LAS小説投下総合スレ21

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
LASを投下しましょう。甘LAS、シリアスLAS、イタモノLASなどジャンルは問いません。
また、LARSやハーレム物の中で描かれるLASなどもOKですが主軸はLASで。他カプが主軸なら該当スレへ。

エロ分が多ければエロパロ板へ投下で、当板は全年齢対象です 。
原作にどれだけ直球な表現があったからといってもエロ分が多いとスレ削除を食らいます。

あなたがLASと思えば、それはLASなのです。

過去スレ1
01 http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1122558487/
02 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1109570903/
03 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1110008498/
04 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1110645039/
05 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1111194171/
06 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1111941594/
07 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1112530302/
08 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1113068736/
09 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1113238483/
10 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1114138826/


evaFF転載板
ttp://yy10.kakiko.com/yy11307819/
LASスレ投下SS保管庫
ttp://las.nobody.jp/
2名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/07(水) 12:10:35 ID:???
3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/07(水) 12:21:13 ID:???
おおお、乙です!
4名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/07(水) 12:25:40 ID:???
>>1
乙!
5名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/07(水) 14:06:14 ID:???
>>1
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/07(水) 15:39:44 ID:???
高嶺姉貴が >>2getだ!

_   _,. へ_/| /  ヽ        j |  ヽ _____
  ``<_三三ミニァ  〉       〈  | r'´∠ -─┴ '´
    \ `ヽ、_」 , - ─‐-- ─- 、 r<_/
\   、 \ _ムィ 一/⌒ヽ、ー‐- `ヽ、」  /´     /
 ハ     ̄/       /            \∠    /
/ 厂 ̄7/       |         、       マ辷 ´
 /   //   /    |          !   \     ト、\
/   // j   / / //|        | |    ヽ   |  \
j  // |   | | ||i!     / j ||| ||   !    ヽ
i| /  |   | | | | iト、   // //||| |!||  |    !
|レ|!   ヽ  | 「 T十r-ト、 〃 /i/ |/|/!/| |il |  |    |
| ||    ヽ | r〒テヾ、!ト、  /フー十|十!「|ij | ,イ     |
| i!     | ヽソ トィン:}   ヽソ  ===ミ、/!_|/ノ       | >>1
| i!     ヽ _|ハ┴''┴    、       /├ '        |  あんたイカぁ?
ト||  , -──‐|ハ    rv──‐ァ     /|├-─- 、    !
i |/       | || ト、  ヽ    /   /{| |      \  |
||         ! |!┤ \  、__ノ  /   j ハ      \|
トiハ      /ハヘ |   ` ‐-‐ ´    〃 | |      j
 ! |!    /  トト! ! \     /  /|_j.」      i /
 | | __   `フ┬‐く   \   /  /   |    ,    |/
!| !イ`ヽ / |  \       /    |  / \  レ /
|| ||   レ′     ` ー--‐ '´         V   `y /
ハ|  ||  ィ′     、 `ー一   /       |    //
∧ ||j!   |       ヽ      /       |    /   /
! | ll |  |                      ,   /   /
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/07(水) 17:02:10 ID:???
乙!
8名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/07(水) 17:30:07 ID:???
乙です
9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/07(水) 23:47:43 ID:???
>>1乙です

いきなりですが投下します。
・かなり長いです
・直接的な表現はあまりありません
・直球LASが好きな人には向かないかも

NGワードは


maTsuでお願いします
10maTsu:2009/10/07(水) 23:48:47 ID:???
8月、扇風機の風を受けながら、テレビを見ていた。
たいして興味のない、バラエティ番組。
隣には、アスカが座っている。テーブルに頬杖をつき、不機嫌そうな顔をしながらテレビを見ている。
テーブルの上には、空になったアイスクリームのカップが2つ、置かれていた。

「シンジ、チャンネル変えてよ、つまんないわ。」
「ん」

そばにあったテレビのリモコンに手を伸ばし、適当にチャンネルを変えた。
ニュース、何かのドラマ、別のバラエティ番組と変えていき、再度ニュースが画面に映った。
行楽地のことを報道しているらしく、川で子供たちが楽しそうに泳いでいる。
ふとアスカの方を見ると、なにやらムッとした表情をしていた。

「あ〜ぁ、楽しそうねぇ。」
「・・うん。」

僕とアスカには夏休みがない。いや、エヴァのパイロットには夏休みがもらえないと言った方が正しいだろうか。
学校はもちろん休みなのだが、ちょくちょくネルフに召集されるため、とてもじゃないが休暇気分を味わうことができない。
アスカの機嫌が悪いのも、その辺が原因らしい。
11maTsu:2009/10/07(水) 23:50:41 ID:???
「修学旅行もダメ、遠出もダメ、ほんとストレス溜まるわ。なにが夏休みよ。」
「まぁ、しょうがないよ。いつ使徒が現れるか分かんないし。」

アスカは僕をジロリと睨み、
「あんたってほんとつまんない男ね」と言った。
一つ溜息をはさんで、
「ヒカリは家族で旅行に行ってるし、加持さんはドイツだし、かといって遠出もできないし。」

僕は苦笑いしながら、ゆっくりと立った。
「そろそろ食器洗わないと。」
「アタシは手伝わないわよ。」
「はいはい。」
12maTsu:2009/10/07(水) 23:52:48 ID:???
エプロンを着けて、蛇口をひねる。
勢いよく水が流れ出し、食器を洗う。
しばらく続けて、ふととなりの部屋を見てみると、アスカはまだテレビを見ていた。
何気なしに言ってみた。
「じゃあさ、アスカ。」
「・・・何?」
「どこか行こうか。僕でよければ付き合うよ。」
アスカはキョトンとした表情をした後、
「・・・泳ぎに行きたい。」
「それは無理だよ。遠出はダメなんだって。」
「・・じゃあ、いいわ。」
そう言うと、アスカはテレビのリモコンを手に取りチャンネルを変えた。

まぁ、断られるだろうとは思っていたので特に何も思わなかった。
気を取り直して食器を洗い始めた。
13maTsu:2009/10/07(水) 23:56:09 ID:???
次の日の朝、いつものように朝食の用意をしていると、寝ぼけ眼のアスカが台所にやってきた。
ミサトさんはすでに出勤しているので、テーブルには二人分の朝食が置いてある。
アスカは椅子に座り、眠そうな目をこすっている。

「おはよ。」
「・・・・。」

返事がない。まあ、これもよくあることだ。
いちいち気にしてたらきりがない。
二人で朝食をとり、食器の後片付けをしていると、
「シンジ」
と、後ろから声が聞こえた。
振り向くと、顔を洗って着替えたアスカがテーブルに腰かけている。
「どうかした?」
「昨日アタシに付き合うって言ったわよね?」
「言ったけど・・・(断ったんじゃ・・)。」
「なら」
ひとつ間を置いて言った。
「出かけましょ。」
14maTsu:2009/10/07(水) 23:58:18 ID:???

家事を一通りすまして、着替えを済ました。
アスカは椅子に座って待っている。
「じゃあ、行こうか」

玄関でしゃがんで靴を履いていると、そばにペンペンがやって来た。
シンジとアスカの顔を交互に見ている。
家に一匹置いていくのは悪い気がしたが、「ごめんね、行ってくるよ」と言って
ドアを閉めてカギをかけた。

階段を下りて、マンションから出たところで、気がついた。
アスカが珍しく帽子をかぶっている。
淡い黄色の、麦わら帽子のような形をした帽子。
ファッションには疎い方なので、名前は分からないが。
アスカが着ている黄色のワンピースと、とても合っていると感じた。

「その帽子かわいいね。似合ってるよ、すごく。」
アスカは「えっ」と小さく呟き、少し俯きながら
「遅い。ほんと鈍いんだから」と言った。

外は太陽がとても眩しく、遠くでセミが鳴いている。
それに、とても暑い。
15maTsu:2009/10/07(水) 23:59:58 ID:???

「ところで、どこに行くの?」
「水族館」
「水族館?」
と、聞き返した。
アスカは少し恥ずかしそうな顔をして、
「・・・何か?」
「い、いや別に」
「ただ興味があるだけよ。」
僕は苦笑いをして、軽くうなずいた。
そんなやりとりをしながら(時には肩を小突かれながら)、駅へと向かった。

駅に着くころには、二人ともかなりの量の汗をかいていた。
切符を買い、ホームに行くとすぐに電車が来た。
ドアが開き、ふぅとひとつ息をつき席に座った。
アスカも隣に座った。一人分の隙間は空いているが。
16maTsu:2009/10/08(木) 00:04:18 ID:???

「アンタ、ハンカチも持ってないの?」
手で自分の顔を扇いでいると、アスカが言ってきた。
「持ってくればよかったね」
「ホントに」
そういうと、アスカはすぐそばまで来てハンカチで顔を拭いてくれた。
「アンタってダメなヤツね。ファーストの方がまだマシだわ。」
正直少し恥ずかしかった。が、悪い気もしなかった。むしろ、嬉しかった。
目線を正面に向けると、40代くらいの中年の男性がこっちを見ている。
男性もこちらが見ていることに気付いたのか、目線をそらした。
アスカもそれに気付き、すぐに元の場所に戻った。
気のせいか、少し顔が赤いみたいだった。僕も人のことは言えないが。

2つ目の駅に着いたところで、電車から降りた。
切符を改札機に通し、駅から出る。
17maTsu:2009/10/08(木) 00:05:27 ID:???

アスカが隣に来て、
「たしかあっちだったはず」と言った。
「調べてきたんだ?」
「まぁ、アンタはあてにならないから」
「それはそうかもしんないけどさ」
アスカはふふっ、と軽く笑うと体の向きを変え歩きだした。
僕は「待ってよ」と言いアスカの隣に行った。

「セミの鳴き声がしないね。」
「ここら辺は木がないからでしょ。」
そういえば、と思い周りを見渡したが、たしかに木が見当たらない。
舗装された道路の両脇に、コンクリートの無機質な建物が並んでるだけだった。
「ホントだ。」
「バカ。」

そうこうしているうちに、目的の場所が見えてきた。
こんな近くにあったんだ、と思い少し驚いた。
赤茶色いレンガで造られた、わりと古そうな建物。
18maTsu:2009/10/08(木) 00:07:35 ID:???

入口上の看板には『ようこそ!アサカ水族館へ』と書いてあった。
夏休みということもあり、家族連れやカップルなどがわりと来ているみたいだ。
「ほら」
アスカは僕のシャツの袖を引っ張り、受付の方へ早足で歩いていく。
少し並んで、チケットを買った。
受付は4,50代の年配の女性がやっていて、チケットを渡す際、ニコッと笑い
「あら、デート?いいわね〜。」と言った。
「・・・・え?」
アスカは僕の顔を見て、
「まさかぁ〜(僕の胸をこずく)え〜と、そう、社会見学なんですよ」と言い返した。
「ふふ、そうなの?まあ楽しんでらっしゃい。」
「はい」

19maTsu:2009/10/08(木) 00:09:24 ID:???

係員にチケットを渡し、短い通路を抜けると、大きな水槽がたくさんある場所に出た。
部屋は少し暗いが、魚の入った水槽が青く幻想的な光を放っている。
「わぁ・・・」
アスカは若干興奮気味に、そばにあった水槽の前まで走って行った。
水槽に両手を置き、一生懸命魚を見ている。
「ほらほら。シンジも見てみなよ!」
「う、うん」
いつもと違うアスカに少し驚いたものの、ゆっくりとアスカの隣に歩いて行った。
目の前の巨大な水槽の中では、何かの群れが竜巻のような陣形で泳いでいた。とてつもない数だ。
水槽を右に左に行ったり来たりするその物体に、しばらく目を奪われてしまった。
ふと周りを見ると、いつの間にかかなりの人が集まっていた。
同時に、そばに魚の説明文があることに気づいて、読んでみた。
『ダツ目 サンマ科』と書いてあり、下に長々と紹介文が書いてある。

「アスカ」
・・・気付かない。
「アスカ」
「・・・え?」
「これ、サンマなんだって。」
「そうなの?」
20maTsu:2009/10/08(木) 00:11:17 ID:???

「外敵から身を守ったりするためにこうなるらしいよ。」
再び水槽に目を向けるアスカ。
「すごい。」
「うん。」
しばらく二人で水槽の中を見つめる。
「じゃあ、ほかも見て回ろうか。」

「うえぇ、気持ち悪い」
「なに、なにこれ?どうなってんの?」
「うわあ、光ってる。」
魚を見ていると、アスカは様々なリアクションを見せた。
いつもと違うというか、なんというか可愛かった。
アスカも普通の女の子なんだな、と今更ながら思った。

「シンジ、ほら、たそがれてないでアンタも見てみなさいよ。」
アスカは僕の右手をつかみ、水槽の前に強引に連れてきた。
目の前の水槽には多くの種類の魚が泳いでいる。
サメに海ガメ、先ほどのサンマまで泳いでいる。
21maTsu:2009/10/08(木) 00:13:14 ID:???
「・・すごいな・・」
しばらくそれを眺めていると、アスカが急に僕の手を振りほどいた。
隣を見ると、アスカは少し赤い顔をして下を向いている。
どうやら正気に(というのも変だが)戻ったらしい。
僕はふふっ、と笑い、「あそこに座るところがあるよ。休憩しようか」と言った。
アスカは「・・そうね」と小さな声で返事をした。

アスカが椅子に座ったのを確認し、僕はそばにあった自販機まで歩いて行った。
適当に缶ジュースを二人分購入し、アスカの隣に座った。
アスカは帽子をとり、座りながら脚を伸ばしている。
「はい」
ジュースを手渡す。
「ありがと」
缶を開け、ジュースを飲む。
22maTsu:2009/10/08(木) 00:14:47 ID:???

ふう、と一息ついてアスカに聞いてみた。
「アスカは水族館初めて?」
こっちを見て、少し考え込むアスカ。
「初めて・・うーん、初めてかな」
「そうなんだ」
「うん」
―しばしの沈黙―

少し悩んだが、思い切ってみることにした。
「行こうか。」
立ち上がり、アスカに手を伸ばした。
アスカはえっ、とした表情をしたが「・・・うん」と言って僕の手を握った。
帽子をかぶり、立ち上がるアスカ。
まさか応じてくれるとは思わなかったので、少しとまどいはしたものの、
平静を装って歩くことにした。

23maTsu:2009/10/08(木) 00:16:02 ID:???

とりあえず一通り見て回り(ショーもあったみたいだがかなり並んでたのでやめた)、外に出ることにした。
とりあえず、まだ手をつないでいる。
頭がうまく働いてないみたいで、何を見たかよく覚えていない。
アスカを意識してるんだな、ということは自分でも分かった。
『出口』と書かれた通路を見つけ、歩いて行った。
立っていた係員に「ありがとうございましたー」と言われ、軽く会釈をした。
外の景色が見えてきたところで、アスカが手を離した。
「・・・誰かに見られるかも」
僕はうん、と頷きアスカに歩調を合わせた。

日はすでに傾きかけていた。
どうやら思っていたよりも長く水族館にいたみたいだ。
24maTsu:2009/10/08(木) 00:17:36 ID:???

「どうだった?初めての水族館。」
「・・・思ってたよりも良かった。」
「そっか。ずいぶん興奮してたみたいだしね。」
こっちを見るアスカ。
「こ、興奮なんて!」
「アンタだって水槽の前でたそがれてたじゃない!」
「ゴ、ゴメン」
こんな他愛のないおしゃべりをしながら、しばらく歩いた。

駅に着き、切符を買ってホームに向かう。
まだ電車は来ないようなので、椅子に座った。
アスカも隣に座る。もちろん、少し間隔は空いているが。
だけど気のせいか、行きの電車よりもアスカとの距離が縮まったような気がした。
「シンジはさあ」
アスカが口を開いた。
「え?」
「・・・なんでもない。」
なんだろう、とは思ったがすぐに電車が来たので乗ることにした。
25maTsu:2009/10/08(木) 00:18:46 ID:???

「・・・・」
電車の中では、お互い口を開かなかった。
だが、気まずい、といった雰囲気ではなかった。
2つ目の駅に着き、改札を通る。空はまだ、若干明るい。
「ミサトさん帰ってるかなぁ」
「さあね」
「帰ろうか。」
「・・・(頷く)」
二人並んで歩く。アスカは、なぜかあまりしゃべろうとしない。
(なんかまずいことしちゃったかな)
と思いつつ、歩調を合わせる。

しばらく歩き、コンビニの前を通過した。
するとアスカが立ち止まり、
「・・アイス買わない?さっきジュースおごってもらったからおごるわ。」と言った。
「い、いいよ。悪いから。」
「いいから」
26maTsu:2009/10/08(木) 00:20:22 ID:???

シャツの袖を強引に引っ張り、コンビニに入ってく。
そこで(アスカが)アイスを選び、購入した。
「ありがとうございましたー」
そして、外に出る。

「マンションの裏の公園で食べましょ。」
「家で食べないの?」
「たまにはいいじゃない。」
しばらく考えて、
「そうだね。」と答えた。
少し歩くと、マンションが見えてきた。
公園の入口まで歩き、入る。
空はもう暗く、セミの鳴き声ももう聞こえない。
自分たち以外には誰もいなく、リーンリーンという虫の鳴き声しか聞こえなかった。
ベンチにアスカが腰掛け、帽子をとる。隣に、自分も座る。
27maTsu:2009/10/08(木) 00:21:31 ID:???

アスカはガサガサとコンビニの袋を漁り、アイスを1つ出した。
「ほら」
と、手渡される。
「ありがと。」
アイスを受け取り、ゆっくりとフタを開けた。
隣でアスカも同じ作業をしている。
スプーンの袋を開け、一口食べた。ほのかなバニラの味が、口いっぱいに広がった。

「ミサト、もう帰ってるみたいね。」
アスカが言った。
マンションの方を見ると、たしかに一室だけ明かりがついている。
「ホントだ。」
「帰ったら文句言われるかもね。夜ごはんはまだ!?って」
「はは、たしかに」

―数分の沈黙―
28maTsu:2009/10/08(木) 00:22:56 ID:???


少し気まずい。アイスも、ほとんど残っていない。
「あ、あのさ―」
「シンジは」
そろそろ帰ろうか、と言いかけたがアスカが割り込んで言った。
「え?」
「・・・」
アスカはアイスを握りしめて俯いている。
「そ、その・・」
なにか言いたいんだな、ということだけは分かった。
「・・・・(アスカ?)」
「・・・ファーストのこと好きなの?」
「・・・え?」
一瞬質問の意味が分からず、動きが止まった。
しばらくして状況を把握した途端、自分の顔が紅潮していくのが分かった。
「そそそそんなこと・・・」
アスカが僕の顔をジッと見ている。
29名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 00:23:32 ID:???
支援
30maTsu:2009/10/08(木) 00:24:24 ID:???

予想外の質問だった。
「好きというか・・」
「嫌いじゃないんでしょ?」
「ま、まぁ・・」
「そう」
再び下を向くアスカ。
僕は一つ息を吐き、気持ちを落ち着けようとした。
「じゃあさ」
アスカが言った。
「・・アタシは?」
僕はえっ、と小さく呟き、アスカの顔を見た。
「え、えっと・・・」

―数秒間の沈黙―
31maTsu:2009/10/08(木) 00:25:42 ID:???


なんと言えばいいのか分からず、頭が少しパニックを起こしていた。
まさかアスカにこんなことを聞かれるとは・・・考えてもなかった。
「・・・・」
何も言えない。
「なんてね」
アスカが言った。
「冗談よ。オドオドしちゃって、ホントバカなんだから」
と言って、立ち上がる。
(しまった)と思い、立ち上がったアスカの右腕を掴む。
「えっ」
正直、自分でも驚いた。無意識に掴んでしまった。
「シンジ?」
「あ、あのさ」
声が少し裏返ってしまったのが自分でも分かった。
32maTsu:2009/10/08(木) 00:27:23 ID:???

「アスカのことは」
―アスカが僕の顔を見る。
「・・すごく大切だよ」
「・・大切?」
―頷く。
「好きとか嫌いじゃなくて?」
アスカが尋ねる。
「うん、なんて言えばいいのかな」
ほんの少し考えて、言った。
「アスカのことは、好きとか嫌いとかじゃないんだ。」
「・・?」
「もちろん、嫌いじゃないよ。なんていうか、大切な女の子」
アスカは僕の顔をジッと見ている。
「いなくなったら悲しいし、嫌われたら辛いしね」
33maTsu:2009/10/08(木) 00:29:06 ID:???

「それって」
アスカが言った。
「好きってことじゃない?」
・・・そう言われるとそうかも、と思った。
「ふう」
アスカはそう言って、僕のおでこにデコピンをした。
「何を言うかと思ったら」
下を向き、「・・ゴメン」と言った。
ふふっ、と笑い、「じゃあ、帰りますか」とアスカが言った。

公園からマンションまでの短い道を、二人並んで歩く。
アスカは両手を腰の後ろに回し、帽子を持って歩いている。
マンションの入口まで行き、通路の電気をつけてエレベーターに乗った。
「そうそう、今日二人で出掛けたことは誰にも言わないでよ。」
と、アスカが言った。
わかってる、と返した。
34maTsu:2009/10/08(木) 00:31:07 ID:???

エレベーターを降りて、部屋の前まで歩く。
玄関のドアを開けると、おっかえりーとミサトさんの声。
靴を脱ぎ、家に入ると、肩にタオルをかけて椅子に座っているミサトさんがいた。
どうやら風呂上がりらしく、いつものようにゆるゆるの無防備なシャツを着ている。
「シンちゃん、私お腹空いちゃったわ〜。」
僕はふふっ、と笑い、「すぐ作ります」と言った。
アスカは「先にお風呂入る」と言い、部屋に戻って行った。
エプロンを着けていると、
「デートはうまくいったの?」とミサトさんに言われた。
デートじゃないですよ、などと言っているとアスカがパジャマを持って部屋から出てきた。
そして、風呂に向かうアスカ。
ミサトさんと僕はそんなアスカを目で追っている。

「で、どこに行ってたのよ」
「水族館です」
「あらいいわね、お年頃のデートって感じ」
「だからデートじゃ・・」
すると、風呂場からかすかに鼻歌が聞こえてきた。
風呂場の方を見るミサトさん。そして僕の方を見る。
「うまくやったみたいね」
僕は少し笑って、「は、はぁ」と言った。    (END)
35名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 00:35:32 ID:???

GJ
36maTsu:2009/10/08(木) 00:35:47 ID:???
以上です。
改めて読んでみると、下手だなぁと痛感しました。

読んでくれた人ありがとうm(_ _)m
37名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 00:36:24 ID:???
リアルタイムGJ!
ほのぼのしてて良かったよー

ちなみに新劇?旧劇?
38maTsu:2009/10/08(木) 00:39:49 ID:???
>>37
正直どっちを意識してっていうのはなかったです。
読み人次第ですね
39名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 00:42:12 ID:???
>>38
なるほど。水族館シーンはどちらともとれるなぁと思ったんだけど、まあ旧劇と思っときます。
よく見たらレイのことファーストって呼んでるしね。
40名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 02:45:41 ID:???
乙です。
ラストがなんつーか自然な感じでよかった……。
41名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 04:09:13 ID:NY2s41KY
久々に上手い人が来たな...
想像しやすい文章です
42名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 04:36:54 ID:???
こんな素敵な文章を投下する職人さんがいたとは…スレッド上げて下さった方に感謝です!ちょっと読破して来ます!

前スレの猫シンジさんのSSもまだ少し目を通しただけなのでこれから読むのが楽しみで仕方がないです^ω^
43名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 04:41:22 ID:???
GJ。シンジが原作のシンジらしくて良かったです
44名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 05:28:49 ID:???
>>38
新劇なら水族館はないし、サンマは知らんだろw
45名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 08:48:02 ID:???
GJ
ほのぼのしててよかったけど、
>「・・・(頷く)」の部分だけ台本みたいで違和感だったw
46名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 14:57:25 ID:???
>>45
前スレの猫シンジさんの面白いよ!
47名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 16:45:14 ID:???
>>46
台本みたいで?
48名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 17:20:16 ID:???
GJ
キャラがあまり壊れずに、仕上がっていてよかた
49名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 17:48:33 ID:???
>>47
ん?猫シンジさんのは前スレのだよ?
(´・ω・`)
このスレッドの作品も好きだけど…
50名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 19:24:55 ID:???
maTsu さん!
あんた最高や。
こんないい作品が続けばいいのにな・・・。
51名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 22:42:02 ID:???
おもしろいが小説らしいとは思えんなw
でもまぁ乙
52名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 23:14:39 ID:???
>>51
まぁ細かいことは(ry
小説らしくてもつまんないよりは全然おkでしょ
53名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/09(金) 16:35:59 ID:???
十日町
54名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/09(金) 18:51:00 ID:???
普通に面白かったよ。これからも頑張って下さい
55名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/09(金) 19:37:18 ID:???
稲荷町
56いときお:2009/10/09(金) 23:35:18 ID:???
投下いきます。
イタモノ要素ありの注意は自己責任でお願います。
NGワードは”いときお”で
57いときお:2009/10/09(金) 23:36:08 ID:???
 昨夜、アスカと喧嘩をしたんだ。
発端は些細なことで最近野菜の食べ残しが目立つことについて。
段々と口論がエスカレートして売り言葉に買い言葉さ。
それでつい言っちゃったんだ『どうせ食べるだけのくせに』って。
さすがに怒ったのか高速二連装平手打ちがびびびんびんとエンドレスワルツ。
頬を真っ赤に染めたアスカは『顔も見たくない』と部屋に篭ってしまった。
ここまでは良くある風景だよね。
今朝も僕の用意した朝食に手もつけず、アスカは黙って出て行った。
お腹が減ったら帰ってくると思ったけれど、お昼になっても連絡一つよこさない。
仕方なく朝食の残り物で済ませようと思った時に電話が鳴ったんだ。
内容は――アスカが交通事故に遭ったって。

 大急ぎでネルフの特別研究病棟へ駆けつけた。顔馴染みの天井があるところだ。
アスカの運び込まれた病室を覗くと既にミサトさんやリツコさんと楽しげに話している。
なんだよ元気じゃないか。
心底ホッとして無事を喜ぶと同時に喧嘩中だったことを思い出した。
こんな時に僕は何を考えているんだろう。ちっちゃい男だ。
僕に気が付いたミサトさんが何かを促すとアスカが笑顔で手を振った。
「アスカ。彼がさっき説明したサードチルドレン、碇シンジ君よ」
 病室に入る僕を指差しながらリンゴを丸齧りしていたミサトさんがアスカに言う。
誰に向けているんですか、その無意味な説明的なセリフは。
「そう。あなたがシンジね。初めまして惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく」
 何故か頬を染めながら自己紹介するアスカ。こちらこそコンゴトモヨロシク、って何の冗談?
「もう分かると思うけど、どうもアスカってば記憶喪失らしいのよ。困っちゃうわね」
 ミサトさんは笑いながら口に放り込んだリンゴの芯をシャクシャクと噛み砕いた。
そんな馬鹿な。ネタ切れしたラブコメ漫画じゃあるまいし。
「事実よ、受け入れなさい」
 バナナの皮を剥きながら真剣な顔で言われたって困るよミサトさん。
58いときお:2009/10/09(金) 23:37:40 ID:???

 リツコさんの解説によると外傷は軽度の頭部打撲、いわゆる『たんこぶ』一箇所のみ。
買物の帰り道、暴走するスクーターに撥ねられて車田落ちしたらしい。
どうみても横からの衝撃なのに真上に天高く吹っ飛んだ挙句、頭から落ちるというアレだ。
よく無事だったねアスカ。
「ヘッドセットが無ければ即死だったわ」
 そういう問題なんだろうか? さすが赤い人は格が違った。
なお轢き逃げ犯はネルフ諜報部が総力を結集して捜索中。
目撃者である黄色いベスパのお姉さんから有力な情報を得たそうで確保は時間の問題らしい。

「これ現場に落ちていたそうです。一応シンジ君に渡しておきますね」
 とマヤさんに壊れたDSとイヤホンと箱を渡された。
どうやら歩きながらDQ9をやってたらしい。
自分だけは事故に遭わないなんて考えてるからこんなことになるんだよ。
さようなら僕のDS、僕の冒険の書、僕のラブプラス。
箱の方は駅前にある美味しいと評判のケーキ屋さんのだ。
開けてみるとグチャグチャにクリームとカステラの中に大きなイチゴが二つ混ざっていた。
 
 様々な検査結果を確認したリツコさんがため息をついた。
記憶喪失を除いた健康状態は見れば見るほど問題無いらしい。
ただシンクロ率が大幅に落ちてしまって弐号機が起動できるかも妖しいそうだ。
「二人とも今日はもう帰って良いわよ。事故に気をつけてね。ミサトは居残りよ」
 普通に生活した方が記憶も回復しやすいということで入院せず帰宅することになった。
ミサトさんが居残りなのは一時離脱イベントに関する作戦シフト変更のためらしい。
このままではEVA一斉射撃もユニゾン攻撃も使えず戦力は激減だ。
だからリツコさんも科学的に記憶喪失の治療法を研究するそうだ。
期待していいんだろうか。
「同じくらいの衝撃を与えてみると直るって聞くけど、どうかしら?(キリッ」
 僕たちは無言で病室を出た。
59いときお:2009/10/09(金) 23:38:26 ID:???

【いときお 〜いともたやすく行われる記憶喪失〜】

 外に出ると夕暮れで、ちょうどビルの谷間に日が沈むところ。
見慣れているはずの光景に『凄い』と目を輝かせているアスカがとても可愛くて、少し悲しい。
「さあ帰りましょ」
 アスカがそう言って僕の手を握った。
殴られる以外でアスカに触れるのはいつ以来だろうか。
自分以外の体温を少なからず意識してしまう。
急なことで戸惑っている僕にアスカは首をかしげた。
「どうしたのシンジ? あなたが案内してくれないと帰れないじゃない」
 そっか。そうだよね。
普段はアスカが前を歩くことが多いから僕は無意識にそれを待っていたみたいだ。
今は僕が前を歩かないといけない。
気が付くと背筋がピシッと伸びていた。
しっかり胸を張らなきゃいけない。何故かそう思った。

 真っ直ぐ帰る予定だったけどスーパーマーケットに寄り道。
今日の夕食はハンバーグにしようと思ったからだ。
別に少しでも長く手を繋いでいたいから遠回りしたわけじゃないよ。
アスカの好きな物を作れば記憶回復に繋がるかもって思ったんだ。本当だよ。
「ええと、これで何を作るの?」
「ハンバーグだよ。アスカの大好きな」
「そっか。ハンバーグかぁ……」
 僕に言われるまま食料品を買物カゴへ入れていたアスカが悲しい顔をした。
やはり材料を見ても何を作るかも思い出せないのだろう。
「駄目ね。ごめんなさい。私、作り方を思い出せない」
 それは仕方ないさ。作ったことないんだから。
60いときお:2009/10/09(金) 23:45:33 ID:???

「ぃよう、お二人さん。相変わらず夫婦揃って仲がえぇなぁ」
 店で偶然出会ったトウジがいつものように僕たちを冷やかした。
買物カゴには米に牛乳、ジャガイモにと何だか重そうな物ばかり入っている。
料理や洗濯は男の仕事じゃないと嫌うけど、力仕事なんかは積極的に手伝ってるみたいだね。
「か、からかわないでよ」
 僕は咄嗟に握っていた手を離そうとしたけどアスカは満更でもない様子で握っていた。
少し照れた様子で半歩僕に近づいたような気がする。
それを見たトウジは何かを察した表情で爽やかに去っていった。
トウジのくせに物分りが良すぎる。さては洞木さんと何かあったに違いない。
「夫婦だってさ〜」
 普段なら顔を真っ赤にして反論するはずのアスカが嬉しそうに頬を染めていた。
本当に記憶が無いんだなと実感する。無いだけなら良かった。
「まだ婚約もしてないのにね〜」
 そう言ってアスカが腕を絡めて寄り添った。
胸の柔らかい感触が腕に――ってもしもしアスカさん、一体何のお話ですか?
「赤木博士とミサトさんが『いつでもラブラブの恋人同士で現在同棲中』だって……」
 そう言いながら頬を染めて『いやん、恥ずかしい』と言わんばかりに両手で顔を覆った。
どんな大ボラ吹き込んだんだよあの二人。
嬉しいけどこんな状況じゃ素直に喜べないよ!
嘘です。大嘘です。恋人ですらないから信用しないように。
「そうね。『面と向かって恋人だって言うと照れて否定しちゃうから注意』って言われたっけ」
 腐っても作戦部部長、常に二手三手先を読みやがる。
他に何て吹き込まれたか全部教えなさい。僕のためじゃなくてアスカのために。
「えーと……色々? シンジがエッチな本をどこに隠してるか、とか」
 順番が変わっていたから変だと思ってたんだけどミサトさんか。 
「そのくらい普通らしいから私は気にしないわよ。どんな子が好みかは少し気になるけどね」
 にこやかな笑顔の下から物凄いプレッシャーだ。アスカがオーラで大きく見えるや。
帰ったら即処分しよう。
61いときお:2009/10/09(金) 23:50:00 ID:???

 玄関に着くと僕は一歩先に入り、アスカの『ただいま』に『おかえり』を返した。
物珍しげに見回すアスカに部屋割りの説明をして夕飯の支度に取り掛かる。
一応ミサトさんの分も作っておくか。
余ってもハンバーグならアスカが食べるしね。
手早く準備して作業開始――と思ったら直ぐ後にアスカが立っていた。
直ぐ出来るから大人しくTVでも見て待っててね。
「あのね…その…私にも何か手伝えること…ない?」
 モジモジしながら上目遣いで言わないで。想像してたより破壊力が高い。
なんでも実際に料理をすれば作り方を思い出せるような気がするらしい。
気がするだけだね。残念だけど。
「じゃあ一緒に作ろうか。一から作り方を教えてあげるよ」
 大発見。アスカってエプロンが凄く似合うや。

 手取り足取り丁寧に教えた甲斐もあって普段の倍以上の時間が掛ったけど完成だ。
「ウルトラ上手に焼けましたー!」
 と元気な掛け声の割には少しコゲてるのは御愛嬌。
ほとんど全部アスカが作ったのに立派にハンバーグの形をしているのは凄い。
デザートに用意した見舞い物のスイカとチェリーのおかげかな。
「はいシンジ。あーん……」
 アスカがハンバーグを刺したフォークを僕の口の前へと差し出した。
えーと食べろって? 少し恥ずかしいけどミサトさんもいないし、あーん。
「美味しい?」
「うん。凄く美味しい」
「……////」
 自分の料理を褒められて喜ぶアスカはとても可愛かった。
僕も外食以外の料理を食べるのは久しぶりで嬉しかったよ。
しかも女の子に手料理を食べさせて貰うなんてさ。
都市伝説やゲームの中だけじゃなかったんだね。ラブラブは本当にあったんだ。
62いときお:2009/10/09(金) 23:50:56 ID:???

 楽しい夕食も終わって、僕は残りもののデザートを齧りつつコーヒータイム。
アスカは音程外れの鼻歌を歌いながら洗い物をしている。
何だか新婚ホヤホヤみたいだ。
よく結婚すると荒んでた人間も丸くなるって言うけど本当かもしれないね。
今なら救いようの無い話が10年後にハッピーエンドでリメイクされたって言われても信じるよ。
「どうしたのシンジ? ボーっとして」
 いつの間にか近くにいたアスカがデザート皿から最後のチェリーを摘んで口に運んだ。
ちょっとした仕草が妙に艶かしく見える。アスカって口紅してたっけ?
「ちょっと感動してただけ。だってあのアスカが――」
 そこでふと気付いた。『あのアスカ』だって? 
そうだ。僕は何をやっているんだ。
目の前にいるのは素直で明るくて優しくて僕を慕ってくれるアスカ。
だけど今のアスカは本当のアスカじゃない。
僕はそれを誰よりも知っているはずなのに。
「ねぇ…あのアスカが、なに?」
「ごめん。何でもない…何でもないよ」
「そう…変なシンジ」
 アスカは少し残念そうに笑うと空になったデザート皿を持って戻っていく。
少し手を伸ばせば抱きしめられるくらい近くにいるアスカが限りなく遠くにいるように思えた。
それは多分間違いじゃない。

<<つづく?>>
63いときお:2009/10/09(金) 23:51:58 ID:???

記憶喪失でツンデレならぬ素直デレ化したアスカさん。
ほとんどオリキャラなんでイタモノ扱いで。

タイトルに深い意味は無く普通の記憶喪失バカップルネタです。
64名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/09(金) 23:56:01 ID:???
とりあえず乙です。
なかなか・・・うひひ・・・。
大好きだ。
65名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 00:06:26 ID:???
Remembranceみたいなことになるヨカンがしてちょっと怖い。
66名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 00:23:00 ID:???
記憶と共に
人 格 崩 壊
67名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 01:25:35 ID:???
タイトルは大統領のスタンドみたいだなw パロディが過激に詰め込まれてて大丈夫かと
不安になったが、とりあえず期待
68名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 01:54:29 ID:???
まぁ、自分好みの女になったのに、それは本来の彼女ではない、
ってのは過去の創作で何万回も使われた手法で、LASでもよく見る。
既出のRemenbaranceとかな。

出オチに近いから、描写を工夫しないと苦しい。
69名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 04:37:05 ID:???
なんでこのスレの読者ってこんな偉そうなんだw
70名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 06:46:19 ID:???
本人も出オチのつもりなんだろうな。
事故の経緯を考えてもシリアスにはなりそうにないw
71名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 07:45:47 ID:???
>>69
本当に何様だって感じだ
話が途中で終わったり作者が減るの嫌だから
不満がある人は黙っててほしい
72名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 07:47:52 ID:???
イタモノ系はいつもこうなるよな
73名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 08:30:05 ID:???
何も感想がつかないでスルーされるよりはいいんじゃない?
74名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 08:38:43 ID:???
ここは選ばれた人だけが住める場所。
作家が減るのは仕方なし。
75名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 09:16:41 ID:???
if「僕も選ばれし者ですよね」
76名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 09:18:02 ID:???
あ、久しぶり
77名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 10:00:56 ID:???
選ばれてない!
消えろ!
78名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 10:58:02 ID:???
ネタらしき部分の元ネタが全然分らんから詰まらん
79名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 12:42:18 ID:???
不満だから愚痴を言ってるとかじゃなくて、単に技量が劣ってそうだから指導してるだけだと思うんだが。
上から目線がイヤなのか? それなら切磋琢磨と読み替えとけ。
このスレにはFF書きが多いようだから、稀にありがたい指摘も受けられる。
そういうのを排除したらそれこそもったいない。
投下する側にはそういうものを期待している者もいることを忘れないでくれ。
80名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 12:52:14 ID:???
おれはifはすきだぞ
むしろ期待の新星だと信じてる
81名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 13:48:34 ID:???
笑えない冗談だな
82名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 14:29:15 ID:???
俺的には今回の人格崩壊は許容範囲内だったな。
むしろこれでイタモノかってくらい。
今後もネタ系路線なら超設定やスパシンでも大歓迎。
記憶喪失なんて定番ネタだし変に凝った展開にするよりは気楽に進めて欲しいと思う。
83名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 16:01:42 ID:???
>>63
乙っ!イタモノではないなw
是非この明るい路線で続けて欲しいな
続きまっとるよ〜
84名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 16:07:01 ID:???
>>72
今回のこれは、イタモノとは言わんだろ
85名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 16:26:06 ID:???
>>79
うぜぇw
86名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 20:49:52 ID:???
自分で書かないクレクレ読者が一人前にうぜぇとか言ってんじゃねぇよ。
87名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 21:21:52 ID:???
>>74は選ばれた住人なのか?

やけに偉そうだがw
88名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/10(土) 21:52:24 ID:???
74ですが
おいらは橋の下の人間でゲス。
まぁ、見ていてそう思っただけです。
89名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/11(日) 01:24:42 ID:???
みんな落ち着こうぜ

おとなしく投下を待つのが一番良いと思うんだぜ
90名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/11(日) 09:24:42 ID:???
いときおGJです!
どう展開していくのか楽しみです
91名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/11(日) 09:35:08 ID:???
日記来てたな
92名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/11(日) 13:23:51 ID:???
指導してるとか・・・
頼んでねぇよ
93名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/11(日) 20:31:51 ID:???
この静けさは投下町によるものなんだろうか?
94名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/11(日) 21:05:21 ID:???
職人町
95名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/11(日) 21:42:15 ID:???
自分の作品を投下するより、他の人の作品を見ているほうが楽しいな。
そう思うのは私だけでしょうか
96名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/12(月) 16:34:02 ID:???
>>95
なら職人を応援すれば良いと思うよ
97名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/12(月) 16:35:49 ID:???
稲荷町
98名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/12(月) 18:05:44 ID:???
>>96
そうします。
今は充電中で小説を読んでますんで…
99マリン@marine:2009/10/12(月) 21:57:27 ID:???
何気ない日常


今日も2人はいつものように、学校が終わったらネルフに行き、シンクロテストをし、帰る途中に買い物をして夕日を背に自宅へと向かっていた。

「今日も疲れたね」
「そうね。いつもシンクロテストばっかで嫌になっちゃうわよ。たまには休みが欲しいわ」
「ははっ」

そんな雑談をしているうちに2人は自宅のマンションについた。
ところが、いつもなら2人は自宅までエレベーターを使うのだが、今日は定期点検で使えないらしい。

「なんなのよこれ!」
「アスカ落ちついて!」

地団駄を踏んで若干暴れ気味のアスカを、なんとかシンジがなだめて、2人は階段で行くことにした。

100マリン@marine:2009/10/12(月) 21:59:22 ID:???

しかし、何も持っていないアスカと比べ、カバンと買い物袋を持っているシンジは、階をあがるごとにキツくなっていく。
いや、この場合は持たされている、という表現の方があっているのかもしれない。

「はぁー疲れたよアスカ」

階段の途中でシンジは嘆く。

「もう少し頑張りなさいよ!男の子だったら」
「はぁ…」
「ほら早く!」

疲れているシンジをお構いなしと言わんばかりに、アスカは一段ぬかしでどんどん進んでいく。
シンジは疲れながらもなんとかアスカについて行く。

そして自宅まであと2階という所まで登ってきたとき、アスカは階段でつまずいて転んでしまった。
心配になったシンジは急いでアスカのもとへ駆け寄る。

101マリン@marine:2009/10/12(月) 22:01:36 ID:???

「…っつー!痛っ…」
「アスカ大丈夫?」
「だ、大丈夫よ!」
「あ、膝から血が出てる!無理しちゃダメだよ!」
「これくらいどうってことないわよ!うっ…」

アスカの膝にズキっと痛みが走った。

「ほらやっぱりダメだってば!…よいしょっと」

そういうとシンジはアスカに背を向けてしゃがんだ。いわゆる、おんぶのポーズをとっている。

「ほら、アスカ!早く帰って消毒しよう!」
「な…ちょ、ちょっと!アタシをおんぶするってこと!?」
「そうだけど…」
「は、恥ずかしいわよ!」
「誰も見てないから大丈夫だって!さ、ほら」

102マリン@marine:2009/10/12(月) 22:04:08 ID:???

シンジはいつもの優しい顔でアスカを見ていたが、その先にあるシンジの心配している眼差しを受け取ったアスカは、
なぜかこの時ばかりはプライド云々を捨て、シンジに甘えてみる選択をした。

「じゃあ…頼んだわよ」
「あ、ごめん買い物袋だけは持ってね…よいしょっと」
「しょうがないわね!」

そういうとシンジはアスカをおんぶした。
この時のアスカの顔はシンジには見えないが、真っ赤に染まっている。その原因は夕陽の影響だけではないだろう。

そして、アスカはシンジの背中に、優しい温もりを感じた。

103マリン@marine:2009/10/12(月) 22:06:11 ID:???

(一応…男の子なんだもんね。でも…この感じ…落ち着くなぁ…ずっとこうしていたいかも…)

そう思うと、アスカはシンジを背中越しにぎゅっと抱きしめた。
一方の鈍感なシンジは、それに気づいているのかは定かではない。

程なくして2人は自宅についた。アスカにとってはとても短く、名残惜しい時間だったのは言うまでもない。

自宅の鍵を開け、シンジはアスカをリビングのソファーに座らせると、急いで救急箱を取りに行き、アスカに応急処置を施した。

104マリン@marine:2009/10/12(月) 22:07:44 ID:???

処置をしてもらったアスカは珍しくシンジにお礼を言った。

「ありがと。シンジ」
「ど、どういたしまして」

シンジは驚いたような顔をしていたが、2人は目が合うとにっこりと微笑んだ。


その後、アスカがわざと転んで、シンジにおんぶをねだるようになったのはまた別の話である。

105マリン@marine:2009/10/12(月) 22:12:37 ID:???

相変わらずヘタクソですみません。
今回は甘々というか、ほのぼのというか…
やっぱりこういうものの方が書きやすいですねw

ではでは今回はこの辺で…

あ、LAS日記も色々書いたのでよろしくお願いします。

106名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/12(月) 22:13:36 ID:???
いいな本当に
何気ない日常だ。
……。
107名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/12(月) 23:24:21 ID:???
投下GJ
こういうさり気ない積み重ねがあってこそなんだよな。
108名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/13(火) 10:57:32 ID:???
こういう日常がたまらんなぁ
109名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/14(水) 14:10:17 ID:???
投下町
110いときお:2009/10/14(水) 20:56:46 ID:???
>>62の続き

 夕飯の洗い物を終えたアスカはお風呂タイムへ。
記憶を失っているのに普段と変わらない入浴時間だ。身体に染み付いた習慣だろう。
念のためシャワーとかお風呂の入り方は分かるかと尋ねると
『大丈夫……でも一人で入れないって言ったらシンジが入れてくれるの?』
 と返されてしまった。無理です。ごめんなさい。

 手持ち無沙汰で新聞を開くとアイドルタレントの記事が目に入った。
アスカは毎週このアイドルが出演している人気ドラマを欠かさず見ていたっけ。
よく覚えていないけど『ナントカ育成計画』。
いつもアスカがお風呂から出てくる頃に放送してるはずだ。
録画くらいしといてやるか。記憶が戻った時に怒られたくないしね。
TVをつけると僕が好きな『ガイ英伝』が始まるところだった。
そういえば本放送はこの時間だったんだんだね。
毎回ケンスケから録画したのを借りていたから忘れていたよ。
普段は洗い物やらミサトさんが占領してたりやらでTVなんて見れないもんな。
そんなことを考えながら予約録画もセット完了。
でも折角のガイ英伝だけど見たい気にならないのは何故だろう。

「きゃあああああああああ!!」
 風呂場から絹を裂くようなアスカの悲鳴。
使い方間違えてシャワーから水でも被ったのかな。
心配して脱衣所へ近づいた僕に大慌てで飛び出したアスカが抱きついてきた。
「シ、シ、シンジ、なんか得体の知れない生き物が入ってる……」
 震えながら風呂場を指差し涙目で訴えている。
恐る恐る視線を指の先へ向けると、タオルを頭に乗せたペンペンが悠々と姿を現した。
なるほど。謎は全て解けた。
111いときお:2009/10/14(水) 20:57:43 ID:???

「ああ、ペンギンていう鳥の仲間だよ。名前はペンペンって……」
「ギャワッ!!」
「ひぃっ!」
 挨拶をしてテクテクと冷蔵庫に向かうペンペン。
驚いたアスカは僕の後ろに隠れてしまった。
そんな微笑ましいアスカを見ると目に飛び込んできたのは眩しい白い肌。
お風呂に入る間際だったらしく素っ裸だ。
ごくりと思わず唾を飲み込むのと同時にアスカと目が合った。
ようやく自分の格好に気がついたらしく、その顔が段階的に朱に染まっていく。
「ご、ごめん……」
 反射的に顔を反らしながらも僕は飛んでくる理不尽な攻撃に備えた。
しかしアスカは可愛らしい悲鳴と共に脱衣所へ逃げ込むと顔だけを覗かせ
「シンジの……エッチ……」と言い残してカーテンを閉めた。
 可愛いなぁ。いつもなら記憶を失うまで殴ってくるのに
でも今のは僕のせいじゃないぞ。ペンペンのせいだ。ペンペンが悪いんだよ。ペンペンGJ。

 気を取り直して明日からのことを真剣に考えよう。
記憶喪失を直すアイディアはリツコさん頼みだ。任せて大丈夫なんだろうか?
それにしてもアスカの肌、綺麗だったな………
記憶が戻るまでは学校を休んでネルフへ通うことに決まっている。
それは僕も一緒だ。今のアスカを一人で出歩かせるわけにもいかないからね。
アスカの足はスラッとしてて腰の当たりキュッとスタイル良くて……………………
普段通りに生活すればいいって言うけど本当に効果あるかな?
そういえば今夜は二人っきり………………………………………………
駄目だ駄目だ駄目だ。さっきから全然集中できてないじゃないか。
『ガイナの歴史がまた1ページ……』
 気がついたら番組も終わってる時間だし。
112いときお:2009/10/14(水) 21:01:23 ID:???

「シンジ、お風呂空いたよ」
「……………」
「聞いてる?」
「あ、ああ。そうだね……」
 湯上りのアスカを見てさっきの裸が重なるとかナニ考えてるんだ。
緊張を悟られないよう僕は急いで風呂場へと逃げ込んだ。
むむむ、お風呂の湯温が高いからか膨張しちゃってるし。
冷静になろう冷静に。深呼吸を一回二回。父さんの物真似でもして落ち着け。
「問題ない。全て計画通りだ」
 似てないなぁ。でも少し落ち着いた。
計画とか故意じゃなくて事故なんだから仕方ないよね。
触れない方向で行こう。そうしよう。

 たっぷり茹って風呂を出るとアスカはあのTVドラマを真剣に見ていた。
冴えない主人公を様々なヒロインが取り合うという実に主人公に都合のいいドラマだ。
それが何でこんなに人気があるのかさっぱり分からない。
当のアスカも毎週見終わる度に愚痴をこぼしていたしね。
見ててイライラするとか押しが足りないとか色々。
それはさて置き、あんなアクシデントがあって気まずかったから助かるよ。
ああいう時は殴られた方がお互いに気楽だしね。
何だか昨日叩かれた頬が懐かしいや。そっちの趣味はないはずなんだけど。
とにかくドラマが終わったら内容について当たり障りの無い会話でもして誤魔化そう。
そう思った僕はアスカから離れて座った。
113いときお:2009/10/14(水) 21:05:55 ID:???

