LAS小説投下総合スレ21

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510パッチン
綺麗に、そして可愛くデコレーションされたケーキがアタシの目の前に。
妙にキラキラしてるのはケーキが輝いてるから?それともアタシの目が輝いてるから?

赤いイチゴと白い生クリームが彩る甘いケーキは、ロウソクの小さな炎に照らされ、少し幻想的でもある。
そしてそれらに囲まれる中央部分で、チョコレートクリームが幸せの言葉を作っていた。

お誕生目おぬでとうアスカ

「ごめんね、手作りだから上手く書けなかったけど…」
「ば、バカ。こういうのが良いのよっ」
申し訳なさそうにテレた笑みを浮かべるシンジ。
でも完璧じゃない…むしろ失敗した文字の方がシンジの可愛さを更にアップさせてるのよ。
ああ、そんなに顔を赤くしないでよ…。
その染まる頬に目立つ白。
アタシは立ち上がって、彼のほっぺについた生クリーム…舐めてあげちゃう。
「あ、アスカ!」
「・・・シンジって甘いね」
あはは、とうとう真っ赤になっちゃった。

ねえねえシンジ?幸せだよね?
アタシはすっごく幸せだよ?

「プレゼント欲しいよぉ…シンジぃ」
「う、うん」
両肩にシンジの手が置かれる。
ゆっくりと顔が近づく…。
キスキスキス…キスしちゃう。
511パッチン:2009/12/04(金) 14:20:01 ID:???
あ・・・れ?

唇にフニャンとした感触が来ない…

目を開くとそこには困惑したシンジの顔がある。

「あ、アスカぁ…キスできないよ」
「な、何ですって!」
ヤバいヤバい!この感覚は最近よくある!
アタシはいつものように右手でパーを作り、思いっきり自らの頬をひっぱたく。

感覚無し

ヤバいヤバいヤバい!
焦るアタシ…今度は両手でグーを作り、自らの体中を滅茶苦茶にポカポカ叩く。

ふはは、痛くも痒くないわ

やだやだやだやだやだっ!
かくなるうえは、左手をチョキにして自らの両目に…

「す、ストップストップ!アスカもうやめてよ!」
「や、やだぁそんなわけない!痛いはずなんだからぁ!」
前から抱きつくように制止してきたシンジを半狂乱になりながらアタシは振り払おうとする。
「し、シンジお願い、生爪を剥がして!流石に痛いと思うの!」
「いい加減にしてよアスカ!もう朝なんだよ!
これは・・・夢なんだから!」

すると一瞬大好きなシンジの顔がぼやけて・・・大嫌いな朝日。
知ってる天井。

12月4日の朝という現実がアタシを包んでいた。
512パッチン:2009/12/04(金) 14:21:22 ID:???
『アル日のバースデイコール』

「おはよアスカ。お誕生日おめでとう」
「あ…うん」
「ミサトさん今日は早いらしいから、もう出ちゃったよ。帰りにケーキ買ってきてくれるらしいから」
「はいはい…」
いつものように眠そうにシンジの言葉をあしらいながら、アタシは朝食の並ぶテーブルにつく。
特別な日なのに当たり前のように振る舞う。バカだなぁ
なに大人ぶってるんだろ…。夢の中みたいに甘えたいのに。

和朝食がセオリーの葛城家の食卓。
今日はハムエッグに…トースト。ジャムはアタシの好きなオレンジ…。

「何コレ、誕生日プレゼントのつもり?」
「え?い、いやそうじゃなくて…」
「安上がりで済んで良かったわねぇ。ま、アンタには料理くらいしか無いもんね」

ああ…もう嫌だ、この口…

「ぷ、プレゼントは別にあるよ!朝食はオマケ!」
「はいはい、期待しないで待ってるわ。いただきまーす」

くだらないことしか出ない口が嫌い…。
お仕置きを与えるように下唇をキュッと噛みながら、アタシはトーストに手を伸ばした。

シンジの料理を味わう一番幸せな部分のはずなのに、この口がシンジを一番傷付けちゃう…。
513パッチン:2009/12/04(金) 14:22:55 ID:???
朝食後、興味のわかない休日の朝のバラエティーをソファーに腰掛け、ぼんやり眺める。
ふんわりオムライスの作り方なんて、何度も見たわよ…。

