――今回は、シンジがレイを救出したシナリオについてお伺いしたいと思います。
何故アスカではなくレイだったのでしょうか?
庵野;レイは、完全な他者であるアスカと違って、シンジと遺伝子にも深い繋がりのあるキャラクターだからね。
「他者の存在を強く願う」という展開でアスカを持ってきてしまうと、それこそエヴァが完結してしまう危険性すらあるわけで(笑)
シンジとレイは完全な他者同志ではなく、深い繋がりのあるキャラクター同士だからこそ、
ああいうシナリオになっても、他者をテーマの一角にしたエヴァを、まだまだ続けることが出来るというわけで。
――なるほど。だから多少無理のあるシナリオでも、エヴァの構造そのものを崩す心配はないわけですね。
庵野;そういうことだね。まだまだキャラクター達には苦しんでもらわないとですから(笑)
エヴァは繰り返し起こる悲劇に対して立ち上がっていく物語ですからね。
あ、あと初号機とレイも深い繋がりのあるキャラなので、
初号機とレイ絡みで多少無茶な展開にしてもOKだろう、という目論みもありました(笑)
――ありがとうございました。
――母親のロボットに乗った息子が覚醒して、母親のクローンの子供を救出する…
確かに現時点ではまだ「閉じた」世界にいるというか、「他者」に対して「開かれた」状態にはなっていないですね。
庵野;そういう諸々の事情があって、レイ救出というシナリオに行き着いたんですね。
シンジの豹変の演出をしつつも、まだ開かれた世界に行けていない段階の状態を描けるということで。
――なるほど。