は、…父さんのこと、好きになってもいいのかもしれない、って。…レイのおかげだよ」
  .レイ「……」
 シンジ「あ…ごめん、こういうの、レイには余計だったかな。レイは、初めから父さんのこと、
     まっすぐ見れてるもんな」
  .レイ「…、わからない。
     そうじゃないかもしれない。お兄ちゃんが来るまで、私には碇司令しかいなかったから。
     それは本当に、その人を見てたことになるのか、…今は、わからない」
 シンジ「…、でも、ずっと見てたんだろ、父さんのこと。…なら、同じだよ」
  .レイ「そう?」
 シンジ「うん。僕はそれでいいと思う、そういうの、レイらしくて」
  .レイ「…私、らしくて?」
 シンジ「うん」
  .レイ「……」
 シンジ「…レイ?」
4514/4:2013/12/29(日) 08:13:00.72 ID:???
  .レイ「…、お風呂、見てくる。タオルと着替え、出しておいたけど、心配だから」
 シンジ「あ、うん…」
 シンジ(どうしたんだろう、レイ)
 シンジ(最近、こうやって、何となく態度が硬くなる。…たぶん、救出作戦の後から)
 シンジ(作戦の前、使徒の中で何があったんだろう。リツコさんたちは記録上は何も残ってないし、
     本人も何も覚えてないらしいって言ってたけど)
 シンジ(…レイは、何も話してくれない)
 シンジ(……)
 シンジ(僕が、悪いのかな)
 シンジ(…さっき訊かれたとき、本当は、父さんより先にカヲル君が浮かんだ。
     彼のほうがよっぽど他人なはずなのに。レイは、ちゃんと父さんと向き合おうとしてるのに)
 シンジ(僕ばかりがそんなこと、…レイには、言えないよな)
 シンジ(…ん?)
  .レイ「やっぱり…あっ、だめ」
 .アスカ「ちょっと、ボケ兄妹! 何とかしなさいよこのトリ! ゆっくり風呂にも入れないじゃない!」
ペンペン「クワーッ!(それはこっちの台詞だっつうの!)」
  .レイ「二人とも待って、…あ!」
 .アスカ「きゃあ?! 何すんのよトリの分際で、こらッ待ちなさいよ!!」
 シンジ「うわ、ちょっと、アスカッ、なんて恰好してるんだよッ」
 .アスカ「?! どさくさに紛れて見てんじゃないわよこの馬鹿ッ!!」
 シンジ「見てない! 見てないよ、すぐ目つぶったってば!」
ペンペン「クエーッ、クワックワッ(はいはい、仲良く喧嘩してくれ)」
  .レイ「………」
452名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/29(日) 08:17:01.27 ID:???
つづくって書き忘れたけど、もう少し続きます

規制解除やったー!
読んでくださった方、声をかけていただいた方、ありがとうございます
今年もあとちょいですが、少しでもいいものを出せるよう頑張る所存です
4531/4:2013/12/30(月) 07:59:31.80 ID:???
レイの部屋
ベッドを半分ずつ使って横たわったアスカとレイ
背中を向けているアスカ

 アスカ「悪いわね。大騒ぎした上に、人の部屋に押しかけて」
  レイ「いい、別に」
 アスカ「そ。じゃ、眠るから」
  レイ「おやすみなさい」
 アスカ「……」
  レイ「……」
 アスカ「…ねえ、妹?」
  レイ「…なに」
 アスカ「別に、…まだ起きてるかなって思っただけ」
  レイ「……」
 アスカ「…なんか信じらんない、こうやってまた、他人と一緒に眠るなんて。こういうこと、
    私にはもう起きないんだろうなって思ってたのに」
  レイ「…そう」
 アスカ「知識を吸収して、訓練して、スキルを身体に叩き込んで。エヴァに乗って。
    使徒に勝って。また新しい戦術を身につけて。そういう繰り返しだと思ってたもの」
  レイ「……」
 アスカ「研究所でも、訓練施設でも、ユーロ空軍でも同じ。常にトップ、いつだって最上位。
    そういう毎日。それで当たり前。…なのにここに来たら、あんたとシンジがいる」
4542/4:2013/12/30(月) 08:00:51.51 ID:???
仰向けのまま視線を向けるレイ

 アスカ「何の疑問も持たず言われたままに乗り続けるあんたと、周りの言うことに合わせる
    だけで精一杯で、覚悟も自負も、この責務の意味も、何も知らない馬鹿シンジがね」
  レイ「…私たちが嫌いなの」
 アスカ「べっつに。ずっと一人が普通だったから、他のパイロットってどんな奴かって思ってたら、
    似たようなレベルで仲良く横並びの二人が出てきて拍子抜けしたってだけよ」
  レイ「横並び」
 アスカ「そうでしょ。自分の技量をきちんと周りに示さずに、よく平気ね」
  レイ「自分の、存在、を?」
 アスカ「存在? まあ、似たようなもんか。…人と同じってことは、どっちでもいいってことよ。
    いつ選ばれなくなっても不思議じゃない。そのための努力を惜しんでるんだから。
    私なら御免ね、他人の予備とか、取替えのきく立場に甘んじてるなんて。それじゃ
    自分自身がどこにもいないじゃない」
  レイ「……」
 アスカ「ほんっと、どうして平然といい子でいられるのかしら。あんな大人どもの間で」
  レイ「大人?」
 アスカ「そ、私たちの周りの、大人。
    そりゃ私だって、最初は優等生で通そうとしたわ。みんなによく思われたかったもの」
4553/4:2013/12/30(月) 08:01:37.91 ID:???
 アスカ「けど、みんな同じよ。
    保護者ぶろうとする輩も、対等な付き合いを演出したがる手合いも、私がどれだけ
    できるか見せつけられてるうちに、結局、苛立ちを隠せなくなる。本心じゃ私のこと
    見下してたからよ。
    で、どっちも、いざというときには『君はまだ子供だから』って拒絶するの。…ま、こんな
    こと言ってる私も、充分毒されてるか」
  レイ「…、そういう話は、私じゃなくて、お兄ちゃんとした方がいいと思う」
 アスカ「…またそれ? あんた、まだそうやって他人事みたいにやり過ごすつもりなの」
  レイ「私のことじゃない。
    あなたは、本当はお兄ちゃんに聞いてほしいんだと、思うから」
 アスカ「……
    小さい子みたいな調子で、わかったようなこと言わないでよ。…それに、あの馬鹿には
    もう前に訊いたわ」
  レイ「そう、仲、いいのね」
 アスカ「…そんなんじゃないわ。自分の立場に無自覚な奴を見てるとイライラするってだけ」
  レイ「……」
 アスカ「あんたもよ。ま、馬鹿シンジの代わりでいいんなら、別にどうでもいいけど」
4564/4:2013/12/30(月) 08:02:30.83 ID:???
  レイ「…そんなつもりないわ。それに、私には初号機は動かせないもの」
 アスカ「…、駄目…だったんだ。再起動実験」
  レイ「……」

そっと振り返るアスカ
天井を見ているレイ

 アスカ「いいじゃない。これで、あんたはあんたってはっきりしたんだから」
  レイ「…いえ、違うわ」
 アスカ「え?」
  レイ「零号機は、応用規格の少ない試作型。…それに零号機なら、私じゃなくても乗れる」
 アスカ「何言ってんのよ、あんたらしくもない」
  レイ「…私らしい」
 アスカ「そ。他人がどうだろうが、あんたは言われた通り乗るだけでしょ。馬鹿シンジや、あの
    うさんくさい予備パイロットが何をしようが、自分には関係ないものって顔して」
  レイ「…そう」
 アスカ「何よ、歯切れ悪いわね。言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよ」
  レイ「…いいの。…おやすみなさい」
 アスカ「……」
457名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/30(月) 11:53:47.49 ID:???
うざっ
458名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/30(月) 13:08:26.20 ID:???
>>458
きゃわわ
4591/5:2013/12/31(火) 10:02:58.63 ID:???
本部器楽室
蓋を閉じたピアノの上に置かれる楽譜
扉が開く
顔を上げ、振り返って微笑するカヲル

 .カヲル「…間に合ったね」
 シンジ「カヲル君!」

駆け寄るシンジ
向かい合ったカヲルの顔や身体を何度も心配そうに見回す

 .カヲル「やあ。…元気にしていた?」
 シンジ「僕は…僕のことなんか、別に…けど今まで一体、…あの、身体は? 大丈夫…?」
 .カヲル「……」
 シンジ「もう、あれからずっと顔も見れなくて、誰も何も教えてくれなくて…心配したんだよ、本当に」
 .カヲル「…ごめんね」
4602/5:2013/12/31(火) 10:03:53.49 ID:???
 シンジ「あ…、いや、違うよ、カヲル君のせいじゃない。君を責めるつもりなんかなくて、…ただ、…
     あの、…そういえば、ここにいるなんて珍しいね、最近はずっと僕から誘ってたのに。テスト、
     今日はいいの?」
 .カヲル「うん。ここで処理すべきタスクは、ほぼ完了したからね」
 シンジ「そうなんだ、…じゃあさ、これからはもっと、普通にいられるといいね。学校に来たりとか、
     …あ、上の中学校なんだけど、トウジとかケンスケとか、面白い奴がいてさ。レイや
     アスカも一緒のクラスだし、きっと楽しいと思うんだ」
 .カヲル「……」
 シンジ「あ…、ごめん。僕ばっかり喋っちゃって…あの、それは? 楽譜、みたいだけど」
 .カヲル「これかい?
     ここで君と弾いていた曲だよ。譜面に起こしてみたんだ。良かったら、君に受け取ってほしい」
 シンジ「…、どうしたの急に、何だか、それって」
 .カヲル「シンジ君、…」
 シンジ「! 待って、あの」
 .カヲル「……」
4613/5:2013/12/31(火) 10:04:51.26 ID:???
 シンジ「ッあの、…昨日、うちでみんなで食事したんだ、アスカやリツコさんたちも一緒に集まって、
     大騒ぎして。すごく楽しかったんだ、でも、君を誘えなくて…あのさ、良かったら、今度は、
     …その、君も一緒に」
 .カヲル「ありがとう。
     だけど、僕は行けない。今も無理を言って抜け出してきたんだ」
 シンジ「そっか、…ごめん、勝手なこと言って」
 .カヲル「ううん。嬉しいよ。君のホームに呼んでくれるなんてね」
 シンジ「ホーム?」
 .カヲル「帰る家。君の、家族がいるところだよ。
     妹さん、葛城二佐、それに今は友人もたくさんいる。良いことだね。少し、安心したよ」
 シンジ「カヲル君…? ねえ、どうしてそんなに、僕なんかのこと」

遥か遠くから見ている笑顔を向けているカヲル

 .カヲル「僕は、…いつも、君が心配だよ。…どこにいてもね」
 シンジ「カヲル君、…待ってよ、さっきからずっと、…まるで」
4624/5:2013/12/31(火) 10:06:09.67 ID:???
 .カヲル「ごめん。
     近く、僕はこの本部を離れることになると思う。機体の調整が最終段階に入って、僕が
     必要になったんだ。それに、僕がここに留まること自体、不都合な者たちもいるようだから」
 シンジ「離れる…って、…どこに行くの」
 .カヲル「言えないんだ。場所も、正確な出立の日も。一応、機密事項になっているからね。
     ただ恐らく、自由に行動できるのは今日が最後だと思う。…だから、これでお別れだよ」
 シンジ「え…」
 .カヲル「心配しないで。ただの異動みたいなものだよ」
 シンジ「…、うん。…でも」
 .カヲル「……」
 シンジ「…遠く?」
 .カヲル「うん。遠くだ」
 シンジ「…そう、なんだ」
 .カヲル「……」
 シンジ「でも、…また、会えるよね。同じエヴァのパイロットなんだから」
4635/5:2013/12/31(火) 10:07:31.83 ID:???
 .カヲル「…そうだね。
     シンジ君、…この次会う時は、僕のエヴァを携えて戻ってくるよ。今度こそ、君の力になりに」
 シンジ「うん…」
 .カヲル「……」
 シンジ「…あの」
 .カヲル「何だい?」
 シンジ「さっき、僕には家族や友達が一緒にいるって言ってくれたけど…君だって、そうだよ。
     君は僕の友達だ。…大事な」
 .カヲル「…僕を、…そう呼んでくれるのかい?」
 シンジ「うん。当たり前だよ、…カヲル君」
 .カヲル「…ありがとう、シンジ君。
     また会おう。それまで、元気で」
 シンジ「うん。必ず、また。…待ってるから」
 .カヲル「…うん」

カヲルからシンジへ手渡される楽譜
室外 閉じた扉の前に一人佇むレイ
何度か意を決したように顔を上げるがそのたびにうつむき、やがて無言できびすを返す
4641/3:2013/12/31(火) 10:08:50.08 ID:???
 シンジ「ベタニア…ベース…? ネルフの支部、ってことですか?」
  .ミサト「そう、本部人員にもほとんど知らされていない極秘基地。あそこは、ユーロの発言権が
     大きいからなおさら、ね。
     その地下深部には、シベリア凍土から発掘された使徒が封印されていたの。それを
     監視し、万が一封印が破られることがあればその即時殲滅を使命としていたのが、
     エヴァンゲリオン仮設5号機」
  .レイ「なら、その命令の通り、使徒殲滅を果たしたんですね」
  .ミサト「そうよ。ただ、使徒の脱出を阻止するため、5号機は自爆。パイロットの所在も不明…
     オートエジェクションの作動と、エントリープラグを回収した痕跡は確認されているから、
     国連本体かユーロの庇護下で生きていることは確かだけどね」
 シンジ「そう、なんですか…」
4652/3:2013/12/31(火) 10:09:47.25 ID:???
 .アスカ「何よ、怖気づいたの? 私たちもやったじゃない、自分の死を想定に入れた作戦くらい」
 シンジ「そうだけど…知らなかったから。僕ら以外にもエヴァに乗ってる人がいて、たった一人で
     そんな、自爆までしなきゃならない任務を背負ってたなんて」
  .ミサト「それだけ、使徒が手強かったのよ。5号機は四肢のほとんどを機械で補った仮設機
     だったしね。そのハンデも考えると、パイロットの度胸勝ちってところかしら」
 シンジ「すごい…」
  .レイ「…うん」
 .アスカ「でもそいつ、結局エヴァを犠牲にしてやっと相討ちでしょ? 大したことないわ。大体、
     エヴァのパイロットに選ばれておきながら機体を乗り捨てるなんて、その発想からして
     根本的に信用できないわ」
  .ミサト「確かに、あなたたちとはかなり違う考え方の持ち主だってことは言えるわね」
  .レイ「でも、なぜ今、その話なんですか」
  .ミサト「そのことなんだけど…バチカン条約の話は、もう習ったわよね?」
4663/3:2013/12/31(火) 10:11:47.23 ID:???
 シンジ「あ、はい。ひとつの国が保有できるエヴァは、最大で三機だっていう条約…ですよね」
 .アスカ「よくできましたー。つまり、私たちの場合はもうこれ以上、新たな機体を配備できない
     ってことよ」
  .レイ「すなわち、今後起こりうる状況によらず、現状を越える規模の作戦は、行えない」
  .ミサト「そう。使徒の脅威は、当初の予測以上に大きくなってきているわ。だけど国際条約上、
     この本部が単独で四機以上の大戦力を保有することはできないの。だから、いずれ
     今後は、他国ないし他政治圏との共同作戦の話が出てくるかもしれない。
     そのときは、今話した5号機のパイロットが、協力候補の筆頭に上がってくるはずよ」
 .アスカ「そんな、実現するかもわからない話をされたってどうしようもないわよ。
     この私と2号機がユーロから来た時だって、もともと決まってた話だったのにもかかわらず
     直前になって、あれだけすったもんだしたじゃない。国際協力? はん、現実味が
     まるでないわ」
  .ミサト「そうなんだけどね。でも、先に知っておいてもらう方が、そのときになってから一度に
     詰め込まれるよりはマシかと思ってね。
     今すぐ何か変わるって訳じゃないわ。ただ、一応頭の隅には、留めておいてね」
 シンジ「…、はい」
467名無しが氏んでも代わりはいるもの:2013/12/31(火) 10:13:11.37 ID:8SEcEHDa
 シンジ「……」(クンクンクン)
  .レイ「何してるの」
 シンジ「!! あっいや、別に、何でもないよ」
  .レイ「…?」(スンスンスン)
 シンジ「ちょっ、ほんとに何でもないってば、うわっ、…こら、レイっ」
  .ミサト「…何やってるの? 二人でくっついて」
 シンジ「えっ?! や、いえ、あのっ、何でもないですから。レイ、もういいだろ」
  .レイ「…何も変な匂い、しないわ」
 シンジ「え…あ、…そうだよね。ッじゃなくて、もう」
  .レイ「何が、気になるの」
 シンジ「それは…」
  マリ(じゃ、このことは他言無用で!)
 シンジ「…えっと、その」
  .ミサト「なーに? お互いの匂いが気になるの? そういや、機体の相互換試験のときも
     そんなこと言ってなかったっけ、二人とも。その後の一大事でうやむやになっちゃったけど」
4682/2:2013/12/31(火) 10:16:12.65 ID:???
  .レイ「…そう、この匂いがした。だから、お兄ちゃんの近くにいる気がして」
 シンジ「え…、そう、なんだ」
  .ミサト「ふーむ。なーんか、普段の双子らしからぬ行動ね。くっついて、お互いの匂いと体温で
     安心するなんて、まるで…」
 シンジ「え?! べ、別にそういう訳じゃ」
  .ミサト「…いや、というより、何だか動物みたいだわねぇ。そう、犬とか猫とかハムスターとか」
 シンジ「……ええー…」
  .ミサト「あ! そういえば、リツコが前くれた写真がケータイにあったっけ。…ほら、これこれ!」
  .レイ「ねこ、ですか」
 シンジ「まあ…確かにくっついてますけど」
  .ミサト「何て言ってたっけ、そう、猫だんご! じゃあ、さしずめウチのは双子だんご…?
     んんー、イマイチ語呂悪いわね。何かいい呼び方ないかしら」
 シンジ「ちょっと、一人で面白がらないでくださいよ! ミサトさんてば!」
  .レイ「ねこ、…かわいい」


以上で新劇版路線へのシフト終了、規制中に書き溜めた分も終了
うっとうしくてごめんなさい
静かにやるのでどうか放置してくださいな
4691/4:2014/01/11(土) 10:59:26.02 ID:???
 シンジ「あ、レイ!
     今週週番でさ、もう行かなきゃ。ごめん、お弁当自分で包んでくれる」
  .レイ「え…?」
 シンジ「ミサトさん、ゴミ捨て行っちゃいますよ! レイ、ごめんよ。先に行くね」
  .レイ「…でも、私、今日」
  .ミサト「ちょい待ってー!って、あちゃー、行っちゃったか…
     ん、どしたの? レイ」
  .レイ「…お弁当」
  .ミサト「そっか、今日は本部で臨時の検診だっけ。シンジ君、知らずに作っちゃったのね」
  .レイ「……」
  .ミサト「んーむ、一応、持ってったら? せっかくの愛情弁当だし」
  .レイ「あいじょう」
  .ミサト「そ。毎日、食べる人のこと考えて、喜ぶ顔が見たくて、作ってるのよ。シンジ君は。
     だから、おいしく食べて、ごちそうさまって言ってあげるのが、食べる方のギムよん。
     …なんてね、難しく考えないでいんだけど。どうする? なんなら、こっちで誰かに
     手伝ってもらっちゃうけど」
  .レイ「…、いえ、持って、いきます」
  .ミサト「オッケー。んっ? レイも、なかなかいい笑顔するようになったじゃない」
  .レイ「え、…そう、ですか」
  .ミサト「そ。今の、お弁当手に取った顔。かっわいいわよ、女の子らしくて」
  .レイ「……」
  .ミサト「って、おっと、困らせちゃったか。ごめんごめん。
     じゃ、先に出るから、戸締りよろしくね」
  .レイ「はい」
4702/4:2014/01/11(土) 11:00:15.44 ID:???
本部大深度施設
LCL槽の中で目を開くレイ
正面に立つ碇とリツコ