今夜は一応葛城家だけでアタシの誕生日パーティーを開催するらしい。
しかしあくまで今夜。
…誕生日の朝に何をやってるんだろう、という思いがキュッと胸を切なくする。
いや、いままではこれが当たり前。訓練漬けだったアタシは誕生日を特別な物と考えたことはあまり無かった。

訓練を終えて家に帰れば、無人のキッチンテーブル上にバースデイカード。そして冷蔵庫には1人分のケーキ。
それが誕生日。

なのに今年のアタシは求めている…。
フッと左を向けばフローリングの床にペタリと座り、テレビを見ているバカシンジ。
改めて言えば…好きな人。
加持さんへの気持ちとは違う、見るたびに…思うたびにドキドキする感じ。
今もキューンと締め付けられる胸が痛い。

多分アタシは弱くなったんだと思う…コイツのせいで。
ううん、なれるならもっと弱くなりたい。
素直になりたい…!
甘えてみたい…!
夢で見た誕生日パーティーが頭をよぎる。

「・・・ねぇ、ミサトが帰ってくる前に誕生日パーティー始めない?」
「え?」
514パッチン:2009/12/04(金) 14:24:16 ID:???
「ねぇやっぱりマズいよ…ミサトさんが知ったら怒るよ絶対…」
「大丈夫よ!どうせ山ほどあるんだからバレないわ」

トポトポとグラスに注がれる赤い液体は大人の香り。
キッチンテーブルの上にはさんざん乱暴に捻られて、ボロボロになったコルクが1つ。
我ながら情けない作戦だと思うが、現状打開にはこれしか無かった。
今年の誕生日は・・・デレたいのだ。

「そ、そもそも僕達まだ15歳だし、法律で禁止されてて…」
「ペンペン!アンタ歳いくつ!?」
くわっと3本爪をたてるペンペン。
「ほら!一本いっとく?」
手近にあったエビチュを投げると、小躍りしながら受け取り、プルタブを折るペンペン。
「見てみなさい!3歳のボーヤでもあんなにグビグビ飲めるのよ!」
「あ、あれは人間じゃないだろ!」

はんっお酒なんかでビビるなんて男失格ね!と、また強がるアタシ。
でもでもでも…それもここまでよ…。

グラスを天にかかげ、中で揺れるソレを蛍光灯の光に当ててみる。
「アンタは飲まなくていいわよ。アタシ1人で楽しんじゃうから…」

アタシを変えて…お願い。

その願いと共にグラスに口付けたアタシは、目を閉じてゴキュっと喉を鳴らした。
515パッチン:2009/12/04(金) 14:26:50 ID:???
『あ〜しゅか〜♪』
『きゃっ!ちょ、ちょっと何ですか葛城一尉!』
『いやんっお堅いんだからぁ〜ミサトちゃんって呼んでよぉ』
『お酒臭い!飲んでますね!』
『ドイツのビールは世界一いいい!』
『は、離して下さい!アタシこれから大学入試の勉強するんですから!』
『ありり?アスカちゃんはまだそんな歳じゃないはずでしょ?大人の階段のぼるのが早いわねぇ〜』
『ヤダぁ離して下さいよ!酒飲みの上司に絡まれるなんてゴメンです!』
『酒飲みとか絡むとか言っちゃイヤンイヤン♪甘えん坊ミサトちゃんって呼んで♪』
『な、何言ってるんですか!』
『お酒を飲むと本当の自分が出てくるものなのよんっ♪』
『ほ、本当の自分…?』
『そうよぉ!本当のあたちは甘えん坊ミサトちゃんなのだ!』
『お、お酒って飲むと甘えん坊になるの?』
『みゅふふふ♪さてさて真面目ん坊アスカちゃんの成長具合についてでも測ろうかしらん♪』
『ちょちょ、ちょっと!くすぐったいからやめて下さい!』
『あららん成長ゼロね?こりゃ将来成長してもCが限界かしらん』
『い、いい加減にしなさいよバカミサトおおお!』
『きゃあきゃあ♪アスカちゃんが名前で呼んでくれたのよん♪』