 お気楽なドラマだと思ったら考えが甘かったようだ。
『ケガしたとこちょっと見せてごらんなさいよ』
『あ……もう大丈夫だよ。ほとんど治ってるから……』
 普段はドタバタでオチが着くくせに今回は思いきりラブシーンに突入してる。
何かこうモヤモヤして別の意味で余計に気まずい。
チラリとアスカを見ると視線はTVに釘付けだ。
記憶は無くても好みは同じなんだろうか。
それとも女の子はみんなこういう番組が好きなんだろうか。
あ、キスシーンだ/// よく分からないけど直視できない。
家族で見てたら気まずさはこんなもんじゃないんだろうな。
ラブシーンとかベッドシーンとかオナニーシーンとか反応に困るよ。
チャンネルを変えるわけにもいかないし、急にどくのも意識してるようで変だし。
とにかくこんなのどう話題にすればいいんだ。
気恥ずかしくてまともな感想なんて語れやしない。
普段アスカが愚痴しか言わなかった気持ちが少し分かるよ。
「…………」
 アスカはドラマ本編が終了してCMに入ってもポヤーンとした表情でTVを見ていた。

「あ、えーと、あの、その……」
「時間も遅いし、今日はもう休もうか。色々とあってアスカも疲れたろ。おやすみ」
「そ、そうね。おやすみシンジ」
 よし、少し強引だけど乗り切った。
アスカが自室に入ったのを確認して、僕も部屋に戻る。
やれやれ今日はとんでもない一日だったよ。
素直で大人しいアスカなのに普段の三倍くらい疲れた気がする。
明日もまた色々なことがあるんだろうな。
僕はアスカが怪我しなかったことを神様に感謝しつつ眠りについた。
114いときお:2009/10/14(水) 21:13:40 ID:???
 翌日。予定通り僕たちはネルフで戦闘訓練を受けた。
アスカは以前の成績には遠く及ばないものの普段の8割近い得点を叩き出している。
ろくな操縦説明も受けていないというのにだ。凄いよアスカ。
天才と呼ばれる理由が良く分かった。
僕とは生まれ持ったセンスが違うのだろう。
無邪気に喜ぶアスカにミサトさんが笑顔で判定結果を伝えた。
「足手まといにしかならないわね。当分の間、弐号機は無いものとして作戦を立案します」
 ミサトさんの評価は厳しかった。
今のアスカの操縦は反射行動、つまり体が勝手に反応する動きに頼りきっている。
それは今までのアスカが体に染み込ませた記憶だそうだ。
生まれ持ったセンスなどではなく、数え切れない程の努力の末に培った技術だ。
だから射撃でも格闘でも条件が揃えば無意識に最適な行動を取る。取ってしまう。
しかしそれ以外の動き、判断力は素人同然。昔の僕と大差ないらしい。
要するに自分の頭で考えなきゃいけない部分で落第点って事だ。
「頑張ったのに……シンジは褒めてくれたのに……」
「努力は認めるわ。でも不安定なまま戦場に出すわけには行かないの。理解できるわね」
「はーい……」
 アスカがショボーンと両手の人差し指を付き合わせながら返事をした。
酷いよミサトさん。
記憶が無いのに何も教えなかったら出来るわけ無いじゃないか。
「教えてどうするの。アスカは自分で思い出さなきゃいけないのよ」
 言われてみればその通りだ。
アスカなら直ぐに覚え直すだろう。でもそれじゃ意味が無いんだ。
冷たいようだけど正論、ミサトさん真面目に考えてくれていたのか。
てっきり説明するのが面倒で省いただけかと思ったのに。
疑ってごめんなさい。
「後はリツコのところでカウンセリングだけね。それが終わったら今日は帰っていいから」
115いときお:2009/10/14(水) 21:26:46 ID:???
 
 僕たちはプラグスーツから私服に着替えてリツコさんの研究室へと向った。
あれ? 指定されたはずの研究室の中は真っ暗で奥が見えない。
部屋を間違えたかな?
「一人づつ、ゆっくり奥へ入ってください。まずはアスカから」
 中からマヤさんの声が聞こえた。こんな暗闇で何のカウンセリングだろうか。
五円玉に糸を通した物とか水晶玉とか妖しげな物を用意していそうだ。
 ドアの外で待つこと2分足らず。
「ぃいやああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」
 アスカの悲鳴に僕は研究室へ飛び込んだ。
部屋の中は明るく、中央ではアスカがペタンと脱力して座り込んでいる。
しかも震えながら大粒の涙を目に一杯貯めて今にも泣きそうじゃないか。
一体何をしたんだよリツコさん!
「ショック療法は効果なし、ですね」
 冷静にメモを取るマヤさんの傍らには妙な大きい人形と懐中電灯が転がっていた。
白いノッペリした肌、髪も目も耳もなく大きな口に白い歯。
目の無いウナギのようなノッペラ坊のような不気味な人形だ。
なるほど。これを暗闇で下からのアングルで照らしたわけだ。
そりゃアスカでも悲鳴を上げるよ。僕なら腰を抜かすね。多分。
「やはりノッペラ坊ではなく一つ目小僧にするべきだったかしら」
「いえ、ここは流行のぬらりひょんか古風に錯乱坊で行くべきだったかと」
 この状況で一番ビックリ効果が大きいのは父さんの顔かなと思いつつアスカに駆け寄る。
「大丈夫アスカ? 帰ろうよ。もう終わったみたいだし」
「…………」
 そう手を差し伸べたけどアスカは情けない顔でぷるぷると小刻みに首を横に振った。
どうしたの? 驚きすぎて腰を抜かしたとか?
ちょっと照れくさいけどおんぶしようか?
「ああ、なるほど。マヤ、シンジくんを」
「はい先輩。シンジくんは休憩所で30分ほど待機してください」
 突然マヤさんが僕を回れ右させると部屋の外へと追い出した。何だってんだよもう。
116いときお:2009/10/14(水) 21:32:11 ID:???

 休憩所の自販機コーナーではミサトさんがカップ麺にUCCホットコーヒーを注いでいた。
うぷっ。どんな育ち方をすればこんな味覚になるんだろうか? 
「美味しいわよ。一口食べる?」
 お断りします。大体なんでそう能天気なんですか。
記憶が無いからってアスカに僕が恋人だとか適当なデマを吹き込んだりして。
「別にいいじゃない。キスするような仲なんでしょ」
「ななななんで知ってるんですか!」
 家の中まで監視してるなんて酷いよ。いくらなんでもプライバシーの侵害だ。
「ネルフ中が知ってるわよ。副司令が『また恥をかかせおって』って寝込んだじゃない」
 ユニゾン特訓の方か。驚ろかせないでよ。
未遂だって言ってるのに誰も信用してくれないんだよな。しときゃ良かった。
「今のアスカは凄く不安定なの。絶対的に頼れる人がいなかったら不安で潰れちゃうわ」
 それで僕ですか。それはいいとして勝手な設定を増やさないでください。
「役得だと思いなさい。実際問題、適当な奴にフラフラ傾いたりしたら困るのよ」
 今のアスカは良くも悪くも影響を受けやすいから注意が必要らしい。
一人で外出して加持さんみたいな人に目を付けられたら最悪だとミサトさんは力説する。
それでとりあえず僕にガッチリ押し付けておけば間違いないだろうという結論らしい。
僕が間違いを起こしたらどうするんだよ。
「大丈夫。アスカを襲うような甲斐性は絶対無いと信じているから」
 真面目な顔で言わないで下さい。僕だってね――
「襲うの? しちゃうの? ヤッちゃうの? 避妊だけは必ずしなさいよ」
 襲いません。しません。ヤりません。ごめんなさい許してください。
「でもまぁ、自分好みのアスカに育てられるて素敵じゃない? プリンセスメーカーって感じで」
 若いんで何を言っているのか分かりませんが最高傑作は2だと思います。
でももしもアスカがエヴァと出会わなかったら性格が違っていた可能性は十分にある。
僕だって父さんと母さんがいて平和に暮らしていたら、今とは違う人間に育っていただろう。
今のアスカは、アスカの辿るはずだった可能性の一つなんだろうか。
117いときお:2009/10/14(水) 21:37:14 ID:???

 休憩所で暇を潰すこと40分。
研究室まで迎えにいくとアスカは何故かさっきとは違う服を着ていた。
「お待たせシンジ。帰ろっか」
 くんくん、いつもと違うシャンプーのような香水のような匂いもする。
一体どんなカウンセリングをしたんだろう。アロマテラピー?
「ほ、ほら早く帰ろ……///」
 アスカが強引に僕の手を引っ張った。
僕のカウンセリングがまだですと言うと最初から予定にないとマヤさんに笑顔で返された。
酷いなぁ。僕だって精神的に病む時は病むんだぞ。胃に穴くらい簡単に開くんだぞ。

 帰り道。今日もちょっと寄り道して駅前のケーキ屋さんへ。
ネルフでも美味しいと評判のお店だ。ついでに高いことでも評判のお店。
何度かケーキを食べたことはあるけど来るのは初めてだ。
ショーケースに並ぶ色取り取りのケーキが華やかで目移りしてしまう。
「えーと……コアイチゴショート」
 散々時間をかけてアスカが選んだのはオーソドックスなイチゴのショートケーキだ。
柔らかそうなクリームの上に大きなイチゴが一つ乗っている。
昨日、事故に遭った時に持っていたケーキも多分これだろう。
「じゃあそれを二つお願いします」
「畏まりました。店内でお召し上がりですか?」
 ここは店内にカフェが併設されており、この場でケーキを楽しめるという寸法だ。
折角だから食べていくことにした。
「すっごく美味しい……私こんなに美味しいケーキを食べたの生まれて初めて」
 何も思い出せないか。好きなケーキでも食べればと思ったけど効果は無いみたいだ。
「ごめんなさい……私、頑張って思い出すから!」
 思い出そうと意識しないで自然に思い出せたらでいいよ。
ケーキが美味しくなくなっちゃうからね。
118いときお:2009/10/14(水) 21:43:04 ID:???

「シンジ。私たちって、いつもこうやってデートしてたの?」
 デート? そういえばデートらしいことなんてアスカとしたことなかったな。
アスカに限らず女の子とデートなんてしたことないけどさ。
「恋人だったのに? へー、そうなんだ。デートしたことなかったんだ。ふふふ……」
 笑わなくてもいいだろ。その代わりに家では毎日一緒に食事してるじゃないか。
掃除も洗濯も――止めよう、何だか言ってって虚しくなってきた。
「じゃあこれってシンジの初デートになるのね。そして私だけの新しい記憶に」
 これがデートと呼べるか分からないし、今の記憶がどうなるかも分からないよ。
でも何だか妙に嬉しそうだからいいか。
「ねぇ。あのバルディエルパフェってのを食べると何か思い出しそうな気がするんだけど」
 いい加減にしなさい。大きすぎて食べきれないだろ、あんなの。

 結局バルディエルパフェを完食して帰宅。
チョコアイスをベースにしたパフェが苺ソースで真っ赤に変わっていくのはアスカ好みかも。
途中でアスカがギブアップしたので1/3ほど僕が食べることになったけどね。
苦しかったけど残さず美味しく戴きました。
 仕返しに今日の夕食にはわざとアスカの嫌いな野菜を大目にしてみた。
残したら一昨日と同じ口喧嘩を再現してみようと思ったんだけど作戦失敗。
アスカは苦いと言いながらも頑張って全部食べ切ってしまった。
ま、これはこれでいいか。

 結局、今日の収穫は今のアスカに戦闘は無理ということが分かっただけだった。
頼りにしていたリツコさんの治療方法があの調子じゃアスカの記憶が戻るか少し不安だよ。
当のアスカは本を片手に食後の時間をゆったりと過ごしている。
読んでいるのは何々『初めての家庭料理』か。どこから持ってきたんだろうね。
本当に別人みたいにおしとやかだ。
119いときお:2009/10/14(水) 21:50:38 ID:???

 特に何事も無く就寝時間。でも今日は何だか眠れない。
意識してなかったけど初めてアスカとデートっぽいことしたんだな。
アスカも楽しそうだったし僕も楽しかった。思い出してたら凄いドキドキしてきた。遅いよ僕。
普段のアスカも誘ったらOKしてくれるかな。きっと断られちゃうんだろうな。
いやその前に昨夜のペンペン事件で半殺しか。ああ、あの裸が目に焼きついてる。
 そんな事を長々と考えながらウトウトしていると微かなノックと共に扉が開く音がした。
目覚まし時計をチラリと見ると0時を過ぎている。
「ね、ねぇシンジ……もう寝ちゃった?」
 アスカの声が聞こえた。変なことを妄想しすぎて寝ぼけてるのかな。
それとも僕はとっくに熟睡して夢の世界にいるのかな。
「あ、あのね。実はその、私……我慢……出来なくて……」
 アスカが顔を赤らめて内股でモジモジしている。夢だね夢。
こんな都合のいい展開があるわけない。あるとしたらエッチな漫画の中くらいだ。
でも夢なら別に遠慮しなくてもいいのかな。僕の中にちょっぴり変な気持ちが芽生えた。
ゆっくり身体を起こして両頬を叩く。あれれ、痛い……ってことは夢じゃない?
いや。まさか。そんな。でも扉のところから息を荒げたアスカが僕を見つめてるし。
そういえばミサトさんが今のアスカは影響を受けやすいって言ってた。
昨日ドラマのラブシーンとかを見せちゃったせいだろうか。
心臓が爆発しそうなくらい鼓動が激しくなった。

 僕は胸の昂りを必死で抑えつつもアスカの手を取ると優しくエスコートする。
十mも離れていないトイレまで。昼間のノッペラ坊が夢に出たようで恐くて仕方なかったらしい。
可愛いというか子供みたいだ。ベッドまで送って寝かし付けながら改めて思う。
やっぱり僕が今のアスカを守らなちゃいけないんだ。
余程恐かったのか強く握られてた手にはまだアスカの体温が残っている。
僕もトイレを済ませてから寝ることにしよう。ふぅ……やっと寝れそうだ。

<<つづく>>
120いときお:2009/10/14(水) 21:52:04 ID:???

ノッペラ坊は量産型、パフェは3号機……
外面は真面目ですが中身は煩悩に振り回されているシンジくんです。
121名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/14(水) 22:40:34 ID:???
GJ!!
どのタイミングで記憶が戻るのか、今から楽しみです
122名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/14(水) 23:32:00 ID:???
どうなるの?
とりあえずGJです
盛り上がってきた感じでしょうか?
123名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/14(水) 23:49:26 ID:???
こういうのは非日常を描くのは簡単だが、日常に収束させるのは技術がいるんだよな。
124名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 00:24:16 ID:???
GJよかったー
ちょいちょい出てくるエヴァネタにニヤニヤしてしまうw
125maTsu:2009/10/15(木) 00:31:55 ID:???
投下します。

・長い。無駄に長いです。
・直接的な表現はあまりありません。
・直球LASが好きな人にはあまり向かないかも

ぶっちゃけ、前作の方が上手くいった感があります
心の広い人、寛容な人呼んでくれたら嬉しいです。

NGワードは
     maTsu
        でお願いします。
126maTsu:2009/10/15(木) 00:33:44 ID:???

「シンちゃん」
朝食後、食器の後片付けをしていると、ミサトさんが話しかけてきた。
「悪いけど、ひとつお願いしたいことがあるの。」
「何ですか?」
タオルで手を拭きながら答える。
「今日学校に行ったらさ、レイにリツコのところに行くよう言っといてくれない?」
「リツコさんのところですか?」
「うん、研究室にね。何の用か知らないけど、言えば分かるって言ってたわ。」
なんだろう、とは思ったが特に断る理由もなかったので
「はい、分かりました」と答えた。
エプロンをとり、カバンを手に取ったところで、
「シンジ!遅い!」
と、玄関からアスカの怒鳴り声が聞こえた。
「ゴメン、すぐ行くよ」
カバンを肩にかけ、玄関へ向かう。
「いってらっしゃい。んじゃ、よろしくね。」
「はい」
振り返って返事をした。
「シンジ!」
「ゴメン」
靴を履き、玄関を出る。
不機嫌そうな顔をしたアスカが、腕を組んで立っていた。
127maTsu:2009/10/15(木) 00:34:54 ID:???

学校に着き、靴を履きかえる。
アスカの後を追い、階段を上る。
アスカが教室のドアを開け、入る。続いて、自分も入る。
「おぉ、今日も二人仲良く登校かぁ」
ケンスケの席のそばにいたトウジがいつものように絡んできた。
「どういう意味よ」
いつものようにアスカが返す。
僕は苦笑いをしながら、自分の席に着く。
(毎日毎日、よく飽きないよなぁ)
アスカとトウジのやりとりを横目に、ひとつ息をついた。
128maTsu:2009/10/15(木) 00:35:46 ID:???

僕はカバンを開け、S-DATを取り出した。
イヤホンを耳に着け、電源を入れる。
聴き慣れた曲が流れ出したとき、右耳からイヤホンが剥ぎとられた。
「シンジ!」
視線を右に移すと、アスカが訝しげな顔をして立っていた。
「アンタも黙ってないで何か言ってやりなさいよ!」
「・・そんなこと言われても」
トウジの顔を見る。
「こういうんを夫婦ゲンカいうんやろうなぁ」
トウジがまた悪態をつく。
「だから!」
アスカが机を両手でバンッと叩いた。
「鈴原!」
アスカのそばにいた洞木さんが突然大声を出した。
トウジは小さくゲッ、と言い、顔を引きつらせている。
洞木さんはトウジのもとへつかつかと歩いて行き、いつものように説教をし始めた。
アスカはふふん、と小さく笑って自分の席に戻って行った。
129maTsu:2009/10/15(木) 00:36:49 ID:???

そういえば、と思い窓際に目を向けてみる。
窓際の後ろから2番目。綾波の席。
だが、誰も座っていない。
カバンも掛けられていないので、まだ来ていないようだった。
(・・休み?)
綾波が休みの場合はどうすればいいんだろう、などと考えているとチャイムが鳴り始めた。
自分の席に戻るクラスメイト達。
しばらくすると教室のドアが開き、担任の教師が入って来た。
そして、ホームルームが始まった。

ホームルームが終わり、1時間目の授業が始まっても、綾波は来なかった。
また少し振り返り、綾波の席を見る。
(・・ネルフに行ってるのかな)
しばらく眺めていると、「・・碇君?」と前から声が聞こえてきた。
正面を向くと、先生がこっちを見ていた。
クラスメイト達の視線が、一斉に自分に向けられている。
「どうかした?」
「・・なんでもないです、すいません。」
周りからは、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
僕は自分の顔が赤くなっていくのを感じ、下を向いた。
130maTsu:2009/10/15(木) 00:37:42 ID:???

結局、その日綾波は学校に来なかった。

そして、放課後。
カバンを机の上に置き、帰る支度をしていた。
「早く帰りましょ」
ふと顔をあげると、帰り支度をすませたアスカが立っている。
僕は少し考えて、言った。
「ゴメンアスカ、今日は帰りに寄らないといけないところがあるんだ。」
寄る場所というのは、もちろん綾波の家のことだ。
「・・ふうん」
ゴメン、と言う。
すこし間を空けて、言った。
「・・ついて行ってあげてもいいけど」
僕はえっ、と小さく言い、
「あ、あのさ、ホント大した用事じゃないから」
ムッとした表情をするアスカ。
「すぐに僕も帰るよ」
アスカは僕の顔をじっと見ている。
「ふぅ」と息をつき、分かったわ、と言った。
そして、アスカは一足先に教室から出て行った。
131maTsu:2009/10/15(木) 00:38:56 ID:???

靴を履き替えて、校門を出る。
学校から綾波の家までは20分ほどの距離があるため、少し早足で歩く。
時計を見ると、3時半を回っていた。
(ネルフに行ってたんだったら、リツコさんやミサトさんに直接聞いてるかもなぁ)
そんなことを考えながら、歩く。
下校時間ということもあり、同じ制服を着た生徒もちらほらと見かけた。

しばらく歩いていると、古いマンションが立ち並ぶ団地が見えてきた。
マンションを見上げ、屋上近くに書いてある数字を見る。
(えっと、4棟だったよな・・)
マンション横の歩道を少し歩く。
『4』と書かれたマンションを見つけ、入った。
綾波の部屋は、402号室。
エレベーターが無いので、3階分階段を上った。
そして、部屋の前に行く。
ドアの上の表札には、
『402 綾波』
と書いてある。
132maTsu:2009/10/15(木) 00:39:50 ID:???

女の子の家、いや、他人の家のドアをノックするのは少し勇気がいる。
ほかの人はどうか知らないが、少なくとも自分にとっては。
(綾波の部屋の呼び鈴が壊れているのはもちろん知っていた)

「ふぅ」
ひとつ息をはき、ドアを叩く。
・・反応がない。
もう一回ドアを叩いた。
がちゃっ、とカギを開ける音がして、ドアが開いた。
そして、綾波が出てきた。
右手でドアノブを持ったまま、左手で目をこすっている。
「・・なに?」
僕は半歩後ろに下がって、
「・・ゴメン、寝てた?」と言った。
「・・明け方まで本部にいたから」
「そうなんだ。・・ゴメンね」
「何の用?」
133maTsu:2009/10/15(木) 00:40:59 ID:???

そうだ、と思い綾波に事情を説明した。
綾波は小さくあぁ、と言って頷いた。
「もしかして、もう行ったとか?」
「ええ」
僕はやっぱり、と言って苦笑いをした。
綾波は表情を変えずに、ジッと僕の顔を見ている。
「ゴメン、それだけなんだ。寝てるとこ悪かったね。」
じゃあ、と言ったところで綾波が言った。
「帰るの?」
「え?」
「・・・少し、上がって行けば?」
僕は再びえっ、と小さく言った。
少し考えて、
「・・うん、じゃあお邪魔しようかな」と言った。
134maTsu:2009/10/15(木) 00:41:56 ID:???

靴を脱ぎ、綾波の後について部屋に入って行く。

「・・座ってて」
綾波が言った。
部屋にひとつだけあった椅子に座り、横にカバンを置く。
そして、辺りを見渡した。
(相変わらず殺風景な部屋だなぁ)
部屋にはベッドやチェスト、小さな冷蔵庫があるだけで、目を引くものはほとんど無かった。
普段なにしてるのかな、などと思いながら台所に立っている綾波に目をやった。
綾波は、僕が前に来た時に教えたやり方で紅茶を淹れている。
しばらくして、2つのティーカップを持ってこちらにやって来た。
そして、ベッドに腰掛け、
「はい」
と、カップを1つを渡された。
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 00:49:55 ID:???
携帯から失礼します
maTsuです

まだ途中なんですが、書き込みすぎで規制されてしまったので少しお待ちください

スイマセン(__)
136名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 00:52:26 ID:???
続き待ってます!
137名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 01:03:43 ID:???
早くお願いします!
138名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 01:08:02 ID:???
んふぅん
139maTsu:2009/10/15(木) 14:58:31 ID:???
maTsuです

続き投下します。
140maTsu:2009/10/15(木) 15:07:04 ID:???

濃い茶色をした紅茶が、湯気を放っている。
「ありがとう」
そして紅茶を一口飲む。

気持ちが落ち着いたところで、聞いてみた。
「ところで、朝までネルフで何をやってたの?」
綾波はカップを持った手を膝の上に置き、
「シンクロテストとか、色々」と言った。
僕はそうなんだ、と言い、再び紅茶を口に含んだ。
「赤木博士のところには今朝行ったの」
「へぇ、それじゃあ僕が伝えに来ることなかったね」
綾波はふふ、と笑いながら紅茶を飲んだ。

しばらく話しこんで、時計を見てみると5時を少し回っていた。
「そろそろ帰らないと」
と言って、ゆっくり立ち上がる。
そう、と言い綾波も立ち上がった。
カバンを肩にかけて、玄関に向かう。
靴を履いて、玄関を出た。
綾波も、玄関まで来てくれている。
141maTsu:2009/10/15(木) 15:15:43 ID:???

「上がりこんじゃってゴメンね」
「いいの」

僕はじゃあ、と言って綾波の部屋を後にした。
階段を下りて、マンションから出る。
太陽はすでに傾きかけていた。
そして、家路につく。
夕食の食材を買うため、途中でスーパーマーケットに立ち寄った。
自宅に着くころには外は薄暗くなっていた。

ドアを開けて、部屋に入る。
おかえり、とミサトさん。
リビングで座りながらテレビを見ていた。
もちろん、テーブルの上にはビールの缶が置いてある。
僕は買い物袋をテーブルの上に置き、遅くなってすいません、と言った。
そして、台所で手を洗いながら聞いてみた。
「アスカは?」
「部屋にいるわよ」
僕はへぇ、と言って買ってきた野菜を袋から出した。
「シンちゃん、私お腹ペコペコだわ〜」とミサトが言った。
「すぐに作ります」
鍋に水を入れて、コンロの火を点けた。
142maTsu:2009/10/15(木) 15:27:05 ID:???

夕食をすませ、食器を洗う。
最後の1枚を洗い終えて、タオルで手を拭いた。
夕食の後、ミサトさんはすぐに自分の部屋に戻って寝てしまった。
よほど疲れてたようだ。
アスカはリビングで寝っ転がって本を読んでいる。
(・・風呂に入るか)
そう思い、僕は自分の部屋に戻った。
着替えを持って、風呂場に向かう。
「お風呂?」
リビングでアスカが声をかけてきた。
「うん」
アスカはふーん、と言って再び視線を本に戻した。
なんだろう、とは思ったがとりあえず風呂場に向かうことにした。
143maTsu:2009/10/15(木) 15:35:21 ID:???

体を洗い、湯船に入る。
ゆっくりと腰を下ろし、ふぅ、と息をついた。

「・・・・」

天井を見上げる。
視線の先では、電球が1つ、鈍い光を放っていた。
しばらくボーっとしていると、風呂の外側から物音がした。
「シンジ?」
僕はぎょっとして、風呂の扉の方を見る。
扉のガラスの向こう(もちろん中は見えないようになってるが)、アスカのシルエットがわずかに見えた。
「ア、アスカ?」
さすがに戸惑う。
少し間が空いて、
「・・・あのさ」とアスカが言った。
「え?」
「・・今日の放課後、どこに行ってたの?」
「放課後?」
「うん」
僕はあぁ、と思った。
そして少し考えて、言った。
「・・トウジ達とゲームセンターで遊んでたんだ」
144maTsu:2009/10/15(木) 15:50:14 ID:???

正直に綾波の家に行ってたと言えば、アスカのことだ、きっと良く思わないだろう
それに、色々と悪態をつかれるのは目に見えていた
ただ、そう思って僕は嘘をついた。
本当に、他意はなかった。

「・・そう」
アスカは小さくそう呟くと、リビングの方へ戻って行った。
(アスカ?)
どうしたのかな、と思い、風呂からあがることにした。
体をタオルで拭いて、パジャマを着る。
仕切り扉を開いて、洗面所から出た。
しかし、アスカの姿は見えなかった。
どうやら部屋に戻って行ったらしい。
「ふぅ」
僕は、ゆっくりと椅子に座った。
145maTsu:2009/10/15(木) 15:59:24 ID:???

次の日の朝。
ピピピッとアラームが鳴り、目を覚ます。

「・・う・・」

枕元に手を伸ばし、目覚ましのスイッチを押した。
ゆっくりと体を起こし、しばらくボーッとする。
小さくあくびをしながら、ベッドから出た。
のそのそと部屋から出ると、ミサトさんがいた。
台所の椅子に座り、テレビを見ている。

「おはよ」
「・・おはようございます」

いつものように、朝食の準備に取りかかる。
エプロンを着けて、手を洗う。
ミサトさんはテーブルに頬杖をつき、テレビをボーッと見ていた。
「アスカは?まだ寝てるんですか?」
「あぁ、アスカならもう出たわよ。」
僕は手を止めて、えっ、と言った。
「やらないといけない宿題があるんだってさ。朝ご飯はいらないって言ってたわよ。」
「宿題?」
そんなのあったかな、などと考えつつ、調理を進めた。
146maTsu:2009/10/15(木) 16:02:26 ID:???

朝食をすまして、食器を洗っていると、
「あ、そうそう」とミサトさんが言った。
「昨日はありがとね、レイのところにわざわざ行ってくれたんでしょう?」
「えっ、知ってたんですか?」
「そうじゃないけど。昨日の朝、本部に行ったらレイがいたから。」
それに、とミサトさんが言った。
「帰りが遅かったしね。」
「あんまり意味なかったですけど」
と、苦笑いしながら返した。
ミサトさんはふふっ、と笑いながら
「ありがとう」と言った。

そして一通り家事をすました後、支度をして家を出た。
147名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 16:15:27 ID:???
支援サゲ
148名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 16:20:55 ID:???
四円
149maTsu:2009/10/15(木) 16:30:59 ID:???

学校に着き、靴を履き替える。
階段を上がり、教室に向かう。
ドアを開けて、教室に入ると、トウジとケンスケが近くに来た。
「なんや、どうしたんや、碇」と、トウジが言った。
僕はなんのことか分からず、は?と返した。
トウジは右手の親指で、自分の斜め後ろを指す。
その方向に目をやると、アスカがいた。
アスカは、洞木さんと楽しそうに話している。
「一緒に来ないなんてめずらしいなって言いたいんだよ」
と、ケンスケが言う。
「はあ」
「ケンカでもしたんか?」
「そんなことしてないよ」
「・・じゃあ、どっちかが浮気したとか?」
僕は二人の顔を見て、
「・・どういう意味だよ」と言った。
興味津々な2人を押しのけて、自分の席に着く。
「はぁ」
そして、ひとつ息をついた。
150maTsu:2009/10/15(木) 16:38:54 ID:???

アスカを見ると、相変わらず洞木さんと談笑している。
しばらくすると、綾波が教室に入って来た。
「・・おはよ」
綾波は僕の席の前を通る際、小さな声でそう呟いた。
「あ、おはよう」
綾波は特に返事もせず、自分の席に着いた。
その後すぐにチャイムが鳴り、先生が教室にやって来た。


その日は特にアスカと話す機会もなく、最後の授業も終わった。
放課後、帰る支度をすまし、辺りを見渡すがアスカの姿が見えない。
(・・いつもなら急かしにくるのにな)
変だな、とは思ったが、その日はトウジ達と帰ることにした。
151maTsu:2009/10/15(木) 16:47:23 ID:???

この日もスーパーマーケットに立ち寄り、食材を買って帰った。
トウジ達も各々好きなお菓子を買っていたようだ。
マンションに着き、トウジ達と別れた。
部屋の前まで行き、ドアノブを握って、回す。
しかし、途中までしか回らない。
カギがかかっているようだ。
カバンからカギを取り出し、そして開けた。

靴を脱いで、部屋に入る。
・・誰もいない。
買い物袋をテーブルの上に置いて、電気を点ける。
(アスカ、どこかに寄ってるのかな)
水道の蛇口をひねる。
水の流れる音だけが、部屋の中に響いていた。
152maTsu:2009/10/15(木) 16:53:45 ID:???

しばらくして、玄関のドアを開ける音が聞こえた。
先に帰って来たのは、アスカ。

「おかえり」
「・・ただいま」
「遅かったね、どっか行ってたの?」
「・・・」

何も言わない。
そして、そのまま部屋に行ってしまった。
(・・なにかあったのかな)
少し心配になり、聞いてみることにした。
タオルで手を拭き、アスカの部屋の前に行く。
数回ノックした後、聞いてみた。
「・・アスカ?」
少し間を置いて、何、と小さく返事が返ってきた。
「何かあったの?」
「・・・」
返事がない。
もう一回ノックする。
「・・なんでもない」
「・・え?」
「・・なんでもないから」
そう言うと、もう返事が返ってこなくなった。
153maTsu:2009/10/15(木) 17:03:04 ID:???

ミサトさんが帰って来た後、3人で夕食を食べた。
食事の間も、アスカはあまり口を開こうとしなかった。

食事の後、いつものように食器洗いに取りかかる。
夕食後、アスカはすぐに風呂に入ってしまった。
ミサトさんは、リビングでビールを飲みながらテレビを見ている。
「ミサトさん」
「・・ん?」
振り返ってこっちを見る。
「・・あんまり飲みすぎたら体に悪いですよ。」
「もージジくさいこと言ってんじゃないの。こんくらいじゃ飲んだうちにも入らないわよ。」
「・・はぁ」
視線を食器に戻す。
「そういえばさ」
「え?」
再び食器を洗う手を止める。
ミサトさんが、風呂場の方に目を向ける。
「なんかあったの?」
少し間を置いて、答えた。
「よくわかんないんですけど、何かあったんだと思います」
「・・ふーん」
ビールを一口飲んで、言った。
「まぁ、仲良くしなさいよ」
僕は苦笑いをして、わかりました、と答えた。
154maTsu:2009/10/15(木) 17:08:11 ID:???
次の日の朝。

目を覚まして自分の部屋から出ると、やはりアスカの姿はなかった。
靴もないので、どうやら今日も先に学校に出かけたらしい。
ミサトさんは、まだ起きていないようだった。
とりあえず軽く朝食を摂り、ミサトさんの分も用意した。
学校に行く準備をして、家を出る。
「ふぅ」
(・・ホントにアスカどうしたのかな)
そんなことを考えながら、学校へ向かった。

学校に着き、教室に入る。
席に座ると、洞木さんが近くにやって来た。
「碇君。」
「?」
洞木さんの顔を見る。
「・・あのね」
チラッと後ろを振り返る洞木さん。
何かを言いたいんだな、ということだけはなんとなく分かった。
「・・・」
「・・ゴメン、なんでもない」
そういうと、洞木さんは教室の後ろの方に歩いて行った。
155maTsu:2009/10/15(木) 17:14:33 ID:???

しばらくして、今度はトウジ達がそばに来た。

「おい、なんやさっきの、碇。」
僕の首に腕をかけてくるトウジ。
「え?」
「さっき委員長と話してたやろ。」
僕はあぁ、と思って頷いた。
「なんの話や?」
そばで、ケンスケがにやにやしている。
「なんでもないよ」
「他の人には言えん話か?」
首にかけた腕の力が少し強くなった。
「勘弁してやれよ。」
ケンスケが言った。
「悪いな、碇。ヤキモチ焼いてるみたいなんだ、トウジ。」
「コラ!勘違いすんな!」
「まぁまぁ」
そう言うと、ケンスケはトウジが着ているジャージの首元を掴んで、自分の席の方へ引っ張って行った。
156maTsu:2009/10/15(木) 17:30:06 ID:???
そういえば、と思い教室を見渡す。
アスカは、教室の後ろの方で洞木さんと話していた。
こうして見る限りでは、いつものアスカだ。
(・・わけがわかんないや)
少しの間考え込んでいると、チャイムが鳴り始めた。
先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。

4時間目の授業が終わり、休憩時間。
トウジ達は購買に行ったようだ。
後ろを振り返り、アスカの方に目を向ける。
アスカはカバンを机の上に置いて、何かを探しているようだった。
隣には、洞木さんが座っていた。
(・・昼食、買って来たのかな?)
157maTsu:2009/10/15(木) 17:35:12 ID:???

アスカに、声をかけてみることにした。
席を立ち、近くに行く。

「アスカ」

パンの袋を開けかけていたアスカが、ぎょっとした表情でこちらを見る。
「・・なに」
「・・パン、買って来たの?」
「・・・」
下を向くアスカ。
「・・アスカ?」
「・・・いいでしょ」
「え?」
「別にどうだっていいでしょ!!」
アスカはそう言うと、がたんと立ち上がって教室から出て行った。
「え・・・・」
何も言えず、ただアスカが出て行ったドアの方を見つめていた。
教室にいた生徒の視線が、僕に向けられていた。
158maTsu:2009/10/15(木) 17:41:39 ID:???

「碇君」
「・・・」
「碇君!」

はっ、として後ろを振り向く。
洞木さんがなにやら泣きそうな顔で立っていた。

「・・追いかけて」
「・・え」
「アスカを追いかけてあげて!はやく!」
「う、うん」
そう言って、僕はドアの方に走り出した。
「多分屋上にいると思う!」
後ろで、洞木さんが言ってるのが聞こえた。
159maTsu:2009/10/15(木) 17:44:18 ID:???
階段を、1段飛ばしで上る。
屋上に着くころには、息が切れていた。
扉を開けて、屋上に出る。
するとすぐに、アスカが目に入った。
アスカは、手すりに肘をかけて向こうを向いていた。
息を整えて、言った。

「アスカ」

反応がない。
「・・アスカ」
もう一度言った。
少し間を開けて、
「・・・何よ」とアスカが言った。
「ホントにどうしたの?」
アスカはゆっくりとこちらを向いた。
160maTsu:2009/10/15(木) 17:50:03 ID:???

「・・・かんないの?」
「え?」
「ホントに分かんないのって言ってるの」

―しばしの沈黙―

「・・・」
考えてみても、やはり答えは見つからなかった。
ただ、自分が悪い、ということだけは自覚した。
アスカは僕の顔をじっと見ている。
ひとつ溜息をつき、アスカが言った。
「・・もう、いいわ」
そして、僕の後ろの扉に向かって歩き出した。

「アスカ」
僕は、アスカの腕を掴んだ。
アスカは、こちらを見ない。
「ゴメン、僕が悪かったんなら謝るよ。ホントにゴメン。」
161maTsu:2009/10/15(木) 17:52:39 ID:???

続けて、言った。
「僕、アスカに何かしちゃったかな。」
僕の顔をジロッと見るアスカ。
「嘘」
僕はえっ、と小さく言った。
「嘘ついたじゃない!」
「・・嘘?」
「・・鈴原達と遊んでなんかなかったんでしょう!?」

僕はすぐに状況を理解した。
おととい、綾波の家に行った時の―

「・・レイの家に行ったことは別にいいわ」
少し間が空く。
「・・知ってたの?」
再び僕の顔を睨む。
「・・ミサトから聞いたの」
僕は下を向き、
ゴメン、と言った。
162maTsu:2009/10/15(木) 18:00:03 ID:???

「何で嘘ついてレイの家に行ったのよ」
「い、いや、ホント深い意味はないんだよ」
「・・次嘘ついたら殺すわよ」
腕を組むアスカ。
「ホ、ホントだって」
「・・レイの家で何をしてたの?」
「何って・・」
「正直に言いなさいよ」
「・・頼まれた伝言を伝えに行って」
アスカはまだ僕の顔を見ている。
「少し紅茶を飲んで、話しただけ」
「それから?」
「い、いやホントにそれだけ」
「次嘘ついたら・・・」
「ホントにホント、絶対」
163maTsu:2009/10/15(木) 18:03:33 ID:???

―少し沈黙―

「・・・」
「あのさ・・ホントにゴメン」
「・・許さない」
「え?」
僕の腕を振りほどくアスカ。
「謝ったからって許されると思ったら、大間違い」
―何も言えない。
悪いのは、完全に僕だ。
164maTsu:2009/10/15(木) 18:07:07 ID:???

アスカは、階段に向かってゆっくりと歩き出した。
そんなアスカをじっと見ている僕。

「―なんでもするよ」

思わず、口をついて出た。
小学生みたいな謝罪の言葉だ。
だが、アスカの動きは止まった。
振り返るアスカ。
にやっと笑って、言った。

「・・なんでも?」

正直しまった、と思ったが、もう後には引けなかった。
次に嘘をついたら殺されるのだから。
「やるよ」
アスカはふふっ、と笑い、
「言ったわね」と言った。
165maTsu:2009/10/15(木) 18:15:09 ID:???
アスカの命令は、午後の授業をサボって遊びに行くことだった。
言うまでもなく、、僕も道連れらしい。
後になって怒られることは目に見えていたが、断れるわけがなかった。

教室に自分とアスカのカバンを取りに行き、階段を下りる。
途中、先生に見つからないように警戒しながら。
下駄箱に着くと、アスカが腕を組んで待っていた。

「遅い」
「・・ゴメン」
「あ、アタシの荷物はそのまま持っててね」
「え」
「・・なにか文句でも?」
僕の顔をジロリと睨むアスカ。
「・・いえ」
周りの目を気にしながら、校門を出る。
「あー昼間っから堂々と学校を抜けるのってなんかいいわー」
両手を伸ばしてアスカが言った。
166maTsu:2009/10/15(木) 18:18:37 ID:???

「シンジ」

え、と言ってアスカの顔を見る。
「嫌なの?」
「い、いやそんなことないよ」
アスカはニコッと笑い、言った。
「んじゃ、明日も明後日もその次も。」
―げっ、と思ったが・・何も言えない。
「あ、し明後日は土曜日だから、月曜日もね」
(・・ミサトさんにも怒られるだろうなあ)
「とりあえずゲーセンでしょ、服も見たいし、あとハンバーガーも食べたいわ。」
楽しそうなアスカを横目に、ひとつ溜息をつく。

結局、その日家に帰ったのは夕方の6時過ぎだった。
商店街や大型百貨店を連れまわされ、クタクタになっていた。
アスカの機嫌もどうやら直ったらしい。
ただ、今月支給されたお金はほとんど消えてしまったが。
167maTsu:2009/10/15(木) 18:23:53 ID:???
「シンジ」
リビングで戦利品(もちろん買わされたもの)を眺めていたアスカが、言った。
「え?」
水道の蛇口をひねり、アスカの方を見る。
「今回はこれくらいで許してあげるけど」
ゆっくりと僕の顔を見るアスカ。
「・・・今度嘘ついたら、ホントに殺すから」
「わかってるよ」
「はい?」
「・・わかりました」
アスカはにやっと笑い、よし、と言った。   (END)
168maTsu:2009/10/15(木) 18:29:07 ID:???
以上です。
駄文長文スイマセン(_ _)

つーかいま読み返してみると完全に育成展開ですねコレ・・orz
ホントパクったわけじゃないんですゴメンナサイ

デキに納得はしてません、正直
169名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 19:26:22 ID:???
乙!
GJ
170名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/15(木) 20:02:31 ID:???
maTsuさん
良かったです
171名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 00:16:58 ID:???
何もない話をgdgd書いてるだけだなww
172名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 00:27:09 ID:???
GJ!
次の投下も楽しみにしています。


>>171
その何でもない話が好きな人もいるわけでな。
173いときお:2009/10/16(金) 00:27:48 ID:???

投下いきます。
記憶喪失系でイタモノ要素ありのため自己責任で注意願います。
NGワードは”いときお”で
174いときお:2009/10/16(金) 00:31:48 ID:???

 アスカが記憶なくしてから早三日目。
ネルフでは『アスカのアスカによるアスカのためのサルベージ計画』が発動していた。
ふざけた実験をしていたリツコさんだが一応まともな研究も進めていたらしい。
概要はアスカ自身に自分の記憶をサルベージさせるというものだ。
「MAGIによる今実験の推定成功率は99.9999%です」
 マヤさんの報告を受けてリツコさんは誇らしげな顔をしている。
しかしMAGIの出す確率は当てに出来ないというのが暗黙の了解だ。
楽観視は出来ない。むしろ不安だ。
「準備完了、最終確認に入ります」
 実験用プラグ内のアスカはメンタル値バイタル値ともに正常。
ここから少しづつプラグ深度を下げて精神状態を刺激していくそうだ。
アスカ本人は『必ず元の記憶を取り戻してくるから!』と意気込んでいたけど心配だ。
「対象のバイタル値オールグリーン」
「ハーモニクス及びセルフ心理グラフ、安定しています。問題ありません」
「アスカ、気分はどう?」
「何だかフワフワしてる感じ……」
「これから意識は表層から深層、精神の世界へと潜っていくわ。少し苦しいけど落ち着いてね」
 イメージ的には深層意識の中で眠っている記憶を起こして表層まで連れ戻す救助作業らしい。
セルフサイコダイバー式と名付けられたけれど何のことやら。
「実験を開始して」
「A10神経接続開始。ハーモニクスレベルはプラス10刻みで順次」
「結果はアスカのみぞ知る、かしらね」
 後ではミサトさん達がリツコさんが『ありえないわ!』と言うかどうかで賭けをしている。
オッズは8:2で言う方が優勢。
何だよマヤさんまで言う方に賭けているじゃないか。
本当に大丈夫なのかこの実験。
175いときお:2009/10/16(金) 00:35:14 ID:???

「対象の神経パルスに異常発生。」
「まだよ。プラグ深度をあと1.5下げて」
『うぐぅ……あぁ……』
 プラグの中からアスカの苦しげな呻き声が聞こえてきた。
今アスカの意識は自分の精神世界を一人ぼっちで探索しているはずだ。
外部からはどうなっているかも分からず見守るしか出来ないのが本当に辛い。
「対象の心理グラフに変調発生。精神汚染が発生します」
『嫌っ! イヤッ! いやっ! イヤぁあああああ!!!』
「問題ないわ。もう2.0下げて固定、心理グラフの安定を待ってから更に1.0……」
「も、問題ないってどういうことですか!? アスカ大丈夫!? アスカーッ!」
「シンジくん落ち着いて。大丈夫だから」
 普段のエヴァや使徒からの精神汚染とは違って今回はアスカ自身による精神汚染。
つまり今の記憶が元の記憶に塗り替えられ、入れ替わるという意味らしい。
『ぁあああああ――!!!』
 それでもアスカの悲痛な叫びは止まず、そして絶叫に変わろうとしていた。
こんな酷い事をするなんて聞いてないよ。
「精神防壁に拒絶反応発生! 精神汚染が深層へ転移します!」
「神経パルスに負荷増大!」
「そんな! アスカ同士で拒絶反応が起こるなんてありえないわ!」
 スタッフの大多数が予想した通り、リツコさんの想定外のことが起こったらしい。
「心理グラフ限界! このままでは精神回路がズタズタになります!」
「実験中止! すみやかにプラグ深度を初期値へ。それから……」

 こうして第一次サルベージ計画は失敗に終わった。
176いときお:2009/10/16(金) 00:36:04 ID:???

「気分はどう? もう気持ち悪くない?」
 自室のベッドで横になったアスカの濡れタオルを交換する。
実験の後アスカは体調不調を訴えて寝込んでしまった。
リツコさんによると知恵熱が酷くなったようなものらしい。
薬を飲んで十分に栄養を取って休めば直ぐに良くなるそうだ。
「苦しかったら無理しないで何でも言ってよ」


 実験用プラグから救出された時、アスカは酷い状態だった。
目は見開いたまま意識は無くて、荒い呼吸でうわ言のように僕の名を呼んでいたんだ。
「アスカ! 返事をしてアスカ!」
 僕は抱き上げて頬を軽く叩きながら呼びかけた。
しばらくすると瞳の焦点が合ってきて大粒の涙が溜まっていた。
「……シンジ?」
「良かった無事なんだね!」
 意識が戻ったアスカを抱きしめると力なく抵抗されたよ。
でも無事だったのが嬉しくてぎゅーっと抱きしめちゃったんだ。
アスカが僕の胸で激しく胃の中身をぶちまけたのはその数秒後。
今朝、僕が作ったベーコンエッグはスクランブルエッグになっていた。


 ゆっくり眠って早く良くなって欲しいと切に願う。
痛々しいアスカはあまり見ていたくない。
「ごめんなさい。記憶、取り戻せなかった……折角のチャンスだったのに」
 アスカが顔を背けてポツリと言った。
額に乗せたタオルが枕の上に落ちる。泣いているのかもしれない。
177いときお:2009/10/16(金) 00:39:02 ID:???

「アスカが気にすることないよ」
「違うの。見つけたのよ。本当の私を。だけど恐かった……」 
「恐かった?」 
「私の中に世界があって、そこにもう一人の私がいたの……」
 アスカの話は抽象的で分かりにくかった。
深層意識の中にはもう一つの世界があって、本当のアスカがいたらしい。
誰もいない世界に一人きりで。
そして交代するように深層意識へ飲み込まれそうになり、恐くなって逃げ出したらしい。
幻覚でも見たのだろうか?
それともそこで交代していたら今頃は元のアスカに戻っていたのだろうか?
「ねえシンジ。記憶が戻ったら私はどうなると思う?」
「どうなるって、記憶を失う前のアスカに戻るんじゃないのかな」
 僕は前に欠番の使徒に記憶を奪われた時のことをアスカに伝えた。
戻った時には記憶の無い時の事を何も覚えていなかったこと。
その間にバカな事もしたらしくてアスカに散々その事でからかわれたことも。
「今度は僕がアスカに教えてあげるよ。少しくらい脚色するかもしれないけどね」
「その時の……記憶を失っていた時のシンジはどこへ行ったの?」
「えっ!?」
「いなくなっちゃったの?」
「分からない。でも僕は僕だよ。記憶があってもなくてもね」
 そう曖昧に答えたけれど実際のところ深く考えたことなんてない。
記憶を失っていた間の僕はどこへ行ってしまったんだろう。
別の人格として消えてしまったのだろうか。
それとも寝ぼけた時のように元々僕の無意識の一面だったのだろうか。
「色々あって疲れているんだよ。今日はもうお休み」
「お休み……シンジ。手、握ってて。私が眠るまでで良いから」
 僕は夜が明けるまでアスカの手を握っていた。
178いときお:2009/10/16(金) 00:40:46 ID:???

 翌日。目が覚めると背中に毛布がかけられていた。
あの後アスカの部屋で眠ってしまったらしい。
「あれ……アスカ?」
 部屋の中にアスカの姿はなかった。
その代わり部屋の外から美味しそうな匂いが漂ってきている。
この匂い……朝からカレーか。

 案の定、台所ではアスカが孤軍奮闘していた。
ちょこちょことテーブルに置いた料理の本を見ながら調理を進めているようだ。
「おっはよー、シンジ!」
「おはようアスカ。もう起きて大丈夫なの?」
「もっちろん! すぐに出来るから楽しみに待っててね!」
 やけに高いテンションで返されたけど本当に大丈夫なんだろうか。
何だか空元気に見えなくもない。
調理を手伝おうとすると『一人で出来るから』と追い払われてしまった。
元気になったのは嬉しいけど少し寂しい。
もしもアスカが家事全般をするようになったら僕の取り柄が無くなってしまうかも知れない。
「あれ……? アスカ、この本どこにあったの?」
 ふとテーブルに置かれた本が目に留まった。
パラパラと捲るとページに色々と書き込みやメモがしてある。
意外と勉強熱心なんだなと思わず笑みがこぼれた。
「私の部屋に決まってるじゃない。ちゃんとカレーのページ開いといてよ」
 メモはドイツ語で書かれているので内容は分からない。
だけど大き目の余白には適当な感じの似顔絵と一緒に『←バカシンジ』と書かれていた。
こんなのを書くのは世界に一人しかいないよね。
やけに乱暴な字の書き込みが多いと思ったよ。
179いときお:2009/10/16(金) 00:43:08 ID:???

「どうしたの? 何かニヤニヤしちゃって」
「別に。美味しそうだな、って思っただけだよ」
 このカレーは今のアスカとそして本当のアスカの合作のような物なんだろう。
いつか僕に作ってくれるつもりだったんだろうか
そう思うと一層美味しそうに思えてきた。
あの晩『食べるだけ』なんて言ってしまってゴメンと早く謝りたいよ。
鍋の蓋を外すとスパイスの香りが起き抜けの食欲を刺激した。
「ぺろっ、んー美味しい。特製カレー完成!」
 味見をしたアスカがクルリと振り向いて得意気なVサインを出した。
その満面の笑顔に思わず拍手をしてしまう。
お皿を用意しようとして僕は一つだけ疑問に思っていたことを聞いてみた。
「ところでアスカ。御飯は?」
「あ…………」

 少し遅い朝食は少し早い昼食になった。

<<つづく?>>
180いときお:2009/10/16(金) 00:45:12 ID:???

前回、投下宣言とイタモノ注意を忘れました。すみません。

おそらく今後も非日常的展開を繰り返しながら進むと思います。


セルフサイコダイバー式サルベージ:
今のアスカの精神が元アスカに精神汚染される分には問題ないだろうという超理論。
181名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 03:30:36 ID:???
乙!
ちょっと話が進んできたね
ありえないはワロタw
切ない感じになってくるのかな・・・続き楽しみに待ってる!
182名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 06:19:26 ID:???
>僕は前に欠番の使徒に記憶を奪われた時のことをアスカに伝えた。

なんだこりゃ?
183名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 07:17:35 ID:???
>>182
セガサターンのゲーム版ネタだろうな。
記憶喪失になったシンジが主人公だった。
184名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 07:29:47 ID:???
サターンのネタが分からない人がいるなんて…
185名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 07:47:04 ID:???
>>182
初期のゲームで欠番の使徒ってのに記憶を奪われて記憶喪失になる話がある。
ネルフ側はシンクロ率は高いままだし戦闘訓練も普通だから問題なしと放置(酷いなw)。
アスカに世話を任せてたら適当なウソばかり教えられて・・・って感じだった。
お調子者でクラスの人気者だったとかアスカの下僕だったとか色々。
「何で洞木さんはあんなに僕のことを心配するのかな?」
「それは当然・・・恋人だからよ。そんなのも忘れちゃったの?(にやにや)」
この後ルート次第では委員長とキスシーンまでいってアスカがキレるとか。

ネタがネタだけに使うとは思ったがちょっと説明不足だったと思う。
186名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 08:27:11 ID:???
平日の朝っぱらから大勢いることにワロタ
結構住人多いのかね?