 リツコ「前回同様、目立った変動はありません。境界値が0.00001%低下していますが、
    許容範囲内です」
  碇「ああ、問題あるまい。零号機の試験スケジュールを前倒しし、再就役を急げ」
 リツコ「はい」
  碇「レイ、上がっていいぞ。…食事にしよう」

頷き、ふと目を見開くレイ
4713/4:2014/01/11(土) 11:03:26.43 ID:???
本部上階
テーブルについた碇のところへ歩み寄っていくレイ

  .碇「どうした。遅かったな、何か支障があったか」
  レイ「…いえ」
  .碇「…? 何だ、それは」

席についたレイの前に置かれた薬剤とお弁当包み
ナプキンの結び目にかかる両手
包みをほどく手つきの優しさに目を留め、すぐに視線を逸らす碇

  .碇「…シンジが作ってるのか。最近は、どうしている。問題はないか」
  レイ「はい。…あの、碇司令」
  .碇「なんだ」

返事がないことをいぶかしみ顔を向ける碇
はっとするほど無防備な表情のレイ

  .碇「どうした。…食べればいいだろう」
  レイ「…、味見、してみませんか」
  .碇「…何?」
  .レイ「食べる人が喜ぶように、…喜んでほしくて、作ってる、んです。
     私、…いつも、おいしくて、嬉しい、から。…だから、…碇司令にも、きっと」
  .碇「……」
  レイ「…だめ、ですか」
  .碇「…いや。…だが、私には」
  レイ「…だめですか」
  .碇「………」
4724/4:2014/01/11(土) 11:04:14.66 ID:???
 冬月「で、結局どうしたのかね。食べたのか?」
   碇「…ああ」
 冬月「そうか」
   碇「…それが、どうかしたか」
 冬月「いや。ただ、そこまで険しい顔をすることでもあるまいに」
   碇「どうでもいいことだ。下らない些事に過ぎん」
 冬月「そうかね。
     …しかし、美味かったろうな。下の連中の評判は聞いておるよ。それに、もしや
     ユイ君の味が伝わっているかもしれんしな。…懐かしいことだ」
   碇「…? 待て、なんでユイの味を知っている」
 冬月「おや、話しておらんかったか? 昔、生態調査に出たときは、たいてい彼女が
     お弁当を作ってきてくれたものだったよ。毎回おかずを工夫してきてくれてな…、
     ん、どうかしたか」
   碇「……何でもない。仕事に戻る」
 冬月「そうか」
473名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/01/15(水) 12:49:33.06 ID:???
いつも乙です
4741/5:2014/01/17(金) 18:59:09.38 ID:???
夕食後
食器洗いを終えてエプロンはずそうとするシンジ

 シンジ「あれ? レイ、お弁当箱は? 今日、持っていったよね」
  .レイ「…あっ」
  ミサト「どしたの? ん、もしかして忘れてきちゃったんじゃない、本部に」
 シンジ「? ミサトさん、本部って」
  ミサト「ああ、今日、レイ、臨時の検診だったのよ。急に予定が入っちゃってね」
 シンジ「それは聞いてますけど、そうじゃなくて、なんでそれで忘れ…あっ」
  ミサト「ん?」
  .レイ「…、検査の後、食事…したから。それで、その時に」
 シンジ「それでって、…もしかして、レイ」
  .レイ「うん」
 シンジ「…え」
  ミサト「??」

急に顔色を変えるシンジ
はっとするレイ
傍の椅子に叩きつけられるエプロン

 シンジ「…何てことするんだよッ!
     そんな、僕に黙って、一人で、…どうしてそんな勝手なことしたんだよ!」
  .レイ「…!」
  ミサト「ちょっと、シンジ君?! どうしたの、あっ、待ちなさい! シンジ君!…
     一体どうしたのかしら、突然」
  .レイ「……」
4752/5:2014/01/17(金) 19:02:21.97 ID:???
テーブルで向かい合うミサトとレイ

  ミサト「…なるほどね。
    碇司令にお弁当を食べてもらった、か。…道理で、シンジ君が過敏になった
    わけだわ。にしても、あのやりとりだけでそこまでわかっちゃうなんて。双子の
    以心伝心も、時と場合によりけりね」
  レイ「……
    どうして、…お兄ちゃんは」
  ミサト「あんなふうに急に怒ったのか、よね? …そうね、レイにとってはまだちょっと
    複雑だったかもしれないわね」
  レイ「…私、お兄ちゃんを傷つけた、んですか」
  ミサト「んー。ま、結果的には、ね」
  レイ「…ひどいこと、…してしまったのね」
  ミサト「それは違うわよ、レイ」
  レイ「…え?」
  ミサト「お弁当、いつも嬉しかったんでしょ?
    そしてお父さんにもう少し近づきたかった。シンジ君と一緒に。だから、シンジ君が
    気持ちを込めて作ってくれたものを、お父さんにも知って欲しかった。
    そうでしょ?」
  レイ「…、はい」
  ミサト「なら、何も間違ったことはしてないわ。
    レイはレイの一番大事なものを、大事な人にあげただけだもの」
  レイ「…でも」
4763/5:2014/01/17(金) 19:03:30.23 ID:???
  ミサト「そうね。シンジ君は喜んでくれなかった」
  レイ「…そう、…喜んでくれるって、勝手に思ってた。自分だけ、何も訊かずに」
  ミサト「ん。結果は違っちゃった。シンジ君の気持ちは、少し違った。
    そのことはきちんと受け止めないとね」
  レイ「…はい」
  ミサト「シンジ君はね、お父さんのこと、どう感じていいかまだ迷ってるのよ。レイが碇司令の
    傍にずっといたことも、頭ではわかってても、自分自身の気持ちをどうしたらいいか、
    まだ整理できてない。お父さんのことだけは、レイと同じ感じ方はできないの。たとえ、
    同じ双子でもね」
  レイ「……」
  ミサト「だけど、レイの気持ちも間違ってたわけじゃない。それは本当よ」
  レイ「…本当」
  ミサト「そ。他の誰が違うって言っても、私はレイの気持ち、正しかったって信じるわ」

少し両目を見開くレイ
廊下で壁に背中をつけて二人の会話を聞いているシンジ
唇を噛んでうつむく
4774/5:2014/01/17(金) 19:04:45.58 ID:???
  ミサト「だから自分の気持ちから逃げずに、シンジ君とちゃんと向き合いなさい。
    …大丈夫よ。シンジ君だって本気で怒ってるわけじゃないわ。レイの気持ち、
    誰よりもよくわかってるはずだもの。ただ今すぐには受け止めきれなかっただけ。
    心配要らないわ」
  レイ「…、はい。
    ! …お兄ちゃん」

キッチンに入ってくるシンジ
目を伏せるレイ

 シンジ「…すみませんでした、ミサトさん。急にあんなことして…もう、大丈夫です」
  .ミサト「そ。わかったわ。…話、聞いてた?」
 シンジ「…、はい。途中から、少し」
  .ミサト「ん。じゃ、もうわかってるわね」
 シンジ「はい」

うつむいているレイ

 シンジ「…、ごめん、レイ」
  .レイ「!」
4785/5:2014/01/17(金) 19:06:20.26 ID:???
顔を上げるレイ
少し不器用に微笑んでいるシンジ

 シンジ「ごめん。急に、あんな言い方して。…ひどいこと言ったよね」
  .レイ「…ううん、…違うの。私、が」
 シンジ「いいんだ。僕は、…いきなりでまだちょっと驚いてるけど、でもやっぱり、嬉しいよ。
     ありがとう。父さんのこと、ちゃんと考えてくれてて。…ありがとう」
  .レイ「…お兄ちゃん」
 シンジ「ん?」
  .レイ「…どうして、…私のこと、わかってくれるの。…私は、わかってない、のに」
 シンジ「そんなことない。それに、当たり前だよ。双子なんだからさ」
  .レイ「…あ」

瞬きし、ようやくゆっくりと笑顔になるレイ


>>473
いつもありがとうございます
479名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/01/20(月) 07:53:58.27 ID:???
 シンジ「えっと…今日は、ミサトさん遅いんだっけ。晩ご飯レイと食べて、それから
     ミサトさんに何か作っとけばいいかな…、あれ?」
  .マリ「おっ」
 シンジ「あ! もしかして、…いつかの」
  .マリ「ワンコ君じゃん。ひっさしぶりぃ。いい子にしてた?」
 シンジ「…やっぱり…」
  .マリ「スーパーの袋さげて、今帰りなんだ? 毎日大変だねー」
 シンジ「別に、大変ってほどじゃ…あの、何してるんですか、こんなところで」
  .マリ「何って、ていうか、何もそんな、不審人物を見る目で見なくたっていいじゃない?」
 シンジ「えっ? あ、…すみません」
  .マリ「うそうそ。ま、そうだよね。充分怪しいかー、空から降ってきた女の子じゃ。って、
     ロマンないねぇ、君」
 シンジ「え…そう、ですか…」
  .マリ「なーんちゃって。…気になる?」
 シンジ「…ええ、まあ」
  .マリ「なんか熱意ないなぁ。ま、いっけどさ。んーっとそうだな、この街の、社会見学…」
 シンジ「え?」
  .マリ「…かな? 一応。見ての通り、子供なんで」
 シンジ「……」
  .マリ「なーに、その目は。信じてないな? 一応ホントなんだけど。…っとと、時間時間、
     こんなことしてるヒマないんだった。それじゃ、また他言無用でよろしくぅ」
 シンジ「ええ?!」
  .マリ「じゃっ、『妹』の世話、がんばってね。ワーンコ君っ!」
 シンジ「??? …何だったんだよ、一体」
480名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/01/22(水) 22:14:05.53 ID:???
マリから見れば弟か
4811/5:2014/02/01(土) 09:37:12.85 ID:???
本部エレベータ前に佇む碇
扉が開く
一瞬躊躇し、乗り込む碇
動き出すエレベータ

   碇「……」
 シンジ「……」

隅に寄ってややうつむいているシンジ
ふと顔を向ける
差し出された碇の手に、きちんと包み直されたお弁当箱

 シンジ「これ…? あ、そうか、レイが」
   碇「…ああ。…返すのが遅くなった」
 シンジ「え…、あ、…その、いいんだ、別に」
   碇「そうか」
 シンジ「……」
   碇「……」
 シンジ「…父さん?」
   碇「なんだ」
 シンジ「あの、…、…ありがとう。食べてくれて」

シンジを見る碇
4822/5:2014/02/01(土) 09:38:43.37 ID:???
見上げているシンジ
ややあってお互いに目を逸らす

 シンジ「…レイがさ、喜んでた。うれしかった、って」
   碇「…そうか」
 シンジ「それで…その、…父さんは」
   碇「シンジ」
 シンジ「え?」
   碇「…弁当、うまかった。
     だが、もうこういうことはするな。レイにもそう伝えておいてくれ」
 シンジ「…え」

もうシンジを見ていない碇

   碇「私には責務がある。お前の父親でだけいることはできない。…その時間がない」
 シンジ「なんで、…だって」
   碇「お前もそうだ。お前はもうただの中学生ではない。エヴァに乗り、使徒を倒す。
     それがお前の責務だ。他の人間は誰も代わりができないお前の使命だ」
 シンジ「…でも」
   碇「互いの立場を自覚しろ」
 シンジ「……」
4833/5:2014/02/01(土) 09:40:53.85 ID:???
   碇「…話はそれだけだ。いいな」
 シンジ「……
     はい。…でも、レイには言えません」
   碇「なぜだ」
 シンジ「…なぜ、って」

うつむいたまま表情を険しくするシンジ

 シンジ「…僕はいいよ。だけどレイは、…レイがかわいそうだって思わないの、
     父さんは」
   碇「なに…?」

反射的に目を向けるシンジ
無表情の碇

 シンジ「寂しくないかとか、つらいだろうとか、そういうふうに考えたことないの?
     ずっと一緒だったんだろ?!」
   碇「ああ。ないな」
 シンジ「…!」
   碇「彼女に同情や憐憫を感じることはない。そう決めている。
     お前はそんなことでレイに関わったのか」
 シンジ「そんなこと、って…!」
4844/5:2014/02/01(土) 09:43:55.63 ID:???
まともにシンジを見下ろす碇

   碇「レイを引き取ると決めたのはお前自身だろう。ならばお前がレイに伝えろ。
     お前の責任だ」
 シンジ「…責任って、僕はそんなふうに、…そんなつもりで一緒にいるんじゃ」
   碇「甘えるな。人と関わることは、それ自体が責任と同義だ。その自覚がないなら
     お前がしているのはただの逃避だ」
 シンジ「……」
   碇「背負いきれないなら最初から手を出すんじゃない」
 シンジ「……」
   碇「…わかったな」
 シンジ「……」

エレベータの扉が開く
大股に歩み出ていく碇
碇に一礼し、入れ替わりに乗り込んでくるミサト
4855/5:2014/02/01(土) 09:45:07.57 ID:???
自分の足元を見つめているシンジ

  ミサト「…シンジ君?」
 シンジ「……」
  ミサト「…何か、あった? 今ので」
 シンジ「……」
  ミサト「…そっか。
     でも、もしも話したくなったら、いつでもいい、教えて。聞いてあげるくらいはできるわ。
     私でも、レイでもね」
 シンジ「……」
  ミサト「さっ、帰りましょ。…いつまでもそうやって下向いてると、レイがお兄ちゃんを心配するわよん」

ミサトを見るシンジ
シンジを覗き込んだり心配したりでもなく、普段通りの顔をしているミサト
視線を戻し、意識して少し笑ってみるシンジ
486名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/02/04(火) 12:07:26.49 ID:???
いい雰囲気
487名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/02/12(水) 07:26:48.56 ID:???
test
488名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/02/12(水) 21:07:49.53 ID:???
落ち着いた雰囲気でいいな
4891/3:2014/02/25(火) 07:15:31.91 ID:???
>>486 >>488 ありがとうございます


夕食後
並んで後片付けするシンジとレイ
食器の中に混じったお弁当箱に気づいて瞬きするレイ

  .レイ「…これ」
 シンジ「あ、…父さんが今日、返してきたんだ。本部に行ったときに」
  .レイ「そう」
 シンジ「うん…」
 シンジ(…あ)
 シンジ(もしかして、レイ…自分に返して欲しかった、のかな)
 シンジ「…あの」

そっとレイの方を窺うシンジ
うつむいた横顔を見せているレイ
ふいに、ごく小さく笑う
4902/3:2014/02/25(火) 07:16:23.18 ID:???
 シンジ「?! どうしたの、…何か、おかしかった」
  .レイ「ううん、そうじゃなくて。
     碇司令、…お兄ちゃんにそれ、渡したくて、ずっと持ち歩いてたのね。…何か、
     不思議な気がして」

はにかんだような微笑で素直にシンジを見ているレイ
言葉を失うシンジ

  .レイ「…どうか、した」
 シンジ「あ、いや、何でもないよ。…そうだよな、考えてみたら、父さんらしくないよね、
     それって。…気がつかなかったな」
  .レイ「そう?」
 シンジ「ん…あの、それで」
  .レイ「なに」
 シンジ「その、父さんのことなんだけど、…レイ」
  .レイ「?」

レイに向き直るシンジ
無心に見つめ返すレイ
シンクの水音が響いている
4913/3:2014/02/25(火) 07:18:13.33 ID:???
  .レイ「…お兄ちゃん?」
 シンジ「…あ、…
     父さん、…うまかったって。レイにも、…レイにも、そう、伝えておいてくれ、って」
  .レイ「そう…なの」

もう一度ほのかに微笑むレイ
言葉を続けようとしてできず、口をつぐみ、食器洗いを再開するシンジ
レイも倣って視線を戻す

  .レイ「…よかった」
 シンジ「…うん」

黙って片づけを続ける二人
普段より丁寧すぎるくらいの手つきで皿をすすいでいるシンジ
頑ななその横顔を見つめるレイ
492名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/02/25(火) 18:09:59.05 ID:???
落ち着くね
493名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/02/25(火) 19:23:37.09 ID:???
きもい
死ね
494名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/02/25(火) 20:47:10.45 ID:???
>>493
お前が死ね
495名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/02/26(水) 11:49:00.87 ID:???
最高
496名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/02/26(水) 12:15:55.28 ID:???
>>494
お前が死ね
497名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/03/05(水) 07:54:57.60 ID:???
test
4981/7:2014/03/07(金) 17:42:05.91 ID:???
>>492 ありがとうございます
地味にひっそりやっていくつもりですので、できればsage進行でお願いいたします


暗い自室でベッドに横たわったシンジ
襖が開く音
細く覗いた廊下に、タオルを肩にかけて立つ風呂上がりのミサト
背中を向けたまま動かないシンジ

  ミサト「まだ起きてた? シンジ君」
 シンジ「…はい。…あの、レイは」
  ミサト「さっきお風呂入って、寝たわ。…心配してたわよ、具合でも悪いのかって。
     大丈夫?」
 シンジ「…はい。何でも、ないですから」
  ミサト「そう」

襖の前にたたずんでいるミサト
少し迷い、顔を上げる

  ミサト「シンジ君」
 シンジ「…はい」
4992/7:2014/03/07(金) 17:43:28.38 ID:???
  ミサト「昼間のこと、気にしてるのね。本部で、お父さんと一緒になった時のこと」
 シンジ「……」
  ミサト「そのときお父さんに、何か言われた。…レイのことで。そうよね」    
 シンジ「……」
  ミサト「打ち明けろ、なんていうつもりはないわ。話したくないなら、レイにだって
     言わなくでもいい。あなた自身で決めていいことだもの。…ただね、シンジ君」
 シンジ「……」
  ミサト「お父さんのこと、恨むのはよしなさい。
     あなたには辛いことを言ったのかもしれない。全然父親らしくない、きつい言葉を
     かけたのかもしれない。でもねシンジ君、…それは、お父さんがあなたのこと
     信頼してるからだと思う。もう何もわからない子供じゃないって、認めてくれた
     …信じてくれたからこそ、出た言葉なのよ」

なかば自分に聞かせるように語るミサト
目をつぶっているシンジ

  ミサト「だから子供扱いはしなかった。そう思ってみて。…いえ、そう思ってあげなさい。
     そうすることで、あなたも、お父さんを」
 シンジ「…わかったようなこと言わないでよッ!」
  ミサト「!」
5003/7:2014/03/07(金) 17:44:29.89 ID:???
 シンジ「そういうの、…やめて、ください。…すみません。でも」
  ミサト「……
     いえ、いいの。…独りよがりだったわね、私。…ごめんなさい」
 シンジ「……」
  ミサト「もう寝るわね。…気にしないで、ゆっくり休んで。おやすみなさい」
 シンジ「…おやすみ、なさい」

襖の閉まる音
足音が遠ざかり、廊下の明かりが消える
きつく眉間にしわを寄せるシンジ
ぎゅっと身体を丸める

 シンジ(…最低だ)
 シンジ(ミサトさんは心配してくれたんだ。それを、あんなふうに突き放して)
 シンジ(レイには、…嘘ついて、ごまかして)
5014/7:2014/03/07(金) 17:45:36.85 ID:???
 シンジ(僕は…父さんのこと、全然まともに向き合おうとしてない。…父さんの方は
     僕に話しかけたっていうのに)
 シンジ(父さんからも、…レイからも、逃げてるんだ)

   碇(お前がレイに伝えろ。お前の責任だ)
   碇(お前の父親でだけいることはできない。互いの立場を自覚しろ)

 シンジ(…言えるわけない)
 シンジ(あんなに嬉しそうに笑ってたレイに、そんなこと言えるはずないだろ)
 シンジ(…でもそれも嘘なんだ。父さんの本当の言葉を伝えたら、レイはきっと
     すごく傷つく。…その顔を見たくない。傷ついても、たぶんレイは父さんのこと
     嫌ったりはしない。ただ、自分を、責める。…それは、僕が責められてるのと
     同じだ)
 シンジ(僕はそれが嫌なだけだ。レイが傷つくことが、怖い。それ以上に、…レイに
     嫌われるかもしれない、それが怖い。…そのとき、レイと向き合うことが怖い。
     そんな勇気はない。だから逃げてる)
5025/7:2014/03/07(金) 17:46:32.77 ID:???
 シンジ(…結局、僕は誰からも逃げてばかりなんだ)
   カヲル(…そう?)
 シンジ「!」
   カヲル(君は、お父さんも妹さんも、恨んでしまいたくないだけだよ。 二人を
      大事に思うから、自分一人を悪く見たがるのさ。自責することはないよ)
 シンジ「カヲル君、…」
   カヲル(僕は、いつも、君が心配だよ。どこにいてもね)
 シンジ(…カヲル君)

目を開き、投げ出した両手を握りしめるシンジ
強く唇を引き結ぶ

 シンジ「…いや、駄目だ」
 シンジ(父さんには頼れない。ミサトさんは、気遣ってくれても、助けにはなってくれない。
     レイには言えない。そう、言わない。僕が自分で決めたんだ)
 シンジ「一人でやるしかない。…僕がレイを、守らなきゃいけないんだ」
5036/7:2014/03/07(金) 17:48:09.82 ID:???
暗い自室でベッドに横たわったレイ
天井を見つめている

  レイ(…お兄ちゃん)
  レイ(また無理してる。言わなくても、わかる)
  レイ(たぶん、私のこと)
  レイ(私…)
  レイ(…私にできることって、何?)