516パッチン:2009/12/04(金) 14:28:20 ID:???
「ちょ、ちょっとアスカ大丈夫?」
「ふみゅ…らりるれろ…?」

シンジの声に、夢に堕ちてテーブルに突っ伏していたアタシは顔を上げる。
グワングワンと揺れる脳、熱い頬、回らない舌。
それはアタシの望んでいた感覚とは、どこか違う世界。
「足りらいのからぁ…」
「ちょっと待っててね!すぐ冷たい水入れるから」
「みゅみゅみゅのみゅ…」
冷蔵庫に駆けていくシンジをよそに、アタシは更にワインをグラスに注ぐ。
「あ、アスカぁ…もう止めた方がいいよ…」
「くぴくぴっ…ぷはっ。シンりぃアタひ酔ってりゅ?」
「よ、酔ってるよ完全に!そこまで来て自覚無いってヤバいよ!?」

酔ってるのよね…言えるかな…

「し、シンり!よく聞きなしゃい!」
「え?」
「あ、あの…そにょ…あらひ…しんりが…しんりで…みゅみゅみゅが…みゅみゅみゅで…」
「アスカ??」
だ、だめ!シンりの顔見てたら恥ずかしくなる!

焦ったアタシは更にワインをグりゃスにぶち込んでしまう。
・・・ていうか、もう心の声にまで酔いが回ってきてりゅわ。
こんなに酔ってるのに、らめなんて…。

お酒に頼っても無理なんれ…こんなんりゃ一生素直になんかなりぇないよ…。
517パッチン:2009/12/04(金) 14:29:52 ID:???
「アスカ・・・どうしたの?」
ガクンとうなだりぇるアタシを心配したシンジが、ソッと近くに来てくれりゅ。
「苦しいの?・・・ねぇ、なんで無理やりお酒なんか飲もうとしたの?もしかして嫌なことでも…」
「さわりゃないれよ!!」
優しい言葉と共にソッと背中を撫でてくりぇたシンりの手を、アタシは思いっきり弾く。

あぁ結局またやってりゅ…バカアしゅカ…。

「アンタらんかに心配してもりゃわなくれも大丈びゅよ!」
「で、でも本当に苦しそうだったから!」
「大きにゃお世話しゃまにょ!!」
グスッ…にゃにがお酒は本当の自分が出りゅものよ…
頭は痛いし、気持ちわりゅい…オマケにいつみょよりカリカリすりゅなんて…。
「ごめん・・・でも僕は本当に心配だったから…」
「うりゅしゃあああああい!そみょそも誕生日パーティーなんて、誰も望んでにゃいのよ!」
「・・・アスカ」
「アンタの用意ちたプりぇゼントなんか、いりゃないし必要にゃいもん!さっしゃとゴミ箱にでも捨ててきなしゃいにょ!」

あぁもう死にたいよ・・・
世界の終わりみたいに色んな物が崩れりゅ・・・
いっそ…地球ごと爆発してくれないかな


『ドガアアアアアアアアアン!!!』
518パッチン:2009/12/04(金) 14:31:27 ID:???
一瞬の沈黙を破った突じぇんの爆発音に、シンりとアタシはビクリと肩をふりゅわせた。

「使徒!?」「ち徒!?」

見事にユニゾンちた言葉と同時に立ち上がり、ベランダに走・・・りょうしたけど、アタちの方は足がもちゅれてベチャリと無様に転倒。
一方無事ベりゃンダに辿り着いたシンりは、グッと体を曲げて遠くを眺みぇりゅ。
「戦自が出動してる…間違いない!」

ピリリリリリ!