>>180
投下乙
マヤくらいは言わない方に賭けてやれよw
消える云々は別人格だと自覚したって感じなのかな?
何となく内向的なアスカスレのアスカに見えてこれはこれで萌える。
187名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 12:08:59 ID:???
段々残念な出来になっている気がする
188名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 18:02:28 ID:???
いときおさん
乙です
どうなるの?
189名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 18:14:57 ID:???
>>187
気に入らないなら黙ってNGにすりゃいいだろ
190何でもない普通の日:2009/10/16(金) 20:23:20 ID:???
こんばんは。投下させていただこうと思います。
タイトルは「何でもない普通の日」です。
191何でもない普通の日:2009/10/16(金) 20:24:06 ID:???
キッチンでコーヒーを淹れて、ソファーの前のテーブルまで運ぶ。部屋には僕一人だった。
ソファーに深々と腰を下ろし、ため息をついてしまうのは年のせいだろうかと、
しみじみと、何処かくすぐったいものを感じながらコーヒーを啜る。苦い。
しかし何故この苦味で僕は、こんなにも落ち着いた気分になるのだろうかと考えながら、
まぁそれは好きだからだろうな、と当たり前のことを思う。好きなんだから仕方ない。
ふと、窓の外を見ると、さっきまで暮れてゆく太陽の光が跋扈していた夕空に、滲み出した藍色が混ざり始めていた。
夕方と夜の間、僕はこの時間が一番好きかも知れない。
アスカを待っているこの時間が、でも今日はやっぱり平常心ではいられないな、と思った。

研究所から勤めを終えて玄関を開けると、部屋はカレーの匂いで満ちていた。
こんな普段通りの日常に喜びを感じてしまう私は、おかしいのだろうかとアスカは思った。
「おかえりー」シンジの声が聞こえる。
「ただいまー」こんなやり取りで涙の出そうになる私は、絶対におかしい。
でも、嫌だとは全然思わないのは、幸せだからだろうな、と思う。
リビングに入ると、シンジはいつものように窓の外を眺めていた。
「あんたも毎日飽きないわねえ」
声をかけても、シンジは黙ったままだった。
「シンジ?」
「えっ?あっアスカ!おかえり!」
「おかえりってあんた、さっきもう言ったじゃないの」
「えっあっえっと、な何かボーっとしてたみたい!」
「あんた大丈夫?全くボケボケっとするのも大概にしときなさいよ!」
「うん。ゴメン、あはは」
「まあいいわ。じゃあ、着替えてくるわね」そう言って、自分の部屋のドアを閉める。
192何でもない普通の日:2009/10/16(金) 20:25:21 ID:???
何だか今日シンジはおかしい。何かあったんだろうか?あとで問い詰めてみようと考えながら着替えを急ぐ。
どうしてこんなに私は、急いで着替えているんだろうか?
洋服の汗が気持ち悪いから?早くご飯が食べたいから?早くシンジを問い詰めたいから?どれも惜しいけど違う。
ただ、シンジと少しでも一緒に居たいからだ。私は本当に弱くなってしまったな、と苦笑いを浮かべる。
でも構わない。シンジと一緒に居られれば、自分を守るための高い鋼のようなプライドなんて、ちっぽけなものだ。
こんな風に思えるようになったのは、いつ頃のことだったろうか?
夕食を食べ始めると、やはりシンジのおかしさが目に付いた。どこか緊張しているようで落ち着きがないのだ。
それに何を話しかけても、少し上の空で聞いているし、自分からあまり話そうとしない。まるで昔のシンジみたいだ。
自分に自信がなく、いつも何かに怯えていた、あの。
二人を沈黙が覆った。すると、シンジがようやく自分から口を開いた。その言葉は、あたしに衝撃を与えた。
「あのさアスカ、僕たちもう、終わりにしよう」
「えっ?」
あたしはあまりに驚いて、こんな間抜けな言葉しか返すことが出来なかった。
193何でもない普通の日:2009/10/16(金) 20:26:55 ID:???
「どういう」
「僕さ、もうこの関係が、耐えられないんだ。今まではさ、がっ我慢してきたんだけど、もう、限界なんだ、だっだからさ」
本当に昔のシンジを見てるみたいだった。そんなシンジを見ていると突然、昔のあたしが蘇ってしまった。当然、あたしはキレた。
「冗談じゃないわよ!あんたあたしに告白する時、ずっとそばにいるよって言ったじゃないのよ!あの約束忘れたとは言わせないわよ! それにこれからはお互い嘘をつくのはやめようって言ったのに、我慢してたってことはあたしに嘘ついてたってことじゃないのよ!
 確かにあたしは我侭だし我慢もさせたかもしれないけど、そんなに嫌だったなら言えばよかったじゃないの!このバカシンジ!」
あたしは気付くと平手で想いっきりシンジを殴っていた。
落ち着いてきたと同時に愕然とし、あたしはボロボロと涙を流していた。テーブルに滴が落ちる。涙が止まる気配はなかった。
「あたしには…あんたしかいないのに、どうして…どうしてよ!」あたしは泣き叫んでいた。
「ごめん…あの」
「聞きたくない!お願いっお願いだから…謝られたら…余計惨めに」涙が、止まらなかった。
今までの幸せな時間は、このための伏線だったんだ。絶望への伏線だったんだ。あたしはそうとしか考えることができなかった。
194何でもない普通の日:2009/10/16(金) 20:28:07 ID:???
「違うんだよ、アスカ!」シンジが叫んだ。隣に膝をついて、あたしの涙を拭いながら、あたしを愛でながら続けてくれた。
「ゴメンねアスカ。少し驚かせようと思って、それに言葉足らずで、だからあの要するにさ…」シンジの顔つきが変わる。
「恋人から奥さんになってほしいんだ」
「えっ?」あたしはまた、驚いて間抜けな言葉しか返せなかった。そして頬を伝いながら、とめどなく涙が零れ落ちていった。
「シンジっ!」あたしはシンジの胸に顔をうずめる。
この温もりが、この優しさが、一生あたしのものになるんだと実感し、その喜びが涙となって溢れ出しているんだな、と思った。
それでもやっぱりあたしはあたしで、心の中で青春の残滓となっているプライドは、あたしにこんな言葉を吐かせた。
「何でこんな普通の日に大事なこと言うのよ!」
自分でも驚いた。素直にありがとうと言えない自分に、でも、あたしらしくて良いかな?とも思った。シンジが答えた。
「だってさ、誕生日とかにしたら、この日が新しい特別な日にならないかな、と思ってさ」欲張りすぎかな、と言って微笑む。
「ほんとにバカね」あたしも微笑んで答える。こんな女を好きなこいつは、心底バカだとあたしは思う。
「本当にあたしで良いの?」
「アスカじゃなきゃダメなんだよ。隣にいて、幸せを一緒に探してほしいんだ」
もう十分幸せよ!と叫ぶのをグッと堪えて、あたしは泣きながら笑って、歓喜を噛みしめるように、うなずいた。
何でもない普通の日が、特別で大切な日に変わった瞬間だった。

〜終〜
195名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 20:45:46 ID:???
短いですが以上です。感想下さると嬉しいです。
196名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 21:29:23 ID:???
>>195
うーん。まあ、そうだね・・・。

・マジメに書いた作品だというのは良く分かる。
これからも頑張って欲しい。

・シチュエーションだけのハナシで、背景がさっぱり分からないので、薄っぺらい。
景色の描写はそれなりに頑張ってるんだけど、そこに情景が入ってないんだよね。
「キッチン」とか「ソファー」とかだけじゃなくて、「使い慣れた」とか、「ミサトさんにもらった」とか、
形容詞が一つ入るだけで、この作品内での二人の関係性とか、年齢とか、ここに至るまでにあった出来事とかに
想像の翼を膨らませる材料になるし、この作品を読み解く上でのヒントにもなるんだよね。
そういうとこ、丁寧にやるといいと思うよ。
お話の序盤は特にそういうのが大事。
しょっぱなから何だか訳のわからない状況に読者を引き込むのが重要っていう作品も確かにあるけど、これはそうじゃないでしょ?

・視点を切り替える必然性あるの?
最序盤:シンジ一人称
その直後から最後まで:アスカ一人称
なんだけど、意味不明だと思う。
序盤にいきなり視点が切り替わるので、読者が作品に入り込む余裕を与えられず、ハナシの筋だけが進んで行く感じ。
落ち着くことができず、ストーリーを楽しめない。
そういうのが重要な作品もあるけど、これはそうじゃないでしょ?

・ストーリーが単純過ぎるわりに尺が長過ぎ
まあ、三行で書けるハナシだわな。
「アスカ、ぼくたちの今までの関係、もう、終わりにしよう」
「嘘つき嘘つき! シンジの嘘つき! 絶対離さないって言ったじゃないの!」
「そうじゃないよ、結婚しよう、ってことさ。これからもよろしくね」
突き詰めれば単純な話を膨らませただけ、っていう話はいっぱいあるので、別にそれが悪いとかじゃないんだけど。
そういう話は、キャラの描写が秀逸だったり、情景の描写に優れていたり、まあ、その他の工夫が格別だから成り立つんだよね。
この内容で、この表現ってことなら、もっと尺を短くした方がいいと思うよ。
この尺のおはなしに対する読者の期待感を裏切らずに済むと思う。
197名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 21:47:56 ID:???
お、ifじゃないか。久しぶり
198名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 21:56:19 ID:???
なんだifか
199名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:02:05 ID:???
>>195
使い古されたネタに捻りのない描写。
もう少し見聞を広げた方が良い。
200名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:04:33 ID:???
ifが来たと聞いて
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:06:34 ID:???
「私の沖田君」時点で、既に定番だったなw>終わりにしよう
202名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:09:11 ID:???
>>180
つか前にも言われたけど、これをイタモノと思ってるのはいときおさんしかいないと思う
注意書きは別に必要ないでしょ
203名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:09:17 ID:???
すいません、ifさんじゃないです…笑
ミサトのウチを念頭に置いてたんで情景描写しなくても良いだろと思ってしまったのかも知れません。
最初のシンジ視点は、シンジとアスカの関係性をコーヒーと空の色で比喩出来ないかな?と思ってやりました。
その後アスカ視点なのは、その方がアスカの感情を克明に書けるので面白いかなぁと思って変えました。
ストーリーは安直の極みですね…すいません笑
駄文を投下してしまって誠にすいませんでした。
またいつか投下する時までに、もっと精進しようと思います。
ありがとうございました。
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:16:24 ID:???
>>203
>シンジとアスカの関係性をコーヒーと空の色で比喩

出来てないなw
あと、コーヒーを豆から淹れて飲んだことある?
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:22:19 ID:???
ないです笑
もう本当にごめんなさい。
やっぱり書くのは難しいですね。
206名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:34:29 ID:???
充電中
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:40:28 ID:???
>>205くじけず頑張れ〜
208名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:49:08 ID:???
>ミサトのウチを念頭に置いてたんで情景描写しなくても良いだろと思ってしまったのかも知れません。

えーと・・・

・葛城家のリビングにソファーはないんだわ。
熱心なファンは、ソファーが出てくる時点で、ああ、ここは葛城家じゃないんだな、と思うことになる。

・「情景」っていうのは、読者の感情を動かす目的で描写された景色のことなんだよね。
小説で描写される景色には2種類あって、
o 単なる背景 (=場景)
o 読者の心理に影響する目的を持った景色 (=情景)
(感情と景色の両方という意味で「情景」と言うこともあるけども。)
情景にも、直接的なもの(登場人物の意識的な行動の反映されたもの)と間接的なものがあって、コーヒーとか空の色とかいうのは後者ね。
直接的なのは、例えば、テーブルの上にラッピングされてリボンのかかった小さな立方体の箱が置いてあったりするやつ。
まずは直接的な描写をしっかりする方が先かな。
間接的なのは、なかなか気付いてもらえないし、普通はもっと尺のある作品で、類似の表現を繰り返し出したりすることで意味付けするものだよ。

まあ、頑張って。
209名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 22:55:01 ID:???
>>202
以前に叩かれたとかあんじゃないのかな?

俺はイタモノの基準がイマイチ分からんのだが
・シンジもしくはアスカが
A:お互い以外と交際or男女関係になる
B:酷い怪我や精神的後遺症、肉体的損傷など
C:別れる(死別など止む得ない場合も含む)
って認識だとして、多分作者の中ではAなんだと思う
記憶の無いアスカをオリキャラ扱いって書いてたから。
210名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 23:08:34 ID:???
シンジが「元のアスカは嫌いだけどこっちのオリキャラアスカは好きだ」と思うとか、
そーいう話じゃないから気にしなくて大丈夫だろう
アスカはアスカとしてしか扱ってない
211名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 23:09:28 ID:???
C:別れる(死別など止む得ない場合も含む)は
アスカがシンジを。
シンジがアスカをみたいな事をしてもいいのですか?
212名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 23:21:52 ID:???
>>205
でも、私はこういうの結構好きだから、
落ち込まないでまた頑張ってください。
何気ない一日が、特別な日に変わるって、
そういう小さいこと、好きだよね、女性は。
213名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 23:31:12 ID:???
>>211
基準は人それぞれじゃないか?

でも209の例だと A、寝取られるのヤダー! B、酷い目にあわせるのヤダー! C、バッドエンドはヤダー!
って感じだと思うからアスカがシンジを。ってのはCに該当すると思う
214名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 23:53:23 ID:???
LASを一本投下しただけで、ニワカだとかコーヒー淹れたことことないだとかバレ過ぎだなw
どんだけ浅いんだよww
215名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 11:28:12 ID:???
おつ
216名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 12:02:52 ID:???
タダで読ませて貰ってるんだから、アドバイスにしろもっと言い方があるだろ
217名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 12:18:45 ID:???
駄作を投下すれば叩かれるのは当たり前だ。
その覚悟がない奴は創作に向かないw
218名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 13:28:12 ID:???
「笑」とか付ける奴にロクなのいねえ
219infinity ◆e1/swPUIeI :2009/10/17(土) 17:21:59 ID:???
            〔君と一緒に〕
           ある土曜日の夕方
「ねぇ、アスカ。明日どこか行かない?」
「ん、…ん? え! シンジと?」
僕は洗濯物を畳みながらアスカに聞く。テレビを見ていたアスカが驚いた表情で僕を見る。
まぁ僕はアスカに誘われることはあっても、誘うことはしないからね。
僕がそんなことを初めて言うものだから、アスカは僕のことをじっと見ている。
なんかアスカの口元が少し上がるのが見えたのは気のせいか。
笑っているのかバカにしているのか、それとも嬉しいのかどっちだろう。
「シンジが誘ってくれるなんて、…明日は嵐ね」
あぁ、これは完全にバカにしている。そんなことを言いながらでもアスカは微笑んでいた。
はぁ、それじゃ明日は嵐でも起こそうかな。
「どこに連れていってくれるの? 動物園? 遊園地? それとも映画でも見るの?」
あぁ、やばい、期待しているよ。声が弾んでいるよ。
ついでにアスカの目が輝いて見えるのは気のせいかな。
「いやぁ、…動物園も遊園地も行かないけど…それに映画も見ないから…」
と、言ったとたん残念そうなアスカの顔が見えた。あわわ。
「……何処に行くの?」
明らかに残念そうな口調でアスカが聞いた。うぅ、本当にごめんよ。
「近所にカフェレストランがオープンしたんだけど…行く?」
「一人で行けばいいじゃない!」
即答ですね明らかに怒っていますよ。ひぃぃ、睨んでいるよ。
「ぼ、僕が好きなもの奢るから一緒に行こうよ!」
アスカはゆっくりと振り返り僕を見る。なんか石にされそうだ。
「本当に奢ってくれるの? シンジもし嘘だったら…」
「その先を言わなくても分かっているから。ちょっと落ち着いてアスカ」
僕は迫り来る壁を押すような体勢で両手を突き出し、アスカの怒りを静めた。
目が怖いな、なんか拳まで握っていますけど。
「明日は楽しみにしていてよ…」「…楽しみね」
たぶん明日は僕の命日になるかもしれないな。

220infinity ◆e1/swPUIeI :2009/10/17(土) 17:23:10 ID:???
 ****************************
その日曜日
あたしはシンジの背中を見ながら歩いていた。まぁ、別に横に並んで歩いてもいいけど、
なんか恥ずかしい。
それにしても電車に乗ってその店に行くなんて、どこが近所なのよ。
「ねぇ、シンジ。お店はどこにあるの? 近所にしては遠いんだけど大丈夫なの?」
あたしはシンジのシャツの袖を引っ張りながら聞いた。
「この道であっているよ。それより…シャツが伸びるから…」
シンジはそう言いながら、シャツの袖も掴んでいるあたしの手を優しく払う。
「シンジおなか空いたよぉ」
あたしはそう言いながらシンジの顔を見た。シンジは笑顔を見せながら、
「もう直ぐだから我慢してアスカ」
シンジはあたしの手を掴み歩く。何時もと違う気がするのは気のせいかな。
何時もだったらあたしがシンジを引っ張りまわすのに、今日はシンジがあたしを初めて
引っ張りまわしている。なんか新鮮で悪い気はしない。
まぁそんなことを考えて歩いていると、行き成りシンジが立ち止まり振り返った。
「アスカ着いたよ。カフェレス…うわぁ…痛い…ぶべら」
あたしはシンジの足を踏み、勢いで押し倒してしまい膝がシンジのお腹に当たった。
「シンジ! 急に止らないでよ!」 
あたしはシンジを怒鳴りながら助け起こした。ごめんね、大丈夫。
「ごめんよ。うぅ痛い…えっと…こ、ここがカフェ・フランだよ。ぅぅ」
と言って、お腹を擦るシンジが指差した方向を見る。
外見は丸太小屋な感じで、なんかどっかの別荘の様な感じだ。
外に椅子とテーブルが3つ並んでいる。これはオープンカフェだな。
まぁ、いいでしょう。シンジが奢ってくれるんだから。
あたしはシンジの後に続いてお店の中に入る。最初にいい匂いが漂ってきた。
そして心地よい音楽が耳に入ってきた。
「いらっしゃいませ。お二人様ですね、こちらの席にどうぞ」
店員の案内で窓側の席に案内された。


221infinity ◆e1/swPUIeI :2009/10/17(土) 17:24:05 ID:???
「メニューです。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
店員はメニューとお水とお絞りをあたし達に配りながらそう言った。
あたしはメニューを見ながらどれがいいか悩んでいた。
「すいません。注文いいですか?」
シンジが店員を呼んだ。シンジあたしはまだ決まってないんだけど。
「フランオムライスください。それと…アスカは?」
「え? ちょっと…」
あたしはメニューをもう一度見直した。どれが良いか迷うがとりあえず、
「フランサンドを」
「食後のお飲み物は何になさいますか? それとデザートは1つだけ選べますが何になさいますか?」
「僕はリンゴジュースとクリームブリュレでお願いします…」
と、言い終わったシンジがあたしを見る。店員もあたしを見る。
「あ、あたしはコーヒーと…えっと…」
あたしは何にしようか迷っていた。いろいろデザートが多すぎて迷う。
どれにしようかあたしが迷っていると、
「僕と同じクリームブリュレでお願いします」
「はい、かしこまりました。少々お時間が掛かりますがよろしいですか?」
そう言って店員は厨房の中に入っていった。
「…ちょっと…勝手に決めないでよ」
あたしはシンジの耳元で囁いた。まぁ、いいんだけどね。
「僕と同じがいいかなと思ったんだよ。ごめんよ、勝手に決めて」
いや、あの、別にいいんだけどね。
「謝る必要はないわよ。…それにしても女性とカップルが多いわね?」
あたしは店内を見回して小声でシンジに言った。
「…女性に人気がある店だから…ちょっと調べたんだ…一人で入りにくかったんだ」
シンジがモジモジして答えた。なんか辺りを気にしている様子で挙動不審だ。
「シンジ落ち着きなさい! 恥ずかしいから」
あたしは小声で言ってシンジの足を軽く蹴った。
「ぁっ、痛いよ! どうして蹴るんだよ?」

222infinity ◆e1/swPUIeI :2009/10/17(土) 17:25:05 ID:???
他のお客さんから見たらあたし達は、恋人同士か姉弟みたいな関係だろう。
「おまたせしました。フランオムライスとフランサンドです」
美味しそうな匂いがあたし達の周りを包む。
シンジのオムライスにはカレーが掛かっていて美味しそうだ。
あたしのフランサンドには、卵とハムが挟んであり普通のサンドイッチだ。
でもスープとサラダが付いていた。じゃあ、いただきますか。
「「いただきます」」
同時に手を合わせていた。シンジの顔を見るとニコリと笑っていた。
あたしもニヤリと笑ってしまった。シンジが一口食べてなんか頷いた。
そして笑顔になった。これは美味しいから笑顔になったのか。
「このオムライス美味しいな」
「あたしのフランサンドも美味しいわ」
「…ねぇ、アスカ。このオムライス美味しいから半分食べてもいいよ」
シンジはオムライスをあたしの前に置いた。
「はい、シンジ。これも美味しいから食べれば」
あたしもフランサンドをシンジに渡す。
「美味しいわねこのオムライス」
あたしは一口食べた。シンジがうなずくのが分かった。
「ね、美味しいでしょアスカ。…あ、ちょ…と」
なんか美味しくて手が止まらなくなった。
「ちょっと! アスカどうして全部食べるんだよ! 半分だけって言ったよね?」
「美味しかったから全部食べたのよ!」
「うぅ、酷いよ…僕のオムライスが…」
「あんたもそんなこと言うけど、あたしのサンドイッチ全部食べているじゃないの!」
まあ、なんだかんだといって食べ終えたところで、
「失礼します。コーヒーとリンゴジュースです。それとクリームブリュレです」
店員がこれでご注文は終わりですと言って、レシートを置いて厨房に戻った。
なかなか美味しそうだ。初めて食べるけどシンジは食べたことがあるのだろうか。
「シンジ、このクリームブリュレ食べたことあるの?」
「初めてだよ。…食べるのは」

223infinity ◆e1/swPUIeI :2009/10/17(土) 17:25:51 ID:???
なんだか不安になる、あたしも初めてだから。
「この前見たDVDでそんな場面があったんだよ。クリームブリュレを食べる場面がね。
そしたら…たまたまこの店のチラシに載っていたから…それで食べたくなったんだ」
「もしかしてそのDVDのタイトルは…アメリ?」
「え! 何で知っているの?」
「あたしも見たの、ヒカリの家でね。なんか難しかったけど」
「そうか…アスカも見たんだ。僕は主人公の女性がクリームブリュレを食べている場面が、
物凄く印象に残っているんだよ。…でも…話の内容は忘れちゃったけど…」
シンジは笑いながら頭を掻いていた。
「あ、あんた…」
その場面で話の内容を忘れられるなんて凄いわね。
「あの映画のシーンだと…表面を叩いて…食べるんだったよね?」
「…その通りだったと思うけど?」
あたし達はスプーンで表面を叩いて食べた。
「なかなか美味しいな。…来てよかったよ、アスカ。…ありがとうね」
「べ、別に良いよ。アンタの奢りだから!」
「来週の日曜日もここでお昼を食べようよ」
「いいけどアンタの奢りよ」
「うん、いいよ。…だから一緒に行こうよ」    
                          閉店

224infinity ◆e1/swPUIeI :2009/10/17(土) 17:27:32 ID:???
すいません。
では
225名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 18:21:53 ID:???
gj
226名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 19:50:21 ID:???
本物が来た…!!
227名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 23:09:21 ID:???
これって面白いのか?
228名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 23:57:20 ID:???
ifの再来…
あしたはサードインパクトだな…
229名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 00:00:26 ID:???
>>227
面白かったら即座に何個もレス付くだろ
つまり面白くないってことだ
230名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 00:41:27 ID:???
最初の投稿からはかなり成長したんじゃ?
なんかもうifってだけで他の人より冷たい反応される気がする
231名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 00:46:04 ID:???
いくら成長しても話しがつまらんと意味なし!
232名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 01:41:33 ID:???
>>230
まぁ、名無しなら普通に社交辞令的な乙が付くレベルではあるな。
ただし本音を言えばツマラン、と言うか何を描きたいかがさっぱり分からん。
ifの作品だからと言うことを考えなくてもな。
233名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 01:49:39 ID:???
つーか、IF氏って、個人的には凄く惜しい職人だと思う。もう少しFFとして面白みのある作品を書いてくれればなぁと
叩かれても向上心持ってSS投下するのは結構強靭な神経だし(しつこいとも言う)なによりモチベーションを継続して書いてるのは貴重
まあ、私も最初は叩いてたけど、今になってみれば応援したい気持ちも無いわけじゃない
もう少し自分の書いたのを推敲したり現在形とか進行形(〜た、〜る、とか)が正しいのか意識して書いてくれればもっと良くなるかも
234233:2009/10/18(日) 01:51:03 ID:???
>現在形×
過去形○
235名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 02:21:11 ID:???
>>233
>凄く惜しい職人

あの外した感性と独りよがりの作風から、それはないw
236名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 03:01:25 ID:???
ifは俺が唯一NGにしているコテ。
237名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 03:03:13 ID:???
>>235
いや、飽くまでこのしつこさが惜しいんであって、職人の腕や作品の中身はまったく惜しくないw
破公開時の職人はどっか行っちゃったし
238名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 04:51:06 ID:???
読者が偉そうにしているスレは
投稿者がいなくなって
いずれ過疎る法則
239名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 05:22:06 ID:???
>>238
ifさん負け惜しみ御苦労さまです。
240名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 08:46:57 ID:???
>>238
だったら、マンセーしろよ。
241名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 10:10:08 ID:???
ifは罪を犯し過ぎた
「氏」とか「さん」とか付ける価値は最初から無い
242名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 10:52:42 ID:???
偉そうにしてるのは他の投稿者か元投稿者だよ。
クレクレ読者にはムリだろ。>>196とか>>208みたいな評論は。

読者としては、別にこんなスレなくたって、LAS小説サイトに同じだけ投稿があればいい。
ただ、こっちの方が手軽だから、書く側としては需要がある。
ここで書いて、あれこれ言われて実力付けて、自分のサイト持っていいものをどんどん書いて、
それでたまにここで後輩にアドバイスしてくれる、っていうのが理想的な状態だろう。
243名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 11:11:42 ID:???
>クレクレ読者にはムリだろ。>>196とか>>208みたいな評論は。
244名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 12:26:36 ID:???
閉店
245名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 13:16:34 ID:???
変な雰囲気ですけど、イフさんも何でもない〜さんも良かったですよ。GJ

アドバイスはアドバイスとして聞いて、批判だけするようななのはスルーしとけばいいんじゃないかと思います。
ほのぼのしたのが好きなんで、好みですよ自分は。
246名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 13:51:59 ID:???
盛り上がってきました。
247名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 19:22:37 ID:???
ifの自演が酷いな
248名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 21:11:59 ID:???
破の公開時て職人たくさんいたの?
249名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 22:37:24 ID:???
いたよ、少なくとも公開前よりは

勢いに乗って、投下中断してる職人さんも
帰ってきてくれないだろうかと期待したが無理だった
250名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 22:44:53 ID:???
ここは職人が勝手に投稿し、読者が勝手に乙する場。
駄作をアップするのもOKだし、叩くのもOK。
自治厨モドキが一番たちが悪い。

>>248
ニワカ職人は公開の度に現れるのは常。
251名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 22:55:51 ID:???
>>249
勢いだけで投下した作者の作品は、レベルがアレだから惜しむ必要もないんだけどな。
252名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 23:00:37 ID:???
ifさんパネェっすwwwwwwwwwwwwwwww
253名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 23:54:37 ID:???
>勢いだけで投下した作者の作品は、レベルがアレだから惜しむ必要もないんだけどな。


255 名前: if [sage] 投稿日: 2009/07/26(日) 13:53:19 ID:???
だが、初号機によって弾かれた
「くそぉぉ」
2号機はエントリープラグを拾い上げようとしたとき
「エヴァ2号機活動停止」
2号機はその場に倒れた。
「止まるなァァァァァ、もう少しなんだよぉォォ」
シンジ、操縦レバーをガチャガチャ動かした
「シンジ、もう、だめだよ 動かないよ」
初号機はプラグを手に取り
シンジは画面を見ながら初号機の手を掴もうとした
「止めろ止めろ止めろ止めろ止めてくれ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ」
シンジは泣き喚いた
「シンジ」アスカは、シンジの肩に手をやった
止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ頼む
止めろ止めろ止めろ止めろ止めろやめてよー止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ」
初号機は手を握り締めた     (グシャャャャ)
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ」


>>251に同意せざるを得ない件
254名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 01:23:15 ID:???
こんな雰囲気の悪いスレに職人が来てくれるはずがない
255名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 12:55:00 ID:???
>>254
それが狙いのやつがいっぱい沸いてくるからな

しかし、ふぅさん来ないな…
256名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 14:51:15 ID:???
入れ替わりさんも来ていない・・・
続き読みたいYO
257名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 15:31:04 ID:???
どっちももう来ないだろ
258名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 15:36:39 ID:???
短編が上手い職人希望
259名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 16:51:22 ID:???
下手な長編はいらね。
短編の方がマシ。
260名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 19:38:04 ID:???
最近のこのスレで面白かった(上手だった)のって何?
261名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 20:14:24 ID:???
ないんじゃね?
262名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 20:14:51 ID:???
>>260
うーん。ないなぁ・・・。
ただ、「いときお」は、まだ終ってないけど、これから面白くなりそうな期待感はある。
263名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 21:27:36 ID:???
流石に終わってないのはノーカウントだろ。
猫シンジは好きだったが上手くはないと思う。
264名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 21:32:34 ID:???
出来の良い作品には批判も少ないしGJが多い。
最近のにはまず、GJが少ないんだから、批判者を非難するのは的外れな気がする。

職人を神扱いしてチヤホヤしたいなら、そういうスレを改めて立てた方が軋轢は少ないな。
265名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 21:38:03 ID:???
>>263
そうだね、猫シンジは目の付け所が良かったな。
あれでストーリーがも少し整理されてれば、良作になったかもしれない。
266名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 21:47:07 ID:???
兄やん達、厳しすぎますよ。
267名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 21:48:54 ID:???
確かに厳しすぎると過疎る
268名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 21:55:48 ID:???
>>265
開始経緯がアレだから泥縄的だったんだろうな
元々ネタスレ住人っぽいし
269名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 21:56:33 ID:???
創作の8割は糞だから、そう悲観しなくても良い。
270名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 22:12:32 ID:???
良作でなくともエヴァゲーの地雷率やアンソロの外れっぷりを考えると
普通に読める内容の作品が投下されているだけでGJだろ。
みんなハードル上げすぎ。
271名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 22:43:12 ID:???
リテイクの小説版でも書こうか
272シイ:2009/10/19(月) 22:45:22 ID:???
「日直」


人が行き交う廊下で、唐突にくたびれた足を止めると、すっかり摩耗してしまっていて、もはや滑り止めとして機能していないに等しいスリッパの底のゴムがきゅっ、と辛うじて悲鳴を上げた。

そのすぐ後ろで胸をのけ反らせたアスカが思わず唸る。

「急に止まんないでよっ、…って、何つっ立ってんのよ?」

その場で踵を返し、歩いてきた方へと駆けてゆくシンジの背中に向かって呼び掛けた。

「先、帰ってて!、今日日直だった!」
273シイ:2009/10/19(月) 22:46:59 ID:???


「って、言った筈なのにな、」

「良いじゃない!、ひとりで帰っても、つまんないのよ。」

教室の片隅の、一つの机で向かい合っているシンジとアスカは、そんな他愛もない問答を幾つか繰り返す。

頬を若干膨らませたアスカが頬杖をついた。不意に広げた学級日誌に影が出来る。

シンジがそれに気付き、おもむろに顔を上げると、非常に近い距離にアスカが居て、それからまた、ぱっ、と羞恥故に顔を逸らした。

暫時、沈黙が二人を包んだ。しかし、そんな静寂も何故か心地良いものだとシンジは思い立った。

彼が紙上を滑らせているシャープペンシルの、ひそやかに擦れ合う音以外に、漸く人の声音が教室に反響する。

「…シンジ、さ、」

「ん、」

常に勝気なアスカには珍しく、やけに弱々しく掠れた声で、

「好きな人、…居るの?」

274名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 22:47:47 ID:???
>>270
そう思うんだったらもっといっぱいGJしてやれよ。
読むだけ読んで、面白くても拍手もしないから、クレクレ読者とか言われちゃうんだよ。
275名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 22:49:19 ID:???
>>273
俺の好物の予感が…
続きが楽しみだwktk
276シイ:2009/10/19(月) 22:49:20 ID:???
「んー、ん?…えっ、」

それまで曖昧に相槌を打って居たシンジは、降ってきた何にも脈絡の無い問いに素頓狂な声を上げた。

「何よ、その反応…。」

「いや、その、…アスカは?」

吃音混じりに返すと、はぁ、と大袈裟にアスカは溜め息を吐いてから、

「あんたバカァ?、本人に言える訳ないじゃないの。」

呟くように紡いだ言葉に、はっ、とアスカが息を飲んだ刹那、空気が凍り付く。

「…へ、どういう、」

「いやその、あの、…もう帰るわよ!」

「あ、待ってよ、アスカ!」

顔を夕焼けと同じ色に染め、教室を出て行く彼女の背を、シンジは慌てて追いかけた。



お目汚し、失礼致しました。

277名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 22:54:57 ID:???
>>276
GJ 続き希望
278名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 22:59:41 ID:???
>>276
279名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 23:00:42 ID:???
シィさんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
殺伐としたスレが一挙に癒されますた
280名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 23:07:42 ID:???
うわー!シイさんが来なすったー
せんどぶりー!
281名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 23:37:00 ID:???
良作キタ
282名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/19(月) 23:42:12 ID:???
GJ
思わずニヤけたww
283名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 00:39:38 ID:???
GJ!!
284名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 01:03:34 ID:???
';:::::::::::::::::::::|       /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;',      |::::::::::::::::::;'
 ';:::::::::::::::::::',      /;;;;;/ツ""´ ヽ、;;;;;',       j:::::::::::::::::;'
  ';:::::::::::::::::::',      |;;;;;;{  、_i i__,`|リ    ./::::::::::::::::::|
  ';::::::::::::::::::ヽ      |へ| ゛⌒  |⌒ ツ    /:::::::::::::::::::/
   ';:::::::::::::::::::ヽ    ヾ ハ   , 」  リ   _/::::::::::::::::::::/
   ';:::::::::::::::::::::|`ー--、, >、ヘ. ト===ァ/-、/::::|::::::::::::::::::/   あんたバカァ?、本人に言える訳ないじゃないの。
    ';:::::::::::::::::::|:::::::::::::/::::|\ `=' /.|:::i::::::::::|:::::::::::::::/  
    ';:::::::::::::::::|:::::::::::/::::::|  \_./ |::::i:::::::::|::::::::::::/
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     ';::::::::::/:::::::::::::\/::|.~  }‐{ ´∧/:::::::::|::::::/
285名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 01:33:10 ID:???
>>284 名言確定
286名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 01:43:52 ID:???
GJ!この二人でもっといろんな話が読みたい。
287名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 01:52:13 ID:???
シイさんGJです!
ほのぼのしました
288名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 10:02:38 ID:???
起きたらシイさん来てた!
GJです
289名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 11:54:55 ID:???
シイさんGJ

っか前スレのDlS氏は消えたのか?
結構良かった気もするが
290名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 12:21:49 ID:???
わりと冗談抜きで>>219-223
>>272-273>>276の間に
それほどレベルの差があるように見えないんだが
291名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 12:41:38 ID:???
>>290
レベルははっきり言って、どうでもいい。
要は中身が愉しめ、読み手を引き付ける事が出来るかどうかだ。
292名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 12:51:09 ID:???
ヒント→ここは2ちゃん
293名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 13:00:11 ID:???
>>290
ストーリーは確かにそうだけど、技術的な差異はかなり大きいよ。
そしてそれが読後感にも大きく影響している。
294名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 13:10:16 ID:???
俺も>219は面白かったけどフルボッコだったのでびっくりした
295名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 13:19:04 ID:???
>>294
良かったよ俺も。
作品の内容関係なく、変なのが沸きやすい職人と沸かない職人がいるみたい。
296名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 13:37:54 ID:???
一度やらかすとその後どうあがいても無駄

それが2ちゃんだろw
297名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 13:49:46 ID:???
儲やアンチが付くとそういうもんだよ
他にもミクシの某コミュでGJ連発を頼んでおいてからスレに投下している職人もいるし
スレ内の評価は当てにならないから、自分自身が楽しめるものを楽しめばいい
298名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 13:54:38 ID:???
うわ、何それ。サイテー
てかそんなヤツ速攻で晒されて終わりじゃねぇの?
299名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 13:58:00 ID:???
誰だよそれw
300名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 14:03:47 ID:???
>>297
それってこのスレもだったのか
別スレ職人の依頼は俺も見たことあったんだが

他にもおすLAS荒らしの相談を週末に見て
確認すると本当に実行されててただいまドン引き中
最近ちょっとよくないコミュがちょっかいかけてきてるよね
301名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 14:07:20 ID:???
>>300
レス付くたびにAA使ってる荒らし?
出来ればkwskお願いしたい
302名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 15:47:09 ID:???
おすLASって荒らされるような事してないよな?
303名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 17:17:00 ID:???
>>290
やっぱり文章力だと思われ
304名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 21:02:35 ID:???
>>301
それのこと
他にもちょっと問題のある小説を投下、それに皆でGJを付けておいて
「あそこの連中こんなのにGJ連発してるよw」と他所に転載したり
2ちゃん以外にも、個人サイトを名指しで
「ここに全員で毎日一人一通筒(ずつ の間違い?)嫌がらせメールを送ろう」
とか呼びかけたりしてる

>>302
実はおすLASどころか、LAS限定ですらない
LAKやLRSにも嫌がらせしてる
上の小説とレスの転載は最初はLAK対象だった
305名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 21:10:46 ID:???
>>304
イタタな奴だな…
306名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 21:16:04 ID:???
>>304
そいつエロパロにも来てないか?
307名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 21:37:36 ID:???
>>304
酷いなそれ…
308名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/20(火) 22:36:06 ID:???
>>304
>一人一通筒
この誤字に見覚えがある
作者個人への嫌がらせは数ヶ月前の話でおk?
それなら俺も昔いたコミュニティだ
嫌になってmixi自体からFOしたけど

そうか
あの連中はまだそんなことをしてるのか・・・・
309名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/21(水) 14:11:19 ID:???
かそっ過疎
310名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/21(水) 14:45:05 ID:???
不自然な絶賛の秘密がわかったw
311名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/21(水) 16:10:30 ID:???
>>304
> 実はおすLASどころか、LAS限定ですらない
> LAKやLRSにも嫌がらせしてる

ひょっとして自カプ以外の全方向にかみついてるのか
そいつら随分疲れることしてるんだな
312名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/21(水) 18:49:00 ID:???
>>310 失礼だよ
313名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/21(水) 19:12:42 ID:???
なんてことだ!
投下したら全てボロ糞ですな・・・・・・・。恐ろしや
314名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/21(水) 21:39:39 ID:???

軒亜「もう二度と投下しませんw」
315名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/21(水) 22:11:02 ID:???
if「自分はいつでも投下できますよ」
316名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/21(水) 23:20:59 ID:???

これも嫌がらせと思ってもいいのでしょうか?
317名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 00:21:55 ID:???
ifさんは住人に先入観さえなければ
全然良いと思うんだけどなぁ…。

シイさんは元からノンジャンルに居たから
>>304みたいなのはないだろ
叩かれてた時期もあったし
318名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 01:06:18 ID:???
あげ
319名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 12:37:48 ID:???
先入観てなに?
320名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 16:42:12 ID:???
>>319
いくら何でも恥ずかしすぎるよ
321名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 19:35:43 ID:???
319です。
云い方を変えます。
みんなは違う人が投下しても先入観でその作品を見てるんですか?
なぁ、兄やん達よ。
駄作や良作や、とか言っていたら御新規さんが来なくなりますよ。
それやったら、兄やん達が書いたどうでしょうか?

322名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 20:41:42 ID:???
>>321
それどころか投下してくれる
職人すら来なくなるよな
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 21:02:34 ID:???
冷静に投下町
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 21:38:57 ID:???
まぁこんな空気じゃこないわな
325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 22:03:31 ID:???
てかマリン氏やシイ氏とかは文章力があるんだから
サイト作れば良いと思う
そしたら何にも言われないし
326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/22(木) 23:28:50 ID:???
サイトなんか作りたくないから
こういう所に投下するんだろ
サイトは管理とかめんどくさいんだよ
327名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 00:20:02 ID:???
そんな事言われたら投下して保管サイト作った自分の立場が無いな
サイトだって時間のある時に弄るんだから手間は投下とそんなに変わらんよ
328名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 00:38:12 ID:???
例えるなら

スレ投下→祭り屋台や市場の露店
サイト  →店舗構えて営業

の違いじゃないの?
それぞれに書き手にも読み手にもメリット・デメリットがあるってだけの話だよ。
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 01:36:53 ID:???
携帯で書いて落とす人もいるんでしょう
俺とか
330名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 05:55:07 ID:???
ここで書いて、書くのが面白くなってサイト作った奴とか居るからな
俺とか俺とか俺なんかがそうだな
331名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 07:16:59 ID:???
じゃあサイト作ってみます。
332名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 08:08:51 ID:???
サイト作らせたらスレから作者いなくなって
過疎っちゃうだろが
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 08:26:08 ID:???
作者としては人に感想をもらいたいんだぜ…
334名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 08:40:48 ID:???
>>332
過密になるよりいいだろ。
書きかけがいくつもあって筋を忘れちまうぜ。
サイト作れば制作頻度も高まるだろうし。
読ませてもらってる身なんだから、読みに行くくらいのことはしてやれよ。
ある程度以上うまいのがいつまでもスレにいると新人が入って来にくいしな。
まあ、逆にヒドイのがいつまでもスレにいると、そいつが叩かれて新人が入って来にくいんだけど。

>>333
このスレだと、褒めるのはGJが大多数で、せいぜい「ぽかぽかしました」とかそんなもん。
批判はある程度具体的だがな。
しかし、サイト作ってメールフォーム用意すれば、もっと具体的にどこがどう面白かったとか
書いた感想が来るようになる。数は減るかもしれないけど。
どっちがいいかは人によるけどね。
335名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 09:46:59 ID:???
そのサイト作って、この総合スレはどうするの?止めるの?
336名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 12:38:27 ID:???
>>335
残る人とか新規職人が来るとか考えないの?
サイト作る云々は職人の裁量ひとつだし、来るものは拒まず、去るものは追わずのスタンスでいいと思う
マターリと職人待とうよ
337名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 16:33:59 ID:???
>>331
個人かな?出来たらURL貼ってくれると嬉しい
338名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 17:53:58 ID:???
>>335 別にまとめサイトではないんでしょ?
339名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 22:26:11 ID:???
>>333
感想書いたら、バカが怒る風潮は問題なんだけどな。
340名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 22:30:26 ID:???
このスレにはIFが居るじゃないか。
341名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 22:41:32 ID:???
もう奴は来ないだろう
342いときお:2009/10/24(土) 03:02:26 ID:???
投下いきます。
記憶喪失系でイタモノ要素ありのため自己責任で注意願います。
NGワードは”いときお”で

【三行で分かるここまでのあらすじ】
記憶喪失になってしまいツンデレから素直デレになったアスカさん。
シンクロ率が激減した変わりに家事スキルが上昇したアスカさん。
記憶を戻そうと色々するけど失敗続きのネルフの皆さんとシンジくん
343いときお:2009/10/24(土) 03:05:18 ID:???

 サルベージ計画の失敗から一週間ほどが過ぎた。世は並べて事もなし。
使徒襲来もなく僕らは学校を休んでネルフと家を往復する毎日を送っている。
「どうシンジ。掃除は常に無駄なく美しくよ♪」
「お見事……じゃあ洗濯物を干すのは僕がやるよ」
「だーいじょうぶ、まーかせて♪ アインス、ドゥーェ、トライ、チェティーレ♪」
 カレーライスの成功に気を良くしたアスカは料理以外に掃除や洗濯にも手を伸ばした。
どうせ散らかすだけ散らかして最後に片付けるのは僕なんだろうな。
そう思っていたのだけれど、どうやら僕はアスカを甘く見ていたらしい。
危なっかしかったのは最初だけだ。
アドバイスを素直に聞き入れて学び、瞬く間に上達したのは見事としか言いようが無い。
もはやアスカの家事スキルは冷蔵庫の残り物で手早く美味しい夜食を作れる域に達している。
僅か数日でこれほどとは、やはり天才か。
「凄いわねアスカ。これなら良いお嫁さんになれるわよん」
「やだぁ。もうミサトさんたら〜」
 今まで家事オンチは何だったんだろう。
興味とやる気と人の説明を聞く気が無かっただけなんだろうか。
家庭的ではあるけどアスカらしくない、と思うのは我侭だろうか。
「やっぱり僕にも手伝わせてよ」
「だーめ。シンジは座ってて。ねっ。今コーヒー淹れるから」
 また駄目出しされてしまった。
アスカが家事まで出来るんじゃ欠点なしだなと思いながら、ふと気が付いた時はもう遅い。
最初はミサトさんの当番がアスカに書き換えられていただけだった家事当番表。
今では九割が赤ペンでアスカに書き換えられている。
僕に残されているのは力仕事であるゴミ捨て当番だけだ。
料理に洗濯ほか諸々、僕の数少ない貴重な見せ場はアスカに奪われてしまったんだ。
おのれ完璧超人め。
344いときお:2009/10/24(土) 03:06:34 ID:???

 仕方なくリビングのテーブルで新聞を広げ、読む振りをしながらチラチラと様子を伺う。
失敗を探してそれを口実に手伝うという小姑作戦だ。
視線を感じるのか時折りアスカが振り向く度に新聞に隠れる僕。
なんだろうこの遣る瀬無さは。
これじゃまるで久々の休日で家での過ごし方が分からないサラリーマンのようだ。

「アスカにミサトさんなんて呼ばれるとくすぐったいわよねぇ」
 濃い目のコーヒーを啜りながらミサトさんが苦笑した。
今のアスカは基本さん付け、リツコさんは赤木博士、綾波に至っては綾波先輩と呼んでいる。
戦闘技術について綾波が指導役に回った為か、すっかり懐いてしまったらしい。
シンクロテストが終わると毎日シミュレーションの模擬戦を志願しては特訓を繰り返している。
その内綾波のことをお姉さまとか呼び始めそうな勢いだ。
あれだけ対抗心を燃やしていたのに変われば変わるものだね。
一対一での模擬戦なので残念ながら僕は蚊帳の外で少し寂しい。
「これでシンクロ率が高ければ完璧なんだけどね。やっぱ記憶が戻さないと駄目かしら」
 持ち上げた後はいつもこれだ。
ネルフでも毎日のように誰かが『これでシンクロ率が〜』と口にする。
アスカ自身はどうでも良いというように聞こえて凄く不愉快だ。
リツコさんも『ネルフに必要なのはアスカではなく弐号機パイロット』と言っていた。
気持ちは分かるけど失礼な言い草だよ。
「相変わらず起動値ギリギリ。どうも弐号機があの子をアスカだと認識し切れていない気がするのよ」
「今は別人みたいなものですから……」
「そりゃ別人よ。記憶ないんだもの。人って育つ環境でいくらでも変わっちゃうのよね〜」
 今のアスカは優しくて素直で温和な良い子だ。少し恐がりで抜けているところもあるけど。
僕を慕ってくれているのも嬉しい。
だけどそれはアスカの本心ではないと思う。
病気で意識が朦朧としていたり寝ぼけている時と同じく平常心ではない、一種の気の迷いだろう。
345いときお:2009/10/24(土) 03:09:04 ID:???

「それにしてもあんなに素直で家庭的な良い子に育っちゃって」
「でも最近は何か無理して頑張っているような……」
「無理してる…か。そうね。シンジくん、何故だと思う?」
 ミサトさんが呆れたという顔で僕を見つめた。
記憶を失っているから心配を掛けまいとしているのだろうか?
少し考えてみたけど、アスカが無理をする理由は他に思いつかなかった。
「はずれ。答えはねシンジくん。『あなたに』褒められたいからよ」
「僕に……ですか?」
「そ。褒められたい。必要とされたい。そう思った経験、シンジくんもあるでしょ?」
「はい……」
 なんとなく今のアスカの気持ちが分かったような気がする。
不安なんだ。本当にここに居ていいのか。邪魔だと思われていないか。
子供の時の僕と同じだ。いや今もか。
「だから良い所はバンバン褒めたげなさい。子供は褒めて伸ばすのがコツよ」
「実感が篭ってますね。僕で実践した結果ですか?」
「いや、まあ、そうね。あははは……」
 僕が煽てに乗りやすいのは認めますけど。
「ところでシンジくん、これは内緒なんだけど……」
 急に真顔になって小声で耳打ちをする。
アスカに配慮する気があるなら今までの話も気にしてください。
「レイがね。アスカに『自分はシンジに嫌われてるんじゃないか』って相談されてたのよ」
 僕が今のアスカを嫌っている? 何の冗談だろう。
裸を見たとか嫌われる心当たりはあっても嫌いになる覚えはない。
好きかと聞かれたら少し戸惑うけど。
大体綾波に相談したことを何故ミサトさんが知ってるんですか。
「話は全て聞かせてもらった……ってやつかしら?」
346いときお:2009/10/24(土) 03:12:03 ID:???

「盗み聞きですか? しかもそれを当事者に喋りますか? 最低だ。ミサトさんって」
「模擬戦中に人生相談してたのが悪いのよ。記録してたマヤが困って私に連絡してきたんだし」
「それは……すみません。納得しました」
「分ぁかればいいのよ。分ぁかれば」
 プラグの中の通信は基本的に司令部、今回だと実験室側に筒抜けなのが普通だ。
大方訓練用プラグを操作していたマヤさんを忘れて二人きりだとでも勘違いしたんだろう。
やっぱり今のアスカはどこか抜けている。
「どうも『凄く酷いことを言った』みたいな感じらしいんだけど心当たりない?」
 何だろう。サルベージ失敗の時の会話かな。
でもあれは酷いことの部類には入らないと思うけど。
「心当たりないの? 本当にぃ?」
 痛い痛い痛い。耳を引っ張らないで。
やっぱりさっき最低って言ったのを根に持ってるんだねミサトさん。

「きゃっ!!」
 アスカの声と共にガシャンッとくぐもった勢いの良い破砕音が聞こえた。
エヴァのぶつかったビルが崩れる時の音に似ている。
ミサトさんの指を振り切って慌てて台所を覗くとアスカの足元で茶碗が粉々に割れていた。
ちなみにアスカの御飯茶碗だ。
ま、お皿や茶碗を壊すのは洗い物の定番だね。
天才にも失敗はあるってことか。なんだか少し安心したよ。
「大丈夫アスカ? 怪我はない?」
「う、うん。ごめんなさい、すぐに片付けるから!」
「いいよ。破片で怪我するといけないから」
 僕は強引に割り込んで破片を拾い始めた。
庇う様なことを言いつつも実は内心やっと出番が来たと喜んでいる僕。
情けないなあ。
347いときお:2009/10/24(土) 03:17:55 ID:???
 割れてしまった茶碗を買い直しにとアスカに誘われ駅前のデパートへ。
夏休みでもない平日の昼間だというのに人が多くて少しビックリ。
着いて早々、茶碗を買うだけだった予定はデパート巡りに強制変更された。
上から下まで順繰りにだ。
騙された。

 洋服売り場のフロアでアスカの着せ替えショーが始まり既に2時間。
荷物持ちなのは別にいいけど女の子の買物ってどうしてこう長いんだろう。
「このブラウス、さっきの白とこのピンク、どっちが似合ってると思う?」
「えーと、どっちも似合ってるよ……うん。似合ってる」
「もうさっきから『どっちも似合ってる』ばっかり! 真面目に答えてないでしょ」
「ほ、ホントだって。ほ、ほらアスカは可愛いからどの服を着ても似合っちゃうんだよ」
「そ、そう?///」
「だからアスカ自身が気に入った服が一番可愛いんだと思うよ」
 ごめんなさい。もう正直どの服でもいいです。
あと下着コーナーにまで僕を連れて行くのは勘弁して。
アスカが気にしなくても僕が恥ずかしいから。

 太陽が沈みかける頃、やっと辿り着いた一階は本屋さんだった。
アスカは新しい料理の本が欲しいとかで家庭書籍コーナーへ。
僕も欲しい本はあったけど両手の荷物を考えるとまたの機会にしたいと思う。
家事が減って暇ではあるけど、そこで読書に逃げたら後戻りできないような気がするんだ。
「シンジは買う本決まった?」
「うーん。特に欲しい本は無いからいいや」
 アスカが買ったのは家庭料理の本とお菓子作りの本、それから厚めの日記帳だった。
348いときお:2009/10/24(土) 03:19:04 ID:???