想起されるエヴァのイメージ
そのまま襲いくる使徒の暴力的なイメージにすり替わる

  レイ「…!」

大きく目を見開くレイ
反射的に上掛けを掴む両手
その指が緩む
5047/7:2014/03/07(金) 17:50:39.70 ID:???
   シンジ(レイ! しっかりしろよ、レイ…!)
   シンジ(馬鹿だな、謝らなくたっていいんだよ。レイはレイでいい。僕は、レイが
       帰ってきてくれただけで、それだけでいい)
  レイ「あ…」
   シンジ(だったら、レイは僕が守る。一緒に生きてけば、何だってできるよ)
  レイ「……」

目を閉じて温かな感情を噛みしめるレイ
やがて再びまぶたを開き、悲しいような目になる

  レイ(…そうじゃない。…やっぱり、違う)
  レイ(私が、お兄ちゃんを守る)
  レイ(私には、他に何もできることがないもの)

まっすぐ暗い天井を見上げるレイ
壁と廊下を隔てて室内の暗闇を睨みつけているシンジ
夜が更ける
505名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/03/16(日) 07:57:33.03 ID:???
静かになりましたね
506名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/03/19(水) 20:11:59.21 ID:???
楽しみ
507名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/03/27(木) 07:07:22.73 ID:???
test
5081/6:2014/03/27(木) 08:22:02.67 ID:???
>>506 …ありがとうございます
進行遅くてすみません


  ヒカリ「…でね、お姉ちゃんが行ってみたんだけど、けっこういいんだって!」
 アスカ「へえ、この街にもできたんだ。第二東京まで出なきゃだめかと思ってた」
  ヒカリ「そうなのよ。ね! 帰り、一緒に寄ってみない?」
 アスカ「これから? んー…悪いけど、パス。今日も2号機のテストスケジュール、
     遅くまで詰まってるのよ。ゴメンね、いつも誘ってくれるのに」
  ヒカリ「そっか…ううん、いいの。気にしないで。その、がんばってね、エヴァのテスト」
 アスカ「定例の試験くらい、がんばらなくたってラクショーよ。じゃね、また明日!
     …ほら妹、あんたも再試験でしょ? とっとと行くわよ」
  レイ「……」
  ヒカリ「碇さん? どうしたの?」
  レイ「…、…、お兄ちゃん、いなくて」
 アスカ「はぁ? …あれ、ホントだ。
     何よ、双子のくせにばらけてるわけ? いつも仲良く一心同体かと思ってた」
  レイ「……」
  ヒカリ「え、えっと…確か男子は今週、音楽室の掃除当番になってるわ。まだ
     戻ってないんじゃないかしら」
5092/6:2014/03/27(木) 08:23:59.94 ID:???
  レイ「…ありがとう。…行って、みる」
 アスカ「ったくもう、いつまでもぐずぐずして。私、先に本部行ってるわよ!」
  ヒカリ「あ、じゃあ、また明日ね! …
     あっ、鈴原に相田君!」
 トウジ「な、何や、委員長。掃除ならちゃんとサボらずやってきたで」
  ヒカリ「違うわよ。碇君、一緒じゃないの?」
.ケンスケ「え、シンジ?」
 トウジ「ん? 何や、先に戻っとったんやないのか?」
.ケンスケ「俺たち二人、ゴミ捨てで別行動だったんだよ。おかしいな…カバンあるから、
     帰ったわけじゃなさそうだけど」
 トウジ「他の連中は…おるみたいやな。シンジだけか?」
  ヒカリ「今、碇さんも探してて。あなたたちと入れ替わりに音楽室に行ったところ」
 トウジ「へ?」
.ケンスケ「碇妹が? シンジを?」
 トウジ「…ヘンやな。も一回、戻ってみるか」
.ケンスケ「そうだな」
  ヒカリ「あ、待って。私も行ってみる」
 トウジ「何やもう、委員長はええやろ」
  ヒカリ「委員長だからよ! いつまでも音楽室開けてられないでしょ、心配だもの」
.ケンスケ「わかったから、行こうぜ。俺もちょっと気になる」
5103/6:2014/03/27(木) 08:25:13.73 ID:???
廊下を急ぐレイ
ふと歩みを緩める
控え目に扉を開け、静かに音楽室に入るレイ
ピアノを弾いているシンジ
少しの間、言葉をかけられずにいるレイ

 シンジ「…ん、…レイ?
     …あっ、うわ、もうこんな時間か。ごめん、待たせちゃってたんだ」
  .レイ「…いいの。そばに行って、いい?」
 シンジ「? うん」
  .レイ「……」
 シンジ「レイ…? どうしたの」
  .レイ「あ…、ううん、…聞いたこと、ない曲だった、から」
 シンジ「え? あ、そうか…そう、一人用の曲なんだ。連弾じゃなくて」
  .レイ「そう。…きれいな音。でも、少し悲しい」
 シンジ「…うん」
  .レイ「…あの人が、くれたのね」
5114/6:2014/03/27(木) 08:26:23.90 ID:???
 シンジ「…、うん。
     出発の前、カヲル君がくれた楽譜の最後に、この曲が書いてあったんだ。
     たぶん、僕が一人でも弾けるようにって。…でも、あの、ヘンだったろ。まだ
     全然弾けてないんだ、ちゃんと練習してないから」
  .レイ「…いいのに」
 シンジ「え?」
  .レイ「練習、すればいいのに。…本部の器楽室にも、ずっと行ってないでしょ」
 シンジ「え…知ってた、んだ。…そうだよな」
  .レイ「…私は、一人でも平気だから。…そのくらい、無理、しないで」
 シンジ「…、何、言ってるんだよ」

静かにピアノの蓋を閉めるシンジ
瞬きするレイ
ピアノから手を離し、遠慮がちに笑顔を向けるシンジ

  .レイ「…いいの?」
 シンジ「うん。…だって、もう行かなきゃ。リツコさんに怒られちゃうよ」
5125/6:2014/03/27(木) 08:28:13.01 ID:???
  .レイ「…、そうね。…怒られる」
 シンジ「そうだよ。ミサトさんにも」
  .レイ「…うん」

ようやく、張りつめていた表情をほどくレイ
シンジの肩からもちょっと力が抜ける

 シンジ「…もう。
     レイこそ、気を遣ったりすることないんだよ。僕は無理なんかしてない。
     レイのこと、無理にしてるわけないだろ。僕が自分で決めたんだから。それに、
     …やっぱり、一人で弾いても楽しくないってわかったから。…もういいんだ」
  .レイ「…そう」
 シンジ「…うん」

どやどやと入ってくるトウジ、ケンスケ、ヒカリ

 トウジ「シンジー? 何や、一緒におるやないか」
5136/6:2014/03/27(木) 08:30:34.68 ID:???
 シンジ「あれ? どうしたんだよ、皆で」
 トウジ「アホ! お前がおらんから探しにきてやったんやろ」
 シンジ「えっ? ごっごめん、すぐ行くよ」
  .レイ「…ごめんなさい。私が言ったから」
 シンジ「…え?」
.ケンスケ「そ。碇妹が気にしてたから、俺たちも来てみたんだよ。良かったな、無事に
     合流できて」
 シンジ「あ…」
 トウジ「やっぱり双子のことは双子に任すんが一番やな。心配して損したわ」
.ケンスケ「ま、いつも通りみたいだし、ほっとしたよ。取り越し苦労だったな」
  ヒカリ「もう、碇君! 音楽室、いつまでも開けてちゃ駄目でしょ! 鍵は?」
 シンジ「え?! あ、うん、持ってる。ごめん」
  ヒカリ「碇さんも心配してたんだから。早くここ閉めて下校しないと。あ、その前に
     職員室に鍵、返してこなきゃ」
 シンジ「う、うん」
 トウジ「そない急かさんでもええやろ、見つかったんやから」
  ヒカリ「駄目よ! 勝手に音楽室使うなんて、クラス全体の責任になるんだから」
.ケンスケ「まあまあ。ほら、碇妹も行こうぜ」
  .レイ「…うん」
514名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/04/01(火) 16:08:50.89 ID:???
良い雰囲気だ
515名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/04/04(金) 07:55:38.11 ID:???
test
516名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/04/10(木) 23:30:28.27 ID:???
懐かしい感じがする
517ギンコ ◆BonGinkoCc :2014/04/11(金) 07:51:55.15 ID:???
式波・アスカ・ラングレー
「ガキシンジ、あんた、浮気をしたのね…。
誰なの?今の女性は?」

ギンコ
「その様子をWIDEX-WAVEと蟲師放送の共同制作生放送である
「IT's蟲エヴァ」のとあるコーナーでオンエアしたらこんな騒ぎになるなんて…。

Radikoを通じて日本全国に行き渡ってしまったと思う。」
5181/6:2014/04/13(日) 12:05:32.92 ID:???
>>514 >>516 ありがとうございます


職員室に鍵を返しに行ったシンジを待ちつつ昇降口へ向かう一同
夕陽の差す廊下
日頃あまり話さないレイを若干気にしているヒカリ

  ヒカリ「…ね、碇さん。あの…さっきのピアノ、碇君なの?」
  .レイ「?」
  ヒカリ「あ、終わりの方、ちょっとだけ聞こえてたの。すごいわね、弾けるなんて
     知らなかったわ」
  .レイ「……」
  ヒカリ「あ…えっと」
.ケンスケ「ああ。ほんとだよな」
  ヒカリ「!」
.ケンスケ「俺たちも初めて知ったよ。音楽、いつも聴いてるのは知ってたけどさ」
 トウジ「せやな。思わぬ特技っちゅうか、隠し芸か。碇妹は知ってたんか?」
  .レイ「う、うん」
5192/6:2014/04/13(日) 12:07:07.82 ID:???
表情を見せているレイ
ほっとするヒカリ
何気ないそぶりで続けるトウジとケンスケをちょっと感謝の目で見る

.ケンスケ「へえー。って、ん? いつ練習してたんだ? ミサトさん家にピアノなんか
     あったっけ」
  .レイ「…ううん、…本部の中に、器楽室があって」
 トウジ「ほぉ」
.ケンスケ「ネルフ本部に? なんか意外だな」
  ヒカリ「じゃあ、そこで一人で練習してたのね」

レイの歩調が少し遅れる

  .レイ「…、一人じゃ、なくて。
     もう一人、弾ける人がいて、…その人に、誘われてたの」
  ヒカリ「そうなんだ。いろいろ、教わってたのね」
  .レイ「教わって…?
     ううん、そうじゃなくて、二人で…れんだんって言ってた」
.ケンスケ「ああ、連弾か。二人でパート分けして弾くやつだっけ」
 トウジ「お、えらい本格的やな。しかし、よくネルフに音楽やる大人がおったな」
  .レイ「大人じゃないの。私たちと同じ、パイロット」
.ケンスケ「え?!」
5203/6:2014/04/13(日) 12:08:52.34 ID:???
 トウジ「なんや、お前らのほかにもおったんか」
.ケンスケ「俺の知らない奴がいたのか…
     ってまさか、…式波のことじゃないよな?」
 トウジ「うげ?! やめんかい、想像できんわ」
  ヒカリ「ちょっと、そんな言い方ないでしょ! …でも、そうなの?」
  .レイ「ちがう、男子。
     …私よりずっと、何でもできる人。エヴァの操縦も。お兄ちゃんと、話すのも」
 トウジ「なんやそら、イヤミそうな奴やな」
.ケンスケ「けど、そいつも俺たちと同い年なんだろ? 何で学校に来ないんだ?」
  ヒカリ「あ…そっか、そういえば、そうよね」
  .レイ「…ずっと本部にいたみたい」
.ケンスケ「普通の戦闘待機以外に、何か特殊な任務があったってことか…謎だな」
 トウジ「せやけど、今からでも顔出したらええやないか。ますますイヤミな奴やな」
  ヒカリ「ちょっと、鈴原! やめなさいよ」
  .レイ「違うの、…今は、もういないから」
.ケンスケ「え? よその支部に異動したってことか? …変だな、使徒はここに攻めて
     来てるっていうのに」
 トウジ「何か失敗してトバされたんとちゃうか」
  .レイ「…ううん、…私、この前の作戦で、助けてもらったもの。
     たぶん、…すごく、無理、させた。…みんなにも」
5214/6:2014/04/13(日) 12:10:52.09 ID:???
  ヒカリ「仲間思いの人だったのね、きっと。じゃあ、碇君とも仲、良かったんだ」
  .レイ「…うん」
.ケンスケ「…? そっか、それで最近シンジの奴、妙に元気なかったんだな」
 トウジ「そいつがよそに移ってったから? そないなことで男が暗なるかい」
.ケンスケ「それだけ頼りになる奴だったんだろ。な?」
  .レイ「…うん。すごく、頼りにしてた」
 トウジ「せやったんか…
     何や、シンジも水臭いなぁ。ワシらにまで黙っとることないで、ほんまに」
.ケンスケ「そういう訳にも行かなかったんだろ。
     そのパイロット、話を聞く限りじゃ何か特別な立場にいたみたいだしさ。
     …俺たちに相談もできなくて、あいつとしちゃせめて、ピアノ弾いて紛らわす
     しかなかったのかもな」
 トウジ「何や、難儀やな。エヴァのパイロットでいるちゅうのも」
  ヒカリ「そうね…」

何となく黙ってしまう三人
うつむくレイ

  .レイ「…ピアノも、もう弾かないって言ってた。お兄ちゃん」
  ヒカリ「えっ?」
5225/6:2014/04/13(日) 12:12:07.20 ID:???
 トウジ「何でやろ。別に、ワシらに遠慮する必要もないやんか」
  .レイ「…たぶん、…私が、気にするから。
     それに、一人で弾いても楽しくない、って。…だからもう」

顔を上げ、ほんの少し寂しげな笑みを浮かべるレイ
それぞれに胸を衝かれる三人
黙って歩く一行

.ケンスケ「…ふーむ。
     けどさ、察するに、碇妹はシンジにまた弾けるようになってほしいんだよな」
  .レイ「!」
  ヒカリ「そうね。私ならそう思う。我慢してるのを見てるだけなんて、辛いもの」
  .レイ「…、そう、…そうかもしれない」
 トウジ「せや。要するに元気出してほしい、ってこっちゃな。うーむ、偉い、偉いで!
     妹のカガミやで、ほんまに」

やおら手を伸ばしてレイの頭をぐりぐりするトウジ
目をぱちくりさせるレイ
一瞬危ぶむものの、すぐ笑顔になるケンスケとヒカリ
5236/6:2014/04/13(日) 12:16:53.62 ID:???
 トウジ「よっしゃ、ワシらも何か考えたろ。シンジにまたピアノ弾かせる作戦」
.ケンスケ「そうだな。けど、そんなに簡単にいくか? シンジは自分では弾かないって
     決めてるんだろ。そうじゃないなら、碇妹が頼めば一発なんだろうけどさ」
  ヒカリ「そうね…ねえ、碇さんが一緒に連弾、誘ってみたらどう?」
  .レイ「…駄目、私、弾けないから」
  ヒカリ「あ…」
 トウジ「せやけど、そばで聞いたるだけでも、シンジの奴やる気になるんちゃうか?」
.ケンスケ「それじゃ弱いって。思うに、碇妹は近くで見守るだけじゃなくて、自分から
     何かアクション起こしたいんだろ。シンジとさ、何か、一緒にやりたいんだよ」
  .レイ「…、うん。…でも」
.ケンスケ「シンジが、自分からは弾かないだろうってのがな…難しいかな、こりゃ」
 トウジ「そこを何とかするんやろ! せや、とりあえず今日みたいに、こっそり音楽室
     開けといたる、とか」
  ヒカリ「ちょっと! 気持ちはわかるけど、勝手に特別教室使っちゃだめでしょ。
     それに、毎日帰り遅くなっちゃうじゃない」
 トウジ「そんなんええやん。ちゅうか、今日遅くなったんはそもそも、委員長が
     いつまでもホームルーム長引かしたからやんか」
  ヒカリ「しょうがないでしょ! 合唱コンクール、二年生で自由曲まだ決めてないの
     うちのクラスだけなのよ。あーあ、碇君、伴奏引き受けて…くれないわよね」
.ケンスケ「…ん? そうだ、それだよ!」
 一同「「「?」」」


つづきます
前回書き忘れましたが、シンジが弾いてたのは恐らく Qui veut faire l'ange fait la bete (piano solo)
(Qでカヲルと星空を見てる場面の曲)の簡略版みたいなのです
524名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/04/13(日) 12:50:55.81 ID:???
 シンジ「ごめん、こんなに遅くなって…職員室行ったら、先生に説教されちゃって。
     リツコさんにはメール入れたけど、レイが怒られたら、僕のせいだよな」
  .レイ「…ううん。私も、待ってたもの。自分で、遅れたの」
 シンジ「ありがとう、…でも、やっぱり、ごめん」
  .レイ「いいの。早く、行こ」
 シンジ「うん…、あれ?」
  .レイ「?」

