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「すばらしい日々 〜 Beautiful dreamer ~ 」
主な登場人物
しんじ(小1)
まな(しんじの同級生)
あすか(しんじの姉。中学生)
保健室の先生
おじいさん
×月×日
しんじ邸玄関
「おはようございます!」
「おはようまなちゃん!いつも悪いわねえ」
「いえ、そんなことないです!」
「しんじまだ布団の中なのよ〜。叩き起こしてくれない?あ、あたしも遅刻しそう!
じゃごめん、あとはお願いね!」
「はいっ!いってらっしゃ〜い!」
しんじの部屋
「しんじ君、おはよう!」
「(布団の中から)う〜ん、おはよう…」
「早くしないと遅刻しちゃうよ!」
「うー…」
「もー…じゃあ着替えを用意するわね。えーとパンツはこの引き出しだったかな…」
「(がばっと布団から飛び出し)あーはいはい起きます起きます自分でやります!」
キッチン
勝手知ったるなんとやらで、まなはしんじの朝食の準備を手際よく進めている。
「も〜、あすかお姉さん、ついでにしんじ君の分も用意しといてくれればいいのに…ってブツブツ言いながらキッチンにいると、なんかドラマの「しゅーとめ」さんみたいね、えへへ!」
通学路
元気よく学校へ走っていく、しんじとまな。
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翌日
しんじ邸玄関
「おはようございます!」
「おはようまなちゃん!いつも悪いわねえ」
「いえ、そんなことないです!」
「しんじまだ布団の中なのよ〜。叩き起こしてくれない?あ、あたしも遅刻しそう!
じゃごめん、あとはお願いね!」
「はいっ!いってらっしゃ〜い!」
しんじの部屋
「しんじ君、おはよう!」
「(布団の中から)う〜ん、おはよう…」
「早くしないと遅刻しちゃうよ!」
「うー…」
「もー…じゃあ着替えを用意するわね。えーとパンツはこの引き出しだったかな…」
「(がばっと布団から飛び出し)あーはいはい起きます起きます自分でやります!」
キッチン
勝手知ったるなんとやらで、まなはしんじの朝食の準備を手際よく進めている。
「も〜、あすかお姉さん、ついでにしんじ君の分も用意しといてくれればいいのに…ってブツブツ言いながらキッチンにいると、なんかドラマの「しゅーとめ」さんみたいね、えへへ!」
通学路
元気よく学校へ走っていく、しんじとまな。
翌日
しんじ邸玄関
「おはようございます!」…
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「25年ぶりか」
「四半世紀なんていう言い方もありますな。…お互い老けましたなぁ」
「ふん…前の騒動の時にすでに年寄り然としとったくせに。お主どれだけ長生きすれば気が済むのじゃ?」
「ほほほ…あ、前言撤回。相変わらずお美しいですな、さくらさん」
「ふんっ!…お主、今度は何を企んでおる?」
「まあまあ、そう急ぎなさんな。…あの鬼っ娘はお元気でしょうか?」
「さあ、どこで何をしているやら…」
「ほう…じゃああの性欲大明神とどうなったかも、わかりませんか?」
「ああ、2人とも学校卒業と同時に別々にあの街を離れた。それきり何も聞いておらん」
「そうですか……」
「おい、さっさと吐かんか、今度は何を企んでおる!」
「ああ、まずはじめに申し上げておきましょう。あなたが心配しないように」
「ん?」
「私にはもうあの頃のような力はありませんよ。世界を作るなんてとてもとても……。せいぜい時の流れを数日堰き止められるだけです」
「……」
「自分の寿命がね、だいたいわかっちゃうんですよ…あの鬼っ娘の時に『時間』なんて大層なものをいじくったせいでしょうかねえ、その副作用というか…自分の残り時間がね、わかっちゃうんです。」
「……」
「力も徐々に弱ってきてるし…最後に冥土のみやげにね、なんか一つ、ちょっといいことをしたくってね」
「それであの少女の願望を具現化しようと時の流れを…」
「ああ御心配なく。否応無くあと数日で、私の作った時の堤防は決壊します。もう以前みたいに、長いこと同じ日を繰り返すことはできないんですよ」