「アスカも日記なんて書くんだ。三日坊主で終わらないようにしないとね」
 帰り道。話題に困って口にしたのがこれ。
言ってしまってから料理や服の話にしとけば良かったかなと少し後悔した。
「大丈夫よ。前の私にだって書けてたんだもの。私にだって出来るわ」
 僕の言葉が気に障ったのかアスカはプイッと横を向いてしまった。
本当のアスカも日記を書いていたらしい。
読んでみたいと冗談で言ったら凄い恐い目で睨まれた。ごめんなさい。
一体どんなことが書かれていたんだろうか。
凄く興味ある半面、恐くもある。
「ごめん。僕は日記なんて夏休みの宿題でしか書いたことなかったからさ」
「ならシンジも日記をつければいいのよ。毎日私のことだけ書いててくれればいいから」
「あはは。それじゃアスカの観察日記じゃないか。そんな宿題みたいなの嫌だな」
 掃除の時にミサトさんの部屋で僕の観察日報を見つけたことがある。
中は見てないし、仕事だとは分かっているけど正直あまり良い気分はしなかった。
そういう事はしたくない。
「じゃあ交換日記にしようか。私とシンジで毎日交互に書くの。この前ドラマでやってたヤツ」
「毎日一緒に居るのに?」
「むぅー。もう普通のでいいわよ」
「やっぱり僕は遠慮しとくよ。続ける自信もないし」
「ちぇ、つまんないの。掃除の時こっそり読もうと思ったのに」
 アスカなら絶対すると思ったよ。
ミサトさんにも部屋を家捜しされてるっぽいしプライバシーがないから僕は書かない。
「シンジあのね……この日記帳は良いことばかりで埋めたいの。だから協力してね」
「う、うん……そうだね」
 その日記が埋まっていくということは、それだけアスカの記憶が戻らないということなんだ。
それをアスカは理解しているのだろうか。
349いときお:2009/10/24(土) 03:22:23 ID:???

 翌朝。朝のゴミ捨ては僕に残された数少ない仕事だ。
特に今日は紙製品の日だから紐で絡げた新聞など重い物ばかり。
だから前の当番表でも男である僕の当番だった。
都合の良い時ばかり男扱いして、とは思うけど頼られるのは少し嬉しかったりもする。
「いつもミサトさんもアスカも紐の結わえ方が甘いんだよな。これじゃ運ぶ途中で……」
 言っている傍から緩い結び紐のせいで雑誌の束が崩れてバラバラと歩道に散らばった。
大体二回に一回はこんな感じ。今日はツイていない方みたいだ。
分かっているなら全部結び直せばいいんだけど、運べればいいやとついつい横着してしまう。
反省。歩行者の邪魔にならないように急いで片付けなきゃ。
「あれ? この本は確か……」
 拾い集めたファッション誌や車雑誌に見覚えのある本が混ざっていた。
表題は『初めての家庭料理』、アスカが料理の時に見ていた本だ。
ページをめくると本当のアスカの乱暴なドイツ語で書き込みメモがされている。
これを捨てるだなんてとんでもない。
「掃除の時に混じっちゃったのかな? やっぱり今のアスカって意外と抜けてるなぁ」
 後で返そうと小脇に挟んで片付けているともう一冊、目に付く本があった。
表紙にはシンプルに『Tagebuch』とだけ印刷されている。
意味は分からないし中身も英語か何かで読めないけど手書きなのが気になったんだ。

 台所で朝食を作っているアスカの目を盗み、僕はコッソリと自室へ二冊の本を持ち帰った。
料理本の書き込みともう一冊の本の文字を照らし合わせると思った通りアスカの字だ。
というか時々『バカシンジ』などとカタカナで殴り書きがしてあったから間違えようがない。
そしてページの端にはSeptember、Oktober、November……
僕の乏しい英語力でも日付くらい理解できる。これは多分アスカの日記帳だ。
でもどうしてこんなものが?

 台所ではアスカが調子外れの鼻歌を口ずさみながら出来たばかりの朝食を並べていた。

<<つづく>>
350いときお:2009/10/24(土) 03:24:27 ID:???
インフルエンザの季節です。
皆さんも気をつけてください。

記憶喪失物とか人格改変物は嫌がる人もいるそうなので
一応イタモノ表記は最後まで入れる予定です。
351名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/24(土) 08:37:44 ID:???
乙!これはダブルアスカ内紛の予感
日記気になるな・・・続き楽しみにまっとるぜ!
352名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/24(土) 13:20:50 ID:???
続き楽しみにしてますよ!
353名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/24(土) 21:26:52 ID:???
wktk
354名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/24(土) 21:30:38 ID:???
続きが・・・気になる
355名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/25(日) 02:56:39 ID:???
少し怖い展開になってきましたね!続き楽しみです

あらすじ入れてくれたのは、個人的にありがたかったw
356名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/26(月) 15:33:05 ID:???
職人減ったなあ
357名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/26(月) 19:06:30 ID:???
あらかた追い出したからな〜
358名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/26(月) 19:42:37 ID:???
大丈夫、IFが居るよ
359名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/26(月) 20:10:51 ID:???
さようなら
360名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/26(月) 20:30:17 ID:???
ここももう終わりか…
361名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/26(月) 23:40:14 ID:???
ちょっと投下が無いからってなに言ってんの
これくらいの過疎は慣れっこよ?
362名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/27(火) 01:06:40 ID:???
淘汰は社会の理だよ。
363名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/28(水) 07:49:04 ID:???
月に2、3回投下があればいい方
364名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/28(水) 08:53:44 ID:???
俺たちが読んでやってもいいレベルの投下が無いのが悪い
職人が低レベルなせい
365名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/28(水) 09:57:16 ID:???
兄やんが書いたらいいやん
366名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/28(水) 16:00:55 ID:???
と言われるので文句があるならダマテンで
ってことやね
367名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/28(水) 20:18:52 ID:???
IFさんが居るから安心して職人を罵倒出来るよ
368名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/28(水) 21:59:55 ID:???
明日投下するわ
369名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/28(水) 22:08:05 ID:???
明日?
370名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/29(木) 23:02:37 ID:???
明後日まで一時間切りました
371名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/30(金) 08:15:52 ID:???
裏切ったな!
僕の気持ちを裏切ったな!!
372名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/30(金) 08:39:20 ID:???
N3爆弾ですが続き書いていいですか?
373名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/30(金) 09:29:23 ID:???
ここ数ヶ月新劇効果で賑わっていただけで
もともとは一週間に一度投下があるかないか
以前の状態に落ち着いただけだ
374名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/30(金) 09:57:09 ID:???
なんだかんだ言っても寝取られイタモノがないと盛り上がらない
あれが一番スレが進む
375名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/31(土) 09:26:12 ID:???
NTR
それはスレが盛り上がる代わりに荒れる可能性を孕む諸刃の剣
376名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/31(土) 12:21:55 ID:???
そして誰もいなくなる
377名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/01(日) 23:04:33 ID:???
>>190です。めげずに書いてみました。携帯から投稿するので不備があるかも知れませんが悪しからず。
そして、もし読んで頂けたら罵詈雑言でも構わないので、感想頂けると嬉しいです。
NGワードは

世界で一番愛しい人

でお願いします。
378世界で一番愛しい人:2009/11/01(日) 23:07:30 ID:???
使徒との戦いが終わり、サードインパクトが起こってから、もう一年が過ぎた。
ネルフは国連の復興機関に姿を変え、人類史上最も酷い過ちの罪科は、全てゼーレに被せられた。
『死人に口無し』とは良く言ったものだけど、ネルフは本当に上手くやったものだと思う。
でもそれによって、世界の平和と再興への道が開かれたのも、否定出来ない事実だ。
何よりアタシとシンジが二人で、夕紅に染まる土手を、幸せオーラを振り撒いて
手をしっかりと繋なぎながら、関係を同居人兼同僚から同居人兼恋人に変えて歩いていられるのは、ネルフのお陰だと、想う。
私も優しくなったのだろう。前は何に対しても相手の否を見つけるばかりで
あまり良い部分を見つけて感謝するなんて事は、出来なかったけれど、今は、出来るようになった。
379世界で一番愛しい人:2009/11/01(日) 23:09:42 ID:???
私を変えた原因は何だろう?エヴァに乗れなくなって挫折を味わったからだろうか?サードインパクトで他人の心を覗いたからだろうか?
それとも単に年齢の?どれもそうだろうと思う。でもやっぱり一番の原因は、シンジだ。こいつとは本当に色々あった。
嬉しかった事、ムカついた事、楽しかった事、憎悪した事、たくさん。嫌な想い出が圧倒的に多いのだけれど、あった。
でも、どれも大切な想い出だ。今こいつをこんなにも好きで好きで愛しくて堪らないのは、それらを経たからこそだと想うから。
でもふと想う。なんでアタシは、こいつがこんなに好きなんだろうか?
世界で一番愛しているなんて、自信を持っているんだろうか?
それは、好きだから。と言えばそれまでだけど、何か理由が欲しい。だからちょっと考えてみようと想う。
まず容姿、まぁ悪くない。悪くないけれど、多分もっとカッコいい奴だっているだろうし、こいつのファッションセンスときたら、笑っちゃうほど壊滅的だ。
それに、容姿で人を好きになるのは、何かイヤだ。
まぁ、加地さんに\(*≧∇≦)/キャー!状態だったアタシが言えた義理ではないのだけれど…
380世界で一番愛しい人:2009/11/01(日) 23:11:08 ID:???
次に性格、まず性格において一番に言えるのは、シンジは優しい、本当に、優しい。
サードインパクトの後、アタシ達が和解出来たのは、シンジの優しさによるものだと、想う。
確かにシンジに責任があったのだから、当然の帰結なんだけれど
その責任は、あの時のシンジの状況を考えれば、本当に微々たるものだったと、素直に今はそう想う。
父へのトラウマ、鈴原への罪悪感、アタシの精神崩壊、レイの真実、余裕が無くなっていく大人達、酷い状況での絶望的な孤独感
そして、渚カヲルを、初めて好きだと言ってくれた人を、自らの手で、殺してしまった事。
だから、しょうがなかったのだ。あまり好きな言葉ではないけれど、ふさわしい言葉だと想う。
だからこそ、全く言い訳もせずにアタシにきちんと向き合って、心を開かせてくれたシンジを、本当に優しいと想っているし、感謝もしている。
け・れ・ど・も!まぁ、そうは言っても、世界一の保証はない。それに、難を挙げるとすれば
こいつはホントに鈍感だし、意外にスケベだし、前より良くなったけれど依然内罰的には違いないし、まだまだ弱々しい。
381世界で一番愛しい人:2009/11/01(日) 23:12:45 ID:???
こうして考えてみると、シンジが世界で一番良い男であるなんて、言えないのは明明白白だ。
じゃあ何でこいつは、私にとっては世界で一番大切な人なんだろうか?
「どうしたの、アスカ?」
アタシの雰囲気が伝わったのか、心配そうにシンジは言った。突然のことでアタシは少し驚きながら言葉を返す。
「えっあっ別に何でもないわよ!」
「そう?良かった、何か悩んでるみたいだったから」
と言って、微笑む。
あっそうか、とアタシは想う。シンジだからなんだ、と。確かに容姿や性格が最も優れている訳じゃない。
でも、シンジは世界に一人しかいない。アタシ達の想い出を共有している人間は、こいつしかいないし
それらをアタシと一緒に体験した人だって、当然ながらこいつだけだ。
惣流・アスカ・ラングレーと碇シンジの二人が、出会って、傷付けあって、支えあって、魅かれ逢ったという経験が
あるからこそ、二人は最高の相手になったんだ。
それに、こんなに境遇が似ていて、こんなに憎しみあったのにも関わらず、魅かれ逢っている相手は
本当に世界でアタシ達だけなんじゃないかな、とも、想う。
382世界で一番愛しい人:2009/11/01(日) 23:14:33 ID:???
だからこそアタシ、惣流アスカラングレーは、巡り逢えた、世界で一番愛しい人、碇シンジと、これからも傷付け合ったりするだろうけど
成長して、分かち合って、支え合って、まだまだ続く、長い長い人生の路を、歩いていこうと想う。ずっと、ふたりで。
「どうしたのアスカ?急に笑顔になっちゃって」
シンジの笑顔を見る。やっぱりアタシは、シンジが大好きだ。世界で一番愛しい人だと想う。
だからこそ、素直じゃないアタシは、意地っ張りなアタシは、シンジに、悪態を吐いてやろう。自分に正直に。
「うっさいわね、バカシンジ!アタシが笑顔になったらいけないとでも言う訳!?」
「そっそんなこと言ってないだろ!?大体何で突然黙りだすんだよ!?
さっきまでうるさいくらい喋ってた癖にさ!」
「なっ何ですってえ!!!!?」

あぁ、どうしよう。今アタシは、世界で一番幸せだ。

〜END〜
383名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 01:06:52 ID:???
俺は好きだな
GJ
384名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 05:57:28 ID:???
良いね
385名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 12:34:13 ID:???
イヒヒ
大好きだー
386名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 19:20:35 ID:???
いいんだけどちょっと簡潔すぎるかな
エピローグだけ読んでる感じ
387名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 19:33:03 ID:???
EOEの後なんでエピローグだろ。ガンオタの何とかいう小説家は
エピローグが長すぎるけど、エピローグの長さはこれ位が
適当だ
388名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 19:38:47 ID:???
長編を書くのは金稼いでるプロでも難しいんだから
素人は短い話でコツコツ練習した方が良い
色々詰め込むと大抵話がつまらなくなる
389名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 19:45:59 ID:???
第一、普通に性活をしていたら長編小説なんて書けないだろ。
390名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 20:19:18 ID:???
う〜ん。
書けない事もないけど時間が掛かるよ。
でも物語が思い浮かばなくて、途中で挫折するかもね。
短編がいいよ。
391名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 21:55:06 ID:???
>>378-382
なんつか、物語ですらないw
392名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 22:19:07 ID:???
>>389
>普通に性活

どんなんだ(笑)
393名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 01:32:18 ID:???
起きて仕事いって飯食ってマスかいて寝る生活
394名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 03:58:32 ID:???
>>382
GJ!付き合いだしてから好きな部分を悩み始めるのがアスカらしいですね
自分の物になるまでは多分必死にもがいてて、ゆっくり考えるヒマが無かったんでしょうw
好きな理由も良いLASしてますなぁ
395名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 06:13:44 ID:???
皆さん感想ありがとうございました。
これからも頑張ろうと思います!
396名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 10:04:52 ID:???
頑張ってください。
397名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 10:32:00 ID:???
ガンバ
398名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 11:00:34 ID:???
よしなに
399シイ:2009/11/03(火) 15:40:48 ID:???
【公園】

「ふふ、」

思わず白い息が漏れた。
恥ずかしさと愛しさが溢れんばかりに込み上げる。

この閑散とした公園には、ベンチに並んで座って居るあたしとシンジ以外、誰一人として居ない。強いて言えば、たまに自転車がきしきしを悲鳴を上げながら通り掛かるくらいだ。

「なに笑ってるの、」

「だって、さ。」

また得意気に頬を弛緩させ、隣に振り向くと、紅葉した木の陰に沈みかけたシンジの顔が近くて頬が熱くなった。

「アスカは可愛いなあ、」

と言ってあたしの紅潮した頬をおおきな手のひらが撫でる。いつもなら、なにかぶちぶちと文句を垂れるところだが、今日はその手のひらに、躊躇いがちにあたしの手のひらを重ねてみた。
400シイ:2009/11/03(火) 15:43:51 ID:???

「手、おおきいわね。」
「そうかな、」

頬からひっぺがした手のひらをしげしげと見つめて居る男女は周りから見たら奇妙だっただろうか。そのままあたしは、シンジの指に自分の指を絡めてみた。まあ、所謂カップル繋ぎってやつ。

「…うぅ、」

暫時黙っていると、隣から小さく呻き声が聞こえた。横目でちらりと見てみると、シンジはあたしと同じくらいか否か、顔を真っ赤にして口許を押さえている。

「ちょっと大胆だったかしら、」

「アスカ…恥ずかしいよ、」

そんなことを言いながら、はじめて繋いだ手を離さなかったシンジに、あたしはまた鼻から抜けるような緩い笑いをしてしまった。

「…あったかいね。」

--------------------

実はわたしの体験d(ry…お目汚し失礼致しました。
401名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 15:49:15 ID:???
>実はわたしの体験d(ry…

こういう自己アピールいらね
402名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 15:52:08 ID:???
つーかほんとにシイ氏?
403シイ(仮):2009/11/03(火) 16:16:53 ID:???
前投下していたシイですが、>>399-400は書いてません。
名前が被ってしまったようなので名前変えますね。
404名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 16:20:37 ID:???
被ったって思うのはお人好しだろw
405名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 18:05:41 ID:???
あかんで兄やん人の名前を騙るの最悪やで。本当に最悪や!!!
シイ姉やん負けたらだめだよ。
(仮)?
406名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 18:06:00 ID:???
>>400
前半男らしいと見せかけて、やっぱり照れ屋なシンジが良かったよ〜

ただ最後の後書きでイラッとしたのは、俺だけではないはずだwww
407名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 18:46:54 ID:???
>>403
トリップを付ければ良いですよ。
ここを参考にしてみてください
http://wstring.pos.to/guide/index.html#trip
408シイ ◆VxEYsTkAC6 :2009/11/03(火) 19:33:44 ID:???
>>407さん ありがとうございます。
409名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 22:58:46 ID:???
「〇〇○、」て表現よくみるけど流行ってんの?
410名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/03(火) 23:47:40 ID:???
小説読んだことないんだろう
411名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/04(水) 01:53:48 ID:???
いや、あるけどさ
べつに普通なんだったらいいよ
412名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/04(水) 02:18:57 ID:???
>>409>>411
>>410>>399-400についての言葉だと思うよ
はっきり言ってこんな読点の使い方は真っ当な文章ではまずしない
413名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/04(水) 02:52:27 ID:???
ふつうは使わないけど
どうでもいいっちゃどうでもいいことである
414名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/04(水) 12:27:45 ID:???
太宰治の小説では使ってたけど・・このスレでは関係ないか。
415名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/04(水) 20:47:58 ID:???
「〇〇○、」と「〇〇○。」はどんな違いがあるのか解説してくれ
416名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/05(木) 01:54:40 ID:???
>>415
「、」はまだ継続する。
で「。」は、そこで一旦区切る。
「○○○、」だと想像した際に、まだ何か言おうとしてる様な感じになる。
逆に、「○○○。」だと話し手が一旦会話終えたりして相手の行動を待ったり
別な場面に移ったりする。

正直、国語の勉強(試験様)だったり、キャラの心情を細かい描写にして書く
作風の小説でもしてない限り読み手側には、違いないと思う。
417543:2009/11/06(金) 00:52:07 ID:???
皆様こんばんわ。

久方ぶりに投下いたします。
自分、おそらくイタモノや戦闘書けない人なんだと思いますw
今回は5、6回位分けの投稿になるかと思われ。(30レス内外)

◆成分
・LAS中心だけど要素は薄いです。
・萌えとかたぶんあんましないです。
・全般的に日常の延長で存外平凡です。


てのに許容できるかねる方のNGワードは

経験の唄

で御願いします。
418経験の唄:2009/11/06(金) 00:54:09 ID:???
「アスカ、シンちゃん、明後日予定明けといてね」
 そう宣言されたのは、宇宙から落下してくるという、対応を考える前に匙を
投げてしまいそうな第8使徒との戦いが終わった一週間後の夜だった―――
 この日、残務処理で忙しい筈のミサトが結構早く帰って来た。
 何となくアスカとシンジが不思議に思いつつ晩御飯も食べ終わる。
 洗い物の出来ないシンジの代わりにアスカが危なっかしく手伝いをして
いた時、ミサトが唐突に口を開き、そう言った。
 思い通りに手伝いが出来ないでいたアスカは、不満の矛先をミサトに向け、
振り向きざま遠慮もなく突っかかる。
「空けるも何も学校よ?そんな事わかってるでしょ?」
「放課後、何かあるって事ですか?」
 シンジのほうは急な呼び出しや予定外の事態に慣れてきたせいか、案外落ち
着き払って聞いてきた。
「んにゃ、丸一日…かな?」
 アスカとシンジはミサトの言葉を聞いて顔を見合わせた。
 意味はともかく理由がまず解らない。
 シンクの中にあった最後の皿をシンジに渡し、エプロンを取りながら
アスカがミサトに訊く。
「んで?改まって何をやらせるの?」
「やらせるって言うか、んー、ある意味社会見学……いや、情操教育……
違うわね。なんて表現すべきか……」
「まあでも、訓練とか演習とかなら仕方ないし、学校にも説明できるだろう
から、別にいいんじゃないかな?」
「はんっ!なにイイコぶってんのよバカシンジ。そうやって理由も目的も
確かめずにハイハイ言ってたらいつか痛い目見るわよ!」
 シンジがぐうの音も出ずにアスカの責めに目を逸らすのを、ミサトは気重な
思いを一緒くたにしてエビスで飲み干して、次の言葉を吐き出した。
「んで、その予定だけど、二人ともお葬式に出てもらいます。勿論これは
個人的な御願いじゃなく、純粋に命令よ」
「はぁ?」
「へ?」
 状況が飲み込めない二人には、困惑を含めたそんな返事しか出来なかった。
419経験の唄:2009/11/06(金) 00:55:14 ID:???
 *

「ちょっとアスカーー、まだなの?」
「もうちょっとだから急かさないでよ!」
 襖の向こうから急いでいるらしいどたばたした音は聞こえてくるが、待って
いるミサトとシンジにはその努力もイライラの対象でしかない。
 シンジはいつもの制服姿なのですぐに準備は終わり、その埋め合わせのように
普段の倍の家事労働をする羽目になった。
 朝の5時ごろ帰ってきたミサトは、不機嫌と化粧のノリの悪さはひとっ風呂
浴びても解消出来ていなかった。
『おまけにこんな気重な行事。残務終えたら日帰りでいいから有給とって温泉
行きたいなぁ……』
 今日の予定が人任せなシンジは結構気楽なもので、少し濃い目の化粧と、
肌色と対照に黒尽くめの上下で固めたミサトを不思議そうに見る。
 ミニスカート姿の多いミサトが今日はパンツ姿なのが、どことなく冷たく
精悍な印象を醸し出していた。
「お、お待たせ!」
 威勢良く開く襖の音に振り向いた二人の先には、半袖の黒いワンピースに、
赤い髪をアップにしたアスカが立っていた。
「おぉぉーーー」
 声になるかならないかの感嘆が二人の口から漏れると、アスカは少し赤面
してすぐさま玄関に向かう。
「アスカぁ、お化粧してたの?めっずらしー」
 冷やかすミサトに、ドツボに向かう間違った反応と知りつつアスカも振り
向いて突っかかる。
420経験の唄:2009/11/06(金) 00:56:06 ID:???
「っさいわねぇ!公的な席に出るんだからこんくらい礼儀でしょ!」
「なかなか綺麗よぉ、馬子にも衣装とはよく言ったもんね」
「孫ってなによ?あたしのおじいちゃんやおばあちゃんとは何の関係もない
じゃない!」
「その、アスカ、馬子ってのはそういう意味じゃなくて……」
「あぁんもういいじゃない!急いでるんでしょ?早く行こうよ!」
 すっかり顔が紅潮したアスカは、手に持って出ていた黒のローヒールを
乱雑に玄関に放り出し、同じく黒で揃えたショルダーバッグを袈裟懸けに
してどすどすと外に出て行った。
「シンちゃん、ちゃんとおめかししたアスカ褒めてあげてね」
 いつものハイヒールをシンジの肩を使いながら履いているときに、ミサト
が茶目っ気たっぷりに言った。
「これからお葬式に行く格好なのに、それってちょっと不謹慎じゃないですか?」
「なーに言ってんの、褒められて嬉しくない人間なんていやしないわよ。
髪のセットも慣れない化粧も、アスカきっと頑張ってたからあんなに時間
かかったんだろうし」
 人差し指でシンジの唇をぺちぺち叩きながら、ミサトもそう言い置いて
アスカの後を追った。
『確かにアスカの服装も化粧も似合ってるし綺麗だったけど……』
 別に褒めるのは嫌でもないしむしろ言いたいとは、思う。
『……先生も言ってたけど、結婚式や葬式に男の出る幕が無いっての、本当
なんだな……』
 いつもと違う二人に代わり映えしない自分。それが少しシンジは寂しかった。
421経験の唄:2009/11/06(金) 00:57:14 ID:???

「あれ?ミサト、今日は車は……」
「今日はハイヤーよ。派手なスポーツカーで乗りつけるような場所じゃない
しねー」
「ま、そうよね。…それで、あとどれくらいで来るの?」
「んー、もう2、3分じゃないかな?」
 腕時計を眺めながらミサトが呟く。
『見ない時計だな…誰かにもらった……やつ?』
 いつもと違うミサトの格好の中でも、その時計は何となくアスカの目に
止まった。
 目ざとくいつもと違う持ち物をいろいろ見てしまうのは、アスカ自身が今日
そうだからだろうなと少し思う。その点所在無げに突っ立っているシンジ
は笑える位にいつも通りだ。
「ハイヤーなら待たせとけばよかったんじゃないの?第一、私ら遺族じゃないん
だし、少しくらい遅れても問題ないんでしょ?」
「結構な人数来るんだから、遅れたらいい赤っ恥よ。そ・ん・な、事よりぃ、
えいっ!」
「ちょっと、ななななにすんのよミサトォォ!」
「あり、ファンデやった位か。まあわっかいんだからあんまいじくりまわす
必要はないか…」
 突然ミサトはアスカを後ろから羽交い絞めにすると、びっくりして悲鳴
を上げたアスカの顔をじろじろ眺めまわしはじめた。
「ちょ…や!」
「やっぱアスカ肌のキメ細かいわねー。前から気にはなってたけど、所謂
湯上り卵肌てやつか」
「ミサトぉ……」
 混乱して赤面するアスカにお構いなしに、尚もジロジロ眺め回し、あまつ
指で頬や項や唇をいじりまわす。
 シンジは真っ赤になって呆然としていた。
 ―――でも目線は二人に釘付けだった。
422経験の唄:2009/11/06(金) 00:58:27 ID:???
「お、この口紅今年の新色じゃないの。何気にチェック早いわねぇ」
「み、店の人の言いなりで買っただけだから、わっかんないわよそんな事!」
「ほほぅ、言いなりでメイク指導もちゃんと聞いてきたのねん。一体誰の為に
勉強したのぉー?うりうりうり」
「やだぁ、ほっぺたいじるなぁ!お化粧落ちちゃう!」
「落ちやしないわよこんくらいで。…にしても睫毛ながっ!ビューラーか
なんかやってんの?」
「何にもしてないもん!だからもう離してよ!」
「ぬ、それはまた羨ましいな、くのっ!」
「やぁぁぁん、息吹きかけないで、そこ弱いのぉっ!」
 意外と怪力なミサトにかかれば、軍で訓練を受けているとはいえアスカが
敵いっこなかった。
 心なしかシンジの耳には、段々とアスカの声が甘味を帯びてきたような
気がした。
「そだアスカちゃぁん、今のうちにシンちゃんにマーキングしときなさいよ」
「ふぇ?マー…なに?」
 ガン見しているシンジの耳に十分聞こえる小声でミサトが囁いた。
「キスしちゃいなさいってことよん。今ならもれなくキスマーク付けれるし」
 アスカは返事の代わりに思わずシンジをまじまじと眺めると、沸点を通り
越して絶句してしまった。
 向かいのシンジも仲良く硬直してしまい、同じように切羽詰まった眼で
アスカを見ていた。
 ミサトは羽交い絞めを解くと、シンジの後ろに回り込んで肩を押して、
アスカの目の前に立たせる。
「ホラ、シンちゃんも呆っとしてないでアスカの変身に一言位言ったげな
さい」
423経験の唄:2009/11/06(金) 01:00:11 ID:???
『な、何をどう言えっていうのこのタイミングで!』
 ミサトの一言に二人同時に横を向き、アスカは心臓が早鐘を打つのを
感じ、シンジはかける言葉を必死で探った。
ミサトもアスカもこの場をごまかして通り抜けることは、絶対許してくれない
だろうという確信がシンジにはあった。
『エヴァに乗ってる時の方が楽かも……』
 そんな事を思う日が来るとは思わなかったシンジだが、現実は時間の経過と
ともに重圧が増すだけだ。その重圧から逃げ出すように言葉を吐き出す。
「えと、アスカ……今日はなんか、綺麗だし…その、化粧も服も似合ってるよ…」
「こ、…んも、この、そんな…誉め……」
 シンジが必死に絞り出した誉め言葉に、アスカは感嘆符だらけの何かを少し
喋りかけてそのまま俯いて黙り込んでしまった。
『あちゃあ、ちょっちやりすぎたかなぁ?』
 お互いに横を向いてもぞもぞしている二人を見ながらミサトは少し反省した。
『でも初々しくって可愛いのよねこの子たち』
 反省は本当に少しだけだった。

 ミサトが二人をニヤニヤ眺めているうちに、ハイヤーが駐車場に滑り込んで
きた。

424543:2009/11/06(金) 01:01:47 ID:???
本日以上です。
続きはまた後日……
425名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/06(金) 01:09:30 ID:???
おつー!
426名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/06(金) 06:10:27 ID:???

今後の展開が楽しみだ
427名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/06(金) 07:47:34 ID:???
好みだ。続きが・・楽しみ。
428名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/06(金) 22:22:02 ID:???
こん位、一気にうpしろよw
429名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 00:28:28 ID:???
乙かれです。
俺も好み。続きゆっくり待ってます。
430名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 16:48:29 ID:oYcABM9D
マイナーなギャルゲーSS祭りを開催したいです。
マイナーなギャルゲーSS祭り!

1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品20本)
EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 20本
エーベルージュ 20本
センチメンタルグラフティ2 20本
canvas 百合奈・瑠璃子 20本
ダーク、18禁、クロスオーバー、オリキャラ禁止
プレーンテキストで20KB以下禁止、20KB〜45KB以内

2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/11/08

3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀SSサイト管理人に賞金10万円を授与します。
431名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 18:39:28 ID:???
>>430
スレ違い
432543:2009/11/07(土) 22:17:05 ID:???
皆様コンバンワ。

続きのほう投下致しますです。
個人的に喪服姿のアスカって見てみたいですねえ。
絵心ないんで自炊できんのですが、きっと似合うと思うんだ。……不謹慎ですがw


それでは、
・戦自にどっちかというと同情しちゃう人
・そもそも題材が気にくわねえ
と言う人向けのNGワードは

経験の唄

で御願いします。
433経験の唄:2009/11/07(土) 22:18:50 ID:???
 *

 突如降り出した雨が、黒い車体を容赦なく叩く。
 車は北に向かってトンネルを超え、たまに現れる国道の行き先表示板には、
御殿場の文字があった。
 会場の近くになると戦自の車両が所々道路脇に現れるようになり、誘導の
係員がずぶぬれになりながら関係車両を捌いている。
 はじめお互いを過剰に意識して黙りこんでいたアスカとシンジは、今度は
場の空気に感化されて無口になった。二人が交互に見た左に座るミサトの顔も、
心なしか段々と重く沈んでいくように見える。
 応急で作られた車回しにハイヤーが横付けされ、仮設の巨大なテントが弔問
の人々を次々に吸い込んでゆく。
 多少雨脚は弱まったものの、いまだに雨は降り続き、テントの下でさえ方々
にぬかるみを作っていた。
「下ろしたてなのにぃ……」
 車を降りると周りはぬかるみだらけで、アスカは悲しそうに泥をはねる靴を
眺めた。
『NERV受付』『戦自受付』『一般受付』と書かれた帳場にそれぞれ列が出来
上がり、NERVの列だけが不自然なくらいに長い。
 とくに遺族でもなさそうなシンジたち三人は、どことなく視線を集めるらしく、
落ち着かない心持をさらに居心地悪くさせた。ミサトはなにか気になる事がある
のか、先ほどからいらついているように見えた。
「ちょっと、どういうことなの?」
「どうもこうもありませんよ。まるで話が違うんですから。総務部の連中が今
戦自の実行本部に怒鳴り込んでる最中です」
 帳場でミサトは日向に戸惑いながら食って掛かった。
「嫌な空気ね。なんかに嵌められてるんじゃない?」
「その可能性は否定できませんね…」
「なんにせよ情報を頂戴。パイロットの対応も色々考えないといけないから」
「わかってますよ。今日は保安部も諜報部も協力的ですから問題ありません」
「頼りにしてるわ」
「頼りにされますよ」
434経験の唄:2009/11/07(土) 22:19:59 ID:???
 受付にいた日向とミサトの会話は、ここに来るまでの雰囲気と相俟って、
シンジとアスカの気分もかなり神経質にさせた。
 空気に気圧され目線がどんどん下がるシンジをじっと見守っていたアスカは、
ミサトが戦自のお偉いさんに捕まる寸前に行動に出た。
「ちょっと来なさいよ」
 そう言ってシンジの腕を掴むと、帳場の脇をすり抜けて勝手口から裏手に
出る。人の気配が無いのを確認すると、アスカはシンジを壁を背にして立たせ、
その前に腕組みをして仁王立ちになった。
 相対するアスカの表情も硬い。その表情がシンジを更に強張らせるが、そんなの
はアスカにはお構い無しだった。
「アンタこういう席初めてでしょ?自分のせいで人死に出たって所に参加
するの」
「うん……」
「予想通りというか、早速場に呑まれてるわね……
 いい?バカシンジよく聞きなさいよ。要はココの中は全部敵よ。どんな事が
あっても謝っちゃダメ。碇指令みたいに上から冷たく見下ろす覚悟でいなさい。
弱気見せたら絶対ダメよ!」
「で、出来ないよそんなこと……」
「出来る出来ないじゃないのよ、バカ!やるしかないのよ」
「出来ないって!大体そんな態度、傲慢すぎるよ!」
「アンタの中じゃ謝ったり泣いたりするのは優しさだろうけど、何事もケース
バイケースよ。賭けてもいいけど、アンタの謝罪はまともに受け取られないわよ」
「でも……」
「それに!戦闘地域に残る覚悟持った人間なら、絶対どこかに遺族も『仕方ない』
って思ってる所があるし、事実仕方がないのよ!アンタ、そうやって納得している
遺族もいるのに、その人たちまで傷つけて平気なの?」
「そういぅアスカは、こんな所、平気でいられるの?」
 一瞬怯みそうになるのをアスカは立て直し、弱みを見せないようにシンジに食って
掛かる。
435経験の唄:2009/11/07(土) 22:21:21 ID:???
「アンタばかぁ?すっかり忘れているみたいだけど、私一応軍人よ?命令を
守って任務遂行して、きちんと結果を出す。途中で誰かが巻き込まれて死んじゃう
のもとっくの昔に覚悟してるわよ!」
「だけど……」
「つべこべ言わないの!アンタ男でしょ?何があってもドンと構えてなさいよ!」
「何か……あるの?」
 不安そうにシンジがアスカに聞いたが、眉根を寄せて困った顔をしたアスカは
多少口ごもりながら答える。
「わかってたらちゃんと教えられるんだけど、……ぶっちゃけ私にもなにが
起こるかなんてわかんないわよ……」
「そう……なんだ……」
 シンジも頼りたいのは山々だったが、アスカが虚勢を張らない上に、いっぱい
いっぱいなのは見ていて解った。
 使徒とアダムが接触する前に自爆する覚悟でネルフは使徒との戦いに臨んでいる。
 いつかミサトにそう言われた言葉がシンジの脳裏に蘇る。
「頑張って…みる」
 気力を振り絞ってアスカに面と向かい、シンジは頼りなさげに言った。
「一人で戦えなんて言わないから、せいぜい足引っ張らないで欲しいわね。もし
どうとも出来ないんならずっと下向いてくれて、黙ってればいればいいのよ」
「その辺も、努力するよ」
 アスカの変わらない口ぶりに薄ら笑いを浮かべ、シンジはほんの少し勇気を
貰った気がした。
 自分のことで精一杯のシンジには、安堵の溜息をつくアスカは視界に入って
いなかった。

436経験の唄:2009/11/07(土) 22:22:44 ID:???
 *

 手短にミサトが二人にした説明によると、今回の合同葬は戦自が企画し、
対使徒戦の犠牲者を追悼することを通して、お互いのパートナーシップを確認
云々と言うのが目的だったらしい。
 気前良く会場の準備や警備を買って出た戦自の献身に訝しく思いながら、もしか
したら本当に何の打算も策略もなく動いていると、ネルフ側は受け取った。
 その後も慎重に戦自の出方を伺っていたが、態度も対応も変わることなく過ぎ、
それならばと、副指令の発案でパイロットも葬儀に参加してみてはどうかという
話になった。今日こうしてシンジとアスカが参列しているのはその結果だ。
「確かにお互い協力的なら私らにも戦自にも意味のあるイベントよね」
「協力的、ならね」
 ミサトは苦々しそうに続けた。
「それが会場に来てみたら、通告の無かった民間人の参列者がいたり、受付から
何からNERVぶんは自分たちでやれだの、意図的に指示や説明食い違ってたり、NERVの
幹部連中にやたらと戦自が話しかけてきたって訳。…ま、それだけなら我慢も
するんだけどね」
「まだ何かあるの?」
「戦自が私たちの情報、今日来てる民間人にリークしてるみたい……」
 一瞬アスカが息を呑み、シンジは目を逸らして俯いた。
「何それ……てゆーか大体戦闘地域に何で民間人がいるのよ?退去完了は嘘だった訳?」
「最近増え始めたのよ、避難拒否する人……」
「なんでよ、意味わかんない。そんなの……自殺行為じゃない」
「そ、自殺そのものよ」
 戦争神経症かPTSDの亜種みたいなもの……
 ミサトの説明の内容は大体そんな感じだった。
 度重なる使徒との戦闘で、地域住民にも精神的に参ってきた人が増えているらしい。
 『どうせそのうち死ぬ』『どこにいても結局一緒』『同じ死ぬなら自分の家で』
 そんな台詞を吐く避難民が増え始めていた。今回の戦闘ではその数、47名。
 設備や体勢の整った第三新東京市近辺と違い、郊外地域の避難誘導は地元の警察
と消防団、場合によっては町内会が担当している。
437経験の唄:2009/11/07(土) 22:23:58 ID:???
 避難拒否をする人々を、彼らは見捨てることも出来ずに説得を続けていた。
「報告を捏造して現場に残って説得を続けた人たちもかなりいたらしいわ…」
「なんという…、報告内容曲げられたらどうしようもないじゃない……」
「ま、そうなのよ。おかげで巻き込まれた関係者も100名越えちゃって……献身的
なのはありがたいけど、これはちょっちねー……あ、もう始まるわ」
 アスカとミサトの会話が続く間、シンジは一言も口を挟めなかった。
 とてもついていけない。そして話の内容がシンジには重すぎた。
 エヴァに乗って必死に走り回っていたその足元に、戦闘とは無関係の生きている
人間が、いた。
 その事実が、シンジを責める。
 話の内容からすると、民間人遺族も今日ここに参列している。しかも、そこに
乗っていたパイロットも知られていることになる。
 喪服の葬列の向こうにある通路を、きらびやかな袈裟を纏った僧侶の列が通過し、
その様を別世界の出来事のようにシンジは眺める。
 脂汗が滲み、数珠を握り締めたシンジの手が震えだしていた。
 そのシンジの姿にはっとしたアスカは、周囲に気付かれないようにシンジの手を
上から握った。
 アスカに振り向くシンジの目線の先には、自分も困惑しているはずなのにじっと
シンジを見据えるアスカの顔があった。
 式の前の二人の会話を思い出し、シンジは深く静かに深呼吸して、添えられた
アスカの手を握り返して指を絡めた。一瞬逃げそうになったアスカの指先は、
すぐにしおらしくなってゆっくりとシンジの掌を包み込む。
 重く、幾層にも響き渡る読経の声がテントの中を反射し、あちこちから忍び泣く
声が纏わりつく。
 急激に晴れ上がった空がテント越しに光線と熱気を送り込み、吹き抜ける風が
むせるような熱気と湿気をテントの中に運んできた。
 額に汗を浮かべながらその不快な状況に耐える二人の姿を、ミサトは温かい目で
見ながら、ほんの少し安堵の息を漏らした。

438543:2009/11/07(土) 22:26:13 ID:???
本日はこの辺まで……

レス頂いた皆さんありがとうございました。
やっぱ励みになります。

それではまた後日
439名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 23:00:14 ID:???
乙、こう言う話は好きだ
440名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 23:16:20 ID:???
イイ!GJ
441名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 23:16:55 ID:???
これは・・・・なんか・・・シ、シリアスですね。
なんか凄い感じがするんですけど・・・気のせいかな?
えっと、どうなるの?
442名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 23:35:23 ID:???
因みに、アスカの喪服姿は確かに見たいな。
443名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 23:36:29 ID:???
GJ
いいじゃん。
面白い。

オバマも広島に来たらこういうことになるんだろうなぁ。
444名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/08(日) 01:03:31 ID:???
てか、LASじゃないww
445名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/08(日) 01:35:51 ID:???
>>444
まあここから展開するのかもしれんよ
446名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/08(日) 02:08:16 ID:???
重いテーマに見せて中身がないのも本編準拠だなw
447名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/08(日) 18:55:32 ID:???
アスカがアスカらしく、シンジがシンジらしい作品ですね
こういうのも良いなぁ
448543:2009/11/09(月) 23:11:00 ID:???
皆様こんばんわ。
毎度小出しですみませんが、投下行かせて頂きます。
風呂敷広げてますがなーんも大事件やらにはなりませんですハイw

それでは、
・血沸き肉踊るサスペンスや冒険譚期待してる人
・NERVと戦自の情報ダダ漏れ具合がありえないと思う人
向けのNGワードは

経験の唄

で御願いいたします。
449経験の唄:2009/11/09(月) 23:11:41 ID:???
 *

「何しに来たのよ!この…人殺しっ!!」
 突如中年女性が立ち上がり、戦自と民間犠牲者の側へ一礼したシンジにそう
叫んだ。
 場内がどよめくのと、一足遅れて焼香したアスカが振り向くのはほぼ同時だった。
 シンジは葬儀の前にアスカと話した事を律儀に守り、顔も上げずに下を向いた
ままで固まった。
 会場はざわつき始め、シンジの態度を笠に着た女性は更に罵声を浴びせる。
「あんたらが来なけりゃうちは壊れなかったし母ちゃんも死ななかったんだよ!
あんた、どう責任とってくれるんだよ!」
 式場の端で戦自幹部に掴まっていたミサトが、罵声に振り向き声の方向に向かった
が、席を往来する焼香客に阻まれてなかなかたどり着けない。
 孤立無援を悟ったアスカがシンジに歩み寄り、固まるシンジを促して通路を歩かせ
ようとして両肩を掴んだ。
「シンジ、いいから行って。後ろつかえてる」
 その言葉に反応してシンジがゆっくり歩き出す。
 アスカもシンジに続き遺族に向け頭を下げた。
「あんた逃げるんかい!」
 先ほどの女性は鬼のような形相で列席の筋を掻き分けて通路に向かってきた。
 狂奔と表現するに相応しい突進で通路に出てきたとき、アスカは体を張って
シンジを庇う様に女性の前に立ち塞がる。けれどもその表情は強張った上に
青ざめていて、『覚悟が出来ている』人間のそれではなかった。
 シンジはアスカの顔色に気付いて、咄嗟にアスカの肩を掴んで無理矢理
後ろに引き下がらせる。
 シンジの目の先にいる女性の姿が、トウジと重なった。
 こんな状況なのに、止まることなく読経は続いている。
 遮るシンジの前に出ようとしたアスカは、シンジの掌に絡め取られた腕に
力が込められたところで止まった。握り返す力の強さにアスカが顔を一瞬
歪める。
450経験の唄:2009/11/09(月) 23:13:06 ID:???
 その女性が更にシンジに罵声を浴びせようとする瞬間、周りのどよめきや
慌しい人の動きとは別に、遥か後方の式典会場入り口から別のざわめきが二人に
近付いてきた。
 振り向いたシンジが目にしたのは、悠然とこちらに近付いてくる碇ゲンドウ
その人だった。
 闊歩してくる勢いに呑まれて、騒ぎで通路を塞いでいた人並みが綺麗に左右
に分かれる。
 物々しく並べられた数百の遺影の前にゲンドウが焼香して頭を下げた。
 振り返ったゲンドウが女性の前で歩みを止め、無機質に深々と一礼し、事務の
申し送りのようないつもの淡々とした口調で話し始める。
「ネルフの責任者として、様々なご協力を頂いた遺族の皆様にはここに御悔みを
させて頂く。今後の補償はネルフと戦自が責任を持って対処するので、どうか
ここは穏便に済ませて頂きたい」
「か、金で解決しようってのかあんたたちは!」
「それが一番公平で的確な対処です」
「そ、そんな誠意のかけらも無い態度で遺族が納得できるとでもおも…」
「避難勧告も避難指示も遅滞なく遂行され、殆どの避難対象者が指示に従ったと
報告を受けております。むしろ貴方はご家族が巻き込んだ関係者への補償を
考えなければならないでしょう。それに、パイロットは命令に従い作戦行動
を行っただけです。彼らを責めても何の意味もありません。責任の帰趨は
私にあります」
451経験の唄:2009/11/09(月) 23:14:08 ID:???
 一分の隙も無いゲンドウの言葉に、何も言い返せない女性へ周囲の視線が
集中した。
「まだ公務が有りますので失礼する。繰り返しになりますが補償に関して
はネルフと戦自が対処しますのでご心配なく。では」
 入ってきたときと同様にゲンドウはSPを引き連れ悠然と退場していく。
 やっと自分を立て直したアスカが真っ先にシンジを見たが、シンジは愚直
なまでに下を向いたまま、悄然としていた。
『素直と言うかバカ正直と言うか……』
 たまに鬱陶しくなることがあるとは言え、こういうシンジの律儀なところは
アスカも嫌いではなかった。
「ま、まだ話は……」
 それでも尚言い募ろうとする女性が言葉を発しようとしたとき、今度は
ミサトがにこやかに立ち塞がる。
「そう言う訳で、生臭い話はこの場の空気にそぐわないと思うので、別室でお話
いたしましょう。お連れして」
 やっと役割を思い出したかのように保安部職員が姿を現し、ミサトの後ろから
女性を囲んで表に向かった。
 両脇を黒服の男たちに抱えられて退場させられる女性の脇に、素早く何か打ち
込まれるのをアスカは見逃さなかった。
『えげつな……』
 そういう対処に抵抗は無いとはいえ、あまり見ていて気持ちのいいものでは
ない。
「ホラ二人とも、私たちももう出ましょ」
 事の成り行きについていけていなかったシンジが背中をぽんと叩かれ、その
反応にあわせるようにアスカが歩き出す。

452経験の唄:2009/11/09(月) 23:14:53 ID:???
 *

「ミサト、今回標的にされたのってさ、もしかしてバカシンジ?」
「ん?んー、かもねー」
「ったく、隙だらけだから狙われちゃうのよあんたは……」
 そういうアスカの口調も、いつものような覇気が無い。
「アスカはユーロ所属だから迂闊に手を出せない、レイは周囲のガードが固すぎ。
確かにそうよね。あのオバチャンはアスカに目もくれずだったから、はじめから
シンちゃんにミソつけるつもりだったのかも」
「戦自もパイロットのリサーチは良くやってるって訳ね。ところでえこひいきは?」
「レイは碇司令と一緒に来ることになっていたから、多分車の中に置いてきた
んじゃない?受付の段階でどこからか連絡は行ってただろうし」
「なにそれ!全く、一人だけ上手く逃げていいご身分だわね」
「そう言いなさんな。たまたまなんだから」
「わかってるわよ!こうでも言わなきゃ腹の虫が収まらないの!」
「ま、ねぇー」
 水溜りを避けるようにしてあちこちに出来た人の塊の一つに、三人はいた。
 悲しみの分かち合いだとか慰め合いだとか、そんな意識の共有なんて無い様に
しか感じられなかった。
 式場の緊張と罵倒から解放されたシンジが、慰めや甘い言葉を期待していた
ミサトとアスカも、先ほどから悪意に満ちた言葉を無造作に吐き出している。
 二人は単にささくれ立った心やぶつけどころの無い怒りを、お互いに吐露して
落ち着こうとしているだけだった。
 けれど、余裕の無いシンジにはそんな風にはとても感じられない。
453経験の唄:2009/11/09(月) 23:15:52 ID:???
「で、どうすんのこれから。あたしもう会場に入るのはご免蒙るわよ」
「私も嫌だな……ま、二人は先に来たときの車で帰っていいわよ。後は私が何とか
しとくから」
「その『何とか』だけどさ、このお礼は三倍返しじゃ済ませて欲しくは無いわね」
「何も知らない民間人巻き込んでこんな茶番仕込んだんだから、勿論タダじゃ
終わらせないわよー」
「おぉー、期待してるわよ作戦部長」
「まっかせなさいな。そんなわけでシンちゃんも心配しないで今後は……」
「もうやめて下さいよ!」
 屯している集団の幾つかがシンジの叫びに振り向いた。
 ミサトとアスカはシンジの表情に我に返って、ばつが悪そうに目線を反らす。

 誰も何も言い出せずに数瞬が過ぎて、最初に行動に出たのはミサトだった。
「じゃ、後は任せて……」
 そう言い置くと、行きたくないと言っていた会場内にそそくさと消えていった。
『ミ・サ・トぉ……逃げたなぁ!』
 取り残されたアスカは必然的にシンジと対峙することになる。
 とはいえシンジの気持ちを上手く汲み取る手段なんて、アスカには全然と言って
いいほど持ち合わせていない。その上後ろめたい思いが足を引っ張った。
 いつものような強気な出任せでも言おうとした気力は、シンジの責め立てる視線
に消され、それでも尚対応を考えているうちに、慣れない髪型がやたら気になって
むずむずしてきた。
『ええい!もうなるようになれ!』
 そう思って無造作にカチューシャと髪留めを抜いて頭の重心を低くする。
「あ……」
 予想の範囲外のアスカの反応にシンジが戸惑っている隙に、アスカはさもあたり
前のようにつかつかと車へ向けて歩き出した。
 立ち尽くすシンジにアスカは面倒くさそうに声をかける。
「何してんの、早く行くわよ……」

454543:2009/11/09(月) 23:19:09 ID:???
それでは今宵はこの辺で。

なんか感想レス増えてびっくりしてますが、中途では放り出さずに
完走はすると思いますんで、見捨てずに読んでいただければ幸い。
455名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/09(月) 23:36:55 ID:???
だから、どこがLASやねん。
456名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 00:26:17 ID:???
GJ
457名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 00:40:35 ID:???
>>453
     [゚д゚]ゞ <デフラグ完了
     /[_]
      | |
!!!!、、、、、、、、、、、、、、、。。。。。。。。。。。。。。
「「「「「「「「「「」」」」」」」」」『『『』』』・・………………………………
ぁあああいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
うううううううううううううえええええぉぉおおおかかかかかかかかかか
がががががががきききききぎくくくくくくくくくくくけけけけげここここご
ささささささささしししししししししししじじじすすすすすずずずせせせせせせせ
そそそそそそそそそそたたたたたたたたたたたたたたたたただだだだだちちちちち
っっっっっっっっっっっっつつつつつてててててててててててててててててててててて
でででででででとととととととととととととととどどどななななななななななななななななななな
にににににににににににににににににににににににね
のののののののののののののののののののはははははははははははははははばびへほ
まままみむむめめめめももももももももももももゃゃゃゃややよよよよよよよよよ
らららららららりりりるるるるるるるるるるるるるれれれれれれろわわわわわわわわわ
をををををををんんんんんんんんんアアアアアアカカカカカカカサササ
シシシシシシシシシジジジジジジジススススススタダチトトトミミミャュンンンンンンンン
悪囲引応応下何何何何何過我会会外巻慣間幾期帰気気気気汲叫強型隙嫌言言言言言
戸後後後後向向考行行行合込込今最済作作三残仕思思私私視持持車車取取手手終集
重出出出出瞬初尚消消上上場場情心心振人人尽数声責先戦線線前然然全想早造足対
対待誰団段知置茶張長低的倒逃頭動屯内二入任任配倍髪髪抜反反範番必表部返返歩
民無無免面蒙目勿予欲来立立留力礼論惑峙ーーー
458名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 01:44:34 ID:???
>>457
ひでぇwwwww
459名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 02:03:27 ID:???