パチンと携帯を閉じて振り返るマリ
生真面目な表情
背景に大きく広がる暮れ方の空

 シンジ「あ…、その、こんにちは」
  .マリ「や。ワンコ君」
 シンジ「…あの、すみません。何か邪魔したんなら、僕たち、すぐ行きますから」
  .マリ「別に邪魔じゃないよ。『妹』さん連れて、仲、いいんだね。ワンコ君は」
 シンジ「……」
  .マリ「ん? 何?」
 シンジ「…、そのワンコ君っていうの、やめてくれませんか?」
  .マリ「あ、嫌だった? じゃあさ、君も敬語使うのやめなよ。他人行儀じゃん、
     タメ年どうしなのに」
 シンジ(同い年だったんだ…)
  .マリ「お? 信じてないね、その目は」
 シンジ「え?! や、別に、その」
  .マリ「…なんてね。
     行きなよ、急ぐんでしょ。それにもうじき、こういうノンキなことはやってられなく
     なるかもよ。この街にいたらさ」
 シンジ「…え?」
  .レイ「…お兄ちゃん、時間!」
 シンジ「あ! …じゃあ、あの、…また」
  .マリ「ほい、行ってらっしゃーい。
     …何だかなー、あれのそばにいてよく平気だよね。…ほんっと、ワンコ君だね」
5251/2:2014/04/14(月) 11:23:37.86 ID:???
  ミサト「あ、シンジ君?
     悪いけど、今日も帰れないわ。そ、仕事。…うん、…はいはい、わかってる。
     じゃ、レイのことよろしく」
  リツコ「何やってるの。北米から次の観測速報、届いてるわよ」
  ミサト「…次の、ったって、似たような内容でしょ」
  リツコ「そうね。これ以上、事故時点の新たな情報は取れないでしょうし」
  ミサト「結局は、あの衛星からの観測データがほぼ全てってことか。…それより例の話、
     ホントになりそうなの?」
  リツコ「…ええ。ここに来て、急に3・4号機関連のデータが開示され始めているの。
     向こうはまだ表沙汰にしたくないようだけど、時間の問題ね」
  ミサト「…物騒なもんはよそに押しつけようって腹が見え見えね」
 加持「痩せても枯れても大国だしな、危ない橋は渡りたくないのさ。
     秘蔵の最新鋭機を譲るってことで、むしろ恩を売ろうとしてるよ。あっちはね」
  ミサト「! 何よ、あんたは部署、別でしょうが」
 加持「つれないなぁ。せっかく非開示のIPEAの対策会議の内容、拾ってきたのに」
  リツコ「もう? 相変わらず仕事が早いわね」
  ミサト「なら早く出して。こっちは忙しいの」
 加持「シンジ君にTELする時間はあるのに? ま、いいさ。
     大筋は現状のまま行きそうだ。ただ、ウチにとって厄介になりそうな懸案がひとつ」
  ミサト「? …あ! まさか」
5262/2:2014/04/14(月) 11:24:33.54 ID:???
  リツコ「…バチカン条約ね。本当、こういう時ばかりは足並みを揃えるものだわ」
  .ミサト「けど何故、今? 3号機の移管手続きも何も、まだこれからだっていうのに」
 加持「それだけ、エヴァは巨大な手駒だってことさ。
     米国が3号機を手放すとなれば、5号機を失って発言権を弱めてたユーロとロシアに
     巻き返しのチャンスができる。加えて、米国もただで日本に戦力をくれてやる気は
     さらさらないってことだ。アジア各国も水面下では同調してるよ」
  リツコ「ユーロがパスを手放さずにいたのは、こういう事態を狙ってたのかもしれないわね」
  .ミサト「ほんと、大した国際協力。…アスカの言ってた通りね」
 加持「で、どうする? 恐らく明日か明後日にも正式な命令書が届くと思うぞ」
  .ミサト「…どうするもこうするも、…事実の通り、伝えるしかないわよ」
  リツコ「本人に直接、ね。いいわ、それ、私が引き受けるから」
  .ミサト「え…いいの? 正直、助かるけど」
  リツコ「どうせ封印作業には立ち会いたがるでしょうしね。その時にでも言い聞かせるわ。
     別に、あの子たちに好かれようと思って仕事してるわけじゃないし」
 加持「…そうか。そういう言い方、リッちゃんらしいな」
  リツコ「それ、褒めてるつもり? 何も出ないわよ」
  .ミサト「リツコ…、ごめん、ありがと」
  リツコ「お互い様。それより、零号機の再就役遅延の件も含めて、戦力の調整は作戦部で
     ちゃんとやっておいてね」
  ミサト「…りょーかい。あっちもこっちも、問題まみれね」
527名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/04/14(月) 12:00:00.29 ID:???
本部ケイジ付近
背後からの足音に振り返るアスカ
駆け寄って息をつくシンジ

 シンジ「アスカ! アスカ、…あの」
 .アスカ「……」
 シンジ「あ…」
 .アスカ「…話、聞いたんだ?」
 シンジ「…うん。…それに、…アスカは、2号機の封印作業にも立ち会った、って。
     皆ひどいよ、勝手に上で話を決めて、自分のエヴァを…封印、するところを
     見させるなんて」

真顔で向き直り、ふっと肩を下げて笑うアスカ
とまどうシンジ

 .アスカ「あんた、馬鹿?
     まさかそれで、かわいそーな私が落ち込んでるとでも思ったわけ?」
 シンジ「え…」
 .アスカ「私たちはパイロット。事実上、軍属みたいなもんよ。どんな形の待機であれ、
     命令には従うのが当たり前でしょ。ほんっと、いつまでも無自覚なんだから」
 シンジ「それはわかってるよ。ただ…アスカは、僕なんかよりずっとエヴァに乗ることに
     真剣で、ひるんだり逃げたりしなくて、…だから」
 .アスカ「要らぬご心配どうもありがとう。ま、赤木博士にもしばらくおとなしくしてろって
     言われたし、この機会にちょーっとラクさせてもらうわよ。…あんたこそ、
     他人の心配より、自分の初号機、ちゃんと確保しときなさいよね」
 シンジ「あ…、うん、…ごめん」
 .アスカ「ほら、さっさと行く。妹は? 定例のハーモニクス検査、そろそろでしょ」
 シンジ「…、うん。それじゃ、…また」

振り返りつつ去るシンジ
見送るアスカ
くるりと背を向けて一人歩き出す
5281/3:2014/04/18(金) 08:52:30.98 ID:???
擬似シンクロによるテスト中の三人
プラグ内のアスカ
手が伸びてコンソールをいじる
プラグ内壁に表示されるエヴァ三機との実機連動データ反映表
2号機の分だけアップデートされていない
見つめるアスカ

 伊吹『テスト終了。今日も問題なし。三人とも、お疲れさま』
  リツコ『レイ、20分後に、零号機右腕の連動試験。これで再接合中の左腕の
     予定パラメータも出すことになってるから、慎重にね』
  .レイ『はい』
 伊吹『シンジ君と初号機の方は、予定より少し遅れてサンマルから開始。場所も
     第12実験場に変わったから、間違えないでね』
 シンジ『はい。…良かった、一緒に帰れそうだね、レイ』
  .レイ『うん』

頭の後ろで両手を組み、横目でやりとりを睨んでいるアスカ
シミュレーションプラグの電源が落ちる
5292/3:2014/04/18(金) 08:53:34.37 ID:???
モニタに表示されたテスト予定一覧
明らかに空白の増えたタイムスケジュールに小さく鼻を鳴らすアスカ

 アスカ「おとなしくしてなさいったって…テスト再開までただ待ってろ、っての?
    …まだ一時間以上あるじゃない。その次は…あさって?! 冗談でしょ」

身をひるがえすアスカ
荒っぽかった足音が次第に鈍る
行き会うスタッフらのとまどい気味の笑顔とあわててつくろったような態度

 アスカ「…手持ちのゲームソフトはあらかたクリアしちゃったし」

無意味にエレベータを乗り継いだ先で立ち止まるアスカ
仮想訓練施設前

 アスカ「…部屋でただ待機してるよりは、ごっこ訓練の方がまだマシだわ」

起動するシミュレータ
設定画面の端に目を留めるアスカ

 アスカ(…そういえば、よく馬鹿シンジと予備人員がここ使ってたっけ)
5303/3:2014/04/18(金) 08:55:42.00 ID:???
 アスカ(あー…何よ、ログインデータくらい消しときなさいよ。
     …うわ、初級メニューばっか。あっきれた)
 アスカ(ん? 何これ、…ああ、シンジと一緒じゃない時の分か。へえ、馴れ合いで
     ここ使ってただけじゃなかったんだ)
 アスカ(なんだ、ログ自体は残ってない。つまんないの…ご丁寧にアカウント初期化
     してあるし…どんだけ神経質なのよ、戦力外の予備人員の分際で)
 アスカ(そこまでされりゃ余計に知りたくなるっつーの)
 アスカ(…なぁんだ。サーバ側にもキャッシュの断片しか残ってない)
 アスカ(けど、最低でもテストレベルくらいは…え?)

文字列を凝視するアスカ

 アスカ(シミュレーション新規構築数、総計13万…?)

反射的に画面を消すアスカ
初期表示を凝視する

 アスカ「…あいつ、ここで一体、何やってたのよ…?」


*シミュレータ→序でシンジが訓練に使ってた頭だけのエヴァみたいなの
5311/5:2014/04/25(金) 09:18:10.37 ID:???
シミュレータ施設から出てくるアスカ
目の前にシンジ
思いっきり動揺する両者
シンジの焦りようを見て先に我を取り戻すアスカ

 .アスカ「…何であんたがここにいるのよ。テスト、とっくに終わってるでしょ」
 シンジ「え、や、…あの、レイの方が長引いて、でも先に帰るほどじゃなさそう
     だったから、それで」
 .アスカ「暇を持て余して、何となくここに来た、って?」
 シンジ「あ…うん。
     …アスカこそ、何やってるんだよ? とっくに帰ったかと思ってた」
 .アスカ「決まってるでしょ、訓練よ、訓練」
 シンジ「え…こんな時なのに? …あ」

失言に表情を曇らせるシンジ
横目で見ているアスカ

 .アスカ「こんな時もどんな時も関係ないの。未更新の仮想データでも、一応
     毎日触っとかないと、勘が鈍るでしょ。それでいざという時対処できなきゃ
     パイロットやってる意味ないじゃない」
 シンジ「あ…」
5322/5:2014/04/25(金) 09:19:14.95 ID:???
 .アスカ「私たちはね、使徒相手の戦争の最前線にいるの。忘れたの?
     常に戦闘待機なのよ。いかに表面上は平穏に見えようと、有事に備えるのに
     やってやりすぎってこたぁないの。当ったり前でしょうが」

視線を落とすシンジ

 シンジ「…そうだよな。
     アスカがそうやって叱るのも当然だよ。いつだって自分のことだけで精一杯だし、
     未熟で、考えも甘い。結局、僕は何もわかってないんだ」
 .アスカ「…なによ、急に」
 シンジ「いや…本当に、その通りだなって思ってさ。
     でもすごいな、アスカは。どんな時でも、自分がやらなきゃいけないことを
     ちゃんとわかってて。それで、やるべきだと信じる通りに、行動する。…すごいよ」
 .アスカ「……
     そんなの当ったり前、でしょ。…あんたも一応選ばれたパイロットなんだから、
     自分の責務くらい、ちゃんと承知しとけばいいのよ」
 シンジ「…自分の、使命?」
5333/5:2014/04/25(金) 09:20:37.49 ID:???
 .アスカ「まあ、言い方はいろいろね。要は周りの期待とか、自分の背負ってるものを
     履き違えないってことよ」

少しそっぽを向いているアスカ
顔を上げるシンジ
気づいて目をやるアスカ

 シンジ「僕はこんな奴だし、自分のことだってどうすればいいのか、まだわからない。
     でも、…僕なんか足元にも及ばないけど、迷わないアスカを見てると、何だか
     すごく、心強いよ。…ありがとう。いつも」
 .アスカ「…なによ」

揺らぐ目を瞠り、強く唇を噛みしめるアスカ
そのまま目をつむって軽く天井を仰ぎ、顔を伏せてふっと息を吐き出す
ただ見守るしかないシンジ

 .アスカ「…ばぁーか。人を勝手に、安心材料にしてるんじゃないわよ。この新米」

いつもの調子に戻しているアスカ
5344/5:2014/04/25(金) 09:21:31.21 ID:???
半ば不安を残して息をつくシンジ

 シンジ「うん。…ごめん」
 .アスカ「ったく、馬鹿ね。つくづく、馬鹿よ」
 シンジ「…うん」

並んで歩き出す二人
視線は交差しないが、笑っている
ふと真顔になるアスカ

 .アスカ「…あんたさっき、何となくあそこに来たって言ったけど、嘘ね。
     わかってんのよ。あの予備パイロットのことでも、思い出してたんでしょ」
 シンジ「…え」
 .アスカ「すぐ顔に出るあんたのことなんかお見通しよ。どうせ妹の前じゃ言いにくいから、
     ああやってこっそり行ってみた。違う?」
 シンジ「…う、ん。こっそり、なんてつもりはなかったけど、…そうなんだろうな」
 .アスカ「仲良し双子の片割れのくせに、いつまでも相手に気ぃ遣っちゃって。ヘンなの」
 シンジ「うん…」

通路の分岐点で立ち止まるアスカ

 .アスカ「そろそろ妹がテスト終わって、上がる頃でしょ。
     私、こっちだから」
5355/5:2014/04/25(金) 09:23:56.61 ID:???
 シンジ「え? でも、アスカももう、帰るんだよね。
     …あの、どうせ上までは同じ道だし、…良かったら途中まで、一緒に」

振り向かないアスカ

 .アスカ「…、こないだの定期健診の結果、請求しに行くの。自分のメディカルデータは
     ちゃんと把握しときたいもの。あんたは妹と帰んなさい」

なおも立ち止まっているシンジ
歩き出すアスカ
肩越しにひらひらと手を振る

 .アスカ「じゃーね」
 シンジ「あ…、うん、じゃあまた、明日」

しばらく見送っているシンジ
やがて背を向けて歩き出す
536名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/04/25(金) 12:10:04.80 ID:???
振り向かないのがアスカらしい
5371/4:2014/04/26(土) 09:45:45.49 ID:???
>>536 ありがとうございます


わざと遠回りの経路を選んで歩くアスカ
適当に選んだエレベータの前で憂鬱そうに待つ
扉が開く
顔を上げるアスカ
正面にレイ

 アスカ「!」
 アスカ(…しまった、いつのまにか実験場の方まで戻ってきちゃってたんだ)
 アスカ(…よりによって…!)

無意識に両こぶしを握るアスカ
扉が閉まりかけて、止まる
開ボタンを押しているレイの手

 アスカ「あ…」

無心にこちらを見ているレイ

 アスカ「…ッ、もう!」

乱暴な足取りで乗り込み、適当な階のボタンを押すアスカ
5382/4:2014/04/26(土) 09:48:28.33 ID:???
低く続くエレベータの動力音
さっさと壁際に移動して隅を睨んでいるアスカ
同じ場所に佇んでいるらしいレイの気配
両肘を抱えさらに顔を伏せるアスカ

  レイ「…エヴァは、人の心の鏡」

きっと目を上げるアスカ
思いがけずこちらに半身を向けているレイの姿

  レイ「生きることの代わりにはなってくれない。
     あなたは、エヴァに映さなくても、あなた。そうあるだけの自分自身を、
     もう持ってる。…もう、認めてあげていいと、思う」

我知らずかっとなるアスカ

 アスカ「何よ、エヴァに乗れない私はそんなに滑稽?!
     人を気遣う真似なんかしないでよ。あんた、自分が嬉しいからでしょ?!
     私がいなきゃ、ダイスキなお兄ちゃんと、二人だけでエヴァに乗ってられるもの。
     ダイスキなお父さんに見ててもらいながらね」
  レイ「…そんなこと、思ってない」
 アスカ「嘘よ!」

衝動のままに詰め寄るアスカ
射るような憎悪の目
退かないレイ
5393/4:2014/04/26(土) 09:49:37.46 ID:???
 アスカ「あんた、いっつもそうやって涼しい顔して…いい子の振りして、心の中じゃ私が
     乗れないの喜んでるんでしょ! いいわよね、あんたとシンジは親の七光りで
     乗り続けられるんだから。そうやってお澄まし人形の顔で、本当は、エヴァを
     降ろされるのが自分じゃなくて良かったって思ってるくせに!」
  レイ「違う、…」
 アスカ「違わないわよ! この人形女!」
  レイ「…私は人形じゃ、ない」
   レイ(……本当に?)

無防備に目を見開くレイ

 アスカ「人形よ! 人に言われたまま動くくせに!
     どうせあんた、碇司令がエヴァを降りろって言ったら何の疑問もなく降りるんでしょ!」
  レイ「…、わからない」

睨みつけるアスカ

 アスカ「ほら! 自分では何も言わない、何も決められないんじゃない!」

見つめ返すレイ
不思議に静かで頑なな表情
5404/4:2014/04/26(土) 09:51:27.67 ID:???
  レイ「…そうじゃない。
     たぶん、私がエヴァを降ろされることはないと、思うから」
 アスカ「…!!」

レイの頬を張るアスカ
打った手の痛みにはじめて目をみはる
階に到着するエレベータ
開く扉
打たれたままの姿勢で顔をそむけているレイ

 アスカ「…、やっぱり、あんた人形よ。
     そうやって人に用意された居場所で、いつまでもお父さんとお兄ちゃんの
     カワイイお人形さんやってなさいよ!」

身をひるがえし足音高く降りるアスカ
そのまま振り向かずその場を立ち去っていく
背後で閉まる扉
アスカの表情が無残に崩れ、両手が痛いほど握りしめられる

 アスカ(…馬鹿シンジには強がって、妹には八つ当たり?
     何やってんのよ、私は…!)
541名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/01(木) 07:37:52.89 ID:???
キャラが良いね
5421/4:2014/05/02(金) 10:48:17.50 ID:???
>>541 ありがとうございます、励みになります


打たれた痕を隠すように顔をうつむけ気味にして歩いてくるレイ
立ち止まり、顔を上げる
正面にシンジ
再び目を伏せてしまうレイ

  .レイ「…ごめんなさい。遅く、なった」
 シンジ「ううん。それより、ほら、見せて」
  .レイ「…え?」

差し出されたシンジの手に濡らしたハンカチ
とまどっているレイの顔にそうっと触れ、赤く腫れた頬をハンカチで冷やすシンジ
一瞬呼吸を忘れるレイ
熱をもっていた頬の痛みが冷たさに吸い取られていく

 シンジ「…、大丈夫? 痛くない?」
  .レイ「…ううん、…気持ち、いい」
 シンジ「そっか…」

やがてハンカチを引き取り、自分で押さえるレイ
そのまま傍に立っているシンジ
5432/4:2014/05/02(金) 10:49:57.83 ID:???
  .レイ「…、どうして…?」
 シンジ「…何となく。…理由なんてないよ、ただ、こうかなって感じただけだから。
     変だよね。ミサトさんの言う、いつもの双子のカンってやつ」

自分の頬を押さえてちょっと苦笑いするシンジ

 シンジ「でも、こういう時は便利、かもね。僕は、…わかれて、良かった」
  .レイ「…お兄ちゃん」
 シンジ「やっぱり、僕らって、どっかで…」
 両者「「つながってる、の」かな」
 両者「「…あっ」」

互いの顔を見合わせ、同時に小さく笑う二人

 シンジ「えっと…、久しぶりに重なっちゃったね、今の」
  .レイ「うん。何だか、…私」
 シンジ「ん?」
  .レイ「……」

こみ上げた感情に胸がいっぱいになるレイ
が、涙は出ない

 アスカ(あんた人形よ! 自分では何も言えない、何も決められない!)
5443/4:2014/05/02(金) 10:51:37.35 ID:???
 アスカ(そうやって、いつまでもカワイイお人形さんやってなさいよ!)
  レイ(私は、人形じゃない)
  レイ(…本当に?)
  レイ(……)