そにょシンジの言葉とほぼ同時に鳴り響きゅ携帯電話。
いまだに床でジタバタちてるアタシはテーブルに置かりぇた携帯を取れにゃい。

とことんカッコわりゅい…

「アスカやっぱり使徒らしいよ!今からミサトさんが迎えに来るらしいから、外で待とう!」
「わかってりゅわよぉ〜」
アタちは返事だけは出たもにょにょ立ち上がることすら出来ず、
生まりぇたての子牛(それもかなり鈍くさいやつ)ばりにノソノソ動きゅだけしか出来にゃい…。

「ダメだ時間が無い!早く立ってよ!」
「命令すりゅな!」
「でも!」
「くみゅみゅみゅ…!」
「・・・ごめんアスカ!」
「みゅみゅ!?」

突然、プルプルと起き上がろうとちていたアタシの体と床の間に差し込まれるシンりの腕。
519パッチン:2009/12/04(金) 14:33:03 ID:???
そにょままアタちの体を抱え上げ、俗にゆう『お姫しゃま抱っこ』の形に移行すりゅシンり。
「ちょちょちょ、ちょろっと…!」
「ご、ごめんアスカ、急ぐね!」
そしてシンりは駆け出す。
アタちも最初は戸惑っていたけろ、グラグラと揺れりゅ上半身を固定すりゅため、おじゅおずとシンりの首に腕を回した。

あああ…恥ずかちい…。
などと照れていりゅアタちをよそにシンりは、玄関を飛び出しマンションの廊下を通過しエレベーちゃーに乗り込んだ。

こんにゃ状態の2人が密室に…。
などというピンきゅ色のモヤモヤがアタちの心を包みゅ。
でもチラッと上を眺めりぇば、汗を流しながら息を整えりゅシンりの顔がありゅ。
・・・なんだか純しゅいに綺麗だと思った。

「お待たせ2人共!・・・おぉお姫様抱っこ!?誕生日だからって一線超えたのアンタ達!?
お姫様も顔が異常に真っ赤だし…って、酒くさっ!!」
うりゅさいミしゃト・・・今いい所だったにょに。
何も言わないで真っ赤になりながりゃシンりは先にアタちを後部座席の奥に座りゃせてくりぇる。
そしてシンりがその隣に。
520名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/04(金) 14:40:01 ID:???
支援金
521名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/04(金) 16:34:19 ID:???
パッチンさんキター!!
酔っぱらったアスカのしゃべりが可愛いw続き待ってます!
522パッチン:2009/12/04(金) 18:38:30 ID:???
>>519続き
「と、とりあえず出発して下さいミサトさん!理由は移動しながらで!」
「そ、そうね!今は保護者としての心配より、作戦部長よ!」
そう言ったミしゃトはバタバタ忙しきゅ車に乗り込みエンジンをかけりゅ。

う・・・やっぱり揺れりゅ。

下からドドドとくりゅ揺れに多少の不安を持ちゅアタち…。
「と、とばすわよぉー2人とも!!」
とばさないれ…ミサろ…。

もちろん声にならにゃいアタちの言葉にゃど届かず、爆音を響かせにゃがらミしゃトが時速計を振り切っちぇ走りだちた。

ミしゃトのうるさい声とエンジン音に囲まれながりゃの最悪のドライブ。
隣のシンりが心配そうにアタちを見りゅけろ、ヤバいかも…。

グワングワングワングワングワングワングワン…
揺れりゅ揺れりゅ車にシェイクさりぇた脳が意識を飛ばしていく…。

「み、ミサトさん!スピード緩めて下さい!」
「無理よ!アスカにはネルフに着いたらリツコ特製の酔い覚まし薬があるから、飲ませるわ!
・・・いや、あれはこの前あたしが飲んだっけ?」

ミしゃトの訳の分かりゃない1人言は子みょり歌・・・。
揺りぇる揺れりゅ脳がゆっきゅりとアタちの意識を吹き飛ばしていっちゃ・・・う。