展開まったく読めないなw続き楽しみに待ってる!
460名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 02:11:22 ID:???
>>457
デフラグさんワラタw
461名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 06:52:04 ID:???
これも十分LASだろ
462名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 12:42:39 ID:???
本当にどうなるの?
気になって夜も・・眠れる。
463名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 13:11:28 ID:???
GJ!さりげなくアスカがシンジを、シンジがアスカを気遣うような部分が良いですね

こういう場面でのゲンドウは頼りになるがエグいw
464名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/10(火) 19:40:30 ID:???
ゲンドウが態々、葬式に行くってのは如何かな?まぁ、そんな事言いだしたら
派生なんてできないけどね
465543:2009/11/12(木) 00:37:16 ID:???
 毎度毎度皆様こんばんわ。
 変わらず続き投下いたします。
 賛否も色々頂いて有難い限りですが、プロットで
大筋書き上げて変えるつもりもないので反映できず
申し訳ないです。

それでは以後、薄味LASイラネ的な方々のNGワード

経験の唄

で御願いします。
466経験の唄:2009/11/12(木) 00:38:07 ID:???
 *

「アパートに行かなくていいわ。御殿場駅まで送ってちょうだい」
「え?しかし……」
「いいからやって」
「は、かしこまりました……」
「あ、アスカ?」
「アンタにも付き合ってもらうわよ。どうしても真っ直ぐ帰る気になれないの」
 抗議しようとしたシンジは、アスカの顔を見た途端にその気が失せた。
 ミサトと対等に話し、シンジを叱咤激励し、会場では咄嗟に庇おうとした
アスカはそこにはいなかった。
 シンジと同じように苦悩と悔しさと後悔を滲ませ、ぶつけ所を失った爆発
しそうな感情の渦をひたむきに押さえ込んでいるようにシンジには見えた。
 塞ぎこんで落ち込んでいたシンジの気分が、単純なことを見逃していた。
『そうだよな……アスカもパイロットなんだよな……』
 口でどんな強がりを言っても何も感じていない訳もなく、冷静に割り切って
受け止められる訳でもないのだ。
「わかったよ……」
「悪いわね」
「いいさ。僕も、なんだかすぐに家には帰りたくないや……」
「……別に、あたしに合わせなくてもいいのよ」
「ホントだって。」
「信じらんないわよ、そんなおべんちゃら」
「ホントだよ」
「信じない」
「ハハ、別に信じなくったっていいよ」
『そう言う言い方されると、私のほうがバカみたいじゃない……』
 いや実際バカかもしれないと思いながら、アスカの口元に少し笑みが浮かぶ。
 シンジはそれに気付きもせずに、一度もこちらを向いてくれないアスカの
背中をじいっと眺めていた。
 ……だからアスカは振り向けないのだけれど。
467経験の唄:2009/11/12(木) 00:39:10 ID:???
 ハイヤーの運転手は最後までこれでいいのかという顔をしつつ、きちんと
御殿場駅まで送ってくれた。
 車から降りてひと伸びしたアスカを、シンジは黙って見つめる。
「どうする?これから」
「まずは昼ご飯ね。何するにしてもお腹へってたら気合入らないもの」
「もう1時か。言われてみるとお腹減ってきた」
「いい反応ね。あんまり長いこと辛気臭い顔しててもいい事なんてないわよ」
「わかってるよ……」
 アスカがばちんと叩く背中の感触も、今日は何かの救いのようにシンジは感じた。
 駅ビルに二人で入ると、よく利いた冷房で体が少し震える。
「アスカ、何にする?」
「ん、オムライス食べたい」
『迷いが無いよなー、いつも…』
 シンジの何食べたいの問いに大概アスカは即答する。
 もっとも、即断即決が過ぎてシンジが一方的に振り回されることも多いの
だけれど、シンジはそれにはあまり気を留めていない。
 上手い具合にあったオムライス専門店に入り、お互い自分の好きそうな品物
を注文した。
「あたしはこのケチャップのやつ」
「んー、じゃあ僕はこのチキンとほうれん草の照り焼きクリームソース」
「かしこまりました、メニュー繰り返します……」
 ウェイトレスがオーダーを繰り返している間、アスカはシンジの頼んだメニュー
を見本写真と共に見返す。
「どうしたの?」
「何がよ」
「頼んだ後でメニューじっと見てたから、何かあったのかなって」
「なんか、あんたの頼んだの方が美味しそうな気がして……」
 アスカは自分の意地汚さを自覚して、何となく目線をシンジから逸らしながら
呟いた。
「あるよねそういうの。じゃあアスカ、どっちも半分こしようよ」
「え?」
『そ、それは何て名案!』
468経験の唄:2009/11/12(木) 00:40:24 ID:???
 心の中で叫んだアスカの快哉は、表に出るときは『多少喜んだ感じ』に減殺
されている。シンジにはそれでも反応としては十分だったみたいだ。
「……いい?きっちり均等に半分こよ!」
「大丈夫だよ。多い方はアスカにあげるし」
「なにそれ、あたしが食い意地張ってるような言い方しないでよ」
「別にそんなんじゃないって」
「うそ臭い……」
「ほ、本当だってば……」
 アスカの追及を逃れるべく、シンジはアスカの前に開いているメニューを
あちこち指差しながら「これどんな味なんだろ?」「カルボナーラ風ってなん
だろね?」などと一々問いかけた。
 多少アスカは鬱陶しく思いながら、シンジの問いかけに淡々と答えては、言葉の
接ぎ穂を失って言い淀むシンジを眺めていた。
『ばーか。メニューの講評よりも、今日助けてくれたアスカさんに一言くらい
欲しいものね……』
 触れられたら逆切れするのを自覚しつつ、生返事をしながらアスカはそんな事を
考えていた。
「アスカ昨日帰ってくるの遅かったけど、ここのビルに来てたんだったりして」
 些細な受け答えの最中、無邪気に軽口を言うシンジに、アスカは虚を突かれて
思わず「そうよ」と答えてはっとする。
「あ……」
 二人同時にそう口にしてから、そのまま二人で固まった。
 ……実はアスカ、この駅ビルにはつい昨日来ている。
 ミサトにからかわれた化粧品を見立ててもらって買った店は、この上の階にある。
何となく気恥ずかしくてそのことを黙っていたのだ。
 気まずい時間が流れる中、先ほどのウェイトレスが注文の品をもってきた。
「お待たせしました―――」
469経験の唄:2009/11/12(木) 00:43:40 ID:???
 我慢し切れなかったアスカは、昨日ここのビルに買い物に来て、オムライス
専門店というフレーズにすっかりやられてしまった事を、ぽつりぽつりシンジに
説明した。
 シンジはそれにくすりと笑ったきりで突っ込んで聞かなかった。
「しかしさあ、あんたが作ってくれれば外で食べる必要ってないんだけどね」
「流石にハードル高いよ。こんな感じでふわふわのとろとろはまだ作れないや」
「お弁当に入れてくれてもいいんだけど」
「ごめん、それもっとムリ」
「わかってて聞いてんのよ、バカ」
 食べ物の力は偉大だった。約束どおりお互い均等に半分ずつオムライスに舌鼓
を打ちながら、お互い機嫌がいい時の穏やかな会話が続く。
 満足して食べ終わるとアスカはさっと席を立ってしまい、慌ててシンジも
追いかけて会計を済ませた。何となく居場所を見つけられずに駅ビルを出て、再び
むせるような暑さと湿気が纏わりつく。
「どこに行くっていうのよ……」
 アスカは露骨に不機嫌になる。さもシンジのせいでこんな目にあっていると
言わんばかりの態度だ。
 律儀に自分の責任を感じたシンジは、この宙ぶらりんな状況を何とかしようと
頭をフル回転させていた。
「アスカ、カラオケ……」
「アンタばかぁ?日本語のテロップ出てくる上に知らない歌ばっかりのところに
あたしを連れてってどうしようってのよ!」 
「じゃあ、映画……」
「却下!ていうか、つまんない映画だったらあたし多分映画館で叫ぶわよ?」
「なんで叫ぶんだよ!」
「気に入らなけりゃ文句を言うのが当たり前じゃない!」
「いや、意味わかんないし。あ、それじゃビリヤードとか……」
「なんかキューでアンタ殴りそうだからやだ」
「じゃあどうするんだよもう……」
470経験の唄:2009/11/12(木) 00:46:07 ID:???
『デートメニューには期待してなかったけど……』
 シンジにこの先どうするかを考えてもらうのは無茶があると知りつつ、自分で
考えるのは嫌なのでアスカはこうやって甘えている。
 何度かシンジの献身ぶりに見返りがないという事は言ったはずなのに、シンジ
はまるで自分の態度を変えない。
 バカな奴と思っていたその行為が、アスカの心を少しずつ溶かしていった。
 気付かないうちにその態度はアスカの中で『当たり前』のものになり、無意識
のうちに『当てにしている』ものになっていた。
「ねえ、他に何か無いわけ?」
「うーーん……」
 困惑を全身で表現するシンジに少々愛想が尽きたアスカは、何の気なしに周囲を
眺め回す。
 少し繁華街から外れると、街は急速に退屈なる。
 諦めて第三新東京市まで帰ろうかと言おうとしたとき、遠くから甲高い金属音が
して、ふと音の方向を振り返った。
 音の先には、低いビルの屋上に緑のネットを張った建物がある。
 何だろうと眺めているとき、また同じような金属音がする。
「シンジ、あれ、なんなの?」
「あれ……って、あのビルの屋上の?」
「他に何があるのよ?」
「あー。バッティングセンター……かな?」
「はぁ?なにそれ?」
「えーと、何て説明すればわかってもらえるんだろ……」
「?」

471543:2009/11/12(木) 00:49:14 ID:???
 今日はここまでで。
 少々長くなりますが、次回で終了できるかと思います。

 それではまた皆様ごきげんよう。
472名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/12(木) 02:12:47 ID:???
気になるがなー
473名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/12(木) 07:48:53 ID:???

なにが始まるの?
何か・・好きだ、この話が。
474名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/12(木) 18:49:43 ID:???
良いね。続きを楽しみにしてるお
475名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/12(木) 23:03:22 ID:???
このgdgd感では次回で終わらない方に賭けたいw
476名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/13(金) 18:11:41 ID:???
別に無理して終わる必要もないし
477543:2009/11/14(土) 00:55:36 ID:???
 皆様こんばんわ。
 予告どおり最終投下行かせて頂きます。
 ただ今回十レス越えちゃうと思うので、支援途中であると嬉しいです(このレス含む)。

 それでは以後、
・バッティング理論に一家言ある方
・帰宅の電車で取り返しのつかない乗り過ごしされた方
のNGワードは

経験の唄

で御願いします。
478経験の唄:2009/11/14(土) 00:56:35 ID:???
 *

「つまり、飛んできた球をバットで打つ。要はそれだけの事なのよね?」
「うん、簡単に言うとそうなるんだけど……」
「簡単この上じゃない。問題ないわ。さ、行くわよ」
「い、行くの?」
「話聞いてると結構スカッとさせてくれそうな感じだし、当然よ」
『いや、確かにきちんとボールをバットに当てればそうだけど……』
 シンジにでも、アスカはまず間違いなくまともにかすりもしないと予想できる。
 そんなシンジの危惧は無視して意気揚揚と赤毛の少女がバッティングセンターに
喪服で乗り込む。
 入口で退屈そうに新聞を読んでいたおじさんが、アスカの格好と前のめりな勢い
に呆然としながら姿を見送った。
「ところでこのケージ、何か違いがあるの?」
 ズラリと並ぶ扉を右から左に一瞥して、アスカがシンジに尋ねた。
「えっと確か球の速さとか球の種類が違ってたはずだよ」
「へぇーえ、じゃあ一番球の速いケージってどれよ?」
「あ、あのアスカ……初心者なんだしせめて最初は球速遅いやつから……」
「あんたバカ?あたしらの仕事はいつだってぶっつけ本番でしょ!だから最初に
一番難易度高いとこぶつかってそれをモノにする。それがパイロットってもんよ!」
『その持論に僕を巻き込まないで……』
 容易に予想できるその後の展開を憂鬱に思いながら、渋々『球速150km 
ピッチャー野茂』のケージにアスカを案内した。
 シンジの説明に従って投入口にお金を入れてバッターボックスに立つ。
 投球口のスクリーンにピッチャーの姿が映し出された。
「へーえ、本格的ね……」
 感心してそう呟くアスカは、見よう見真似のフォームで来る球を待ち構える。
『あ、手の位置逆だ…』
「アス……」

ズドンッッッッ!!!
479経験の唄:2009/11/14(土) 00:57:22 ID:???
 シンジが声をかける隙もなく、悠々と構えていたアスカの余裕を全て打ち砕く
勢いで、白い楕円の物体が猛スピードで通過した。
 それから後はもう大変だった。
 球速にびびったアスカはボックスに棒立ちになり、シンジが慌ててケージ内に
入るまで足がすくんで動けなかった。
 それこそシンジがバットの持ち方から立つ位置まで教えたが、アスカは丁寧
にシンジにバットを託すと一目散にケージの外に消えた。
『えー………』
 仕方無しにバットを構えるシンジの肘の下を風切り音と共に白い楕円体が過ぎる。
『あははは、ムリ』
 バットを振り抜くのを諦めると、シンジはバットを平行に差し出した。
 それだけでも威力は半端なかった。辛うじて左手に残ったバットと、両腕を襲う
強烈な痺れが暫く取れない。以降はバットに当てることも出来ずにケージを出た。

 少々ばつが悪そうなアスカは、そのあと結構素直にシンジの助言に従って
『80km ソフトボール』のケージに移動した。
「まずは止めたバットに当てて感触味わってみるのもいいと思うよ」
「そ、そうね」
 先ほどの鬼球速にびびってしまったのか、アスカはかなり腰が引けている。
 バットはわざと当たらないように工夫しているんじゃないかと言う疑い
すら思い浮かぶ、ぎこちない持ち方だった。無理矢理ケージの中で付き合わ
されているシンジも、溜息交じりにバットに手を添える。
「ほら、ちゃんと平行に持たないと当たりにくいから」
「う、うん」
 シンジの手がアスカの手を支えるように添えられたバットが、飛んできた
ボールを力なく受け流す。
「わ、わぁぁ!」
 アスカがすぐさま手を離し、簡単に二人の手からバットが落ちた。
「ダメだよちゃんと握ってないと」
「わ、私に当たったらどうしたらいいか判らないじゃない!」
「よければ…いいと思うよ」
480経験の唄:2009/11/14(土) 00:58:41 ID:???
 なんか昔誰かに似たようなことを言ったなと思いつつ、シンジはアスカの
後ろに回りこむ。
「アスカ、ちゃんと支えとくから逃げないで、集中してよ」
「な、ちょ……!」
 おそらくはシンジは純粋に手助けのつもりなのだろうが、アスカに覆い被さる
ようにバットを握っていると、否が応でも体が密着する。必死になっているシンジは、
自分の行動があまりわかっていないらしい。
『ど、ど、どっちに集中しろってのよ―ー!』
 首筋からお尻にかけて存分にシンジの感触を味わいながら、アスカは
一人で混乱して興奮していた。
 その時間を打ち破ったのは、シンジに握られた両手に痺れるような衝撃が
走ったときだった。
 鈍い打撃音と共に、捕らえたボールは転々と地面をマシンに向けて転がって
ゆく。
「お、おぉーーーー……」
 アスカは呆然と転がるボールを眺めて、もう一度手に残った痺れを味わう。
『いい、これいい』
 浸っている間に投げ込まれた一球を余裕で見逃し、球の来る方向を見据えて
アスカはバットを差し出す。今度は打球がケージの上で跳ね返って落ちた。
「シンジ、これ面白い!」
「そ、そう?」
 感触がどういうものかが解ると、不安や恐怖は途端に薄れたようで、
アスカは当てるだけだったバッティングが、段々おおきく振りかぶって
構えるようになった。
 このケージに入ってコインが三枚目になる頃には、アスカは一心不乱に
ボールを追いかけ始める。自然に左足がステップすることを覚え、顔には
シンジの見慣れた獰猛さが顕れてきている。
 すっかり夢中になったアスカからそっと離れると、シンジはケージの外に
出た。
481経験の唄:2009/11/14(土) 01:00:15 ID:???
『やっぱアスカは運動神経いいなあ……』
 気付けばアスカは立ち位置はバッターボックスの中でもベース寄りに
移っている。
 ボールも段々正面に飛ぶようになり、当たりもライナー性のものが
混ざり始めた。
「えいっ!」「やっ!」「この!」
 当たりが良くなるに従い、アスカが打つたびに気合と共に叫ぶように
なり始めた。

「あんたもやってみれば?楽しいわよ」
 段々自信もついてきたのか、清清しい顔でケージから出てきたアスカはそう
シンジに提案した。休む間もなくもっと早い球を打つためにアスカは『110km
 スライダー 渡辺俊』のケージに向かう。
「えー、あまり自信ないんだけどなあ…」
 と呟きつつ、シンジはアスカの手前の『100km ストレート 岸』の
ケージに向かった。シンジも何だかんだと楽しくないわけでもないらしい。
 アスカは映し出される画像に三球くらい面食らったあと、画像よりボールを
追いかけはじめて、打球がガンガンスピードを上げていった。
 2回目のコインを入れる頃には大体のコツを掴んだらしく、アスカの打球は
大体前方に飛んでゆく。
「ふう……」
 画面が切り替わって東急終了になると、シンジは目の前で一心不乱にバットを
ぶん回すアスカを眺めた。心なしか、その様に鬼気迫るものを感じる……
 そう思った矢先にアスカが呟く。
「戦自の……」
 タメのあと、叫び声と共にアスカは一気呵成に力を解放する。
「バッカヤロォーーー!」
 金属バット特有の爽快な打撃音。アスカは両手から体を突き抜け、その衝撃を
存分に味わう。
482経験の唄:2009/11/14(土) 01:01:32 ID:???
 フルスイングで雄叫びを上げるアスカの背中が、シンジの中の何かを燃え
上がらせた。
『良く恥ずかしくないなあ…でもなんかいいかも……』
 なにか浮き浮きしながらシンジはコインを投下する。
 何故だか球筋がさっきとは比べ物にならないくらいはっきりしていた。
 シンジがバットを構えると、タイミングを取りながらステップを踏んで
思い切り振り抜く。
 軽快な金属音を震わせて、ボールは弾丸になってホームランの的の下まで
飛んだ。
「っっしゃあ!」
 思わず叫んだその声にアスカが振り返る。
 それで怖じ気づきそうになったシンジに、アスカはにやっと笑って向き直り、
さっきよりも張り上げる声が大きくなった。
「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!!」
 力み過ぎて空振りしたアスカは、悔しそうにバットで地面を叩くとすぐに
また構えた。
『っはは!凄いなアスカ……』
 なんだかシンジも楽しくなってきて、いつもの弱気が消し飛んでしまい、
いつしかアスカと競うように声を張り上げて球を打ち返していた。
 たまにお互いの意味不明な叫び声に滑稽さを感じながら、二人とも相手を
からかう事もしなかった。
 ……なんで大騒ぎをしているのか、その理由が同じだったからだ。

483経験の唄:2009/11/14(土) 01:07:06 ID:???
 *

「あはは、僕もう肩が抜けそう」
「あたしも明日の筋肉痛が怖いわ……」
「アスカ、明日は女子の体育バスケじゃなかった?」
「うぁ……」
 二人がバッティングセンターを出たのは、もう学校帰りの学生たちがちらほら
他のケージに入ってくるようになった夕方四時ごろだ。
 よくもまああんなに長い事いたものだと話しながら駅まで帰り、今こうして
電車を待っている。
「またこようねアスカ」
「そ、ね。ストレス溜まったら来るといいかもね」
「そういえばアスカ、凄い叫んでたもんね」
「あ、あんたも人のこと言えないじゃないの!」
「他の人迷惑して無かったかなあ?」
「知ったこっちゃないわよそんな事。店の人も何も言わなかったし、いいんじゃ
ないの?」
 ホームラン賞で貰った金属バットを足でコンコン叩きながら、アスカは上機嫌
だった。
「若いっていいねえ」
 そう呟いたおじさんの言葉にシンジは意味深なものを感じていたが、アスカは
額面通りに受け取ったらしい。

 乗り込んだ電車の中はまばらに乗客がいるだけで閑散としていた。
 そろそろ低くなり始めた太陽光線が窓から飛び込み、二人の視界を狭める。
 発射のベルが鳴って扉が閉じ、ちょっとした静寂のあとで低いモーターの唸り声が
響き、電車の振動が小刻みに体を揺らせた。
 心地よい疲れに浸っている中、二人の会話は途切れた。
 たまに線路沿いの建物が、オレンジに染まる車内に影を投げかける。
「あんた…………エヴァから、降りる?」
 頬杖をついて窓の外に顔をそむけるアスカが、ポツリとシンジに聞いた。
 ストレートな質問にシンジは困惑しながら答える。
484経験の唄:2009/11/14(土) 01:09:25 ID:???
「え……と、そう言われると考えちゃうな……」
「なんか、今日の事でそんな事言いだしそうな気がした……」
「……」
「あたしは止めないからね。自分で考えてよ」
 アスカの表情はシンジの位置からは窺い知れなかった。
 電車は山越えに入り、トンネルに突入した衝撃音の後で、車内にまた静寂が
訪れる。
 真意は測りかねたが、今日の一日の流れからシンジも存外素直に心のうちを
吐露できた。
「最初にエヴァに乗ったときの戦闘で、トウジの妹が怪我したんだ」
「……」
「それで、会った初日にトウジに殴られてね……まあ、それは仕方ないと思う」
「まだそれ尾を引いてるんだ?」
「ううん、トウジとはその後の使徒の戦闘とかでも色々あって、今は何とも
ないんだ。それよりも殴られた後のやりとりの方が今から考えるとひどいなって」
「また殴られたとか?」
「うん、そう。『僕だって好きでエヴァに乗ってるんじゃない』って言った瞬間に、
ガーーンって」
「あんたってホントに馬鹿ねぇ…殴られて当然じゃない」
「あははは、僕もそう思う」
 アスカはやっとシンジに振り向く。その顔は暴言の割にシンジにもわかるくらい
安堵が滲んでいた。
「なぁんだ、じゃああたしが今日わざわざ釘刺す必要もなく覚悟は出来てたって訳ね」
「いや、そんな事無いよ。やっぱりああ言って貰わないといろいろ恐かったし。
その……アスカがいてくれて助かったよ」
 そう言ってにこやかに感謝するシンジに、アスカは何も言い返せなくなって沈黙
で答えた。
 あとに続く無言の時間は、少し居心地が悪く感じながらも、二人とも嫌では
なかった。何も喋らなくても、横に戦闘の相棒がいる。立場を理解できる唯一の存在が
そこにいる。それだけで充分だった。
485経験の唄:2009/11/14(土) 01:11:46 ID:???
 ぼうっと流れる景色を眺めていたアスカに、暫くしてシンジの頭が肩に乗りかかって
きた。
 吃驚して見たシンジの顔は、無防備で締まりがなくて、それがアスカにはどこか
安堵を感じさせた。
『しょうのないやつ……』
 そう思いながら前髪をつついて、眉をしかめたり寝返りを打とうとするシンジを
見遣る。自分の顔が今まで人に見せたことのない優しさを醸し出していると、当の
アスカは全く知らない。

 ……今日一日怯む心を思い止まらせたのは、アスカにとってはシンジだった。
 出かける前の照れくささも、葬儀会場の敵意も、バッティングセンターでの怖気
づきも、自分ひとりでは乗り切れても、今のような気分にはなれなかっただろう。
『誰かがいるっていいもんだわね……』
 肩にかかる体重と体温。嗅ぎ慣れた髪の匂いに、仄かな汗の匂いが混じっている。
 いつの間にアスカも疲れが出て眠り込んでしまい、気がついたときには夕闇に
染まる芦ノ湖を眺めていた。
 シンジの髪についたヨダレを咄嗟に拭うと、文字通りシンジを叩き起こして一通り
詰った後、次の駅でホームに下りた。
 跨線橋を渡り向かいのホームに移動すると、手近なベンチに二人で座る。
 乳白色の西の空が闇に溶けようとするのを、シンジがぼうっと眺めていた。
 自分が隣にいるのに空を眺めるシンジにアスカは少し不満だったが、『ま、いっか』
と思い直して同じように空を見た。
 時折視界を蝙蝠が横切り、闇と静寂が深まるにつれて、ホームの照明がぎらぎらと
輝きを増す。スピーカーから機械的な女性の声で電車の到着を予告し、微かな轟音が
段々と近付いてきた。
 立ち上がったときに二人同時にミサトからのメールが入った。
486経験の唄:2009/11/14(土) 01:14:45 ID:???
『ゴメン!今日も本部に泊まり!!それはそうと保安部から報告聞いてるけど、
二人ともとっとと家に帰りなさい!
 

 追伸:戦自よりさっき報告あり。戦闘時避難誘導に1個連隊派遣。善通寺の精鋭
部隊らしいわよん 

以上!』

「よかったねアスカ」
 携帯を閉じたシンジがにこやかにアスカに話しかけると、当のアスカは難しい顔で
まじまじと携帯画面を凝視していた。
「漢字多くて追伸のほうがちょっと意味不明……」
「あ、それなら避難誘導に戦自が部隊派遣してくれるって内容だよ」
「へーえ、…………そっか。ミサト、頑張ってくれたんだ」
「うん、そうみたい」
 ちょうど開いたドアに合わせて二人で車内に入り、適当に座った座席でも、二人は
さも当たり前のように肌が触れ合う至近距離で座った。
 不意にアスカがかざした左手を、シンジが同じく左手でハイタッチをした。
 車内に小気味いいぱちんという音が反射し、誰もいない車内に響く。


 ――すっかり日の落ちた窓の向こうには、自分たちが守った街並みが光の帯になって
横たわっていた――


<<劇終>>
487543:2009/11/14(土) 01:22:27 ID:???
 あれ?ちゃんと投下できた……?

 まあいいやw

 以上で終了です。
 出てくる設定やキャラの動きが何かあるようでそうでもない、微弱LASに
お付き合い頂いた皆様ありがとうございます。

 さすがにこう長いのは今後はあまり書かないと思います。
 時間あるときにぼちぼち書いていきたいと思いますので、そのときにまた
皆様にお付き合いいただければ幸い。

 それではまたの機会に。  ノシ
488名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 02:04:27 ID:???
GJ
489名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 02:09:49 ID:UJb4+3zz
同人キャラっぽくなくてよかたよ
490名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 03:17:09 ID:???
なんかこう……アップルティーの香りのような甘さだな
491名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 03:39:03 ID:???
いいね。思った以上に面白かった
こういう爽やかな感じもいいね
GJ&乙でした。新作投下も気長に待ってるぜ
492名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 06:19:33 ID:???
GJ面白かった
493名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 07:13:25 ID:???
ホームラン賞でバットが貰えるのか…
494名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 11:42:25 ID:???
ホームラン賞で金属バットw
なんちゅう商売だ。
495名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 12:24:56 ID:???
GJです。
いいねぇ。大好きです
496名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/14(土) 21:35:20 ID:???
>>487こんなところで善通寺の名前を聞けるとは…
学生時代を思い出しますた
497名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/15(日) 12:37:28 ID:???
GJでした!
ほぼアスカとシンジしか出てないのに甘すぎないのは、2人の間に流れる爽やかな雰囲気がそうさせてるんでしょうね
癒やされました
498名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/17(火) 05:40:22 ID:???
いときおまだかのぅ
499名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/17(火) 16:55:28 ID:???
俺もいときお町〜
500名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/18(水) 01:16:53 ID:Bp/Ahb37
マイナーなギャルゲーSS祭り!変更事項!

1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品 一話完結型の短編 10本)

EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 一話完結型の短編 10本
エーベルージュ 一話完結型の短編 10本
センチメンタルグラフティ2 一話完結型の短編 10本
canvas 百合奈・瑠璃子 一話完結型の短編 10本

BL、GL、ダーク、18禁、バトル、クロスオーバー、オリキャラ禁止
一話完結型の短編 1本 プレーンテキストで15KB以下禁止
大文字、太字、台本形式禁止

2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/12/07

3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀TOP3SSサイト管理人に賞金を授与します。

1位 10万円
2位 5万円
3位 3万円
501名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/20(金) 00:50:54 ID:???
いときおさんまだ〜(゜∇゜)?
502名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/21(土) 19:59:40 ID:???
しつこい
503名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/25(水) 23:53:55 ID:???
まち
504名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/27(金) 03:23:24 ID:???
気長に投下街
505名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/27(金) 20:35:06 ID:???
17スレ目>>132の続き待ち
506名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/27(金) 22:11:00 ID:???
507名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/29(日) 17:41:34 ID:???
ちがう
ここ21スレ目
508名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/29(日) 19:09:59 ID:???
死んだ子の歳を数えてもしょうがない。
509名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/03(木) 20:18:17 ID:???
今年は来るかな?
510パッチン:2009/12/04(金) 14:18:45 ID:???
綺麗に、そして可愛くデコレーションされたケーキがアタシの目の前に。
妙にキラキラしてるのはケーキが輝いてるから?それともアタシの目が輝いてるから?

赤いイチゴと白い生クリームが彩る甘いケーキは、ロウソクの小さな炎に照らされ、少し幻想的でもある。
そしてそれらに囲まれる中央部分で、チョコレートクリームが幸せの言葉を作っていた。

お誕生目おぬでとうアスカ

「ごめんね、手作りだから上手く書けなかったけど…」
「ば、バカ。こういうのが良いのよっ」
申し訳なさそうにテレた笑みを浮かべるシンジ。
でも完璧じゃない…むしろ失敗した文字の方がシンジの可愛さを更にアップさせてるのよ。
ああ、そんなに顔を赤くしないでよ…。
その染まる頬に目立つ白。
アタシは立ち上がって、彼のほっぺについた生クリーム…舐めてあげちゃう。
「あ、アスカ!」
「・・・シンジって甘いね」
あはは、とうとう真っ赤になっちゃった。

ねえねえシンジ?幸せだよね?
アタシはすっごく幸せだよ?

「プレゼント欲しいよぉ…シンジぃ」
「う、うん」
両肩にシンジの手が置かれる。
ゆっくりと顔が近づく…。
キスキスキス…キスしちゃう。
511パッチン:2009/12/04(金) 14:20:01 ID:???
あ・・・れ?

唇にフニャンとした感触が来ない…

目を開くとそこには困惑したシンジの顔がある。

「あ、アスカぁ…キスできないよ」
「な、何ですって!」
ヤバいヤバい!この感覚は最近よくある!
アタシはいつものように右手でパーを作り、思いっきり自らの頬をひっぱたく。

感覚無し

ヤバいヤバいヤバい!
焦るアタシ…今度は両手でグーを作り、自らの体中を滅茶苦茶にポカポカ叩く。

ふはは、痛くも痒くないわ

やだやだやだやだやだっ!
かくなるうえは、左手をチョキにして自らの両目に…

「す、ストップストップ!アスカもうやめてよ!」
「や、やだぁそんなわけない!痛いはずなんだからぁ!」
前から抱きつくように制止してきたシンジを半狂乱になりながらアタシは振り払おうとする。
「し、シンジお願い、生爪を剥がして!流石に痛いと思うの!」
「いい加減にしてよアスカ!もう朝なんだよ!
これは・・・夢なんだから!」

すると一瞬大好きなシンジの顔がぼやけて・・・大嫌いな朝日。
知ってる天井。

12月4日の朝という現実がアタシを包んでいた。
512パッチン:2009/12/04(金) 14:21:22 ID:???
『アル日のバースデイコール』

「おはよアスカ。お誕生日おめでとう」
「あ…うん」
「ミサトさん今日は早いらしいから、もう出ちゃったよ。帰りにケーキ買ってきてくれるらしいから」
「はいはい…」
いつものように眠そうにシンジの言葉をあしらいながら、アタシは朝食の並ぶテーブルにつく。
特別な日なのに当たり前のように振る舞う。バカだなぁ
なに大人ぶってるんだろ…。夢の中みたいに甘えたいのに。

和朝食がセオリーの葛城家の食卓。
今日はハムエッグに…トースト。ジャムはアタシの好きなオレンジ…。

「何コレ、誕生日プレゼントのつもり?」
「え?い、いやそうじゃなくて…」
「安上がりで済んで良かったわねぇ。ま、アンタには料理くらいしか無いもんね」

ああ…もう嫌だ、この口…

「ぷ、プレゼントは別にあるよ!朝食はオマケ!」
「はいはい、期待しないで待ってるわ。いただきまーす」

くだらないことしか出ない口が嫌い…。
お仕置きを与えるように下唇をキュッと噛みながら、アタシはトーストに手を伸ばした。

シンジの料理を味わう一番幸せな部分のはずなのに、この口がシンジを一番傷付けちゃう…。
513パッチン:2009/12/04(金) 14:22:55 ID:???
朝食後、興味のわかない休日の朝のバラエティーをソファーに腰掛け、ぼんやり眺める。
ふんわりオムライスの作り方なんて、何度も見たわよ…。

今夜は一応葛城家だけでアタシの誕生日パーティーを開催するらしい。
しかしあくまで今夜。
…誕生日の朝に何をやってるんだろう、という思いがキュッと胸を切なくする。
いや、いままではこれが当たり前。訓練漬けだったアタシは誕生日を特別な物と考えたことはあまり無かった。

訓練を終えて家に帰れば、無人のキッチンテーブル上にバースデイカード。そして冷蔵庫には1人分のケーキ。
それが誕生日。

なのに今年のアタシは求めている…。
フッと左を向けばフローリングの床にペタリと座り、テレビを見ているバカシンジ。
改めて言えば…好きな人。
加持さんへの気持ちとは違う、見るたびに…思うたびにドキドキする感じ。
今もキューンと締め付けられる胸が痛い。

多分アタシは弱くなったんだと思う…コイツのせいで。
ううん、なれるならもっと弱くなりたい。
素直になりたい…!
甘えてみたい…!
夢で見た誕生日パーティーが頭をよぎる。

「・・・ねぇ、ミサトが帰ってくる前に誕生日パーティー始めない?」
「え?」
514パッチン:2009/12/04(金) 14:24:16 ID:???
「ねぇやっぱりマズいよ…ミサトさんが知ったら怒るよ絶対…」
「大丈夫よ!どうせ山ほどあるんだからバレないわ」

トポトポとグラスに注がれる赤い液体は大人の香り。
キッチンテーブルの上にはさんざん乱暴に捻られて、ボロボロになったコルクが1つ。
我ながら情けない作戦だと思うが、現状打開にはこれしか無かった。
今年の誕生日は・・・デレたいのだ。

「そ、そもそも僕達まだ15歳だし、法律で禁止されてて…」
「ペンペン!アンタ歳いくつ!?」
くわっと3本爪をたてるペンペン。
「ほら!一本いっとく?」
手近にあったエビチュを投げると、小躍りしながら受け取り、プルタブを折るペンペン。
「見てみなさい!3歳のボーヤでもあんなにグビグビ飲めるのよ!」
「あ、あれは人間じゃないだろ!」

はんっお酒なんかでビビるなんて男失格ね!と、また強がるアタシ。
でもでもでも…それもここまでよ…。

グラスを天にかかげ、中で揺れるソレを蛍光灯の光に当ててみる。
「アンタは飲まなくていいわよ。アタシ1人で楽しんじゃうから…」

アタシを変えて…お願い。

その願いと共にグラスに口付けたアタシは、目を閉じてゴキュっと喉を鳴らした。
515パッチン:2009/12/04(金) 14:26:50 ID:???
『あ〜しゅか〜♪』
『きゃっ!ちょ、ちょっと何ですか葛城一尉!』
『いやんっお堅いんだからぁ〜ミサトちゃんって呼んでよぉ』
『お酒臭い!飲んでますね!』
『ドイツのビールは世界一いいい!』
『は、離して下さい!アタシこれから大学入試の勉強するんですから!』
『ありり?アスカちゃんはまだそんな歳じゃないはずでしょ?大人の階段のぼるのが早いわねぇ〜』
『ヤダぁ離して下さいよ!酒飲みの上司に絡まれるなんてゴメンです!』
『酒飲みとか絡むとか言っちゃイヤンイヤン♪甘えん坊ミサトちゃんって呼んで♪』
『な、何言ってるんですか!』
『お酒を飲むと本当の自分が出てくるものなのよんっ♪』
『ほ、本当の自分…?』
『そうよぉ!本当のあたちは甘えん坊ミサトちゃんなのだ!』
『お、お酒って飲むと甘えん坊になるの?』
『みゅふふふ♪さてさて真面目ん坊アスカちゃんの成長具合についてでも測ろうかしらん♪』
『ちょちょ、ちょっと!くすぐったいからやめて下さい!』
『あららん成長ゼロね?こりゃ将来成長してもCが限界かしらん』
『い、いい加減にしなさいよバカミサトおおお!』
『きゃあきゃあ♪アスカちゃんが名前で呼んでくれたのよん♪』


516パッチン:2009/12/04(金) 14:28:20 ID:???
「ちょ、ちょっとアスカ大丈夫?」
「ふみゅ…らりるれろ…?」

シンジの声に、夢に堕ちてテーブルに突っ伏していたアタシは顔を上げる。
グワングワンと揺れる脳、熱い頬、回らない舌。
それはアタシの望んでいた感覚とは、どこか違う世界。
「足りらいのからぁ…」
「ちょっと待っててね!すぐ冷たい水入れるから」
「みゅみゅみゅのみゅ…」
冷蔵庫に駆けていくシンジをよそに、アタシは更にワインをグラスに注ぐ。
「あ、アスカぁ…もう止めた方がいいよ…」
「くぴくぴっ…ぷはっ。シンりぃアタひ酔ってりゅ?」
「よ、酔ってるよ完全に!そこまで来て自覚無いってヤバいよ!?」

酔ってるのよね…言えるかな…

「し、シンり!よく聞きなしゃい!」
「え?」
「あ、あの…そにょ…あらひ…しんりが…しんりで…みゅみゅみゅが…みゅみゅみゅで…」
「アスカ??」
だ、だめ!シンりの顔見てたら恥ずかしくなる!

焦ったアタシは更にワインをグりゃスにぶち込んでしまう。
・・・ていうか、もう心の声にまで酔いが回ってきてりゅわ。
こんなに酔ってるのに、らめなんて…。

お酒に頼っても無理なんれ…こんなんりゃ一生素直になんかなりぇないよ…。
517パッチン:2009/12/04(金) 14:29:52 ID:???
「アスカ・・・どうしたの?」
ガクンとうなだりぇるアタシを心配したシンジが、ソッと近くに来てくれりゅ。
「苦しいの?・・・ねぇ、なんで無理やりお酒なんか飲もうとしたの?もしかして嫌なことでも…」
「さわりゃないれよ!!」
優しい言葉と共にソッと背中を撫でてくりぇたシンりの手を、アタシは思いっきり弾く。

あぁ結局またやってりゅ…バカアしゅカ…。

「アンタらんかに心配してもりゃわなくれも大丈びゅよ!」
「で、でも本当に苦しそうだったから!」
「大きにゃお世話しゃまにょ!!」
グスッ…にゃにがお酒は本当の自分が出りゅものよ…
頭は痛いし、気持ちわりゅい…オマケにいつみょよりカリカリすりゅなんて…。
「ごめん・・・でも僕は本当に心配だったから…」
「うりゅしゃあああああい!そみょそも誕生日パーティーなんて、誰も望んでにゃいのよ!」
「・・・アスカ」
「アンタの用意ちたプりぇゼントなんか、いりゃないし必要にゃいもん!さっしゃとゴミ箱にでも捨ててきなしゃいにょ!」

あぁもう死にたいよ・・・
世界の終わりみたいに色んな物が崩れりゅ・・・
いっそ…地球ごと爆発してくれないかな


『ドガアアアアアアアアアン!!!』
518パッチン:2009/12/04(金) 14:31:27 ID:???
一瞬の沈黙を破った突じぇんの爆発音に、シンりとアタシはビクリと肩をふりゅわせた。

「使徒!?」「ち徒!?」

見事にユニゾンちた言葉と同時に立ち上がり、ベランダに走・・・りょうしたけど、アタちの方は足がもちゅれてベチャリと無様に転倒。
一方無事ベりゃンダに辿り着いたシンりは、グッと体を曲げて遠くを眺みぇりゅ。
「戦自が出動してる…間違いない!」

ピリリリリリ!

そにょシンジの言葉とほぼ同時に鳴り響きゅ携帯電話。
いまだに床でジタバタちてるアタシはテーブルに置かりぇた携帯を取れにゃい。

とことんカッコわりゅい…

「アスカやっぱり使徒らしいよ!今からミサトさんが迎えに来るらしいから、外で待とう!」
「わかってりゅわよぉ〜」
アタちは返事だけは出たもにょにょ立ち上がることすら出来ず、
生まりぇたての子牛(それもかなり鈍くさいやつ)ばりにノソノソ動きゅだけしか出来にゃい…。

「ダメだ時間が無い!早く立ってよ!」
「命令すりゅな!」
「でも!」
「くみゅみゅみゅ…!」
「・・・ごめんアスカ!」
「みゅみゅ!?」

突然、プルプルと起き上がろうとちていたアタシの体と床の間に差し込まれるシンりの腕。
519パッチン:2009/12/04(金) 14:33:03 ID:???
そにょままアタちの体を抱え上げ、俗にゆう『お姫しゃま抱っこ』の形に移行すりゅシンり。
「ちょちょちょ、ちょろっと…!」
「ご、ごめんアスカ、急ぐね!」
そしてシンりは駆け出す。
アタちも最初は戸惑っていたけろ、グラグラと揺れりゅ上半身を固定すりゅため、おじゅおずとシンりの首に腕を回した。

あああ…恥ずかちい…。
などと照れていりゅアタちをよそにシンりは、玄関を飛び出しマンションの廊下を通過しエレベーちゃーに乗り込んだ。

こんにゃ状態の2人が密室に…。
などというピンきゅ色のモヤモヤがアタちの心を包みゅ。
でもチラッと上を眺めりぇば、汗を流しながら息を整えりゅシンりの顔がありゅ。
・・・なんだか純しゅいに綺麗だと思った。

「お待たせ2人共!・・・おぉお姫様抱っこ!?誕生日だからって一線超えたのアンタ達!?
お姫様も顔が異常に真っ赤だし…って、酒くさっ!!」
うりゅさいミしゃト・・・今いい所だったにょに。
何も言わないで真っ赤になりながりゃシンりは先にアタちを後部座席の奥に座りゃせてくりぇる。
そしてシンりがその隣に。
520名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/04(金) 14:40:01 ID:???
支援金
521名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/04(金) 16:34:19 ID:???
パッチンさんキター!!
酔っぱらったアスカのしゃべりが可愛いw続き待ってます!
522パッチン:2009/12/04(金) 18:38:30 ID:???
>>519続き
「と、とりあえず出発して下さいミサトさん!理由は移動しながらで!」
「そ、そうね!今は保護者としての心配より、作戦部長よ!」
そう言ったミしゃトはバタバタ忙しきゅ車に乗り込みエンジンをかけりゅ。

う・・・やっぱり揺れりゅ。

下からドドドとくりゅ揺れに多少の不安を持ちゅアタち…。
「と、とばすわよぉー2人とも!!」
とばさないれ…ミサろ…。

もちろん声にならにゃいアタちの言葉にゃど届かず、爆音を響かせにゃがらミしゃトが時速計を振り切っちぇ走りだちた。

ミしゃトのうるさい声とエンジン音に囲まれながりゃの最悪のドライブ。
隣のシンりが心配そうにアタちを見りゅけろ、ヤバいかも…。

グワングワングワングワングワングワングワン…
揺れりゅ揺れりゅ車にシェイクさりぇた脳が意識を飛ばしていく…。

「み、ミサトさん!スピード緩めて下さい!」
「無理よ!アスカにはネルフに着いたらリツコ特製の酔い覚まし薬があるから、飲ませるわ!
・・・いや、あれはこの前あたしが飲んだっけ?」

ミしゃトの訳の分かりゃない1人言は子みょり歌・・・。
揺りぇる揺れりゅ脳がゆっきゅりとアタちの意識を吹き飛ばしていっちゃ・・・う。
523パッチン:2009/12/04(金) 18:42:22 ID:???
すいません中途半端なとこで連投規制かかりました…orz
一応今回ここまでです。
仕事の休み時間中にまとめて投下したかったんですけど、規制解除の前に休み時間が終わりまして…続きがだいぶ遅くなりました。
支援してくれた方と感想くれた方ありがとうございます!
続きは明日にでも…

そして惣流さんも式波さんも宮村さんも誕生日おめでと〜
524名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/04(金) 19:17:27 ID:???
待っていました。
だいすきでちゅ。
525名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/04(金) 19:47:08 ID:???
GJ!続き待ってます!
526名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/04(金) 21:06:32 ID:???
GJ、続きが楽しみ
527パッチン:2009/12/05(土) 22:43:24 ID:???
ごぼごぼっと鼓膜を直接叩く水音…
緊張と安らぎが心を浸食する独特の感覚…

いつもと同じ…
いつもと同じ感覚…
違うのは…いつもと違うのは…
匂いが違うのかな?
背もたれが妙に柔らかいのかな?

肺の中の液体が踊る…
「アスカ…」という声が聞こえる…
誰もいないはず…だよ?
この感覚が支配する瞬間は、誰にも邪魔されないアタシだけの時間…
アタシだけの…瞬間

でも、嫌いじゃないな…
誰かの心が入ってくるみたい…
気持ち悪くない…むしろいつもより気持ちいいよ…
気持ちいい気持ちいい気持ちいいよ…
気持ちいいよ…

「アスカ…」
優しい声がする…気持ちいいよ
ドキドキする…たまらなく嬉しくなる

頭が痛くて気分は最悪…でも満たされるこの感覚
心から…幸せ

嬉しくて嬉しくて、アタシは目を覚ます
ほら、ゆっくり目を開ければ…その先には

どす黒い触手を振り回す天使がいた
528パッチン:2009/12/05(土) 22:45:09 ID:???
「うわあああああああああああ!!!!」

呼びかけていた優しい声は叫びにも似た声に変わり、同時に爆音がアタシの耳をつんざく。
えっ!
ここは・・・多分弐号機のプラグ内で・・・前方には使徒。後方は…シンジ!?
「くっ!うぁ…」
「しん…じっ」
状況が今ひとつ掴めないアタシだが、彼の苦しげな声にハッとする。
とにかく後ろから覆い被さるようにレバーを握るシンジの手に、自らの手を重ねる。

「ぐぁっ…あ、アスカ!?」
「あ、くっ!!」
よし、シンクロしてるわね…。
対峙する敵はかなり前に戦った蜘蛛使徒のような形状。
違うのは足に関節が無く、それぞれがミミズのようにジタバタと動いて「うぷっ…!」
「アスカ…?」

ヤバっ…気持ち悪い…
グッと胃の奥から上がってくる熱、機体が揺れるたびに押し寄せる頭痛。
完全にまだお酒が残ってる…
使徒戦の最中なのに、全く別の物と戦い始めるアタシ。

「くそっ!この蛸お化けえええ!!」
あ、あんまり大きい声出さないで…
『ピギイイイイイ!!』
あ、頭に響く…
ガガガガガガッ!
揺れ…ダメ…
「やった!アスカ使徒せんめ…つ?」
…ダメ…
「うっ、うわあああ!?アスカあああ!!」
529パッチン:2009/12/05(土) 22:46:44 ID:???


「どおリツコ〜少しは反省してる?」
「あら早かったのね。事後処理は済んだの?」
「ん〜まだちょっち残ってるんだけどねぇ。可愛い妹の様子が心配で、少し抜けてきたのよんっ」

うつ伏せの状態で医務室の硬いベッドに横たわるアタシ。
上司2人の会話内容はもちろんアタシに関することであり、けして良い話ではない。
しかし耳を塞ぎたくても出来ないのは、自分の中にある大きな罪悪感と更に大きな後悔のせいであった。

本当に何なんだろうアタシは・・・そして今日という日は・・・。

「動かないわねぇバカアスカ。特性酔い覚め薬って、もう出来上がってるの?」
「とっくにね…でもこの子、飲みたがらないわ」
「はぁ…まあそんなことだろうとは思ったけどね…。こらアスカ!いつまでも寝てないで早く薬飲んで、家帰りなさい!」
「・・・飲みたくなぃ」
「アスカっ!!」
「このまま頭痛と吐き気で死にたい・・・」
喉の奥から振り絞るように出した声は、グルルと唸るような音も同時に発生しており、無駄に凄みがあった。

「まあ落ち込んでも無理ないかもねぇ。割と完璧主義者だから、他人に駄目な部分晒すの慣れてないだろうし」
530パッチン:2009/12/05(土) 22:48:13 ID:???
そう言ったミサトは溜め息一つ吐き、更に言葉を繋げる。
「まあ自業自得とはいえあそこまでのミス犯したら、流石にアスカじゃなくてもこうなるかしらね…」
言わないで・・・
「なにせ、へべれけになった状態で車乗り込んだらすぐに目回して、隣のシンジ君の股関あたりに顔埋めるように倒れて気失うし…」
言わないで・・・
「ネルフ着いたら、司令に『使えない酔いどれのポンコツ』とか言われるし…」
言わないで・・・
「挙げ句は戦闘終了とともにゲロ吐いて、それがLCLに溶け込んでプラグ内汚すわ、シンジ君に被害及ぶわで…」
「も、もう言わないでよ!!!!」
それ以上はやめてという意志が膨れ上がり、アタシは体を跳ねるように起き上がらせる。

「起きた起きた。ほら薬飲みなさい」
「あっ…」
今日初めて目を合わせたミサトは半ば呆れた様子で、ツンとした匂いを放出する謎のビンを差し出す。
色んな意味で飲むことを躊躇…。

「ドラム缶一杯のビール飲んでも、ケロッと治るリッちゃん特製の不思議な薬よ」
逆にヤバくない…?
「今日はそれ飲んで帰りなさい。送りの車は手配しとくから」
チビチビと薬品を喉に通すアタシに、リツコはそう言い残して部屋を出ていった。
531パッチン:2009/12/05(土) 22:49:48 ID:???
「さ〜てと、あたしも仕事済ませちゃおっかな?多分明日は帰りお昼頃だと思うからシンちゃんに伝え…」
「ミサト」
伸びをしながら喋っていたミサトは、その中途半端な体制のままアタシの方に目を向ける。

「なんで…なんでアイツ弐号機に乗ってたの?」
ずっと気になっていた疑問。
初号機は別に凍結中でもなんでもなく、最近の使徒戦も鬼神のように暴れまわっているエース。
なのになんでアタシみたいなのと一緒に弐号機に…。

「・・・ふふっ、その事件が一番酔いつぶれを後悔するポイントかもね」
「え…?」
「かっこいいシンちゃんを見逃したってことよ♪」

初めて笑顔を見せたミサトは、おそらくポカンと口を開けてるであろうアタシにそう言った。

「シンちゃんね司令に怒ったのよ。あんたのことポンコツ呼ばわりした時、『アスカを悪く言うな!』って。
もちろん悪いのはアスカなんだけど、何故かシンちゃん相当頭にキタみたいでね。
酔って寝てるあんたを弐号機に担ぎ込んで、勝手に出撃したんだから」
「シンジがアタシを…?」
「みんなビックリして、周りの誰も止められなかったわ
アスカと一緒に使徒を倒します…だって。男の子だったわよ、あの時のシンちゃん」
532パッチン:2009/12/05(土) 22:51:26 ID:???