代わりに口をつく言葉

  .レイ「…私は、…お兄ちゃんがもう、エヴァに乗らなくていいように、したい」

声にしてから自分でもたじろぐレイ
聞いているシンジ
少しだけ笑う

 シンジ「…バカだな。僕は、レイと一緒にいる。それに、レイと同じだよ」
  .レイ「同じ?」
 シンジ「いつか作戦の前に言ってたろ。…自分には他に何もない、って。僕だって一緒だ」

ただ見つめ返すレイ

 シンジ「エヴァに乗ってなければ、僕には何のとりえもないし、人のためにできることもない。
     エヴァに乗ってるから、皆だって…父さんだって、少しは僕を見て、…いてもいいって
     認めてくれるんだ。…何も、ないんだ。僕も」

癒えない痛みの覗く表情で微笑するシンジ
5454/4:2014/05/02(金) 10:54:45.05 ID:???
かすかに目を見開くレイ

  レイ(そうじゃない)
  レイ(お兄ちゃんは、違う。私と同じじゃ、ない)
  レイ(…言わなきゃ)
  レイ(……)
  レイ(…なぜ、言えないの)

いつか二人の間の距離がなくなり、触れるか触れないかに寄り添って立っている
ごくわずか支えるようにレイの肩を押さえたシンジの指先
心地よさにただ目を閉じるレイ
一人宙を見据えるシンジ

 シンジ「痛くても、怖くても、もう泣きたくても、…乗るしかないんだ」



先に断っとこう
恋愛話はやりません
あと今後は基本的に新劇通りの展開です(内容は多少変わります)
5461/3:2014/05/02(金) 12:26:37.90 ID:???
深更 部屋で一人ベッドに仰向けになったアスカ
久しぶりにマペットを手にはめている

 人形『ミンナとは、チガーウ。わたしは、トクベツ!』

マペットの顔を見つめているアスカ
頼りない素顔

 アスカ「…小さい頃は、私も知らない私の気持ちをこっそり教えてくれたのに。
    もう、何も答えてくれないのね」

手に馴染んでくたっとなったマペットの生地
何度もつくろった跡のある手や裾
ずっと変わらない人形の顔

 アスカ「…人形も、私の意識の映し。それこそ、鏡みたいなもんか」
  レイ(エヴァは人の心の鏡)
5472/3:2014/05/02(金) 12:28:38.88 ID:???
  声(これからは、お人形よりもっと大きくて、ずっとすごいものが君の自由になるんだよ)
  声(汎用決戦兵器エヴァンゲリオン。その2号機。世界で一番優れた機体だよ)
 アスカ(わあ…、すごい! 赤いのね、アスカみたい!)
 アスカ(これが、わたしの…?)
 アスカ(…そう、世界でたった一つの、私の居場所)
  レイ(生きる代わりにはなってくれない)

目を閉じて顔を歪めるアスカ

 アスカ「うるさいッ! わかってるわよ、んなこと!」

投げ出された手にはまったマペット

 シンジ(すごいな、アスカは。迷わないアスカといると、すごく心強いよ)
 .アスカ「馬鹿。馬鹿…わかってない、全然、わかってないわよ」

横向きになって身体を丸めるアスカ

  リツコ(エヴァは実戦兵器よ。全てにおいてバックアップが用意されているわ)
 伊吹(2号機のパスは未だにユーロが保持しているの。私たちではどうにもならないのよ)
5483/3:2014/05/02(金) 12:29:52.52 ID:???
  ミサト(今後の状況如何では、今話した、仮設5号機のパイロットが協力候補の筆頭に
    上がってくるはずよ)
  ミサト(5号機は、四肢のほとんどを機械で補った仮設機だったしね。そのハンデも
    考えると、パイロットの度胸勝ちってとこかしら)

険しい表情で目を開くアスカ

 アスカ(…もし、ユーロが本気で2号機の再配備を主張してきたら)
 アスカ(たぶん、そいつが2号機に乗ることになる。エヴァを乗り捨てるような奴が)

脳裏に浮かぶ2号機の印象
封印施設に沈んでいく拘束された機体の光景

 アスカ(…何よ。私以外、誰も乗れないはずだったでしょ)
  レイ(零号機なら、私じゃなくても乗れる)
 アスカ「!」
 アスカ「…あの子も、同じか。…同じ、だなんて。…この私が!」

身体を反転させてベッドに突っ伏すアスカ
泣きたいのに涙は出ない
窓の外に巨大な夜


*参考:『破』全記録全集のマペットの設定
549名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/09(金) 08:50:17.77 ID:???
test
550名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/11(日) 15:28:24.29 ID:???
新着きてた
いつも乙
551名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/21(水) 07:47:23.92 ID:???
test2
552名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/24(土) 15:22:57.86 ID:???
  .レイ「何持ってるの? お兄ちゃん」
 シンジ「あ、レイ。これ、加持さんが僕らにって。外回りのお土産だってさ」
  .レイ「…石? 鉱物の、結晶」
 シンジ「そう、紫水晶のかけら。この辺りで採掘された結晶なんだって。
     普段は全然気にかけないけど、考えてみたらさ、火山のすぐ傍にあるんだよね、
     この街って。だからこんな鉱物も採れるし、温泉もたくさん出てる。…別に、
     使徒や僕らとは関係ないし、特に何って訳じゃないけど…なんか、不思議だなって」
  .レイ「それで、そうやってずっと見てたの」
 シンジ「うん…って、なんだ、さっきから見てたんだ。ごめん、気がつかなくて」
  .レイ「ううん。私が、声、かけなかっただけだもの。それ、…少し触っても、いい?」
 シンジ「あ、うん。はい」
  .レイ「…変わった形。結晶が…途中で、交叉してる?」
 シンジ「そう、対称な二方向に成長してきた結晶どうしが、お互いの中に潜り込んで、けど、
     どっちも相手を邪魔せずに交叉したまま成長を続けて、そんな外見になるんだって。
     双晶って言うんだって、加持さんが」
  .レイ「そうしょう?」
 シンジ「うん。双子の水晶」
  .レイ「…ふたご」
 シンジ「そう。全くもう、加持さんはあまり双子双子ってからかわないと思ってたのにな」
  .レイ「ん…でも、綺麗だから、いい」
 シンジ「そっか。…そうだね」
  .レイ「うん」


保守代わりに久々の双子ネタでした
読んでくれた方、ありがとうございます
553名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/25(日) 22:18:51.70 ID:???
水晶とレイって合うね
554名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/26(月) 10:29:54.53 ID:???
>>552
どうせシンジとレイは本当は血は繋がって無いんだろ?
恋愛話にしちゃいなよ。
555名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/30(金) 01:49:43.88 ID:???
555
556名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/05/31(土) 12:17:20.94 ID:???
待機
5571/4:2014/06/01(日) 23:31:30.58 ID:???
読んでくださった方ありがとうございます
もっとがんばらねば

>>554 恋愛はちょっと…
「もしもシンジとレイが双子だったら」スレですから、ごめんなさい


  ミサト「…うん、わかってるってば。うん…そう、こっちも前倒しで考えとくから。
     心配しなくても、起動実験の準備開始前までには結論出すわよ。じゃ」
 加持「…リッちゃんか?
     せっかく久しぶりに二人で飲んでるってのに、忙しいな」
  ミサト「んー。3号機のパイロットが、ね…一応、作戦部として決定しなきゃならないし」
 加持「責任者は君か。いや、ご心労お察ししますよ、葛城作戦部長」
  ミサト「なーに言ってんのよ、ばーか」
 加持「…で、どうする気なんだ? 現行のパイロットを乗せるか、でなきゃ」
  ミサト「次の候補者は見つかってないんでしょ。現状で、誰か一人を選ぶしかないわ。
     単純に考えるなら、2号機が封印されてるアスカにするべきなんだろうけど…」
 加持「彼女が承諾するとは思えない、か」
  ミサト「…そう」
5582/4:2014/06/01(日) 23:33:14.12 ID:???
 加持「しかし、それを説得するのも君の仕事だろ。
     それにあの子は小さい時から優秀だし、優秀でいることにも慣れてる。本部の
     正式な決定になら、個人的感情に流されず従うはずだぞ」
  ミサト「だからなおのこと、なのよね…
     パイロットの最終選抜からずっと…訓練につぐ訓練、連動試験。搭乗者実操での
     機体の最終調整。ユーロ空軍の監督下で行った実証評価試験…あの子は皆、
     自分一人で成功させてきた。2号機とアスカは、一緒に育ってきたようなものなのよ。
     思い入れが強くなるのも無理はないわ」
 加持「まあな。けど、一緒ったってせいぜい…」
  ミサト「充分、でしょ。
     十代初めの多感なあの子たちと、大人になりきった私たちとじゃ、時間の重みが
     まるで違うわよ。…時々忘れそうになるけどね」
 加持「そうだな。だから、アスカは2号機に乗せてやりたい、か…気持ちの上でなら頷けるよ。
     初号機にシンジ君を乗せてるのと同じに」
  ミサト「初号機は違うわ。というより、もはやシンジ君以外のパイロットは考えられないもの。
     彼はもう、動かせないわ」
 加持「実績、経験、何より抜群の適性があるからな」
  ミサト「…本人が望んでいなくても、ね」
5593/4:2014/06/01(日) 23:36:09.50 ID:???
 加持「葛城。
     お前最近、あの子たちに肩入れしすぎだぞ。自分から踏み込みたがってる。
     そろそろ気をつけた方が良くないか」
  .ミサト「…わかってる。
     だけどね、実際にエヴァに乗ってるのはあの子たちだもの。私たちが、エヴァについて
     確実に知ってると言えることがどのくらいある? …私たちは、子供たちの不安定な
     心と意志に、賭けるしかないのよ」
 加持「…それで、例のダミープラグにも難色を示してるわけか」
  .ミサト「当たり前よ。人道的なんて言われても、いきなり導入決定なんて。詳細な内部構造は
     技術局にすら非公開だって聞くじゃない」
 加持「エヴァと同じく、ブラックボックスだな」
  .ミサト「そんなもの信用できないわ」
 加持「子供たちなら、…いや、シンジ君なら信頼できる、か?」
  .ミサト「……」
 加持「葛城。説教したかないが、本当に気をつけろ。
     君は彼に、自分が同い年だった頃に果たせなかったことや、今の夢や、願い、感傷を
     重ねている。彼を取り巻く人間関係が特殊だからなおさらな。だが、彼は君じゃない」
  .ミサト「…わかってるつもりよ。思い知らされるもの、時々」
 加持「同情も度を越すと、よけい重荷を背負わせることにもなる。君はそんなこと望んでる
     わけじゃないだろ。賢いし、自分を律することも知ってるはずだ」
5604/4:2014/06/01(日) 23:40:42.09 ID:???
  .ミサト「ずいぶん持ち上げるじゃない。で、オチは何?」
 加持「…自分の業を彼と同一視するべきじゃない。
     たとえ君が、あの時、世界の終わりを間近で目撃した、ただ一人の人間であってもだ」
  .ミサト「…!」
 加持「……」
  .ミサト「……
     そうね。…たぶん、加持君の言う通りなんだわ。…私はまた、シンジ君を自分の道具と
     して見てるのかもしれない。…そう望んでるわけじゃなくても」
 加持「葛城…」
  .ミサト「……」
 加持「…すまないな。せっかく、久しぶりに二人だってのに」
  ミサト「何よ、今さら。…構わないわ。それにはっきり言ってもらえて、かえって良かったもの。
     …ありがとう。今日、誘ってくれたこともね」
 加持「…いや」
  .ミサト「ほーんと、変わらないわね、そういうとこ。…昔と同じ」
 加持「思い出すかい?」
  .ミサト「ん、ちょっちは、ね。…さ、難しい話はここまでにして、パーッと呑みましょ」
 加持「はいはい。お手柔らかに頼むよ」
5611/9:2014/06/04(水) 00:36:29.59 ID:???
壱中 学課後のホームルーム
ざわつく教室
鬱屈した表情で頬杖をつくアスカ

 アスカ(今日も、昨日と同じ一日)
 アスカ(最前線から外されて、毎日毎日、形だけの待機。もし使徒が来ても、上の決定が
     覆らなきゃ出られない。本部に行ったところで、機体内待機すらできない)
 アスカ(…今度は私が予備人員か)

   アスカ(ところで、あの二人の機体相互換試験。私は、参加しなくていいの?)
    ミサト(どうせアスカは2号機以外、乗る気ないでしょ)
   アスカ(そりゃそうよ。制式タイプでもない開発途上の機体なんて)

 アスカ(…うそばっか。
     制式型だろうが最新鋭だろうが、他のエヴァになんて乗りたくないんだ、私)
 アスカ(…他の、エヴァなんて)
5622/9:2014/06/04(水) 00:37:59.90 ID:???
   ミサト(北米第一支部に残されていたエヴァ3号機の処置についてだけど)
   ミサト(正式に、この本部へ移籍される決定が下ったわ。近日中に日本に空輸されて、
      ここか、MAGI2号のある松代で起動実験を行う予定よ。…現状では、レイか
      あなたのどちらかを、新たにパイロットに任命することになると思うから)
   ミサト(そのつもりで、考えておいてね)
  アスカ(何よそれ、どういうことなのよ)
  アスカ(どうして向こうの都合で押し付けられた機体に、現実に任務を果たしてる私たちが
      付き合わなきゃならないのよ! 2号機を封印してまで!)
  アスカ(私たちは使徒を倒してるのよ。
      私にも2号機にも、落ち度なんて何もないじゃない!)
   ミサト(でもそれが国連の、つまりは国際社会の出した判断なのよ。受け入れがたくてもね)
   ミサト(いい、アスカ。私たちは人類全てのために戦っているの。それを、忘れないで)
5633/9:2014/06/04(水) 00:39:09.97 ID:???
 アスカ(…天才って呼ばれるのが当たり前だった)
 アスカ(何でも一人で結果を出してきた。選ばれるだけの成績を残してきた。ずっと昔から。
     皆に認めさせてきた。この先も、何があったって一人でやれるんだって信じてた)
 アスカ(…けどやっぱり、エヴァあっての、今の私なんだ)
 アスカ(私の一番の価値は、2号機に乗ること)
 アスカ(だから、か。機体から離されただけで、こんなにも身動きとれない。何も、できない)

   レイ(あなたは、エヴァに映さなくても、あなた。そうあるだけの自分自身を、もう持ってる)

 アスカ(…そんなんじゃないわよ、私は)
 アスカ(…何ができる、この私に。…2号機なしの私に)

注意散漫な生徒たちへ声を張り上げているヒカリ
黒板には『校内合唱コンクール対策緊急HR』の文字

 ヒカリ「皆、真面目に聞いてください! 今週中に自由曲決めなきゃいけないのよ!
    うちのクラスだけなんだから、まだ提出してないのは」
5644/9:2014/06/04(水) 00:41:22.09 ID:???
 女子「けどさ、合唱の曲なんてどれも変わり映えしないじゃん」
 女子「何か無難なのでいいよー。今さらコンクールで上位狙えるなんて思えないし」
 男子「出遅れたよな、完全に。無理無理」
 男子「ていうか、委員長はともかく、何で相田が前にいるんだよ?」

ヒカリの隣に立っているケンスケ
おもむろに眼鏡を直す

.ケンスケ「皆の言う通り! 確かにうちのクラスは出遅れてて、しかも残り時間は少ない。
     この現状を打開するには、何か短期間にできて、なおかつ相当インパクトのある
     決め手が要るわけだ。…そこで、提案がありますッ!」

ぽかんと聞いている一同

.ケンスケ「曲はごく普通の、すぐ仕上がるやつを選ぶ。その代わり!
     伴奏はテープの録音じゃなくて、ピアノの生演奏で行う。それと曲の終わり際、
     サビをワンコーラス増やして、女子一人に、ソロで歌ってもらいたいと思います!」
5655/9:2014/06/04(水) 00:42:32.41 ID:???
.ケンスケ「伴奏のピアノは、もうシンジに内諾とってあるから大丈夫。
(シンジ「ちょっ、えっ、そんなの全然聞いて…」トウジ「しーっ、男やったら潔く引き受けんかい!」)
     そしてそのピアノと息をぴったり合わせた歌声を披露してもらうべく、ソロ担当には、
     碇いも…碇レイさんを推薦しますッ!」

騒然となる教室

 女子「えーっ、碇君てピアノも弾けたんだー!」 女子「すごーい」 女子「多才ー!」
 男子「おいおいおい何考えてんだー!」 男子「双子の連携でアピールするわけか?」
 男子「ウケ狙いに走りすぎだって」 男子「いいじゃん、双子がいるクラスなんてウチだけだし」
 女子「でもちょっと待って。碇さんて…歌えるっけ?」

レイに集中する視線
緊張した面持ちのレイ
意を決したようにきゅっとこぶしを握り、口を開く

  .レイ「…練習、します。…できるように、なるまで」

少しの間の後、一気に盛り上がるクラス
5666/9:2014/06/04(水) 00:43:50.44 ID:???
 男子「マジで!」 男子「行けるだろ! これ!」 女子「碇さんいいとこあるじゃん!」
 女子「うん、見直した」 女子「がんばりたくなってきたかも!」

ほっとした表情のヒカリ
教室の前後でVサインを交わすケンスケとトウジ
レイの言葉に一番おろおろしているシンジ
横目で睨むアスカ

 アスカ(…また双子? 何よ、お決まりのパターン。どうせ組むのはあの二人よ)

突然立ち上がる男子数名

 男子「ちょっと待ったぁ!」 男子「異議あり!」
.ケンスケ「へっ?」
 男子「女子ソロでアピール狙うなら、ここはおとなしめの碇サンよりも、学年…いや
     学校一の美少女として名高い、式波・アスカ・ラングレーさんを推薦する!!」
5677/9:2014/06/04(水) 00:45:15.37 ID:???
蜂の巣をつついたようになる教室
全員の注目を浴び、一拍おいて状況を理解するアスカ
素直に驚きの表情

 男子「うおー!」 男子「なるほどぉぉ」 男子「いや、絶対その方がいいって!」
 女子「はあ?!」 女子「何それ、台無しじゃん!」 女子「ウケ狙いとか言ってたくせに」
 女子「…ていうか、式波さん、やるの? こういうの」
 男子「あっ…」
 女子「そうだよね。式波さんていつも一人だし」
 女子「学校来るのも仕方なくらしいし。こういう行事とか、嫌いなんじゃないの」
 女子「私ら一般人とは付き合いたくないんでしょ」 男子「何言ってんだよお前ら」
 男子「いつも一人なのは碇サンの方だろ」 女子「えー? 最近は鈴原たちと話してるじゃん」

予想外の展開に対処できずにいるケンスケ
アスカを気にするヒカリ

 ヒカリ「アスカさん、その…もちろん、無理だったら別に、いいのよ。忙しいと思うし」

真顔になって頬杖の手を下ろすアスカ

 アスカ「…、別にいいけど。やっても」
5688/9:2014/06/04(水) 00:47:11.28 ID:???
一気にお祭り状態になる男子一同
愕然とするトウジとケンスケ

 トウジ「いやいやいや、何言うとんのや、式波」
.ケンスケ「ま、まあ、落ち着けって。勢いで決める必要なんかないって」

だんだん不機嫌な顔になるアスカ

 .アスカ「何よ。この私がやるって言ってんのよ。文句あるわけ?」
 トウジ「や、その、そない言うとるわけじゃ」
 男子「そうだよ、せっかくやる気になってくれたんだから水差すなよ」
 男子「だいたい相田、お前が言い出したんじゃん」 女子「それは双子で組む話でしょ?!」
  ヒカリ「ちょ、ちょっと、皆落ち着いて」
 トウジ「おい、どないするんやケンスケ?! 碇妹にやってもらうはずだったやろ。こんなん
     話がぜんぜんちゃうで」
.ケンスケ「どうするったって…、…、くそっ」