「ふん、しおらしいことを言っておるが…やはり年はとりたくないもんじゃのう」
「ほほほ…」
「勘違いするな、妖力の低下だけを言っておるのではない」
「…?」
「わからぬか?お主はあの少女の願望を正確に把握できなかったのじゃ」
「ほう…」
「あの少女は、決して今の状態が永らく続くことを願ってはおらん。彼女は今7歳だが、8歳の自分、10歳の自分、20歳の自分に、全く不安・疑いを持っておらん。7歳にとどまることなど、これっぽっちも望んでおらんのじゃ!」
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「浮世離れ…」
「なんじゃと!」
「まあお互い幸せですわなぁ、何か嫌なことがあればすぐ別の土地に移り住むこともできる」
「……」
「ねえさくらさん、私がちょいと留守にしていた間に、この国に一体何があったんです?子供の数は減り、若者から生気が失せ、大人たちは仕事に就くことができず、老人たちは大きな不安を抱え込んだまま、ただ漫然と長生きしている…あの頃ととても同じ国とは思えません」
「ふん、もっともらしいことを!お主が心配したところで、何も解決せぬわ!」
「この街に限っていえば、何やら我々の手に負えそうもない、魑魅魍魎の出現が間近のようですが…さくらさんも気づいてるんでしょ?だからこの街に越してきたのではないですか?一矢報いたいとでも?」
「出来ることを、やるまでじゃ……」
「さっきも言ったじゃありませんか、私にはもう長期間時間をコントロールしたり世界を作ったりするほどの力は残ってません。あの子を7歳のままとどめることなど、とてもとても…ただね、こう考えたんです」
「……」
「あのお嬢さんは今後、少なくとも『今』よりは大変な時代を生きていかねばならない。
そのサバイバルの最中に、思い出すべき楽しかった日々が有るのと無いのとじゃあ、ずいぶん違うと思いませんか?」
「……」
「より強く胸に刻み込んでもらうために、少しばかり繰り返してみたってわけです。でもまあ、こうやってさくらさんに見つかっちまったことだし、もうやめときますよ。明日からは時間の流れは普通に戻ります」
「そうか…まあ、あの少女は私の教え子みたいなものじゃからな、さっさと異常な状況から抜け出せるのならそれでよいわ」
「ふーん、じゃあさくらさんは今でも学校の保健室とやらに…」
「ああ、昔と違って大忙しじゃぞ」
「ところで今回は誰が最初に気づいたんです?」
「ほう、私もバカにされたもんじゃの。まあ確かに今回も、あの少年の指摘があるまで気づかなかったわけだが…。で、確かに今日でこの事態は終息するんじゃな?それさえ確認出来ればもう用は無い。失礼する」
「そうですか…せっかくの再会です、もう少し思い出話でもしたかったのですが。例えば前回、初めて異変に気づいたあの男、さくらさんの同僚でしたよね?彼は今…」
「よりによってそれを聞くか。お主、所々で妙に鋭いのう?」
「えっ?」
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翌日
しんじ邸玄関前
「おはよう!」
「まなちゃん遅〜い」
「ごめんごめん!でもしんじ君、今日は早起きできたんだね」
「うん。夢の中で注意されたんだ、変なおじいさんに。『いつもいつも女の子の世話にならずに、たまには自分で早起きしろ!』って。で、目がさめたらすごく早い時間で…」
「ふーん」
「でね、そのおじいさんは他にも…」
「あ、急がないと遅刻しちゃう!」
「あ、そうか」
「ちゃんと朝ご飯食べた?」
「うん」
「ちゃんとパンツはきかえた?」
「あ、当たり前だろ!てゆうか、まなちゃん何言ってんのさ?朝っぱらからパンツって…。さ、行こ!」
通学路
元気よく学校へ走っていく、しんじとまな。
エピローグ
「…うん、わかったよ。ねえ、おじいさんはだあれ?」
「名乗るほどのもんじゃないよ。そうか…さくらさんを出し抜いて異変に気づいたこの小僧が、あの娘の、ねえ…。さすが私が目をつけただけあって、あの娘の人を見る目はなかなかのもんだな」
「えっ?」
「なんでもない。おい小僧、あの子といつまでも仲良くな!」
おしまい