裏技のような薬で完璧に酔い覚めした少女は、廊下で談笑する上司2人にペコリと頭をさげ、エレベーターに乗り込んでいった。

「言っといた?シンジ君にお礼しなさいよってこと」
「言ってないわよぉ〜♪多分あの雰囲気なら言われなくてもするでしょ」
「まったくシラフのこっちが頭痛くなるわね。
今回は一応形はどうあれ出撃できたから良かったけど、次にこんなことがあったら厳しい処罰をお願いしますよ作戦部長さん」
「はいはぁ〜い。」

こめかみのあたりをグリグリと指でおしながら、溜め息を吐くリツコ。

「ま、若い時は雪玉みたいに転がりながら大きくなればいいのよ。次に良い結果が出ればよし!」
「少しは悲観的な考えも持ち合わせてないと、現実は暗いままよ」
「ふふっしかし、眉間にシワをよせつつも、面白いデータが取れて口元にもシワが寄る科学者さんなのでした♪」

セリフのように言ったミサトは、リツコが眺める書類を隣から覗き見る。

「ほぉ…思った以上の数字ね」
「それもアスカが目を覚ました瞬間に、爆発的に伸びてるわ。
本当に面白い2人ね。もっとかき混ぜれば更に面白い化学反応が出るかしら?」

「・・・それは保護者として引き止めるわ」
533パッチン:2009/12/05(土) 22:52:20 ID:???
今回はここまで。次回がラストです。
534名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/05(土) 23:24:16 ID:???
パッチンさん。
最高です。
乙です。
535名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/05(土) 23:51:57 ID:???
GJ!
しかしプラグ内リバースとはw…想像しただけで(( ;゚Д゚))
536名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/06(日) 06:38:48 ID:???
ゲロまみれwwwww
537パッチン:2009/12/08(火) 19:47:39 ID:???
ふぅっと見慣れた葛城という表札の前で深呼吸…。

どんな顔して→なるべく平静を装いながら
最初のセリフは→ただいま
そしてまずは→素早くプラグ内での失態を謝り、素早く一緒に弐号機に乗ってくれたことに礼を言う
そして→相手の返事を待たず素早く自室に引きこもり、今後一週間ほどは目を合わせずに過ごす
時間が癒やしてくれるのを待つ

これが帰りの車内で考えていたアタシのプラン。
我ながら逃げ腰な内容だと思うが、これしか方法が無い。
もう誕生日がどうこうなんて言ってられない…優しいアイツにこれ以上嫌われたくない…。
潤みだした視界を誤魔化すように、再び深呼吸。

いくわよアスカ…

がちゃっ
「ただいま!」
「あ!おかえりアスカ!」

台所からやってくるシンジの声と足音。そしてクリームシチューの香り…。
残念だけど今日は食べれないのよ…。

「おかえり、体調はもう大丈夫なの?」
「う、うんっ。あのシンジ…!」
言え!まずは謝るのよ!
「そっか、今日はごめんねアスカ…」
「え・・・えっ?!」

とアタシの頭が下がる前に、彼の黒い頭がスッと下がってしまった。
538パッチン:2009/12/08(火) 19:49:09 ID:???
「な、なんでアンタが謝るのよ!」
「僕のせいで誕生日が滅茶苦茶になっちゃったから…ごめん」
「あ、アンタのせいで?」

意味が分からず聞き返してしまう。プラン内容とは間違いなくズレた行動。
「車の中でアスカが倒れた時、約束したじゃないか。今日は苦しそうだしアスカの誕生日だし、僕と綾波だけで使徒と戦うって…なのに約束破って僕は…」

ナニソレ?

グッと両手を握りしめて申し訳なさそうに呟くシンジ…。
いやそんな約束、意識とんでて覚えてないんだけど…
「ち、ちなみにその約束言った時、アタシなんて言い返したのよ!」
「みゅー」
「そ、そんな寝言を了解と捉えたのアンタは…?」

唖然とするアタシを尻目に、更にシンジは続ける。
「それにその…アスカの…吐くとこ見ちゃったし…」
あ…!
「あ、あれはアタシが悪いのよ!」
「でも女の子がそんなことするなんて、他人に見られたらやっぱり嫌だろうし…
もとはといえば、僕がアスカを無理やりエヴァに乗せたからで…」

こ、ここまで内罰的だとは思わなかったわ…。
当初のプランなどどこへやら。
アタシは、どう話せば自分がシンジに謝れるかどうかについてから悩まなくてはいけないようだ。
539パッチン:2009/12/08(火) 19:50:58 ID:???


「はぁ、謝るまでの説明でこんなに時間がかかるとは思わなかったわよ…」
「ご、ごめん、一旦コーヒーでも飲む?」
「い、ら、な、い!!」
「ごめん…」

『いかに自分が悪かったか』を説明し疲れたアタシは玄関の壁にもたれ、少し息を整えた。
ったく!謝罪の気持ちだけを込めて謝りたかったのに、そんな空気じゃなくなっちゃったじゃない!

・・・でも、正直助かったかな…とも思ってる。
シンジの勘違いのお陰で、アタシも逃げずに、正面からぶつかっていけたし。

そのことは、心の中でアリガトウねシンジ…

「というわけで、これからアタシはアンタに『ごめんなさいとありがとう』を言わないといけないわ」
「も、もういいよ!十分伝わったから!」
「なに言われる側がテレてんのよ!」
「テレてるとかじゃなくて!…その、アスカが僕に謝ったりお礼言うなんて…ちょっと気持ち悪いし…」
「んな゛っ!!」

思わぬパンチに驚愕。
あ、アタシをなんだと思ってんのよコイツは!?
「どういう意味よそれは!!」
「ほ、ほらそうやってすぐ怒るから!」
「うっ…」
「そういう風にしてる方がアスカらしくていいよ。謝罪の言葉なんていらないからさ」
540パッチン:2009/12/08(火) 19:52:24 ID:???
混じりっ気無しの笑顔がアタシの心を射抜く。
あぁ…もうダメだ。そんな顔されたらダメ…。

「でもね、1つお願いごときいてくれる?」
「え…?」

謝るタイミングとパワーを完全に奪われたアタシに、シンジは1つ提案を出してきた。
「今アスカが帰ってくるまでに色々準備してたんだけど、間に合いそうになくってね」
左頬をポリポリかきながら、はにかむシンジ。

「明日なら…完璧に出来ると思うんだ。飾り付けも、料理も、ケーキも頑張って手作りしてみる。
明日ならアスカも喜ぶ顔出来ると思う…」

シン…ジ…?

「だからね、今年の誕生日は・・・12月5日にしてほしいんだ」

「っ!・・・・・」

瞬間、涙が溢れて壁に張り付いていた背中がズルズルと音をたてて下っていった。
ミサトのヒールにお尻を乗せて泣いていた。
アタシの情けない姿を見て、また謝るバカシンジ。

気付けば今日は最悪の1日だった。
大失敗の1日だった。
なのに今日初めて流した涙は暖かい涙。
シンジの優しさに包まれる今なら…確信できる。

明日は多分、笑えるよね。

おわり
541パッチン:2009/12/08(火) 19:53:11 ID:???
以上で終わりです。
一回やってみたかった2スレ同時攻撃でした。
今年はしかし良いLASがたくさん読めて良かったです。
個人的には新劇で着火され、迎え火で炎上して、猫シンジで爆発したような年でしたw
まだ読んでない作品もあるので、年末はゆっくり読みたいと思います。

最後にミサトさん誕生日おめでと〜。
542名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/08(火) 21:07:58 ID:???
パッチンさんGJ!
>>537のアスカの考えたプランがすごくアスカらしい(特に最後の部分)
全体的にほのぼのしてて楽しませてもらいました!
543名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/08(火) 21:29:22 ID:???
GJです
うん、なかなかだいすきでゅ。
最高ですよ。
544名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/08(火) 22:21:35 ID:???
GJ!いいLASだ。そしてシンジ本当にいい男だ。
545名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/09(水) 00:58:42 ID:???
童貞妄想乙
546名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/09(水) 09:38:27 ID:???
2スレってもう一個どこ?
547名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/09(水) 10:52:55 ID:???
同棲スレ
548名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/14(月) 13:13:38 ID:???
冬将軍到来
549名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/19(土) 15:42:44 ID:oUiK/WMV
保守age
550名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/24(木) 11:34:33 ID:???
ほし
551名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/01(金) 23:25:22 ID:???
保守
552名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/10(日) 16:16:43 ID:???
クリスマス記念も正月記念もなかったなぁ
553名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/11(月) 23:05:16 ID:???
皆、個人のHPで書いて、こっちには落さないみたいだね
554名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/13(水) 14:45:18 ID:???
そもそも残ってた人まで追い出したわけだしな
555名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/13(水) 18:07:38 ID:???
潰し合いですね。
556名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/22(金) 19:16:35 ID:???
そのうち誰か書いてくれるでしょう
557名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/30(土) 21:11:32 ID:???
もう無理じゃね?
558名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/02(火) 19:03:57 ID:9Enp0vAn
投下あれば活気付くんだろうけど
559名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/03(水) 17:07:57 ID:???
ifは死んだ。それは何故か!?
560名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/03(水) 23:56:39 ID:???
生きてたからだ。
561名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/04(木) 06:48:17 ID:???
ifなんて最初から居なかったんだよ
562名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/08(月) 09:29:20 ID:???
嘘だ!!!
563名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/16(火) 03:25:50 ID:???
>>561
mktn、こんなところで何やってんのw
564名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/25(木) 19:26:37 ID:???
if大好き♪
565名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/04(木) 23:39:15 ID:???
過疎ってんねぇw
21もスレ重ねりゃ普通か
またりするにゃ良いけども
566名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/06(土) 13:32:49 ID:???
>>565
Qまでは、こんな感じだろ。
BD発売で少しは盛り上がるかな?
567名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/07(日) 19:58:08 ID:???
今までの投下の中で好みだったSSってある?
568名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/07(日) 22:28:33 ID:???
>>566
Qがリリースされたら、また駄作の山に埋もれるのか
569名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/10(水) 02:49:10 ID:???
駄作だと思っても黙っとけばいいんだよな。大人なんだから
FFに限らず文章って、書くのにも投下するのにも精神的な労力使うし、職人は仕事や学業の合間縫って少しずつ書いてるのを投下するんだから
ちょっと力不足だとか気に入らないからと言って「駄作投下スンナ」はちょっと違うよな
と僕は思いまーす(・∀・)
570名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/10(水) 12:51:40 ID:???
そう
その通りだ
571名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/10(水) 23:45:15 ID:???
にしてもにわか止まりじゃなく継続してくれたら応援するのにな。。
572名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/10(水) 23:55:30 ID:???
>>569
投稿は書き手の自由、評価は読み手の自由。
そんだけ。

あと、俺の場合は「駄作投下スンナ」じゃなくて「ツマンネ」だな。
573名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/11(木) 12:00:21 ID:???
学生とかニートならいいかもしんないけど、仕事しながら物書きってのもきついものがあるしなぁ(兼業作家とか居る事は居るけど)
しかも、本業の作家じゃなくて“二次創作"の作家な訳だし、たまには駄作でもしょうがないっていうか
だから「ツマンネ」だとか「うまくなってからこい」とかキツイ一言で片付けないで、“やんわり"とアドバイスしながら、GJもしていかないと酷かも
つまんないとか言われる書き手だって、つまんないFF書きたくて書いてる訳じゃないし
574名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/11(木) 20:56:43 ID:???
褒められたいわけではないけど素人が少なからず労力を割きスレで楽しんでもらえればと投下したのに
プロとか有名どころのFF作者と比べてキツイ一言で切り捨ててるんだもんな。
やる気がなくなるのも当然かと(それでもめげない!見たいな気合入ってる人は自分のHPでやるし)

やはり感想や批評を「付けるなら」ちゃんと良い点、悪い点を指摘するべきだろう。
ただ「ツマンネ」というよりどこがどう駄目か指摘するだけでも違うし。
「GJ」とか「乙」ですまされるよりどこの部分が好みとかコメント欲しいだろうし。

言葉の足りないコミニケーションでグダグダに沈んでくのはエヴァの特徴だけどさw
575名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/12(金) 01:09:37 ID:???
(創作)作品に対して受ける印象・感動ってのはある意味新鮮さが大事。
どっかで見たような話なら、細部が上手くても評価は落ちるな。
投稿者には初めてでも、読者は散々似たような物読んで来てるから評価は辛くなりがち。
職人さんのコンテストじゃないから仕方ない。

LASは散々やり尽くされてるんだから、余程の出来じゃないと高評価はされない。
ニワカ作者がボロクソに言われるのは、むしろ必然w
576名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/12(金) 21:09:15 ID:???
でも素人の料理教室に乗り込んでケチつけてるだけの自称グルメに見えるんだよなw
577名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/12(金) 22:28:12 ID:???
タダで、読んで置いて読んでやっただもんな。そんな風なら、書きたい人は
ここに投下しないで自分のHP作って書く罠
578名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/12(金) 22:57:00 ID:???
というか、こんなところに投下してないで、自分のHP作って書くようになって欲しい。
どうしてもここに書きたいのなら止めはしないが。
579名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/12(金) 23:44:28 ID:???
盛り上がってまいりました。
580名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/12(金) 23:46:44 ID:???
投下スレなのに
>というか、こんなところに投下してないで、自分のHP作って書くようになって欲しい。
とかバカじゃねーの?
どこまで上から目線だよ
581名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/12(金) 23:53:53 ID:???
>>577
>タダで、読んで置いて読んでやっただもんな。

金を払ってまで、オナニー作品を読みたくねぇよw
582名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 00:02:23 ID:???
賞賛派と批評派と言う構図に簡略化して考えると、ケチを付けてるレスって絶対数的には減ってる。
以前の半分くらい。
GJ付けて褒めてるレスが以前の1/3〜1/5に減ってるから、相対的に目立つだけ。

スレの衰退をとやかく言うなら、褒める奴が減ったか褒めるレベルの作品が減ったことに、より問題がある。
批評・批判レスが嫌ならそういうスレを立てるとか、テンプレに入れておくべき。
583名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 00:04:02 ID:???
>>581
2chの投下作に金払う価値がないなんて当たり前のこと言ってどうするよ?
普通はタダだからって道端の糞の匂いをわざわざ嗅ぎに行ってクセーと騒いで喜んでる消房みたいなことしねぇよw
584名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 00:09:04 ID:???
>>582
褒める貶す以前の問題だと思うよ
楽しむためにスレ見てる奴がいなくなってケチつけるために粗探しする奴だけ残った感じ

>>578
読む方も2chなんて見てないで自分の気に入った作品のあるHPだけ読んでりゃいいのに
585名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 00:15:04 ID:???
どうでもいいがこんな過疎スレを見てる奴が結構いたことに一番驚いているw
586名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 00:28:26 ID:???
>>582
>>196みたいな批評は別にいいんじゃね? 投稿者にも参考になるだろうし
ただツマンネとかなんの参考にもならないような批判はそれこそチラシの裏だな
587名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 00:31:07 ID:???
>>586
単なるGJもチラ裏
588名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 00:36:04 ID:???
>>586
一言ツマンネと一言GJなら、後者の方が遥かに多い。
批判的な奴の方があれこれ述べてるよな。
589名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 07:16:12 ID:???
>>584
>楽しむためにスレ見てる奴がいなくなってケチつけるために粗探しする奴だけ残った感じ

というよりも、つまらないものをスルーしないで素直な感想を言う人が残ったんでは。

面白い作品が集まってれば、それを楽しむ人が自然と集まってくる。
そうでもない作品が集まってるなら、それでも楽しめる人でないと残れないよね。
590名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 10:58:38 ID:???
>>587-588
GJは作品の出来云々だけでなく、作品を書き上げてそれを投下したという行為そのものに
対してという意味合いも込められてるからチラ裏じゃないだろ.。所謂お疲れ様みたいなもんだ
それと職人にとってはGJだけでも無反応よりは遥かにマシだろうが、ただの煽りレスだと
無反応のほうがマシって思う人の方が多かろう。よって同列に扱うのはおかしい
591名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 18:55:57 ID:???
作品を読んで無反応なのは寂しいですね。
感想を書いてくれればいいのですが。 
たとえボロクソでもね。
自分の作品を投下して感想を待つ間は、心臓がバクバクするんです。
それが無反応だったら「あれ、どうして?」みたいになるから感想は必要ですねん
どないだ、兄やん達。
592名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 19:39:03 ID:???
いいぞもっとやれやれ
593名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/13(土) 20:25:35 ID:???
まだ毎夜のように投下があった頃に混じって何本か投下したけど
褒められても貶されてもワイワイやってて楽しかった
でも今は楽しくない
それだけ
594名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/23(火) 02:05:26 ID:???
でも 作品を待ってるヤツも居るんだけど
淋しいね
595名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/24(水) 00:36:27 ID:???
でも、面白かったら褒めるけど、ツマラなかったら叩いちゃうな、やっぱり。
596名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/24(水) 21:50:17 ID:???
それで良いんですよ
盛り上がるのなら
597名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/25(木) 00:40:51 ID:???
「ばっかじゃないの?…下らない」

鳩が不恰好に舞う公園で犇めくカップルに触発されたのか、好きだ、なんて柄にもなく甘い吐息を吐くシンジを横目で睨め付け、ふんと鼻で嘲笑うだけで一蹴したあたしは腰に手を当てて堂々と言い放ってやった。

「あたしなんか、あんたのこと愛してんだから!」

これでどうよ、みるみるうちにシンジの頬が朱に染まっていくのを見て、満足気に口端を吊り上げたあたしの顔さえ熱をもったのも、夕陽に照らし出されただけじゃないってことくらい識ってる。
鳩よりも不恰好に愛の言葉を紡いだのはあたしの方だった。
598名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/25(木) 01:37:44 ID:???
だれか褒めてやれよw
599名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/25(木) 02:07:00 ID:???
GJ
600名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/25(木) 02:17:39 ID:???
GJ

又 降りて来たら頼む
601名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/25(木) 02:26:12 ID:???
あまりに既視感バリバリのLASだなぁ
602名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/25(木) 02:32:45 ID:???
ベタだけど和む。また書いてくれ。
603名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/25(木) 02:33:13 ID:???
>>601
じゃ 新しいヤツ頼むよ 期待してる♡
604名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/25(木) 20:57:56 ID:???
でも、良いんじゃ無いの?ただ、アスカのセリフに一捻り欲しいね
605597:2010/03/26(金) 08:53:07 ID:???
なけなしの狭いベランダに植木鉢を置いた。上の階に住んでる小学生に友情の証、などと種を渡されてちょっとだけ嬉しくなった。
口許を緩めながら土に埋める種がどんな花を咲かせるかなんてシンジは判っていたけれど一から育てるのは小学生以来かもしれない、そんなことを思っていたらアスカが部屋の明かりを点す。

「何よ、これ。」

「あ、お帰り。」

お楽しみ、くすくすと笑うシンジを小突きながらアスカは首を傾げた。結局、日本人なら知ってるというヒントだけ頂戴し、どうしても答え合わせをしたいアスカはリビングの椅子に跨がって足をぶらぶらとさせてミサトの帰りを待った。
生憎、解答とする答えは持ち合わせていないけれども窓の外でシンジが愛でている花がどんな女かくらい知っても良いじゃない、
頬を剥くれたように膨らませてもまるで気づかないシンジの背に馬鹿、とだけ投げ付け、日が落ちてカーテンが橙に染まり次第に涼しくなってゆく柔らかい風が玉のような汗を攫った。

「たっだいまぁ」

疲弊したように気の抜けたような声が玄関から響く。弾かれたようにアスカが迎え入れると珍しいわね、なんてミサトは屈託のない笑みを浮かべた。ベランダを指して問うてみれば、

「さあ…アサガオじゃない?」

部屋に篭って植物図鑑からアサガオの名を探す。
ごはんだよ、と呼ぶシンジの声を尻目に花言葉が目に入り込み、思わず頬が火を噴くような心地になった。あの花が咲いたら気持ちを伝えてみようか、とりあえず今は夕飯へと駆けて行くだけ。
頬が赤いよ、なんて覗き込んでくるシンジの眼をアスカは見ることが出来なかった。季節はまた終わらない夏へと向かう。
606名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/26(金) 23:45:10 ID:???
誰か褒めてやれってww
607名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/27(土) 01:41:23 ID:???
>>606
じゃあ、まずお前がほめてやれよ。


>>605
今見たよ。
GJ!

朝顔とかなつかしいな。
608名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/28(日) 23:23:28 ID:???
>>605
連作なら連作らしいタイトルを、
単発(シチュ・経験を引き継がない)なら単発らしいタイトルを付けた方が良いぞ。
609名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/29(月) 00:56:41 ID:to0pfoyp
>>608
確かにそうですね。ありがとうございます。
610名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/29(月) 00:58:52 ID:???
sage忘れましたorz
611名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/01(木) 19:56:16 ID:???
         ,、‐ ''"  ̄ ``'' ‐- 、
        /イハ/レ:::/V\∧ド\
       /::^'´::::::::::::i、::::::::::::::::::::::::::::\
     ‐'7::::::::::::::::::::::::ハ:ハ::|ヽ:::;、::::::::::::丶
     /::::::::::::::/!i::/|/  ! ヾ リハ:|;!、:::::::l
    /´7::::::::::〃|!/_,,、   ''"゛ ^`''`‐ly:::ト
      /|;ィ:::::N,、‐'゛     .{ ゚ }    !;K
        ! |ハト〈   .{ ゚ }        リイ)|
          `y't     /¨`ヽ     //
         ! ぃ、     トェェェイ   〃      綾波が死ねばよかったんだ
         `'' へ、  `ー'′  .イ
              `i;、     / l
612名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/10(土) 02:18:17 ID:???
保守
613名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/23(金) 18:11:20 ID:???
保守
614名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/05/07(金) 00:05:33 ID:???
職人降臨町興し
615保守のための習作:2010/05/09(日) 03:30:30 ID:???
「そんなのわっかるわけないじゃん」
巨大なクモを打ち倒し、町に明かりが灯った後も
開放感と安堵を分かち合うチルドレン3人の会話は続いていた。
ところが・・
「なにそれシンジ」
さっきまで体を楽に崩していたシンジが、ひざを内股にこすり、肩をいからせている。
「えっ!・・あのっその〜」
いつものように強張った八の字眉毛と、その下にある不安定な上目使いに、
いつものようにアスカの胸の奥は痒くなる。
「なにモジモジしてんのよ!バカシn」「排尿したいのね」
アスカのいら立ちを帯びつつ明るい声の下から、抑揚のない美しい声が滑り込んだ。
八の字眉毛の角度がさらにきつくなり、顔を真っ赤にしながら、シンジは情けなく腰を引きながら立ち上がる
「ゴメン!ちょっちょっと行ってくるね」
「アンタってほんっっと〜にデリカシーってもんがないわねえ」
シンジつられるように少し頬を染めた自分に気づかず、アスカはそそくさと離れるシンジを見送ると
「アンタもさ〜ちょっとはやわらかい表現ができないの?ファースト」
今日まで嫌悪を感じていた機械的な印象を呆れるように指摘しながらレイに体を向ける。
ふと、レイのいまだシンジを見送る微笑に見入ってしまった。
星の光に映える、それと同じ色の髪と白磁のようになめらかな肌はやわらかく形を変えていて、
”人形のように冷たい”はずのその顔からは、優しいあたたかさを覚えた。
その美しさに、母性に慣れ親しみのないアスカは心の底までをとらえられてしまった。
「コイツってこんなにキレイだったんだ・・」
振り向いたレイの赤い瞳に、アスカは動揺を隠し、とぼけるように視線を外した。
呼びかけに対して答えられないまま、レイも優しく開けられた口元を閉じた。
ふいに沈黙がお互いの間に置かれ、二人はプラグスーツで完璧にコントロールされているはずの体温が、
なぜか下がり始めてきたように錯覚する。
薄れていく和やかさへの、焦りとも、恐怖とも似た何かに背中を押され、
「あの〜さ、」
アスカはつい言ってしまう。

「バッバカシンジのどういうとこが好きなの?!」
616名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/05/09(日) 04:10:02 ID:???
をを!?
何やらいい感じの保守が・・・
続きアゲキボン!
617名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/05/09(日) 09:14:08 ID:???
ヒー破ー
お待ちしておりました。
618名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/05/27(木) 03:43:15 ID:???
保守
619名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/06(日) 02:02:51 ID:???
誕生日おめでとう
620名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/06(日) 04:58:25 ID:???
ほしゅ
621パッチン:2010/06/06(日) 20:40:34 ID:???
非常用手動レバーで扉を開き、使徒戦を終えたアスカとシンジは軽くバテた様子で溜め息を吐いた。
「ふぅ、ったく!どっかのバカがムチャクチャに暴れるから、家まで真っ暗じゃない」
「しょうがないだろ。まさか地下の電線が切れるなんて思わなかったし…」
「はぁ〜あ。家に帰ったらテレビゲームしようと思ってた計画がパァじゃない」

エレベーターではなく階段で帰宅した2人は、軽いダルさを訴える足を慎重に動かしながらリビングにそろそろと移動する。
ミサト達職員は事後処理に忙しく、冷房のきいたネルフでお仕事。
レイはこの日の戦闘ではシンクロ率が思いのほか伸びず、冷房のきいたネルフで居残り訓練。
第三新東京市の住人達も、街から使徒の残骸が回収されるまでは当分冷房のきいたシェルターで待機。
そして今現在、世界の平和を守った少年少女2人しかいない要塞都市は、光を完全に失っている。
戦闘中の不運な事故による停電である。

「あーもう!クーラー使えないから暑いわね!」
「締め切ってたからだよ。すぐ窓開けるね」
暗闇の中、足に神経を集中させながらベランダの方に移動し、カラカラと窓を開けるシンジ。
「うわぁ、外の方が明るいよアスカ」
「ん?・・・あぁ今日は満月なのね」
622パッチン:2010/06/06(日) 20:42:54 ID:???
『満月の下で』

懐中電灯を探そうかと思っていたけど、なんだかせっかく照らしてくれてるお月様に悪いかな…と、シンジは思う。
ベランダの柵に2人手をついて、しばらくぼんやり月を眺めてみる。

「ねぇ、アンタなんかアタシに言うことない?」
「え?」
「アンタなんかアタシに隠してることあるでしょ?」
満月を見上げながら、アスカはシンジを見ずに少し不機嫌そうにそう言った。
急になんだろ?とキョトンとしながらシンジは思案する。
使徒戦の間、アスカのお株を奪うようなことはしてないはずだ。トドメは彼女のジャンピングニーだった。
ん?ん?と頭を捻る彼に軽く溜め息を吐きながら、アスカは呆れたように言った。
「今日アンタ誕生日だったんでしょ…」
「えっ!?・・・し、知ってたの?」
「天才少女をなめないでよね」

シンジは思いもよらぬことに、顔が少し赤くなる。
そんな彼の隣で、ふんっと鼻を鳴らしてアスカはスッと満月から目を離し、隣の赤い頬を軽く睨む。
623パッチン:2010/06/06(日) 20:45:06 ID:???
「なんで自分から言わなかったのよ」
「だ、だって言ったところで僕の誕生日なんて…」
「アンタばか?そんのアンタが決めることじゃないでしょ」
「ご、ごめん」
まさか自分の誕生日のことなんて気にしてる人がいるなどと…今まで思ったこともなかったシンジに、くすぐったいような照れが襲う。
また、それが普段彼のことなど気にとめたような様子を見せたことのないアスカという人間だったことも重なる。
どうしていいか分からず、軽い謝罪をすると再び月を見上げようとするシンジ。
そんな彼の予想通りのリアクションに心の中で小さく笑いながら、アスカはベランダからスタスタと室内に移動していく。
「アスカ?」
無言で真っ暗な部屋に入ってしまった彼女の方を見れば、携帯電話の明かりを頼りに何かキッチンにむかってる様子。

しばらくすると暗闇からバタム、カチカチっ、という冷蔵庫を閉める音と、100円ライターを擦る音。
624パッチン:2010/06/06(日) 20:47:32 ID:???
その音が何を意味するか察し、ドキっと胸が鳴るのがシンジ自身にもわかった。

キッチンにぼんやりと自然な光が灯り…。
クルリと振り向いたアスカの両手には丸いケーキとそこに立つロウソク。

アスカ…と呟きそうになって、喉の奥で言葉が詰まる。
オレンジ色の光に照らされた彼女の白い肌と金色の髪…何より小さく微笑む彼女があまりに綺麗だったから。

「HappyBirthdayToYou♪
HappyBirthdayToYou♪
HappyBirthdayDearばかシンジ♪
HappyBirthdayToYou♪」

歌いながらベランダに歩み寄っていく彼女は、歌い終わりと同時に彼にスッとケーキを差し出した。とびきりの笑顔と一緒に。

「あ、ありがとうアスカっ」
「バカ、先にロウソク消しなさいよ」
「…あ、そうか。ごめん」

えへへと笑いながら、フッと自分と彼女の間を照らす炎を吹き消す。

再び2人と月明かりのだけの世界になった。
625パッチン:2010/06/06(日) 20:49:27 ID:???
「嬉しかった?」
「うん、もちろん」
「当たり前でしょ!アタシがここまでしたんだから!」
「そうだよね…うん、本当に…ありがと」
「ば、バカ!なに泣いてんのよ!」
「ご、ごめん!だって勝手に出てきたんだもん!」
「ば、バカじゃないの!?誕生日祝われたくらいで泣くなんてさ!・・・も、もうサッサとケーキ食べるわよ!」
「うん、そうだね」
「じゃ、切り分けちゃうわよ!」

「・・・ねぇアスカ?」
「なによ?」
「ちょっと変な匂いしない?」
「え…?」

すんすんすん…

「う゛っ…」
「あ゛っ…」
「・・・あ、あはは。停電だもんね…そりゃ冷蔵庫も、ね?」

「もおおおおお!!何なのよそれええええ!!」

おわり
626パッチン:2010/06/06(日) 20:51:24 ID:???
お久しぶりに短編を失礼しました。
もう一本誕生日記念書いてますが、エロパロに失礼します。

最後にシンジ誕生日おめでとう!
627名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/06(日) 21:28:44 ID:???
おお…なんという乙女と乙女…
…いや、漢女と乙女?

そしてナイス誕生日
628名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/06(日) 21:34:19 ID:???
パッチンさん乙です。
エロパロ見ました!…よかった。
シンジくん(さん)誕生日おめでとう
ヒー破ー
629名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/07(月) 03:49:22 ID:???
パッチン氏乙カレー!
いやはや最早ベテランの域ですなー
630名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/07(月) 17:43:27 ID:???
>>625
乙乙
631名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/09(水) 00:24:26 ID:???
>>10あたりのmaTsuさんの作品が好きなんだが、また投下してくれないかのぅ
632名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/20(日) 04:55:26 ID:???
マダー?
633名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/01(木) 03:23:35 ID:???
(´Д`)
634名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/06(火) 00:07:37 ID:???
駄スレ乱立保守
635パッチン:2010/07/07(水) 22:33:01 ID:???
「七夕なのでグラウンドに笹をたてました。昼休みにみんなで願い事を吊しにいきましょう」

昼休み。今朝言われた老教師のふがふがしたセリフを思い出しつつ。
グラウンドに3本立てられたら笹を窓からボーっと眺めながら溜め息を吐くアスカ。

(あんなもんで願いが叶えば苦労しないっつーの)

心の中で不機嫌そうに呟いた言葉。
しかしそれとは裏腹に、先ほど願いを書いた赤い短冊は宝物のように優しく彼女の両手に握られている。

外側には裏側を見せ、願いの書かれた部分は彼女の熱い想いを宿した胸に押し付けられるカタチとなっている。

そんな短冊を大事そうに抱きしめる彼女に駆け寄る、おさげ髪の親友ヒカリ。

「あ、ねーねーアスカ。もう願い事書いた?」
「もっちろん!こんなの悩むことじゃないしね」
「ホントに?みんなけっこう考えてるみたいだけど、早いのね。ね、ね、何書いたの?」
「言わなーい♪他人(ひと)に言ったら叶わなくなっちゃうもの」
「んぅ〜。アスカって意外と保守的なのね」
「ふふんっ♪ヒカリも早くしなさいよ!」

楽しげに会話するアスカだが、ヒカリは彼女の頬が小さく桃色に染まっているのを見逃さなかった。
おそらく、願いを書く際真っ赤になったのが未だ引かないのだろう。

(碇くん関係ね…分かりやすいんだからホント)

ヒカリ嬢、ご名答。
『シンジの恋人になりたい』

赤い短冊には、勝ち気な彼女からは想像も出来ないほど小さく弱々しい文字が綴られていた。
636パッチン:2010/07/07(水) 22:34:41 ID:???
要は笹に吊してしまえばこっちのモノ。
こっそり枝に結びつけ、周りに自分が書いたと気付かれないうちにその場を離れてしまえばいいのだ。

あとは…勝手に待ってればお星様が叶えてくれるんでしょ?

神頼みとは、何とも情けない行動だとアスカ自身も思うが…
もし、もし、もし、もし、万が一!!シンジが自分以外の女に奪われたら…と考えると、やっぱり怖い。

あの七夕の日に吊しておけば…。と後々後悔するのは嫌だ。

やれることは全部やりたい。
己の目標のために、最大限のベストを尽くしたいのだ。

・・・ベストを尽くすのなら、サッサと自ら彼に一歩あゆみよるべきなのだが。

それにアスカも女の子同士の会話で、シンジがクラスの女子に人気があるのも知っている。
なので、たとえこの短冊が誰かに見つかっても、彼女の名前が書かれているわけではないし、特別書いた人物が特定される願い事でもないのだ。

「はい、じゃあ二年生のみなさんは準備が出来たら校庭に飾られた真ん中の笹に短冊を吊してね〜」

きた!

遅れをとっても早すぎても目立ってしまう。
アスカはなるべくクラスメートが一斉に向かうタイミングを狙って、動き始めた。
637パッチン:2010/07/07(水) 22:36:20 ID:???
校庭にて

・・・・・・・・・・・・・無い。

笹の前でアスカは空っぽになった両手を、グッパグッパと開いて閉じてさせる。

ガヤガヤと周りを生徒達が囲む中、完全に頭が真っ白になり無音状態に陥る。

どこ?え?どこで無くした?え?無くした?
何を?短冊よね?あの恥ずかしいこと書いた?あの短冊を?
落とした?どこかに落とした?え?え?え?

「アスカ?」

かけられた優しい声にアスカはハッとする。
遠い目をして枝を握っている親友を心配したヒカリだ。

「あれ、アスカ短冊は?もう結んだの?」
「・・・あ、あの…ヒカリ」
「ん?」
「短冊・・・無くしたみたい」
「あらら」

もぉ〜短冊無くすなんて、アスカって本当にドジねぇ。と笑うヒカリの声も、アスカには再び遠く聞こえる。
親友の彼女も最初は笑っていたが、やがて気付き、アスカと同じようにハッと顔を引き締めた。

そうだ…アスカの短冊には碇くんのこと…

「なんやてぇ〜!!惣流が短冊無くしたやてぇ〜!!」

笹の葉と色とりどりの短冊が揺れる緩やかな校庭に響きわたる、ドデカい関西弁。
ヒカリは頭を抱えたくなった。
638パッチン:2010/07/07(水) 22:37:45 ID:???
「あっほやな〜それやったら願い事叶わへんやんけ!」
「ちょっと鈴原!」

ケタケタ笑いながら小躍りするように、ひょこひょこ寄ってくるトウジ。
そんな彼のデリカシー0の行動に、ヒカリもアスカの代わりに前に出る。

「あーあ。これで惣流の願い事はもう叶わへんわけやな!どんな願いか知らんけど、切ないのぉ」
「いい加減にしなさいよ鈴原!まだ短冊は残ってるんだから、その一枚使って書き直せばいいのよ!」
「いーや、それじゃアカンねん。お星様は見てるわけや、大事な短冊無くすような人間には何枚書き直しても願い事は叶わんようになっとんねん」

トウジとしてみれば、そろそろブチ切れたアスカが登場して、委員長も含めたトリオ漫才に移行したいのだが、アスカはただ俯いてフルフル震えるだけ。

(なんや今日はノリ悪いのぉ)

最初は、軽くつつけばすぐ食いついて怒り出すと思っていたアスカが動かない。

流石に最初はギャラリーだった周りも、心配そうにアスカの近くに寄ってくる。

「どうしたの惣流さん?そんなに大事な願いだったの?」
「・・・・・」
「何なら一緒にみんなで短冊探すよ?」
「・・・・・」
「そうだよなぁ。まだ休み時間もあるし、みんなで探してもいいんじゃね?」
「・・・・・」
「ねぇ惣流さん、どんな短冊なの?なんて書いてあるか分かれば、みんなで探すよ」
639パッチン:2010/07/07(水) 22:39:07 ID:???
「・・・・・なりたい…」

押し黙っていたアスカの口が小さく動き、周りが一斉に彼女に注目する。

「シンジの・・・なりたい」

声が小く、聞こえないので、更に周りは彼女の声に耳をグイッと傾ける。
恥ずかしさがピークを迎えて真っ赤になったアスカだが、トウジの言葉により先ほど頭に描かれた最悪の未来を思い出す。

大好きな人が背を向けて・・・別の人のとこに歩いていく。

「シンジの恋人になりたいって書いた短冊よ!!!!!!
お願いだから、お願いだからみんなで探して!!!!!!」

全身から振り絞って叫んだ言葉は、周りに衝撃波のように響きわたる。

その衝撃波はどこまで飛んでいったのか・・・校庭を遥かに超えたのかもしれない。

大気圏も超えたのかもしれない。

お星様に届いたのかもしれない。

彼女の叫びを受けて、クラスメート全員が視線を移した先には、笹に短冊を結ぶ途中だったシンジの姿。

「・・・・・あ///」

まるで「アスカに周りの注目がいってる今がチャンス!」と言わんばかりのタイミングで結ばれていた短冊。

書かれた文字に全員の視線が固まった。

『アスカの恋人になりたい』
640パッチン:2010/07/07(水) 22:41:41 ID:???
「アスカ。僕の短冊の裏に、アスカのさっきの願い事書きなよ。それなら…問題ないでしょ?」
ヒューヒューヒュー

「じゃ、じゃあそうさせてもらうわ。ところでシンジ!職員室から脚立借りてきなさい!」
ヒューヒューヒュー

「脚立?なんで?」
ヒューヒューヒュー

「アンタばかぁ?アタシとアンタの願い事、お星様に一番近い特等席に吊すためよ!」
ヒューヒューヒュー

「あ、うん。わかった!じゃあ借りてくるね」
ヒューヒューヒュー

「本当にもぅ…バカなんだから」
ヒューヒューヒュー

「もぉぉ!!さっきからみんなヒューヒューうるさいのよぉぉ!!」

「良かったわねぇ。アスカも碇くんも」
「うーん。なんか納得いかんねんなぁ」
「なんで?」
「だってもう叶ってるお願いされても、お星様も困るやろ」
「ま、まあね…」

おわり
641パッチン:2010/07/07(水) 22:43:15 ID:???
七夕記念に短いやつを一本失礼しました。

お星様にアスカとシンジのラブラブを願っています…。
642名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/07(水) 23:11:28 ID:???
大好きやー
乙です
643名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/07(水) 23:12:15 ID:???
キタ━━(゚∀゚)━━!
乙であります!
644名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/13(火) 04:36:19 ID:???
久しぶりに来たらパッチンさんだ〜
トウジのキャラが良い味出しててgood!です
645名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/22(木) 01:05:08 ID:???
>>641
乙です
大気圏を超えるアスカの想いに少々吹きましたw
646名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/08/03(火) 14:55:00 ID:FuBvhU1a
保守

そういや、アスカの日記スレとか移転で落ちてるな
他にも落ちてるかもしらん
647名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/08/03(火) 15:00:57 ID:???
パッチンさんのアスカかわゆす
648名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/08/03(火) 15:15:05 ID:???
可愛いは正義(キリッ
649名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/08/18(水) 19:09:40 ID:???
>>640
GJ!!
もうヒューヒューどころじゃなく胴上げレベルだなw
650名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/08/31(火) 05:01:18 ID:???
保守
651名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/09/08(水) 17:18:52 ID:???
いときおのネタ切れにワロタ
完結させる力も大事なんだねぇ
652名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/09/24(金) 23:07:45 ID:???
653名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/09/25(土) 00:53:35 ID:???
654名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/09/26(日) 14:01:22 ID:???
ヒュー
655名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/09/26(日) 14:07:12 ID:???
マッ
656名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/09/26(日) 15:48:42 ID:???
タリ
657名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/09/28(火) 01:28:58 ID:???
リン
658名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/09/28(火) 20:08:16 ID:???
グリントン
659名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/10/01(金) 20:09:44 ID:???
ウレタンパールコート
660名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/10/26(火) 04:23:23 ID:???
何この流れ

とりあえず保守
661名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/10(水) 10:49:25 ID:???
なにか書こうか?
y/n

アイデアはあるんだが
662名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/11(木) 00:04:21 ID:???
>>661
y
よろしくお願いします。
保守の流ればかりで、何か読みたいです。
楽しみに待ってます。
663名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/17(水) 10:37:24 ID:???
待ってます
664りんりん:2010/11/22(月) 22:18:30 ID:reH10LvI
書きます

「バカシンジ」
独り言を呟いて僕は苦笑いともとれる笑みを浮かべた。
最後に聞いたのはいつだろうか。
しばらく聞いてないない気がする
彼女は元気なのだろうか?
僕は今何をしてるのだろう
全てを拒絶してここにいる。
いや全てではない。
彼女だけは拒絶できなかった。
でも彼女は僕を拒絶したんだ。
それが怖くて気持ちを伝えられなかった。
プルルル
「はい。碇です」
「シンちゃん?ミサトだけどわかる?」
僕は切ろうと思った。
でもさっきまで彼女の事を考えてたせいか話したくなった。
「どうして番号知ってるですか?」
ぶっきらぼうに答えた。
「ごめんなさいね。どうしても話があったのよ」
「何ですか?」
「アスカがね・・あの日から人が変わっちゃったのよ。自分を責め続けてたわ。今はもう普通の精神に戻ってるけど。あなたに伝えたい事があるって言ってるのよ。もうここ何年もね。それで今月はアスカの誕生日でしょ。私達からのプレゼントにしようって思ったの」
665りんりん:2010/11/22(月) 22:20:18 ID:reH10LvI
「僕なんかがプレゼント?」
「そうよ。それが何よりも喜ぶのよ」
「わかりました。」
「ありがと。シンチャンあなた変わったのね。私達もあなたに会いたいわ」
「変わってないですよ。いつ行けばいいですか?」
「大丈夫よ。明日には私の部下がそっちにつくわ」
「明日ですか?ミサトさんらしいや」
「じゃあシンジ君待ってるわ」
「はい」
アスカが僕に会いたがってる?
そんな筈ないじゃないか
何を期待してるんだ。
期待したぶん裏切られた辛いんだ。
もう寝よう。


666名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/22(月) 22:39:10 ID:reH10LvI
おもいのほかぐっすり寝れた気がする
それからはまばたきをする間もないくらい
あっという間だった。
僕は今ミサトさんを待っている。
あの頃は見慣れていたはずの懐かしい赤い車。
それが僕の前でとまる。
「久しぶりね。シンジ君」
「久しぶりです。ミサトさん」
社交的な挨拶。
僕は何も変わってない。
車に乗り車は目的地へと急いだ。
「アスカには何も言ってないのよ。サプライズだからね」
「本当に僕なんかで大丈夫なんですか?」
「シンジ君じゃなきゃダメなのよ」
アスカがどうなっても僕には関係ない。
本当に?
アスカが気になるからわざわざここまで来たのではないか?
アスカに言いたい事があるんじゃないか?
自問自答を繰り返しているうちに車は目的地についた。
「ここわ・・・」
「懐かしいでしょ。アスカの希望でずっとここなのよ。あなたがいつ帰ってきてもいいようにって。」
様々な思い出が頭をよぎった。
今なら笑って思い出せる。
あの頃のこと。


667りんりん:2010/11/22(月) 23:06:06 ID:reH10LvI
とうとう僕はドアの前にいる。
「シンジ君緊張してるのね?」
「あたりまえじゃないですか。どういう顔であえばいいのかわからないんです」
「いつものあなたでいいのよ。さぁいくわよ」
ドアが開かれ懐かしい景色が目の前に広がった。
「アスカ!ただいま」
「おかえりミサト」
久しぶりに聞いた彼女の声。
それと共にはやく顔がみたいという気持ちが膨らんだ。
「アスカ〜荷物が多いからチョッチ手伝って。」
「ミサトさん何言ってるんですか」
「いいからいいから」
「ミサト?誰とはなし」そこで途切れた。
彼女が驚いた顔で僕をみている。
こんな時何て言うのかわからない
「アスカ。ただいま」
これが僕の精一杯の言葉。
ただいまなんておかしいかな?
「シンジなの?」
「そうよ。アスカへの誕生日プレゼント。」
アスカが震えている。
今にも泣きそうな顔だ。
「バカシンジ!!なにがただいまよ。あんたの家じゃないんだからね」
そう言って部屋に戻っていった。
「あら。アスカあんなに嬉しそうにしちゃって。あんな言葉久しぶりに聞いたわ」
668りんりん:2010/11/22(月) 23:16:22 ID:reH10LvI
ミサトさんは笑いながら僕を部屋に入れてくれた。
「何も変わってないんですね」
「ええ。あの頃のまま。今珈琲をいれるわ」
「僕がしますから」
「お客様にしてもらう訳にいかないでしょ」
「僕の家ですから」
とシンジが微笑んだ。
「シンチャン。あなたの笑顔を見たの始めてだわ」
「この場所から逃げてちゃんと成長できたのね」
「自分ではあまりよくわからないですけど」
たわいもない話をしながら珈琲をいれた
マグカップが3つ。
「アスカ呼んできます」
「あらシンチャン積極的ね」
「もう変な事いわないでください」
アスカの部屋。
昔のまま。あの日本語に慣れていないホワイトボード。
「アスカ?」
「何よ。」
「珈琲いれたからおいでよ」
「その前に入ってきなさい」
「いいの?」
「いいって言ってるでしょ。早くしなさいよ」
アスカの部屋にちゃんと入るのは初めてだ。
669りんりん:2010/11/23(火) 00:13:11 ID:PmbUtq5I
「ちゃんと聞きなさいよ。私が悪かったわ。ごめんなさい」
「え?ちょっと待ってなんの事?」
「だからバカシンジがここから出て行った事よ」
なんだアスカのせいだって思ってたのか。
「大丈夫だよ。アスカのせいじゃないから。」
「いいの。私も悪かったから。ずっと言いたかったのよ」
「ありがと。アスカ」
なんだ普通じゃないか。
僕の伝えたい事はまだ言えないかな
これから今までの時を埋めよう。
それからでも遅くはない。
終わり


ぐたぐた終了ごめんなさい
670名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/23(火) 00:32:17 ID:???
読みました。
やっぱりシンジはいじけていないと、落ち着きが悪いですね。
面白かったです。ありがとう。
671名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/23(火) 02:37:48 ID:???
GJ
またの投稿をお待ちしております ^^
672名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/24(水) 00:15:49 ID:???
半角カナを使う奴って、自分で読み返して読み難さを感じないのかな?
673名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/24(水) 00:38:24 ID:???
ケータイなんじゃネーノ?
674りんりん:2010/11/25(木) 04:39:21 ID:4yYibd1v
初めて書いたので半角全角まで気がまわりませんでした
後携帯からのため半角変換になってしまいました
675名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/25(木) 20:47:44 ID:???
頑張ってください。






iif
676名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/11/26(金) 22:46:06 ID:???
ぽかぽかするLASがいい
677sage:2010/12/13(月) 04:01:26 ID:y3nqE8Tf
ほしゅっとな
678名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/12/13(月) 22:41:16 ID:???
無数のLASがあるな。玉石混交だが。
679名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/12/17(金) 02:12:22 ID:???
>>674
メールだと半角カナ蹴られるから、使わない習性が付くはず。
2chメインかw
680パッチン:2010/12/30(木) 00:10:05 ID:???
規制解除!というわけで、規制中に投下しようと思ってたのを投下します。
ちょっとスレが停滞気味なので、保守代わりになるよう定期的に落としていこうと思います。
では、いい夫婦の日(11月22日)に投下予定だった小ネタ3本。
681パッチン:2010/12/30(木) 00:11:43 ID:???
パパがママとキスをした。

少し照れて赤くなった顔で見つめあって、ママはパパのお尻をペチンと叩く。
「気合い入れて稼いできなさいよバカシンジ!」
荒っぽいなぁと笑いつつ、その勢いのままパパは出勤。

1人ぼっちのママは玄関に座り込んで・・・右の壁にもたれかかる。ため息。

1人になるとこうなる。寂しそうな後ろ姿はやけに小さく見えて…。
ここまでずっといつもの流れ。

お腹すいたなぁ…。

「たぅぁ〜」

ポテポテとお布団をたたきながら声をあげると、ママは後ろを振り向いて小さく笑みを作りながらこちらに来てくれた。
682パッチン:2010/12/30(木) 00:13:15 ID:???
「ふふ、やっぱちょっと寂しい。…毎日こんなんじゃダメよね」

うん、ダメだと思う。

「ママのこと呼んで、なぐさめてくれるてるの?」

お腹すいたんだけど。

「くすっ、ママは1人じゃないよ?って言ってくれてるの?」

ママぁ…。

「シンジの遺伝子かな…?アタシのこと、本当によく分かってるよね…」

お腹すいたんだけど。

「ふふ、図星だった?アイツと一緒で照れ屋なんだからっ」

全然分かってないや…。

それでも優しく笑いながら、撫でくれるママが好き。

お喋り出来るようになったら、パパにバラそっかな?
こんな可愛いママのこと。
683パッチン:2010/12/30(木) 00:15:16 ID:???
汗がほとばしる。

2人の手足が同時に。
舞う。

それは完璧なユニゾン。
何者にも邪魔されない…2人だけの世界。

舞う。

今日はいける!

中盤、音楽のテンポが変わる。
2人のユニゾンは揺るがない。

繋がりあう絆と、信頼がそこにはあって。

お互いがお互いを感じあう空間。

ラストに向かって。

今日はいける!いける!
684パッチン:2010/12/30(木) 00:16:26 ID:???
手足の動きは更にスピードを上げる。

2人のかけ声もユニゾンする。

完璧なユニゾン!

美しくしなやかに振り上げた両手と、力強くフローリングを叩いた両足!
フィニッシュと同時に、2人が達成感をかけ声として張り上げた!

