★エヴァ小説を投下するスレ(ノンジャンル)★3.5

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313君のなまえ
はっとして首を掴んでいた手をやんわりと開けば、力無く崩れ落ちたアスカ。朧げに浮かんだアスカの顔は無表情だった。首を押さえて、じわじわと上向けば何も捉えていなかった人形のような眼と視線がぶつかり合う。

「…あんた今、私のこと殺そうとしたでしょ。」

違う、違うよ。掠れて途切れ途切れの言葉に首を振れば眉間に感情の昂ぶりが波の如く押し寄せた。瞳はみるみるうちに生気と憎悪と、相反するものが混ざり合って灯る。

「嘘よ!力いっぱい込めたじゃない、」

私への嫌悪を。だから私も、

「やり返して良いでしょ、あんたに!」

逆に絞め上げられても僕の首筋で白く慄えるアスカの手のひらに指先を這わそうとも思えなくなった。もういっそ、殺されたい。
零れたコーヒーに塗れたシャツは既に冷たく重くなっていた。アスカの顔が歪んでいく。ああ、僕が最期に見る人間の表情くらい、幸せそうな表情が良かった。片目が消えて、片腕が消えて。こんな光景、何処かで垣間見たような気がする。

「覚えておきなさい。あんたを殺したのは、この紛れもない、」

惣流・アスカ・ラングレーよ。

314君のなまえ:2010/06/09(水) 02:39:22 ID:???

「…夢、」

見上げた先にはあの無機質な天井が拡がりを見せていた。そうだ僕、使徒に取り込まれた綾波を助けて、それから…。
意識が朦朧としたまま、へばり付いた蛍光灯が照らし出す世界を目線だけで辿れば、ベッドの脇に金色の糸のような髪が見えた。もぞもぞと動いたそれは、今まで見知っていた彼女とはある一点だけ変わっていた。
眼帯がずれているのも憚らずにこちらへと距離を詰めてくる彼女に狼狽えるしかない。
そう、この感情はあの夢で味わったものを酷似していた。滴る汗は、ただ暑いからという問題だけじゃなかった。

「気付いたのね、バカシンジ!私の名前、判る?」

「…惣流・アスカ・ラングレー。」

気がつけば、先程聞いた名前をそのまま告げれば彼女は首を傾げた。

「何言ってんのよ、私は」

式波・アスカ・ラングレーよ。

「まだ寝ぼけてるのね、」

けらけらと明朗に笑むアスカからは、コーヒーの匂いがしたように思えた。