いかりしんじくん(×さい)

このエントリーをはてなブックマークに追加
42名無しが氏んでも代わりはいるもの
(1/5)

「クレヨンしんちゃん 二人目のしんちゃんだゾ」
主な登場人物
碇シンジ(5)
野原しんのすけ(5)
風間くん、ネネちゃん、マサオくん、ボーちゃん
園長先生、野原みさえ

園長先生語る
「私はご父兄からご意見やクレームがあったら、どんなに理不尽な事であっても相手の話をとにかくよく聞くようにしています。
こちらから発言するのは最後の最後です。
さんざん言われっ放しの私を見て「情けない」とか「事なかれ主義だ」とか、先生方からよく言われますけどね。

こんな私ですが…昨日、あの男には、どうしても黙っていることができず、大声を出してしまいました…。
ねえ、先生方、この世に実の子供と時間を共有することよりも優先される仕事なんて、あるんですかね?
そりゃ奥さんが亡くなって大変なのはわかりますよ。
でも母子家庭・父子家庭として仕事も育児も頑張ってる保護者さんは、たくさんいらっしゃるじゃないですか!
しかもあの男、昨日こちらに来た時も部下らしき人間を引き連れてたでしょ。
まだ恵まれてる方ですよ。

今にして思えば昨日、私はほとんどその部下と喋っていたようなもんです。
そしてあの立ち去り方!話している最中にいきなりあの男が「ちょっと失礼」と言って席を立ちました。
トイレか電話か、位に思っていたけど、いつまでたっても戻ってこない。
しばらくして部下の携帯に電話が入り…そのあとの部下の言い草がこうですよ
「彼は急用で仕事に戻った。もうこちらへは来ない。今日から子供の世話は知人に頼む。
知人の連絡先と、その知人への手紙はここにある。子供への説明は幼稚園にお任せする。」
なにがお任せするですか!あの子は昨日、自分がその夜どこで寝るのかさえ親から聞かされてなかったんだ!
その後部下も勝手に帰ってしまうし…私はもう本当にやりきれない気持ちでシンジくんに事情を説明しましたよ。
そして…先生方も御覧になったでしょう?
シンジくんは「おとうさん!おとうさん!」と泣き叫びながら幼稚園じゅうを走り回って……。
私はあの声を、しばらく忘れることができないと思います。」
43名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/17(木) 22:56:55 ID:???
(2/5)

同日、ひまわり組教室にて。本日から本格的にクラスの仲間入りである。
吉永先生「みんななかよくしてねー!(シンジに)名前言えるかな?」
シンジ「……いかり、シンジです……」
子どもたち「(うわー暗い…)」
昨日の「おとうさん!おとうさん!」の騒ぎで、
子どもたちもシンジのややこしい事情は多少わかっており、教室内はなんとも微妙な雰囲気に…。
マサオくん「(気を利かせて、精一杯明るく)シンジくんてことは、しんちゃんだね!二人目のしんちゃんだ!」
子どもたち「あーそうだそうだ!」「しんちゃんだしんちゃんだ!」
しんのすけ「ほほー。でも本物のしんちゃんはオラだぞ!シンジくんはニセしんちゃんだ!」
子どもたち「(えー…)」
しんのすけ「オラが一番でシンジくんが二番だ!オラが親分でシンジくんが子分だ!
オラが社長でシンジくんが平社員だ!オラが…」
風間くん「いいかげんにしろ!普段はおバカなくせして、なんでこんな時はポンポン言葉が出てくるんだよっ!」
シンジ「(クスクス)」
マサオくん「あー、シンジくん笑った!」
ボーちゃん「きんちょうが、ほぐれた!」
44名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/17(木) 22:57:42 ID:???
(3/5)

お外にて
風間くん「習い事やってる?僕はバイオリンやってるんだよ!」
シンジ「ぼくが昨日からお世話になってる家のおじさんは、チェロが弾けるよ。
大きくなったら教わってみようかな…」
風間くん「(チェロってどんな楽器だったっけ?)う、うん!それがいいよ!
シンジくんは、なんか楽器をやるのが似合うような気がするなあ…(しばらくシンジを見つめ、なぜか頬を赤らめる)」
マサオくん「風間くん、どうしたの?」
ボーちゃん「風間くん、うっとり!」
風間くん「あ、あのさあ、ネネちゃん、女の子からみて、シンジくんって、すごくイケメンだと思わない?」
ネネちゃん「そうねえ、確かにしんちゃんやボーちゃんと比べればねえ。
でも風間くん、なんでそんなこと聞くの?」
風間くん「(ああ僕はいったいどうなってしまったんだぁ!)」
しんのすけ「ほほー、もしかして風間くんは「にちょーめ」ですか〜?」
風間くん「な、なんだよ「にちょーめ」って」
しんのすけ「ほっほーい!風間くんはにちょーめにちょーめー!」
風間くん「お、おい、ちゃんと意味を教えろ!てゆうか普段はおバカなくせして
なんでこんな時だけ、僕さえ知らないような言葉が出てくるんだよっ!」
シンジ「(ニコニコ)」
マサオくん「もー、あの二人はいつもあんな感じなんだよ…」
ボーちゃん「ボケと、ツッコミ!」
シンジ「(ニコニコ)」
45名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/17(木) 22:58:58 ID:???
(4/5)

公園。
たくさんの子供が遊んでいたが、夕方になり、お母さんが迎えにきて徐々に減っていき、
気がつくとシンジとしんのすけの二人きり。
シンジ「……」
しんのすけ「シンジくんはまだ帰らなくていいのか?」
シンジ「おじさんもおばさんもまだ仕事に行ってるからいいんだ…
おばさんがかえってくるのも6時くらいかな…」
しんのすけ「おおーそんなに遊べるのか!うらまやしいぞ!」
シンジ「あ、あのーしんのすけくん、それを言うなら『うらやましい』…」

やがて、しんのすけのお母さんも迎えにきた。
みさえ「シンジくん、また明日もしんのすけと遊んであげてね!」
シンジ「はい…さよなら。」
しんのすけ「じゃあまた明日な、ニセ物!」
みさえ「ちょっとしんちゃん!なんてこと言うの!」
シンジ「いえ、いいんです。(フフ…)」
みさえ「(なんて淋しそうな顔で笑うの、この子…)」
46名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/17(木) 23:00:04 ID:tiTThSM+
(5/5)

河川敷の道。
川のこちら側の道をしんのすけとみさえが歩いている。
向こう側の道をシンジが、同じ方角へトボトボと歩いている。時々チラチラとしんのすけたちを見ている。
みさえ「(家に帰りたくないのかな…いろいろ大変みたいだもんね…)」

突然、しんのすけが大声で話しかける。
しんのすけ「おい、ニセしんちゃん!母ちゃんなんかいなくたって大丈夫だぞ!
妖怪ガミガミオババがいないから、静かでいいぞお!」
みさえ「こらしんのすけ!」
しんちゃん「父ちゃんなんかいなくたって大丈夫だぞ!
くさーい靴下が転がってないから、ごはんがおいしいぞお!」
シンジ、大笑い。
しんのすけ「おおー!シンジくんの笑い声を初めて聞いたぞー!」
シンジ「おーいしんちゃーん!(片手を挙げて)二号機、発進!」走り出した。
しんのすけ「あーずるいぞ!えーとえーと、一号機、発進!」同じ方向へ走り出した。
みさえ「こら、走ると危ないよー!」追いかけていく。
みさえ「(あーあ、子どもってバカだけど…子どもって天才だなぁ。)」

おしまい

追伸
「クレヨンしんちゃん」の原作者・臼井儀人さんがご無事でありますように…。