「「みんなで仲良く、うんぱかぱー!!」」

僕はキッチンでの作業をやめ、リビングの2人に拍手を送る。
できたできたぁ!とハシャぐアスカとミライ。

2人のマイブームは、教育テレビの人気コーナー『うんぱかぱー体操』

なんか…いいお母さんになったね。アスカ。
685パッチン:2010/12/30(木) 00:18:27 ID:???
コーヒーを三人分。

ちょっと前までは、真っ黒2つと茶色が1つ。
今は仲間外れのカップは無し。

「苦い、飲めない」って、まだピーピー言ってなさいよ。
自分では若く思っても、子供に突き上げられていくようなこの感覚!

な〜んかミサトの気持ちが分かるかなぁ…なんて。

ま、幸せだからいいんだろうけどね。

リビングに戻ると、居場所が無かった。
いつもアタシが使ってる座布団に、娘が腰掛けてけつかる。
旦那にピッタリ寄り添える絶好のポジション。

腹立つぅ…。

いつの間にか変わったのね。
よく見ると、後ろ姿があの時のアタシそっくりだ。
686パッチン:2010/12/30(木) 00:20:07 ID:???
不気味ね、親子って。

しぶしぶ娘の座布団に腰掛けてテーブルを見れば、宿題を手伝ってもらってる模様。
コーヒーを啜りながら観察してみても、やっぱり変わったわよね。

子供の成長って怖い…。
だんだん別の生き物になってく。

・・・アタシも同じか…。

ねぇママ…アタシはどれくらい変わったかな?
あの頃のママなら…今のアタシを見て何を思う?

「ねぇねぇパパ〜?私の胸も温めたら大きくなるかな?」
「そ、そんなの分からないよ!///」

ま、コイツはバカシンジのままだけどねっ。
687名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/12/30(木) 02:42:37 ID:???
待ってました 乙 GJです
688名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/12/30(木) 14:49:07 ID:???
乙 ほのぼの家族って感じで微笑ましい
689名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/12/30(木) 16:42:35 ID:???
なんつか、アスカ臭がしない
690名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/20(木) 00:17:36 ID:???
パッチン氏乙(年跨ぎ亀スマソ)

……ところで、今何人の住人が居るのか知らんが、落ちLASが落ちているね、と言っとく
住人が被りまくり(たぶん)だった上に存在意義が薄かったから別に良いんだけどさ
691名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/20(木) 00:19:20 ID:???
ノシ
保守しようかな、とも思ったけど
ここ一つあれば十分だなと思った。
692名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/20(木) 00:38:00 ID:???
ノシ
最近は2自体あんまり覗いてない
SS落としてたスレが落ちてたから続きはここで落としてもおkかな?
693名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/20(木) 00:43:15 ID:???
>>692
ぜひ。読みたいです
694名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/23(日) 19:45:00 ID:???
丁度話題出てたし、便乗で。
その落ちLASのみでちびちび投下してたんだけど、立てても問題ないかな?
いきなりこっちに投下するのもどうだろうと思ってるし。
695名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/23(日) 20:30:51 ID:???
立てるのは勝手だけど、また乱立だのスカオタだの言われると思うよ
ここに投下してみては?
696名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/23(日) 20:35:07 ID:???
今は立てない方がいいだろう
6ヶ月で30レス程度だったから、立てても仕方がない
ここに続きを投下してくれ
697名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/24(月) 00:13:22 ID:???
>>695>>696
了解、そうする。
問題は自分のはLASっぽくないだろうから、なんか考えて頃合い見て投下する。
698名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/24(月) 16:20:36 ID:???
連載ものなら、出来れば前回までのもここに投下してほしいな。どういうのか分からないし。
699名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/24(月) 17:18:25 ID:???
投下しなくてもどのスレの何レス目かを指定してくれれば
http://mirrorhenkan.g.ribbon.to/
でdat落ちが読めるんで、その程度でもいいよ
700名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/25(火) 15:31:09 ID:???
701名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/25(火) 23:53:33 ID:???
乙!
ちなみにどこ?
702名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/26(水) 00:36:43 ID:???
01が12になっていて12が抜けていた。

まとめサイトとログ保管庫作ったので、
まとめ参加できる人いたら宜しく

エヴァ板小説投下スレ @WIKI
http://www44.atwiki.jp/eva-ss/
エヴァ板小説投下スレログ保管庫
http://www17.atpages.jp/evass/
703名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/26(水) 00:44:30 ID:???
ありがとー
で、どの作品なんだろうか
704名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/26(水) 00:53:44 ID:???
過去ログまとめてる人と「投下する」の人は別人なんじゃね?
いやわからんけど
705名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/26(水) 01:01:15 ID:???
別人ですよ
706名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/26(水) 01:07:18 ID:???
自分も別人
と言うか、落ちたスレはこのまとめに載ってないんだ
707名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/26(水) 01:12:30 ID:???
それをこれからみなさんでやりましょうってことですよ
708名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/27(木) 18:06:01 ID:???
いやだ
709名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/01/27(木) 18:27:59 ID:???
おまえー
710パッチン:2011/02/03(木) 21:30:28 ID:???
『じょおく』

「ねぇ〜」
「ん?」
休日の昼下がり。見るテレビも無く、身体を床に張り付かせていたアスカが半分溶けたような気怠い声をあげる。
その声の行き先は、近くで料理本を読んでいたシンジ。
本の内容を反復し、頭の中で小麦粉をこねだしていたのだが、かけられた声に少し作業中断。
視線と耳だけをスライムのようにとろけている彼女に向けた。
「ひ〜ま〜」
「そんなこと言われても…」
「部屋はあ〜つぅ〜い〜し!」
「僕にどうしろというの…?」
困り果てているシンジに、ムスッとした表情を作りながらアスカは起き上がって睨むように彼の顔を覗きこむ。
「何とかしなさいよ!」
「またそんなムチャ振りを…僕に出来ることなんて無いでしょ」
「むむむ…」
あぐらをかいた状態で腕を組みながら考えこむアスカは目を瞑りながら、頭をフリフリ。
このスタイルになると、長いことかかるのを知っているので、再びシンジは料理本に目を向けようとする。
「あ!閃いた!」
「うぁ!早いね」
ふふん、と得意気にフリフリして崩れた髪をかきあげたアスカは、ビシッと人差し指をシンジに突き出す。

「なんか面白いこと言いなさい!」
「はぁ!?」

思いもよらぬ面倒くさい提案に、シンジは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
「簡単よ♪何か適当なジョークでも良いから、アンタが面白いと思うこと言いなさい!」
「や、やだよそんなの、やったことないもん!絶対おもしろくないよ!?」
「アンタ馬鹿ぁ?だから良いんじゃない!」
「は…?」
711パッチン:2011/02/03(木) 21:32:47 ID:???
得意気なキラリとした眼差しと、意地の悪いニヤリとした口元を作るアスカは、戸惑うシンジに容赦なくたたみかける。
「言ったでしょ?アタシは今、暇なのと暑いことに困ってるのよ」
「う、うん」
「だからアンタがアタシに面白くないジョークを言って、空気を寒くしてくれたらいいのよ♪」
「そ、そんな…」
「更にアンタが言ったジョークを聞いて、アタシも暇つぶしの材料が増えるわけよ」
「暇つぶしの材料って?」
「シンジ君のサブサブギャグいぢり」
「性悪…」

大悪魔フェイスを浮かべながら、アスカはすっかり小さくなってしまっているシンジに詰め寄る。
「ほらほら、何でもいいから言いなさいよぉ」
「本当に言わなきゃダメなの?」
「ふふ、アタシの決めたことねじ曲げる自信ある?」
「うぅ〜っ…」
追い詰められたようにシンジはうっすら涙を浮かべながら、頬を赤らめてアスカを見やる。
「…っ!」
これまであまり見たことが無かった、彼の最大限に困り果てた表情。
何か分からない、胸の奥にズドンと来る衝撃にアスカは一瞬言葉を失って、前屈みだった身体を軽く退かせる。

「ほ、ほら。早く言いなさいよっ」
自分の身に起こった現象に少し戸惑いつつも、未だ強気な姿勢を崩さぬよう言い放つ。
「じゃ、じゃあ言うよ…」
「う、うん…」
712パッチン:2011/02/03(木) 21:35:36 ID:???
何故かお互いに見つめ合いながら…
何故かお互いに頬を赤らめながら…

「と、隣の家に・・・」
真っ直ぐに自分を見つめる彼は、恥じらう乙女のような可憐さと
何かを決意した男の雰囲気が同居していて

「囲いが出来たって…」
自分には無い黒い瞳は少し潤むように輝き、白かった肌は今や火照りきったように赤く染まり

「へ、へぇ〜…。なんちゃって…」

最後のセリフと同時に彼女から顔を背けるように、儚げに俯くシンジ。

・・・ジョークを聞き終えた瞬間にアスカを襲ったのは、寒気でも笑いの渦でもなく、
猛烈な熱波であった。



「ちょ、ちょっとベランダで涼んでくるわ…///」
「え!?ちょ、ちょっとアスカ!僕のダジャレ無視しないでよ!」
「う、うるさいわね!///」
「うわ!顔真っ赤だけど、どうしたんだよ!」
「あ、アンタが変なジョーク言うから、身体が熱くてたまんないのよ!///」
「はぁ!?熱くなるジョークってなんだよ!」
「知らないわよ畜生!!なんでこんなキュンキュンすんのよ!!///」

おわり
713パッチン:2011/02/03(木) 21:37:48 ID:???
2月3日ということで、数字的にはまあLASっぽい日かな〜と思い、短いのを1つ失礼しました。

外に逃げてく鬼(?)の話になってます。
714名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/04(金) 00:33:10 ID:???
乙!
715名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/04(金) 02:15:22 ID:???
おつー
716名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/05(土) 01:28:40 ID:???
ヒーハー
717名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/05(土) 01:35:48 ID:???
乙です!
> 外に逃げてく鬼(?)の話になってます。
感心しましたw すげえ。
718名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/08(火) 21:51:43 ID:???
乙です 我輩もキュンキュンしますたw
719パッチン:2011/02/13(日) 21:01:14 ID:???
・・・うん。そうめんにワサビって、なかなか美味しかったわ。
バカシンジのマネもたまにはしてみるもんね。
うーん。これって、だんだん日本人の味覚になっていってるのかしら。

などと今日のお昼ご飯を回想しながらリビングでごろついているアタシ。式波アスカラングレー。
シンジはお昼を食べたら2バカのところに行ってしまい、現在1人ぽっちである。

先程から同じようなことばかりを頭にグルグル描き続けているアタシ。
誰もいなくて、いつもより広いはずのリビングにも何の魅力を感じない。

ずっと1人が当たり前だったはずなのに、シーンとした部屋に居心地を悪く感じてしまうのは何故だろう。
暇な時にいつもやっていたゲームも、1人でやっても楽しくないっていうか…。

ていうか…

・・・チョコとか作ってみようかな。

「って!!おい!!」

突如、急変化した思考回路に思わず身体をハネらせて自分ツッコミ!

あーもぅ。チラッとカレンダーの2/13が見えたから…。

再びクッションに顔をうずめ、忘れようとグリグリこすりつけてみる。
720パッチン:2011/02/13(日) 21:03:05 ID:???
・・・もちろん今まで異性との交友が皆無だったアタシだって、明日がバレンタインデーなのは知っている。
日本という島国にもその文化が、プレゼントにチョコ限定という妙な縛り付きで根付いていることも知っている。

で、でも!あくまで知ってるだけであって、式波アスカラングレーが何かアクションを起こすようなことは1つも無い。
無い・・・・・無いっ!!

プルルルっ

「ん…?」

無理やり落ち着かせて頭にクッションを被せていたアタシを静止させたのは電話の甲高い電子音。
はいはい出るわよ〜と面倒くさそうな独り言と共に受話器をとる。
何故か口元は緩んいた。
実は内心…期待してたのかもしれない。アイツの声を。

『・・・もしもし弐号機パイロット?』
「ーっ!?」

と、そんなカケラの期待は、囁きのようでありながらどこか凛とした『あの独特の声』に打ち砕かれたのだった。

なんなのよコイツ急に!!

「な、なんの用よ」
『あの・・・買い物したいの』
「買い物?」
『ええ。チョコ』
「チョ…コ?」
『そう。・・・・・碇君に明日渡したいの』
「ーっ!!!!」

退屈だったはずの土曜日が荒れた。
721パッチン:2011/02/13(日) 21:06:44 ID:???
『チョコの行方』

なにやってんだろアタシ…。
待ち合わせ場所の駅前にて、お気に入りの靴で地面を強めにコツコツ叩きながら、唇を少し尖らせて『エコヒイキ』を待つ。

だいたい来る必要なんか無いじゃない。
あの女のためにわざわざ。
しかも理由がバカシンジへのチョコだなんてさ。
明日…渡すための。
エコヒイキからチョコ貰ったらアイツ…どうするんだろ。
どうするんだろ…バカシンジ。

「・・・・・ん?」

暗黒面に落ちかかっていた思考を無理やり、うなだれていた頭と共に持ち上げると、前方から歩み寄ってくる見慣れた姿。
それは本当に…見慣れたいつもの姿で。

「待たせてごめんなさい」
「な、なんで制服着てんのよアンタは!」

休日に外出するには、あまりにも羽目を外しにくい格好で現れたのは、エコヒイキこと綾波レイ。
そりゃこの子がド派手な衣装着込んでくるとは思ってないけど、いくらなんでもこれは無い!

「なんのつもりよ制服とか!アンタこれしか服持ってないわけ!?」
「持ってないわ」
「なっ…!!・・・・・なら、仕方ないわね」

アタシもなにか言おうとしたが、彼女の右手に無造作に握られたキャッシュカードを見て言葉が詰まった。
どうやら持ち物はこれだけらしい…。
おそらく、家からここまでカードを握った手を前後にフラフラ揺らしながら歩いてきたのだろう。

買い物がよく分からないから付き合ってほしい…という、電話内容の意味が分かった気がした。
722パッチン:2011/02/13(日) 21:09:18 ID:???
デパートにむかうお昼の空いた電車に乗り込み、アタシは座席に座ってしばし考え込む。

なにが目的でアタシ来たんだろう。
エコヒイキがチョコをバカシンジに渡すことが放っとけないから?

・・・バカシンジ。
バカシンジバカシンジバカシンジバカシンジ…。

アンタのせいで頭の中グチャグチャよ。
隣にいる、明らかにアタシより一般社会不適応者な女が。
アンタのせいで怖くて仕方ない…。

他人の気持ちの行方や人生なんて、真剣に考えたこと無かった。
いや…実際にアタシは他人のことなど、まだ考えていないのかもしれない。
他人の人生が動くことによって動かされる、自分の人生に不安を抱いているだけなのか。

明日2人がどうなるかによって、大きく変わってしまう自分の人生への不安が、アタシをここに運ばせたのか。

「次の駅で…乗り換えだからね」

アタシの線路の行方は、隣に座る女が切り替えレバーを握っているの?

バカシンジ…。
723パッチン:2011/02/13(日) 21:12:22 ID:???
デパートに到着するなり、一階から早速目に飛び込むのは赤を基調にした巨大な特設コーナー。

「このへんのやつ選びなさいよ。センスの問題だし、こればっかりは手伝えないわ」
「…そうね」

甘ったるい匂いと、甘ったるいアイドルソングが流れる場所を2人でうろつく。

あーでもないこーでもないと、楽しげに笑う人。
真剣な表情で物色する人。
簡単に選択して、流れ作業のようにアッサリ帰っていく人。

みんな心の奥にあの熱いものを秘めてるんだろう。
今、どうしょうもなくアタシを困らせている…あの熱いものを。

「弐号機パイロットは買わないの?」
「アンタとは違うからね」
「…?」
「褒めてんのよ。悔しいけど、アンタはアタシより…」
現状を破壊する勇気も無い。
「どうしたの?」
「と、とにかく!早く選びなさいよ!」
自分の気持ちにもまだ整理がつかない。
「じゃあ…このチョコにするわ」
「そう…」
ああ、もう。
「すいません店員さん」
「・・・・・」

消えたくなる…。

「このチョコ、30個ください」
「はあぁっ!!?」
724パッチン:2011/02/13(日) 21:13:47 ID:???
「アンタねぇ、言葉の選び方をもう少ししっかりしなさいよね」
「なにが?」

デパートのレストランに入り、クリームソーダを飲みながら向かいに座るエコヒイキに説教タイム。
相手はオレンジジュースをすすりながら、素っ気ない返事を返してくる。
そして、その隣の椅子には『お世話になった人用チョコ』が大量に…。

『碇君へ。心を込めて』
『碇司令へ。心を込めて』
『保安部・斉藤さんへ。心を込めて』

「紛らわしい言い方するなって言ってんのよ!あの電話の口ぶりじゃあ、まるでシンジだけにチョコあげるみたいだったもん!」
「碇君にも、もちろんあげるわ」
「そ、そうじゃなくて!なんかこう…特別な男にあげる…チョコみたいな、そういう感じのやつを!」
「男の人にしか買ってないわ。バレンタインは、女性が男性にチョコをあげる日なのは知って…」
「そうじゃなくてぇ!ああ、もう本当にバカね!」

怒りの勢いのままにソーダを飲むアタシ。

怒り…?いや、どこか安心しているのかもしれない。

その気持ちを誤魔化すために、ただ必死に大声を絞り出しているのかも…。
725パッチン:2011/02/13(日) 21:17:18 ID:???
「・・・どうしてもあなたに来てほしかったから。使ったの」
「え?」
しばし間を置いてから、ポツリと独り言のように。

「碇君の名前。どうしても来てほしかったから使ったの」
「・・・・・」
「私の用事だけじゃ多分駄目だから。碇君に関することなら、あなたも協力してくれると思ったの」
「・・・なによそれ。シンジの名前出さなきゃ、アタシがアンタに協力しないって思ったの?」
「碇君がチョコを食べて喜ぶ姿…」
「それ見るためなら、アタシがアンタに協力すると思ってたわけ?」

・・・なんなのよ。
コイツなに勘違いしてんのよ。
アンタがシンジにチョコ渡すこときいて、アタシがどんな気持ちだったか分かってないでしょ。
ただシンジがチョコ食べて笑ってるのを、アンタとアタシで喜び合いたかったわけ?
本当にバカね。

自分だけの用事じゃ、アタシが来ないと思ってたの?
本当にバカね。・・・本当に。

アタシより・・・アタシのこと分かってんのね。
心底憎たらしい女だわ。

がたっ
「・・・ほら、次行くわよ」
「帰らないの?」
「アンタばかぁ!?どうせ明日もチョコ配りに外出するんでしょ!?」
「ええ」
「ふ、服選んであげるわよ…。休日に着る服くらい持っときなさいよね」

もおっ!!キョトンとしてんじゃないわよバカ!!
726パッチン:2011/02/13(日) 21:19:57 ID:???
夕暮れのビル街を並んで歩き、アタシは隣の女の荷物を半分持ちながら、視線を逸らしてどこか他人のフリを決め込もうとしていた。

失敗したわ…。
そもそも他人の服選ぶなんて初めてだし…。
とりあえず自分好みの服を適当に選んじゃったから…。

アタシと隣を歩くエコヒイキは、周囲の目を引くような瓜二つのワンピースを着て、現在闊歩していた…。
アタシの黄色とエコヒイキの白いワンピースは、風が吹けば同じようにヒラヒラと揺れ、さぞ滑稽な姿を演出しているのだろう。

なにみんな微笑ましい表情で見てきやがんのよ…。ブンナグルワヨ…。

「式波さん。これ」
「はっ!?え??」

周囲に睨みを撒き散らしていると、突如名前を呼ばれた。
初めてこの女に名前を呼ばれたことに戸惑う隙もなく、目の前にズイッと突き出されたビニール袋。

「な、なによコレ」
「チョコ。式波さんへの分も買っておいたの」
「ちょ、チョコって!バレンタイン用のチョコなら、男にだけ渡しなさいよ!」

急になによ!!
か、顔が…あつぃ。
727パッチン:2011/02/13(日) 21:21:31 ID:???
「今日はまだバレンタインデーじゃない。だからこれは式波さんへのプレゼント」
「ぷ、プレゼントってアンタ…」
「今日の感謝の気持ち。ありがとうのプレゼント」
「・・・あのっ」
「今日はありがとう。式波さん」



そこからアタシは一言も喋らなかった…。
もうこの後にアイツに対して言うセリフは、絶対アタシらしくないセリフになりそうだから。
だから何も言えなかった。

ありがとう。レイ。
とか気持ち悪いでしょ…絶対。

おわり
728パッチン:2011/02/13(日) 21:23:18 ID:???
以上です。
LASの中でアスカとレイのポカポカを…。
初めて式波さんで書いてみました。
729パッチン:2011/02/13(日) 22:25:20 ID:???
「ただいま!」
「あ、おかえりなさい。アスカ。夕飯もうすぐだから」
「おっかえりぃ〜」
「なによ。ミサトも帰ってたの?」
「あらん、そういうアスカこそどっか行ってたの?」
「どこだっていいでしょバーカ」どさっ
「ん?ん?なにこの袋」
「あれ、この袋って確か…。デパート行ってたのアスカ?」
「そうよ。文句ある?」
「な〜るほど。さすがアスカちゃんは、お姉さんのために、デパ地下でおつまみ買ってきてくれたのねんっ♪」ガサガサ
「あ、こら!勝手に開けないでよ!」
「はてさて♪中身はなんじゃろな♪」
「ダメですよミサトさん…」チラっ
「ん?んんっ!?・・・ふおおおぉぉぉぉ!!!!!!」
「な、なによ!」
「いやーんアスカったらチョコなんか買って、大胆なんだからぁ♪」
「あ、アスカ…これって…そういうこと?」もじもじ
「はぁっ?バカねぇ〜よく見なさいよ。名前見たら、アタシが買ったわけじゃないのが分かるでしょ!」がさっ
『碇君へ。心を込めて』
「ーっ!!!!!!」
「いやーん♪名前が違うってコレ?普段はバカシンジって呼んでるのに、メッセージカードには『碇君』って書いちゃうこと?」
「ち、違うわよ!あれ?あれ?あ、あのバカ女渡すチョコ間違えたのね!?」
「碇君ですってぇ!!ギャップ萌え!?ギャップ萌えってヤツね!?」
「あ、アスカぁ…」ぽっ
「違う!違うのよ!これはアタシが貰ったチョコなのよ!」
「アタシを貰って…ですって、シンちゃん!いただいちゃいなさい!」
「え、えっと…性的な意味でですよね…」
「んなこと言ってなーいっっ!!!」
730名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/14(月) 13:32:47 ID:???
おつ!
731名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/16(水) 21:47:50 ID:???
とても面白かったです!

乙です
732名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/17(木) 10:58:15 ID:???
アスカ「んん、もう!そうじゃない!」

シンジ「こう?」

アスカ「ああ!やるじゃない、バカシンジ」

シンジ「今の気持ちを素直に言わないと続けてあげないよ?」

アスカ「バカシンジのくせに…もぅ、分かったわよ…あぁ、気持ちいい!もっと続けて!シンジ!」

シンジ「あいよ!」


アスカのマッサージを続けるシンジであった。
733名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/17(木) 11:25:04 ID:???
僕のバットが大きくなった
734名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/18(金) 19:37:06 ID:???
シンジはアスカの奴隷じゃない
735名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/02/18(金) 22:44:52 ID:???
>>732
エロい!こういうの好き
736名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/02(水) 17:34:52.05 ID:???
保守
737パッチン:2011/03/02(水) 21:13:49.22 ID:???
葛城家の朝の風景。
今日も制服にエプロンという第2の戦闘服に身を包んだ碇シンジ少年が、せっせとお弁当を作っています。
リビングのテレビからは朝の定番である星占いが流れている。
お弁当作りをしながらも、ふたご座の部分ではチラリと目線を移し、しっかり確認。小さく口が緩む。
いい結果が出た様子。

その後、射手座の結果もしっかり見てみる部分は彼の家族思いの優しさが滲みでている。

「おはよ〜」

そんないつもの朝の風景にイレギュラー。かなり早く起きた様子の同居人の式波アスカ嬢がやってくる。

「あれ、早いね。どうしたの?」
「んー。なんか目が覚めたのよねぇ今日は」

14年生きてりゃそんな朝もあるわねぇーなどと思いながら、アスカは何やら作業中のシンジに目を移す。

「あ、サンドイッチ」
「うん。野菜サンド作ってるんだ」
キッチン台でサクサク手際よくパンの耳を切り落とすシンジを眺め、アスカは「ふぅん」と声を漏らす。

「ねぇ手伝ってあげよっか?」
「いいの?珍しいね」
「あによ文句ある?」
「な、無いよ。グーはやめてよグーは」

アスカの振りかざしたグーを両手でなだめながら、シンジはソロソロと場所を譲った。
738パッチン:2011/03/02(水) 21:15:23.55 ID:???
「じゃ、これはアタシが作っとくからアンタは朝風呂沸かしてきなさい」
「うん、やっぱりアスカって優しいね。ありがとう」
「な゛っ!や、優しくないわよバカ!たまたまよ!」

ごめんごめんと笑いながら浴室に消えていったシンジ。
それを一睨みしてから、アスカは小さく、小さく…溜め息。

彼と何気ない会話をする。それだけのことで寂しい心に訪れる温かさ。
・・・やっぱり…好きなんだよねぇ…。

「ふふっ、バカシンジ」
ポツリと自然に出た微笑みは、ドイツにいた頃はけして見せなかった一面。
一本立てた右手の人差し指を唇に当て、アスカは頬を赤く染めながら並べられた野菜達を見やる。

「これ、バカシンジぃ」

細長く切られたキュウリを手にとり、彼女はそっと白いパンの上に乗せる。
ふわふわとした笑顔のまま彼女は幸せいっぱいといった様子。
明らかに様子が変わっているのは、寝起きが災いしてまさに夢見心地なのかもしれない。

「これ、アタシぃ」

今度は薄く切られたトマトを手にとり、にゅふふと笑いながら先程のキュウリの隣に並べてみる。
739パッチン:2011/03/02(水) 21:17:02.58 ID:???
そして並べられたシンジと自分(キュウリとトマト)をポーっと見つめる。

こんな風に…あの時一緒に寝てたんだよね。

並べた2人(キュウリとトマト)の下には、柔らかい布団を思わせる白いパン。
手近にあったレタスを軽く千切り、そっと2人(キュウリとトマト)の上にかけてみる。
レタスという名の掛け布団をかけると、とってもいい感じ。
あの日は背を向けあって寝てたけど、この2人(キュウリとトマト)はお互い仰向けに寝ている。

なんだか一戦交えた後みたい…などと思い、朝から何考えてんのよ!と、ピンクのモヤを慌てて吹き飛ばしてみたり。

「アスカ〜もう出来た?」

更には浴室から出てきたシンジの声にアワワと驚き、急いでもう一つのパンで蓋をする。

「あ、出来てる。ありがとうアスカ」
「ふ、ふん。楽勝よサンドイッチ作りなんて!」

先程までの恋する乙女モードを切り替え、再びツンと尖ってみせる。
関心してニコリと微笑むシンジを見て、嬉しい気持ちを必死で隠す。

幸せいっぱいの雰囲気が2人には流れていた…。が、
740パッチン:2011/03/02(水) 21:18:18.95 ID:???



「良かった。アスカが作ってくれたって知ったら綾波も喜ぶよ」
「・・・・・は?」
「あれ、言ってなかったっけ?この野菜サンド、綾波のお弁当用だよ」
「アンタは食べないの?」
「え?僕はいつものお弁当があるじゃないか」
「・・・・・」
「ふふっ、これを機に2人がちょっとでも仲良くなってくれたらいいな
・・・って、アスカ!?そんなにパンをグイグイ押し潰しちゃ駄目だよ!!グチャグチャになっちゃうよ!!」

おわり
741パッチン:2011/03/02(水) 21:19:53.89 ID:???
3月2日も数字的にLASぽいので短いのを1つ失礼しました
742名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/03(木) 16:28:36.68 ID:???
GJ!いつも乙です
743名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/04(金) 21:49:37.20 ID:???
GJ
アスカは妄想気味なくらいがいいね
744名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/05(土) 01:37:02.34 ID:???
うっわー。頭おかしい文()アスカキモいし()こんなのアスカじゃない
745名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/05(土) 16:18:17.93 ID:???
>>737-741
GJ!
746名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/05(土) 17:12:33.59 ID:???
>>744
そんなこというなら自分で書いてみろよ
747名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/05(土) 17:14:16.08 ID:???
触ったら駄目よ
748名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/05(土) 19:14:26.79 ID:???
>>747
LASスレでも>>744はそういう扱いなんだねww
749名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/06(日) 16:53:49.97 ID:???
乙です
そして744は黙っとけ
750名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/08(火) 13:51:59.15 ID:???
アスカ「もう少し上!」
シンジ「ここ?」

アスカ「そぅ…あぁ〜気持ちいぃ」


アスカの背中を掻くシンジ君でした
751名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/09(水) 00:38:37.84 ID:???
おいw
752名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/13(日) 22:08:11.84 ID:???
サイト閉鎖しちゃって久しいんだけど
モノボ! monobo.netでLAS小説書いてた柴原隆さんの作品ってどっかで読めないかな

ここで聞いちゃっていいか分からんけど良かったら教えて
753名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/03/16(水) 18:48:04.50 ID:???
何処かで見れるかな?
754闇丸:2011/04/17(日) 20:49:22.05 ID:???
題名『相談』

<日曜日15:10 喫茶店『ザイン』にて>

「で、嫌になって日曜の真昼間から俺を呼び出したって訳だ。」
「しょうがないでしょー。あんのマセガキ共のトリップ具合と来たら半端ないんだから。」

苦々しい顔をしながらアイスコーヒーに乱暴にミルクを入れるとマドラーでカチャカチャと
かき回す葛城ミサト。どうやら、朝からシンジとアスカの将来できるであろう子供の人数と
名前についての話し合いに強制的に参加させられ2時間付き合わされたらしい。

「・・・・苦労してんだな。」
「あたしと保護者交代してくれない?加持ならあの二人は歓迎するでしょ。」
「そうなると葛城が人間らしい生活捨てにゃならんぞ。}
「ぐ・・・・痛いとこつくわね。」

シンジとアスカには幸せになって欲しいと本気で思ってはいるものの、休日のたびにどー
でもいい話し合いに参加させられるのはたまらないミサトだった。
755闇丸:2011/04/17(日) 20:50:10.96 ID:???
<日曜日18:20 喫茶店『ザイン』にて>

「「「はぁ〜。つかれた」」」
ヒカリ、トウジ、ケンスケの3人は席に座るなりテーブルに突っ伏した。

「あいつら、加減ってものがないんかい。中学生で子供の名前考えろとか頭おかしいで。」
「だな。付き合い始めたら急にバカップル化だもんな。あのシンジがねえ。」
「それを言うならアスカだってそうよ。この前まで『加地さ〜ん♪』とか言ってたのに」

ミサトに逃げられたシンジとアスカは、友人3人を『ちょっと相談があるんだけど』と
言って呼び出した。3人は何事かと思い、急いで葛城邸に向ったが話を聞いた途端に脱力。
一応付き合いで2時間話は聞いたもののさすがに限界を迎えたらしい。

すると、3人のところに女性店員がやって来てにこやかに声をかける。
「ご注文はお決まりですか?」

「こうなりゃ、ヤケ食いよ。チョコレートパフェとホットレモンティーください。」
「同感。俺は海軍カレーとコーヒーね。」
「せやなー、じゃわいはチャーハンと白米大盛りで。」
「トウジ・・・・お前、チャーハンをおかずに白米食うのか?」
「今月苦しいからのお。意外といけるんやで?どや、いいんちょも。」
「せっかくの鈴原の誘いだけど、遠慮しとくわ。」
756闇丸:2011/04/17(日) 20:51:17.56 ID:???
<日曜日20:30 葛城邸にて>

ミサト、友人3人に逃げられたシンジとアスカはしかたなく別の二人を呼んで相談に
のって貰おうとしていた。だが、予想通りというか何と言うかこの二人に相談して
上手く行くわけがなく、葛城邸は今まさに戦場になる一歩手前であった。

「いい案があるわ。碇君はあたしと子供を作ればいいと思うの。」
「ファースト!あんた、死にたいの?」
「ちょっと、アスカ落ち着いて。綾波も家でATフィールド張らないでよ。」

オロオロして二人を止めようとするシンジ。しかし、彼の右肩にそっと綺麗な男の
右手が触れる。

「シンジ君、いっそのこと子供とか忘れて僕と逃避行に行かないかい?」
「こぉんの銀髪ホモ野郎!あたしのシンジを変な世界に連れて行くなー!」
「カヲル君・・・・話をややこしくしないで orz」

こうして第三新東京市の夜はふけていく。
757名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/04/17(日) 23:58:47.64 ID:???
乙!ほんわかギャグごちそうさま。
結局2人とも変に頑固だから、誰の意見も取り入れないんだろうなw
758名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/04/18(月) 22:02:14.32 ID:???
GJ
759名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/04/18(月) 23:00:55.28 ID:???
んふふふ
GJです
760名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/04/27(水) 02:19:54.04 ID:???
ちょおい!二ヶ月ぶりに覗いたら投下が!
761名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/03(金) 04:21:10.80 ID:???
おい!
762パッチン:2011/06/06(月) 00:00:20.57 ID:???
んぱっんぱっ


お弁当作りも終盤にさしかかっていた僕の前にアスカが立っていた。
んぱっんぱっ
アスカの右手には女の子のカタチをした指人形。
んぱっんぱっ
一定のリズムで人形の両手が開いて閉じてを繰り返していた。

なにこれ…?

『おはよぉバカシンジぃ』ぺこり

アスカがいつもは絶対に出さないような、ふにゃけた猫のような甘い声をくりだした。
可愛らしい声と共に、指人形が現状を把握出来ずにうろたえる僕に頭を下げる。

えと…この子が言ったってこと…だよね??

「あ、うんっ。お、おはよう」

また変な遊びを思いついたのだろうかと考えた瞬間だった。

『シンジぃ』ふにっ
「なに?」
『おはようのチューっ♪』ぐいちゅっ
「!!!!!」

小さく頭を下げた僕の唇に乾いた布の感触。

唐突に訪れた色気なんてないその感触に・・・心臓が暴れた。
763パッチン:2011/06/06(月) 00:02:13.95 ID:???
ガシャン!ドサッ!!

朝食を盛り付けようとして、手にもっていたお皿を落とす(よかった…割れてない)
そして、僕自身も突然の衝撃に思いっきり尻餅をついた。

「あ、アスカ…」
『えへへっ』んぱっんぱっ

真っ赤な僕を見下ろしながら、平然とした顔で笑いながら両手をご機嫌に動かす人形さん。

・・・しかしその奥にいる見慣れた同居人の顔は、口元は小さく笑いつつも、頬から耳にいたるまでを真っ赤に染めていた。
笑顔を貫く人形さんに比べ、その瞳は完全に挙動不審であり、僕の方を一度も見ていない。

なにがしたいの、この人…?
なに考えてるの、この人…?

「おっはろ〜♪」

廊下から聞こえた、もう1人の同居人の声。
その声をきいたアスカは、ビクっと慌てた様子で指人形を背中に回して服の中に隠した。
そして自由になった両手を腰にあて、いつものポーズを作る。

「お、おはよミサト」
ふにゃけてない、いつもの声
「おっはよ2人とも!あらら?なんでシンちゃんは、んな所で座ってんの?」
「し、知らな〜い!アタシお風呂いってきま〜す!」

朝からテンションの高いミサトさんと、朝風呂に飛び込むアスカ。
・・・この光景はいつもと同じだった。
764パッチン:2011/06/06(月) 00:03:39.17 ID:???


ループするあの布の感触。

キス…キス?キスじゃないよね。
あれは指人形という名のグローブをはめて、僕の顔面に叩き込まれた右ストレートだ。
本気なら前歯が全部折れちゃうくらい、しっかりと決まったパンチ。
でもあれは・・・キスだよね。

ああ、もう何なんだよ!!

マンションのエレベーターを降り、頭で先程のシーンを駆け回らせながら通学路を進み始める僕とアスカ。
ミサトさんが起きて3人になってからは、やっぱりいつも通りのアスカだ。
今朝の『ちゅー』も無かったみたい。

こちらから変に質問するのも何か怖い…。うん、怖い。
こういう時のアスカって変に触るとホントに怖い気がするんだ。

『シぃンジっ♪』んぱっ
「…はいっ!?」

ボンヤリ行く道だけを見ていた視線いっぱいに現れたのは、あの人形!
左隣を歩いていたアスカが右手を僕の目の前に伸ばし、装着した指人形を『んぱっ』と開いてみせた。

あの可愛い声と一緒に…。
765パッチン:2011/06/06(月) 00:05:09.79 ID:???
『手、つなごっ』ふにっ
「え…手って」
『シンジとぉ、おてて繋いで学校行きたいの』んぱぱっ

・・・うん、可愛いんだ。

アスカの声ってこんなに可愛いんだ…って顔が熱くなったりして。
更にその内容がまた照れくさい。
どんな表情を作っていいか少し困りながらも、出来る限り自然な笑顔を作りながら…

「う、うん。わかったよ」
『えへへっ』

喜ぶアスカの声になんだか嬉しくなりつつ、僕は優しく人形さんの小さな手を摘まんであげた。

・・・・・ぞわっ

冷たい光線を浴びせる左隣に目線をむけると、笑顔の人形さんの更に奥には、蒼い瞳に怒りを宿した少女の姿が。

え…と…。

僕は慌てて彼女の立ち位置の逆に回り込み、人形のいない方の手を恐る恐る握った。

『ふふ、ありがとぉシンジ』ぺこり
「あ、うんっ」

ご機嫌な様子で『んぱっんぱっ』と僕の前で踊る人形さん。
でもアスカの表情は、真っ赤で…伏し目がちで…でも口元は小さくニヤけてるように見えて。
そして僕の手の中にある彼女は、とりあえず今朝の布の感触よりも柔らかくてスベスベしてた。
766パッチン:2011/06/06(月) 00:06:51.95 ID:???
手を繋いでほんの1分くらいかな?
幸せな感覚に浸っていた腕が千切れそうなほど、彼女の手に思いっきり振り払われた。

ぶぅんっ!!!

「イタッ!?」
「うるさいわねバカシンジ!いつも歩く時はアタシの後ろでしょ!」
「はぁ!?」

アスカは右手の指人形を慌てた様子で鞄に突っ込むと、いつもの声と態度に戻ってしまった。
さすがに僕も意味が分からず怒鳴り返そうとした。
・・・が、遠くに同じ学校の生徒を見つけてやめた。

「…誰かに見られるのが嫌なの?」
「なにがよ」
「その人形と、さっきまでみたいな…」
「なんのことか分かんない」
「アスカ…」
「なんのことか分かんない!!もう先、学校行く!!」

逃げるように駆け出した彼女の鞄の隙間から少し飛び出していた、人形さんの手。
走るたびに揺れる手が『またね』と言ってるように見えた。


767パッチン:2011/06/06(月) 00:08:43.72 ID:???
昼休み

「屋上で待ってるから」

僕の机の前を通りかかった時、耳に微かに届くほどの声を残してアスカは教室を出て行った。
ガヤガヤとクラスメート達の耳慣れた声が少し遠のいた。

んぱっんぱっ、と揺れる人形とアスカの甘い声。

何事もなく過ぎていった午前の授業…。
頭の中が今朝の感覚に戻っていく。
僕はお弁当を2つ持ち、教室を出ていった。


『今日のおかずはなに?』ふにっ
「えっと、ハンバーグと卵焼きと春巻きだよ」
『プチトマトもあるよ』んぱっ
「うん。これアスカ好きでしょ?」
『好きっ!でもシンジのお弁当は全部おいしいの!』んぱっんぱっ

人形さんが踊る姿と、アスカの可愛い声。
なにより一番ききたかった『おいしい』の一言。
焼け付くような真夏の日差しの下で・・・僕はポカポカしてます。

『シンジっ』んぱっ
「なに?」
『食べさせて♪』んぱぱっ
「な゛っ!?」
768パッチン:2011/06/06(月) 00:12:08.00 ID:???
1人でPOKAPOKAしていた僕に突然の指令。
隣を見ると、たしかに人形さんが必死で箸を抱きしめようとしているが、上手く出来てない。

『お腹空いたのに、これじゃ無理だわ…』ふにっ

残念そうにうなだれて見せる人形さん。
えっと…食べさせるって、つまり…。

「わ、わかったよ。じゃあアーンして?」
『アーン♪』んぱぁ〜

僕は箸でアスカのお弁当から卵焼きを1つとり、可愛く体を開いてる人形さんの顔の近くに運んであげた。

・・・再び氷点下の視線を浴びてしまい、慌ててアスカ本人の口元に運んであげた。

『いつもシンジの料理はおいしいね』んぱっ
「うん、ありがとうアスカ」
『いつもおいしいって、言ってあげなくて…ごめんね』ふにっ
「・・・うん」

少し頭を下げて下を見る人形さん。
ホントに申し訳無さそうな…そんな声。
その時、人形さんの声にはっきりとアスカの言葉が重なった気がした。
769パッチン:2011/06/06(月) 00:13:47.62 ID:???


お弁当を食べ終えて。屋上の扉を背もたれに座って、2人…ううん3人で空を見てた。

「ねえアスカ、お人形さんでいいから教えて」
『ん?』ふにっ
「今日は僕に…ホントの気持ちで接してくれてるの?」
『・・・自分の意地っ張りに我慢出来なくて…。でもアタシ臆病だからね、この子の言葉でなら何とかなるかな?って』ふにゅ
「この子って、その人形?」
『ずっと一緒にいてたの…。1人だったアタシの本音をいつもこの子に話してたのよ』んぱっ
「大切な人形なんだね」
『この子の言葉でなら、アタシの本音言えるよ?・・・アタシだけじゃ無理だから』
「ううん。僕も気持ちわかるような気がする」
『ごめんね』ぺこり
「謝らないでよ。初めはビックリしたけど、今はアスカのホントの気持ち知れて…凄く嬉しい」
『・・・シンジの気持ちは?』
「僕の気持ち?」
『アタシの気持ちに対する…本音が知りたい』

んーっ、とちょっと悩んで・・・・・喉の奥に詰まった言葉に顔が焼けるほど熱くなった。

「・・・ははっ、僕もお人形買おうかな?」
『シンジも本音言うの恥ずかしいの?』ふにっ
「こんな本音だもん、恥ずかしいよ」
『…あっ』んぱっ

アスカの気持ちを教えてくれた、もう1人のアスカ。
僕は人差し指を彼女の口に『ちゅっ』と、ひっつけた。

おわり
770パッチン:2011/06/06(月) 00:14:32.42 ID:???
以上です。
破を見てから書いてみたいな〜と思ってたものを今更書いてみました。

誕生日関係ないです。シンジさんごめんなさい…。
771名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/06(月) 00:30:18.27 ID:1M2dqSW/
おつ
あげ

今日は期待
772名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/06(月) 16:01:30.96 ID:???
GJでした!可愛いのお
773名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/06(月) 22:44:14.33 ID:???
イィィィィッャホォォォォォォォォ
乙kれですた。
パッチンさん結婚してくれ
774名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/10(金) 03:07:29.37 ID:???
エヴァ小説でアスカが風邪をひいてシンジが看病して、
疲れで倒れたシンジをアスカが看病するやつ知りませんか
スレチかも知れませんが教えてください
775名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/06/27(月) 23:26:19.45 ID:???
ほしゅ
776名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/04(月) 02:03:11.19 ID:???
LASだかどうかわからんが
EOEラストにちょっと解釈くっつけてSS書いてみたので投稿してみる。
777766:2011/07/04(月) 02:03:42.66 ID:???
パシャ パシャ

水が波打ち、空気を巻き込むような
そんな音が聞こえている。

すべてが溶け合った、単一の存在と化した生命の海

太陽に透き通り、少し黄色く見える海が広がる。
いや、正確には見えているわけではない。

自分の形すらあやふやで、そこに自分の視覚があるということすらわからない。

ただ、彼女は知覚できていた。

パシャ パシャ
音に混じってたくさんの声が聞こえる。
溶け合った心がひとつになっている。
喜びも、悲しみも、憎しみも、愛情もすべてが感じられる。
そんな世界に、彼女は一人でいた。
何の感情も持たずに
ただ、ひざを抱えて蹲っているだけのような
そんな感覚のまま、海の中を漂っている。

いったいどれくらいの時間が過ぎたろう。
『自分』が本当に存在するのかどうかは、すでに考えるのをやめていた。

このまま永遠に時間が過ぎるのを待つのか。
『自分』が消え去って、世界が終わるのか。
すでに求めるものは無い。
どちらでもよかった。
778タイトル失念していた:赤い海の果てで:2011/07/04(月) 02:05:10.85 ID:???
「−−何を望むの?」
突如、溶け合った感情とは別な、異質な言葉が彼女の脳裏に響いた。
「−誰?」
かろうじて残った『自分』という意識。

「−どうして心を開かないの?」
聞いたことのあるような、不快な声が彼女の心を刺す。
「…(無言)」


「惣流・アスカ・ラングレーさん。」
「!」
(−私の名前はアスカ。惣流・アスカ・ラングレー…)

「アスカ…」
視覚に一人のヒトの形が映りこんだ。

「…ファースト…?
 ううん、シンジのお母さんね…」
「あら、よくわかったわね。」
「…似てるわ、表情とか。」
薄く笑みを浮かべた女性。、
白衣をまとい、迷いの無いまっすぐな目をした黒髪の女性。
ファースト、と彼女が呼んだ「綾波レイ」に瓜二つで、、
その薄く笑みを浮かべた顔は、
彼女が毎日見つめていたヒトの、優しげな表情にそっくりだった。
779赤い海の果てで:2011/07/04(月) 02:05:48.25 ID:???
「碇…ユイ…さん…?」
知らないはずなのに知っている。
そんな感覚。
それがこの生命の海の中。
「はじめまして、アスカさん。
 キョウコさんは…。」
「ママを、知ってるのね?」
「ええ。」
アスカの母はエヴァの製造にかかわっていた。
この目前の女性の立場を考えると、生前に面識があったのだろう。
そして、全てを知っているのだろう。

「ママはもういないわ。還ったの。
 だから、もう、いい、から・・・」
「そう…」
ユイの中にある、母キョウコの感覚に、アスカは少し心を突き刺された。
780赤い海の果てで:2011/07/04(月) 02:06:17.84 ID:???
「エヴァの中にいたとはいえ、すべてが溶け合った生命の海の中で、
 よくあなたは自分を見失わなかったわね。」
ここは自分がいない世界。
自分も他人も、すべてがひとつ。
「私は一人で消えるわ。私が私でなくなるくらいなら、こんなもの、いらない。」
本来であれば彼女も、多くの人と溶け合い、ひとつとなっているはずだった。

−サードインパクト−
その発生時に、彼女がエヴァの中にいたこと
そして、その直前に彼女がATフィールドを強く理解したことにより、
アスカは不完全ながら自分自身を感覚的に維持できていた。
そしてもうひとつ、自分をイメージするために不可欠な感情が彼女の中に渦巻いていた。

「…あなたは、還らないの?」
アスカはユイに訊ねた。
「初号機のコアは、命の化身である生命の樹の一部となっているわ。
 永遠に生き続ける。私の魂も一緒にね。」
「永遠に…」

「シンジも?」
思わずその言葉が口をついた瞬間、
赤い髪・碧眼・プラグスーツ
アスカは自分のイメージを大きく取り戻した。
が、それには気付いていない。
781赤い海の果てで:2011/07/04(月) 02:07:13.62 ID:???
ユイの笑顔が少し寂しそうに歪む。
「あの子は『希望』を信じたわ。
 つらくても怖くても、信じようと。
 傷つけあいながらも、自分と他人を分かつ世界へ戻るって。
 あの子は、『会いたい』って思ったの。
 だから、ここにはいないの。私とは永遠にお別れ。」
「『会いたい』…!」
−ドクンッ

アスカの脳裏に、突如一つのイメージが浮かんだ。
(この写真はいつ撮ったんだっけ。
 落ちてくる使徒を倒したぐらいの頃かな?
 ミサトも、加持さんも、ヒカリも、3バカも、ファーストも…
 『みんな』いる。)
−ドクンッ

それは写真。
青空の下『みんな』で撮った写真
−ドクンッ

特に何かいいことがあった、とかではなかった。
ただ『みんな』が偶然集まったとか
ただ、天気が良かったとか、その記念にとか
そうして撮られた、
ただの、そんな写真だった。
−ドクンッ

写真の真ん中で、笑みを浮かべるその人と
彼の肩に手をかけ、どこかで覚えたサインで
おそらく通じないであろうメッセージを彼に送る自分。
−ドクンッ
782赤い海の果てで:2011/07/04(月) 02:07:55.52 ID:???
「シンジ…」
ドクン

「バカシンジ…!」
ドクンッドクンッ

「…あのバカッ!
 勝手にこんなことにしておいて!
 何がっ『会いたい』よ!
 今更っ…何言ってんのよ…」
アスカの言葉が震える。

ユイは静かにまぶたを閉じて、やさしくアスカに語りかける。
「シンジがこの世界を拒絶したことで、ヒトは再び蘇るわ。
 ATフィールドが個を形造り、自分自身をサルベージできる。
 でもヒトが持つそれは、とっても脆弱な力で、
 この生命の海の中から個を取り出すには、どれだけ時間がかかるかわからない。」

「アスカさん、シンジを…。」
「…言われなくってもっ…あたしはっシンジに会いに行くわよ!」
震えた言葉のままアスカは叫ぶ。
「あいつに、あのバカに…
 言えてない事、言ってないこと…いっぱいあるから…うぅっ!」
783赤い海の果てで:2011/07/04(月) 02:08:23.31 ID:???
「自分を強くイメージできれば、ヒトの形を取り戻せるわ。
 あなたならきっと、大丈夫。」
ユイの手がアスカの頬に伸びる。
アスカの姿は涙でぬれていた。
「わかってるっ…
 あたしが、ママがいなくなっても、こうやって、あたしでいられるのは…
 あいつが、あのバカが!
 あのバカが見てた、惣流・アスカ・ラングレーが…!
 あたしが、あたしでいるために、シンジの中のあたしをずっと…
 イメージしてた…。」

会いたいよ、シンジ…
あの、いつものボケっとした顔であたしを見て
あの、犬みたいな表情であたしを見て!
あの、優しい顔であたしを見て!!