焦ったあげく、いきなりバン!と教卓を叩くケンスケ
5699/9:2014/06/04(水) 00:49:12.64 ID:???
.ケンスケ「…ぅわかったっ! じゃあ二人に、実際に歌ってもらって決定する!
     今週末の放課後、音楽室でシンジの伴奏と合わせて皆の前でオーディションして、
     クラス全員の投票でどっちか一人を選ぶ! ついでに曲もそれで決める!
     以上! 異論は却下する! 文句あるか?!」

一瞬の沈黙の後、盛り上がりすぎて収拾不能になるクラス
気が抜けたようになっているケンスケ
唖然としているヒカリ
唇を引き結んでいるアスカ
レイを見るシンジ
正面を向いたまま少しうつむいているレイの背中



ミエミエでベタベタの展開ですみません
570名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/06/11(水) 21:04:50.92 ID:???
うっわ相変わらず糞うっぜぇな
わかってたけど改めて言うわ
マジでキモい
571名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/06/13(金) 18:03:46.42 ID:???
>>569
いつも乙です
次も待ってます
572ギンコ ◆BonGinkoCc :2014/06/15(日) 05:17:01.92 ID:???
レイ蔵庫

魂を入れる前の綾波を安置しておくための冷蔵庫だな。
常温の環境で置いておくと、腐ってしまうので、大きな冷蔵庫に入れておく。
573554:2014/06/15(日) 09:55:29.76 ID:???
>>557
やっぱりガチで双子なんだ…なら仕方ない、応援してるよ♪
574名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/06/18(水) 11:58:08.92 ID:???
>>570
極度のツンデレW
5751/4:2014/06/19(木) 08:33:03.93 ID:???
レスくださった方、本当にありがとうございます
進行遅くて申し訳ありません…



下校途上
浮かない表情のシンジを説得するケンスケ、トウジ

ケンスケ「…勝手に決めちまったのは謝るよ。何かアイディアないかって委員長に
    泣き付かれちゃってさ、他に即効性のある方法、思いつかなかったんだよ…
    それは、ほんと悪かった。だけどお前たちをダシにしたかった訳じゃないんだって。
    …この通りだから、なあ、頼むよ、適任者はシンジと碇妹しかいないんだって」
 トウジ「気ぃ悪くしたんなら、ワシもこの通りや。すまん、頼まれてくれ! シンジ!」
 シンジ「……
    そんなに改まって頭なんか下げないでよ。大丈夫、やるからさ」
 トウジ「ほんまか!」
ケンスケ「すまん! ほんと助かるよ。はぁー、これで肩の荷が半分下りたよ」
 シンジ「だから、そんなにかしこまらなくたっていいってば。大体、しばらく弾いてないから
    ちゃんと本番までに仕上がるかどうかわかんないよ。…そんなので、良ければ」
5762/4:2014/06/19(木) 08:34:18.40 ID:???
.ケンスケ「いいっていいって、まずは引き受けてくれなきゃ始まらないしさ。それに、几帳面な
     シンジのことだしさ。俺らが心配しなくてもばっちり形にしてくれるって」
 シンジ「…えっ」
 トウジ「いやー、やっぱりワシが見込んだ漢や! 頭下がるで、ほんま」
 シンジ「え、ちょっと、…もう、勝手に盛り上がるなよな。
     …そういえば、よく引き受けたな、レイ。皆の前で一人で歌うなんてこと」
.ケンスケ「だよな。今も、委員長や式波と一緒に残って、曲決めしてるんだろ。いやー、
     ほんっと意外だよ、こんなにクラスのために協力してくれるなんて」
 シンジ「うん…」
 トウジ「何や、心配せんでええって。今回はそもそも…」
.ケンスケ「! おいっ」
 トウジ「あっ、…い、いや、今の、なしや。なし!」
 シンジ「?」
5773/5:2014/06/19(木) 08:35:19.50 ID:???
ケンスケ「っと、何ていうか、やっぱ協力したいって思ってくれたんだろ。双子として。
    ま、つくづくこういう時は息が合うよな。お前らって」
 シンジ「…、うん」
 トウジ「何や、珍しく歯切れ悪いな」
 シンジ「え…そう、かな。…あ、それじゃ、僕はここで」
ケンスケ「ん? ネルフ本部行くのか? 今日、何かテストだったっけ」
 シンジ「違うよ、ピアノ。本部に器楽室があるんだ。…学校の音楽室で一緒にやったら、
    どうせ皆『妹に肩入れしてる』なんて言うだろ。レイのことは委員長に頼んできたし、
    候補の楽譜も受け取ったし、僕も練習始めておこうかなって思ってさ」
ケンスケ「そっか…いや、ほんと、感謝するよ。シンジ」
 シンジ「だからもういいってば。じゃ、また明日」
 トウジ「おう、頼むで」
5784/5:2014/06/19(木) 08:36:14.02 ID:???
 トウジ「…いやー、ひとまず順調に発進やな。式波は委員長が何とかしてくれるやろし。
     何や、そない深刻そうな顔して。シンジも無事引き受けたやないか」
.ケンスケ「それは良かったけど、さ。
     …あいつ、もしかしてもう勘づいてるんじゃないかな。今回の話が、俺らじゃなくて
     碇妹から始まったってこと」
 トウジ「いやいや、ちゃうやろ。そうならとっくに何か突っ込んできとるって」
.ケンスケ「なら、いいんだけどな…」
 トウジ「何や。別に、心配することないやろ。他でもない自分の妹のこと、後からどうこう
     文句並べるような奴ちゃうで、シンジは」
.ケンスケ「そりゃわかってるって。…たださ、俺たち、あいつらが双子だってこと、当たり前に
     考えすぎてないかって思うんだよな。あいつらって、それこそ式波がよくからかってる
     みたいに、何でもお揃いとか、一心同体って訳じゃ、ないんじゃないかな。
     特に最近、なんかさ…あいつと妹とが、ちょっとずつ、ずれて来だしてる気がしてさ。
     引っかかるんだよ、何となく」
 トウジ「何言うとんのや。そんなん当たり前やん」
5795/5:2014/06/19(木) 08:38:53.18 ID:???
 トウジ「いくら双子言うたかて、シンジはシンジ、妹は妹やろ。
     ワシらが脇でゴチャゴチャ言う方があいつらも気にするやろ。心配要らんて、
     今朝も教室入ってきて、いつも通りユニゾンで『おはよう』言うてたやんか」
.ケンスケ「…そうだよな。そういや、シンジと一緒だからなかなか気づかなかったけど、碇妹も
     いつのまにか普通に挨拶、するようになってたんだよな」
 トウジ「そやろ。…うむ、兄貴の偉大さやな。うんうん」
.ケンスケ「そういう話かー? …ん? 誰だ、あれ」
 トウジ「見かけん制服やな」
  .マリ「…yeah. I'll get off this time. So, you promiss 02 PASS secure. OK?」
.ケンスケ「なんだ? 外人?」
 トウジ「けっこう目つきキツそーやな。…せやけど、ええチチしとるな」
.ケンスケ「…それは同意する」
  .マリ「ん?」
 トウジ「うわっ、こっち見よった」
  .マリ「なーに? あんまりジロジロ見てると、見物料もらうよー?」
.ケンスケ「やべっ、気づかれてるし」
  .マリ「ん…? 君たち、もしかしてワンコ君の友達?」
.ケンスケ「は?」
 トウジ「なんや? ワンコ?」
  .マリ「へえー、そっか。ふーん」
 トウジ「な、何なんやこの女」
  .マリ「気楽な暮らしってのも良さそうだね。んじゃ、しっかり謳歌しなよ、最後の日常!」
 トウジ「…行ってもうた」
.ケンスケ「何なんだ、一体」
580名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/06/19(木) 17:39:27.57 ID:???
マリw
5811/4:2014/06/20(金) 23:58:38.26 ID:???
壱中 放課後の音楽室
曲選びしているアスカ、ヒカリ、レイ
机いっぱいに広げられた中高生向け合唱曲譜面集や音楽の教科書
コンポの前で候補曲のCDを入れ替えているヒカリ
退屈しきった顔のアスカ、本を放り出して伸びをする

 アスカ「あー…っ、もう、どれもこれも似たような曲ばっか。嫌んなってきた」
  ヒカリ「うーん…確かに、そうよね。…ごめんね。碇君の負担とか、皆の練習の都合も
     考えると、伴奏が簡単そうな曲しか候補にできなくて」
 アスカ「んー。わかってる、それは」
  ヒカリ「やっぱり、無理…かも、ね。こんな急な話」
 アスカ「何よ、別に降りるなんて言わないわよ。
     一度やるって言っちゃったし。…他ならぬヒカリが困ってるんだし。ちっとや
     そっとで、この私が投げ出さないわよ」
  ヒカリ「えっ…? うん…あっ、でも、だからってアスカさんが無理することないの、
     引き受けるって言ってくれただけで、私は嬉しいし。…本当に、ありがと」
 アスカ「いいってば。始まる前から礼なんか言われちゃ、調子狂うでしょ。ヒカリは全然
     気にしなくていいの。第一、今やめたら試合放棄になるじゃない」

横目でレイを見やるアスカ
5822/4:2014/06/21(土) 00:00:32.90 ID:???
開いたページに黙って見入っているレイ
アスカの結んだ唇に力がこもる
二人の方へ戻ってくるヒカリ

  ヒカリ「次はどうする? …あ! もしかして碇さん、決まったの?」
  レイ「…、うん」
 アスカ「えっ!」

慌てて目を逸らし、ばたばたと席を移るアスカ

  ヒカリ「どうしたのアスカさん?!」
 アスカ「見ない! 見ないわよ、私」
  レイ「…どうして?」
 アスカ「そんなの当たり前じゃない! こんなことでも一応勝負なんだから、お互い
     曲目は当日本番まで秘密! 練習も別! 当然でしょうが」
  レイ「…? わかったわ」
  ヒカリ「え、えと、じゃあ碇さんは、この曲でいいのね?
     わかったわ。そしたら職員室まで行って、楽譜をコピーしてこないと」
  レイ「あ…いいの、自分で、行けるから」
5833/4:2014/06/21(土) 00:03:07.09 ID:???
  ヒカリ「そう? じゃ、自分のと、碇君の練習用と、二部ね。先生には言ってあるから」
  レイ「わかった、ありがと」

見送って振り返るヒカリ
合唱曲集に首を突っ込んでいるアスカ
不機嫌そうに顔を上げる

 アスカ「…行った?」
  ヒカリ「う、うん」
 アスカ「…はぁー」

ばたんと机に突っ伏すアスカ
おろおろと寄るヒカリ

  ヒカリ「だ、大丈夫?」
 アスカ「…わかんない。
     こんなの、やったことないもの、私。なーんか落ち着かないっていうか、
     何しても手応えがないっていうか…変な気分。…あーあ、傍から見れば
     笑えるわよね、今の私」
5844/4:2014/06/21(土) 00:05:25.06 ID:???
 ヒカリ「そんなことないわ。一生懸命協力してくれてるんだもの」
 アスカ「そっかな…」

机の前にしゃがんで、顔を上げたアスカと視線を合わせるヒカリ

  ヒカリ「そう! 全然、おかしくなんかない!」
 アスカ「ひ、ヒカリ? 何?」
  ヒカリ「決めたの! 私、委員長だからほんとは中立じゃなきゃいけないんだけど、
     こうなったら断然アスカさんを応援する! 絶対、皆も、その方がいい結果
     出せると思うもの」

乗り出すヒカリ
大いにとまどうアスカ

 ヒカリ「ね! だから、一緒にがんばろ!」
 アスカ「…え、んと、…うん」

笑顔になるヒカリ
つられて少し笑うアスカ
音楽室の窓に夕陽
585名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/06/24(火) 17:41:39.18 ID:???
アスカとヒカリいいね
5861/3:2014/06/27(金) 10:06:56.27 ID:???
>>585 ありがとうございます


葛城家 夕食後
エプロンつけて後片付けを始めるシンジ 足元にペンペン
手伝おうと傍に寄るレイ
振り向いて笑うシンジ

 シンジ「いいよ。今日は洗う皿も少ないし、すぐ終わるから、大丈夫。
     レイは先にシャワー浴びちゃって」
  .レイ「…、うん、わかった」

食器洗いにかかるシンジ
ふと、もう一度振り返る
まだそこに佇んでいるレイ 足元で見上げるペンペン

 シンジ「…、どうしたの?」
  .レイ「…あ」
 シンジ「何か、言い忘れたこと…?」
  .レイ「……」
 シンジ「…そうだ、…あの、本当は僕も」
  .レイ「! なに?」
 シンジ「あ、…いや、その」

黙り込んでしまう二人
お互い視線を預けていられずにうつむく

 シンジ(…言えないよな)
 シンジ(…今日、全然、弾けなかった。
     鍵盤にさわることもできなかった。ただ黙って座ってるだけなんて、…エヴァに
     乗ってる時より、ずっと悪い)
5872/3:2014/06/27(金) 10:08:30.41 ID:???
 シンジ(でもそんなこと言えない。…今さらできないなんて。それも、自分の気持ち
     ひとつ、どうにかできないっていう、理由にもならない理由で。だってレイは)
 シンジ(レイは、…僕がこんなふうに行きづまってるのわかってて、何とかしたくて、きっと
     自分から言い出したんだ。皆の前で歌うなんてこと。
     できないよ。言えない。レイが悲しそうな顔をするところを、見たくなんかない)
  .レイ(…言わなきゃ)
  .レイ(…楽譜。
     お兄ちゃんの分。預かってきてるの、渡さなきゃ。…帰ってから気になってるのに、
     まだ、カバンから出せない。
     なぜ動けないの、私。…いえ、本当はわかってる。お兄ちゃんは喜んでいないから)
  .レイ(私、また余計なことしようとしてるのかも、しれない。
     …間違ってるかもしれない。…わかってるのに、やめたいと思ってないもの。
     あんなに楽しそうだったピアノを、お兄ちゃんがまた笑って弾くところ、見たいもの)

沈黙のあと、意を決して顔を上げる二人

 両者「「…あの」」
ペンペン「! クーッ、クワッ!」
5883/3:2014/06/27(金) 10:10:33.77 ID:???
いきなりドアの開く音、続いて乱暴に玄関に上がる音
すっとんでいくペンペン
同じ表情できょとんと向き直る二人

 ..ミサト「たっだいま〜。やっと着いたー…んもう、ほんっと嫌んなるわ」
 シンジ「え、あの、ミサトさん、どうしたんですかそれ」
  .レイ「…すいか?」
 ..ミサト「そ、スイカ。加持のご自慢の。ったくもうあの馬ッ鹿、人の都合なんか全然
     考えないんだから。前に、二人がおいしいって食べてくれたから、ですって。
     だからって女にこんなでかいもん持たせるー? ああもう全身汗だく、悪いけど
     先にシャワー浴びるわ。あ、ゴメン、これ、何とか冷蔵庫に入れといて」
 シンジ「ええ?! でもあの、こんなの」
 ..ミサト「あ! 一応軽く入れてきたから、晩ご飯はいいわ。じゃ、あとよろしくねん」
 シンジ「えっ? あ、ちょっと、…もう」

取り残される二人、およびスイカ
歩み寄るレイ

  .レイ「…入る? 冷蔵庫」
 シンジ「うーんと、…とにかく、やってみないと」
  .レイ「ん。私も、手伝うから」
 シンジ「あ…うん、…あの、ありがとう」
  .レイ「…、いいの」
ペンペン「クワックワッ、クーッ! クーッ!」
  .ミサト「あっ、コラッ、ペンペン! 入ってきちゃ駄目でしょー! ちょっとッ、あーッ」
 シンジ「……」
  .レイ「……」

どちらからともなく目が合い、一緒に小さく笑い出す二人
589名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/06/27(金) 17:28:02.53 ID:???
ほのぼの
5901/7:2014/06/27(金) 22:48:31.11 ID:???
風呂上がりのミサト
リビングに入って微笑する
互いの頭をくっつけるようにして斜めの川の字に寝転がっているシンジ、レイ、ペンペン
視線に気づき、本を閉じて起き上がるレイ
振り返ってシンジを促す
はっとして目を開け、照れ顔でイヤフォン外すシンジ
もう一度にっこりするミサト

 シンジ「…あの、すみません。なんか、半分寝ちゃってたみたいで」
 ..ミサト「いいのいいの。っていや、良くないか。こんなとこでうたたねしちゃ二人とも
     風邪引くわよ。さ、眠いなら部屋に行ってー。それともお風呂?」
 シンジ「あ、はい。レイ、入ってきちゃいなよ」
  .レイ「ううん。お兄ちゃん、先に」
 シンジ「え? でも…」
  .レイ「先。眠そう、だもの」
 シンジ「う…、わかった。ごめん、じゃ、急いで入ってくるから」
 ..ミサト「はいはーい、行ってらっさい。…
     ん? レイ、どしたの?」
  .レイ「……」

いったん自室に消えるレイ
ややあって、少しきまじめな表情で戻ってくる
胸に抱えた譜面
きょとんとするミサト
5912/7:2014/06/27(金) 22:50:30.57 ID:???
カーペットの上に腰を下ろしたミサトとレイ

  ミサト「…なるほど、ね。
    合唱コンクールのソロの役を、アスカと競うって…こりゃえらいことに立候補したわね」
  レイ「…、やっぱり、おかしい、ですか」
  ミサト「ううん、違う違う。
    レイも積極的になったなって思っただけ。いいことよん。自信持ちなさい」

ミサトの太鼓判に、うつむいてほのかに微笑むレイ
自分も笑顔になるミサト
両足投げ出して大きく息をつく

  ミサト「…そっかー。
    シンジ君の伴奏で、レイが歌う、か…ここに来た頃の二人からは、ちょっと
    想像できなかったわ。けど、それもきっと、二人でだからできるのよね。
    あ、それ、楽譜? それもレイが選んだのよね。ちょっち、見せてよ」
  レイ「…、はい」
  ミサト「どれどれ…おおー、往年の名曲ぅー。なかなか堅実な選択したじゃない、レイ」
  レイ「そう…ですか」
  ミサト「そ、すっごくいい曲よん。私もね、小学生の頃なんかは学校でこれ歌ったわー。
    って言っても、もうずいぶん昔の話だけどね」
  レイ「…むかし」
  ミサト「そう。セカンドインパクトが起こる前の、平和な頃のお話。…
    ところで、これ、いいの? シンジ君より先に私に見せちゃって」
5923/7:2014/06/27(金) 22:52:14.45 ID:???
  レイ「…あ、…、お兄ちゃんには、これから」
  ミサト「そ。一番を譲ってもらっちゃったのね。ありがとね」
  レイ「…、ミサトさんには、話しておきたくて。…いつも心配かけてるって、お兄ちゃんも」

瞬間、険しい表情で息を呑むミサト
瞬きするレイ

  レイ「? あの」
 ミサト「……レイ?
    今、…あたしのこと、『ミサトさん』って呼んだ…? 呼んだわよね?」
  レイ「えっ…、!!
    …お兄ちゃんのが、移っちゃった、のかな…? ごめんなさい」
 ミサト「違う違う! うそっ! ありがとー、レイッ!」
  レイ「きゃ」

思いっきりレイを抱きしめて頬ずりするミサト
ただびっくりしているレイ
タオル片手に戻ってくるなり呆れ顔になるシンジ
放り出された楽譜に気づく
はっとするレイ が、身動きが取れない
5934/7:2014/06/27(金) 22:54:35.98 ID:???
  .レイ「あ…、それ」
 シンジ「…、よかった」
  .レイ「え?」

