「庵野秀明さんとは3〜4年ぐらい前から一緒に実写のテレビシリーズを
企画していたんですが、それが2年くらい前に頓挫しちゃいまして。
既にそのときはスタッフを招集していたんですね。このまま何もしないで
終わると悔いが残るねと話をしていたら、あるとき庵野さんからひょこっと
『エヴァ、もう1回やるのはどうだろうか』とメールをいただき、ああいいじゃ
ない、やりましょうよと。」
庵野監督の「もう一度エヴァ」という提案。そこにはどういた想いが
あったのだろうか。
「それはやはり実写シリーズでスタッフを集めてしまったということも
あるし、年齢的にも今彼は46歳、僕は45歳ですが、50を過ぎてこの
仕事を続けるのはキツイなあと。やり出すとまた4〜5年はかかります
から、ラストのテープを切るのがちょうど50くらいなら何とかなる。
だとすれば今、スタートを切らないと間に合わないし」
(キネマ旬報2007年9月上旬号/大月俊倫Pに聞く「新劇場版」の真実)
ある日、庵野は彼に別の相談を持ちかけて来た。
「映画を作りたいと言うんですよ。しかも特撮映画を。昔彼に“何をやり
たいの?”と聞いたら、“実は、特撮”と答えたことがあって。本当に庵野
がやりたいのは特撮なんだと思うんです。彼にとってアニメーションは
その代替物でしかない。決してアニメーションをやりたいわけではない
けれども、それしかないからやっているのではないでしょうか」
「僕は今回の企画に関して、大反対しました。“何で『エヴァ』なんか、
やらなくてはいけないの。それよりも新作をやりなよ”と言ったんです。
そうしたら彼はしおらしく、“鈴木さんにはわからないだろうけれども、
なかなかそういうわけには行かない。新作をやる準備としては、『エヴァ』
をやることが必要だ”と言ったんです。彼としては今回の劇場版四部作
を作った後に、オリジナル新作を作りたいと言っていました」
(キネマ旬報 2007年9月上旬号/鈴木敏夫が語る、人物・庵野秀明)