(ただそれだけで良かったのに
 良かったはずなのに…っ)

それが、たくさんのヒトに向けられていたのが耐えられなかった
自分だけのものにしたかった。

シンジの弱さを、受け止められなかった
自分の弱さ。
784赤い海の果てで:2011/07/04(月) 02:08:47.83 ID:???
暗く深い海の中で
アスカは目覚めた。

目の前には、ユイが確かにいる。

「もういいのね。あなたたち二人なら大丈夫よ。
 生きていれば、幸せになるチャンスはどこにでもあるわ。」
ユイが笑みを浮かべた。
愛しい人にそっくりなあの笑顔。

「ユイさんは、お母さんはどうするの?」
「私は、生きるわ。
 いつか、たとえ地球が無くなったとしても。
 エヴァと共に生き続けて、きっとどこかで
 またヒトが、ヒトと出会えるように。
 生きた証を刻むの。永遠に…」
アスカは目を細めて、少し笑みを浮かべた。
「『みんな』の母親になるつもりですか?」
「それが私の望みだから。」
ユイの優しく意思に満ちた表情。

「あたしにも、お母さんみたいな優しさが少しでもあれば
 もっと、シンジをわかってあげられたのかな。」
「大丈夫、アスカは優しいから。」
いつの間にか、アスカの体には包帯が巻かれていた。
シンジが見ていた、母親の面影を残した少女
綾波レイ。
シンジが求める『母のイメージ』
785赤い海の果てで:2011/07/04(月) 02:09:31.47 ID:???
アスカは思った。
シンジのことを。
「きっと、あたしたち、また傷つけあうわ。
 お互いがわからなくなって、怖くなって
 でも、きっといつか『他人といれてよかった』って思える。
 思っても、その後また傷つけあう。
 そしてまた、分かり合って、『幸せ』って思うの。
 何度も何度もそれを繰り返して。
 それでも生きていける。
 『幸せ』と思う、その気持ち、他には代えられないから。」

アスカの体は次第に浮かび上がり、ユイと離れていく。

「お母さん…ありがとう。さようなら。」
ユイはもう何も応えなかった。



パシャ

水面に浮き上がり、空が見えた。

赤く染まった海。
月と星の光だけが照らす。
変わり果てた世界の景色を見て、
崩れ落ちた、綾波レイであった存在を見て、

アスカは少し微笑んだ。
786赤い海の果てで:2011/07/04(月) 03:02:59.45 ID:???
〜I need you〜

いつの間にか陸地を歩いている。
どうやってたどり着いたかはわからない。
ただ、目前に広がる景色は
すべてのものが倒壊し、崩壊し、枯れ果てた光景。
赤い海。
瓦礫と化した陸地。
地に堕ちたエヴァシリーズ。
成層圏で弧を描く赤い水。

一様に同じ方向を向いて、電柱であったものが折れ曲がっている。
その中に、まっすぐに立つ、異質な木の柱が数本見えた。

近づいてみると、そのひとつには十字架が掲げられていた。
(これって、ミサトの?)

木の柱には「ミサトさん」と歪な文字が刻まれていた。
(何よこれ、墓のつもり?)

ふと横を見ると、自分の名前の彫ってある柱がある。
「んっ!」
一蹴

脆くなっていた柱は苦も無く折れ曲がった。
787赤い海の果てで:2011/07/04(月) 03:03:29.44 ID:???
折れた柱の影に、白い砂浜が見えた。
その中に、倒れているヒトの影。

近づく。
砂浜に足跡を残しながら、そのヒトのもとまで。
(バカシンジ…)
顔を覗き込む。

触れたくて、
思わず、手を伸ばしてしまいそうになった自分を制し
ただ、何もすることなく

距離をとって座り込んだ。



波の音に混じって小さな呼吸音が聞こえる。
シンジは眠っているのだろうか。

アスカも身を砂浜にゆだねた。
星が綺麗だ。
いつかこんな景色を見た気がする。

少し時間が経った

シンジが上半身を擡げて海を見つめた。
その後、アスカに視線を移動した。
788赤い海の果てで:2011/07/04(月) 03:04:59.49 ID:???
ぐぐっ

アスカの上にまたがってきたシンジ。
シンジの手が、冷たく、アスカの首元で震えている。
首を絞められながら、アスカは、その包帯に巻かれた手を伸ばし、
ユイのように優しく、そっと、シンジの頬をなでた。


シンジの手から力が抜ける。

「うっ…ううっ…」
シンジのむせび泣く声
「ぐぅぁ…あぐぅ…ぅぅ…」
震えながら涙を流す。

アスカの顔に落ちる、シンジの涙。

その表情を見上げながら、アスカは思った。

何…?わからない。
さっきまでは、海の中では、全部聞こえてたのに、わかったのに…
エヴァの中で、ママに会えたときも、わかったのに、

そうか…こういうことなんだ。


−何で泣いてんんのよバカシンジ
−ワケわかんないわよ
−何よ…

「気持ち悪い」
789776:2011/07/04(月) 03:17:08.46 ID:???
以上です。誤字脱字申し訳ない。

まさかこんなに長くなってるとは思ってなかった…連投で規制もされた
スイマセン
式波さんのポップなSS書こうと思ってたのに、何故か出来上がってしまった。
また勉強してきます。
790名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/04(月) 11:49:58.61 ID:???
>>789
おつ!よかったよGJ!
791名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/05(火) 00:45:48.09 ID:???
知らんあいだに2つもきてたのか!両者おつです!
792名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/05(火) 19:04:49.07 ID:???
GJ!!EOEに救いをもたせてくれる作品だね。
しかし式波の話からどうやったらこうなるんだw今度は式波のも期待してます。
793ヨモ(776):2011/07/08(金) 01:29:34.80 ID:???
便宜上名前をつけました。
>>790-792
感想どうもありがとうございます。
式波さんを描こうとすると、ぶれて惣流になってしまって、そのうちに、惣流が愛おしくなってこんなことにw
不満点も多いので、修正してどこかにうpするかな。

式波ssも書けたのですが、前回の2倍はあるので数日に分けてうpしてみます。
とりあえず導入部。
794ヨモ:2011/07/08(金) 01:33:52.73 ID:???
タイトル:If I can…

それって好きってことじゃん!−


「シンジー、お風呂上がったわよ。」
「お皿洗い終わったら入るよ。
 フルーツ牛乳、テーブルの上においてあるから。」
「ん。」
風呂あがり、アスカと同居人のいつもの会話。
薄手の部屋着に身を包んだアスカは、キッチンに立つシンジの姿を確認した。
もう一人の同居人、ミサトの姿は無い。
「ミサトは?」
「参号機の手続きで忙しいみたい。今日も帰れないってさ。」
「そう。」
アスカはテーブルの上からフルーツ牛乳のビンを取り
ローテーブルに移動し、テレビをつけ、座椅子に身を預けた。

(参号機、かぁ…)
彼女にとって、ここ数日は実にめまぐるしかった。
参号機の、北米からNERF本部への移譲に伴い、
彼女の愛機である弐号機は封印されてしまうことになった。
それを知ったのが一昨日。
昨日はミサトを捕まえて、封印の中止や先延ばしの判断を求めたのだが梨の礫。
今日は直接封印作業を担当するリツコへ詰め寄ったが、作業を目の当たりにしてしまい。
それだけでなく、パイロットのバックアップまで用意されていることを知り、
加えて彼女の感情をかき回しているのが、帰りがけのエレベータの中で鉢合わせした綾波レイだ。
795ヨモ:2011/07/08(金) 01:34:30.66 ID:???
彼女の指に残ったおびただしい絆創膏、
『碇君といると、ポカポカする』という言葉。

「はぁ…」
思わずため息が漏れた。
「どうしたのアスカ?疲れてるの?」
皿洗いを続けながら、顔だけこちらに向けるシンジ。
「別に〜」
とだけ応えた。
「疲れてるなら早く寝たほうがいいよ。」
「別にって言ってるでしょ。」

(弐号機が無くて、パイロットのバックアップもいて
 あたし、どうなるんだろう…)
ふと、自分の左手の絆創膏が目に入った。
と同時に、昼間の綾波レイの左手がリピートされた。
(あの子、あんなに怪我しても、シンジにご馳走したいんだ。
 意気込みが違うか。)
思いながら、フルーツ牛乳をごくごくと飲む。
よく冷えている。
(あれ?いつものことだから気にしてなかったけど。
 これって、いつもちゃんと冷えてて…)
アスカの風呂は長い。
ぬるい湯に長く浸かっているのが好きで、一度入ると一時間は出てこなかったりする。
海外育ちのせいもあるのか、どうも熱い湯は苦手だ。
アスカは、そんな長風呂のあとフルーツ牛乳を飲むのが習慣になっていた。
それが決まってよく冷えているのだ。
アスカは未だ皿洗いにいそしむシンジの背中を見る。
洗いものが多いわけではない。シンジの性格なのかこだわりなのか、かなり丁寧に洗うため時間がかかる。
そんな家事を行いながらも、シンジはアスカの風呂上りのタイミングを計ってフルーツ牛乳を用意しているのだった。
(むぅ…今まで気づかなかった。
 アイツも妙なところで器用よねー)
796ヨモ:2011/07/08(金) 01:35:03.16 ID:???
綾波レイ・碇シンジ
妙に二人のことが気になる。
『ひとつだけ聞くわ。あのバカのことどう思ってんの?』
昼間、自分が発した言葉を反芻する。
自分の中に生まれた妙な感情。
「何期待してたんだろ、あたし。」
一人ごちながら、ふとカレンダーを見る。
奇妙な共同生活が始まってから、すでに数ヶ月が経過していた。
(あれ?)
797ヨモ:2011/07/08(金) 01:35:16.54 ID:???
「バカシンジー、明日ってあんたヒマ?」
リビングからアスカの声。
「え?特に、用事は無いけど。」
顔だけ彼女に向けて応える。
手には皿を持ち、乾いた布で丁寧に磨いている。
「…じゃあ、さ、一緒に出かけない?」
「え?」
アスカは壁を向いてカレンダーを見ているので、彼女の後頭部しか見えない。
「ほら、明日はえこひいきだけ待機任務で、あんたとあたし非番じゃん。
 あたしたちの休みがかぶって、それに日曜日ってなかなか無いでしょ?」
アスカはそのまま話し続ける。
「そういえば、はじめてかもね。」
「だから…出かけよ。」
「え?どうして?」
「…イヤなの?」
そこで、アスカはシンジに顔を向けた。
きっとシンジを睨む表情。
大きな眼を無理やり細めた、この表情を彼女は頻繁に見せる。
「いや、イヤってワケじゃないけど…」
「ふ〜〜ん」
と唸ると、アスカはおもむろにゲーム機を取り出す。
ギューン
特徴的な音でゲームを始めてしまったことがわかった。
798ヨモ:2011/07/08(金) 01:36:00.17 ID:???
(ああ、間違えたかな。女の子って難しいなぁ。)
女の子、とシンジは表現したが、アスカの調子は特に難しい。
特に予定もないし、出かけるのも良い。
何より彼女から外に出ようと誘ってくることなど、今までに無い。
ただ、アスカの反応がよろしくないところを見ると、自分の言動が彼女の期待していたものとは違うのだろう。
「あ、じゃあ出かけようか。アスカはどこか行きたいところある?」
「…いいわよ、無理しなくて。」
ゲーム機に視線を固定したままアスカが応える。
(違ったか、う〜〜ん…)
ここで諦めてしまうと、アスカはせっかくの休日をゲームで潰してしまうだろう。
それは可愛そうだ。
最初こそ面食らったものだが、数ヶ月が経過して
シンジもアスカのことを多少なりともわかるようになった。
ご機嫌取りではないが、アスカが憮然とした表情をしているのはなんとなく気にかかる。
ちょっと表情をほぐしてあげれるといいなあ、なんてことを最近は考え始めていた。
シンジは、この状況を少し楽しんでいるのだった。
799ヨモ:2011/07/08(金) 01:36:16.45 ID:???
「ねえアスカ、明日、僕の買い物に付き合ってくれる?」
「え?」
アスカが、本来の大きな目を開き、シンジに顔を向ける。
「何よ、あたしに荷物もちでもやらせようっての?」
えらく飛んだ返しだが、とにかくリアクションがあるということは、アスカも興味を持っているのだろう、とシンジは理解した。
「ちがうよ、そんなに重い買い物じゃないし。
 でも、あまり売ってる店が無くて、御殿場のほうまで行こうと思ってたから。
 アスカ行ったことないだろうから、詳しくは無いけど少しは案内できるからさ。
 たまには街も面白いと思うよ。」
そう言ってシンジは薄く微笑んだ。
「…しょうがないわねえ。付き合ってあげるわ。
 歯、磨いて寝る。」
わざわざ言いながら、アスカは早々にゲームを片付け、洗面所に向かった。

(ズルイ…あの顔はズルイ…)
鏡に映った、薄く紅に染まった自分の顔を見てそう思った。
800名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/08(金) 01:41:21.75 ID:???
>>799
最後のアスカかわいいw
続き待ってますね!
801ヨモ:2011/07/08(金) 01:57:13.85 ID:???
今回はココまで…と早速の感想ありがとうございます
(次回のうp分用意していたら文章修正に入ってしまった…)
楽しんでいただけるように頑張ります。
802ヨモ:2011/07/08(金) 22:07:12.76 ID:???
If I can…(第2回)

翌日、二人は電車に乗り御殿場へ降り立った。
第3新東京市の着工とともに、商業施設を中心に再開発され
幅広い世代が集う繁華街になっている。
天候にも恵まれ、アスカは少しテンションが上がっていた。
「ねーバカシンジ、ここって車道の真ん中!
 なーんか気持ちいいわね!」
開けた中央通り、休日は歩行者天国になっている。
アスカは、広い往来のど真ん中を堂々と歩く感覚にハマった。
「あーこれぞ日本って感じ、秩序無くいろんな店で溢れてるわね〜」
計画都市の第3進東京市中心部と違って、
服屋に飲食店、商業ビル、雑然と立ち並ぶ光景は、海外育ちのアスカにはエキゾチックに映っているのだろう。
「アスカ、楽しそうだね。」
「ぜんぜんっ!」
と向き直り、目を細めて言うが、以前はそんな反応すら示さなかった。
洋上プラントに行ったときとはまったく違った反応。
数ヶ月での彼女の心境の変化は、シンジも感じていた。
803ヨモ:2011/07/08(金) 22:07:23.39 ID:???
「シンジ。買い物、忘れないうちに済ませちゃいなさいよ?」
左右に勝手に歩き回っていたアスカ。
急に踵を返して、シンジを向いた。
「うん、そこのお店だから、すぐ買ってくるよ。」
シンジが指を刺したのは少し大きめの楽器専門店。
「え?あんた楽器できるの?」
「うん、チェロを少し。
 ちょっと音が悪くなってきたから弦を買いたくて。
 気に入ってるのが、ここにしか売ってないんだ。」
「チェロって、あの大きいやつでしょ?そんなのあった?」
一緒に住んでいるはずなのに、知らないシンジがいるような、妙な感覚。
「大きいし、なかなか弾けないから、いつも物置部屋に置いてるんだ。
 弾いても、休みの日の昼間だけ。夜は近所迷惑だしね。」
「へぇ〜意外。」
804ヨモ:2011/07/08(金) 22:07:43.37 ID:???
シンジとともに店内へ入る。
楽器店など初めてだった。
というよりも、繁華街での買い物自体、アスカの人生においてほとんど無いのだが。
特にここは異空間だった。
ギターやピアノ・キーボード・ドラム
店の入り口にあるような楽器は少々わかるが、チェロとなると
実際の大きさもイマイチわからない。
「あんたがチェロなんて、なんだか想像つかないわね〜。」
あのミサトの家で、どのようにシンジはチェロを弾くのか。
「…今度、弾いて見せてよ。」
見たことが無い光景を少し想像しながら、思い切って言ってみた。
こういう言葉をアスカはあまり言ったことがない。
「あまり聴かせられるようなものじゃないよ。
 長いことやってるってだけで、上手くないから。
 才能、無いんだ。」
振り絞った言葉に対して返ってきた応えに、アスカは少しイラっとした。
「なによー、なんでそんな蔑んだ事いうのよ。
 単にあたしが聞いてみたいだけっ、発表会じゃないんだから。」
思わず腕を組み、目をしかめた。
「ああ、ごめん。」
「謝るくらいなら、そういう言い方はよしなさい!
 それに、継続は力、でしょ。
 絶対に、あたしよりは、上手いんだから。」
口をとんがらせて突っかかるアスカ。
「…ありがと、じゃあ今度聴いてもらおうかな。
 何か好きな曲とかある?」
「え…?え〜っと」
反応を求める応えが返ってくるとは思ってなかった
「あまり難しいのは無理だけど。」
「当日までに考えとくわっ…」
といいながら、何故かムッとするアスカだった。
(なによ、「ごめん」ばっかり言ってるいつものバカシンジじゃないみたいじゃない。)
805ヨモ:2011/07/08(金) 22:12:52.63 ID:???
「これで買い物終わり?」
「うん、せっかくだからご飯食べていこうよ。」
今日のシンジは妙に積極的だ。
「どこか行くとこ決まってるの?」
「お店はいっぱいあるから、アスカの食べたいものがあれば、探してみようかなって思ってたけど。」
「へぇ〜ちょっとはリードしてくれるんじゃん。」
アスカの目が妙に優しげに、丸く輝いた。
「え?何?」
「じゃあさ、あたしもちょっと調べてきたのよ。
 ここの場所わかる?」
シンジの疑問符には答えずに、アスカは家で印刷してきた地図を鞄から出した。
「ああ、これならすぐそこだよ。こっち。」
「…ちゃんとできるんじゃん、そういうの。」
アスカの眼が妙に丸い。
「な、何のこと?」
「早く案内しなさい。」
806ヨモ:2011/07/08(金) 22:13:11.01 ID:???
「ラーメン屋さん?ここでいいの?」
地図の指し示す先には、少し古めかしい、小さなラーメン専門店。
その小さな店に似合わない、長い行列が店先に連なっていた。
「そう。テレビで美味しいって言ってたの。
 日本といえばラーメンでしょ?一度食べてみたかったの。」
「日本といえばって言うのは初めて聞いたけど。」
テレビで紹介されるほどの人気店なのだろう。
20人は待っているだろうか。
「トンコツ風味って、アレでしょ?濃厚なヤツなんでしょ?」
「うん、本物とは違うらしいけど。
 こんなにすごい行列店は、初めてだなあ。」
「ほら、早く行こう。」
シンジの手を引いてアスカが引く。
「うぇ?」
シンジは突然のことに、思わず声が出てしまった。
こんなアスカは見たことが無い。



「いつまで待たせるのよっ!」
10分と持たず、アスカが痺れを切らせた。
「しょうがないよ。順番だから。」
「う〜〜!」
アスカがうなり声を上げる。
行列の中にいるので、シンジは周りの視線が痛いほど感じられた。
「…ねえシンジ、ラーメンって作れるの?」
「“トンコツ”はさすがに難しいと思うけど、中華そばって感じのラーメンなら。」
「じゃあ今度それ作って。」
そう言うと、アスカはシンジの腕を引っ張ってさっさと行列を抜け出した。
「ちょっとアスカ。」
「折角の休みなのに、時間がもったいないー。」
同じ引っ張りでもこっちは、いつものアスカらしい、とシンジは思った。
807ヨモ:2011/07/08(金) 22:18:53.07 ID:???
結局、どこにでもあるバーガーショップに入った二人だが。
数分後、険しい表情でハンバーガーをパクつくアスカがいた。
「釈然としないわ。」
そう一言。
「付き合ってもらってるんだから、いいよ、ここくらい僕が出すって。」
アスカはシンジにおごられたことに突っかかっていた。
「なんか哀れみみたいでイヤよ。
 そもそも、女の分をおごるとか、前時代的っ。
 私もあんたも、同じパイロットで、同じ訓練・任務をこなしてる身よ。
 別に差があるわけじゃないじゃない。」
ぷりぷり文句をたらすアスカ。
「それは、そうかもしれないけど。
 付き合ってもらってるのはこっちだからさ。」
シンジもこういうことに慣れたものだ。
やさしめの口調で語りかける。
「…じゃあ、あたしに付き合わせたらワリカンにするのね?」
「え?」
「付き合ってくれる?」
どこかいたずらっぽい目でアスカが睨んできた。
「うん、いいよ。
 やっぱり、アスカも買い物とかしたかったんだ。」
アスカが楽しんでいるのかどうか、気になっていたシンジは
彼女からのリアクションがあったことに喜び、軽く応えた。
が、1時間半後、洋服店の中には困惑の表情を抱えたシンジがいた。
808ヨモ:2011/07/08(金) 22:19:10.85 ID:???
「ねーシンジ、これどう?」
シャッ
と音をたててカーテンを開き、試着室からアスカが飛び出てきた。

明るいイエローの、いかにも生地が軽そうなワンピース。
上半身がボディラインを捕らえているのに、スカート部分はふわっとしている。
(え?これ…アスカ…?)
はっきり言うと、この店はいつものアスカの服とはそもそもの系統が違う。
どれもフワフワしていて「女の子」という印象が強い店だった。
「え、あ、えーっといいんじゃ、ない、かな…」
そんな服をアスカが着ていて、そして良く似合っているという事実。
そして、アスカの表情が、家で、学校で、訓練で見かける顔と違う様な気がして
まともな言葉が出てこない。

そんなシンジの反応を見て、
「ふーん」
と目を細めて
チャッ
カーテンを閉める。
そして、さっさと着替えると次の服を求めに出た。
実はこのやり取りを繰り返すこと、十数回。
(ループだ。抜け出せなくなってる。)
とにかく服を選んでは試着し、シンジの反応に対しては、常に上記のような感じだ。
反応の仕方が悪いのかと考えてはいるが、着替えたアスカを見るたびに言葉が詰まってしまう。
ふと、服を物色しているアスカを見ると、店の人もだんだんと付き合いきれなくなってきているのが見て取れる。
そして、この状況で待たされてるほうは非常につらい。
彼氏さんですか?の質問は本当に厳しかった。
そうじゃない、とだけだと突っ込まれてしまい
同居人と答えると、視線が痛い。
809ヨモ:2011/07/08(金) 22:22:35.89 ID:???
規制回避のため、ここまで。
深夜にはラストまで一気に上げようと思います。
810ヨモ:2011/07/08(金) 23:58:02.21 ID:???
If I can…(第3回)

「あーあ、やっぱり慣れないことはするもんじゃないわ。」
さらに30分ほどそれを繰り返したあと、やっとアスカは店を出た。
結局何も買っていない、店にとっては迷惑なことだったろう。
「気に入る服が、無かったの?」
並んで歩きながらシンジはそう言った。
「いいの、気にしないで。」
シンジの心配とはよそに、アスカはすっきりとした表情をしていた。
「あそこの服、カワイイ系ばっかりだから。
 あたしには似合わないわよ。そんなのわかってるから。
 ただ、ちょっと、試してみたかっただけ。」
アスカが少しだけ歩調を速めてシンジの前に出た。
「試すって、試着?」
「あ、ゲームセンター行ってみても良い?
 日本の筐体機遊んでみたかったの。」
シンジの質問に振り向きもせずに、アスカはゲームセンターを指差した。
(外に来てもゲームか…でも、日本のゲームセンターでって言うのならいいか)

「シンジもやるでしょ。これ二人で出来るみたいだから。」
「これってゾンビが出てくるヤツ…?」
アスカはガンシューティングの筐体前に立ち、100円玉を数枚投入し、
早々にコントローラーを握りこんでいる。
「あんた、普段使徒と戦ってるくせに
 ゲームのゾンビが怖いの?」
シンジの明らかに狼狽した表情に突っかかる。
「そ、そんなことないよ。ただ、人を驚かすように作られてるから、苦手なだけだよ。」
「大丈夫よ。本当に痛いわけじゃないんだから。」
チャッ
舌をペロッと出しながら、アスカは銃を構えた。
811ヨモ:2011/07/08(金) 23:58:32.52 ID:???
「うわっ!!」
「ちょっとシンジ、驚いてないで撃ちなさいよ!」
画面外から突然ゾンビが飛び出し、驚くシンジ。
闇雲に連射してみるが、どうも当たっている感覚が無い。
一方アスカは冷静に各個撃破中。
とにかく命中率が半端ではない。
「あー」
シンジが声を漏らす。シンジだけゲームオーバーだ。
アスカは変わらずゲームを進行している。
「シンジ、早く、コンティニューしなさい!」
「アスカ、このゲームやったことあるの?」
シンジは筐体に100円玉を入れながら聞く。
何しろ次々に敵が襲い掛かるのに初見でノーダメージなのは信じられない。
「無いわよ。ゲームセンターなんか初めてだってば。」
顔は画面からはずさずにアスカ。
その間も次々に撃破していく。
「これって、敵の出るタイミング覚えて遊ぶもんじゃないのかな?」
「実戦はそうは行かないでしょ。」
「わ!」
コンティニューした早々、シンジは大ダメージ食らったようだ。
「もー、いつもシミュレートでやってる感覚でいいのよ。
 あたしがオフェンス、シンジはバックアップ。」
「え?どういうこと?」
「でかいの来た!あたしがコイツ倒してるから、周りの雑魚任せたわよ。」
「え?あ、了解!」
812ヨモ:2011/07/08(金) 23:59:11.84 ID:???
気づけば、アスカは初見で全ステージクリアし、スコアランキング1位
シンジは幾度コンティニューしたかわからない。
「ははは、すごいね、アスカ。」
ただただ、感心するしかない。
「当然でしょ。あたしを誰だと思ってるの?
 戦いは常に無駄なく美しく、よ。」
西部劇のガンマンのように、銃口に向けてふっと息を吹きかける。
「まーこの分じゃ、当分エースの座はゆるぎないわね〜。」
銃を片付け、手をひらひらさせながら筐体を離れる。
(そうだよな、「アスカ」ってこんな感じだよな…)
そんなことをシンジは思った。
「シンジ、次はUFOキャッチャーやってみよ。」
言いながらトコトコとプライズコーナーへ駆けていった。


「UFOキャッチャーは二度とやら無いわ。
 何よあのインチキ。」
「あ、アスカ、店前で…」
一通り遊んだ二人はゲームセンターを出た。
町には夕日が差し始めていた。
「そろそろ、日が暮れるね。」
「あ、シンジ、タワー、登るわよ?」
アスカは昨年完成したばかりのシンボルタワーを指差した。
813ヨモ:2011/07/08(金) 23:59:44.00 ID:???
タワー上部の地上600メートル、夕日が差し込む展望室。
箱根やアルプスの山々が広がっているため「どこまでも見える」というものではないが、
雄大に連なる景色に夕日が落ちる姿は、
「今日は、綺麗だなって思えるんだ…」
アスカは窓際の手すりに軽く手を沿え、遠くを見ながら呟いた。
「シンジ、ありがと…楽し、かった。」
聞いたことの無い言葉がシンジに向けられた。
「なんか、アスカ、今日は違う人みたいだね。」
アスカの背中に応える。
「あたしもそう思う。」
そう答えたアスカの背中は、どこか弱々しく、寂しげだった。
もともと華奢な体つきが、夕日に照らされて更に輪郭が狭まっている。
その姿は、非常に脆く、壊れそうだった。
「…どうしたの?アスカ。」
「ちょっとね…」
顔を下げるアスカ。
「弐号機の封印の事とか、いろいろあって…少し、おかしいのかも。」
シンジも知っていたし、気づいてはいたが、そのことは話題にするのをためらっていた。
「弐号機、きっとすぐに使えるようになるよ。」
単なる励ましでしかない。
シンジに決定権など無いし、何かいえる立場でもない。
「あたりまえよ。シューティングゲームですらまともに戦えないヤツがいるぐらいだから。
 あたしがいないと、使徒を倒せるわけ無いじゃない。」
突っかかってきたアスカだが、その声にいつもの覇気はなかった。
シンジが違和感を覚える中、アスカは再度口を開いた。
814ヨモ:2011/07/08(金) 23:59:59.99 ID:???
「…あたしさ、小さい頃から、ずっと軍属だったから、
 こういうの、どういうものかな、とは思ってたの。
 普通の女の子がしてること、一度試してみたいって思っただけだから。」
(エヴァに乗れなくなっても、あたしはここにいれるのかな…)
「アスカ…?」
少し沈黙が続いた。
シンジは反応に困っていた。
真剣なアスカの独白に、ただその場をつくろうだけの言葉や、適当な反応は出来ないと悟ったから。
アスカも、そんなシンジの様子を感じ取り。
「バカ、何本気にしてんのよ。」
とごまかした。
「んー!」
そう唸りながら、アスカは体を伸ばした。
「結構スッキリしたから、もういいわ。ほら、帰るわよ!」
振り返ると、夕日に照らされて、少し影のついたシンジの顔があった。
アスカは、ほぼ無意識に、その顔を見つめてしまった。
ほんの数秒、それがアスカの心に何か暖かいものを感じさせた。
(…えこひいきに、悪いことしちゃった。)
シンジから顔を背ける。
まっすぐ見れない。
それは自分に起こった変化に気づいてしまったから。
「アスカ?」
「早く帰って夕飯にしましょ。」
たっ、と早足に、帰りのエレベーターへ駆けていった。
815名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/09(土) 00:12:37.47 ID:???
支援
816ヨモ:2011/07/09(土) 00:13:45.41 ID:???
If I can…(第4回)

(何か、足りない気がする…)
ミサトの家に戻り、皿洗いをしながら、シンジは思った。
簡単に夕食を作り、二人で済ませた。
ミサトは今夜も帰らないという。
アスカはいつもの長風呂に入っている。
そろそろかな、と思い、フルーツ牛乳を用意する。
(タワーで、何を言えばよかったのかな。)
シンジは帰り道からずっと考えていた。
(アスカって、軍人でエヴァのパイロットで、僕の同居人で…)
昼間の、見たことのなかったアスカの姿が思い出される。
(今日はいつもの強いアスカじゃなかった。)
チャッ
風呂場に続くアコーディオンカーテンが開き、
部屋着のアスカが出てきた。
「あがったわよ。」
「うん、すぐ入るよ。フルーツ牛乳テーブルの上にあるから。」
「…今夜はいいわ、もう歯も磨いちゃったし。すぐに寝る。」
「え?」
「なんか、気分いいの。おやすみ。」
そう言うとそそくさと部屋に向かう。
いつもの、部屋着の、後姿。
その後姿と、日中に見たアスカの後姿が重なった。
『あたしには似合わないわよ。そんなのわかってるから。』
急に思い出された一言。
817ヨモ:2011/07/09(土) 00:14:07.91 ID:???
「あ、アスカ。」
(あの言葉はきっと、服についての話じゃなかったんだ。)
声を大きめにして引き止める。
「何?」
背中のまま小さめの声のアスカ。
シンジは、彼女のほしかったであろう言葉を、見つけた気がした。
「あの、今日試着してた黄色いワンピースさ、その…」
そして、自分が素直に感じていたことも思い出した。
「か、可愛かったよ…アスカ、ああいうのも似合ってるよ。」
女の子に向かって直接、「可愛い」と言うのは、想像以上に緊張するものだった。
そして、シンジの発言は、勿論言葉通りの意味ではなかった。
アスカも、それを感じたのか、無言で部屋の入り口に立ち尽くしている。
「あの、僕も楽しかったし…休みがかぶったら、また付き合ってくれる、かな?」
搾り出すように苦慮しながらアスカに伝える。
そして、言った後は、何故か気持ちが軽くなるのを、感じた。
「…なによ、突然。気持ち悪い。」
そこでアスカは振り向き
「また、ね。おやすみ。」
その口元が、少し緩んでいるのが、シンジにも見えた。
パタン



部屋の戸を閉じ、うつ伏せにベッドに身を預ける。
バサっ
自分の顔が紅潮しているのを感じた。
おもむろに、枕をぎゅっと抱きしめた。
818ヨモ:2011/07/09(土) 00:17:44.97 ID:???
その深夜。
携帯のバイブレーターが不快な音を立てた。

(こんな時間に…?)
寝転がったまま、充電器に置かれた携帯を手に取る。
(メール…ミサトからか。)

題名と文体から、業務連絡であることがわかる。
他のパイロットにも送られているのだろう。

************
題名:【NERV重要連絡】参号機起動実験日程変更について
本文:パイロット各位
表題のとおり、参号機到着日程の遅延に伴い起動実験の日時を変更いたします。
下記を確認しておいてください。

なお、参加するテストパイロットは後ほど連絡いたします。
************

「…えこひいきの約束の日じゃない。」

(今日は、ちょっと卑怯だったかな。
 別にその埋め合わせってワケじゃないけど…)
アスカは起き上がり、ミサトの番号を呼び出した。

(ミサトも、こんなにまわりくどいやり方して、バカシンジが名乗り出たらどうするつもりよ。
 アイツなら、自分が主賓だって気づかずに、それに、もしかしたら、えこひいきだって…)

(らしくないなぁ)
「はぁ…」
一息ついて、頭を空っぽにすることにした。
819ヨモ:2011/07/09(土) 00:23:02.29 ID:???
終わりです。
長々と駄文に浪費して申し訳ありません。

式波と惣流の違いに非常に苦慮しました
油断すると惣流が楽しそうにはしゃぎ出してもう大変。

式波がこういう生活を心から楽しめるようになるのはもっと後だと思われます。
新劇の今後に期待を込めて、書きました。
お付き合いいただき、まことにありがとうございます。
820名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/09(土) 01:24:27.87 ID:???
>>819
GJ!
こんな普通の日を過ごした後にあの事故じゃやるせないですね・・・
アスカのもどかしさがなんとも胸に詰まりました。
821名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/09(土) 19:28:58.59 ID:???
良かったです。
822名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/10(日) 01:16:03.18 ID:???
GJ!!
式波と惣流の違いって、設定やストーリーが絡んでくる場面以外ではけっこう難しいんですよね。
でも日常のシーンから式波っぽさが見えて凄く良かったです(随所に乙女が見えるのも実に式波ぽかったw)
823名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/07/31(日) 15:43:04.51 ID:???
このスレ過沿ってるwwwヘイヘイヘイw
824名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/01(月) 23:11:19.79 ID:???
>>823
>過沿ってる

どんだけゆとり脳だよw
825名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/01(月) 23:52:41.04 ID:???
じゃあ過疎ってwヘイヘイヘイw

ならいいのね
826名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/08(月) 21:53:21.57 ID:???
マジで過疎らないで(;_;)
827名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/13(土) 12:48:48.71 ID:???
828名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/14(日) 17:33:12.43 ID:???
タイトル:完熟すれば赤くなる

6月某日、珍しく日経MJなどを読みふけるアスカの姿があった。
「ねーシンジこれ見て」
と、記事をシンジに見せるアスカ
「節電対策で人気、グリーンカーテン特集…」
見せられるままに、その見出しを読み上げる。
「うちもやろうよ、この家って西日が強いからずっとエアコンつけっぱなし。
 日当たりを和らげ、室内気温を抑制し、見た目に涼しさと癒しを。
 人類を守るエヴァのパイロットたるもの、省エネくらい基本ね!」
「あぁ…そ、そうだね…」
色々思うことがあってシンジは思わず苦笑いをした。
829名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/14(日) 17:36:19.89 ID:???
「というわけで、ゴーヤを育てましょ。
 夏っぽいし、沖縄っぽいし、手間も少なくて、収穫もできる!一石二鳥を越えて、まさにパーペキね!」
言いながら一人でどんどんテンションを上げていくアスカだった。

で、二ヶ月後
「はい、アスカ夕飯できたよ」
「う゛、またゴーヤチャンプルー…?」
食卓に並んだ緑の料理の数々。
「あとゴーヤの味噌汁にゴーヤの和え物。ラー油もあるから味変えてもいいよ。」
シンジは少しツンケントウに話す。
「ここんとこ毎日ゴーヤ〜…他のも食べたぁいぃ〜…」
と言いながらちょっと肩をすくめる。
830名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/14(日) 17:39:27.28 ID:???
「しかたないだろ。アスカが一本だとつまらないって言って、調子にのって五本も苗植えるから、なりすぎて収集つかないんだよ。」
「こんなに育つなんて思ってなかったのよ…」
ベランダに目をやると、鬱蒼としたジャングルが広がっている。
「繁茂して日差しは和らげてるけど、ベランダじゅうに蔓を回して、お陰で物干しとられてるし、大体、最初は世話してたけど、そのうち飽きちゃったから水やりも肥料も選定も僕がやってるし、最初の土運びとかにしたって僕任せだったし。」
目をつぶりながら諭すように語るシンジ。口調は強めだ。
「だって〜…」
(シンジ、育てるの上手いんだもん…)
831名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/14(日) 17:42:06.61 ID:???

「とにかく。せっかくなったんだから、食べないともったないからね。」
「…はぁ〜い…!」
アスカはしぶしぶ頷いた。

「ごちそうさま〜あー早くデザートちょうだい〜」
「はい、ゴーヤのパンケーキ」
「ひっど〜い!」

半分実話風味、そんな夏のヒトコマ
832名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/15(月) 00:40:58.49 ID:???
ほのぼのでイイ!GJ
833名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/16(火) 14:49:59.93 ID:???
おっつ
834名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/17(水) 02:43:47.20 ID:???
乙です!
> なりすぎて収集つかない
実話だよなあw
835328:2011/08/18(木) 23:34:20.32 ID:???
>>832-834
感想どうも。LASっぽくないかと思いましたが、過疎ってるとか言われたのでとにかく投下してみることにしました。
実はパンケーキは完熟した赤いゴーヤで作ってあるので、苦味とかはなく、アスカが赤色を気に入って原料きいて…って感じでLASっぽくするつもりだったのですが、長いのでオチ優先に。タイトルはその名残。
このスレ好きなので日常ネタで頻繁に投下できれば、と思っています。
836828:2011/08/18(木) 23:37:48.95 ID:???
すいません名前間違えてました…
837828:2011/08/21(日) 11:21:34.34 ID:???
タイトル:想像して楽しくなった

「これだけなの?」
地元のヨー○ドーでガチャガチャコーナーを見回るアスカ。
「電機街とかじゃ無いからね、しかたないよ。」
夕食の買い物にでたシンジは、何故か同行してきたアスカにガチャガチャコーナーまで引っ張り込まれた。
「ポケ○ンばっかじゃん。」
目を細めてアスカ。ここのヨーカ○ーは妙にガチャガチャの品揃えがよく、80台近く設置されている。
「親子連れが多いし、映画公開中だからね。」
「こっちだって人気映画じゃない。
 公開から日がたってるとはいえ、80台近くある中で、エヴァモノはたった1台。
 彼我兵力差は1対15。それもボタンを押せばセリフをしゃべるサウンドドロップだけよ。
 もうちょっと設置してても良いじゃないの!」
身ぶり手振りで捲し立てるアスカ。
838828:2011/08/21(日) 11:23:55.74 ID:???
「何をそんなに怒ってるんだよ。」
「…」
カチッ
アスカは目を細め、無言でシンジを一瞥し、先刻手に入れたサウンドドロップのスイッチを入れた。
『違う!綾波は綾波しかいない!だから、今!助ける!』
シンジ柄のそれから、気合いのこもった言葉が発せられる。
「…ふ〜ん。これでお客さん集める気なんだ…」
『違う!綾波は綾波しかいない!違う!綾波は違う!綾な違うちがちがちちちちち』
カチカチと連打しながら、表情は無く見下すように、アスカは手の中の物を睨みつける。
「…別に悪いセリフじゃないと思うけどなぁ。」
「なによ、主役のくせに無責任ね!」
更にジト目になるアスカ。
「あんたがそんなんだから、他のに場所持ってかれるのよ。
 ほら、こんな動物のフィギュアシリーズにすら…
 あら、この原色両生類図鑑って、なかなか完成度高いわね。」
ふと見つけた彩色のよいカエルのフィギュアに目移り。
839828:2011/08/21(日) 11:25:56.66 ID:???
「…もう、行くよ。夕飯遅くなっちゃうよ。」
「ちょっと待ちなさいよ、あと一つだけやるから。」
踵を返そうとしたシンジだが、はぁ、と一息吐いてから立ち止まる。
アスカは、ガチャガチャの台にコインを投入しハンドルを回し、カプセルを取りだし中身を確かめると、足早にシンジに駆け寄った。
「はい、シンジ。あげる。ケータイのストラップにでもしといて。」
と、サーフボードの上で男性が土下座しているフィギュアを差し出す。
「な、なんでこんなのを…」
そのカオスっぷりに思わず表情がひきつる。
「『渚の土下座シリーズ』って言うんだって、それ。」
「すごく良い笑顔だね、アスカ…」

現実と虚構の入り雑じる、日常の一場面
840名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/22(月) 16:50:19.88 ID:???
イイヨー!嫉妬アスカかわいい
841名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/23(火) 00:27:07.32 ID:???
GJ!
ボタン連打ワロタw
842828:2011/08/26(金) 19:54:45.83 ID:???
感想どうもー
正直オチだけ思い付いて書き出したので、なんとかまとまった気分です。

調子にのって、破TVの前にもう一つ、と思ってたけどなんとか書きあげられたので投稿します
843828:2011/08/26(金) 19:55:56.09 ID:???
タイトル:変なスイッチ入った

とある休日の、正午に差し掛かる頃。
特に何があるでもなく、リビングの座椅子座り、ボーっとテレビを見ていたアスカ。
番組の内容など、なにも頭に入っていない。
ふと時計をみて、我に返った。
「シンジー、そろそろお昼よー。」
と家の奥にある彼の部屋に向けた。実はこれが本日の第一声。
だが、それに対する返事は無い。
ふと、前日に友人たちと出掛けるといっていたのを思い出した。
「そっか、今日はいないんだっけ。」
844828:2011/08/26(金) 19:57:24.34 ID:???
昼食を促す言葉だったが、実際はそれほど食欲がある訳でもなかった。
何度も繰り返してきた、何時もの、暇な休日の流れだった。
「…三バカで映画だなんて、むさ苦しいにも程があるわね〜。」
一人呟きながら立ち上がる。
「あ、い、つ、の、こ、とだーかーら〜」
妙なリズムを刻みかがらダイニングへ移動し、冷蔵庫を開けた。
「ほらあった。」
予想通り、シンジの書き置きと共に、丁寧に作られたサンドイッチが置かれていた。
「全く、いい子ちゃんなんだから。」
何故か悪態をつきながら、サンドイッチを一つ手に持ち、リビングの間仕切りを越えて興味もないテレビ番組を眺める。
ぼーっと、再び現実感のない世界に誘われながら、サンドイッチを口に…
845828:2011/08/26(金) 19:58:41.67 ID:???
べちゃっ
「あっ…」
一口食べた拍子に、サンドイッチを落としてしまった。
床に散る、卵やキャベツ。
(いけない、せっかくシンジが)
思考が終わる前に、ひょいひょいと残骸を拾いながら口へ運んだ。
(とりあえず、全部…ん…!)
口の中に広がる、サンドイッチのものではない固い違和感。
取り出すと、長く黒い…
「げっ、ミサトの髪の毛じゃないの!」
床に落ちていたものがついてきたのだろう。
髪の毛の主は不在のため怒りのぶつけようもない。
846828:2011/08/26(金) 19:59:58.36 ID:???
仕方なく洗い場からふきんをとり、散らかした辺りを拭き取る。
床にはったその体制から部屋の隅に目をやると、埃がおちていて気持ち白く霞んだフローリングが見えた。
「ちょっと、ちゃんと掃除してんの?!これ!」
思わずふきんをもって、埃も拭き取る。
「もー…」
一人口を尖らせながら、洗い場へ戻ると、今度はシンクの水垢が目に入った。
(シンジがサボってる訳じゃ、ないだろうけど)
彼女がこの家に住む前には家事の当番表があった。
引っ越した直後に見た記憶がある、確かほとんどをシンジが担当していたはずだ。
それが、3人での分担のために、とリセットされ、うやむやになり、現在はシンジが一手に引き受けている状態。
(学校、宿題、ご飯、お風呂、ゴミ、掃除、お弁当、加えてエヴァ、か。)
「シンジが気にしてない、なんてことはないもんね。
 よーし、丁度やることもないし、アイツの手が回らないところやってやるかー」
847828:2011/08/26(金) 20:00:43.64 ID:???
夕刻
「ただいま〜。あれ?」
シンジは帰宅を告げると同時に部屋の変化に気づいた。
「あ、シンジおかえりー」
とそこに、エプロン姿のアスカが顔を覗かせた。
その手にははたきを持ち、三角巾で髪を巻いている。
実は、この格好で一時間以上前からスタンバイをしていたのだが。
「あ、アスカ、もしかして掃除してくれてたの?」
「う、うん。えっと、いま、丁度終わったとこなんだけど。
 よ、よくわかったわね。」
何故か急に気恥ずかしくなってしまった。
「なんかフローリングがピカピカしてるから。磨いてくれたんだ。」
露骨なコスプレではなく、そっちで気づいてくれたことに更にアスカの恥ずかしさが増す。
「べ、別に。今日は暇だったし、単に気が向いたからやっただけよ。」
顔を背けながら、そう返した。
848828:2011/08/26(金) 20:03:27.97 ID:???
「わあ、すごいやアスカ。ピカピカだ。」
キッチンに入ったシンジが思わずこぼす。
シンクの水垢もきれいに落ちて鏡のよう。
床もフローリング洗剤で仕上げてあり、光沢が出ていた。
「ま、まーね。あたしにかかればこんなもんよ。」
恥ずかしさも頂点に達して、赤面しながら腰に手を当てる。
「なんか…ごめんね。」
「え?」
急にシンジの顔が曇った。
「普段はあまり時間かけれないから、ここまでなかなか出来なくて
 気を遣わせちゃったみたいで、ごめん。」
「ちょ、ちょっと違うわよ。」
(なんでそっち方向に考えるのよ!)
「あたしはただ、あんたも毎日忙しいだろうから、
 ちょっとでも、手伝えたら、て、あの 、その、役に…えっと、んと…」
勢いで本心を吐露しかけて、しどろもどろになる。
見ると、シンジもほんのり赤い。それが差し込む西日のせいかどうかは、もうアスカには考えられなかった。
849828:2011/08/26(金) 20:06:45.92 ID:???
「と、とにかく。こんなぐらいお茶のこさいさいなんだから。
 普段忙しすぎるんなら、たまには頼っていいのよ。
 覚えときなさい!」
「う、うん。」
シンジも笑顔でそれを受け
「ありがとう。アスカ。」
と、微笑んだ。
「ほ、ほら、せっかくあたしが綺麗にしたんだから。
 とびっきり美味しい夕飯を作りなさいよ!」
「うん。」


「ところでゴミ箱も空っぽだけど、ゴミの日じゃないのにどうしたの?」
「ああ、ミサトの部屋にぶちこんどいた。」
850名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/26(金) 20:22:18.54 ID:???
>>849
GJ!!
すごくよかったです!
つか、ごみwwww
851名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/27(土) 00:47:22.44 ID:???
GJ
破を見た後だからか分からんが、日常LASに気持ちが安らぐよ。
852名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/27(土) 18:12:05.20 ID:???
よかった
853名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/08/28(日) 20:27:08.83 ID:???

ごみ〜www
854Very Very Blue Moon ◆Yqu9Ucevto :2011/09/13(火) 22:16:44.80 ID:???
鼻先に香ばしい匂いが漂う。

――いい匂いだなぁ。

何の匂いだろうと考える事で、ぼんやりとしていた脳細胞が動き始める。
ここは何処だろうか、と思う程それは現実感からかけ離れていて、一瞬自分が何処に居るのか判らなくなる。
同時にまだ眠気の方が勝っているという事実を表しているけれど。

「……ぅん……っ、あれ……?」

背中に感じる感触は確かに僕のベッドだ。
でも、普段と違って今日は部屋に光が差し込んでいる。
眩しい。
その眩しさに目を凝らしてみると、部屋の入口に人影が見える。

「シンジ、早く起きなさい。コーヒー淹れたわよ」

その声に僕は夕べの事を思い返してみた。

――夢じゃ、ないよね……?

余りにも現実感が無い。
確かあれは、夕食の用意をしている時にミサトさんから帰れないと電話があって、それからアスカが帰って来て――。

「何ぼんやりしてるのよ。冷めちゃうわよ?」

そうだ。
何時もの様に二人で食事の後にリビングでお茶を飲んでいて、カーテンを閉めようとして窓から外を眺めたら月が出ていて。
あんまり綺麗な満月だったから、部屋の電気を消して一緒に眺めていたら、何となく良い雰囲気になったんだ。
それから後はホントに極自然に――。
855Very Very Blue Moon ◆Yqu9Ucevto :2011/09/13(火) 22:18:21.03 ID:???
ダメだ、思い出したら恥ずかしくなってくる。
あの時の僕はどうかしてたんだろうか?
でも、アスカは嫌がらなかったし。

「あのっ、アスカ?」
「何?」

不機嫌そうに眉を顰める彼女の格好に気付く。
よく見たらアスカが着ている服は僕がハンガーに掛けていた筈のワイシャツで。

「えっと、その格好は……?」
「……覚えてないの?」
「……」
「……」
「――あ!」

そうだ、いい雰囲気になって、隣に居るアスカが凄く可愛く見えて、僕からキスをしたんだ。
それから……僕とアスカは……。
何てこったい。

「ふん、やっと思い出した様ね?」
「うん」
「ったく、ミサトの言ってた通りだわ」
「御免……」

思い返してみると、僕は相当無茶をしてる。
そのまま雰囲気に流されたとは言え、何だか僕が僕じゃないみたいな事だ。
856Very Very Blue Moon ◆Yqu9Ucevto :2011/09/13(火) 22:18:59.16 ID:???
「ホント、男って狼よね」
「……う、弁解出来ない」
「……」
「それって、全面的に僕が悪いって事だよね?」
「解ってんじゃない。だったら、すべき事は判ってるわよね?」
「たっ、多分……」
「多分?」

アスカはますます不機嫌そうな声をさせて部屋に入ると、ベッドの横の机の上にポットを置く。
そして体を起こした僕の横に腰を掛けた。

「……間違えたら、どうなるか判ってる?」
「お手付きは、無しだよね?」
「そんな事したら、許さないんだから」

アスカは小さく頬を膨らませて、僕を軽く睨んだ。
よく見ると、入り口から光が差し込んでいるだけの薄暗い部屋の中でも見える程、耳が赤い。
多分、彼女の先程からの態度は半分ポーズみたいなものでその実、照れているだけなんだろう。
そんな所が何だかとても可愛い。
僕は彼女の頬を引き寄せて、あの時と同じ様に彼女と唇を重ねた。

「どう?」
「……アンタにしては上出来よ。正解にしてあげる」

アスカは頬を紅くしてバツが悪そうに僕から目を逸らした。
857Very Very Blue Moon ◆Yqu9Ucevto :2011/09/13(火) 22:19:37.66 ID:???
――やっぱり、可愛いな。

多分、これが本来のアスカなのかも知れない。
普段は僕には悪態を吐いたりする事が多いけれど、それも彼女なりの照れ隠しなのだとしたら。
そんな事を考えていたら不意に頬に痛みが走る。

「何にやにやしてんのよ!」

顔を更に真赤にして、アスカは僕の頬を引っ張っている。
そんな所がまた尚更可愛く思えた。

「別に? 特に他意は無いよ」

嘘だ。
ホントは可愛い。

「ホントかしら?」
「ホントだって」
「信用出来ない」
「……」
「……」

僕も口を閉ざす。
これ以上は余り言いたくない。
口にしたら最後、彼女は逆に口を閉ざしてしまうだろうから。
お互い恥ずかしいのは一緒だし。
でも口にする事で、何だか目の前の彼女が夢になりそうで怖いというのもあるかも知れない。
だから確認も込めて、僕はもう一度彼女の頬を引き寄せて唇を重ねた。
858Very Very Blue Moon ◆Yqu9Ucevto :2011/09/13(火) 22:20:03.26 ID:???
「……馬鹿」
「馬鹿でもいいよ」

それに今はこうしている時間を大事にしたい。
何故なら、朝になるとミサトさんが帰って来てしまうから。
そう気付くと居ても居られなくなって、彼女をベッドの中に引き込んだ。

「――ちょっと!」
「こうして居られるの、朝迄だよ?」

枕元の時計を見ると、真夜中には少し遅くて早朝と呼ぶにはまだ早い時間。
きっとまだ空にはあの月が光ってる。

「……」
「ね?」
「でも、コーヒーが冷めちゃうわよ」
「そんなの、後でまた温めればいい」

今は只、目の前のアスカを手放したくない。

――お月様、もう少し、もう少しだけ力を貸して。

その一心で僕は彼女を抱き締めた。
859 ◆Yqu9Ucevto :2011/09/13(火) 22:21:31.31 ID:???
夕べは満月だったので小ネタ
dat落ちスレで書いてた続きもまた追々
860名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/09/14(水) 15:31:40.21 ID:???
861名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/09/14(水) 18:41:52.40 ID:???
ぞくぞくした
gj
862名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/09/14(水) 19:46:37.80 ID:???
GJ!
謎かけするアスカが可愛いね!
863名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/09/15(木) 12:49:10.72 ID:???
こりゃいいや
GJ
864名無しが氏んでも代わりはいるもの:2011/11/01(火) 00:04:34.26 ID:???
アスカの誕生日早く来ないかな
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