軽く息を吸い込んで、はにかんだ笑顔を見せるシンジ

 シンジ「この曲ならそんなに難しくないから、きっと間に合わせられると思う。…ううん、
     絶対、間に合わせるよ。練習する。
     だから、…良かったな、って」
  .レイ「…、そう」
 ..ミサト「結果オーライじゃない、レイ。シンジ君もね」
 シンジ「…はい」

ふーっと肩の力が抜けるレイ
抱きすくめて頭をぐりぐり撫でるミサト
くすぐったそうに見上げるレイ 少し笑う
二人を見つめるシンジ
ほんの少し、溜息をつく
足元で小さく鳴くペンペン
5945/7:2014/06/27(金) 22:55:57.65 ID:???
翌朝
壱中 2-Aの教室
登校するなり睨みつけるアスカ
面食らっているシンジの前に大股に近寄り、紙束を突き出す

 .アスカ「ん!」
 シンジ「…は?」
 .アスカ「…楽譜! 合唱の! 
     昨日ヒカリと残って決めたの。今朝、渡すって話だったでしょ!」
 シンジ「あ、うん…って、これ…?」

仁王立ちのアスカの後ろから顔を覗かせるヒカリ

  ヒカリ「そうなの。結局、こんなことになっちゃって…でも、碇君の負担は軽くなるし、
     いいかも、って」
 シンジ「そりゃ、僕は助かるけど…いいの? これで」
5956/7:2014/06/27(金) 22:57:03.32 ID:???
 .アスカ「何をこそこそやってんのよ。この私が自分で厳選した曲目に文句あるわけ?」
 シンジ「そうじゃなくて、…これ、レイが選んだ曲と同じなんだ」
 .アスカ「え」

ヒカリを見るアスカ
申し訳なさそうに頷くヒカリ

  ヒカリ「うん、そうなの…」
 シンジ「あ…もしかして、同じにしてくれたのかな。皆が練習しやすいようにって」
  ヒカリ「えっと…ううん、別々に決めたはずなんだけどね…」

固まっているアスカ

 トウジ「黙ってもうたな」
.ケンスケ「よっぽど自信、あったんだろうな」
 トウジ「せやろな。絶対、碇妹よりいい曲選んだろ思てたんやろ」
.ケンスケ「ま、けど無理もないさ。簡単かつ舞台栄えのする曲なんて、しょせん限られてるし」
 トウジ「かぶってもしゃあないわな。この場合、逆にラッキーやないか」
 アスカ「……うるッさいわね!!」
5967/7:2014/06/27(金) 22:58:53.57 ID:???
 .アスカ「だから何よ?! 一度決めたものを翻すほど軟弱じゃないわ! もうこれで決定、
     いいわね!!」
 シンジ「? うん」
 一同「うおーっ」「まさかの展開じゃん」「ほんとにやるんだ!」「いーねー、対決っぽい」
    「じゃ、曲これで決まりか?」「うちらも先に練習できるね」「よかったぁ」

教壇に上がって一同を見渡すケンスケ

.ケンスケ「それじゃあうちのクラス、自由曲は『翼をください』に決定っ!
    それと、音楽の先生の許可とってきた! 予定通り金曜放課後、音楽室にて
    オーディションと投票! やるぞ!!」
 一同「おー!」「いえー」「盛り上がってきたー!」
 .アスカ「…ふん、何よ、いちいち大げさね」

楽譜をシンジに押しつけ、自分の席に戻って勢いよくすわるアスカ
振り返るシンジ
少し離れたところに佇んでいるレイ


>>589 ありがとうございます
何という低速進行…どこまで行けるやら、がんばります
5971/7:2014/07/05(土) 01:32:22.91 ID:???
本部器楽室
ピアノの前に座ったシンジ
楽譜を睨んで何度も試みるが、そのたびに弾きあぐねて溜息をつく

 加持「なかなか苦戦してるみたいだな」
 シンジ「…うわっ?!」

振り向いて、大きめに息を吐くシンジ

 シンジ「…もう、おどかさないでくださいよ。いつからそうやってたんですか」
 加持「いやいや、ついさっき来たばかりだよ。
     で、どうした。久しぶりにピアノの前にいると思ったら、難しい顔して。
     …弾きたいけど、どうにも気が乗らないって様子だな」
 シンジ「…何でもお見通しなんですね、加持さんて」
 加持「そんなことないさ。ま、そう見えるとしたら、仕事柄、かな」
 シンジ「仕事って…そういえば、加持さんはここで、ネルフで何してるんですか?
     ミサトさんともリツコさんとも別行動みたいだし」
 加持「ふむ。君こそよく見てるじゃないか。他人のこと」
 シンジ「! あ…すみません、そんなつもりじゃ」
 加持「いいさ。胡散臭い存在なのは承知の上だよ。それも結構面白いもんだぞ」
 シンジ「え…、もう、何なんですか、一体。
     僕なんかかまってないで、それこそ、仕事しなくていいんですか? 大人なのに」
 加持「してるさ。これも俺の仕事のうちだからな」
 シンジ「…えっ?」
 加持「それより、どうだ? 気分転換に土いじりでも」

とまどうシンジに、手にした缶コーヒーを振ってみせる加持
5982/7:2014/07/05(土) 01:33:25.32 ID:???
ジオフロント 加持のスイカ畑
地上から集光された陽射しの下、雑草取りにいそしむ二人
息をついて額の汗をぬぐうシンジ
振り返ると同じようにしゃがんだ加持の背中

 シンジ「あの、…そう言えば、この間、ありがとうございました。スイカ、頂いて」
 加持「ん? ああ、葛城が、断りなしに外食なんて二人に悪いって気にしてたからな」
 シンジ「そうだったんですか…」
 加持「…気になるかい?」
 シンジ「えっ?」
 加持「葛城のことさ」
 シンジ「…そりゃ、そうですけど」

立ち上がりうーんと腰を伸ばす加持
振り返って笑う

 加持「俺の仕事は、特務機関ネルフの監査だ。
     なんて言えば偉そうだが、要するにいろいろ見て回るのが役目さ。それでここにいる」
5993/7:2014/07/05(土) 01:34:33.80 ID:???
 シンジ「監査…僕のことも、ですよね」
 加持「そう。葛城のこともな」
 シンジ「…、それなら、何も僕になんか頼まなくたって」
 加持「俺はしょせん外部の見物人に過ぎない。実際に何か変えられる訳じゃないさ。
     そのへんが、君や、レイや、葛城やリッちゃんと違うところだ」

うなだれて地面を見るシンジ

 加持「まだ、ここにいる自分に、実感が湧かないかい?」
 シンジ「…、たぶん」
 加持「そうだろうな。ただ、君がどう思おうと、人は君をエヴァ初号機のパイロットとして
     見ている。楽しかないだろうが、それも大事なことだ。自分が何者として周りに
     受け入れられているのかっていうのはな」
 シンジ「……」
 加持「前は…ピアノを弾けてた時は、それを忘れていられたかい?」
 シンジ「!」

反射的に強い視線を向けるシンジ
6004/7:2014/07/05(土) 01:35:33.29 ID:???
たじろがぬ加持
目を伏せてしまうシンジ
汗を拭いて畝の間にかがみこむ加持

 加持「だが、今はそれも、君の別の役割を思い出させてしまう。違うかい」
 シンジ「…役割」
 加持「碇レイの双子の兄、という役割さ」

言い返せずうつむくシンジ
土を睨む

 シンジ「…僕は別に、…加持さんもさっき言ってたじゃないですか。気が乗らないみたい
     だって。ただそれだけですよ。…やりたくないわけじゃない」
 加持「楽しくなくても?」
 シンジ「楽しいとかじゃなくて、…僕はただ、レイのためにやらなくちゃって思って」
 加持「ほら、そこだ」
 シンジ「…え?」
 加持「君の悪い癖だな。何か始める前に、それをしなくちゃならないと考えることで、結果
     自分で自分の行動の幅を狭めてしまう」
6015/7:2014/07/05(土) 01:37:05.13 ID:???
 シンジ「…しなくちゃならないこと、ばかりだから」
 加持「そうだな。だが、それならなおさら、一番身近なことを見失わないようにな」
 シンジ「…レイのこと、ですか」
 加持「いや。君自身、だよ。
     何をしなきゃならないかより、自分が何をしたいか。迷ってる時ほど、そこが大事になる」
 シンジ「…、そんなこと、考える余裕ないですよ」
 加持「それでもさ。君は、どうしたいんだ?
     それは誰も君の代わりに考えちゃくれない。自分自身のことだからこそ、自分で考え、
     自分で決めないとな。それで全てが上手く運ぶわけじゃない。だがその方が、少なくとも
     後悔はしないでいられる」
 シンジ「…後悔、ですか。
     加持さんみたいな大人は、後悔することなんかないんだろうって思ってました」
 加持「するさ。後悔だらけだよ、大人になればなるほどな。
     その代わり物事の見え方が広く深くなる。前には気づきもしなかったようなこともね」
 シンジ「…ミサトさんのこともですか」

一瞬手を止める加持
6026/7:2014/07/05(土) 01:38:24.92 ID:???
 加持「…ああ。
     今さら元には戻れないからな。ただ納得はしてる。自分が今、こういう立ち位置、こういう
     役割にいるってことに」
 シンジ「それは、…諦めるってことじゃ、ないんですか」
 加持「いや、違うよ。自分にできることとできないことの見極めがつくようになっただけさ。だから
     できる限りのことは精一杯やる。…その先は祈るしかない」
 シンジ「…だから僕に、ミサトさんを守ってくれって頼むんですか」
 加持「…そうだ。…君に頼むしか、俺にはできない」
 シンジ「……」

加持を振り返ろうとするが、結局また手元に視線を落とすシンジ
しばらく黙々と草をむしる二人

 加持「君には、君にならできる、君にしかできないことがある。何もネルフやエヴァのことだけじゃ
     ないさ。君の心から生まれる願いを叶えるのだって、君に与えられた現実の力だよ。
     君は、どうしたいんだい。今の君、それとも、今、君の周りにいる他人を」
6037/7:2014/07/05(土) 01:40:01.39 ID:???
 シンジ「…僕は、…
     …よく、わからないです。ただ、…たぶん、僕はレイに笑っていてほしい。そうすれば、
     僕も、少しは僕のことが、好きになれるかもしれないから」

笑うように口元を歪めるシンジ

 シンジ「…結局、自分のことですよね。…人のためじゃない。いつだってそうなんだ。僕は」
 加持「だが、嘘でもないさ」

かすかに目を見開くシンジ

 加持「皆そうさ。わかるのはせいぜい自分のことだけだ。だから始めるのは、そこからでいい。
     自分に正直になるのと、他人に誠実でいることは、同じことの裏表だからな。
     あとは行動するうちに、なすべきこともわかってくるさ。そういう、繰り返しだよ」

振り向くシンジ
丁寧に畝の世話をする加持の後ろ姿
目を逸らし、肩を落とし、それでも小さく頷いてみるシンジ
少しだけ顔を上げる
6041/4:2014/07/06(日) 00:56:31.75 ID:???
 日向「聞いたか? 例の歌の件」
 青葉「ああ、聞いた聞いた」
 伊吹「あの子たちが、学校の行事にそんなにちゃんと参加できるなんてね。
     何だかほっとするわ」
 青葉「考えたもんだよな、学校側も。手間や場所、準備に時間をくう文化祭や
     運動会じゃなく、校内での合唱コンクールなら、たとえ当日に使徒が来ても
     ただ延期すれば済むからな」
 伊吹「おかげで、あの子たちも欠席しなくて済むしね」
 日向「少々お手軽な気もするけどなー。
     …で、問題のオーディション、どっちが、シンジ君とのソロを勝ち取ると思う?」
 青葉「俺はアスカかな。人気投票みたいなもんで決めるんだろ、結局」
 伊吹「レイ、人前で何かすることなんてなかったものね。
     でもやっぱり、シンジ君との相性を考えると、レイじゃないかしら。私は、ちょっと
     応援したいな」
 日向「何しろ双子だもんな。…それにしてもあの二人、ほんと仲良くなったよなぁ」
 伊吹「そうよね。ここに来て初めて会ったなんて、思えないくらい」
 青葉「ま、相性が良かったんだろうさ。お互い気を遣ってるってのもある」
 伊吹「双子なのに?」
 日向「双子だって遠慮くらいするさ。いわば、近づきたい気持ちの裏返しで」
6052/4:2014/07/06(日) 00:58:19.39 ID:???
 伊吹「そうかしら…少なくともレイは、素直にシンジ君を慕ってると思えるわ。
     本当、変わったもの。レイ」
 青葉「そう、あのレイがな」
 日向「これも、実の双子の兄たるシンジ君の影響か。毎日接してるわけだし…
     たった一人の存在で、ここまで変わるなんてな」
 青葉「愛情…って、やつだろ、家族の」
 伊吹「そうね。あのレイが、ね…」

歩いてくるリツコ
三人の会話の端を耳にして顔をしかめる

 伊吹「あ、先輩! 先輩はもう聞きました? 合唱コンクールの話」
  リツコ「…聞いたわ。でも残念だけど、たぶん頓挫するわね。週末の企画は」
 伊吹「えっ?」
 日向「…? あッ、もしかして」
 青葉「…3号機」
  リツコ「そう。米国が急に方針を変えてきたそうよ」
6063/4:2014/07/06(日) 00:59:24.32 ID:???
  リツコ「議会の決定を待たずに、即日3号機を日本へ移管。既に輸送の手はずも
     整ってるらしいわ」
 青葉「…ずいぶん手回しがいいっすね」
 日向「勝手な話じゃないですか、さんざん遅らせてきたのは向こうなのに」
  リツコ「あれほどこだわってた技術情報の法的問題とやらは、一体どこへ消えたの
     かしらね」
 伊吹「…じゃあ、もしかして」
  リツコ「ええ。日本政府も先ほど通達してきたわ。機体が届きしだい、可及的速やかに
     起動実験を行うように、だそうよ。実験場は松代」

リツコが示す端末画面をのぞきこむ三人

 日向「さすがにここは使えないか…しかし、ほとんど嫌がらせですね」
  リツコ「ユーロの2号機確保と、ロシア側の動静を睨んで、今のうちに米国に貸しを
     作るつもりかもしれないわね」
 伊吹「そんな…エヴァは政治の道具じゃないのに」
 青葉「ウチを利権の塊と見てる連中にとっちゃ同じなのさ。…にしても、この日程じゃ、
     ほんとにギリギリですね。まさに嫌がらせだ」
 日向「相変わらず、全部現場任せか」
6074/4:2014/07/06(日) 01:00:40.48 ID:???
 伊吹「でもこれじゃ、本当にスケジュール、動かせませんね…
     よりによって金曜…せっかく、あの子たちが自分からやろうとしてることなのに」
  リツコ「そうね。…残念だわ」
 青葉「あくまでも、彼らはパイロットですからね」
 日向「…待てよ。何もコンクール本番ってわけじゃないんだろ?
     単に人を選ぶなら、週末じゃなく、その前、明後日辺りに前倒ししてもらえば」
 青葉「いや、それも無理だ。ほらここ、テストパイロットは前日には松代入りする
     ことになってる。ま、予備テストも全部向こうでやるから仕方ないが」
 伊吹「じゃあ…」
 日向「いくら中学生の歌って言っても、いきなり明日、発表しろってのは無理だよな」
 青葉「そういうことになるな」
 日向「…となると、それはつまり」
 伊吹「いよいよ3号機パイロットの決定、待ったなし、ですか」
  リツコ「ええ。ミサトにはさっき念押ししておいたから、遅くとも、明日中には」

沈黙する三人
一瞥を残して立ち上がるリツコ
6081/3:2014/07/10(木) 22:54:02.18 ID:???
再び本部器楽室
ピアノの前に座るシンジ
両膝を掴んだまま動かない二つの手
目の前に鍵盤
つめていた息を吐き出すシンジ

 シンジ「…何が嫌なんだろう。…やりたくないことじゃないはずなのに」
 加持(君は、どうしたいんだ?)
 シンジ(…よくわからないです。ただ、たぶん僕は、レイに笑っていてほしい)
 シンジ「…それは、本当だと思うのに」

意識して両手を持ち上げ、鍵盤上に浮かせるシンジ
が、指は下りない
また溜息

 シンジ(結局、自分のことなんです。人のためじゃない。いつだってそうなんだ)
 加持(皆そうさ。だから始めるのはそこからでいい。そういう、繰り返しだよ)
 シンジ「…そうなんだ。…そうだって、思えるのに」

深くうつむくシンジ

 シンジ「…なのになんで、動けないんだろう」
6092/3:2014/07/10(木) 22:56:40.49 ID:???
 カヲル(…動かそうとするんじゃなくて)
 シンジ「…え」
 カヲル(一緒に動こうと考えればいいのさ。
     協調の前提は、相手の呼吸をはかること。連弾と同じだよ)
 シンジ「!」
 カヲル(自分だけの時とは違うからね。力まないで、焦らず、互いの反応を感じて)

ゆっくり両目を見開くシンジ

 シンジ(ったくもうひどいよ、いくらなんでも僕とレイを間違えるなんて。…そんなに
     似てるのかな。僕らって)
 .カヲル(全然、違うよ。感じがね。僕にとっては)
 シンジ(そうなんだ…)
 シンジ「…そう、なんだ」

頭を起こしているシンジ
ピアノの鍵盤を見下ろす

 シンジ「…カヲル君は、…最初から言ってくれてたんだ。
     僕とレイは別々なんだ、って」

少しだけ微笑する

 シンジ「何やってたんだろ、僕は。
     自分一人だけでできることじゃなかったのに。…僕はただ、レイに合わせることを、
     …レイが気持ちよく歌えるにはどうすればいいのかだけを、考えれば良かったんだ」
6103/3:2014/07/10(木) 22:58:45.11 ID:???
 カヲル(僕はいつも、君が心配だよ)
  レイ(何か、したいの。お兄ちゃんに。何すれば、いい)
 シンジ「…うん。
     甘えるのも、言い訳にするのも、…やっぱり、それって変だものな」

自然に両手を鍵盤に下ろすシンジ
最初の和音が鳴る
手応えを噛みしめるシンジ
と、はたと指が止まる

 シンジ「あっ…そういえば、アスカと組むのかもしれないんだったっけ…
     けど、アスカが歌う、って…どんな…?」

考え込んでしまうシンジ
慌てて頭を振る

 シンジ「…えっと、とりあえず、曲の全体だけさらっておこう。あとは…あと、だ。うん」

楽音の響き始める器楽室
扉外の廊下に佇んでいる加持
微笑し、歩み去る
611名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/07/10(木) 23:46:38.55 ID:???
初めて覗いたけどほっとできる良スレだね
6121/5:2014/07/12(土) 12:45:17.68 ID:???
>>611 ありがとうございます、少しでも楽しんでいただけるよう、頑張ります


放課後の2-A教室
夕陽の射す中、CDデッキを傍らに練習するアスカ
と、付き添うヒカリ
いろいろ歌い方を試してくたびれた二人
近くの椅子を引いて座り込むアスカ

 .ヒカリ「今日は、ここまでにする?
    ずいぶんやったもの。明日でも明後日でも、まだ時間はあるし…」
 アスカ「駄目!って、言いたいとこだけど。
    ま、そうね。初日から飛ばしてもあとが続かないか。ごめん、付き合わせて」
 .ヒカリ「えっ?! ううん、いいの、…私はただ、ここにいただけだし、別に」
 アスカ「でも、ずっと聴いてくれてたし。
    他人がいるのといないのじゃ、張り合いが違うもの。ほんと助かった」
 .ヒカリ「うん…」
 アスカ「…けど、何で? 私なんか、普段、クラスの連中とは没交渉なのに。
    帰りに誘ってくれても断ってばかりだし。勝手にやれって放っておかれても、
    仕方ないと思ってた」
 .ヒカリ「そんなことないわよ。皆、本当は、アスカさんと仲良くなりたいんだと思う」
 アスカ「私と? なんでよ」
6132/5:2014/07/12(土) 12:46:42.78 ID:???
 .ヒカリ「え? だって、皆より全然大人っぽいし、かっこいいし! 憧れちゃうもの。
    男子みたいに騒ぐだけじゃなくて、皆言ってるわ」
 アスカ「……」
 .ヒカリ「あ…そっ、か。…うるさいし、迷惑よね、こういうの。
    でも皆、悪気があるわけじゃないと思うの、アスカさんは特別なんだから」
 アスカ「別に、迷惑とかじゃないけど。…それに、大して特別でもないし」
 .ヒカリ「え…?」
 アスカ「エヴァがなきゃ私は単なるガキってこと。間抜けよね、今頃気づくなんて」

頬杖ついて横顔を見せているアスカ
ためらうヒカリ

 .ヒカリ「…何か、あったの? アスカさん」
 アスカ「ん? 何かってほどじゃ、ないわ。いつものこと。もうルーティンになってる一種の
    心理的通過儀礼っていうか。現状への疑問提起と、自己確認っていうか」
 .ヒカリ「ずいぶん難しいこと考えてるんだ…やっぱり、私たちとは違う、わよね」
 アスカ「んーん、難しそうなコトバ使ってるだけ。やってることは、他大勢とおんなじよ。私も。
    考えても仕方ないことをぐるぐる考えて、何とか自分に折り合いつけて、ってね」

髪を払って立ち上がるアスカ
6143/5:2014/07/12(土) 12:48:47.71 ID:???
心配そうなヒカリ
見下ろして少し笑うアスカ

 アスカ「さ、帰ろっか。お腹すいちゃった」
 .ヒカリ「うん…」

片付け始める二人
教室の扉が開く
ジャージ姿の女子数人がカバンを取りに入る

 女子「あ、ヒカリ! に、式波さんじゃん! うっそー、まだいたんだ」
  .ヒカリ「うん、でももう帰るところ」
 女子「てことは今までずっとやってたの?! すごいね」
 女子「ほんとほんと。うちらの部活より、よっぽど真面目にやってるかも」
 女子「ね。うーん、私も式波さん応援組になろっかな。まじで」
 女子「それで男子と一緒に騒ぐわけ? まーいいけどさー。じゃね、ヒカリ」
  .ヒカリ「また明日ねー。
  .   …アスカさん? どうしたの?」
 .アスカ「べ、別に」
  .ヒカリ「…ねっ?」
 .アスカ「な、何?」
  .ヒカリ「さっき言ったこと。皆、アスカさんのこと気になってるのよ。そうだったでしょ?」
 .アスカ「…まあ、そうみたいだけど」
6154/5:2014/07/12(土) 12:51:02.36 ID:???
  ヒカリ「人類全体を守ってるアスカさんには、足元の私たちなんか気にしてる余裕、ない
     かもしれないけど…でもね、皆、アスカさんのこと見てたいし、応援したいのよ。
     私も、その一人」

はにかみがちに笑うヒカリ
瞬きするアスカ
怒ったようにそっぽを向く

 アスカ「…私、そういうの、あんまり好きじゃないんだけど」
 .ヒカリ「…あっ…」
 アスカ「好きじゃないし、たぶん応えられないけど、…でも、嫌ってほどでもないから。
    …まだ、よくわからないだけ」
 .ヒカリ「アスカさん…」
 アスカ「あーあ、慣れないことしたら疲れちゃった。
    もう帰ろ。途中まで、一緒に行ってもいい? 寄り道はできないけど」
 .ヒカリ「え、…いいの? でも、ネルフ本部に行くんじゃ」
 アスカ「今日は久しぶりにヒマだから、平気。あ、何か約束とかあるなら、別にいいけど」
 .ヒカリ「う、ううん、ない! 全然! 大丈夫だから!」
 アスカ「じゃ、行こ。…何よ、そこまで嬉しそうな顔しなくたって…ん?」
6165/5:2014/07/12(土) 12:52:59.75 ID:???
 .ヒカリ「どうしたの?」
 アスカ「何よー…あ、本部からの連絡。一応、すぐ確認しなきゃいけなくて」
 .ヒカリ「あっ、ごめんなさい。普通の人には秘密よね」
 アスカ「そんな大げさなもんじゃないってば。…!」

表情を険しくするアスカ
しばらくして携帯を切りカバンに突っ込む
見守るしかないヒカリ

 アスカ「ごめん、行こ。何でもなかった」
 .ヒカリ「そ、そう?」
 アスカ「そ。私にはどうでもいいこと」
 アスカ(3号機の起動実験…よりによって金曜日、か。
    ま、関係ないわ。どうせ妹が、命令されるままパイロット引き受けて、乗るんでしょ。
    馬鹿シンジは残念がるかもしれないけど、それこそ、関係ないし)

やや乱暴にカバンを持ち上げ、ヒカリと一緒に教室を出るアスカ
固く引き結んだ口元
6171/4:2014/07/14(月) 21:49:47.82 ID:???
本部技術局
リツコの検診を受け終え身じまいをするレイ
目をやるリツコ

 リツコ「どう? 歌の練習は。はかどってるの?」
  レイ「…!」
 リツコ「あら、答えられない?」
  レイ「…いえ」
 リツコ「まさか、あなたが自分から何かしようと言い出すなんてね。正直信じかねるわ。
    他人のためを思っての行動、だなんて。…ああ、他人じゃなかったわね。肉親は」
  レイ「……」
 リツコ「ごめんなさいね。不愉快だったかしら」
  レイ「…、いいえ」

まっすぐ視線を向けてくるレイ
初めて見る相手のように凝視するリツコ
目を逸らす

 リツコ「学校に家族ごっこもいいけど、あなたの本分はあくまでもエヴァのパイロットなのよ。
    使徒殲滅の任務はもちろん、エヴァの技術の向上をはかるための実験の被験者、
    テストパイロットでもあるわ。
    新しい人間関係の居心地良さに、どうも近頃、少し忘れてるようだけど」
6182/4:2014/07/14(月) 21:51:50.17 ID:???
 リツコ「そういえば、3号機の起動実験の日程、決まったわ。今週の金曜日」
  .レイ「!」
 リツコ「あなたはこのところ、体調も精神面も良好。先の使徒戦での後遺症も、目下
    認められない。何も問題ないわね、3号機のテストパイロットとして」

横目でレイを見るリツコ
感情をわずかに覗かせ訴えるような目をしているレイ
そのままうつむく

  リツコ「あなたの価値はエヴァに乗ること。そのために、ここにいるのよ。わかってるわね」
  .レイ「…はい」
  リツコ「さて、もういいわ。帰って休みなさい」
  .レイ「…はい」

立ち去るレイ
閉じた扉をしばし見守っているリツコ
ふと、自分の唇の両端が吊り上っているのに気づく
激しい自己嫌悪が全身を呑む
6193/4:2014/07/14(月) 21:54:02.28 ID:???
葛城家
風呂から上がって浴室を出るレイ
ふと鏡に目がとまる
湯気でぼやけた鏡に映る自分の姿
じっと見つめるレイ

後刻
バスタブにつかって電話中のミサト

 ..ミサト「だから、わかってるわよ。リツコからも駄目押しされたし…決定は決定よ。
     いくら不自然な点が多いからって、こっちは黙って実験を行うするしかないわ」
 加持『ま、それはそうだな』
 ..ミサト「にしても、おかしいところだらけか。今になって急に3号機をウチに押し付ける…
     これだけ無理な日程を押し通して、外交ルートも無視して。まるで…」
 加持『…今になって、起動実験そのものを急いでいるかのように。
     それも建造した米国ではなく、この本部のある日本に輸送した上で、だ』
 ..ミサト「…3号機を、日本に急ぎ移す理由があるということ…?」
 加持『それが何かまではわからないけどな。…とにかく、気をつけろよ』
 ..ミサト「わかってる。じゃ」
6204/4:2014/07/14(月) 21:55:21.29 ID:???
タオルで頭拭きながら出てくるミサト
リビングにレイとペンペン

 .ミサト「…シンジ君は?」
  レイ「さっき、部屋に」
 .ミサト「そ。もう寝るのかしらん、いつもより早いけど」
  レイ「…楽譜。見てたいって」
 .ミサト「お、そっか。はりきってるわねー、シンジ君。これはレイも負けてられないわよ」
  レイ「…あの」
 .ミサト「ん?」

まっすぐミサトを見上げているレイ

  レイ「…少し、話、いいですか」
 .ミサト「いいけど…?」
621名無しが氏んでも代わりはいるもの:2014/07/15(火) 02:00:40.14 ID:???
レイどうしたのかな?
6221/5:2014/07/18(金) 11:10:50.38 ID:???
>>621 読んでくださってありがとうございます
     レイは、ミサトさんにお願いを打ち明けたところです


自室のシンジ
机の上に広げられた『翼をください』の楽譜

 シンジ「え…じゃあ、レイの練習って、ケンスケたちが手伝ってくれてたの?!」
.ケンスケ『いやいや、俺たちは空き教室とかデッキとか、お膳立てしただけだよ。
     ホントは委員長に任せたかったんだけどさ。なんか式波の方に肩入れして、
     そっちに一生懸命になっちまってるみたいだから。いやー、いろいろと想定外…
     って、これはこっちの話。
     碇妹さ、がんばってるよ。ただし、肝心の歌声は「本番までヒミツ」だってさ』
 シンジ「そうなんだ…
     ごめん、本当は僕がやらなきゃならないことだよな」
.ケンスケ『気にするなって。俺たちだって言いだしっぺだし、せめてもの責任ってやつだよ。
     大体、シンジが手ぇ出したら式波がうるさいぞ。妹ばっかりエコヒイキ、ってさ』
 シンジ「それは…そうだけど、でも、ごめん。わざわざ」
.ケンスケ『だから、気にすんなって。それよりシンジはピアノの方、頼むぜ』
 シンジ「うん…」
.ケンスケ『んーむ、実を言うと…ちょっと困ってるんだよな』
 シンジ「えっ?!」
6232/5:2014/07/18(金) 11:12:49.64 ID:???
.ケンスケ『いや、トウジの奴がさ。やたら張り切ってるっていうか…妹連れてきて、碇妹の
     歌を見てもらおうかとか言い出してるんだよ。ありゃ、妹自慢したいのと半々だな』
 シンジ「…ええ? でも、トウジの妹さんって、確か」
.ケンスケ『そ、小学二年生のサクラちゃん。
     トウジいわく歌が大得意で、小学校の合唱クラブにも入ってるんだとさ。ま、俺らじゃ
     歌を教えるまではできないし、一応アリかもなって』
 シンジ「そっか…その、ありがとう。ほんとに」
.ケンスケ『いいって。その代わり、もし実現したら、トウジの妹自慢に付き合うの、お前も手伝って
     もらうからな。絶対長くなる気がするんだよ、ほんと』
 シンジ「はは、わかったよ」

携帯切って天井を仰ぐシンジ
ふいに真顔になる

 シンジ(みんな、レイのこと心配してくれてるんだ。ミサトさんも)
 シンジ(…僕は何ができるだろう。レイが喜んでくれるようなこと…レイが、気持ちよく
     歌えて、それで、歌うことにして良かったって思えるようなこと。何か)
 シンジ(何か…)
 シンジ「…やっぱり、…それしか、ないよな」

口元をぎゅっと引き結ぶシンジ
6243/5:2014/07/18(金) 11:13:49.03 ID:???
アスカの自室
ベッドに仰向けに寝転がって動かないアスカ
いらいらと天井を見つめている
携帯の着信音
弾けるように跳ね起き、携帯を掴むアスカ
発信者名を見て表情が元に戻る

 アスカ「はい? 何、ミサト。…べっつに、もう寝るとこ。
    えー? あーあー、聞いてるわよ。金曜、なんでしょ。もう知ってるってば…
    …は? それはミサトが決めることでしょ、私には関係な…え?」

目を見開くアスカ
うわべの倦怠が一瞬で吹き飛ぶ


葛城家リビング

 .ミサト「…ええ。とにかく、アスカには知らせておく必要があると思ったから。…今日は
    もう遅いわ、明日また、話し合いましょう。じゃ」

通話を切って視線を向けるミサト
6254/5:2014/07/18(金) 11:15:35.36 ID:???
見つめ返すレイ
優しい表情で訊ねるミサト

 .ミサト「本当に、いいの? レイ」
  レイ「…はい」
 .ミサト「あんなに楽しみにしてたのに…もしかして、シンジ君のため?」
  レイ「……」

レイの視線が少し揺らぐ
シンジの部屋の方向に頭を巡らすレイ
ほのかに微笑む

  レイ「お兄ちゃんも、だけど、…みんな。
    学校のみんな。ネルフのみんな。…皆がいてくれて、私も、ここにいられるから。
    …お兄ちゃんや皆にいてほしいから、皆を、守れるようになりたい。私」
 .ミサト「…そっか。
    わかった。レイが自分で決めたことなら、何も言わないわ。…よく決心してくれたわね、
    レイ。ありがとう」

はにかんでうつむくレイ
どこまでも優しい眼差
膝もとにぴったりくっついているペンペン
6265/5:2014/07/18(金) 11:18:26.70 ID:???
ベッドに横たわったアスカ
傍に投げ出された携帯
暗い室内

 アスカ(妹が、3号機のテストパイロットを引き受けた…? それも自分から志願して)
 アスカ(…なんでよ。
    金曜なのよ。歌えなくなる、…馬鹿シンジと、歌えなくなるじゃない。自分で始めたのに)
   レイ(たぶん、私がエヴァを降ろされることは、ないと思うから)
 アスカ(…大してエヴァに乗りたがってるわけでもないくせに)
  アスカ(封印するなら、修理中の零号機にすればいいじゃない!)
 アスカ(! まさか、2号機の封印措置を解除するために…?
    馬鹿、そんな簡単な話じゃないって、わかってるはずでしょ。…いや、違うか。
    あの子、上の命令には絶対に従うもの。それにもし考えの中にあったとしても、2号機の
    ためだけにってことはない。もっと何か、別の理由…)
   レイ(…零号機は、応用規格の少ない試作型。…私じゃなくても乗れる)
  アスカ(何言ってんのよ、あんたらしくもない)
 アスカ「!」

起き上がるアスカ
闇を睨む

 アスカ「…冗談じゃないわ」
6271/7:2014/07/20(日) 00:08:14.52 ID:???
葛城家 朝食後
キッチンで片付けと弁当の用意に忙しいシンジ
ふとベランダに目をやる
風の中で洗濯物を干しているレイ
最後の洗濯ばさみを留めて、室内に戻ってくる
とっさに手元に意識を集中するシンジ
不確かな焦り

 シンジ「…ん」

傍に来るレイ
少し硬い沈黙
急いで、いつもの顔をとりつくろうシンジ

 シンジ「…なんだよ、どうしたの?」
  .レイ「お兄ちゃん、…」

口をつぐむレイ
6282/7:2014/07/20(日) 00:10:01.96 ID:???
 .ミサト(レイの気持ち、よくわかった。でもまだ少し時間はあるわ。アスカも何か言いたい
     だろうし、今、ここだけで決めてしまうこともないと思うの。
     そうね…明日一日、夜までに、もう一度ゆっくり考えてみて。それまでシンジ君には
     まだ、このことは伏せておきましょ)

 シンジ「…レイ?」
  .レイ「…、何でもない。
     あ、お兄ちゃん、ミサトさんのお弁当。…梅干、入れ忘れ」
 シンジ「あっ…そっか。ごめん、ありがと、レイ」
  .レイ「…うん」

わずかに複雑な笑みを見せるレイ
同じためらいがちの笑顔で応えるシンジ
微妙な軋みを残し、再び流れ出す日常
6293/7:2014/07/20(日) 00:12:57.69 ID:???
授業中のシンジ
レイを気にする
いつもより背筋が伸びている感じのレイの後ろ姿

.ケンスケ(碇妹さ。がんばってるよ)
 シンジ(…うん。
     だから、僕もやるんだ。…上手く行くわけない、かもしれない。
     でも、僕がそうしたいから)

独り表情を引き締めるシンジ
そのシンジを横目で見ているアスカ

 アスカ(いつも通りぼけっとしちゃって…あの分だと、まだ知らないわね、きっと。
     …ミサト、かな。ま、こっちもその方が都合いいけど)

少し睨んで、前を向くアスカ
6304/7:2014/07/20(日) 00:17:57.78 ID:???
放課後 教室内を見回すアスカ

 .アスカ「あれ? …馬鹿シンジは?」
  ヒカリ「いないの? さっきまで、席にいたと思ったけど」
 トウジ「シンジならついさっき、帰ったで」
 .アスカ「!」

アスカの本気睨みにビビるトウジ、ケンスケ

 トウジ「な、な、何や。ワシらやないッて」
.ケンスケ「い、急ぎの用事があるんだってさ。ネルフ本部で。式波こそ聞いてないの」
 .アスカ「は? …馬鹿シンジの予定なんか、この私が把握しとく筋合いはないでしょ!」
.ケンスケ「うわッ」
 トウジ「…アホ! 何刺激しとんのや!」
.ケンスケ「う…何なんだ、いつもに増して剣呑な感じだけど」
 トウジ「やめやめ、触らぬ神に祟りなしやって」

男子二人は放置してレイの方を睨むアスカ
カバンと楽譜を持ち、別の教室へ移動しようとしているレイ
じっと譜面に目を落としている
視線を緩めるアスカ
一瞬、何とも言えない表情になる

 アスカ「…そ。
     ま、いないなら、いいんだけど。…別に」
6315/7:2014/07/20(日) 00:18:54.22 ID:???
放課後遅くの教室
ヒカリと一緒に楽譜を見直しているアスカ
心配そうなヒカリ

 .ヒカリ「さっきの…どうしたのか、聞いていい?」
 アスカ「ん?」
 .ヒカリ「碇君のこと。何か、用があったんじゃないの?」
 アスカ「ああ、さっきの…
    べっつに、大したことじゃないわ。…金曜にいきなりぶっつけ本番ってのも変だし、
    事前に一回くらい、ピアノと合わせて歌っといた方がいっかなって、思っただけ。
    あ、もちろん妹とは別でよ」
 .ヒカリ「そっか…残念ね。でも、また明日でもいいじゃない」
 アスカ「…そうね」

廊下をレイの姿が通り過ぎる
目をやるアスカ
急に楽譜を閉じる

 .ヒカリ「アスカさん?」
6326/7:2014/07/20(日) 00:19:48.78 ID:???
 アスカ「…ヒカリ。
    悪いけど、今日はここまでにしよ。あと、今日は一緒に帰れない」
 .ヒカリ「え? うん、別にいいけど…」
 アスカ「私、ちょっとやらなきゃいけないことがあるから」

急いで帰り支度して立ち上がるアスカ
ヒカリを振り返る

 アスカ「…ごめんね」
 .ヒカリ「え?」

足早に出ていくアスカ
がらんとした教室に取り残されるヒカリ
6337/7
広い夕焼け空の下の第三新東京市
長い影を曳いて歩くレイ
近づいてきた足音が背後で止まる
振り返るレイ
険しい表情で仁王立ちしているアスカ

 アスカ「…妹。ちょっと、付き合って」